JP2017191040A - 磁場計測装置及び磁場計測方法 - Google Patents

磁場計測装置及び磁場計測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微弱な磁場であっても十分な精度で計測することが可能な磁場計測装置を提供すること。【解決手段】計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場を計測する少なくとも1つの第1磁気センサーと、前記環境磁場を計測する複数の第2磁気センサーと、前記第2磁気センサーの計測値に基づいて前記環境磁場の分布を推定し、前記第1磁気センサーの計測値と推定した前記環境磁場の分布とに基づいて、前記計測対象の磁場を計算する磁場計算部と、を含む、磁場計測装置。【選択図】図4

Description

本発明は、磁場計測装置及び磁場計測方法に関する。
地磁気に比べて微弱な心臓の磁場(心磁場)や脳の磁場(脳磁場)等の生体磁場を計測するための磁場計測装置が知られている。磁場計測装置は、非侵襲であるため、被検体(生体)に負荷をかけずに臓器の状態を計測することができる。この種の磁場計測装置では、地磁気等の磁気ノイズの影響を低減させるために、被検体(生体)を磁気シールド装置の内部に収容して生体磁場を計測するが、シールドしきれない磁気ノイズにより計測精度が低下するおそれがある。
特許文献1には、統計的な手法を用いて、磁気測定データに重畳している磁気ノイズを低減することにより、磁気素子のオフセット成分を算出し、磁気測定データを校正する手法が開示されている。
特開2014−25715号公報
しかしながら、一般に、心磁場や脳磁場等の生体磁場は、環境磁場(磁気ノイズ)と比較して非常に弱いため、このような微弱な磁場を計測する計測装置に特許文献1の手法を適用しても、十分な計測精度を確保することは難しい。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、微弱な磁場であっても十分な精度で計測することが可能な磁場計測装置及び磁場計測方法を提供することができる。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例に係る磁場計測装置は、計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場を計測する少なくとも1つの第1磁気センサーと、前記環境磁場を計測する複数の第2磁気センサーと、前記第2磁気センサーの計測値に基づいて前記環境磁場の分布を推定し、前記第1磁気センサーの計測値と推定した前記環境磁場の分布とに基づいて、前記計測対象の磁場を計算する磁場計算部と、を含む。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、磁場計算部は、第1磁気センサーの計測値に基づいて第1磁気センサーの位置における磁場(計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場)を計算することができ、複数の第2磁気センサーの計測値に基づいて推定した環境磁場の分布から第1磁気センサーの位置における環境磁場を計算することができるので、例えば、これらの磁場の差分やその近似値を計測対象の磁場として計算することができる。このように、本適用例に係る磁場計測装置によれば、計測対象の磁場が微弱な磁場であっても、相対的に大きい環境磁場を精度良く推定することにより、十分な精度で計測することが
できる。
[適用例2]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記磁場計算部は、前記第1磁気センサーの検出ベクトルと前記第1磁気センサーの位置情報と推定した前記環境磁場の分布とに基づいて、前記第1磁気センサーによる前記環境磁場の計測値を推定し、前記第1磁気センサーの計測値と推定した前記環境磁場の計測値とに基づいて、前記計測対象の磁場を計算してもよい。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、磁場計算部は、推定した環境磁場の分布とともに、第1磁気センサーの検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)や位置情報も用いることにより、第1磁気センサーによる環境磁場の計測値を精度良く推定することができるので、例えば、第1磁気センサーの計測値と推定した環境磁場の計測値との差分やその近似値を計測対象の磁場として精度良く計算することができる。
[適用例3]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記磁場計算部は、前記第1磁気センサーの計測値と前記第1磁気センサーの利得とに基づいて前記第1磁気センサーの位置における磁場の近似値を計算し、推定した前記環境磁場の計測値と前記第1磁気センサーの利得とに基づいて前記第1磁気センサーの位置における前記環境磁場の近似値を計算し、前記第1磁気センサーの位置における磁場の近似値と前記第1磁気センサーの位置における前記環境磁場の近似値との差分により前記計測対象の磁場を計算してもよい。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、磁場計算部は、例えば、第1磁気センサーの計測値を第1磁気センサーの利得で除算することにより第1磁気センサーの位置における検出軸方向の磁場(計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場)を算出することができ、推定した環境磁場の計測値を第1磁気センサーの利得で除算することにより第1磁気センサーの位置における検出軸方向の環境磁場を算出することができる。そして、第1磁気センサーの検出軸の方向と計測方向とのずれが小さい場合、第1磁気センサーの位置における検出軸方向の磁場の計算値を第1磁気センサーの位置における磁場の近似値とし、第1磁気センサーの位置における検出軸方向の環境磁場の計算値を第1磁気センサーの位置における環境磁場の近似値とすることができる。従って、本適用例に係る磁場計測装置によれば、すべての第1磁気センサーの検出軸の方向が揃っているために計測対象の磁場を正しく計算できないような場合であっても、磁場計算部は、第1磁気センサーの位置における磁場(計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場)の近似値と環境磁場の近似値との差分として、計測対象の磁場を近似計算することができる。
[適用例4]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記磁場計算部は、前記第2磁気センサーの検出ベクトルと前記第2磁気センサーの位置情報と前記第2磁気センサーの計測値とに基づいて、前記環境磁場の分布を推定してもよい。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、磁場計算部は、第2磁気センサーの計測値とともに、第2磁気センサーの検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)や位置情報も用いることにより、環境磁場の分布を精度良く推定することができる。
[適用例5]
上記適用例に係る磁場計測装置は、前記第1磁気センサーの計測値と前記第2磁気センサーの計測値とに基づいて前記環境磁場の分布を推定し、推定した前記環境磁場の分布に基づいて前記第1磁気センサーの検出ベクトル及び前記第2磁気センサーの検出ベクトル
を算出する校正部を含んでもよい。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、校正部は、例えば、第1磁気センサーによって計測対象の磁場が計測されない状態において、第1磁気センサーの計測値と第2磁気センサーの計測値に基づいて、第1磁気センサーと第2磁気センサーを含む空間における環境磁場の分布を推定することにより、第1磁気センサーの検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)や第2磁気センサーの検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)を精度良く算出することができる。従って、本適用例に係る磁場計測装置によれば、磁場計算部は、精度良く算出された第1磁気センサーの検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)及び第2磁気センサーの検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)を用いて、計測対象の磁場を精度良く計算することができる。
[適用例6]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記磁場計算部は、前記環境磁場を前記第1磁気センサーの位置を変数とする多項式で近似し、前記第2磁気センサーの計測値に基づいて、前記多項式の係数を計算することにより、前記環境磁場の分布を推定してもよい。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、磁場計算部は、第1磁気センサーの位置を変数とする多項式を用いて第1磁気センサーの位置における環境磁場を精度良く近似し、第2磁気センサーの計測値に基づいて計算した当該多項式の係数に対応づけて第1磁気センサーの位置での環境磁場の分布を精度良く推定することができる。
[適用例7]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記磁場計算部は、前記環境磁場の発散がゼロであるものとして、前記多項式の係数を計算してもよい。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、環境磁場の発散がゼロであるとの条件により、多項式の係数の数を減らすことができるので、磁場計算部の計算量が軽減され、あるいは、計測対象の磁場の計算精度が向上する。
[適用例8]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記磁場計算部は、前記環境磁場の回転がゼロであるものとして、前記多項式の係数を計算してもよい。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、環境磁場の回転がゼロであるとの条件により、多項式の係数の数を減らすことができるので、磁場計算部の計算量が軽減され、あるいは、計測対象の磁場の計算精度が向上する。
[適用例9]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記第2磁気センサーの検出ベクトルのうちの少なくとも2つは互いに直交してもよい。
本適用例に係る磁場計測装置によれば、第2磁気センサーの検出ベクトル(検出軸)がすべて同一方向を向いている場合と比較して、第2磁気センサーの周辺の平面的な環境磁場の分布あるいは空間的な環境磁場の分布を精度良く推定することができるので、計測対象の磁場の計算精度が向上する。
[適用例10]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記第1磁気センサー及び前記第2磁気センサーは、アルカリ金属原子が収容され、直線偏光が入射するセルと、前記セルを出射した
光を第1軸方向の光と第2軸方向の光に分離する偏光分離器と、前記第1軸方向の光を検出する第1光検出器と、前記第2軸方向の光を検出する第2光検出器と、を有してもよい。
本適用例によれば、第1磁気センサー及び第2磁気センサーとして光ポンピング式磁気センサーを用いて、微弱な磁場であっても十分な精度で計測することができる磁場計測装置を実現することができる。
[適用例11]
上記適用例に係る磁場計測装置において、前記第2磁気センサーが有する前記セルは、互いに同一平面上に配置されていてもよい。
本適用例によれば、複数の第2磁気センサーのそれぞれのセルを1つの容器(保温機構)に収容して保温することができるとともに、各セルへの光の分岐機構を簡易化することができるので、磁場計測装置の製造コストを削減することができる。
[適用例12]
上記適用例に係る磁場計測方法は、計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場を計測する少なくとも1つの第1磁気センサーの計測値を取得する工程と、前記環境磁場を計測する複数の第2磁気センサーの計測値を取得する工程と、前記第2磁気センサーの計測値に基づいて前記環境磁場の分布を推定する工程と、前記第1磁気センサーの計測値と推定した前記環境磁場の分布とに基づいて、前記計測対象の磁場を計算する工程と、を含む。
本適用例に係る磁場計測方法によれば、第1磁気センサーの計測値に基づいて第1磁気センサーの位置における磁場(計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場)を計算することができ、複数の第2磁気センサーの計測値に基づいて推定した環境磁場の分布から第1磁気センサーの位置における環境磁場を計算することができるので、例えば、これらの磁場の差分やその近似値を計測対象の磁場として計算することができる。このように、本適用例に係る磁場計測方法によれば、計測対象の磁場が微弱な磁場であっても、相対的に大きい環境磁場を精度良く推定することにより、十分な精度で計測することができる。
本実施形態に係る磁場計測装置の構成例を示す概略側面図。 磁気センサーユニットの模式側面図。 磁気センサーユニットの模式平面図。 処理装置の構成例を示す図。 本実施形態に係る磁場計測装置の校正方法についての説明図。 処理装置の校正部が校正処理を行う手順の一例を示すフローチャート図。 図7は、図6の工程S3〜工程S7の処理に対応するブロック線図。 検出ベクトル行列の更新処理の手順の一例を示すフローチャート図。 本実施形態に係る磁場計測方法についての説明図。 処理装置の磁場計算部が磁場計算処理を行う手順の一例を示すフローチャート図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.第1実施形態
1−1.磁場計測装置の構成
図1は、本実施形態に係る磁場計測装置の構成例を示す概略側面図である。図1に示すように、本実施形態の磁場計測装置1は、計測対象物としての被検体(生体)9の心臓から発せられる心磁場や被検体(生体)9の脳から発せられる脳磁場等を計測する装置である。図1に示すように、磁場計測装置1は、図示しない少なくとも1つの第1磁気センサー11(図2、図3及び図5参照)を備えた磁気センサーユニット10と、複数の第2磁気センサー30と、図示しない処理装置2(図5参照)と、土台3と、テーブル4と、磁気シールド装置6とを備えている。
磁気センサーユニット10が備える第1磁気センサー11は、計測対象となる心磁場や脳磁場等の微弱な磁場(計測対象の磁場)と外部磁場(磁気ノイズ)等の環境磁場とを含む磁場を計測するセンサーであり、心磁計や脳磁計等として使用される。第2磁気センサー30は、外部磁場(磁気ノイズ)等の環境磁場を計測するセンサーである。第1磁気センサー11および第2磁気センサー30としては、光ポンピング式磁気センサー、SQUID式磁気センサー、フラックスゲート磁気センサー、MIセンサー、ホール素子等を用いることができる。
磁場計測装置1の高さ方向(図1における上下方向)をZ方向とする。Z方向は鉛直方向である。土台3、テーブル4の上面が延在する方向をX方向およびY方向とする。X方向およびY方向は水平方向であり、X方向とY方向とは直交する方向である。横たわった状態の被検体9の身長方向(図1における左右方向)をX方向とする。
土台3は磁気シールド装置6(本体部6a)の内側の底面上に配置され、本体部6aの外側にまで、X方向(被検体9の移動可能方向)に沿って延在している。テーブル4は、X方向テーブル4aと、Z方向テーブル4bと、Y方向テーブル4cとを有している。土台3上には、X方向直動機構3aによりX方向に沿って移動するX方向テーブル4aが設置されている。X方向テーブル4aの上には、図示しない昇降装置によりZ方向に沿って昇降するZ方向テーブル4bが設置されている。Z方向テーブル4bの上には、図示しないY方向直動機構によりレール上をY方向に沿って移動するY方向テーブル4cが設置されている。
磁気シールド装置6は、開口部6cを有する角筒状の本体部6aを備えている。本体部6aの内部は空洞となっており、Y方向およびZ方向を通る面(Y−Z断面でX方向に直交した平面)の断面形状は概ね四角形になっている。心磁場を計測する際は、本体部6aの内部に被検体9がテーブル4上に横たわった状態で収容される。本体部6aはX方向に延在しており、これ自体でパッシブ磁気シールドとして機能する。
磁気センサーユニット10および第2磁気センサー30は、磁気シールド装置6の本体部6aの内部に配置されている。磁気シールド装置6は、地磁気等の外部磁場が、磁気センサーユニット10が配置された空間へ流入する事態を抑制している。すなわち、磁気シールド装置6により、磁気センサーユニット10が配置された空間は外部磁場に比べて著しく低磁場とされ、外部磁場の磁気センサーユニット10への影響が抑制されている。
本体部6aの開口部6cから+X方向に土台3が突出している。磁気シールド装置6の大きさは、例えば、X方向の長さが約200cm程度であり、開口部6cの一辺が90cm程度である。そして、開口部6cから、磁気シールド装置6内に、テーブル4に横たわった被検体9がテーブル4と共に土台3上をX方向に沿って移動して出入することができる。
図示しない処理装置2は、磁気センサーユニット10が備える第1磁気センサー11か
らの電気信号と、第2磁気センサー30からの電気信号を受け取って、心磁場や脳磁場等の磁場を計測する装置である。処理装置2が発生する電気信号により磁場や残留磁場が発生して磁気センサーユニット10に検出されるとノイズとなる。そのため、処理装置2は、発生される磁場や残留する磁場が磁気センサーユニット10に到達し難くなるように、磁気シールド装置6の開口部6cから離れた場所に設置されているのが好ましい。
磁気シールド装置6の本体部6aは、比透磁率が例えば数千以上の強磁性体、または、高伝導率の導体によって形成される。強磁性体にはパーマロイ、フェライト、または鉄、クロムもしくはコバルト系のアモルファス等を用いることができる。高伝導率の導体には、例えば、アルミニウム等で、渦電流効果によって磁場低減効果を有するものを用いることができる。なお、強磁性体と高伝導率の導体とを交互に積層して本体部6aを形成することも可能である。
本体部6aおよび土台3の+X方向側および−X方向側の端には補正コイル(ヘルムホルツコイル)6bが設置されている。補正コイル6bの形状は枠状であり、本体部6aを囲むように配置されている。補正コイル6bは、本体部6aの内部空間へ流入する流入磁場を補正するためのコイルである。流入磁場は、外部磁場が開口部6cを通過して内部空間に入り込む磁場を指す。流入磁場は開口部6cに対してX方向で最も強くなる。補正コイル6bは、処理装置2から供給される電流により流入磁場をキャンセルするように磁界を発生させる。
磁気センサーユニット10は、本体部6aの天井に支持部材7を介して固定されている。磁気センサーユニット10は、Z方向における磁場の強度成分を計測する。すなわち、磁気センサーユニット10が備える第1磁気センサー11のそれぞれの検出軸は、Z方向を向いている。被検体9の心磁場を計測する際は、被検体9における計測位置である胸部9aが磁気センサーユニット10と対向する位置になるようにX方向テーブル4aおよびY方向テーブル4cを移動させ、胸部9aが磁気センサーユニット10に接近するようにZ方向テーブル4bを上昇させる。
第2磁気センサー30は、磁気センサーユニット10の周囲に複数個配置されている。第2磁気センサー30のそれぞれは、X方向、Y方向又はZ方向における磁場の成分を計測する。すなわち、第2磁気センサー30のそれぞれの検出軸は、X方向、Y方向又はZ方向を向いている。
1−2.磁気センサーユニットの構成
図2及び図3は、本実施形態に係る磁気センサーユニット10の構造を示す模式図である。詳しくは、図2は磁気センサーユニット10の模式側面図であり、図3は磁気センサーユニット10の模式平面図である。
図3に示すように、磁気センサーユニット10には、レーザー光源18からレーザー光18aが供給される。レーザー光源18から発せられたレーザー光18aは光ファイバー19を通って磁気センサーユニット10に供給される。磁気センサーユニット10と光ファイバー19とは、光コネクター20を介して接続されている。
レーザー光源18は、セシウムの吸収線に応じた波長のレーザー光18aを出力する。レーザー光18aの波長は特に限定されないが、本実施形態では、例えば、D1線に相当する894nmの波長に設定している。レーザー光源18はチューナブルレーザーであり、レーザー光源18から出力されるレーザー光18aは一定の光量を有する連続光である。
光コネクター20を介して供給されたレーザー光18aは、−Y方向に進行して偏光板21に入射する。偏光板21を通過したレーザー光18aは、直線偏光になっている。そして、レーザー光18aは、第1ハーフミラー22、第2ハーフミラー23、第3ハーフミラー24、第1反射ミラー25に順次入射する。
第1ハーフミラー22、第2ハーフミラー23および第3ハーフミラー24は、レーザー光18aの一部を反射して+X方向に進行させ、一部のレーザー光18aを通過させて−Y方向に進行させる。第1反射ミラー25は、入射したレーザー光18aを全て+X方向に反射する。第1ハーフミラー22、第2ハーフミラー23、第3ハーフミラー24、第1反射ミラー25により、レーザー光18aは4つの光路に分割される。各光路のレーザー光18aの光強度が同じ光強度になるように、各ミラーの反射率が設定されている。
次に、図2に示すように、レーザー光18aは第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27、第6ハーフミラー28、第2反射ミラー29に順次入射する。第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27および第6ハーフミラー28は、レーザー光18aの一部を反射して+Z方向に進行させ、一部のレーザー光18aを通過させて+X方向に進行させる。第2反射ミラー29は、入射したレーザー光18aを全て+Z方向に反射する。
第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27、第6ハーフミラー28、第2反射ミラー29により、1つの光路のレーザー光18aは4つの光路に分割される。各光路のレーザー光18aの光強度が同じ光強度になるように、各ミラーの反射率が設定されている。したがって、レーザー光18aは16個の光路に分離される。そして、各光路のレーザー光18aの光強度が同じ強度になるように、各ミラーの反射率が設定されている。
第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27、第6ハーフミラー28、第2反射ミラー29の+Z方向側には、レーザー光18aの各光路に、4行4列の16個のガスセル12が設置されている。そして、第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27、第6ハーフミラー28、第2反射ミラー29にて反射したレーザー光18aは、ガスセル12を通過する。ガスセル12は、内部に空隙を有する箱であり、この空隙にはアルカリ金属のガスが封入されている。アルカリ金属は特に限定されず、カリウム、ルビジウムまたはセシウムを用いることができる。本実施形態では、例えばアルカリ金属にセシウムを用いている。
各ガスセル12の+Z方向側には、偏光分離器13が設置されている。偏光分離器13は、入射したレーザー光18aを、互いに直交する2つの偏光成分のレーザー光18aに分離する素子である。偏光分離器13には、例えば、ウォラストンプリズムまたは偏光ビームスプリッターを用いることができる。
偏光分離器13の+Z方向側には第1光検出器14が設置され、偏光分離器13の+X方向側には第2光検出器15が設置されている。偏光分離器13を通過したレーザー光18aは第1光検出器14に入射し、偏光分離器13にて反射したレーザー光18aは第2光検出器15に入射する。第1光検出器14および第2光検出器15は、入射したレーザー光18aの光量に応じた電流を処理装置2に出力する。
第1光検出器14および第2光検出器15が磁場を発生すると測定に影響を与える可能性があるので、第1光検出器14および第2光検出器15は非磁性の材料で構成されることが望ましい。磁気センサーユニット10は、X方向の両面およびY方向の両面に設置されたヒーター16を有している。ヒーター16は磁界を発生しない構造であることが好ましく、例えば、流路中に蒸気や熱風を通過させて加熱する方式のヒーターを用いることができる。ヒーターの代わりに、高周波電圧によりガスセル12を誘電加熱してもよい。
磁気センサーユニット10は、被検体9(図1参照)の+Z側に配置される。被検体9が発する磁気ベクトルは、−Z方向側から磁気センサーユニット10に入る。磁気ベクトルは、第4ハーフミラー26〜第2反射ミラー29を通過し、ガスセル12を通過した後、偏光分離器13を通過して磁気センサーユニット10から出る。
ガスセル12内のセシウムは、加熱されてガス状態になっている。そして、直線偏光になったレーザー光18aをセシウムガスに照射することにより、セシウム原子が励起され磁気モーメントの向きが揃えられる。この状態でガスセル12を磁気ベクトルが通過するとき、セシウム原子の磁気モーメントが磁気ベクトルの磁場により歳差運動する。この歳差運動をラーモア歳差運動と称する。
ラーモア歳差運動の大きさは、磁気ベクトルの磁場の強さと正の相関を有している。ラーモア歳差運動は、レーザー光18aの偏向面を回転させる。ラーモア歳差運動の大きさとレーザー光18aの偏向面の回転角の変化量とは、正の相関を有する。したがって、磁場の強さとレーザー光18aの偏向面の回転角の変化量とは、正の相関を有している。
偏光分離器13は、レーザー光18aを直交する2成分の直線偏光に分離する。そして、第1光検出器14および第2光検出器15は、直交する2成分の直線偏光の強さを検出する。これにより、第1光検出器14および第2光検出器15は、レーザー光18aの偏向面の回転角を検出することができる。そして、処理装置2は、レーザー光18aの偏向面の回転角の変化から、磁場を計算することができる。
ガスセル12、偏光分離器13、第1光検出器14、および第2光検出器15により第1磁気センサー11が構成される。この第1磁気センサー11は、光ポンピング式磁気センサーや光ポンピング原子磁気センサーと称されるセンサーである。第1磁気センサー11の感度は、Z方向において高く、Z方向と直交する方向において低くなっている。図3に示すように、例えば、磁気センサーユニット10には、第1磁気センサー11が4行4列の16個配置されている。磁気センサーユニット10における第1磁気センサー11の個数および配置は特に限定されない。第1磁気センサー11は、3行以下でもよく5行以上でもよい。同様に第1磁気センサー11は、3列以下でもよく5列以上でもよい。第1磁気センサー11の個数が多い程空間分解能を高くすることができる。
磁気センサーユニット10が配置される計測対象空間は、磁気シールド装置6(図1参照)により外部磁場の流入が抑制されているが、外部磁場の流入を皆無とすることは困難である。換言すれば、磁気センサーユニット10には、計測対象の磁場(心磁場)と環境磁場(磁気ノイズ)とが印加される。そのため、第1磁気センサー11で計測して得られる計測値には、計測対象の磁場(心磁場)に基づく信号成分と環境磁場(磁気ノイズ)に基づくノイズ成分とが含まれる。したがって、計測対象の磁場(心磁場)を正確に取得するためには、第1磁気センサー11で得られる計測値からノイズ成分を高精度に除去する必要がある。
1−3.第2磁気センサーの構成
第2磁気センサー30は、磁気センサーユニット10が配置される計測対象空間における環境磁場(磁気ノイズ)を計測するためのものである。第2磁気センサー30で得られる計測値から計測対象空間における環境磁場(磁気ノイズ)を特定することにより、第1磁気センサー11で得られる計測値から環境磁場(磁気ノイズ)成分を除去することができる。第2磁気センサー30は、環境磁場(磁気ノイズ)を検知し、計測対象の磁場(心磁場)を検知しないものとする。
複数の第2磁気センサー30の検出軸はすべてZ方向を向いていてもよいが、複数の第2磁気センサー30の検出軸(後述する検出ベクトルkβ1〜kβN)のうちの少なくとも2つは互いに直交していることが好ましい。例えば、少なくとも1つの第2磁気センサー30の検出軸がZ方向を向いており、他の第2磁気センサー30の検出軸はX方向又はY方向を向いていてもよい。これにより、第2磁気センサー30の検出軸がすべてZ方向を向いている場合と比較して、第2磁気センサー30の周辺の平面的な環境磁場の分布あるいは空間的な環境磁場の分布を精度良く推定することができるので、後述する本実施形態に係る磁場計測方法による磁場の計算精度が向上する。
第2磁気センサー30として用いるセンサーの種類は限定されないが、例えば、上述の第1磁気センサー11と同様の光ポンピング式磁気センサーを用いることができる。すなわち、第1磁気センサー11と同様、第2磁気センサー30は、アルカリ金属原子が収容され、直線偏光が入射するセル(ガスセル12)と、当該セルを出射した光を第1軸方向の光と第2軸方向の光に分離する偏光分離器13と、第1軸方向の光を検出する第1光検出器14と、第2軸方向の光を検出する第2光検出器15と、を有してもよい。
そして、第2磁気センサー30が有するセル(図2及び図3のガスセル12に相当する)は、互いに同一平面上に配置されているのが好ましい。このようにすれば、複数の第2磁気センサー30のそれぞれのセルを1つの容器(保温機構)に収容して保温することができるとともに、各セルへのレーザー光の分岐機構を簡易化することができるので、磁場計測装置1の製造コストを削減することができる。
1−4.処理装置の構成
図4は、処理装置2の構成例を示す図である。図4に示すように、処理装置2は、演算部100、記憶部110、操作部120及び表示部130を含んで構成されている。
操作部120は、演算部100が行う処理に必要な情報(磁場の計測開始指示や計測条件等の各種指示等)を入力するためのものであり、例えば、ボタンスイッチやレバースイッチ、ダイヤルスイッチ等の各種スイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等であってもよい。
表示部130は、演算部100の処理結果を文字、グラフ、表、アニメーション、その他の画像として表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やELディスプレイ(Electroluminescence display)等であってもよい。
なお、1つのタッチパネル型ディスプレイで操作部120と表示部130の機能を実現するようにしてもよい。
記憶部110は、演算部100が各種の処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶するためのものであり、例えば、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の各種ICメモリーやハードディスクやメモリーカードなどの記録媒体等により構成される。
特に、本実施形態では、記憶部110には、演算部100によって読み出され、磁場計測装置1の校正処理を実行するための校正プログラム111と、計測対象の磁場を計算する処理(磁場計算処理)を実行するための磁場計算プログラム112とが記憶されている校正プログラム111及び磁場計算プログラム112はあらかじめ記憶部110に記憶されていてもよいし、演算部100がネットワークを介してサーバーから校正プログラム111や磁場計算プログラム112を受信して記憶部110に記憶させてもよい。
また、記憶部110は、演算部100の作業領域として用いられ、演算部100が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶する。さらに、記憶部110は、演算部100の処理により生成されたデータのうち、長期的な保存が必要なデータを記憶してもよい。
演算部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサーで実現され、上述した校正処理や磁場計算処理等を行う。
本実施形態では、演算部100は、校正プログラム111を実行することにより校正部101として機能する。すなわち、校正プログラム111は処理装置2(コンピューター)を校正部101として機能させる(あるいは、処理装置2に校正処理を実行させる)ためのプログラムである。校正部101は、第1磁気センサー11の計測値と第2磁気センサー30の計測値を取得して磁場計測装置1の校正処理を行う。この校正処理の詳細については後述する。
また、本実施形態では、演算部100は、磁場計算プログラム112を実行することにより磁場計算部102として機能する。すなわち、磁場計算プログラム112は処理装置2(コンピューター)を磁場計算部102として機能させる(あるいは、処理装置2に校正処理を実行させる)ためのプログラムである。磁場計算部102は、第1磁気センサー11の計測値と第2磁気センサー30の計測値を取得して磁場計算処理を行う。この磁場計算処理の詳細については後述する。
1−5.磁場計測装置の校正処理
本実施形態に係る磁場計測装置の校正方法について詳細に説明した後、処理装置2の校正部101が当該校正方法に対応する校正処理を行う手順について説明する。
本実施形態に係る校正方法は、第1磁気センサー11や第2磁気センサー30に限らず任意の磁気センサーを備えた磁場計測装置に適用可能であり、以下では、より一般的な概念に拡張して説明するために、第1磁気センサー11と第2磁気センサー30を区別せず、単に「磁気センサー」と称することにする。
図5に示すように、磁気センサーの個数W、各磁気センサーi(i=1〜W)の検出ベクトルkや位置ベクトルrは任意の値をとるものとする。検出ベクトルkは、各磁気センサーiの検出軸方向の単位ベクトルと各磁気センサーiの利得との積を表すベクトルであり、位置ベクトルrは原点Oから各磁気センサーiの位置までをベクトル表現したものである。磁場計測装置1の校正処理とは、W個の磁気センサーの検出ベクトルk〜kを求める処理である。
図5に示すように、W個の磁気センサーには、磁場bが印加される。磁場bは一様磁場だけではなく、高次の勾配磁場も含むものとする。校正用の磁場bは、人工的に造れた磁場でもよいし、地磁気のような自然の磁場でもよい。
任意の点(x,y,z)での時間tにおける計算上の磁場の各成分b (t),b (t),b (t)は、計測する磁場分布の次数に合わせることが理想であるが、本実施形態では次式(1)の二次非線形多項式で表されるものとする。
Figure 2017191040
ここで、磁気センサーiの位置での時間tにおける磁場計算値を(bix (t),biy (t),biz (t))とすると、W個の磁気センサーの位置での時間tにおける磁場計算値ベクトルb(t)は、次式(2)で表される。
Figure 2017191040
時間t=1〜Tでの磁場計算値ベクトルb(1)〜b(T)を統合して、磁場計算値行列Bは次式(3)で表される。なお、式(3)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
次に、次式(4)のように、多項式(1)の係数の組を30次元列ベクトルa(t)で表す。なお、式(4)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
ベクトルa(t)は時系列で変化することを想定するため、時間t=1〜Tにおけるベクトルa(1)〜a(T)を統合した多項式係数行列Aを次式(5)のように定義する。なお、式(5)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
定義された二次非線形多項式(1)に基づいて、3W×30の位置情報行列Pを次式(6)のように定義する。
Figure 2017191040
ここで、次の関係式(7)が成り立つ。すなわち、位置情報行列Pは、W個の磁気センサーの位置ベクトルr〜rを磁場計算値行列Bに変換するための行列である。
Figure 2017191040
また、W個の磁気センサーの利得(感度に相当)g〜gを要素に含む利得行列Gを次式(8)のように定義する。利得行列Gは、W×Wの正方行列である。
Figure 2017191040
また、磁気センサーiの検出軸方位をXYZ直交座標系上の単位ベクトル(six,siy,siz)で表し、W個の磁気センサーの検出軸方位の単位ベクトルを統合したW×3Wの検出軸行列Sを次式(9)のように定義する。なお、six +siy +siz =1である。
Figure 2017191040
そして、次式(10)に示すように、利得行列Gと検出軸行列Sとの積を検出ベクトル行列Kとする。ここで、磁気センサーiの検出ベクトルk=(gix,giy,giz)であり、検出ベクトル行列Kは、W個の磁気センサーの検出ベクトルk〜kを要素に含んでいる。
Figure 2017191040
また、時間tにおける磁気センサーiの計算上の観測値(推定値)を観測値計算値l (t)’で表し、時間tにおけるW個の磁気センサーの観測値計算値l (t)’〜l (t)’を統合した観測値計算値ベクトルl(t)’を次式(11)のように定義する。なお、式(11)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
このとき、時間t=1〜Tにおける観測値計算値ベクトルl(1)’〜l(T)’を統合した観測値計算値行列L’、検出ベクトル行列K、位置情報行列P及び多項式係数行列Aの間には次式(12)の関係式が成り立つ。式(12)において、D=KPである。
Figure 2017191040
同様に、時間tにおける磁気センサーiの実際の観測値(実測値)をセンサー観測値l (t)で表し、時間tにおけるW個の磁気センサーのセンサー観測値l (t)〜l (t)を統合したセンサー観測値ベクトルl(t)を次式(13)のように定義する。なお、式(13)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
そして、次式(14)のように、センサー観測値ベクトルl(t)と観測値計算値ベクトルl(t)’との差を観測値誤差ベクトルv(t)とする。
Figure 2017191040
また、時間t=1〜Tにおける観測値誤差ベクトルv(1)〜v(T)を統合した行列を観測値誤差行列Vとすると、次式(15)のように、観測値誤差行列Vは、時間t=1〜Tにおけるセンサー観測値ベクトルl(1)〜l(T)を統合したセンサー観測値行列Lと観測値計算値行列L’との差で表される。
Figure 2017191040
そして、次式(16)のように定義される観測値誤差行列Vのノルム||V||を最小にする検出ベクトル行列Kと多項式係数行列Aを求める最適化問題を解けば、W個の磁気センサーの検出ベクトルk〜kが得られる。ただし、この最適化問題の解が収束するのに多大な時間を要する場合もあるため、実際には、観測値誤差行列Vのノルム||V||が許容値εよりも小さくなるときの検出ベクトルk〜kを求めるのが現実的である。
Figure 2017191040
図6は、処理装置2の校正部101(図4参照)が上述した磁場計測装置1の校正方法に対応する校正処理を行う手順の一例を示すフローチャート図である。なお、図6の校正処理は、被検体(生体)9がテーブル4上に横たわっていない状態(被検体(生体)9からの心磁場や脳磁場の影響がない状態)で行われる。
図6の例では、まず、校正部101は、センサー観測値行列Lを取得する(工程S1)。具体的には、校正部101は、t=1〜Tにおける各第1磁気センサー11の計測値及
び各第2磁気センサー30の計測値を取得し、これらの計測値をセンサー観測値ベクトルl(1)〜l(T)として統合したセンサー観測値行列Lを取得する。
次に、校正部101は、検出ベクトル行列Kを初期値Kに設定する(工程S2)。後述する工程S3〜S8の処理により、検出ベクトル行列Kを真値に近い値に収束させるためには、初期値Kは、真値との差が小さい値が好ましく、例えば、設計値(各第1磁気センサー11の配置及び各第2磁気センサーの配置から推定される値)であってもよい。なお、初期値Kの各要素の値は、あらかじめ記憶部110に記憶されている。
次に、校正部101は、多項式係数行列Aを導出する(工程S3)。具体的には、校正部101は、工程S1で取得したセンサー観測値行列L、検出ベクトル行列K(工程S2で設定した初期値K)及び位置情報行列Pから次式(17)によって多項式係数行列Aを導出する。なお、位置情報行列Pの各要素の値は、あらかじめ記憶部110に記憶されている。
Figure 2017191040
式(17)において、(KP)はKPの擬似逆行列であり、DはD(=KP)の擬似逆行列である。擬似逆行列D(=(KP))は次式(18)で定義される。なお、式(18)において、Tは行列の転置を表す。
Figure 2017191040
次に、校正部101は、磁場計算値行列Bを導出する(工程S4)。具体的には、校正部101は、工程S3で導出した多項式係数行列A及び位置情報行列Pから式(7)によって磁場計算値行列Bを導出する。
次に、校正部101は、検出ベクトル行列Kを更新する(工程S5)。具体的には、校正部101は、工程S1で取得したセンサー観測値行列Lと工程S4で導出した磁場計算値行列Bの擬似逆行列Bとの行列積に対応する行列を導出して検出ベクトル行列Kを更新する。ただし、実際には、センサー観測値行列Lと擬似逆行列Bとの行列積を計算しても検出ベクトル行列Kが正しく導出されない場合もあるため、本実施形態では、センサー観測値行列Lの要素であるセンサー観測値ベクトルl〜lと磁場計算値行列Bの要素である磁場計算値行列b〜bから、検出ベクトル行列Kの要素である検出ベクトルk〜kを導出することにより、検出ベクトル行列Kを更新する。この検出ベクトル行列Kの更新処理の詳細については後述する。
次に、校正部101は、観測値計算値行列L’を導出する(工程S6)。具体的には、校正部101は、工程S4で導出した磁場計算値行列B及び工程S5で更新した検出ベクトル行列Kから次式(19)によって観測値計算値行列L’を導出する。
Figure 2017191040
次に、校正部101は、観測値誤差行列Vを導出する(工程S7)。具体的には、校正部101は、工程S1で取得したセンサー観測値行列L及び工程S3で導出した観測値計算値行列L’から式(15)によって観測値誤差行列Vを導出する。
次に、校正部101は、観測値誤差行列Vのノルム||V||が許容値εよりも小さいか否かを判定する(工程S8)。具体的には、校正部101は、工程S3で導出した観測値誤差行列Vから式(16)によってノルム||V||を算出し、許容値εと比較する。
そして、校正部101は、ノルム||V||が許容値ε以上である場合は(工程S8のN)、工程S3以降の処理を再び行い、ノルム||V||が許容値εよりも小さくなれば(工程S8のY)、校正処理を終了する。なお、図7は、図6の工程S3〜工程S7の処理に対応するブロック線図である。
図8は、検出ベクトル行列Kの更新処理(図6の工程S5の処理)の手順の一例を示すフローチャート図である。
図8の例では、まず、校正部101は、変数iを1に初期化し(工程S51)する。
次に、校正部101は、センサー観測値ベクトルlと磁場計算値行列bから、検出ベクトルkを算出する(工程S52)。具体的には、校正部101は、センサー観測値ベクトルlと磁場計算値行列bから、次式(20)によって検出ベクトルkを算出する。なお、式(20)において、Tはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
ここで、センサー観測値ベクトルlは、次式(21)のように、磁気センサーiによる時間t=1〜Tにおけるセンサー観測値l (1)〜l (T)を統合したベクトルとして定義され、式(22)のように、センサー観測値行列Lはセンサー観測値ベクトルl〜lを統合した行列である。
Figure 2017191040
Figure 2017191040
また、磁場計算値行列bは、次式(23)のように、磁気センサーiの位置での時間t=1〜Tにおける磁場計算値を統合したベクトルとして定義され、式(24)のように
、磁場計算値行列Bは、磁場計算値行列b〜bを統合した行列である。
Figure 2017191040
Figure 2017191040
次に、校正部101は、変数iを1だけ増加する(工程S53)。
次に、校正部101は、変数iがWよりも大きいか否かを判定する(工程S54)。すなわち、校正部101は、検出ベクトルk〜kの算出をすべて終了したか否かを判定する。
そして、校正部101は、変数iがW以下である場合は(工程S54のN)、工程S52以降の処理を再び行い、変数iがよりも小さくなれば(工程S54のY)、検出ベクトルk〜kから検出ベクトル行列Kを導出し、検出ベクトル行列Kの更新処理を終了する。上述したように、検出ベクトルk=(gix,giy,giz)であり、校正部101は、式(10)のように、検出ベクトルk〜kを統合することで、検出ベクトル行列Kを導出する(工程S55)。
1−6.磁場計測処理
本実施形態に係る磁場計測方法について詳細に説明した後、処理装置2の磁場計算部102が当該磁場計測方法に対応する磁場計算処理を行う手順について説明する。
図9に示すように、XYZ直交座標系(絶対座標系とする)で表される空間中に、計測対象の磁場b(心磁場)と環境磁場b(磁気ノイズ)とを同時に計測する磁気センサ
ー(第1磁気センサー11に相当する)がM個アレイ状に並べて構成されるα群と、環境磁場b(磁気ノイズ)を計測する磁気センサー(第2磁気センサー30に相当する)がN個分散あるいはアレイ状に並べて構成されるβ群が存在するものとする。なお、β群の磁気センサーは複数個(N≧2)であるが、α群の磁気センサーは1つ(M=1)でもよいし、複数個(M≧2)でもよい。
各磁気センサーiは一軸成分出力のベクトル型の磁気センサーであり、それぞれ固有の検出ベクトルkを持つ。検出ベクトルkの長さは系全体における利得を表し、その方位は射影軸を表す。各磁気センサーiによる計測値であるセンサー観測値ベクトルlは、磁気センサーiに印加される磁場と検出ベクトルkの内積で表せるものとする。
また磁気センサーに印加される環境磁場bは時事刻々と変化し、一様磁場だけではなく高次の勾配磁場も含む。環境磁場bは、人工的に造れた磁場でもよいし、地磁気のような自然の磁場でもよい。また、磁気センサーの周囲の磁性体により磁場分布が歪むことも有りうる。
任意の位置(x,y,z)、任意の時点における計算上の環境磁場の各成分(bnix,bniy,bniz)は、計測する磁場分布の次数に合わせることが理想であり、本実施形態では次式(25)の二次非線形多項式で表されるものとする。
Figure 2017191040
b群の磁気センサーjの位置(x,y,z)における環境磁場bnの磁場計算値を(bnjx,bnjy,bnjz)とすると、b群のN個の磁気センサーの位置における磁場計算値ベクトルBnβは、次式(26)で表される。
Figure 2017191040
次に、次式(27)のように、多項式(26)の係数の組を30次元列ベクトル(多項式係数ベクトル)aで表す。なお、式(27)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
定義された二次非線形多項式(25)に基づいて、3N×30の位置情報行列Pβを次式(28)のように定義する。
Figure 2017191040
ここで、次の関係式(29)が成り立つ。すなわち、位置情報行列Pβは、β群のN個の磁気センサーの位置ベクトルr=(x,y,z)〜r=(x,y,z)を磁場計算値ベクトルBnβに変換するための行列である。
Figure 2017191040
また、β群のN個の磁気センサーの利得(感度に相当)gβ1〜gβNを要素に含む利得行列Gβを次式(30)のように定義する。利得行列Gβは、N×Nの正方行列である。
Figure 2017191040
また、β群の磁気センサーjの検出軸方位をXYZ直交座標系上の単位ベクトルsβj=(sβjx,sβjy,sβjz)で表し、β群のN個の磁気センサーの検出軸方位の単位ベクトルsβ1〜sβNを統合したN×3Nの検出軸行列Sβを次式(31)のように定義する。なお、sβjx +sβjy +sβjz =1である。
Figure 2017191040
そして、次式(32)に示すように、利得行列Gβと検出軸行列Sβとの積を検出ベクトル行列Kβとする。ここで、β群の磁気センサーjの検出ベクトルkβj=(gβjβjx,gβjβjy,gβjβjz)であり、検出ベクトル行列Kβは、β群のN個の磁気センサーの検出ベクトルkβ1〜kβNを要素に含んでいる。検出ベクトル行列Kβは、互いに直交する検出ベクトルを含むため、環境磁場のXYZ方向の3軸成分の検出が可能となる。
Figure 2017191040
また、β群の磁気センサーjの計算上の観測値(推定値)を観測値計算値lβj’で表し、β群のN個の磁気センサーの観測値計算値lβ1’〜lβN’を統合した観測値計算値ベクトルlβ’を次式(33)のように定義する。なお、式(33)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
このとき、観測値計算値ベクトルlβ’、利得行列Gβ、検出軸行列Sβ、位置情報行列Pβ、検出ベクトル行列Kβ、多項式係数ベクトルa及び磁場計算値ベクトルBnβの間には次式(34)の関係式が成り立つ。式(34)において、Dβ=Kββである。
Figure 2017191040
同様に、β群の磁気センサーjの実際の観測値(実測値)をセンサー観測値lβjで表し、β群のN個の磁気センサーのセンサー観測値lβ1〜lβNを統合したセンサー観測値ベクトルlβを次式(35)のように定義する。なお、式(35)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
そして、次式(36)のように、センサー観測値ベクトルlβと観測値計算値ベクトルlβ’との差を観測値誤差ベクトルvβとする。
Figure 2017191040
そして、次式(37)のように定義される観測値誤差ベクトルvβのノルム||vβ||を最小にする多項式係数ベクトルaを求める最適化問題を解く。なお、式(37)において、vβj=lβj−lβj’である。
Figure 2017191040
この最適化問題を最小二乗法を用いて解く場合、センサー観測値ベクトルlβから導出される多項式係数ベクトルaの一般的な解は次式(38)のようになる。
Figure 2017191040
また、多項式係数ベクトルaは、Dβの疑似逆行列Dβ を用いて次式(39)のようにも表される。
Figure 2017191040
次に、式(39)により定められた多項式係数ベクトルaを用いて、α群のM個の磁気センサーの位置における磁場計算値ベクトルBnαを行列計算により求める。
α群の磁気センサーjの位置(x,y,z)における環境磁場bnの磁場計算値を(bnjx,bnjy,bnjz)とすると、α群のM個の磁気センサーの位置における磁場計算値ベクトルBnαは、次式(40)で表される。
Figure 2017191040
定義された二次非線形多項式(25)に基づいて、3M×30の位置情報行列Pαを次式(41)のように定義する。
Figure 2017191040
ここで、次の関係式(42)が成り立つ。すなわち、位置情報行列Pαは、α群のM個の磁気センサーの位置ベクトルr=(x,y,z)〜r=(x,y,z)を磁場計算値ベクトルBnαに変換するための行列である。
Figure 2017191040
また、α群のM個の磁気センサーの利得(感度に相当)gα1〜gαNを要素に含む利得行列Gαを次式(43)のように定義する。利得行列Gαは、M×Mの正方行列である。
Figure 2017191040
また、α群の磁気センサーjの検出軸方位をXYZ直交座標系上の単位ベクトルsαj=(sαjx,sαjy,sαjz)で表し、α群のM個の磁気センサーの検出軸方位の単位ベクトルsα1〜sαMを統合したM×3Mの検出軸行列Sαを次式(44)のように定義する。なお、sαjx +sαjy +sαjz =1である。
Figure 2017191040
そして、次式(45)に示すように、利得行列Gαと検出軸行列Sαとの積を検出ベクトル行列Kαとする。ここで、α群の磁気センサーjの検出ベクトルkαj=(gαjαjx,gαjαjy,gαjαjz)であり、検出ベクトル行列Kαは、α群のM個の磁気センサーの検出ベクトルkα1〜kαMを要素に含んでいる。
Figure 2017191040
また、α群の磁気センサーjの計算上の観測値(計測対象の磁場と環境磁場を含む磁場の推定値)を観測値計算値lαj’で表し、α群のM個の磁気センサーの観測値計算値lα1’〜lαM’を統合した観測値計算値ベクトルlα’を次式(46)のように定義する。なお、式(46)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
同様に、α群の磁気センサーjの実際の観測値(実測値)をセンサー観測値lαjで表し、α群のM個の磁気センサーのセンサー観測値lα1〜lαMを統合したセンサー観測値ベクトルlαを次式(47)のように定義する。なお、式(47)において、trはベクトルの転置を表す。
Figure 2017191040
このとき、観測値計算値ベクトルlα’、利得行列Gα、検出軸行列Sα、位置情報行列Pα、検出ベクトル行列Kα及び多項式係数ベクトルaの間には次式(48)の関係式が成り立つ。
Figure 2017191040
ここで、α群のM個の磁気センサーは、第1磁気センサー11に相当し、例えば、被検体(生体)9の生体胸壁に垂直な磁場成分のみを計測すればよいものとする。従って、図9に示すように、α群の各磁気センサーjの検出ベクトルkαjはZ軸方向に揃っており、Z軸に対する検出ベクトルkαjのずれθは小さいものとする。すなわち、単位ベクトルsα1〜sαMはすべて(0,0,1)に近似可能と考える。ただし、利得gα1〜gαMは互いに異なるものとする。
このとき、式(48)で示される観測値計算値ベクトルlα’を利得gα1〜gαMの分だけ補正することで、すなわち、次式(49)のように、式(48)の右辺にGα −1を左から掛けることで、α群のM個の磁気センサーの位置における環境磁場(磁気ノイズ)の近似値l’が得られる。
Figure 2017191040
また、次式(50)により、α群のM個の磁気センサーの位置における全磁場(計測対象の磁場(心磁場)+環境磁場(磁気ノイズ))の近似値lsn’が得られる。
Figure 2017191040
そして、次式(51)のように、α群のM個の磁気センサーの位置における全磁場(計測対象の磁場(心磁場)+環境磁場(磁気ノイズ))の近似値lsn’と環境磁場(磁気ノイズ)の近似値l’との差を取ることで、計測対象の磁場(心磁場)の近似値l’が得られる。
Figure 2017191040
図10は、処理装置2の磁場計算部102(図4参照)が上述した磁場計測方法に対応する磁場計算処理を行う手順の一例を示すフローチャート図である。なお、図10の磁場計算処理は、被検体(生体)9がテーブル4上に横たわっている状態(被検体(生体)9からの心磁場や脳磁場の計測が可能な状態)で行われる。また、図10の磁場計算処理に先立ち、図6に手順の一例を示した校正処理が行われているものとする。すなわち、校正処理において、センサー観測値ベクトルlα,lβが統合されたセンサー観測値行列Lに基づいて、検出ベクトル行列Kα,Kβが統合された検出ベクトル行列Kが更新(算出)され、検出ベクトル行列Kα,Kβの各要素の値が記憶部110に記憶されているものとする。
図10の例では、まず、磁場計算部102は、センサー観測値ベクトルlα,lβを取得する(工程S101)。具体的には、磁場計算部102は、各第1磁気センサー11の計測値を取得し、これらの計測値を統合したセンサー観測値ベクトルlαを取得する。また、磁場計算部102は、各第2磁気センサー30の計測値を取得し、これらの計測値を統合したセンサー観測値ベクトルlβを取得する。
次に、磁場計算部102は、センサー観測値ベクトルlβから多項式係数ベクトルaを算出する(工程S102)。具体的には、磁場計算部102は、工程S1で取得したセンサー観測値ベクトルlβ、校正処理で得られた検出ベクトル行列Kβ及び位置情報行列Pβから式(38)によって多項式係数ベクトルaを算出する。なお、式(38)において、Dβ=Kββである。また、位置情報行列Pβの各要素の値は、あらかじめ記憶部110に記憶されており、検出ベクトル行列Kβの各要素の値は、校正処理において記憶部110に記憶される。
次に、磁場計算部102は、センサー観測値ベクトルlαから第1磁気センサー11の位置での全磁場(計測対象の磁場+環境磁場)の近似値lsn’を算出する(工程S10
3)。具体的には、各第1磁気センサー11の検出ベクトルkαjはすべてZ軸方向に揃っており、Z軸に対する検出ベクトルkαjのずれθは小さいものとして、単位ベクトルsαj=(sαjx,sαjy,sαjz)≒(0,0,1)に近似する。そして、磁場計算部102は、(sαjx,sαjy,sαjz)≒(0,0,1)と検出ベクトル行列Kαから式(43)及び式(45)によって利得行列Gαを算出し、その逆行列Gα −1を算出する。さらに、磁場計算部102は、工程S1で取得したセンサー観測値ベクトルlα及び利得行列Gαの逆行列Gα −1から式(50)によって第1磁気センサー11の位置での全磁場(計測対象の磁場+環境磁場)の近似値lsn’を算出する。なお、検出ベクトル行列Kαの各要素の値は、校正処理において記憶部110に記憶される。
次に、磁場計算部102は、多項式係数ベクトルaから第1磁気センサー11の位置での環境磁場の近似値l’を算出する(工程S104)。具体的には、磁場計算部102は、利得行列Gαの逆行列Gα −1、検出ベクトル行列Kα、位置情報行列Pα及び工程S102で算出した多項式係数ベクトルaから式(49)によって第1磁気センサー11の位置での環境磁場の近似値l’を算出する。なお、位置情報行列Pαの各要素の値は、あらかじめ記憶部110に記憶されている。
最後に、磁場計算部102は、工程S103で算出した第1磁気センサー11の位置での全磁場(計測対象の磁場+県環境磁場)の近似値lsn’及び工程S104で算出した第1磁気センサー11の位置での環境磁場の近似値l’から式(51)によって計測対象の磁場の近似値l’を算出し(工程S105)、磁場計測処理を終了する。
1−7.作用効果
以上に説明したように、本実施形態では、磁場計算部102は、N個の第2磁気センサー30の計測値(センサー観測値ベクトルlβ)に基づいて環境磁場の分布(多項式係数ベクトルa)を推定し、M個の第1磁気センサー11の計測値(センサー観測値ベクトルlα)と推定した環境磁場の分布(多項式係数ベクトルa)とに基づいて、計測対象の磁場(計測対象の磁場の近似値l’)を計算する。
本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、磁場計算部102は、M個の第1磁気センサー11の計測値に基づいてM個の第1磁気センサー11の位置における磁場(計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場)を計算することができ、N個の第2磁気センサー30の計測値に基づいて推定した環境磁場の分布からM個の第1磁気センサー11の位置における環境磁場を計算することができるので、例えば、これらの磁場の差分やその近似値を計測対象の磁場として計算することができる。このように、本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、計測対象の磁場が微弱な磁場であっても、相対的に大きい環境磁場を精度良く推定することにより、十分な精度で計測することができる。
また、本実施形態では、磁場計算部102は、M個の第1磁気センサー11の検出ベクトル(検出ベクトル行列Kα)とM個の第1磁気センサー11の位置情報(位置情報行列Pα)と推定した環境磁場の分布(多項式係数ベクトルa)とに基づいて、第1磁気センサー11による環境磁場の計測値を推定し(式(48))、M個の第1磁気センサー11の計測値(センサー観測値ベクトルlα)と推定した環境磁場の計測値(観測値計算値ベクトルlα’)とに基づいて、計測対象の磁場(計測対象の磁場の近似値l’)を計算する。
このように、本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、磁場計算部102は、推定した環境磁場の分布とともに、M個の第1磁気センサー11の検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)や位置情報も用いることにより、M個の第1磁気センサー11による環境磁場の計測値を精度良く推定することができるので、計測対象の磁場を精度良く計算する
ことができる。
また、本実施形態では、磁場計算部102は、M個の第1磁気センサー11の計測値(センサー観測値ベクトルlα)とM個の第1磁気センサー11の利得(利得行列Gα)とに基づいてM個の第1磁気センサー11の位置における磁場の近似値(lsn’)を計算し(式(50))、推定した環境磁場の計測値(観測値計算値ベクトルlα’)とM個の第1磁気センサー11の利得(利得行列Gα)とに基づいてM個の第1磁気センサー11の位置における環境磁場の近似値(l’)を計算し(式(49))、M個の第1磁気センサー11の位置における磁場の近似値(lsn’)とM個の第1磁気センサー11の位置における環境磁場の近似値(l’)との差分により計測対象の磁場(計測対象の磁場の近似値l’)を計算する(式(51))。
このように、本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、磁場計算部102は、M個の第1磁気センサー11の計測値をM個の第1磁気センサーの利得で除算することによりM個の第1磁気センサーの位置における検出軸方向の磁場(計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場)を算出することができ、推定した環境磁場の計測値をM個の第1磁気センサー11の利得で除算することによりM個の第1磁気センサー11の位置における検出軸方向の環境磁場を算出することができる。そして、本実施形態では、M個の第1磁気センサー11の検出軸の方向と計測方向(Z軸方向)とのずれが小さいので、M個の第1磁気センサー11の位置における検出軸方向の磁場の計算値をM個の第1磁気センサー11の位置における磁場の近似値とし、M個の第1磁気センサー11の位置における検出軸方向の環境磁場の計算値をM個の第1磁気センサー11の位置における環境磁場の近似値とすることができる。従って、本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、すべての第1磁気センサー11の検出軸の方向が揃っているために計測対象の磁場を正しく計算できなくても、磁場計算部102は、M個の第1磁気センサー11の位置における磁場(計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場)の近似値と環境磁場の近似値との差分として、計測対象の磁場を近似計算することができる。
また、本実施形態では、磁場計算部102は、N個の第2磁気センサー30の検出ベクトル(検出ベクトル行列Kβ)とN個の第2磁気センサー30の位置情報(位置情報行列Pβ)とN個の第2磁気センサーの計測値(センサー観測値ベクトルlβ)とに基づいて、環境磁場の分布(多項式係数ベクトルa)を推定する(式(38))。
このように、本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、磁場計算部102は、N個の第2磁気センサーの計測値とともに、N個の第2磁気センサーの検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)や位置情報も用いることにより、環境磁場の分布を精度良く推定することができる。
また、本実施形態では、磁場計算部102は、環境磁場をM個の第1磁気センサー11の位置を変数とする多項式で近似し(式(42))、N個の第2磁気センサー30の計測値(センサー観測値ベクトルlβ)に基づいて、多項式の係数を計算することにより、環境磁場の分布(多項式係数ベクトルa)を推定する。
このように、本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、磁場計算部102は、M個の第1磁気センサー11の位置を変数とする多項式を用いてM個の第1磁気センサー11の位置における環境磁場を精度良く近似し、N個の第2磁気センサー30の計測値に基づいて計算した当該多項式の係数に対応づけてM個の第1磁気センサー11の位置での環境磁場の分布を精度良く推定することができる。
また、本実施形態では、校正部101は、M個の第1磁気センサー11の計測値とN個
の第2磁気センサー30の計測値とに基づいて(センサー観測値ベクトルlα,lβが統合されたセンサー観測値行列Lに基づいて)環境磁場の分布(多項式係数行列A)を推定し、推定した環境磁場の分布(多項式係数行列A)に基づいてM個の第1磁気センサー11の検出ベクトル及びN個の第2磁気センサーの検出ベクトル(検出ベクトル行列Kαと検出ベクトル行列Kβを統合した検出ベクトル行列K)を算出する。
このように、本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、校正部101は、M個の第1磁気センサー11によって計測対象の磁場が計測されない状態において、M個の第1磁気センサー11の計測値とN個の第2磁気センサー30の計測値に基づいて、M個の第1磁気センサー11とN個の第2磁気センサー30を含む空間における環境磁場の分布を推定することにより、M個の第1磁気センサー11の検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)やN個の第2磁気センサー30の検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)を精度良く算出することができる。従って、本実施形態に係る磁場計測装置1によれば、磁場計算部102は、精度良く算出されたM個の第1磁気センサー11の検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)及びN個の第2磁気センサー30の検出ベクトル(検出軸の向きと利得の情報)を用いて、計測対象の磁場を精度良く計算することができる。
2.第2実施形態
第1実施形態に係る磁場計測装置1(磁場計測方法)では、環境磁場の分布を表す非線形多項式(25)は、環境磁場が本来持っている規則性を一切考慮せずに設定されている。これに対して、第2実施形態に係る磁場計測装置1(磁場計測方法)では、環境磁場の発散が零という法則を反映させる点で第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態と同様である。すなわち、第2実施形態に係る磁場計測装置1(磁場計測方法)では、次式(52)が成り立つものとする。そして、磁場計算部102は、環境磁場の発散がゼロであるものとして、多項式(25)の係数(多項式係数ベクトルa)を計算する。
Figure 2017191040
そして、式(52)に式(25)を代入し、各係数の関係を求めると次式(53)が成り立つ。
Figure 2017191040
式(53)が恒等式であることを利用して、次式(54)の関係式が得られる。
Figure 2017191040
式(54)に示す関係式が4個得られることから、第1実施形態では30個あった係数ax1〜ax10,ay1〜ay10,az1〜az10が26個に減少する。そして、磁場計算部102は、図10の手順に従い、計測対象の磁場(近似値l’)を計算する。従って、第2実施形態に係る磁場計測装置1(磁場計測方法)によれば、磁場計算部102の計算量が軽減され、あるいは、計測対象の磁場の計算精度が向上する。
3.第3実施形態
第1実施形態に係る磁場計測装置1(磁場計測方法)では、環境磁場の分布を表す非線形多項式(25)は、環境磁場が本来持っている規則性を一切考慮せずに設定されている。これに対して、第3実施形態に係る磁場計測装置1(磁場計測方法)では、環境磁場の回転が零という法則を反映させる点で第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態と同様である。すなわち、第3実施形態に係る磁場計測装置1(磁場計測方法)では、次式(55)が成り立つものとする。そして、磁場計算部102は、環境磁場の回転がゼロであるものとして、多項式(25)の係数(多項式係数ベクトルa)を計算する。なお、環境磁場の回転が零になるには、計測する空間内で伝導電流および変位電流が零となる条件が必要となるが、この条件は満たされるものとする。
Figure 2017191040
そして、式(55)に式(25)を代入し、各係数の関係を求めると次式(56)が成り立つ。
Figure 2017191040
式(56)が恒等式であることを利用して、次式(57)の関係式が得られる。
Figure 2017191040
式(57)に示す関係式が12個得られるが、このうち、ay7=ax6は、az5=ay7とax6=az5から求められるため、実際には11個の関係式が得られることから、第1実施形態では30個あった係数ax1〜ax10,ay1〜ay10,az1〜az10が19個に減少する。そして、磁場計算部102は、図10の手順に従い、計測対象の磁場(近似値l’)を計算する。従って、第3実施形態に係る磁場計測装置1(磁場計測方法)によれば、磁場計算部102の計算量が軽減され、あるいは、計測対象の磁場の計算精度が向上する。
なお、本実施形態において、磁場計算部102は、第2実施形態と同様、さらに、環境磁場の発散がゼロであるものとして、多項式(25)の係数(多項式係数ベクトルa)を計算してもよい。これにより、係数がさらに4個減って、15個にまで減少するので、磁場計算部102の計算量がさらに軽減され、あるいは、計測対象の磁場の計算精度がさらに向上する。
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上記の各実施形態では、磁場計測装置1の校正部101が校正処理を行っているが、磁場計測装置1とは異なる校正装置が磁場計測装置1の校正処理を行ってもよい。すなわち、磁場計測装置1の処理装置2は校正部101を有していなくてもよい。この場合、当該校正装置は、校正処理によって得られた検出ベクトル行列Kα,Kβを処理装置2の記憶部110に書き込み、磁場計測装置1(磁場計算部102)は、記憶部110に書き込まれた検出ベクトル行列Kα,Kβを用いて磁場計算処理を行えばよい。
また、例えば、上記の各実施形態では、磁場計測装置1が被検体9(生体)の心磁場や脳磁場を計測しているが、磁場計測装置1は、心磁場や脳磁場以外の生体磁場を計測してもよいし、生体磁場以外の磁場(微弱な磁場)を計測するものであってもよい。
また、上記の各実施形態では、α群の磁気センサーの検出ベクトルはZ軸方向に揃っているものとして、計測対象の磁場(心磁場)の近似値l’の計算式(51)を導いたが、α群は、お互いに直交する2軸または3軸方向に検出軸を持つ複数の磁気センサーを含むものとして、以下のようにして、計測対象の磁場(心磁場)を計算してもよい。
まず、式(47)に示したセンサー観測値ベクトルlαから、α群のM個の磁気センサーの周辺の磁場分布を表す多項式(例えば、二次非線形多項式)の多項式係数ベクトルaαを、式(38)と同様の次式(58)によって求める。式(58)において、Dα=Kααである。なお、心磁分布は環境磁場の分布と比較してより高次の項を含むため、α群のM個の磁気センサーの周辺の磁場分布を表す多項式の項は式(25)と同数とは限らない。
Figure 2017191040
次に、式(58)を次式(59)に代入して、α群のM個の磁気センサーの周辺磁場Bsnを算出する。
Figure 2017191040
この周辺磁場Bsnは、環境磁場Bnα(式(42)で求められる)と心磁場Bを含むので、次式(60)により、心磁場Bを算出することができる。
Figure 2017191040
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…磁場計測装置、2…処理装置、3…土台、3a…X方向直動機構、4…テーブル、4a…X方向テーブル、4b…Z方向テーブル、4c…Y方向テーブル、6…磁気シールド装置、6a…本体部、6b…補正コイル(ヘルムホルツコイル)、6c…開口部、7…支持部材、9…被検体(生体)、9a…胸部、10…磁気センサーユニット、11…第1磁気センサー、12…ガスセル、13…偏光分離器、14…第1光検出器、15…第2光検出器、16…ヒーター、18…レーザー光源、18a…レーザー光、19…光ファイバー
、20…光コネクター、21…偏光板、22…第1ハーフミラー、23…第2ハーフミラー、24…第3ハーフミラー、25…第1反射ミラー、26…第4ハーフミラー、27…第5ハーフミラー、28…第6ハーフミラー、29…第2反射ミラー、30…第2磁気センサー、100…演算部、101…校正部、102…磁場計算部、110…記憶部、111…校正プログラム、112…磁場計算プログラム、120…操作部、130…表示部

Claims (12)

  1. 計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場を計測する少なくとも1つの第1磁気センサーと、
    前記環境磁場を計測する複数の第2磁気センサーと、
    前記第2磁気センサーの計測値に基づいて前記環境磁場の分布を推定し、前記第1磁気センサーの計測値と推定した前記環境磁場の分布とに基づいて、前記計測対象の磁場を計算する磁場計算部と、を含む、磁場計測装置。
  2. 前記磁場計算部は、
    前記第1磁気センサーの検出ベクトルと前記第1磁気センサーの位置情報と推定した前記環境磁場の分布とに基づいて、前記第1磁気センサーによる前記環境磁場の計測値を推定し、前記第1磁気センサーの計測値と推定した前記環境磁場の計測値とに基づいて、前記計測対象の磁場を計算する、請求項1に記載の磁場計測装置。
  3. 前記磁場計算部は、
    前記第1磁気センサーの計測値と前記第1磁気センサーの利得とに基づいて前記第1磁気センサーの位置における磁場の近似値を計算し、推定した前記環境磁場の計測値と前記第1磁気センサーの利得とに基づいて前記第1磁気センサーの位置における前記環境磁場の近似値を計算し、前記第1磁気センサーの位置における磁場の近似値と前記第1磁気センサーの位置における前記環境磁場の近似値との差分により前記計測対象の磁場を計算する、請求項2に記載の磁場計測装置。
  4. 前記磁場計算部は、
    前記第2磁気センサーの検出ベクトルと前記第2磁気センサーの位置情報と前記第2磁気センサーの計測値とに基づいて、前記環境磁場の分布を推定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁場計測装置。
  5. 前記第1磁気センサーの計測値と前記第2磁気センサーの計測値とに基づいて前記環境磁場の分布を推定し、推定した前記環境磁場の分布に基づいて前記第1磁気センサーの検出ベクトル及び前記第2磁気センサーの検出ベクトルを算出する校正部を含む、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の磁場計測装置。
  6. 前記磁場計算部は、
    前記環境磁場を前記第1磁気センサーの位置を変数とする多項式で近似し、前記第2磁気センサーの計測値に基づいて、前記多項式の係数を計算することにより、前記環境磁場の分布を推定する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁場計測装置。
  7. 前記磁場計算部は、
    前記環境磁場の発散がゼロであるものとして、前記多項式の係数を計算する、請求項6に記載の磁場計測装置。
  8. 前記磁場計算部は、
    前記環境磁場の回転がゼロであるものとして、前記多項式の係数を計算する、請求項6又は7に記載の磁場計測装置。
  9. 前記第2磁気センサーの検出ベクトルのうちの少なくとも2つは互いに直交する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁場計測装置。
  10. 前記第1磁気センサー及び前記第2磁気センサーは、
    アルカリ金属原子が収容され、直線偏光が入射するセルと、
    前記セルを出射した光を第1軸方向の光と第2軸方向の光に分離する偏光分離器と、
    前記第1軸方向の光を検出する第1光検出器と、
    前記第2軸方向の光を検出する第2光検出器と、を有する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の磁場計測装置。
  11. 前記第2磁気センサーが有する前記セルは、互いに同一平面上に配置されている、請求項10に記載の磁場計測装置。
  12. 計測対象の磁場と環境磁場とを含む磁場を計測する少なくとも1つの第1磁気センサーの計測値を取得する工程と、
    前記環境磁場を計測する複数の第2磁気センサーの計測値を取得する工程と、
    前記第2磁気センサーの計測値に基づいて前記環境磁場の分布を推定する工程と、
    前記第1磁気センサーの計測値と推定した前記環境磁場の分布とに基づいて、前記計測対象の磁場を計算する工程と、を含む、磁場計測方法。
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