JP2017193022A - キーレンチ - Google Patents

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朗 井加田
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豊彦 河野
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光哉 野村
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Abstract

【課題】穴の表面の変形が抑制されるとともに、過大なカムアウト荷重の発生が抑制されるキーレンチを提供する。【解決手段】Nを3以上の任意の自然数と定義する。キーレンチは、N角形状の穴2に係合可能なキー部分5−2と、基端部分5−1とを具備する。キー部分5−2は、第1側面50−1、第2側面50−2、および、第N側面50−Nを含むN個の側面を備える。第1側面50−1は、テーパー面であり、第N側面50−Nは、非テーパー面である。【選択図】図6

Description

本発明は、キーレンチに関する。
例えば、六角穴を有する締結部材を、当該六角穴に係合可能なキーを有するキーレンチ(key wrench)を用いて操作することが知られている。図1(断面図)には、締結部材1’の六角穴2’と、キーレンチ5’のキー部分とが記載されている。キー部分の断面形状は、六角穴2’の断面形状より小さくなるように形成されている。このため、図1に示されるように、キー部分の角部6’と、六角穴2’を規定する表面3’とが、小さな面積で接触することとなる。その結果、当該小さな面積に対応する部分には大きな応力集中が発生する。このため、キー部分の角部6’によって、六角穴2’を規定する表面3’が変形する。
締結部材1’の固定または取り外しが一回以上行われる場合、表面3’の変形が進行し、締結部材1’をキーレンチによって操作(固定または取り外し)することが不可能となるおそれがある。図2には、締結部材1’の固定または取り外しが複数回行われた結果、六角穴2’を規定する表面3’の形状が、符号3’’によって示される円形状に変化した例が示されている。
関連する技術として、特許文献1には、レンチが記載されている。特許文献1に記載のレンチは、操作部と作用部とを備える。作用部は、先端に向かって細くなる六角錐形状を有し、作用部の側面は、作用部の軸心に対して傾斜している。当該構成により、作用部と、ネジ部材の六角穴との密着性が向上する。
特開2000−52264号公報
本発明の目的は、穴の表面の変形が抑制されるとともに、過大なカムアウト荷重の発生が抑制されるキーレンチを提供することにある。
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
いくつかの実施形態におけるキーレンチは、Nを3以上の任意の自然数と定義する時、N角形状の穴(2)に係合可能なキー部分(5−2)と、基端部分(5−1)とを具備する。前記キー部分(5−2)は、第1側面(50−1)、第2側面(50−2)、および、第N側面(50−N)を含むN個の側面を備える。前記第1側面(50−1)は、テーパー面であり、前記第N側面(50−N)は、非テーパー面である。
上記キーレンチにおいて、前記キー部分(5−2)は、第3側面(50−3)を含んでいてもよい。また、前記第2側面(50−2)および第3側面(50−3)のうちの少なくとも1つは、テーパー面であってもよい。また、前記N個の側面のうち、前記第1側面(50−1)、前記第2側面(50−2)、および、前記第3側面(50−3)以外の側面は、非テーパー面であってもよい。
上記キーレンチにおいて、前記第2側面(50−2)は、テーパー面であってもよい。前記第3側面(50−3)は、非テーパー面であってもよい。
上記キーレンチにおいて、前記第2側面(50−2)は、テーパー面であってもよい。テーパー面である前記第1側面(50−1)と、テーパー面である前記第2側面(50−2)とは、互いに隣接していてもよい。
上記キーレンチにおいて、前記第1側面(50−1)のテーパー角度は、1°以上2.5°以下であってもよい。
上記キーレンチにおいて、前記キー部分の長手方向軸に垂直な断面は、仮想的な正N角形を構成するN個の辺のいずれかに重なる2つ以上の辺と、前記仮想的な正N角形の外方に位置する少なくとも1つの辺を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態におけるキーレンチは、Nを3以上の任意の自然数と定義する時、N角形状の穴(2)に係合可能なキー部分(5−2)と、基端部分(5−1)とを具備する。前記キー部分(5−2)は、第1側面(50−1)、第2側面(50−2)、および、第N側面(50−N)を含むN個の側面を備える。前記第1側面(50−1)は、前記キー部分(5−2)の長手方向中心軸(L1)である第1軸に対して傾斜した第1テーパー面を含む。前記第N側面(50−N)と前記第1軸との間のなす角度である第Nテーパー角度は、前記第1側面(50−1)と前記第1軸との間のなす角度である第1テーパー角度よりも小さい。
本発明により、穴の表面の変形が抑制されるとともに、過大なカムアウト荷重の発生が抑制されるキーレンチが提供できる。
図1は、従来のキーレンチの使用によって、穴を規定する表面に応力集中が発生している様子を示す概略断面図である。 図2は、従来のキーレンチの使用によって、穴を規定する表面の形状が大きく変化した状態を示す概略断面図である。 図3は、キー部分の長手方向中心軸について説明するための図であって、キー部分の長手方向に垂直な断面図である。 図4は、キー部分の長手方向中心軸、および、テーパー角度について説明するための図であって、キー部分の縦断面図である。 図5は、発明者によって認識された事項を説明するための図である。 図6は、実施形態におけるキーレンチの概略斜視図である。 図7は、キーレンチ5のキー部分を穴に挿入した状態を示す縦断面図である。 図8は、図6における面Aでのキーレンチの断面図である。 図9は、実施形態におけるキーレンチの変形例を模式的に示す底面図である。 図10Aは、第1例におけるキーレンチのキー部分の概略底面図である。 図10Bは、第2例におけるキーレンチのキー部分の概略底面図である。 図10Cは、第3例におけるキーレンチのキー部分の概略底面図である。 図10Dは、第4例におけるキーレンチのキー部分の概略底面図である。 図10Eは、第5例におけるキーレンチのキー部分の概略底面図である。 図10Fは、第6例におけるキーレンチのキー部分の概略底面図である。 図11は、キーレンチの適用例を示す縦断面図である。 図12は、キーレンチの適用例を示す概略斜視図である。 図13は、実験装置の概要を示す縦断面図である。 図14は、解析結果を示す図である。図14は、テーパー角度と、穴が破壊されるトルクとの関係を示すグラフである。 図15は、解析結果を示す図である。図15は、トルクとカムアウト荷重との関係を示すグラフである。 図16は、解析結果を示す図である。図16は、第1例乃至第6例について、テーパー角度と、穴が変形し始めるトルク、穴が破壊されるトルク、および、カムアウト荷重が10kgfとなるまでに加えられるトルクとの関係を示すグラフである。 図17は、実験結果を示す図である。図17は、テーパー面の個数と、穴が破壊されるトルクとの関係を示すグラフである。 図18は、実験結果を示す図である。図18は、テーパー角度と、穴が破壊されるトルクとの関係を示すグラフである。
以下、実施形態に係るキーレンチに関して、添付図面を参照して説明する。なお、添付図面において、同一の機能を有する構成要素には、同一の符号が付与されている。同一の符号が付された構成要素についての繰り返しとなる説明は省略される。
(用語の定義)
本明細書では、キーレンチのキー部分の遠位端(自由端)から近位方向に向かう方向を「第1方向」と定義する。本明細書において、「上方」は、第1方向に対応する。すなわち、本明細書においては、現実には、第1方向と鉛直上向きの方向とが一致しない場合であっても、「第1方向」が上方であると定義される。また、本明細書において、「下方(第2方向)」は、「上方(第1方向)」とは反対の方向を意味する。
本明細書において、キーレンチのキー部分の長手方向中心軸L1は、一般的な技術常識に照らして解釈される。一般的な技術常識に照らしても、キーレンチのキー部分の長手方向中心軸L1がどの仮想直線に対応するのかが不明である時には、キー部分の長手方向中心軸L1は、以下のとおりに解釈される。
(1)キーレンチのキー部分の長手方向に垂直な断面のうちの少なくとも1つの断面が正多角形である場合、キー部分の長手方向中心軸L1は、当該正多角形の断面に垂直で当該正多角形の断面の中心をとおる軸を意味する。
(2)キーレンチのキー部分の長手方向に垂直な断面のすべてが正多角形でない場合には、キー部分の長手方向に垂直な1つの断面と、キー部分の側面のうち非テーパー面である側面との交線を、非テーパー面に対応する辺と定義する。キー部分の長手方向中心軸L1は、当該非テーパー面に対応する辺の全てからの距離が等しい点をとおり、当該1つの断面に垂直な軸を意味する。(図3を参照。各非テーパー面に対応する辺と、長手方向中心軸L1との距離はDである。)
(3)上記「(1)」および「(2)」を考慮しても、キーレンチのキー部分の長手方向中心軸L1がどの仮想直線に対応するのかが不明である時には、キー部分の長手方向中心軸L1は、キーレンチのキー部分の端面(自由端面)の面積中心をとおり、端面に垂直な軸を意味する。なお、端面が丸みを有する場合は、丸み部分を除いた部分を端面と定義する。(図4を参照)
本明細書において、キー部分の側面のテーパー角度とは、図4に示されるように、当該側面と、キー部分の長手方向軸(長手方向中心軸L1)との間のなす角度θを意味する。より具体的には、角度θは、テーパー面の法線のうち中心軸L1と交わる線(以下、「第1法線」という。)、中心軸L1の延長線、及び、前記第1法線と前記延長線を含む平面と前記テーパー面との交線によって形成される三角形において、前記第1法線に対する対向角を意味する。(図4を参照)
(発明者によって認識された事項)
図5を参照して、テーパー面TAを有するキーレンチ5’が締結部材1の穴2に挿入された状態において、キーレンチ5’と締結部材1との間で回転トルクが伝達される場合を想定する。この場合、当該回転トルクに起因して、キーレンチ5’には、内向きの力Fが作用する(必要であれば、図1に示された内向きの力Fも参照)。本明細書において、当該内向きの力のうちの上向き成分(Fz)を、「カムアウト荷重」と呼ぶ。当該カムアウト荷重が大きい場合、キーレンチを保持する作業者あるいは機械にとっての負担が大きくなる。特に、穴2のサイズ(断面積)が小さい場合、あるいは、キーレンチ5’と締結部材1との間で伝達される回転トルクの大きさが大きい場合には、カムアウト荷重の問題は顕著となる。
なお、図5は、発明者によって認識された事項を説明するための図であって、公知の問題または課題を示す図ではない。
(実施形態におけるキーレンチ)
図6乃至図8を参照して、実施形態におけるキーレンチ5について説明する。図6は、実施形態におけるキーレンチ5の概略斜視図である。図7は、キーレンチ5のキー部分5−2を穴2に挿入した状態を示す縦断面図である。図8は、図6における面Aでのキーレンチ5の断面図(キーレンチの長手方向中心軸L1に垂直な断面における断面図)である。
キーレンチ5は、基端部分5−1と、キー部分5−2とを備える。基端部分5−1は、作業者、工具または機械によって保持される部分である。キー部分5−2は、Nを3以上の自然数と定義する時、N角形状の穴に係合可能な部分である。なお、説明を複雑化させないために、以下の説明では、N=6の場合について説明する。すなわち、キーレンチ5が六角レンチであり、穴2が六角穴である場合について説明する。なお、本明細書における説明において、例えば、六角形、正六角形、六角穴、第6側面、第6テーパー角度を、それぞれ、N角形、正N角形、N角穴、第N側面、第Nテーパー角度と読み替えることにより、説明を一般化することが可能である。
基端部分5−1と、キー部分5−2とは、断面B1(長手方向中心軸L1に垂直な断面)を介して接続されている。なお、図6に記載の例では、断面B1は、六角形であるが、正六角形ではない。
基端部分5−1の遠位部には、先端側に向かって徐々に断面積が小さくなる(連続的に断面積が小さくなる)遷移部58が設けられていてもよい。なお、遷移部58の遠位端は、キー部分5−2に接続されている。遷移部58の存在により、断面積の小さなキー部分5−2と、断面積の大きな基端部分5−1との間でトルクが伝達される際に、大きな応力集中が発生することが抑制される。
キーレンチ5のキー部分5−2の近位端は、基端部分5−1に接続されており、キー部分5−2の遠位端は、自由端52である。キー部分5−2は、第1側面50−1乃至第6側面50−6を備える。すなわち、キー部分5−2は、第1側面50−1、第2側面50−2、第3側面50−3、第4側面50−4、第5側面50−5、第6側面50−6を備える。第1側面50−1は、長手方向中心軸L1である第1軸に対して傾斜したテーパー面TA(第1テーパー面)を含む。第1側面50−1と第1軸との間のなす角度である第1テーパー角度は、好ましくは、1度以上である。
キー部分5−2の第6側面50−6は、非テーパー面である。図6に記載の例では、第6側面50−6と長手方向中心軸L1(第1軸)との間のなす角度である第6テーパー角度は、0度である。なお、本明細書において、非テーパー面には、テーパー角度(すなわち、長手方向中心軸L1に対する角度)が0度である面に加え、テーパー角度が1度未満あるいは0.5度未満である面が含まれてもよい。
実施形態におけるキーレンチ5のキー部分5−2は、テーパー面である第1側面と、非テーパー面である第6側面とを備える。換言すれば、第6側面のテーパー角度は、第1側面のテーパー角度よりも小さい。実施形態では、キー部分が、テーパー角度が0度または微小角度である側面を備えるため、図7に示されるとおり、カムアウト荷重Fzの合計値を小さくすることが可能である。
図8は、図6における面Aでのキーレンチ5の断面図である。面Aにおけるキーレンチ5における断面B2は、六角形であるが、非正六角形である。断面B2は、例えば、キー部分5−2を穴2に挿入した時、穴2の開口端縁3a(図7を参照)に接触する部分に対応する断面である。なお、図8において、キーレンチ5のキー部分5−2の基端面を示す断面B1、および、キー部分5−2の自由端を示す断面B3が、参考のために図示されている。断面B2は、断面B1と断面B3の間に位置する断面である。
図8から把握されるように、テーパー面である第1側面50−1は、先端(自由端)に向かうにつれて、長手方向中心軸L1からの距離が小さくなる面である。また、第1側面50−1は、先端に向かうにつれて、第1側面50−1に対向する側面(第4側面50−4)からの距離が小さくなる面である。他方、非テーパー面である第6側面50−6のテーパー角度が0度である場合には、第6側面50−6は、長手方向中心軸L1からの距離が、先端(自由端)に向かうにつれて変化しない面である。なお、図8に記載の例では、第1側面50−1と、第1側面に対向する側面(第4側面50−4)との間のなす角度は、第6側面50−6と、第6側面に対向する側面(第3側面50−3)との間のなす角度よりも大きい。
図8を参照して、キー部分5−2のうちの穴の開口端縁3aと接触する部分に対応する断面B2において、テーパー面である第1側面50−1と長手方向中心軸L1との間の距離は、第6側面50−6と長手方向中心軸L1との間の距離よりも大きい。このため、穴2にキー部分5−2を挿入した時に、テーパー面である第1側面50−1が、より確実に、穴の開口端縁3aに接触することとなる。
また、断面B2において、テーパー面である第1側面50−1と、第1側面に対向する側面(第4側面50−4)との間の距離は、第6側面50−6と、第6側面に対向する側面(第3側面50−3)との間の距離よりも大きい。このため、穴2にキー部分5−2を挿入した時に、テーパー面である第1側面50−1(または、第1側面50−1および第4側面50−4)が、より確実に、穴の開口端縁3aに接触することとなる。
また、図8に記載の例において、断面B2において、第1側面50−1は、第2側面50−2乃至第6側面50−6によって規定される仮想的な正六角形の外方に位置している。換言すれば、キー部分5−2の長手方向軸(長手方向中心軸L1)に垂直な断面は、仮想的な正六角形を構成する6個の辺のいずれかに重なる2つ以上の辺あるいは3つ以上の辺(図8における50−2、50−3、50−4、50−5、50−6を参照)と、仮想的な六角形の外方に位置する少なくとも1つの辺(図8における50−1に対応する実線を参照)とを有する。
なお、キー部分5−2の自由端に対応する断面B3において、第1側面50−1は、第2側面50−2乃至第6側面50−6によって規定される仮想的な正六角形の内方に位置していてもよいし、外方に位置していてもよい。図8に記載の例では、断面B3において、第1側面50−1は、第2側面50−2乃至第6側面50−6によって規定される仮想的な正六角形上に位置している。換言すれば、図8に記載の例では、キー部分5−2の自由端に対応する断面B3は、正六角形である。
なお、図8に記載の例では、第2側面50−2乃至第5側面50−5の全てが、非テーパー面であるが、第2側面50−2乃至第5側面50−5のうちの1個、2個、3個、あるいは、4個がテーパー面であってもよい。
図9は、実施形態におけるキーレンチ5の変形例を模式的に示す底面図である。図9から把握されるように、第1側面50−1は、先端に向かうにつれて、長手方向中心軸L1からの距離が小さくなるテーパー面である。他方、第2側面50−2乃至第6側面50−6も、先端に向かうにつれて、長手方向中心軸L1からの距離が小さくなる面である。しかし、第6側面50−6のテーパー角度(傾斜角度)は、テーパー面である第1側面50−1のテーパー角度(傾斜角度)よりも小さい。第6側面50−6のテーパー角度が1度未満または0.5度未満である時、本明細書では、第6側面50−6は、非テーパー面であるとみなされる。
図9に記載の例では、第6側面50−6と、第6側面50−6に対向する側面(第3側面50−3)との間の距離が、先端に向かって減少していく度合いは、第1側面50−1と、第1側面50−1に対向する側面(第4側面50−4)との間の距離が、先端に向かって減少していく度合いよりも小さい。
図9に記載の例においても、図6乃至図8に記載の実施形態と同様の効果、すなわち、カムアウト荷重が小さくなるという効果が奏される。
なお、本明細書において、第1側面50−1と長手方向中心軸L1(第1軸)との間のなす角度である第1テーパー角度が、長手方向中心軸L1に沿って変化してもよい。すなわち、第1テーパー角度が、長手方向中心軸L1に沿って変化する場合であっても、第1側面50−1の大部分において第1テーパー角度が1度以上である場合には、第1側面50−1は、テーパー面であるとみなされる。
(テーパー面が2個ある場合)
図10A乃至図10Cを参照して、テーパー面が2個ある場合の実施形態について説明する。図10A乃至図10Cは、キーレンチ5のキー部分5−2の概略底面図である。なお、図10A乃至図10Cにおいて、穴の開口端縁3aが破線によって仮想的に示されている。
(第1例:2面aタイプ)
図10Aに記載の第1例では、キーレンチ5のキー部分5−2は、第1側面50−1乃至第6側面50−6を備える。第1側面50−1および第2側面50−2は、それぞれ、テーパー面TAである。第1側面50−1のテーパー角度は、1度以上であり、第2側面50−2のテーパー角度は、1度以上であることが好ましい。
第1側面50−1と第2側面50−2とは、互いに隣接する面、換言すれば、互いに接続されている面である。他方、第3側面50−3乃至第6側面50−6の各々は、非テーパー面である。第3側面50−3のテーパー角度乃至第6側面50−6のテーパー角度は、第1側面50−1のテーパー角度よりも小さく、第2側面50−2のテーパー角度よりも小さい。なお、図10Aに記載の例では、第1側面50−1と、第1側面に対向する側面(第4側面50−4)との間のなす角度は、第6側面50−6と、第6側面に対向する側面(第3側面50−3)との間のなす角度よりも大きい。同様に、第2側面50−2と、第2側面に対向する側面(第5側面50−5)との間のなす角度は、第6側面50−6と、第6側面に対向する側面(第3側面50−3)との間のなす角度よりも大きい。
図10Aに記載の例では、キーレンチ5のキー部分5−2が、穴2に挿入されると、第1テーパー面である第1側面50−1と、第2テーパー面である第2側面50−2とが、穴の開口端縁3aに接触する。また、第1側面50−1に対向する側面(第4側面50−4)が、ガイド面として機能し、穴の開口端縁3aに接触することとなる。同様に、第2側面50−2に対向する側面(第5側面50−5)が、ガイド面として機能し、穴の開口端縁3aに接触することとなる。他方、第3側面50−3および第6側面50−6は、開口端縁3aに接触しない。図10Aに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおいて、第3側面50−3と開口端縁3aとの間のギャップW3は、0.001インチ(0.025mm)程度であり、第6側面50−6と開口端縁3aとの間のギャップW6は、0.001インチ(0.025mm)程度である。
なお、図10Aに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおける断面において、第1側面50−1および第2側面50−2は、第3側面50−3乃至第6側面50−6によって規定される仮想的な正六角形の外方に位置している。換言すれば、図10Aに記載の例では、キー部分5−2の長手方向軸に垂直な断面(断面B1または断面B2)は、仮想的な正六角形を構成する6個の辺のいずれかに重なる4つの辺(図10Aの50−3、50−4、50−5、50−6を参照)と、仮想的な正六角形の外方に位置する2つの辺(図10Aの50−1、50−2を参照)とを有する。なお、本段落の記載の事項は、下記第2例および第3例にもあてはまる事項である。
図10Aに記載の例では、テーパー面が2個存在する。このため、キー部分5−2と、開口端縁3aとの密着長さが長くなり、穴の表面3(開口端縁3a)における応力集中が緩和される。その結果、穴2の変形が抑制される。また、図10Aに記載の例では、キー部分の4つの側面が、開口端縁3aに接触する。このため、穴の表面3(開口端縁3a)における応力集中が緩和される。その結果、穴2の変形が抑制される。
(第2例:2面bタイプ)
図10Bに記載の第2例では、キーレンチ5のキー部分5−2は、第1側面50−1乃至第6側面50−6を備える。第1側面50−1および第2側面50−2は、それぞれ、テーパー面TAである。第1側面50−1のテーパー角度は、1度以上であり、第2側面50−2のテーパー角度は、1度以上であることが好ましい。
第1側面50−1と第2側面50−2とは、互いに第6側面50−6を介して接続されている。換言すれば、第1側面50−1と第2側面50−2とは、第6側面50−6によって、互いに離間されている。他方、第3側面50−3乃至第6側面50−6の各々は、非テーパー面である。第3側面50−3のテーパー角度乃至第6側面50−6のテーパー角度は、第1側面50−1のテーパー角度よりも小さく、第2側面50−2のテーパー角度よりも小さい。
図10Bに記載の例では、キーレンチ5のキー部分5−2が、穴2に挿入されると、第1テーパー面である第1側面50−1と、第2テーパー面である第2側面50−2とが、穴の開口端縁3aに接触する。また、第6側面50−6に対向する側面である第3側面50−3が、ガイド面として機能し、穴の開口端縁3aに接触することとなる。他方、第4側面50−4乃至第6側面50−6は、開口端縁3aに接触しない。図10Bに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおいて、第4側面50−4と開口端縁3aとの間のギャップW4は、0.0005インチ(0.013mm)程度であり、第5側面50−5と開口端縁3aとの間のギャップW5は、0.0005インチ(0.013mm)程度であり、第6側面50−6と開口端縁3aとの間のギャップW6は、0.002インチ(0.051mm)程度である。
図10Bに記載の例では、テーパー面が2個存在する。このため、キー部分5−2と、開口端縁3aとの密着長さが長くなり、穴の表面3(開口端縁3a)における応力集中が緩和される。その結果、穴2の変形が抑制される。また、図10Bに記載の例では、キー部分の3つの側面が、開口端縁3aに接触する。このため、穴の表面3(開口端縁3a)における応力集中が緩和される。その結果、穴2の変形が抑制される。
(第3例:2面cタイプ)
図10Cに記載の第3例では、キーレンチ5のキー部分5−2は、第1側面50−1乃至第6側面50−6を備える。第1側面50−1および第2側面50−2は、それぞれ、テーパー面TAである。第1側面50−1のテーパー角度は、1度以上であり、第2側面50−2のテーパー角度は、1度以上であることが好ましい。
第1側面50−1と第2側面50−2とは、互いに対向する面である。すなわち、第1側面50−1と第2側面50−2とは、直接的に接続されていない。他方、第3側面50−3乃至第6側面50−6の各々は、非テーパー面である。第3側面50−3のテーパー角度乃至第6側面50−6のテーパー角度は、第1側面50−1のテーパー角度よりも小さく、第2側面50−2のテーパー角度よりも小さい。なお、図10Cに記載の例では、第1側面50−1と、第1側面に対向する側面(第2側面50−2)との間のなす角度は、第6側面50−6と、第6側面に対向する側面(第4側面50−4)との間のなす角度よりも大きい。
図10Cに記載の例では、キーレンチ5のキー部分5−2が、穴2に挿入されると、第1テーパー面である第1側面50−1と、第2テーパー面である第2側面50−2とが、穴の開口端縁3aに接触する。他方、第3側面50−3乃至第6側面50−6は、開口端縁3aに接触しない。図10Cに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおいて、第3側面50−3と開口端縁3aとの間のギャップW3は、0.001インチ(0.025mm)程度であり、第4側面50−4と開口端縁3aとの間のギャップW4は、0.001インチ(0.025mm)程度であり、第5側面50−5と開口端縁3aとの間のギャップW5は、0.001インチ(0.025mm)程度であり、第6側面50−6と開口端縁3aとの間のギャップW6は、0.001インチ(0.025mm)程度である。
図10Cに記載の例では、テーパー面が2個存在する。しかし、図10Cに記載の例では、キー部分の2つの側面のみが、開口端縁3aに接触する。このため、開口端縁3aにおける応力集中の緩和の程度は、図10Aまたは図10Bに記載の例と比較して小さい。
(テーパー面が3個ある場合)
図10D乃至図10Fを参照して、テーパー面が2個ある場合の実施形態について説明する。図10D乃至図10Fは、キーレンチ5のキー部分5−2の底面図である。なお、図10D乃至図10Fにおいて、穴の開口端縁3aが破線によって仮想的に示されている。
(第4例:3面aタイプ)
図10Dに記載の第4例では、キーレンチ5のキー部分5−2は、第1側面50−1乃至第6側面50−6を備える。第1側面50−1、第2側面50−2、および、第3側面50−3は、それぞれ、テーパー面TAである。第1側面50−1のテーパー角度は、1度以上であり、第2側面50−2のテーパー角度は、1度以上であり、第3側面50−3のテーパー角度は、1度以上であることが好ましい。
第1側面50−1と第2側面50−2とは、互いに隣接する面、換言すれば、互いに接続されている面である。また、第2側面50−2と第3側面50−3とは、互いに隣接する面、換言すれば、互いに接続されている面である。他方、第4側面50−4乃至第6側面50−6の各々は、非テーパー面である。第4側面50−4のテーパー角度乃至第6側面50−6のテーパー角度は、第1側面50−1のテーパー角度よりも小さく、第2側面50−2のテーパー角度よりも小さく、第3側面50−3のテーパー角度よりも小さい。
図10Dに記載の例では、キーレンチ5のキー部分5−2が、穴2に挿入されると、第1テーパー面である第1側面50−1と、第3テーパー面である第3側面50−3とが、穴の開口端縁3aに接触する。また、第2側面50−2に対向する側面である第5側面50−5が、ガイド面として機能し、穴の開口端縁3aに接触することとなる。他方、第4側面50−4および第6側面50−6は、開口端縁3aに接触しない。図10Dに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおいて、第4側面50−4と開口端縁3aとの間のギャップW4は、0.0005インチ(0.013mm)程度であり、第6側面50−6と開口端縁3aとの間のギャップW6は、0.0005インチ(0.013mm)程度である。また、図10Dに記載の例において、第2テーパー面である第2側面50−2は、穴の開口端縁3aに接触していない。図10Dに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおいて、第2側面50−2と開口端縁3aとの間のギャップW2は、0.0005インチ(0.013mm)程度である。
なお、図10Dに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおける断面において、第1側面50−1乃至第3側面50−3は、第4側面50−4乃至第6側面50−6によって規定される仮想的な正六角形の外方に位置している。換言すれば、図10Dに記載の例では、キー部分5−2の長手方向軸に垂直な断面(断面B1または断面B2)は、仮想的な正六角形を構成する6個の辺のいずれかに重なる3つの辺(図10Dの50−4、50−5、50−6を参照)と、仮想的な正六角形の外方に位置する3つの辺(図10Dの50−1、50−2、50−3を参照)とを有する。なお、本段落の記載の事項は、下記第5例および第6例にもあてはまる事項である。
図10Dに記載の例における各側面の開口端縁3aへの接触状態は、図10Bに記載の例における各側面の開口端縁3aへの接触状態と同じである。すなわち、図10Dに記載の例では、キー部分の3つの側面が、開口端縁3aに接触する。このため、穴2の表面3(開口端縁3a)における応力集中が緩和される。その結果、穴2の変形が抑制される。
(第5例:3面bタイプ)
図10Eに記載の第5例では、キーレンチ5のキー部分5−2は、第1側面50−1乃至第6側面50−6を備える。第1側面50−1、第2側面50−2、および、第3側面50−3は、それぞれ、テーパー面TAである。第1側面50−1のテーパー角度は、1度以上であり、第2側面50−2のテーパー角度は、1度以上であり、第3側面50−3のテーパー角度は、1度以上であることが好ましい。
第1側面50−1と第2側面50−2とは、互いに第6側面50−6を介して接続されている。換言すれば、第1側面50−1と第2側面50−2とは、第6側面50−6によって、互いに離間されている。また、第2側面50−2と第3側面50−3とは、互いに第4側面50−4を介して接続されている。換言すれば、第2側面50−2と第3側面50−3とは、第4側面50−4によって、互いに離間されている。他方、第4側面50−4乃至第6側面50−6の各々は、非テーパー面である。第4側面50−4のテーパー角度乃至第6側面50−6のテーパー角度は、第1側面50−1のテーパー角度よりも小さく、第2側面50−2のテーパー角度よりも小さく、第3側面50−3のテーパー角度よりも小さい。
図10Eに記載の例では、キーレンチ5のキー部分5−2が、穴2に挿入されると、第1テーパー面である第1側面50−1と、第2テーパー面である第2側面50−2と、第3テーパー面である第3側面50−3とが、穴の開口端縁3aに接触する。他方、第4側面50−4乃至第6側面50−6は、開口端縁3aに接触しない。図10Eに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおいて、第4側面50−4と開口端縁3aとの間のギャップW4は、0.001インチ(0.025mm)程度であり、第5側面50−5と開口端縁3aとの間のギャップW5は、0.001インチ(0.025mm)程度であり、第6側面50−6と開口端縁3aとの間のギャップW6は、0.001インチ(0.025mm)程度である。
図10Eに記載の例では、キー部分の3つの側面が、開口端縁3aに接触する。このため、穴2の表面3(開口端縁3a)における応力集中が緩和される。その結果、穴2の変形が抑制される。
(第6例:3面cタイプ)
図10Fに記載の第6例では、キーレンチ5のキー部分5−2は、第1側面50−1乃至第6側面50−6を備える。第1側面50−1、第2側面50−2、および、第3側面50−3は、それぞれ、テーパー面TAである。第1側面50−1のテーパー角度は、1度以上であり、第2側面50−2のテーパー角度は、1度以上であり、第3側面50−3のテーパー角度は、1度以上であることが好ましい。
第1側面50−1と第2側面50−2とは、互いに隣接する面、換言すれば、互いに接続されている面である。また、第3側面50−3は、第1側面50−1に対向する面であって、第1側面50−1および第2側面50−2から離間して配置された面である。他方、第4側面50−4乃至第6側面50−6の各々は、非テーパー面である。第4側面50−4のテーパー角度乃至第6側面50−6のテーパー角度は、第1側面50−1のテーパー角度よりも小さく、第2側面50−2のテーパー角度よりも小さく、第3側面50−3のテーパー角度よりも小さい。
図10Fに記載の例では、キーレンチ5のキー部分5−2が、穴2に挿入されると、第1テーパー面である第1側面50−1と、第2テーパー面である第2側面50−2と、第3テーパー面である第3側面50−3とが、穴の開口端縁3aに接触する。他方、第4側面50−4乃至第6側面50−6は、開口端縁3aに接触しない。図10Fに記載の例では、穴の開口端縁3aに対応する高さにおいて、第4側面50−4と開口端縁3aとの間のギャップW4は、0.001インチ(0.025mm)程度であり、第5側面50−5と開口端縁3aとの間のギャップW5は、0.001インチ(0.025mm)程度であり、第6側面50−6と開口端縁3aとの間のギャップW6は、0.001インチ(0.025mm)程度である。
図10Fに記載の例では、3つの側面が、開口端縁3aに接触する。このため、穴2の表面3(開口端縁3a)における応力集中が緩和される。その結果、穴2の変形が抑制される。
(実施形態におけるキーレンチの適用例)
図11および図12を参照して、キーレンチの適用例について説明する。図11は、キーレンチの適用例を示す縦断面図である。図12は、キーレンチの適用例を示す概略斜視図である。なお、図12において、被締結部材の図示は、省略されている。
図11には、締結部材1であるボルト1aおよびナット1bを用いて、被締結部材8aおよび被締結部材8bを締結する様子が記載されている。被締結部材8aおよび被締結部材8bの各々は、板部材であってもよい。締結部材1(ボルト1a)は、実施形態におけるキーレンチのキー部分5−2が挿入される穴2を備える。穴2は、上方に向けて開口されている。
図11および図12に記載の例では、ボルト1aは、頭部11と、軸部12とを備える。頭部11の軸部側の面11aは、被締結部材8aに接触している。軸部12は、遠位端の中央部に穴2を備える。換言すれば、軸部12の端面(遠位面)には、穴2が設けられている。また、軸部12の外周面には、第1ねじ山13が設けられている。
ナット1bは、ボルトの第1ねじ山13に螺合する第2ねじ山14を備える。また、ナット1bの外周面15は、工具100に係合可能な形状(例えば、断面が多角形である形状)を有している。
図11を参照して、ボルト1aとナット1bとによる被締結部材8a、8bの締結方法について説明する。第1ステップにおいて、ボルト1aが、被締結部材8a、8bの孔に挿入される。第2ステップにおいて、ナット1bが、ボルト1aに、仮装着される。第3ステップにおいて、実施形態におけるキーレンチのキー部分5−2が、ボルトの軸部に設けられた穴2に挿入される。穴2にキー部分5−2が挿入されることにより、ボルト1aのボルト中心軸回りの回転が防止される。第4ステップにおいて、ナット1bの外周面15に、工具100が係合する。
第5ステップにおいて、キーレンチ5によりボルト1aの回転が抑制された状態で、工具100が回転することにより(より具体的には、工具100におけるナット1bの外周面15との係合部分が回転することにより)、ナット1bがボルト1aの頭部に向かって移動する(ボルト1aにねじ込まれる)。第6ステップにおいて、ボルトの頭部11と、ナット1bとによって、被締結部材8a、8bが挟持される。すなわち、ボルト1aとナット1bによって、被締結部材8a、8bが締結される。なお、工具100の回転は、人力によって行われても良いし、動力を用いて行われても良い。
実施形態におけるキーレンチのキー部分5−2は、テーパー面である側面(第1側面50−1)を備えるため、穴2を規定する表面3に応力集中が生じることが抑制される。また、キー部分5−2は、非テーパー面である側面(第6側面50−6)を備える。このため、カムアウト荷重が過大とならない。その結果、ナット1bのボルト1aへのねじ込み工程を、より、円滑に実行することが可能である。なお、キーレンチは、上述の第1例乃至第6例のキーレンチのうちのいずれかであってもよい。
一般的に、ボルトの軸部12に設けられる穴2のサイズは、かなり小さい。このため、ボルトの軸部12に設けられる穴2に挿入されるキー部分には、相対的に大きな荷重が作用する。その結果、穴2を規定する表面3において発生する応力集中が大きくなる傾向がある。他方、側面の全てがテーパー面であるキー部分を用いることにより、応力集中の緩和を図る場合には、カムアウト荷重が大きくなる傾向がある。しかし、実施形態におけるキーレンチ(テーパー面である第1側面と、非テーパー面である第6側面とを有するキーレンチ)を用いた場合には、応力集中の問題と、カムアウト荷重の問題とが、まとめて解決される。換言すれば、実施形態におけるキーレンチでは、応力集中の緩和の効果と、カムアウト荷重の抑制の効果とが相乗的に奏される。
(実験例および解析例)
実験は、図13に記載の装置を用いて行った。なお、穴2の対向側面間の距離D1は、3/32インチ(約2.38mm)であった。また、ナット1bをR方向に回転させて、ナット1bをボルト1aにねじ込む際に、キー部分5−2に作用するトルクが測定された。
図14は、キー部分5−2の6つの側面が全てテーパー面であり、かつ、全ての側面のテーパー角度が互いに等しい場合において、穴が破壊されるトルクを計算した解析結果を示す。すなわち、図14は、比較例におけるキーレンチに対する解析結果を示す。図14を参照して、側面のテーパー角度θが2度の時、約45インチポンド(5.1N・m)で、穴2が破壊された。なお、穴が破壊されるとは、穴のトルク保持能力が実質的になくなることを意味する。また、側面のテーパー角度が3度の時、約40インチポンド(4.5N・m)で、穴2が破壊された。また、側面のテーパー角度が4度の時、約35インチポンド(4.0N・m)で、穴2が破壊された。
図15は、キー部分5−2の6つの側面の形状に関し、(1)全ての側面が非テーパー面である場合、(2)全ての側面がテーパー面である場合、(3)1つの側面だけがテーパー面である場合、(4)2つの側面だけがテーパー面である場合、(5)3つの側面だけがテーパー面である場合について、キー部分5−2のカムアウト荷重Fzを計算した解析結果を示す。なお、カムアウト荷重Fzは、図13に示されるように、キー部分5−2が受ける上方向の荷重を意味する。
図15を参照して、キー部分5−2の6つの側面の全てが、非テーパー面である場合(図15のグラフ中、「テーパー角度0°」に対応)、キー部分5−2に作用するトルクが約45インチポンド(5.1N・m)の時、カムアウト荷重が10kgfとなった。換言すれば、キー部分5−2に作用するトルクが約45インチポンド(5.1N・m)になると、10kgfの下向きの保持力では、キー部分5−2のカムアウトを抑制できなくなった。また、キー部分5−2の6つの側面の全てが、テーパー面である場合、キー部分5−2に作用するトルクが約19インチポンド(2.1N・m)の時、カムアウト荷重が10kgfとなった。また、キー部分5−2の6つの側面が、1個、2個、または、3個のテーパー面を含む場合、キー部分5−2に作用するトルクが約36〜42インチポンド(4.1〜4.7N・m)の時、カムアウト荷重が10kgfとなった。
以上のとおり、キー部分5−2の6つの側面が、1個のみ、2個のみ、または、3個のみのテーパー面を含む場合には、6つの側面が全てテーパー面である場合と比較して、効果的にカムアウトを抑制することが可能である。
図16は、キー部分5−2の形状が、(1)上述の第1例に対応する形状である場合、(2)上述の第2例に対応する形状である場合、(3)上述の第3例に対応する形状である場合、(4)上述の第4例に対応する形状である場合、(5)上述の第5例に対応する形状である場合、(6)上述の第6例に対応する形状である場合である各々について、(A)穴2の表面3が変形し始めるトルク、(B)穴2が破壊されるトルク、(C)キー部分5−2がカムアウトし始めるトルク、を計算した解析結果を示す。なお、上述の「(C)」に関し、カムアウトし始めるトルクは、キー部分5−2を10kgfの荷重で押さえつけている際に、キー部分5−2がカムアウトし始めるトルクを意味する。
図16を参照して、第1例乃至第6例のいずれにおいても、キー部分5−2に相対的に大きなトルクが作用する場合であっても、効果的に、カムアウトが抑制された。なお、カムアウトし始めるトルクを、より大きくしたい場合には、テーパー角度を小さくすればよい。換言すれば、カムアウト抑制の観点から、テーパー角度は、例えば、2.5°以下、2.0°以下、あるいは、1.5°以下であることが好ましい。他方、テーパー角度が、1.0°より小さい場合には、穴2の底面にキー部分5−2の自由端が当接するリスクが増大する。穴2の底面にキー部分5−2の自由端が当接すると、テーパー面が、穴の開口端縁3aに適切に接触できなくなる。その結果、キー部分5−2と穴の表面3との間の接触部分に、大きな応力集中が発生する。このため、テーパー角度は1.0°以上であることが好ましい。
図16を参照して、穴が変形し始めるトルクに関しては、第1例乃至第6例の間で、顕著な優劣の差はない。
穴が破壊されるトルクに関しては、第1例乃至第6例におけるキーレンチは、図14に示された比較例におけるキーレンチよりも、優れていることが把握される。第1例乃至第6例の中でも、特に、第1例、第2例、第4例が優れている。また、図16を参照して、穴が破壊されるトルクを大きくしたい場合には、テーパー角度を小さくすればよいことが把握される。特に、第1例、第2例、および、第4例において、テーパー角度が1°以上2.5°以下である時、穴が破壊されるトルクは、50インチポンド(約5.5N・m)を超える。また、第1例、および、第4例において、テーパー角度が1°以上2°以下である時、穴が破壊されるトルクは、60インチポンド(約6.6N・m)を超える。
以上の観点から、穴が破壊されるトルクに関しては、テーパー面の個数が2個である場合には、第1例のように、2つのテーパー面が互いに隣接していること(換言すれば、テーパー面である第1側面50−1とテーパー面である第2側面50−2とが互いに隣接していること)、あるいは、第2例のように、2つのテーパー面が、1つの非テーパー面を介して接続されていること(換言すれば、テーパー面である第1側面50−1とテーパー面である第2側面50−2とが、非テーパー面である第6側面50−6を介して接続されていること)が好ましい。また、穴が破壊されるトルクに関しては、2つのテーパー面が互いに隣接している場合(第1例)が最も好ましい。他方、テーパー面の個数が3個である場合には、第4例のように、3つのテーパー面が連続していること(換言すれば、テーパー面である第1側面50−1とテーパー面である第2側面50−2とが互いに隣接し、テーパー面である第2側面50−2とテーパー面である第3側面50−3とが互いに隣接していること)が好ましい。さらに、穴が破壊されるトルクに関しては、テーパー角度が1°以上2.5°以下、特に、1°以上2°以下であることが好ましい。
図17は、キー部分5−2の6つの側面に関し、(1)全ての側面が非テーパー面である場合、(2)1つの側面だけがテーパー面である場合、(3)2つの側面だけがテーパー面である場合、(4)3つの側面だけがテーパー面である場合の各々について、穴2が破壊するトルクの平均値を測定した実験結果を示す。
図17を参照して、テーパー面の個数は、2個であることが最も好ましく、次に、テーパー面の個数が3個であることが好ましいことがわかった。
図18は、(1)キー部分5−2の形状が、上述の第1例に対応する形状であり、かつ、テーパー角度が1.5°である場合、(2)キー部分5−2の形状が、上述の第1例に対応する形状であり、かつ、テーパー角度が2.0°である場合の各々について、穴2が破壊するトルクを測定した実験結果を示す。図18を参照して、第1例に関しては、穴が破壊されるトルクについて、テーパー角度に依存した顕著な相違は見られなかった。
以上の解析結果および実験結果を総合すると、テーパー面の個数は、1個よりも、2個または3個であることが好ましく、特に、2個であることが好ましいと言える。また、テーパー面のテーパー角度については、1°以上2.5°以下であることが好ましく、特に、1°以上2°以下、あるいは、1.5°以上2°以下であることが好ましいと言える。また、複数のテーパー面の配置に関しては、複数のテーパー面が互いに隣接配置されていること(例えば、テーパー面である第1側面とテーパー面である第2側面とが互いに隣接していること)が好ましいと言える。
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は変形例にも適用可能である。
1、1' :締結部材
1a :ボルト
1b :ナット
2、2' :穴
3、3' :表面
3a :開口端縁
5、5' :キーレンチ
5−1 :基端部分
5−2 :キー部分
6' :角部
8a、8b:被締結部材
11 :頭部
11a :面
12 :軸部
13 :第1ねじ山
14 :第2ねじ山
15 :外周面
50−1 :第1側面
50−2 :第2側面
50−3 :第3側面
50−4 :第4側面
50−5 :第5側面
50−6 :第6側面
52 :自由端
58 :遷移部
100 :工具
Fz :カムアウト荷重
L1 :長手方向中心軸
TA :テーパー面
θ :テーパー角度

Claims (7)

  1. Nを3以上の任意の自然数と定義する時、N角形状の穴に係合可能なキー部分と、
    基端部分と
    を具備し、
    前記キー部分は、第1側面、第2側面、および、第N側面を含むN個の側面を備え、
    前記第1側面は、テーパー面であり、
    前記第N側面は、非テーパー面である
    キーレンチ。
  2. 前記キー部分は、第3側面を含み、
    前記第2側面および第3側面のうちの少なくとも1つは、テーパー面であり、
    前記N個の側面のうち、前記第1側面、前記第2側面、および、前記第3側面以外の側面は、非テーパー面である
    請求項1に記載のキーレンチ。
  3. 前記第2側面は、テーパー面であり、
    前記第3側面は、非テーパー面である
    請求項2に記載のキーレンチ。
  4. 前記第2側面は、テーパー面であり、
    テーパー面である前記第1側面と、テーパー面である前記第2側面とは、互いに隣接している
    請求項2または3に記載のキーレンチ。
  5. 前記第1側面のテーパー角度は、1°以上2.5°以下である
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載のキーレンチ。
  6. 前記キー部分の長手方向軸に垂直な断面は、仮想的な正N角形を構成するN個の辺のいずれかに重なる2つ以上の辺と、前記仮想的な正N角形の外方に位置する少なくとも1つの辺を含む
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキーレンチ。
  7. Nを3以上の任意の自然数と定義する時、N角形状の穴に係合可能なキー部分と、
    基端部分と
    を具備し、
    前記キー部分は、第1側面、第2側面、および、第N側面を含むN個の側面を備え、
    前記第1側面は、前記キー部分の長手方向中心軸である第1軸に対して傾斜した第1テーパー面を含み、
    前記第N側面と前記第1軸との間のなす角度である第Nテーパー角度は、前記第1側面と前記第1軸との間のなす角度である第1テーパー角度よりも小さい
    キーレンチ。

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