JP2017187260A - 亜鉛めっき鋼材の表面処理方法、および亜鉛めっき鋼材の溶接方法 - Google Patents

亜鉛めっき鋼材の表面処理方法、および亜鉛めっき鋼材の溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大掛かりな装置を必要とせず、亜鉛めっき層の除去または変質時の作業性に優れた亜鉛めっき鋼材の表面処理方法を提供する。【解決手段】亜鉛めっき鋼材の表面処理方法は、母材と、母材の表面に形成された、亜鉛を含有するめっき層とを有する亜鉛めっき鋼材を準備する工程(S10)と、可燃性ガスを燃焼させることで発生する火炎による加熱により、めっき層の一部を除去または変質させる工程(S20)と、を備える。めっき層の一部を除去または変質させる工程(S20)では、25体積%以上44体積%以下のエチレンを含み、残部が水素および不可避的不純物からなるガスが可燃性ガスとして用いられる。【選択図】図1

Description

本発明は亜鉛めっき鋼材の表面処理方法、および亜鉛めっき鋼材の溶接方法に関するものである。
耐食性、耐候性に優れる亜鉛めっき鋼材は、自動車、建築等の分野においてその利用が進められている鋼材である。鋼材の接合には、たとえばアーク溶接が用いられる。しかし、亜鉛めっき鋼材に対してアーク溶接を行うと、鋼の融点に比べて沸点の低い亜鉛が亜鉛蒸気となる。そして、亜鉛蒸気に起因して、良好な溶接状態の実現が難しくなる場合がある。具体的には、亜鉛蒸気に起因して、ビードにピットやブローホール等の欠陥が形成される場合がある。また、亜鉛蒸気によりアークの形成状態が不安定となり、スパッタの発生が多くなる場合がある。さらに、亜鉛めっき鋼板の溶接においては、ビード上に残存するスラグの発生が多くなる場合もある。その結果、溶接後に実施される塗装工程において形成される防錆剤膜等の良好な形成が阻害されたり、経年変化により防錆剤膜等が剥がれたりする場合がある。
そのため、アーク溶接の前に、接合箇所の亜鉛めっき層を除去することが提案されている。例えば、亜鉛めっき鋼板の表面にレーザを照射して亜鉛めっき層を除去することが提案されている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
特開平7−236984号公報 特開2005−40806号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の方法で使用されるレーザ装置は、高価でかつ大掛かりなものであるため、導入が容易ではなく、コストの面からも不利である。
そこで本発明者らは、レーザ法に替わる亜鉛めっき鋼材のめっき層の除去または変質のための方法として、可燃性ガスを燃焼させることで発生する火炎による加熱によりめっき層を除去または変質させる方法の適用の可否について検討した。しかしながら、汎用されている可燃性ガスを用いた検討ではいずれも問題があることが判明した。例えば、溶断作業などで広く使用されているアセチレンを上記可燃性ガスとして用いる場合には、逆火(炎が突発的に火口の中に逆行する現象)が起こりやすいという問題がある。また上記可燃性ガスとしてプロパンガスや天然ガスを用いると、火炎の広がりが大きく、所望の箇所のみを加熱できないおそれがある。その結果、本来必要な部分の亜鉛めっきまで除去する場合がある。また可燃性ガスとして水素ガスを用いた場合、火炎が可視光を発しないため作業者が火炎を視認することができず、作業性に問題がある。
上記のような状況を踏まえ、本発明の目的は、レーザ装置のような大掛かりな装置を必要とせず、亜鉛めっき層の除去または変質時の作業性に優れた亜鉛めっき鋼材の表面処理方法、およびその表面処理方法を利用した亜鉛めっき鋼材の溶接方法を提供することである。
本発明に従った亜鉛めっき鋼材の表面処理方法は、母材と、母材の表面に形成された、亜鉛を含有するめっき層とを有する亜鉛めっき鋼材を準備する工程と、可燃性ガスを燃焼させることで発生する火炎による加熱により、めっき層の一部を除去または変質させる工程と、を備える。めっき層の一部を除去または変質させる工程では、25体積%以上44体積%以下のエチレンを含み、残部が水素および不可避的不純物からなるガスが可燃性ガスとして用いられる。
本発明者らは、上述した、可燃性ガスを燃焼させることで発生する火炎による加熱を利用して亜鉛めっき鋼材の亜鉛めっき層を除去または変質させる方法において、可燃性ガスとしてエチレンと水素とを特定の割合で混合した混合ガスを用いると、他の可燃性ガスを用いた検討で生じた問題点を解消できることを見出した。
具体的には、本発明に従った亜鉛めっき鋼材の表面処理方法のうち、めっき層の一部を除去または変質させる工程においては、25体積%以上44体積%以下のエチレンを含み、残部が水素および不可避的不純物からなるガスが可燃性ガスとして用いられる。このようにすることで、短い加熱時間で、所望の箇所のみを効率よく加熱することができる。可燃性ガス中のエチレンの量が25体積%未満の場合、火炎の広がりが小さすぎて所望の箇所の加熱に要する時間が増大する。また可燃性ガス中のエチレンの量が44体積%を超えると、火炎の集中性が低下し、所望の箇所のみを加熱することが難しくなる。また他にも、可燃性ガス中のエチレンの量が44体積%を超えると、上記混合ガスをボンベに充填した場合にエチレンの一部が超臨界状態になり、安定的に混合ガスを供給するのが難しくなる。可燃性ガス中のエチレンの量を44体積%以下にすることにより、ボンベに充填した場合でもエチレンが超臨界状態になるのを防ぐことができる。
まためっき層の一部を除去または変質させる工程において、25体積%以上44体積%以下のエチレンを含み、残部が水素および不可避的不純物からなるガス可燃性ガスを用いると、逆火の発生が抑制され、可燃性ガスを燃焼させると視認可能な火炎が生じる。そのため、めっき層の除去または変質時における良好な作業性を達成することができる。さらに、この方法であれば、レーザ装置などの大掛かりな装置が不要であり、導入が容易である。
亜鉛めっき鋼材の表面処理方法において、めっき層の一部を除去または変質させる工程では、除去または変質される領域に含まれるめっき層の各部位は、火炎による入熱量が複数回のピークを有するように加熱されてもよい。入熱量がピークの状態で継続的に加熱すると、亜鉛めっき層のみならず、母材までが変形または溶融するおそれがある。これに対し、入熱量がピークとなる状態と、ピークよりも入熱量が少ない状態を繰り返しながら加熱することで、亜鉛めっき鋼材が過剰に加熱されるのを防ぐ。その結果、母材の変形を抑え、溶融を防ぐことができる。
めっき層の一部を除去または変質させる工程では、可燃性ガスは、ボンベなどの単一の容器から供給されるのが好ましい。単一の容器から供給されるようにすることで、複数のガスを混合装置を通して供給する場合に比べて設備を簡略化することができる。
上記亜鉛めっき鋼材の表面処理方法においては、可燃性ガス中のエチレンの割合は、30体積%以上44体積%以下であってもよい。このようにすることにより、加熱時間がより短く、火炎の広がりの大きさをより適切な状態に維持することができる。その結果、作業効率を向上させることができる。
本発明に従った亜鉛めっき鋼材の溶接方法は、上記亜鉛めっき鋼材の表面処理方法により、亜鉛めっき鋼材の、溶接されるべき領域である接合領域のめっき層を除去または変質させる工程と、めっき層の一部が除去または変質された接合領域と、トーチに保持された電極との間にアークを形成して亜鉛めっき鋼材の一部を溶融させ、溶融池を形成する工程と、形成された溶融池を凝固させることにより亜鉛めっき鋼材を接合する工程と、を備える。このようにすることにより、亜鉛めっき層の除去または変質時の作業性に優れ、最終的に欠陥が抑制された良好な溶接部を得ることができる亜鉛めっき鋼材の溶接方法を提供することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、レーザ装置のような大掛かりな装置を必要とせず、亜鉛めっき層の除去または変質時の作業性に優れた亜鉛めっき鋼材の表面処理方法、およびその表面処理方法を利用した亜鉛めっき鋼材の溶接方法を提供することができる。
亜鉛めっき鋼材の表面処理および溶接の手順の概略を示すフローチャートである。 亜鉛めっき鋼材の一例を示す概略断面図である。 亜鉛めっき鋼材の表面処理方法を説明するための模式図である。 亜鉛めっき鋼材の表面処理の一例を説明するための概略図である。 亜鉛めっき鋼材の溶接前の状態を示す概略断面図である。 溶接の手順を説明するための概略断面図である。 溶接の手順を説明するための概略図である。 亜鉛めっき鋼材の表面処理の一例を説明するための概略図である。 表面処理を施した亜鉛めっき鋼材の溶接部の放射線透過写真である。 未処理の亜鉛めっき鋼材の溶接部の放射線透過写真である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1を参照して、本実施の形態の亜鉛めっき鋼板の溶接方法では、まず、表面処理を行う対象物として亜鉛めっき鋼板が準備される(S10)。この工程(S10)では、図2を参照して、母材11と、母材11の表面に形成された、亜鉛を含有するめっき層12とを有する亜鉛めっき鋼材10が準備される。図2において、破線で仕切られた領域は、溶接工程において接合することが予定されている接合領域13である。
次に、可燃性ガスを燃焼させることで発生する火炎による加熱により、接合領域13のめっき層12の一部を除去または変質させる(S20)。第一の実施形態として、可燃性ガスを燃焼させることで発生する火炎による加熱により、めっき層12の一部を除去または変質させる工程の一実施形態を、図3を参照して説明する。図3を参照して、火口60は、ガス配管25およびボンベ20と接続されている。このボンベ20には、可燃性ガスが充填されている。可燃性ガスは、ガス配管25を通じて火口60に供給される。また、ガス配管25およびボンベ20と並行に、図示しないガス配管およびボンベが接続されており、このボンベには酸素ガスが充填されている。酸素ガスは、ガス配管(図示しない)を通じて火口60に供給される。供給された可燃性ガスと酸素ガスの混合ガスを燃焼させることで火口60の先端から火炎70が噴出される。
上記可燃性ガスは、25体積%以上44体積%以下のエチレンを含み、残部が水素および不可避的不純物からなるガスである。このような組成のガスを用いると、逆火の発生が抑制される。またこのような組成のガスを用いると、火炎70は視認可能であり、作業性が高い。またこのような組成のガスを用いると、短い加熱時間で、所望の箇所のみを効率よく加熱することができる。
上記可燃性ガス中のエチレンの割合は、30体積%以上44体積%以下であることが好ましい。エチレンの混合比をこのような範囲にすることで、より短い加熱時間で、所望の箇所のみを効率よく加熱することができる。さらに、加熱時間の短さと、炎の広がりの大きさ(集中性)のバランスが取れているという点では、上記可燃性ガス中のエチレンの割合は、37体積%以上44体積%以下であることがより好ましい。
図3を参照して、接合領域のめっき層12の一部を除去または変質させるには、火口60から放出される火炎70を亜鉛めっき鋼材10に当てながら、火口60を亜鉛めっき鋼材10の面10Cの延在方向であるDの方向に相対的に移動させる。
図3を参照して、25体積%以上44体積%以下のエチレンを含み、残部が水素および不可避的不純物からなるガスは、単一の容器であるボンベ20から供給されている。混合ガスは、ガスの混合装置を通じて複数の容器やガス供給装置から供給することも可能である。しかしながら、図3に示すように、単一の容器から供給されるようにすることで、複数のガスを混合装置を通して供給する場合に比べて設備を簡略化することができる点で好ましい。なお、単一の容器としてボンベを例示して説明するが、この明細書内において、「単一の容器から供給される」とは、上記割合のエチレンと水素を含む混合ガスが予め同一組成で封入された容器から、その混合ガスが供給されることを意味する。したがって、例えば、この明細書内における「単一の容器から供給される」例には、エチレンと水素の混合ガスが予め封入された1つのボンベから混合ガスが供給される例の他、エチレンと水素の混合ガスが予め同一組成で封入された複数容器の集合体(例えば、複数のボンベを導管で連結し1か所の出口にガスを供給するガス集合装置や、複数のボンベを枠組みして一体に連結したカードル)から上記ガスが供給される例も含まれる。一方、エチレンと水素をそれぞれ含む別の容器からそれぞれ供給されたエチレンガスおよび水素ガスを、混合装置を通して一定の割合の混合ガス調整したのち、1つのラインを通じてその混合ガスを供給するような例は、「単一の容器から供給される」例には含まれない。
図4は、亜鉛めっき鋼材の表面処理の一例を説明するための概略図である。図4を参照して、火口60から放出される火炎70は、亜鉛めっき鋼材10の面11Cに当てられている。火炎70が当てられた面11C上のめっき層12は除去されている。なお、火炎70が直接当たる箇所のめっき層12だけが除去されるのではなく、火炎70の周囲の、主面11A上のめっき層12の一部および側面11Bのめっき層12の一部も火炎70から伝達される熱により除去される。
上述のようにして亜鉛めっき鋼材の表面処理を行った後、次に工程(S30)として溶接工程が実施される。この工程(S30)では、図5を参照して、工程(S20)にて表面処理された亜鉛めっき鋼材10を2つ準備する。2つの亜鉛めっき鋼材10は主面10A同士が互いに接触(密着する)ように配置される。このとき、溶接施工物の精度・強度の面から、2つの亜鉛めっき鋼材10の間に隙間が生じないように配置するのが好ましい。
次に、溶接トーチを用いて溶融池が形成される。図6を参照して、溶接トーチ30は、中空円筒形状を有する溶接ノズル32と、その一部が溶接ノズル32に取り囲まれるように配置され、電源(図示しない)に接続されたコンタクトチップ31とを含む。コンタクトチップ31は、溶接ノズル32に取り囲まれる空間内に収容されている。コンタクトチップ31に接触しつつ、溶接ワイヤ33が溶接ノズル32の先端側へと連続的に供給される。溶接ノズル32とコンタクトチップ31との隙間は、シールドガスの流路となっている。当該流路を流れるシールドガスは、溶接ノズル32の先端から吐出される。工程(S30)では、このような構造を有する溶接トーチ30を用いることができる。
次に、亜鉛めっき鋼板10を一方の電極とし、溶接ワイヤ33を他方の電極として亜鉛めっき鋼板10と溶接ワイヤ33との間に電圧を印加すると、溶接ワイヤ33と亜鉛めっき鋼板10との間にアーク35が形成される。アーク35は、溶接ノズル32の先端から矢印34に沿って吐出されるシールドガスによって、周囲の空気からシールドされる。アーク35の熱により、亜鉛めっき鋼板10の一部および溶接ワイヤ33の先端が溶融する。溶接ワイヤ33の先端が溶融して形成された液滴は、亜鉛めっき鋼板10の溶融した領域へと移行する。これにより、溶融した亜鉛めっき鋼板10と溶接ワイヤ33とが混ざり合った液体領域である溶融池40が形成される。
ここで上記シールドガスの種類は特に限定されず、例えば、炭酸ガス単体、あるいはアルゴンガスと炭酸ガスとを混合したマグガスなどが挙げられる。
次に、溶融池の形成領域を移動させつつ、先に形成した溶融池を凝固させビードを形成させる。図7に示すように、形成されるべきビード45の延在方向であるDの方向に、溶接トーチ30を亜鉛めっき鋼板10に対して相対的に移動させる。その結果、溶融池40が形成される領域が順次移動し、先に形成された溶融池40は凝固して、ビード45となる。そして、接合されるべき領域に沿ってビード45を形成することで溶接が完了する。このようにして得られるビード45は、溶接の前に亜鉛めっき層を除去または変質させていることから、欠陥のない、溶接品質に優れたビードである。
次に、第二の実施形態として、可燃性ガスを燃焼させることで発生する火炎による加熱により、めっき層の一部を除去または変質させる工程の別の一実施形態を、図8を参照して説明する。図8を参照して、本実施形態においては、4つの火炎噴出口55a、55b、55c、55dを有する四つ口の火口50を用いる。四つ口の火口50はガス配管25およびガスボンベ20と接続されている。このボンベ20には、上述の可燃性ガスが充填されている。可燃性ガスは、ガス配管25を通じて火口50に供給される。供給された可燃性ガスを燃焼させることで4つの火炎噴出口55a、55b、55c、55dのそれぞれの先端から、各火炎70a、70b、70c、70dが放出される。
接合領域のめっき層12の一部を除去または変質させるには、4つの火炎噴出口55a、55b、55c、55dのそれぞれの先端から放出される火炎70a、70b、70c、70dを亜鉛めっき鋼材10の面10Cに当てながら、DおよびDの方向に四つ口の火口50を揺動させる。面10Cは、溶接されるべき領域である接合領域を含む面である。DおよびDはその接合領域の延在方向である。四つ口の火口50を揺動させることにより、面10Cの各部位を、火炎70a、70b、70c、または70dが複数回にわたって横断する。その結果、各部位は、火炎による入熱量が複数回のピークを有するように加熱される。このようにすることで、一つの箇所が過剰に加熱され、母材が変形や変質するのを防ぐことができる。このようにして亜鉛めっき層12の一部を除去または変質させる。このようにして表面処理後の亜鉛めっき鋼材10を2つ準備する。その2つの亜鉛めっき鋼材10は、上述したとおり、工程(S30)において溶接により接合される。
なお、火炎による入熱量が複数回のピークを有するように加熱する例は、上記実施形態に限定されない。例えば、図3に示す、めっき層の一部を除去または変質させる工程の第一の実施形態において、火口60を方向DおよびDの方向に往復運動をさせることにより、めっき層の各部位における火炎による入熱量が複数回のピークを有するように各部位を加熱してもよい。また図8に示す、めっき層の一部を除去または変質させる工程の第二の実施形態において、四つ口の火口50をDの方向に移動させ、四つ口の1つ目の火口55dが亜鉛めっき鋼材10の端部に達した後、Dの方向とは逆方向であるDの方向に移動させる往復運動により各部位を加熱してもよい。あるいは、同一方向のDの方向に移動を続けて、四つ口の全ての火口(55d、55c、55b、55a)が端部を通過するようにしても良い。いずれの場合でも、火口50のみを動かしても良いし、亜鉛めっき鋼材10のみ、あるいは火口50と亜鉛めっき鋼材10の両方を動かすようにしても良い。
また火炎による入熱量が複数回のピークを有するように加熱する場合、各ピークの入熱量は同一であっても異なっていてもよい。すなわち、各部位の加熱を開始してから加熱が終了するまでに、入熱量の値の極大点が複数存在していれば、その極大点における入熱量の値は問わない。そのため、例えばある箇所を火力の弱い火炎にて加熱を行った後、それよりも火力の強い火炎で加熱してもよい。
(ガスの組成の違いによる火炎の特性の評価)
可燃ガス中に含まれるエチレンの混合比を変更することにより、加熱に要する時間と加熱される範囲の評価を行った。実験の手順は次のとおりである。
まず、厚さ12mmの亜鉛めっき鋼材を準備した。次に、上記第一の実施形態として説明した、めっき層の一部を除去または変質させる工程の手順に従って、火口の火炎噴出口から噴出される火炎の性質を評価した。装置としては、図3に示すような、可燃性ガスを供給するガス供給設備に接続された一口の火口を用いた。この火口の火炎噴出口から噴出される火炎を、準備した亜鉛めっき鋼材の表面に当て、加熱箇所において形成される赤円の大きさ、および赤炎が形成されるまでの時間を評価した。評価結果を表1に示す。
なお、この評価における可燃性ガスの供給条件および火口の条件は以下のとおりである。
燃料供給量720L(0.05MPa)/h
酸素供給量800L(0.05MPa)/h
火口 吹管中型 450番
亜鉛めっき鋼材表面からの火口の高さ 15mm
※1 数字が小さいほど効率よく加熱できていることを示している。
※2 赤円の直径は4〜5mmであることが好ましい。
※3 超臨界状態になるとガスの安定供給が困難となるため、不可(総合判定はE)。
赤円が形成されている状態は、亜鉛めっき鋼材の表面が火炎により充分に加熱されていることを示している。赤円が形成されるまでの時間は加熱に要する時間の指標であり、赤円の大きさは、加熱される範囲の指標である。赤円が形成されるまでの時間は短いほど好ましい。また、赤円の直径は小さいほど火炎の集中性が高く好ましい。ただし、赤円の直径が小さくなると加熱に要する時間が長くなる傾向があるため、両者のバランスが重要である。
表1に示す各評価例の評価結果については、赤円が形成されるまでの時間、赤円の大きさ、ボンベ内のガスの状態を勘案して総合的に判定した。その結果として、各評価例をA〜Eのランクに分類した。特にボンベ内におけるガスが一部でも超臨界状態となる場合には、ガスの安定供給ができないことから、最もランクの低いEランクとした。また、赤円が形成されるまでの時間が長くなると、工程に要する時間が増大し作業効率が劣ることから、赤円が形成されるまでの時間が5秒を超える場合をDランクに分類した。
総合判定におけるA〜Cランクは実用的に許容されるレベルを意味する。A〜Cランクについては、赤円が形成されるまでの時間と赤円の直径の結果を考慮して、良好な順にA、B、Cとランク付けした。
表1に示された結果からわかるように、エチレンの混合比が小さいほど、加熱時の赤炎の直径は小さくなる。すなわち、エチレンの混合比が小さいほど火炎の集中性に優れる。しかしながら、表1に示された結果からわかるように、赤円の直径が4mm未満の場合、赤円が形成されるまでに要する時間が5秒以上と長くなった(評価例1〜3)。従って、エチレンの割合が15、18、20体積%の可燃性ガスを用いる評価例1〜3の評価ランクはDとした。
また、可燃性ガス中のエチレンの割合が46体積%以上の場合、ボンベ内でガスが一部超臨界状態となることがわかった(評価例11、12)。従って、エチレンの割合が46体積%以上の可燃性ガスを用いる評価例11、12の評価ランクはEとした。
これに対し、評価例4〜10に示す通り、エチレンの割合が25〜44体積%の範囲内であれば、赤円が形成されるまでの時間が5秒を超えず、かつボンベ内でガスが超臨界状態にならないことがわかった。
さらに検討すると、可燃性ガス中のエチレンの割合が30〜44体積%(評価例5〜10)の範囲では、エチレンの割合が25体積%の場合と比べて赤円が形成されるまでに要した時間が短く、赤円の大きさも5mm程度に安定していた。したがって、可燃性ガス中のエチレンの割合が30〜44体積%の評価例5〜10の評価ランクをB以上、エチレンの割合が25体積%の評価例4の評価ランクをCとした。
さらに、37〜44体積%(評価例6〜10)の範囲内では、赤円が形成されるまでに要した時間が適切で、加熱時の赤円の大きさも5mmで安定していた。このように、37〜44体積%では、加熱時間の短さと、炎の広がりの大きさ(集中性)のバランスが取れていることがわかった。したがって、評価例6〜10の評価ランクはAとした。
このように、表1に示す結果から、実用に耐えうる評価ランクC以上の火炎を形成するには、エチレンと水素の混合ガスのうち、エチレンの割合が25〜44体積%のものを用いる必要があることがわかった。さらに、加熱時間の短さと、炎の広がりの大きさ(集中性)のバランスを考慮すると、可燃性ガス中のエチレンの割合が30〜44体積%であることが好ましく、37〜44体積%であることがより好ましいことがわかった。
(亜鉛めっき鋼材の表面処理および溶接)
亜鉛めっき鋼材の表面処理は、上記実施の形態において説明した方法に従って実施した。亜鉛めっき鋼板10として、厚さ6mmの鋼板を準備した。次に上記第一の実施形態の手順に従って、その亜鉛めっき鋼板10の、溶接されるべき接合領域13のめっき層を除去または変質させた。このようにしてめっき層12を除去または変質させた亜鉛めっき鋼材10を2つ準備した。
次に、上記の通り表面処理した2つの亜鉛めっき鋼板10を、亜鉛めっき鋼板10の一方の主面10A同士が互いに密着するように配置した。その後、工程(S30)として説明した手順に従ってアーク溶接を実施し、2つの亜鉛めっき鋼材を接合し、実施例のサンプルを得た。また比較のため、同様の手順において、工程(S20)を省略し、比較サンプルを得た。
(溶接部の放射線透過試験)
上記実施例のサンプルの溶接部と、比較サンプルの溶接部とを、各溶接部の放射線透過像を撮影することにより比較した。各溶接部の放射線透過写真を図9および図10に示す。
図9は、本発明に係る亜鉛めっき鋼材の表面処理方法により表面処理した亜鉛めっき鋼材をアーク溶接した、実施例のサンプルの溶接部の放射線透過写真である。図10は、未処理の亜鉛めっき鋼材をアーク溶接した、比較サンプルの溶接部の放射線透過写真である。図9の写真ではブローホールは目視で確認できない。これに対し、図10においては、写真下部に見られるように、未処理の亜鉛めっき鋼材をアーク溶接すると、ブローホールと呼ばれる孔がいくつも生じているのが確認できる。
以上の結果より、本発明の亜鉛めっき鋼板の表面処理方法により溶接前に亜鉛めっき鋼材を表面処理することで、欠陥のない、溶接状態が良好な亜鉛めっき鋼板の溶接方法を提供できることが確認できる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の亜鉛めっき鋼板の表面処理方法および亜鉛めっき鋼板の溶接方法は、レーザ装置のような大掛かりな装置の導入が困難で、かつ作業性に優れた亜鉛めっき鋼材の表面処理が求められる溶接の現場において、特に有利に適用され得る。
10 亜鉛めっき鋼材、10A,10D 亜鉛めっき鋼材の主面、10C 亜鉛めっき鋼材の面、11 母材、11A,11D 母材の主面、11B 母材の側面、11C 母材の傾斜面、12 亜鉛めっき層、13 接合領域、20 ボンベ、25 ガス配管、30 溶接トーチ、31 コンタクトチップ、32 溶接ノズル、33 溶接ワイヤ、34 シールドガスの流れを表す矢印、35 アーク、40 溶融池、45 ビード、50 四つ口の火口、55a,55b,55c,55d 火炎噴出口、60 火口、70 火炎、70a,70b,70c,70d 火炎。

Claims (5)

  1. 母材と、前記母材の表面に形成された、亜鉛を含有するめっき層とを有する亜鉛めっき鋼材を準備する工程と、
    可燃性ガスを燃焼させることで発生する火炎による加熱により、前記めっき層の一部を除去または変質させる工程と、
    を備え、
    前記めっき層の一部を除去または変質させる工程では、25体積%以上44体積%以下のエチレンを含み、残部が水素および不可避的不純物からなるガスが前記可燃性ガスとして用いられる、亜鉛めっき鋼材の表面処理方法。
  2. 前記めっき層の一部を除去または変質させる工程では、除去または変質される領域に含まれる前記めっき層の各部位は、火炎による入熱量が複数回のピークを有するように加熱される、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼材の表面処理方法。
  3. 前記めっき層の一部を除去または変質させる工程では、前記可燃性ガスは、単一の容器から供給される、請求項1または2に記載の亜鉛めっき鋼材の表面処理方法。
  4. 前記可燃性ガス中のエチレンの割合は、30体積%以上44体積%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の亜鉛めっき鋼材の表面処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の亜鉛めっき鋼材の表面処理方法により、前記亜鉛めっき鋼材の、溶接されるべき領域である接合領域の前記めっき層を除去または変質させる工程と、
    前記めっき層の一部が除去または変質された前記接合領域と、トーチに保持された電極との間にアークを形成して前記亜鉛めっき鋼材の一部を溶融させ、溶融池を形成する工程と、
    形成された前記溶融池を凝固させることにより前記亜鉛めっき鋼材を接合する工程と、を備える、亜鉛めっき鋼材の溶接方法。
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