JP2017181457A - 落雷位置標定システム、落雷位置標定装置、及び落雷位置標定方法 - Google Patents

落雷位置標定システム、落雷位置標定装置、及び落雷位置標定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多地点同時雷撃か否かを判定することが可能にする技術を提供する。
【解決手段】本発明による落雷位置標定システムは、落雷による電磁波を検知し、観測データを送信する複数の受信局と、複数の受信局のそれぞれからの観測データを受信し、落雷位置を標定する落雷位置標定装置と、を有する。そして、落雷位置標定装置は、第一雷撃から1秒以内に発生した雷撃を特定する処理と、受信局から受信した観測データを用いて、複数の雷撃を標定する処理と、処理対象の雷撃と直前の雷撃との発生時間差、処理対象の雷撃と第一雷撃との波高値の比率、及び処理対象の雷撃と第一雷撃との距離に基づいて、処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する処理と、判定する処理による判定結果と共に、落雷の標定結果を出力する処理と、を実行する。
【選択図】図4

Description

本発明は、落雷位置標定システム、落雷位置標定装置、及び落雷位置標定方法に関する。
落雷による被害の把握や、迅速な復旧作業のための被害場所の特定などのため、落雷位置を標定するシステムがある。よく知られている方法は、落雷により放出された電磁波を検知するセンサ(観測点)を複数設置し、電磁波が発生した方向(MDF方式)や、電磁波を検知した時間差などを利用して落雷位置を標定する方法(TOA方式)である。このような方法で日本全国をカバーした落雷位置標定システムとしてJLDN(Japan Lightning Detection Network:全国雷観測ネットワーク)がある(非特許文献1参照)。
また、近年では、MDF方式とTOA方式を組み合わせて落雷の位置標定を行う方法(IMPACT方式)も用いられている(非特許文献2)。
JLDN(全国雷観測ネットワーク),株式会社フランクリン・ジャパン,<http://www.franklinjapan.jp/> Kenneth L. Cummins, Martin J. Murphy, Edward A. Bardo, William L. Hiscox, Richard B. Pyle, and Alburt E. Pifer, "A Combined TOA/MDF Technology Upgrade of the U.S. National Lightning Detection Network", JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL. 103, NO. D8, PAGES 9035-9044, APRIL 27, 1998
非特許文献1や2による落雷位置標定方式では、落雷を構成する複数の雷撃から派生する電磁波を受信し、各雷撃を特定し、落雷位置(例えば、大地雷の場合)や雷発生位置(例えば、雲放電の場合)を標定する。
ところで、1つの落雷にも拘らず、本流の雷撃から放電路が枝分かれした雷撃が本流の雷撃が落ちた場所とは異なる複数の場所に落ちる、多地点同時雷撃というものが存在する。雷は電流であるため、1つの落雷のエネルギーを正確に算定するには、本流の雷撃だけでなく、本流の雷撃が落ちた場所から離れた場所に落ちた雷撃が枝分かれした雷撃か否か特定できなければならない。
しかしながら、今までは本流の雷撃なのか、本流の雷撃から枝分かれした雷撃なのか判別する方法が無かったため、上述の落雷位置標定方式を用いたシステムを用いたとしても、雷撃が本流の雷撃から枝分かれした雷撃なのか否かを特定することが困難であった。従って、従来の落雷位置標定システムでは、多地点同時雷撃として同一の落雷に含めるべき雷撃を別の落雷として標定してしまう場合もあり、また、多地点同時雷撃が発生した場合には正確に落雷のエネルギーを算定することができない。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、多地点同時雷撃か否かを判定することを可能にする技術を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明による落雷位置標定システムは、落雷による電磁波を検知し、観測データを送信する複数の受信局と、複数の受信局のそれぞれからの観測データを受信し、落雷位置を標定する落雷位置標定装置と、を有する。そして、落雷位置標定装置は、第一雷撃から1秒以内に発生した雷撃を特定する処理と、受信局から受信した観測データを用いて、複数の雷撃を標定する処理と、処理対象の雷撃と直前の雷撃との発生時間差、処理対象の雷撃と第一雷撃との波高値の比率、及び処理対象の雷撃と第一雷撃との距離に基づいて、処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する処理と、判定する処理による判定結果と共に、落雷の標定結果を出力する処理と、を実行する。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本発明の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
本発明によれば、雷撃が多地点同時雷撃か否かを判定することができ、当該判定の結果を標定結果に含めて出力することができるようになる。
多重雷撃と多地点同時雷撃の概念を示す図である。 多重雷撃の形成について説明するための図である。 多地点同時雷撃の形成について説明するための図である。 本発明の実施形態による落雷位置標定システム1の概略構成例を示す機能ブロック図である。 2局のセンサのベースライン上に発生した落雷の位置標定を行った例を示す図である。 パラメータとして提供される、標定された個々のデータの信頼性を示す誤差楕円を示す図である。 多重雷撃及び多地点同時雷撃における位置標定について説明するための図である。 本発明の実施形態による落雷位置標定システム1における落雷位置標定処理を説明するためのフローチャートである 本発明の実施形態の落雷位置標定システム1における多地点同時雷撃判定処理(ステップ105)の詳細を説明するためのフローチャートである。
現存する落雷位置標定システムは、放電路が異なる雷撃が多地点同時雷撃を構成するのか、或いは別の落雷の雷撃の1つであるのか判定することができなかった。本実施形態は、多地点同時雷撃か否かを判定するための基準を開示し、それに基づいて、多地点同時雷撃か否かを標定結果に含める落雷位置標定システムを提供する。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
本実施形態では、当業者が本発明を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本発明の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
更に、本発明の実施形態は、後述されるように、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
以下では「プログラムとしての各処理部(例えば、明暗補正部等)」を主語(動作主体)として本発明の実施形態における各処理について説明を行うが、プログラムはプロセッサ(CPU等)によって実行されることで定められた処理をメモリ及び通信ポート(通信制御装置)を用いながら行うため、プロセッサを主語とした説明としてもよい。
<多重雷撃と多地点同時雷撃について>
図1は、多重雷撃と多地点同時雷撃の概念を示す図である。図2は、多重雷撃の形成について説明するための図である。図3は、多地点同時雷撃の形成について説明するための図である。
多重雷撃は、基本的に、同一放電路で放電を繰り返す複数の雷撃からなるものである(図1(a)参照)。一方、多地点同時雷撃は、放電路が枝分かれして複数の異なる場所に落ちた雷撃、もしくは雷撃の発生源と放電路が全く別でもほぼ同時に複数の異なる場所に落ちた雷撃からなるものである(図1(b)参照)。
多重雷撃は、複数の雷撃から構成されていても、各雷撃の発生間隔は非常に短いため、図2(a)に示されるように、人の眼には一筋の雷として見える。多重雷撃の進展過程は、図2(b)に示されるように、例えば、ステップトリーダと、複数のリターンストロークと、複数のダートリーダとにより構成される。ステップトリーダ(先行放電)形成過程では、最初の雷撃発生時に絶縁破壊を起こしながら空(雲)から地面に向かって放電路が形成される。このステップトリーダ形成過程の時間間隔は例えば20ms程度である。そして、リターンストローク(帰還雷撃)形成過程では、ステップトリーダが地表近くまで進展してくると、それに対応して地面に集まってきた電荷からも放電路が伸びてゆく。そして両者が接触することによって、地面から形成された放電路を介して雷雲に向かって電荷(大地電荷)が進行し、大量の電気が一気に流れるリターンストローク(帰還雷撃)が起こり、強い電光と大きな音を発する。このリターンストローク形成過程の時間はおよそ数十μs程度である。ダートリーダ(矢型前駆)形成過程では、第一雷撃の後、雷雲から再び放電路が伸びてゆく。最初の雷撃が通った場所(放電路)は電気が流れやすい状態が残っているので、ステップトリーダの10倍以上の速度で下降する。このダートリーダが地表近くに達すると、同じように地面からの帰還雷撃と合流して2回目の着雷が起こる。このダートリーダ形成過程の時間間隔は数ms〜数十ms程度(例えば、1ms、2ms、40ms)である。
一方、多地点同時雷撃は、複数の箇所に着雷し、しかも各雷撃の発生間隔は非常に短いため、図3(a)に示されるように、人の眼には複数の筋の雷が同時に発生しているように見える。多地点同時雷撃の進展過程は、図3(b)に示されるように、例えば、第一雷撃のステップトリーダと、第一雷撃のリターンストロークと、多地点同時雷撃のステップトリーダと、多地点同時雷撃のリターンストロークと、第一雷撃の複数のダートリーダと、第一雷撃の複数のダートリーダと、により構成される。第一雷撃のステップトリーダ(先行放電)形成過程では、最初の雷撃発生時に絶縁破壊を起こしながら空(雲)から地面に向かって放電路が形成される。このステップトリーダ形成過程の時間間隔は例えば20ms程度である。そして、第一雷撃のリターンストローク(帰還雷撃)形成過程では、ステップトリーダが地表近くまで進展してくると、それに対応して地面に集まってきた電荷からも放電路が伸びてゆく。そして両者が接触することによって、地面から形成された放電路を介して雷雲に向かって電荷(大地電荷)が進行し、大量の電気が一気に流れるリターンストローク(帰還雷撃)が起こり、強い電光と大きな音を発する。このリターンストローク形成過程の時間は、通常、第一雷撃の場合で、およそ数十μs程度である。続いて、第一雷撃で形成された放電路を途中まで辿りながら多地点同時雷撃のステップトリーダが形成される。このステップトリーダ間の時間間隔は、多地点同時雷撃の場合、後述するように、30ms以上である。そして、多地点同時雷撃のリターンストローク(帰還雷撃)形成過程では、多地点同時雷撃のステップトリーダが地表近くまで進展してくると、それに対応して地面(第一雷撃の着雷位置とは異なる位置)に集まってきた電荷からも放電路が伸びてゆく。そして両者が接触することによって、地面から形成された放電路を介して雷雲に向かって電荷(大地電荷)が進行し、大量の電気が一気に流れるリターンストローク(帰還雷撃)が起こり、強い電光と大きな音を発する。次に、第一雷撃のダートリーダ(矢型前駆)形成過程では、第一雷撃及び多地点同時雷撃の後、雷雲から第一雷撃で形成された放電路に放電が再び伸びてゆく。第一雷撃が通った場所(放電路)は電気が流れやすい状態が残っているので、ステップトリーダの10倍以上の速度で下降する。このダートリーダが地表近くに達すると、同じように地面からの帰還雷撃と合流して第一雷撃とほぼ同じ位置に2回目の着雷が起こる。
なお、IEC62858の規格によれば、同一の落雷に含まれる雷撃は次のように定義されている。
(i)落雷は、単一の雷撃もしくは複数の雷撃からなる。
(ii)最初の雷撃が発生してから1秒以内に、10km以内で発生した雷撃のうち、雷撃どうしの間隔が500ms以下のものを同一の落雷に含まれる雷撃とする。
従って、IEC62858の定義に合致すれば、同一もしくは異なる雷の発生源からの雷撃の放電路の一部または全部が異なったとしても、落雷に含まれる複数の雷撃のうち、いくつかの雷撃が異なる場所に着雷したときには、それらの雷撃を多地点同時雷撃と呼ぶことができる。同一落雷に含まれる雷撃のうち、最初の雷撃を第一雷撃と呼び、それ以降に発生する雷撃を後続雷撃と呼ぶ。
本実施形態では、後述のアルゴリズムによって1つの落雷(複数の雷撃からなる)が多地点同時雷撃であるか否か判定している。つまり、当該アルゴリズムは、落雷位置標定システムの位置計算結果出力(雷撃位置標定結果出力)に対するフィルターとして用いることができる。
<落雷位置標定システムの構成>
図4は、本発明の実施形態による落雷位置標定システム1の概略構成例を示す機能ブロック図である。落雷位置標定システム1は、落雷位置標定装置10と、複数の各地に配置され雷撃の観測データを計測する複数の受信局140−1〜140−nと、を有している。落雷位置標定装置10と複数の受信局140−1〜140−nとはネットワーク150を介して接続されている。ネットワーク150は一例としてインタネットを用いても良いし、専用線を用いても良い。
落雷位置標定装置10は、必要な演算処理及び制御処理等を行う中央処理装置(プロセッサ)100と、データの入出力を行うための入出力装置110と、中央処理装置100での処理に必要なプログラムを格納するプログラムメモリ120と、中央処理装置100での処理対象となるデータまたは処理後のデータを格納する記憶装置130と、を備えている。
入出力装置110は、データを表示するための表示装置111やプリンタ(図示せず)等で構成される出力デバイスと、表示されたデータに対してメニューを選択するなどの操作を行うためのキーボード112、マウスなどのポインティングデバイス113と、を有している。
プログラムメモリ120は、各受信局から送信されてきた雷撃の観測データを用いて雷撃位置を標定する雷撃位置標定プログラム121と、雷撃位置標定プログラム121で標定された各雷撃が多地点同時雷撃か否かを判定する多地点同時雷撃判定プログラム122と、標定結果を表示装置111の画面上に出力する標定結果提示プログラム123と、を格納している。各処理プログラムは、プログラムコードとしてプログラムメモリ120に格納されており、中央処理装置100が各プログラムコードを実行することによって各処理が実現される。なお、本実施形態では、多地点同時雷撃判定プログラム122を落雷位置標定システム1内に設定しているが、当該システム1とは物理的に異なるコンピュータ内に設定しても良い。
記憶装置130は、複数の受信局140−1〜140−nのそれぞれの位置座標(GPSデータ)を格納する受信局座標データ131と、標定範囲(日本全国地図であっても良い)の地図データ132と、を格納している。なお、記憶装置130は、ネットワークを介して遠隔的に配置されているストレージシステムであってもよい。
以上に述べた処理プログラム・データ・各プログラム等は、CD−ROM、DVD−ROM、MO、フロッピー(登録商標)ディスク、USBメモリ等の種々の記録媒体に格納して提供することもできる。
<雷撃位置標定の原理概要>
現在、雷撃位置を標定する方法として、主に、MDF(Magnetic Direction Finder)方式、TOA(Time of Arrival)方式、及びMDF方式とTOA方式を組み合わせたIMPACT(Improved Accuracy from Combined Technology)方式の3つが提案されている。何れの方式を用いて雷撃位置を標定しても良い。以下、各方式の概要について簡単に説明する。
(1)MDF方式の動作原理概要
MDF方式では、各受信局(各観測点)におけるセンサが雷放電から放射された電磁波の伝搬方位を特定し、複数のセンサが検知した方位の交点を雷放電源とする方式である。センサには、直交ループアンテナが取り付けられており、これによって南北(N−S)と東西(E−W)方向の受信磁界信号強度比から電磁波の到来方向を特定する。ただし、直交ループアンテナによる到達方位の推定には、180度の不確定性が含まれる。
平板電界アンテナは、雷放電の極性を特定するために使われるほか、電磁波の到来方向を特定するためにも使用される。
MDF方式では、センサの方位合わせの精度が、位置標定精度に大きく影響する。方位合わせは、いわゆるGnomon(日時計)をセンサの上部に取り付け、センサの設置位置の緯度経度から、計算によって日時計によってできる影の方位と時刻を調べ、その方位に合わせる作業を、技術員が手作業で行う。このように日時計を利用するため、晴れ以外の日に方位合わせが行えないという課題はある。現在では、この方位合わせは、一定期間データをTOA方式で位置標定を行い、その後統計学的手法を用いて、センサの方位合わせを行うようになっている。
(2)TOA方式の動作原理
TOA方式では、異なる2地点に設置されているセンサにおいて雷放電が放出する電磁波の受信時刻差が一定な双曲線を回転楕円体上に描くという原理を応用したものである。最小で3局のセンサにおける電磁波の到達時刻が分かれば、雷放電源の位置の標定が可能である。
しかし、受信局が3局のみの場合、電磁波の受信時刻差が作る2つの双曲線の交点が2か所現れることが起こり得る。そのため、TOA方式だけで位置標定を行う場合、最低4局のセンサが必要となる。
(3)IMPACT方式の動作原理概要
図5は、2局のセンサのベースライン上に発生した落雷の位置標定を行った例を示している。雷撃時刻をT0とし、センサS1、S2間における雷放電が放出した電磁波の受信時刻を、それぞれT1、T2とすると、受信時刻差から、それぞれのセンサから雷撃点までの距離r1とr2を求めることができる。そして、センサS1、S2が推定した電磁波の到来方向を、それぞれθ1、θ2とする。半径r1、r2の円とθ1、θ2のベクトルが交差するようにT0を決定すると、雷撃点の位置を推定できる。
3局以上の場合は、方位、信号強度、到達時刻データから、統計的に最も誤差が少ないと推定される位置を算出する手法がとられ、最適化標定手法と呼ばれている。最適化計算においては、式(1)に示すように、到来方向、信号強度、到達時間差のデータの誤差総和を最小とする点が求められている。また、図6に示されるような標定された個々のデータの信頼性を示す誤差楕円もパラメータとして提供される。
Figure 2017181457
落雷位置標定システム1による各雷撃の位置標定には通常誤差がある。上記誤差楕円は、落雷があったとして標定された位置が統計学的に50%以上の確率(信頼度)で確からしいとされる範囲を示すものである。
<落雷位置の標定について>
図7は、多重雷撃及び多地点同時雷撃における位置標定について説明するための図である。図7において、各楕円は、標定された各雷撃の誤差楕円を示している。
落雷位置標定システム1によって標定された各雷撃が多重雷撃を構成する場合、図7(a)に示されるように、各雷撃の誤差楕円が重なり合う領域内において落雷点が決定される(例えば当該領域の中心を落雷点とすることができる)。なお、全ての雷撃の誤差楕円が重なり合う領域が無い場合(この場合、後述の多地点同時雷撃の条件に合致しないことが前提となる)には、第一雷撃の誤差楕円の領域内の例えば中心点を落雷点としてもよい。
一方、落雷位置標定システム1によって標定された各雷撃が多地点同時雷撃を構成する場合、図7(b)に示されるように、落雷点が複数存在する。従来の落雷位置標定システムでは、別の場所に着雷した雷撃は別の落雷として標定されていた。しかし、本実施形態による落雷位置標定システム1では、当該別の場所に着雷した雷撃は、一定条件の下、同一の落雷として標定される。例えば、図7(b)では、4つの雷撃がほぼ同一位置に着雷し、第一雷撃から枝分かれした後続雷撃が当該4つの雷撃の着雷位置から離れた別の場所に着雷している。この場合、当該4つの雷撃の誤差楕円が重なり合う領域内に1つの落雷点が決定され、また、第一雷撃から枝分かれした後続雷撃が着雷した別の場所も落雷点として決定される。つまり、多地点同時雷撃の場合、複数の位置が落雷点として標定されることになる。
<落雷位置標定処理の詳細>
図8は、本発明の実施形態による落雷位置標定システム1における落雷位置標定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。落雷は、前述のように、単一の雷撃若しくは複数の雷撃によって構成される。そして、1つの落雷については、最初の雷撃の位置によって落雷位置が標定され、1つの落雷に含まれる全ての雷撃によって落雷の多重度が決定される。
(i)ステップ101
雷撃があると、各観測点に設置された各受信局140−1〜nは、雷撃によって発生した雷放電による電磁波を検知する。
(ii)ステップ102
落雷位置標定装置10は、通信デバイス(図示せず)を用いて、各受信局(各観測点)140−1〜140−nから雷撃の観測データを受信する。観測データには、各受信局を識別するための識別情報(受信局ID)と雷放電による電磁波の検知(観測)時刻の情報や電磁波の伝搬方位の情報が含まれる。なお、各受信局140−1〜140−nは、受信局IDの代わりに、落雷位置標定装置10と該当する受信局との距離の情報を観測データとして送信しても良い。
(iii)ステップ103
雷撃位置標定プログラム121は、受信した全観測データを用いて、各雷撃の位置を標定する。標定方式は、上述の3つの方式の何れを用いても良いが、これらの方式以外のものであっても良い。なお、この段階では、観測した雷撃が多重雷撃を構成するものか多地点同時雷撃を構成するものかは分からない。
(iv)ステップ104
雷撃位置標定プログラム121は、ステップ103で標定された雷撃データを、最初の雷撃の発生から1秒以内に発生したもので分類する。最初の雷撃から1秒を過ぎて発生した雷撃は、最初の雷撃グループには含まれず(最初の落雷を構成する雷撃ではない)、次の雷撃グループ(次の1秒間に含まれる雷撃のグループ)を構成する最初の雷撃となる。従って、例えば数秒間以上に亘って落雷があった場合、複数の雷撃グループが生成されることになる。
(v)ステップ105
多地点同時雷撃判定プログラム122は、雷撃のグループ(例えば、1秒間)ごとに、当該グループに含まれる各雷撃が多地点同時雷撃を構成するか判定する。ステップ105の詳細は図9を用いて説明する。ステップ105の処理によって、対象の雷撃グループに含まれる雷撃が多重雷撃を構成するか多地点同時雷撃を構成するか判断される。
(vi)ステップ106
雷撃位置標定プログラム121は、ステップ103の処理結果とステップ105の処理結果とに基づいて、落雷のエネルギーを算定(推定)する。多地点同時雷撃の場合、同一の位置に着雷したと判定された雷撃の電流値、及び枝分かれして別の位置に着雷した雷撃の電流値の総和に基づいて、対象の落雷のエネルギーを算出(推定)する。例えば、地表面と地球の電離層の下面との電位が約300kVとすると、落雷の総エネルギーは、地表面と電離層下面との電位と総電流値との乗算によって求まる。また、雷撃位置標定プログラム121は、各雷撃のエネルギーも求めることができる。
さらに、雷撃位置標定プログラム121は、落雷位置と落雷の多重度を決定する。具体的には、落雷位置は、最初の雷撃が発生した位置であり、図7を用いて説明したように、多重雷撃の場合、基本的に複数の雷撃の誤差楕円が重なり合う領域に設定される。多地点同時雷撃の場合、落雷の位置は、本流の複数の雷撃の誤差楕円が重なり合う領域に設定された場所と、枝分かれした雷撃が着雷した場所に設定される。落雷の多重度は、1つの落雷に含まれる雷撃の数となる。従って、多地点同時雷撃における枝分かれした雷撃を1つの落雷に含まれるものか否かの判断を誤ると落雷の多重度の情報も誤りとなるが、本実施形態では、枝分かれした雷撃か否かの判定を行うので、落雷の多重度について正しい情報を提供することができるようになる。
(vii)ステップ107
標定結果提示プログラム123は、表示装置111の表示画面上に標定結果(例えば、落雷位置、多重度、落雷のエネルギー、各雷撃の電流値、落雷の電流値、標定精度50%以上の領域の情報等)を表示する。なお、図示しないプリンタによって標定結果を印刷するようにしてもよい。
<多地点同時雷撃判定処理(ステップ105)の詳細>
図9は、本発明の実施形態の落雷位置標定システム1における多地点同時雷撃判定処理(ステップ105)の詳細を説明するためのフローチャートである。当該フローチャートにおけるステップ201からステップ206までの処理は、ステップ104で分類された雷撃グループ毎に、かつ各雷撃グループに含まれる雷撃の全てに対して実行される。
まず、例えば、最初の雷撃グループ(i=1)が選択され、当該最初の雷撃グループに含まれる雷撃(j=1)に対して処理が実行される。
(i)ステップ201
多地点同時雷撃判定プログラム122は、処理対象の雷撃と直前の雷撃との間に30ms以上の発生時間差があるか判断する。各雷撃の発生時刻はステップ103において標定されているため、処理対象の雷撃の発生時刻とその直前の雷撃の発生時刻から両者の発生時間差は容易に算出することができる。発生時間差が30ms以上の場合(ステップ201でYesの場合)、処理はステップ202に移行する。発生時間差が30ms未満の場合(ステップ201でNoの場合)、処理はステップ206に移行する。ここで、30msという閾値は、発明者らが雷撃の観測結果に鑑みて導き出した値(例)である。
なお、処理対象の雷撃が当該雷撃グループにおける第一雷撃(最初の雷撃)に相当する場合、処理は直ぐにステップ206に移行し、当該雷撃データが多重雷撃を構成するものとして取り扱っても良い。
(ii)ステップ202
多地点同時雷撃判定プログラム122は、処理対象の雷撃(後続雷撃)の波高値(電流値)と第一雷撃(最初の雷撃)の波高値(電流値)処理対象の雷撃の比率(後続雷撃の波高値/第一雷撃の波高値)が80%以上であるか否か判断する。当該比率が80%以上である場合(ステップ202でYesの場合)、処理はステップ203に移行する。当該比率が80%未満である場合(ステップ202でNoの場合)、処理はステップ206に移行する。
(iii)ステップ203
多地点同時雷撃判定プログラム122は、処理対象の雷撃の標定位置と第一雷撃の標定位置との距離が1km以内であるか判断する。当該距離が1km以内である場合(ステップ203でYesの場合)、処理はステップ204に移行する。当該距離が1kmより大きい場合(ステップ203でNoの場合)、処理はステップ206に移行する。ここで、1kmという閾値は、発明者らが雷撃の観測結果に鑑みて導き出した値(例)である。
(iv)ステップ204
多地点同時雷撃判定プログラム122は、処理対象の雷撃の誤差楕円が他の雷撃の誤差楕円と重なっているか否か判断する。処理対象の雷撃の誤差楕円が他の雷撃の誤差楕円と重なっている場合(ステップ204でYesの場合)、処理はステップ206に移行する。処理対象の雷撃の誤差楕円が他の雷撃の誤差楕円と重なっていない場合(ステップ204でNoの場合)、処理はステップ205に移行する。
(v)ステップ205
多地点同時雷撃判定プログラム122は、処理対象の雷撃が多地点同時雷撃を構成する雷撃であると判定する。
(vi)ステップ206
多地点同時雷撃判定プログラム122は、処理対象の雷撃が多重雷撃を構成する雷撃であると判定する。
<まとめ>
(i)本発明の実施形態による落雷位置標定システムでは、第一雷撃から1秒以内に発生した雷撃を特定する処理と、受信局から受信した観測データを用いて、複数の雷撃を標定する処理と、処理対象の雷撃と直前の雷撃との発生時間差、処理対象の雷撃と第一雷撃との波高値の比率、及び処理対象の雷撃と第一雷撃との距離に基づいて、処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する処理と、判定する処理による判定結果と共に、落雷の標定結果を出力する処理と、を実行する。このような処理を実行することにより、雷撃が多地点同時雷撃か否か判断することができ、落雷をより正確に標定することができるようになる。
より具体的には、処理対象の雷撃の直前の雷撃との発生時間差が30ms以上であるか否か判断する。また、処理対象の雷撃の第一雷撃との波高値の比率が80%以上であるか否か判断する。さらに、処理対象の雷撃の第一雷撃との距離が1km以内か否か判断する。また、処理対象の雷撃の誤差楕円が他の雷撃の誤差楕円と重なっているか否か判断する。これらの処理により、雷撃か多地点同時雷撃か否か正確に判定することが可能となる。
また、当該落雷位置標定システムでは、落雷のエネルギーを算出し、算出した落雷のエネルギーを出力するようにしている。多地点同時雷撃は、同一の落雷として処理すべき雷撃であるが、ほぼ同一位置に着雷する他の雷撃とは異なり、別の場所に着雷する。このため、別の落雷として処理すると、落雷のエネルギー値に影響を与えることになる。本実施形態では多地点同時雷撃か否か判断し、その判断に基づいて落雷のエネルギーを計算しているので、信頼度の高い落雷のエネルギー値を提供することができるようになる。
(ii)本発明は、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD−RW、CD−R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できる。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した方法に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益である場合もある。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本発明は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点に於いて限定の為ではなく説明の為である。本分野にスキルのある者には、本発明を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
加えて、本技術分野の通常の知識を有する者には、本発明のその他の実装がここに開示された本発明の明細書及び実施形態の考察から明らかになる。記述された実施形態の多様な態様及び/又はコンポーネントは、単独又は如何なる組み合わせでも使用することが出来る。
1 落雷位置標定システム
10 落雷位置標定装置
110 入出力装置
111 表示装置
112 キーボード
113 ポインティングデバイス
100 中央処理装置
120 プログラムメモリ
121 雷撃位置標定プログラム
122 多地点同時雷撃判定プログラム
123 標定結果提示プログラム
130 記憶装置
131 受信局座標データ
132 地図データ
140−1乃至140−n 受信局
150 ネットワーク

Claims (8)

  1. 落雷による電磁波を検知し、観測データを送信する複数の受信局と、
    前記複数の受信局のそれぞれからの前記観測データを受信し、落雷位置を標定する落雷位置標定装置と、を有し、
    前記落雷位置標定装置は、
    第一雷撃から1秒以内に発生した雷撃を特定する処理と、
    前記受信局から受信した前記観測データを用いて、複数の雷撃を標定する処理と、
    処理対象の雷撃と直前の雷撃との発生時間差、処理対象の雷撃と前記第一雷撃との波高値の比率、及び処理対象の雷撃と前記第一雷撃との距離に基づいて、前記処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する処理と、
    前記判定する処理による判定結果と共に、落雷の標定結果を出力する処理と、
    を実行する、落雷位置標定システム。
  2. 請求項1において、
    前記落雷位置標定装置は、前記判定する処理において、前記処理対象の雷撃と前記直前の雷撃との発生時間差が30ms以上であるか否かによって前記処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する、落雷位置標定システム。
  3. 請求項1又は2において、
    前記落雷位置標定装置は、前記判定する処理において、前記処理対象の雷撃と前記第一雷撃との波高値の比率が80%以上であるか否かによって前記処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する、落雷位置標定システム。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項において、
    前記落雷位置標定装置は、前記判定する処理において、前記処理対象の雷撃と前記第一雷撃との距離が1km以内か否かによって前記処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する、落雷位置標定システム。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項において、
    前記落雷位置標定装置は、前記判定する処理において、さらに、前記処理対象の雷撃の誤差楕円が他の雷撃の誤差楕円と重なっているか否かによって前記処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する、落雷位置標定システム。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項において、
    前記落雷位置標定装置は、さらに、前記判定結果に基づいて、前記落雷のエネルギーを算出し、前記出力する処理において前記算出した落雷のエネルギーを出力する、落雷位置標定システム。
  7. 落雷による電磁波を検知して観測データを送信する複数の受信局のそれぞれからの前記観測データを受信し、落雷位置を標定する落雷位置標定装置であって、
    前記落雷位置を標定する処理を実行するプロセッサを備え、
    前記プロセッサは、
    第一雷撃から1秒以内に発生した雷撃を特定する処理と、
    前記受信局から受信した前記観測データを用いて、複数の雷撃を標定する処理と、
    処理対象の雷撃と直前の雷撃との発生時間差、処理対象の雷撃と前記第一雷撃との波高値の比率、及び処理対象の雷撃と前記第一雷撃との距離に基づいて、前記処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定する処理と、
    前記判定する処理による判定結果と共に、落雷の標定結果を出力する処理と、
    を実行する、落雷位置標定装置。
  8. 落雷による電磁波を検知して観測データを送信する複数の受信局のそれぞれからの前記観測データを用いて落雷位置を標定する落雷位置標定方法であって、
    前記落雷位置を標定する処理を実行するプロセッサが、第一雷撃から1秒以内に発生した雷撃を特定することと、
    前記プロセッサが、前記受信局から受信した前記観測データを用いて、複数の雷撃を標定することと、
    前記プロセッサが、処理対象の雷撃と直前の雷撃との発生時間差、処理対象の雷撃と前記第一雷撃との波高値の比率、及び処理対象の雷撃と前記第一雷撃との距離に基づいて、前記処理対象の雷撃が多地点同時雷撃であるか判定することと、
    前記プロセッサが、前記多地点同時雷撃に関する判定結果と共に、落雷の標定結果を出力することと、
    を含む、落雷位置標定方法。
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