JP2017191841A - 磁気センサ素子及び磁気センサ - Google Patents

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剛斎 関
弘毅 高梨
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弘毅 高梨
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Abstract

【課題】微弱な磁場変化を検出できる磁気センサ素子を提供することを目的とする。【解決手段】本実施形態にかかる磁気センサ素子は、一軸磁気異方性を有する磁化固定層と、前記磁化固定層の一面に積層された非磁性層と、前記非磁性層の前記磁化固定層と反対側の面に積層された磁化自由層と、を備え、前記磁化自由層は、ホイスラー合金を含み、駆動時にボルテックス磁気構造を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、磁気センサ素子及び磁気センサに関する。
磁気抵抗効果素子として、強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto Resistive)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto Resistive)素子が知られている。磁気抵抗効果素子は、磁化固定層と磁化自由層との磁化の相対角に応じた抵抗値変化を利用した素子である。磁気抵抗効果素子は、磁気センサ素子、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetoresistive Randam Access Memory)素子等の種々の素子に用いられている。
磁気抵抗効果素子の一つとして、磁化自由層の磁化の振動を利用したスピントルク発振素子が知られている。スピントルク発振素子は、磁化固定層と、非磁性層と、磁化自由層とが順に積層された構造を有する。スピントルク発振素子の積層方向に電流を流すと磁化自由層の磁化が定常な振動状態を示す。磁化自由層の磁化の振動を利用して、GHz帯域の電磁波を発振するマイクロ波発振素子への応用や、磁気センサ素子への応用が進められている。
例えば、特許文献1には、スピントルク発振素子を磁気センサ素子として用いた磁気ヘッドが記載されている。磁化自由層の磁化振動の振幅や周波数が、磁気センサ素子に作用する外部磁場に依存することを利用して、磁気記録媒体からの外部磁場による磁化振動の振幅、周波数又は位相の変化等を検出している。
特開2016−6716号公報
Takeshi Seki,et al.Applied Physics Letters,105,092406(2014).
しかしながら、特許文献1に記載された磁気センサ素子は大きな磁場変化を検出することはできるが、SQUID(Superconducting Quantum Interference Device)により検出されるフェムトテスラ(10−15T)レベルの微弱な磁場変化を検出することはできない。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、微弱な磁場変化を検出できる磁気センサ素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、磁化自由層にホイスラー合金を用いることで大きな磁気抵抗効果を実現し、磁化自由層がボルテックス磁気構造を形成することで、微弱な磁場変化を検出できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)本発明の一態様にかかる磁気センサ素子は、一軸磁気異方性を有する磁化固定層と、前記磁化固定層の一面に積層された非磁性層と、前記非磁性層の前記磁化固定層と反対側の面に積層された磁化自由層と、を備え、前記磁化自由層は、ホイスラー合金を含み、駆動時にボルテックス磁気構造を形成する。
(2)上記(1)に記載の磁気センサ素子において、前記磁化自由層の保磁力は、20Oe以下である構成でもよい。
(3)上記(1)又は(2)のいずれかに記載の磁気センサ素子において、前記磁化自由層の磁化と前記磁化固定層の磁化による磁気抵抗効果のMR比は、10%以上である構成でもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の磁気センサ素子において、前記ホイスラー合金は、Co(FeMn1−x)Si(0≦x≦1)合金でもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の磁気センサ素子において、前記磁化自由層の厚みは、15nm以上50nm以下であってもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の磁気センサ素子において、前記磁化自由層を積層方向から平面視した形状が、円形であってもよい。
(7)上記(6)に記載の磁気センサ素子において、前記磁化自由層を積層方向から平面視した面の径は、10μm以下であってもよい。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の磁気センサ素子において、前記非磁性層が非磁性金属層であってもよい。
(9)本発明の一態様にかかる磁気センサは、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の磁気センサ素子と、前記磁気センサ素子の積層方向に電流を印加する電流源と、前記磁気センサ素子における電圧変化を出力する出力手段と、を備える。
本発明の一態様に係る磁気センサ素子によれば、磁化自由層がボルテックス磁気構造を形成し、磁化自由層の有効磁場が安定化するため、微弱な磁場変化も検出できる。
本発明の一態様に係る磁気センサの模式図である。 ホイスラー合金の結晶構造の模式図である。 本発明の一態様にかかる磁気センサ素子の磁化自由層におけるボルテックス磁気構造を模式的に示した平面図である。 磁化自由層にCo(Fe0.4Mn0.6)Si合金を用い、磁化自由層を積層方向から平面視した面の径と、磁化自由層の厚みを変化させた際におけるボルテックス磁気構造を形成する領域を示したグラフである。 本発明の一態様にかかる磁気センサ素子の磁化自由層におけるボルテックス磁気構造の時間変化を模式的に示した平面図である。 本発明の一態様にかかる磁気センサ素子の抵抗値の時間変化を模式的に示したグラフである。 本発明の一態様にかかる磁気センサにより微弱な外部磁場の変動を検出する方法について説明するための模式図である。 比較例にかかる磁気センサにおける磁気センサ素子を模式的に示した斜視図である。 実施例1における磁化自由層に形成された磁区像を示す図である。 実施例2にかかる磁気センサ素子により出力された高周波電圧の発振スペクトルを示した図である。
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
図1は、本発明の一態様にかかる磁気センサ100の模式図である。
図1に示すように、磁気センサ100は、磁気センサ素子10と、電流源20と、出力手段30とを備える。磁気センサ100は、電流源20から供給された電流により生じる磁気センサ素子10の抵抗値変化を電圧として読出し、読出した電圧を出力手段30で外部に出力する。
(磁気センサ素子)
磁気センサ素子10は、磁化固定層1と、非磁性層2と、磁化自由層3とを備える。以下、磁化固定層1、非磁性層2及び磁化自由層3が積層されている方向を積層方向といい、磁化固定層1に対して非磁性層2側を「上」、非磁性層2と反対側を「下」ということがある。また、積層方向に対して垂直な面の延在方向を面内方向ということがある。
図1において、磁化固定層1の下側には下地層4が設けられ、磁化自由層3の上側には、キャップ層5が設けられている。
磁化固定層1は、一軸方向に磁気異方性を有する強磁性体である。磁化固定層1の磁化の向きは面内方向のいずれかの方向に固定されている。
磁化固定層1に用いる材料には、積層した際に一軸磁気異方性を有する公知の材料を用いることができる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金、又は、これらの金属とB、C及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることができる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが挙げられる。
この他に磁化固定層1には、スピン分極率の高い材料として、CoFeSiなどのホイスラー合金を用いることができる。磁化固定層1にスピン分極率の高い材料を用いると、磁気センサ100の出力電圧をより大きくすることができる。
図2は、ホイスラー合金の結晶構造を模式的に示した図である。ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含む。Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、Cu族の遷移金属元素又は貴金属元素である。Yは、Mn、V、Cr又はTi族の遷移金属であり、Xとして記載の元素種を選択することもできる。Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、Co(FeMn1−x)Si(0≦x≦1)などが挙げられる。
非磁性層2は、磁化固定層1上に積層される。
非磁性層2を構成する材料は、金属でも、絶縁体でもよい。非磁性層2が金属の場合、磁気センサ素子10は一般にGMR素子と呼ばれる。非磁性層2が絶縁体の場合、磁気センサ素子10は一般にTMR素子と呼ばれる。
非磁性層2が金属からなる場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。
また、非磁性層2が絶縁体(トンネルバリア層)からなる場合、その材料としては、Al、SiO、MgO又はMgAlを用いることができる。またこれらの他にも、Al、Si、Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等も用いることができる。
非磁性層2には、上述のように非磁性金属層及び非磁性絶縁層のいずれも選択することができるが、非磁性金属層であることが好ましい。非磁性層2を非磁性金属層とすることで、磁気センサ素子10の積層方向に電流を印加した際にショットノイズの発生を抑制することができる。また使用態様時に磁気センサ素子10には電流を印加し続けるが、非磁性層2を非磁性金属層とすることで、非磁性層2が絶縁破壊する等の問題を避けることができる。
磁化自由層3は、非磁性層2上に積層される。磁化自由層3は円柱状に加工され、積層方向から平面視した面の形状は円形である。ここで「円形」は真円に限られず、楕円等でもよい。磁化自由層3は駆動時にボルテックス磁気構造を形成する。
図3は、本発明の一態様にかかる磁気センサ素子10の磁化自由層3におけるボルテックス磁気構造を模式的に示した平面図である。磁気センサ100の使用時において磁気センサ素子10の積層方向に電流が印加され、磁気センサ素子10に外部磁場が印加されると、磁化自由層3内にボルテックス磁気構造が形成される。
ボルテックス磁気構造は、図3に示すように、コア領域3Aと、ボルテックス領域3Bからなる。
コア領域3Aにおけるスピンは、磁化自由層3の積層方向に配向している。コア領域3Aは、磁化自由層3を積層方向から平面視した面の中心C(以下、単に「中心」ということがある)を基準に円を描くように、面内方向に移動する。図3において、時間経過とともにコア領域3Aが移動する軌跡を点線で図示している。
ボルテックス領域3Bにおけるスピンは、磁化自由層3の面内方向にコア領域3Aを取り囲み、コア領域3Aのスピンを軸に渦を巻いている。
磁化自由層3の形状は、安定的なボルテックス磁気構造の形成に寄与する。具体的には、磁化自由層3の厚みと磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径とは、安定的なボルテックス磁気構造の形成に影響を与える。
図4は、磁化自由層3にCo(Fe0.4Mn0.6)Si合金を用い、磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径と、磁化自由層3の厚みを変化させた際におけるボルテックス磁気構造を形成する領域を示したグラフである。図4において、横軸は磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径であり、縦軸は磁化自由層3の厚みである。また点線より図示左上の領域はボルテックス磁気構造が容易に形成された領域であり、点線より図示右下の領域はボルテックス磁気構造が形成するのが困難な領域である。
ボルテックス磁気構造を安定的に形成するという観点からは、磁化自由層3の厚みは厚い方が好ましい。一方で、磁化自由層3の厚みが厚くなると、磁気センサ素子10の積層方向の素子抵抗が大きくなる。素子抵抗が大きくなると、磁化固定層1と磁化自由層3の磁気の向きの相対角に応じて変化する検出すべき磁気抵抗変化とノイズとの切り分けが難しくなる。換言すると、磁気センサ素子10のMR比を高めるためには、磁化自由層3の厚みは薄い方が好ましい。すなわち、安定的にボルテックス磁気構造を形成し、かつ、高いMR比を得るためには、磁化自由層3の厚みは、15nm以上50nm以下であることが好ましい。
また、磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径は、磁化自由層3の厚みに応じて適宜設計することが好ましい。磁化自由層3は、電子線リソグラフィ又はフォトリソグラフィ等を利用して加工される。そのため、磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径は、形状加工性の観点からは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径がこの範囲内であれば、上述の磁化自由層3の厚み範囲内でも、安定的にボルテックス磁気構造を形成することができる。ここで磁化自由層3を積層方向から平面視した面の形状が真円以外の場合、「径」は磁化自由層3と内接する円の径を意味する。
また磁化自由層3は、磁気異方性が弱く、スピン分極率が大きい物質を含むことが好ましい。「磁気異方性が弱い」は、磁化自由層3の保磁力が20Oe以下であると換言することができる。また「スピン分極率が大きい」は、磁化自由層3の磁化と磁化固定層1の磁化による磁気抵抗効果のMR比が10%以上であると換言することができる。
磁気異方性は、強磁性体中のスピンの向きによって、その内部エネルギーが異なる性質である。一方で、保磁力は、磁化された磁性体を磁化されていない状態に戻すために必要な反対向きの外部磁場の強さをいう。そのため、磁気異方性と保磁力は同一ではないが、互いに密接な関係を有する概念である。磁気異方性が強ければ保磁力が大きくなり、磁気異方性が弱ければ保磁力が小さくなる。そのため、磁気異方性の強弱を保磁力の強弱として表現することができる。
磁化自由層3内のスピンは、磁化自由層3の磁気異方性が非常に強い(磁化自由層3の保磁力が大きい)場合、ボルテックス磁気構造を形成せずに一軸に配向する。一軸に配向した方が、エネルギー的に安定になるためである。つまり、磁化自由層3の磁気異方性が強いと、磁化自由層3内にボルテックス磁気構造を形成することが難しくなる。
これに対し、磁化自由層3の保磁力が20Oe以下であれば、磁化自由層3内に安定的にボルテックス磁気構造を形成することができる。より安定的にボルテックス磁気構造を形成するためには、磁化自由層3の保磁力は15Oe以下であることがより好ましく、10Oe以下であることがさらに好ましい。
またスピン分極率は、物質内の上向きスピンと下向きスピンの差を意味する。例えば、物質内のスピンが全て上向きスピン又は下向きスピンの場合はスピン分極率が100%であり、上向きスピンと下向きスピンが同数の場合はスピン分極率が0%である。
一方で、MR比は、以下の一般式(1)で表現され、磁化固定層1及び磁化自由層3のスピン分極率に比例する。
MR比=(RAP−R/R)×100 ∝P …(1)
は磁化固定層1と磁化自由層3の磁化の向きが平行の場合の抵抗であり、RAPは磁化固定層1と磁化自由層3の磁化の向きが反平行の場合の抵抗である。またPは磁化固定層1のスピン分極率であり、Pは磁化自由層3のスピン分極率である。
そのため、スピン分極率とMR比は同一ではないが、互いに密接な関係を有する概念である。磁化固定層1及び磁化自由層3のスピン分極率が大きければMR比は大きくなり、磁化固定層1及び磁化自由層3のスピン分極率が小さければMR比が小さくなる。そのため、スピン分極率の大小をMR比の大小として表現することができる。磁化自由層3のスピン分極率は、磁化自由層3と非磁性層2との界面等の界面の効果の影響を含むため、正確に見積もることが困難であるが、MR比は抵抗変化率を測定すれば容易に測定できる。
磁化自由層3の磁化と磁化固定層1の磁化による磁気抵抗効果のMR比が大きいと、磁化自由層3と磁化固定層1の磁化の向きの相対角変化により生じる抵抗値変化量が大きくなる。すなわち、磁気センサ素子10が出力する高周波電圧の電位差が大きくなる。出力される高周波電圧の電位差が大きくなれば、出力される情報とノイズの区別が明確になり、磁気センサ100の感度が高まる。
また磁化自由層3は、ホイスラー合金を含む。ホイスラー合金は、ハーフメタルと言われ、フェルミ面に一方のスピンを有する電子のみが存在する。そのため、高いスピン分極率を実現することができ、理論的には室温で100%のスピン分極率を達成できると予想されている。
磁化自由層3に用いることができるホイスラー合金は、磁化固定層1で示したものと同様である。上述したホイスラー合金の中でも、Co(FeMn1−x)Si(0≦x≦1)合金を用いることが好ましい。この合金の組成比は、0.2≦x≦0.8であることが好ましく、0.3≦x≦0.7であることより好ましく、0.35≦x≦0.5であることがさらに好ましい。Co(FeMn1−x)Si合金は高いスピン分極率を有するため、高いMR比を得ることができる。また、特に組成を上述の範囲とすることで、より高いMR比を得ることができる。
下地層4は、図示略の基板上に積層される。下地層4は、基板と磁化固定層1の結晶構造の違いを緩和するためのバッファ層である。下地層4を設けると、磁化固定層1を含む各層の結晶配向性、結晶粒径等の結晶性を高めることができる。下地層4は、必須の層ではなく、用途に応じて省くことができる。
図1に示す下地層4は、第1下地層4Aと第2下地層4Bからなる。下地層4は、図1に示す態様に限られず、1層でもよいし、3層以上の複数層積層してもよい。下地層4の構成を工夫することにより磁気センサ素子10を構成する各層の結晶性を高め、磁気特性の改善が可能となる。
下地層4は、磁化固定層1と同様の結晶構造を有していることが好ましい。下地層4には、例えば、Al、Cr、Fe、Co、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Mo、Wの群から選択される少なくとも1つの元素を含む物質を用いることができる。この物質には、単体金属、合金、酸化物、窒化物等が含まれる。
キャップ層5は、磁化自由層3上に積層されている。キャップ層5は、磁化自由層3から元素の拡散を抑制する。またキャップ層5は磁化自由層3の酸化を抑制する。またキャップ層5は、磁気センサ素子10の各層の結晶配向性にも寄与する。その結果、キャップ層5を設けることで、磁気センサ素子10における磁化固定層1及び磁化自由層3の磁性の配向性が安定化し、磁気センサ素子10を低抵抗化することができる。キャップ層5は、必須の層ではなく、用途に応じて省くことができる。
キャップ層5には、導電性が高い材料を用いることが好ましい。例えば、Ru、Ta、Cu、Ag、Au等を用いることができる。キャップ層5が導電性を有することで、磁気センサ素子10の積層方向に電流を流すための電極としても機能することができる。キャップ層5の結晶構造は、隣接する磁化自由層3の結晶構造に合せて設定することが好ましい。
磁気センサ素子10の各層は、例えば、スパッタ装置を用いて形成することができる。成膜法としてはマグネトロンスパッタ法のほか、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法等の薄膜作成法を用いることができる。また円柱状の非磁性層2及び磁化自由層3は、電子線リソグラフィ又はフォトリソグラフィ等の公知の方法で作製できる。
(電流源)
電流源20は、磁気センサ素子10の積層方向に電流を印加する。図1では、電流源20は、磁気センサ素子10の下地層4とキャップ層5に接続されている。電流源20は、公知の電流源を用いることができる。
(出力手段)
出力手段30は、磁気センサ素子10の磁化自由層3の磁化の向きと磁化固定層1の磁化の向きとの相対角変化により生じる抵抗値変化を電圧として出力する。出力手段30は、アンプ31と検出部32とを有する。検出部32には、オシロスコープやスペクトルアナライザー等を用いることができる。また磁気センサ素子10から出力された高周波電圧と、磁気センサ素子10へ印加する直流電流とを分離するバイアスティー33が、出力手段30と磁気センサ素子10の間に配設されている。
次いで、磁気センサ100の動作について説明する。
磁気センサ100の磁気センサ素子10に外部磁場を印加する。また電流源20によって、磁気センサ素子10の積層方向に電流を印加する。
磁気センサ素子10に外部磁場と電流が印加されると、磁化自由層3にボルテックス磁気構造が形成される。
上述のようにボルテックス磁気構造におけるコア領域3Aは、中心Cを基準に円を描くように、面内方向に移動する。またボルテックス領域3Bにおけるスピンは磁化自由層3の面内方向にコア領域3Aを取り囲み、コア領域3Aのスピンを軸に渦を巻く。すなわち、磁化自由層3におけるスピンは、回転軸を面内方向に変化させながら渦を巻く。
図5は、本発明の一態様にかかる磁気センサ素子10の磁化自由層3におけるボルテックス磁気構造の時間変化を積層方向から平面視した模式図である。図5は、任意の時間aにおけるボルテックス磁気構造と、その任意の時間における磁化自由層3の有効磁化の向き(黒矢印)と、磁化固定層1の有効磁化の向き(白抜き矢印)を示す。また図5は、任意の時間から一定の時間経過後の時間b、時間c、時間dにおけるボルテックス磁気構造と、その時間における磁化自由層3の有効磁化の向き(黒矢印)と、磁化固定層1の有効磁化の向き(白抜き矢印)を示す。時間は、時間a、時間b、時間c、時間dの順に流れる。ここで、「有効磁化」とは、磁化固定層1又は磁化自由層3のスピンをマクロに総和したものを意味する。
図5に示すように、ある任意の時間aにおいてコア領域3Aの位置は、中心Cより+x方向にずれている。ここで、x方向は、中心Cを基準とした面内方向の任意の一方向であり、y方向は面内方向でx方向と直交する方向である。
ボルテックス領域3Bにおけるスピンの向きは、場所毎に異なる。図5に示すように、中心Cを基準にコア領域3Aより+x方向に存在するスピンは+y方向に配向し、−x方向に存在するスピンは−y方向に配向し、+y方向に存在するスピンは−x方向に配向し、−y方向に存在するスピンは+x方向に配向する。
ある任意の時間aにおいては、相対的に−y方向に配向したスピンの量が多くなる。コア領域3Aの位置が中心Cより+x方向にずれ、相対的に−y方向に配向したスピンが存在する領域の面積が増えるためである。その結果、ある任意の時間aにおける磁化自由層3の有効磁化の向きは、−y方向になる。
任意の時間aから一定の時間が経過した時間b、時間c、時間dにおいてもそれぞれ同様のことが言える。
時間bにおいては、コア領域3Aの位置は中心Cを基準に−y方向にある。そのため、時間bでは、相対的に−x方向に配向したスピンが存在する領域の面積が増え、磁化自由層3の有効磁化の向きは、−x方向になる。
時間cにおいては、コア領域3Aの位置は中心Cを基準に−x方向にある。そのため、時間cでは、相対的に+y方向に配向したスピンが存在する領域の面積が増え、磁化自由層3の有効磁化の向きは、+y方向になる。
時間dにおいては、コア領域3Aの位置は中心Cを基準に+y方向にある。そのため、時間dでは、相対的に+x方向に配向したスピンが存在する領域の面積が増え、磁化自由層3の有効磁化の向きは、+x方向になる。
なお、図5に示すスピンの向きは一例であり、逆向きのカイラリティを有する場合もある。この場合、スピンの方向の正負の符号は逆転する。
これに対し、磁化固定層1の有効磁化の向き(白抜き矢印)は、常に面内方向の任意の方向に向いている。図5では、磁化固定層1の有効磁化の向きは、+x方向に向いている。すなわち、磁化固定層1の有効磁化に対する磁化自由層3の有効磁化の相対角は、時間と共に変化する。
図6は、本発明の一態様にかかる磁気センサ素子10の抵抗値の時間変化を模式的に示したグラフである。縦軸は磁気センサ素子10の素子抵抗であり、横軸は時間である。
図6に示すように、ある任意の時間aにおける磁気センサ素子10の抵抗値は、Raである。ある任意の時間aから一定時間が経過し、時間bに至ると、磁化固定層1と磁化自由層3の有効磁化の向きは互いに反平行になる(図5のb参照)。このとき、磁気センサ素子10の抵抗値Rbは最大値を示す。その後、時間cを経て時間dに至ると、磁化固定層1と磁化自由層3の有効磁化の向きは互いに平行になる(図5のd参照)。このとき、磁気センサ素子10の抵抗値Rdは最小値を示す。また時間cと時間aにおいては、磁化固定層1の磁化に対する磁化自由層3の磁化の相対角が同じであるため、時間cにおける抵抗値Rcは、時間aにおける抵抗値Raと同じとなる。
このように、磁気センサ素子10の駆動時における抵抗値は、時間と共に一定の周波数で変化する。磁気センサ素子10に印加する電流は定電流であるため、オームの法則により、出力される電圧は、一定の周波数を有する高周波電圧となる。周波数は、磁気センサ素子10の構造や組成等で変化するが、一般にGHz帯域の周波数である。
そして、磁気センサ素子10により生じた高周波電圧は、バイアスティー33で直流成分と分離され、出力手段30に出力される。出力手段30では、検出した高周波電圧をアンプ31で増幅し、検出部32で検出する。
磁気センサ100は、外部磁場の変動を検出する。次に、検出手順について説明する。図7は、磁気センサ100により微弱な外部磁場の変動を検出する方法について説明するための模式図である。縦軸は検出する信号強度であり、横軸は周波数である。
上述のように、一定の外部磁場及び一定の電流が印加された磁気センサ素子10は、出力周波数がfの高周波電圧を出力する。検出部32に検出周波数がfの高周波信号を検波するミキサー等の整流器を設け、高周波電圧の出力周波数(f)とミキサーの検出周波数(f)とを一致させる。すると、図7(a)に示すように、磁気センサ素子10で生じた高周波電圧は検出部32で検波できる。つまり、磁気センサ素子10に、一定の外部磁場及び一定の電流が印加され続けると、一定の出力周波数(f)の高周波電圧が出力され、検出部32は高周波電圧を信号として検波する。
これに対し、磁気センサ素子10に外部磁場が変動すると、コア領域3Aが中心Cの周りを回転する動きや、コア領域3Aの周囲を渦巻くボルテックス領域3Bのスピンの動きが変化する。すなわち、上述のボルテックス磁気構造の運動状態が変化する。ボルテックス磁気構造の運動状態が変化すると、図6に示す抵抗値変化の周期が変化し、出力される高周波電圧の周波数が変化する。
すなわち、磁気センサ素子10に印加される磁場が基準状態の磁場HからH+ΔHに変動すると、高周波電圧の出力周波数は、fからf’(f+Δf)に変動する。
出力される高周波電圧の出力周波数がf’に変化すると、高周波電圧の出力周波数f’とミキサーの検出周波数fとが一致しなくなる。その結果、検出部32は高周波電圧を信号として検波できなくなる。すなわち、磁気センサ100は、外部磁場の変動を出力される信号強度として検出することができる。
本発明の一態様にかかる磁気センサ100は、外部磁場の変動を磁化自由層3のボルテックス磁気構造の運動状態の変化として読み出している。そのため、外部磁場の変動を高感度に読み出すことができる。その理由について、比較例を挙げて説明する。
図8は、比較例にかかる磁気センサ100における磁気センサ素子10を模式的に示した斜視図である。比較例に係る磁気センサ素子10’は、磁化自由層3がボルテックス磁気構造を形成せずに、磁化自由層3の磁化が振動するシングルスピンモデルの磁気センサ素子10’である点が異なる。その他の構成については、本実施形態にかかる磁気センサ素子10と同様であり、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
比較例1にかかる磁気センサ素子10’は、磁化自由層3’の磁化が振動することで、磁化固定層1の磁化との相対角差により抵抗値変化が生じる。このとき磁化自由層3’をミクロに見ると、各スピンの向きは必ずしも一定ではない。例えば、磁化自由層3’の中心部と外縁部とでは、スピンが感じる磁場強度が異なり、それぞれの位置におけるスピンは異なる振動状態となる。そのため、磁気センサ素子10’の抵抗値変化の周波数にバラツキが生じ、出力される高周波電圧の周波数もバラつく。
これに対し、本実施形態にかかる磁気センサ素子10は、磁化自由層3のボルテックス磁気構造の運動状態の変化を、高周波電圧として読み出している。ボルテックス磁気構造は、渦状に形成されたスピンの流れを有する。そのため、それぞれの領域をミクロに見た際のスピンの向きは所定の方向に揃う。その結果、磁化自由層3全体の有効磁場のバラツキは少なくなり、図6に示すように、磁気センサ素子10の抵抗値変化は一定の周波数となり、出力される高周波電圧の周波数も一定となる。
高周波電圧の周波数が一定になると、出力される信号の線幅が狭くなる(図7(a)、(b)参照)。信号の線幅が狭くなると、高周波電圧の周波数が基準の周波数fから僅かに変動(Δf)した場合でも、検出周波数fで出力される信号強度が大幅に低下する。すなわち、本実施形態にかかる磁気センサ素子10は、僅かな磁場変化も高感度に検出することができる。
また本実施形態にかかる磁気センサ素子10は、ボルテックス磁気構造を形成する磁化自由層3がホイスラー合金を含むことで、高周波電圧の電圧変化量を大きくでき、図7に示す出力される信号の強度を大きくできる。得られる信号強度が大きいと、信号がノイズに紛れることが避けられ、磁気センサ100の検出感度が高まる。
図5に示すように、ボルテックス磁気構造中に、磁化自由層3の有効磁化方向(黒矢印)と逆向きのスピンが生じることは避けられない。有効磁化方向と逆向きのスピンの量が多くなると、MR比が小さくなり、高周波電圧の出力が小さくなる。しかしながら、本実施形態にかかる磁気センサ素子10は、ボルテックス磁気構造を形成する磁化自由層3がスピン分極率の高いホイスラー合金を有する。そのため、有効磁化方向(黒矢印)と逆向きのスピンが生じても、大きな信号強度を維持することができる。
なお、ここまで磁気センサ素子10を磁気センサ100の一部品として用いる態様について説明した。一方で、上述のように磁気センサ素子10は、高周波信号を生み出すことができる。そのため、磁気センサ素子10を、マイクロ波発振素子として用いることもできる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
(実施例1)
実施例1では、所定の形状の磁性層内にボルテックス磁気構造が形成されるかを確認した。すなわち、磁気センサ素子10における磁化自由層3内にボルテックス磁気構造を好適に形成できるかを確認した。
(100)結晶面を有するMgO単結晶からなる基板上に、スパッタにより各層を形成した。下地層4は厚み20nmで、1層構造とした。下地層4上には、磁性層を50nm積層した。そして、積層した磁性層を電子線リソグラフィにより円形状に加工した。
各層の組成は、以下のようにした。
下地層4:Cr
磁性層(磁化自由層3):Co(Fe0.4Mn0.6)Si合金
図9は、実施例1における磁化自由層3に形成された磁区像を示す図である。図9(a)は磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径が50nmの場合であり、図9(b)は磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径が2μmの場合であり、図9(c)は、磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径が5μmの場合である。磁区像は、光電子顕微鏡を用いて測定し、X線磁気円二色性(X−ray magnetic circular dichroism:XMCD)を利用してコントラスト化した。
磁区像において、コントラストの濃い黒色部分は一定の方向にスピンが配向し、コントラストの薄い白色部分はその反対の方向にスピンが配向していることを示す。また白色部分と黒色部分を繋ぐ領域では、スピン配向が変化しているため中間のコントラストとなっている。図9(c)に、得られた磁区像の写真から読み取れるスピンの向きを示す。
すなわち、図9(a)〜(c)から、いずれの場合もボルテックス磁気構造が好適に形成されていることが分かる。
(実施例2)
実施例2では、磁気センサ素子10により出力される信号のスペクトルを確認した。
実施例2では、(100)結晶面を有するMgO単結晶からなる基板上に、スパッタにより各層を形成した。下地層4は各層の厚みを20nmとし、2層構造とした。下地層4上には、磁化固定層1を20nm積層した。次いで、非磁性層2、磁化自由層3、キャップ層5を順に積層した。キャップ層5は2層構造とした。非磁性層2の厚みは5nm、磁化自由層3の厚みは30nm、キャップ層5の厚みは1層目を2nmとし、2層目を3nmとした。そして、積層した薄膜資料を電子線リソグラフィにより円形状に加工した。磁化自由層3を積層方向から平面視した面の径は240nmとした。
各層の組成は、以下のようにした。
第2下地層4B:Cr
第1下地層4A:Ag
磁性化固定層1:Co(Fe0.4Mn0.6)Si合金
非磁性層2:Ag
磁化自由層3:Co(FeMn1−x)Si合金
キャップ層5:AgとAuの積層構造
図10は、実施例2にかかる磁気センサ素子10により出力された高周波電圧の発振スペクトルを示した図である。横軸は高周波電圧の周波数であり、縦軸はパワースペクトル密度(PSD)である。
図10に示すように、実施例2にかかる磁気センサ100は、出力10nW、Q値(周波数/線幅)が4000であった。図8に示すシングルスピンモデルの場合、出力はpWであり、Q値は良くても1000弱である(非特許文献1参照)。すなわち、本実施形態にかかる磁気センサ素子10によれば、高感度かつ高出力の磁気センサ100を実現することができる。
100…磁気センサ、10,10’…磁気センサ素子、1…磁化固定層、2…非磁性層、3,3’…磁化自由層、3A…コア領域、3B…ボルテックス領域、4…下地層、4A…第1下地層、4B…第2下地層、5…キャップ層、20…電流源、30…出力手段、31…アンプ、32…検出部、33…バイアスティー、C…中心

Claims (9)

  1. 一軸磁気異方性を有する磁化固定層と、
    前記磁化固定層の一面に積層された非磁性層と、
    前記非磁性層の前記磁化固定層と反対側の面に積層された磁化自由層と、を備え、
    前記磁化自由層は、ホイスラー合金を含み、駆動時にボルテックス磁気構造を形成する磁気センサ素子。
  2. 前記磁化自由層の保磁力は、20Oe以下である請求項1に記載の磁気センサ素子。
  3. 前記磁化自由層の磁化と前記磁化固定層の磁化による磁気抵抗効果のMR比は、10%以上である請求項1又は2のいずれかに記載の磁気センサ素子。
  4. 前記ホイスラー合金が、Co(FeMn1−x)Si(0≦x≦1)合金である請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気センサ素子。
  5. 前記磁化自由層の厚みは、15nm以上50nm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気センサ素子。
  6. 前記磁化自由層を積層方向から平面視した形状が、円形である請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気センサ素子。
  7. 前記磁化自由層を積層方向から平面視した面の径は、10μm以下である請求項6に記載の磁気センサ素子。
  8. 前記非磁性層が非磁性金属層である請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気センサ素子。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気センサ素子と、
    前記磁気センサ素子の積層方向に電流を印加する電流源と、
    前記磁気センサ素子における電圧変化を出力する出力手段と、を備える磁気センサ。
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