JP2017183076A - 絶縁電線 - Google Patents

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齋藤 秀明
Hideaki Saito
秀明 齋藤
吉田 健吾
Kengo Yoshida
健吾 吉田
田村 康
Yasushi Tamura
康 田村
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Abstract

【課題】本発明は、電線間の融着性を高めることができる絶縁電線を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面側に直接又は他の層を介して積層され、加熱により膨張する膨張層とを備え、上記膨張層が、フェノキシ樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルとを有し、上記フェノキシ樹脂が、同一又は異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有し、上記膨張層の加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下である。当該絶縁電線は、上記他の層として絶縁層をさらに備えるとよい。上記フェノキシ樹脂が、同一分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有する共重合体であるとよい。上記マトリックスが、多官能エポキシ化合物をさらに含むとよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線に関する。
絶縁電線を用いて例えばモーター用コイルを製造する場合、コアに電線を捲回した後、電線同士の隙間及び電線とコアとの隙間にワニスを含浸させて電線間及び電線−コア間を固着させるのが一般的である。しかしながら、ワニスの完全な含浸を担保することは難しく、電線の固定が部分的に不十分となるおそれがある。また、ワニスの含浸により工数が増え、コイルが高価となるおそれがある。
これに対し、モーター製造工程の簡略化のために導体の外周に互いに融着し合う融着層を設けた自己融着性絶縁電線が発案されている(国際公開第2015/121999号参照)。
国際公開第2015/121999号
しかしながら、上記公報に記載の自己融着性絶縁電線は、電線の捲回密度が小さいと、電線間又は電線−コア間の融着が不十分となるおそれがあり、融着性を高めるために融着層を厚くすると捲線の密度が低下してコイルの体積効率が低くなるおそれがある。また、上記公報に記載の自己融着性絶縁電線は、電線の熱融着層を厚くすると、電線をモーターに挿入する際の作業性が悪化するおそれがある。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、電線間の融着性を高めることができる自己融着性の絶縁電線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面側に直接又は他の層を介して積層され、加熱により膨張する膨張層とを備え、上記膨張層が、フェノキシ樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルとを有し、上記フェノキシ樹脂が、同一又は異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有し、上記膨張層の加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下である。
本発明の絶縁電線は、電線間の融着性を高めることができる。
本発明の一実施形態に係る絶縁電線を示す模式的断面図である。 図1の絶縁電線とは異なる実施形態に係る絶縁電線を示す模式的断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面側に直接又は他の層を介して積層され、加熱により膨張する膨張層とを備え、上記膨張層が、フェノキシ樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルとを有し、上記フェノキシ樹脂が、同一又は異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有し、上記膨張層の加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下である。
当該絶縁電線は、膨張層がフェノキシ樹脂を主成分とするマトリックスを有しており、この膨張層は自己融着性を有する。特に、当該絶縁電線は、上記フェノキシ樹脂が、同一又は異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有しているので、自己融着性を有する膨張層を押出成形によって形成し易い。そのため、当該絶縁電線は、押出成形によって成形された場合に化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルをマトリックス中に均一分散させ、これにより膨張層を全面的に略均一に膨張させることができる。当該絶縁電線は、このように膨張層の均一膨張性に優れると共に、加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下であるので、特にコイルを形成する場合の膨張層同士の融着の信頼性を確保しつつ、融着後の絶縁性を向上することができる。
当該絶縁電線は、上記他の層として絶縁層をさらに備えるとよい。このように、上記導体及び膨張層間に絶縁層をさらに備えることによって、絶縁性を容易かつ確実に高めることができる。
上記フェノキシ樹脂が、同一分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有する共重合体であるとよい。このように、上記フェノキシ樹脂が、同一分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有する共重合体であることによって、押出成形された場合にマトリックス中に化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルをより均一分散させ易い。
上記マトリックスが、多官能エポキシ化合物をさらに含むとよい。このように、上記マトリックスが多官能エポキシ化合物をさらに含むことによって、この多官能エポキシ化合物を上記フェノキシ樹脂と架橋して膨張層同士をさらに強固に融着することができる。
上記フェノキシ樹脂100質量部に対する上記多官能エポキシ化合物の含有割合としては、5質量部以上80質量部以下が好ましい。このように、上記フェノキシ樹脂100質量部に対する上記多官能エポキシ化合物の含有割合が上記範囲内であることによって、膨張層同士の融着性をさらに高めることができる。
上記化学発泡剤の分解温度又は上記熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度としては、150℃以上250℃以下が好ましい。このように、上記化学発泡剤の分解温度又は上記熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度が上記範囲内であることによって、例えば押出成形の際に上記化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルが膨張することを防止すると共に、この押出成形後の加熱によって膨張層同士を膨張させつつ融着させることが容易である。従って、膨張層同士の融着性をさらに高めることができる。
なお、本発明において、「主成分」とは、最も含有量の多い成分をいい、例えば50質量%以上含有される成分をいう。また、「平均厚さ膨張率」とは、加熱による膨張後の膨張層の平均厚さの加熱前の膨張層の平均厚さに対する比を意味する。「熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度」とは、熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の分解温度をいい、具体的には内部発泡剤からのガスの発生が確認される温度又は内部発泡剤の体積が膨張前(常温:25℃)の1.05倍となる温度をいう。また、「化学発泡剤の分解温度」とは、化学発泡剤からのガスの発生が確認される温度又は化学発泡剤の体積が膨張前(常温:25℃)の1.05倍となる温度をいう。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る絶縁電線の一つの実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
[第一実施形態]
<絶縁電線>
図1の絶縁電線1は、線状の導体2と、この導体2の外周面側に直接積層され、加熱により膨張する膨張層3とを備える。膨張層3は、当該絶縁戦線の最外層を構成する。膨張層3は、フェノキシ樹脂を主成分とするマトリックス4と、このマトリックス4中に分散する発泡剤5とを有する。上記フェノキシ樹脂は、同一又は異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有する。また、発泡剤5としては、化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルが用いられる。つまり、当該絶縁電線1は、マトリックス4中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルを有する。膨張層3の加熱後の平均厚さ膨張率は、1.1倍以上5倍以下とされている。
当該絶縁電線1は、膨張層3がフェノキシ樹脂を主成分とするマトリックス4を有しており、この膨張層3は自己融着性を有する。特に、当該絶縁電線1は、上記フェノキシ樹脂が、同一又は異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有しているので、自己融着性を有する膨張層3を押出成形によって形成し易い。そのため、当該絶縁電線1は、押出成形によって成形された場合に化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルをマトリックス中に均一分散させ、これにより膨張層3を全面的に略均一に膨張させることができる。当該絶縁電線1は、このように膨張層3の均一膨張性に優れると共に、加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下であるので、特にコイルを形成する場合の膨張層3同士の融着の信頼性を確保しつつ、融着後の絶縁性を向上することができる。
(導体)
導体2は、例えば断面が円形状の丸線とされるが、断面が方形状の角線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
導体2の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体2は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体2の平均断面積(軸と垂直な断面の平均断面積)の下限としては、0.01mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。一方、導体2の平均断面積の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。導体2の平均断面積が上記下限に満たないと、導体2に対する膨張層3の体積が大きくなり、当該絶縁電線1を用いたコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。一方、導体2の平均断面積が上記上限を超えると、当該絶縁電線1が不必要に大径化するおそれがある。なお、「導体の平均断面積」とは、導体の軸と垂直な任意の10個の断面における断面積の平均値をいう。
(膨張層)
膨張層3は、上述のようにフェノキシ樹脂を主成分とするマトリックス4と、マトリックス4中に分散する発泡剤5とを有する。膨張層3は、加熱されることで発泡剤5が膨張することにより発泡し、全体的に膨張する。膨張層3は、当該絶縁電線1が押出成形によって成形される場合、押出成形の際の加熱温度では膨張せず、この押出成形後に加熱されることで膨張することが好ましい。このように、膨張層3が、押出成形の際の加熱温度では膨張せず押出成形後の加熱によって膨張することで、押出成形後の加熱により膨張層3同士を膨張させつつ融着させることが容易であり、これにより膨張層3同士の融着性をより高めることができる。
膨張層3の加熱前(押出成形後における加熱前)の平均厚さの下限としては、30μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、膨張層3の加熱前の平均厚さの上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。膨張層3の加熱前の平均厚さが上記下限に満たないと、当該絶縁電線1同士の固着が不十分となるおそれがある。逆に、膨張層3の加熱前の平均厚さが上記上限を超えると、当該絶縁電線1を用いたコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
膨張層3の加熱後(押出成形後における加熱後)の平均厚さ膨張率の下限としては、1.1倍であり、2倍が好ましい。一方、膨張層3の加熱後の平均厚さ膨張率の上限としては、5倍であり、4倍が好ましい。膨張層3の加熱後の平均厚さ膨張率が上記下限に満たないと、当該絶縁電線1を捲線加工したときに、隣接し合う膨張層3同士の融着が不十分となるおそれがある。逆に、膨張層3の加熱後の平均厚さ膨張率が上記上限を超えると、膨張層3の密度が不十分となることにより却って当該絶縁電線1の強度が不十分となるおそれがある。膨張層3の膨張率は発泡剤5の種類及び量、並びに発泡剤5の発泡開始温度でのマトリックス4の弾性率を選択することにより制御できる。
加熱による発泡剤5の発泡によって膨張層3に形成される空孔の平均径の下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、上記膨張層3に形成される空孔の平均径の上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。上記膨張層3に形成される空孔の平均径が上記下限に満たないと、十分な膨張率が得られないおそれがある。逆に、上記膨張層3に形成される空孔の平均径が上記上限を超えると、膨張層3が不必要に厚くなるおそれや、膨張層3の膨張が不均一になるおそれがある。なお、「空孔の平均径」とは、細孔直径分布測定装置(例えばPorus Materials社の「多孔質材料自動細孔径分布測定システム」)により断面を測定することにより得られる値をいう。
膨張層3の加熱後の空隙率の下限としては、10%が好ましく、50%がより好ましい。一方、膨張層3の加熱後の空隙率の上限としては、80%が好ましく、70%がより好ましい。膨張層3の加熱後の空隙率が上記下限に満たないと、隣接する膨張層3間の当接圧力が不足して融着が不十分となるおそれがある。逆に、膨張層3の加熱後の空隙率が上記上限を超えると、膨張した後の膨張層3の強度が不十分となるおそれがある。なお、「空隙率」とは、膨張層の体積に対する膨張層内の気体の容積の百分率であり、膨張層のマトリックス及び熱膨張性マイクロカプセルの外殻の含有質量と密度とから算出される実体積をV0、膨張層の空隙を含むみかけの体積をV1とするとき、(V1−V0)/V1×100で算出される量をいう。
〈マトリックス〉
マトリックス4は、上述のようにフェノキシ樹脂を主成分としており、このフェノキシ樹脂は同一又は異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有している。当該絶縁電線1が押出成形によって成形される場合、マトリックス4はこの押出成形後の状態で自己融着性を有する。
マトリックス4における上記フェノキシ樹脂の含有割合の下限としては、60質量%が好ましく、65質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、95質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。上記含有割合が上記下限に満たないと、膨張層3の自己融着性が不十分となるおそれがある。逆に、上記含有割合が上記上限を超えると、マトリックス4中に後述する多官能エポキシ化合物を十分に含有させることができず、膨張層3同士の融着性を十分に向上することができないおそれがある。
上記フェノキシ樹脂は、異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有していてもよいが、同一分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有する共重合体であることが好ましい。上記フェノキシ樹脂が同一分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有する共重合体である場合、押出成形によって膨張層3を形成し易く、押出成形によってマトリックス4中に発泡剤5を均一分散させ易い。そのため、当該絶縁電線1は、上記フェノキシ樹脂が同一分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有する共重合体であることによって、膨張層3を全面的に均一に膨張させて膨張層3同士の融着性をより高めることができる。
マトリックス4は、多官能エポキシ化合物をさらに含むことが好ましい。当該絶縁電線1は、マトリックス4が多官能エポキシ化合物を含むことによって、押出成形後の加熱時に上記フェノキシ樹脂及び多官能エポキシ化合物を架橋させることができる。つまり、当該絶縁電線1は、マトリックス4に多官能エポキシ化合物を含む場合、押出成形後の状態では上記フェノキシ樹脂及び多官能エポキシ化合物は架橋されていない一方、押出成形後に加熱することで膨張層3を膨張させて膨張層3同士を強固に融着させると同時に上記フェノキシ樹脂及び多官能エポキシ化合物を架橋させることができる。そのため、当該絶縁電線1は、マトリックス4が多官能エポキシ化合物を有することによって、上記フェノキシ樹脂を一部熱硬化タイプとすることで膨張層3同士をさらに強固に融着することができる。
上記多官能エポキシ化合物としては、例えばビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記フェノキシ樹脂100質量部に対する上記多官能エポキシ化合物の含有割合の下限としては、5質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、80質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。上記含有割合が上記下限に満たないと、上記フェノキシ樹脂及び多官能エポキシ化合物を十分に架橋させることができず、膨張層3同士の融着性が十分に高まらないおそれがある。逆に、上記含有割合が上記上限を超えると、マトリックス4におけるフェノキシ樹脂の含有割合が不足して、膨張層3の自己融着性が不十分となるおそれがある。
なお、マトリックス4には、上記多官能エポキシ化合物に加え、架橋促進剤を含んでいてもよい。この架橋促進剤としては、例えばアミン類、イミダゾール類、芳香族スルホニウム塩、ジアザビシクロウンデセン塩等が挙げられる。
また、マトリックス4は、上記多官能エポキシ化合物に代えて又は上記多官能エポキシ化合物と共に、架橋剤として、例えばメラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート等を含んでいてもよい。
さらに、マトリックス4は、例えば共重合ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルフォン、半芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。
発泡剤5の発泡開始温度(熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度又は化学発泡剤の分解温度)におけるマトリックス4の弾性率の下限としては、1kPaが好ましい。発泡剤5の発泡開始温度におけるマトリックス4の弾性率が上記下限に満たないと、膨張時に膨張層3が必要以上に流動して膨張層3の形状が不均一となるおそれがある。なお、「マトリックスの弾性率」とは、JIS−K−6868−2(1999)に準拠して測定されるせん断弾性率を意味する。
〈発泡剤〉
発泡剤5としては、上述のように化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルが用いられる。当該絶縁電線は、発泡剤5がマトリックス4中に均一分散されており、発泡剤5の発泡によって膨張層3が略均一に膨張する。
発泡剤5の膨張層3における含有率の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。一方、発泡剤5の膨張層3における含有率の上限としては、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。発泡剤5の膨張層3における含有率が上記下限に満たないと、膨張層3の膨張率が小さく、当該絶縁電線1同士の固着が不十分となるおそれがある。逆に、発泡剤5の膨張層3における含有率が上記上限を超えると、相対的にマトリックス4が少なくなることにより、膨張層3の強度及び融着性が不十分となるおそれがある。
〈化学発泡剤〉
上記化学発泡剤は、加熱することによって分解して、例えば窒素ガス、炭酸ガス、一酸化炭素、アンモニアガス等を発生するものであり、有機発泡剤又は無機発泡剤が使用できる。
上記有機発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(A.D.C.A)、アゾビスイソブチロニトリル(A.I.B.N)等のアゾ系発泡剤、例えばジニトロソペンタメチレンテトラミン(D.P.T)、N,N’ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド(D.N.D.M.T.A)等のニトロソ系発泡剤、例えばP−トルエンスルホニルヒドラジド(T.S.H)、P,P−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(O.B.S.H)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(B.S.H)等のヒドラジド系、他にはトリヒドラジノトリアジン(T.H.T)、アセトン−P−スルホニルヒドラゾンなどが例示され、これらを単独で、又は二種類以上合わせて使用できる。
また、上記無機発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム、ソジウムボロンハイドライド、シリコンオキシハイドライド等が例示される。一般的に無機発泡剤は、ガス発生速度が有機発泡剤より緩慢でありガス発生の調整が難しい。そのため、上記化学発泡剤としては、有機発泡剤が好ましい。
化学発泡剤の分解温度の下限としては、150℃が好ましく、170℃がより好ましい。一方、化学発泡剤の分解温度の上限としては、250℃が好ましく、200℃がより好ましい。化学発泡剤の分解温度が上記下限に満たないと、例えば押出成形される際の加熱温度で化学発泡剤が膨張してしまい、膨張層3を膨張させつつ膨張層3同士を融着させ難くなるおそれがあり、その結果膨張層3同士の融着性を十分に高められないおそれがある。逆に、化学発泡剤の分解温度が上記上限を超えると、膨張層3を膨張させるために必要なエネルギーコストが過大となるおそれがあると共に、膨張層3を膨張させる際にコイル以外のモーター部品に過剰な熱負荷がかかり悪影響が出るおそれがある。
膨張層3には、化学発泡剤と共に、発泡助剤を配合してもよい。発泡助剤としては、化学発泡剤の熱分解を促進するものであれば特に限定されず、例えば加硫促進剤、充填剤、加硫促進助剤、PVC用安定剤、老化防止剤、加硫剤、尿素化合物等が挙げられる。このような発泡助剤は、化学発泡剤の分解を促進し、発泡温度を低下させる。
加硫促進剤としては、例えばグアジニン系、アルデヒド−アンモニア系、スルフェンアミド系、チウラム系、ザンテート系、アルデヒド−アミン系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系のもの等が挙げられる。充填剤としては、例えばシリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛、塩基性炭酸鉛、水酸化カルシウム、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ジエチレングルコール、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、有機アミン等が挙げられる。PVC用安定剤としては、例えば三塩基性硫酸鉛、ジブチルすずジラウレート、ジブチルすずジマレート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。老化防止剤としては、例えばナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、P−フェニレン系、キノリン系、モノフェノール系、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、亜りん酸エステル系のもの等が挙げられる。加硫剤としては、例えばタイク、硫黄安息香酸アンモニウム等が挙げられる。その他薬品としては、無水フタル酸、サリチル酸、安息香酸、三酸化アンチモン、白色ワセリン、酸化チタン、酸化カドミウム、ホウ砂、グリセリン、ジブチルチンジマレート等が挙げられる。発泡助剤としては、これらの中でも、亜鉛華、三塩基性硫酸鉛、及び各種加硫促進剤が好ましい。
これらの発泡助剤の化学発泡剤100質量部に対する配合割合の下限としては、5質量部が好ましく、50質量部がより好ましい。一方、上記発泡助剤の配合割合の上限としては、200質量部が好ましく、150質量部がより好ましい。上記発泡助剤の配合割合が上記下限に満たないと、化学発泡剤を分解させる効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記発泡助剤の配合割合が上記上限を超えると、当該絶縁電線1の製造時や保管時等に膨張層3が意図せず膨張してしまうおそれがある。
〈熱膨張性マイクロカプセル〉
上記熱膨張性マイクロカプセルは、内部発泡剤からなる芯材(内包物)と、この芯材を包む外殻とを有し、芯材の膨張によって外殻が膨張する。
熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤は、加熱により膨張又は気体を発生するものであればよく、その原理は問わない。熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤としては、例えば低沸点液体、化学発泡剤及びこれらの混合物を使用することができる。
上記低沸点液体としては、例えばブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等のアルカンや、トリクロロフルオロメタン等のフレオン類などが好適に用いられる。
上記化学発泡剤としては、加熱によりNガスを発生するアゾビスイソブチロニトリル等の熱分解性を有する物質が好適に用いられる。
熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度(熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の膨張開始温度)、つまり低沸点液体の沸点又は化学発泡剤の熱分解温度としては、後述する熱膨張性マイクロカプセルの外殻の軟化温度以上とされる。
より詳しくは、熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度の下限としては、150℃が好ましく、170℃がより好ましい。一方、熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度の上限としては、250℃が好ましく、200℃がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度が上記下限に満たないと、例えば押出成形される際の加熱温度で熱膨張性マイクロカプセルが膨張してしまい、膨張層3を膨張させつつ膨張層3同士を融着させ難くなるおそれがあり、その結果膨張層3同士の融着性を十分に高められないおそれがある。逆に、熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度が上記上限を超えると、膨張層3を膨張させるために必要なエネルギーコストが過大となるおそれがあると共に、膨張層3を膨張させる際にコイル以外のモーター部品に過剰な熱負荷がかかり悪影響が出るおそれがある。
一方、熱膨張性マイクロカプセルの外殻は、上記内部発泡剤の発泡時に破断することなく膨張し、発生したガスを包含するマイクロバルーンを形成できる延伸性を有する材質から形成される。この熱膨張性マイクロカプセルの外殻を形成する材質としては、通常は、熱可塑性樹脂等の高分子を主成分とする樹脂組成物が用いられる。
熱膨張性マイクロカプセルの外殻の主成分とされる熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリレート、メタアクリレート、スチレン等の単量体から形成された重合体、あるいは2種以上の単量体から形成された共重合体が好適に用いられる。好ましい熱可塑性樹脂の一例としては、アクリロニトリル系共重合体が挙げられ、この場合の熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度は、150℃以上250℃以下とされる。
加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径の下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径の上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記下限に満たないと、十分な膨張率が得られないおそれがある。逆に、加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記上限を超えると、膨張層3が不必要に厚くなるおそれや、膨張層3の膨張が不均一になるおそれがある。なお、熱膨張性マイクロカプセルの「平均径」とは、熱膨張性マイクロカプセルの10以上のサンプルを顕微鏡観察した際の平面視における最大径とこの最大径に直交する方向の径との平均値をいう。
熱膨張性マイクロカプセルの平均径の膨張層3の平均厚さに対する比の下限としては、1/16が好ましく、1/8がより好ましい。一方、熱膨張性マイクロカプセルの平均径の膨張層3の平均厚さに対する比の下限としては、9/10が好ましく、8/10がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記下限に満たないと、外殻の厚さが不足して膨張時に破れるおそれや、内容積が小さくなり発泡剤が不足して十分に膨張できないおそれがある。逆に、熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記上限を超えると、熱膨張性マイクロカプセルがマトリックス4から突出して膨張層3を十分に膨張させられないおそれや、膨張層3が部分的に膨張して均一に膨張できないおそれがある。
熱膨張性マイクロカプセルの膨張率の下限としては、3倍が好ましく、5倍がより好ましい。一方、熱膨張性マイクロカプセルの膨張率の上限としては、20倍が好ましく、10倍がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの膨張率が上記下限に満たないと、膨張層3の膨張率が不十分となるおそれがある。逆に、熱膨張性マイクロカプセルの膨張率が上記上限を超えると、膨張層3のマトリックス4が熱膨張性マイクロカプセルに追従することができず、膨張層3を全体的に膨張させられないおそれがある。なお、熱膨張性マイクロカプセルの「膨張率」とは、熱膨張性マイクロカプセルの加熱前の平均径に対する加熱時の平均径の最大値の比をいう。
<絶縁電線の製造方法>
当該絶縁電線1は、導体2の外周面側に膨張層3を押出成形することによって製造することができる。当該絶縁電線の製造方法は、膨張層形成用組成物を調製する調製工程と、上記調製工程で調製した膨張層形成用組成物を導体2の外周面側に押出す押出工程とを備える。
(調製工程)
上記調製工程では、膨張層形成用組成物をバンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸混練押出機、ロール等の混練機を用いて混練する。上記調製工程では、マトリックス4を構成する上述のフェノキシ樹脂のガラス転移温度以上に加熱し、膨張層形成用組成物を溶融状態とする。なお、この調製工程では、加熱温度を上述の化学発泡剤の分解温度及び熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度よりも低く抑えることが好ましい。このように、加熱温度を化学発泡剤の分解温度及び熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度よりも低く抑えることで、当該絶縁電線の押出成形後の加熱により膨張層3同士を膨張させつつ強固に融着し易くなる。
上記調製工程における上記加熱温度の下限としては、90℃が好ましく、100℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、140℃が好ましく、130℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限に満たないと、膨張層形成用組成物を十分に溶融させることができないおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、加熱時に発泡剤5(化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル)が膨張するおそれがある。
(押出工程)
上記押出工程では、公知の押出機によって導体2の外周面側に上記調製工程で調製した膨張層形成用組成物を押出し硬化させることで導体2の外周面側に膨張層3を形成する。
当該絶縁電線の製造方法は、電線間の融着性を高めることができる上述の当該絶縁電線1を容易かつ確実に製造することができる。
[第二実施形態]
<絶縁電線>
図2の絶縁電線11は、線状の導体2と、この導体2の外周面側に他の層を介して積層され、加熱により膨張する膨張層3とを備える。図2の絶縁電線11は、上記他の層として、導体2及び膨張層3間に積層される絶縁層12を備える。当該絶縁電線11は、導体2及び膨張層3間に積層される絶縁層12を備えることによって、絶縁性を容易かつ確実に高めることができる。当該絶縁電線11は、導体2、導体の外周面に積層される絶縁層12及び絶縁層12の外周面に積層される膨張層3から構成されている。導体2は、図1の絶縁電線1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。また、膨張層3は、絶縁層12の外周面側に積層されること以外、図1の絶縁電線1と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
(絶縁層)
絶縁層12は、合成樹脂を主成分とする。上記合成樹脂としては、例えばポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、熱硬化ポリアミドイミド等の熱硬化性樹脂や、ポリイミド、ポリフェニルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
なお、絶縁層12は、膨張層3同士が融着する際に溶融しないことが好ましい。そのため、絶縁層12の主成分が熱可塑性樹脂である場合、この熱可塑性樹脂の融点は、マトリックス4の主成分である上述のフェノキシ樹脂の融点よりも高いことが好ましい。
絶縁層12の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、絶縁層12の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、150μmがより好ましい。絶縁層12の平均厚さが上記下限に満たないと、絶縁層12に破れが生じ、導体2の絶縁が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層12の平均厚さが上記上限を超えると、当該絶縁電線11を用いたコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
<製造方法>
当該絶縁電線11の製造方法は、導体2の外周面側に絶縁層12を積層する積層工程と、膨張層形成用組成物を調製する調製工程と、上記調製工程で調製した膨張層形成用組成物を絶縁層12の外周面側に押出す押出工程とを備える。当該絶縁電線の製造方法における調製工程及び押出工程は、上述の第一実施形態における調製工程及び押出工程と同様に行うことができるため説明を省略する。
(積層工程)
上記積層工程は、例えば絶縁層形成用組成物を溶媒で希釈した絶縁層形成用樹脂ワニススを導体2の外周面側に塗布して乾燥させることで行うことができる。また、上記積層工程は、絶縁層の主成分が熱可塑性樹脂である場合、絶縁層形成用組成物を導体2の外周面側に押出すことで行うことも可能である。なお、絶縁層形成用樹脂ワニスを導体2の外周面側に塗布して乾燥させることで上記積層工程を行う場合、上記塗布及び乾燥を複数回繰り返して行ってもよい。
[第三実施形態]
<コイル用電線>
本発明の別の実施形態に係るコイル用電線は、上述の当該絶縁電線1又は当該絶縁電線11を捲線加工し、膨張層3を膨張させて形成される。
膨張層3を膨張させるための加熱方法としては、例えば熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等、従来公知の方法により行うことができる他、導体2への通電により発生する熱を用いる方法が適用できる。
膨張層3を膨張させるための加熱温度の下限としては、160℃が好ましく、170℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、280℃が好ましく、220℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限に満たないと、マトリックス4に含まれる化学発泡剤又は熱膨張マイクロカプセルを的確に膨張させつつ膨張層3同士を融着し難くなるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、エネルギーコストが過大となるおそれがあると共に、コイル以外のモーター部品に過剰な熱負荷がかかり悪影響が出るおそれがある。
当該コイル用電線は、膨張層3同士が強固に融着されていると共に、導体2間の絶縁性が高い。
[第四実施形態]
<巻線束>
本発明の別の実施形態に係る巻線束は、複数の当該絶縁電線1又は複数の当該絶縁電線11を捲線加工して束ねることにより形成される。
当該巻線束は、膨張層3同士が強固に融着されていると共に導体2間の絶縁性が高い。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、当該絶縁電線は、導体と膨張層との間又は導体と絶縁層との間にプライマー処理層等の他の層を備えていてもよい。
(プライマー処理層)
プライマー処理層は、層間の密着性を高めるために設けられる層であり、例えば公知の樹脂組成物により形成することができる。
導体と膨張層との間にプライマー処理層を設ける場合、このプライマー処理層を形成する樹脂組成物は、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステル及びフェノキシ樹脂の中の一種又は複数種の樹脂を含むとよい。また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。このような樹脂組成物によって導体と膨張層との間にプライマー処理層を形成することで、導体と膨張層との間の密着性を向上することが可能であり、その結果、当該絶縁電線の可撓性や耐摩耗性、耐傷性、耐加工性などの特性を効果的に高めることができる。
また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、上記樹脂と共に他の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂等を含んでもよい。
また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物に含まれる各樹脂として、市販の液状組成物(絶縁ワニス)を使用してもよい。
プライマー処理層の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、プライマー処理層の平均厚さの上限としては、20μmが好ましく、10μmがより好ましい。プライマー処理層の平均厚さが上記下限に満たない場合、導体との十分な密着性を発揮できないおそれがある。逆に、プライマー処理層の平均厚さが上記上限を超える場合、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
また、当該絶縁電線は、上記膨張層の外周面側に融着層等の他の層をさらに備えていてもよい。また、この融着層の主成分としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリアミド、ブチラール樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。この融着層の平均厚さとしては、例えば5μm以上200μm以下とすることができる。
当該絶縁電線の製造方法は、特に限定されるものではなく、上述の押出成形法の他、例えば膨張層形成用組成物を溶媒で希釈した膨張層形成用樹脂ワニスを導体の外周面側に塗布して乾燥させる方法を採用することも可能である。
また、当該絶縁電線は、コイルを形成する以外にも、複数の絶縁電線を平行に配置した状態とするような他の用途にも使用することができる。
本発明に係る絶縁電線は、電線間の融着性を高めることができるので、コイルやモーター等を形成するために好適に利用することができる。
1,11 絶縁電線
2 導体
3 膨張層
4 マトリックス
5 発泡剤
12 絶縁層

Claims (6)

  1. 線状の導体と、この導体の外周面側に直接又は他の層を介して積層され、加熱により膨張する膨張層とを備え、
    上記膨張層が、フェノキシ樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルとを有し、
    上記フェノキシ樹脂が、同一又は異なる分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有し、
    上記膨張層の加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下である絶縁電線。
  2. 上記他の層として絶縁層をさらに備える請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 上記フェノキシ樹脂が、同一分子中にビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格を有する共重合体である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 上記マトリックスが、多官能エポキシ化合物をさらに含む請求項1、請求項2又は請求項3に記載の絶縁電線。
  5. 上記フェノキシ樹脂100質量部に対する上記多官能エポキシ化合物の含有割合が5質量部以上80質量部以下である請求項4に記載の絶縁電線。
  6. 上記化学発泡剤の分解温度又は上記熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度が150℃以上250℃以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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