JP2017193070A - Tダイ、その製造方法および離型性向上方法 - Google Patents

Tダイ、その製造方法および離型性向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ダイラインを発生させないTダイの製造方法の提供。【解決手段】内部に溶融樹脂流路を有し、その吐出口にリップ部を有する、プラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイの製造方法であって、未処理Tダイにプラズマ窒化処理を施して、前記溶融樹脂流路の内壁面および前記リップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を形成する工程を備える、溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高いTダイの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、Tダイ、その製造方法およびTダイ内部の溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に対する溶融樹脂の離型性を向上させる方法に関する。本発明におけるTダイとして、例えば、熱可塑性樹脂材料から構成されるフィルムやシートを製造するために用いられる、スリット状の吐出口を有するTダイが挙げられる。
環状ポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレートなど樹脂フィルムの製造には、その形状からTダイと呼ばれるスリット状の吐出口を有する口金を用いて該吐出口から溶融した樹脂を押し出す方法が用いられる。
このような樹脂フィルム(例えば光学用樹脂用フィルム・シート)には、その表面にダイラインが発生してないことが要求される。ダイラインとは、ダイの特定の位置に対応する樹脂フィルムの特定位置に、樹脂フィルムの押出方向に沿って連続的に発生する、肉眼で観察可能な縞を意味する。
このようなダイラインを発生させないことを目的としたTダイが、従来、いくつか提案されている。
例えば特許文献1には、溶融樹脂流路(流動性材料流路)の内壁面に硬質クロムめっき層を設けたTダイが記載されている。
また、例えば特許文献2には、炭化タングステンでコートされたTダイが記載されている。
さらに特許文献3には、リップの先端部分に樹脂くずが付着し、これが堆積すると、いわゆるメヤニとなり、これが樹脂膜へ付着して不良品を発生させてしまうことが記載されている。
一方、「ポリブチレンテレフタレートの射出成形における金属表面が関与する表面炭化および充填不良」と題する非特許文献1には、プラスチックの射出成形を行ったときに生じる抹消部分での表面炭化現象等の不具合は、従来、剪断発熱、断熱圧縮による温度上昇と支燃性ガスによる燃焼が原因と考えられてきたものの、金型を含む成形機内の金属、高分子、および分解ガスの界面で解重合、水素引抜などが促進される触媒作用に伴い、支燃性ガスを伴わない条件でも発生し得ることが記載されている。
国際公開第2014/038490号パンフレット 特許第4117589号公報 特公平8−29559号公報
鈴木崇、外5名、「ポリブチレンテレフタレートの射出成形における金属表面が関与する表面炭化および充填不良」群馬県立産業センター研究報告(2011)
しかしながら、硬質クロムメッキは、母材との線膨張率の差により、微小亀裂(ヘアークラック)を生ずる場合がある。この場合、特許文献1に記載のTダイのように、その溶融樹脂流路の内壁面に設けられた硬質クロムめっき層の微小亀裂に徐々に溶融樹脂が堆積する。また、表面の樹脂の一部が脱落した場合は、その脱落部分にも、同様に徐々に溶融樹脂が堆積する。そして、堆積した溶融樹脂が炭化または酸化を起こし、これがダイラインを発生させていた。
また、特許文献2に記載のTダイの場合、必ずしも樹脂との付着性が低いとは言えず、付着した樹脂がダイラインを発生させていた。
さらに、特許文献3に記載のように、溶融樹脂流路の内壁面が硬質クロムめっき層や炭化タングステン等の超鋼合金コートでない場合であっても、リップ部に10nm以上の微細な凹凸を有していると、溶融樹脂が浸入し、付着し、大気に触れて酸化劣化することで、これがダイラインを発生させると考えられる。
すなわち、従来、ダイラインを発生させないTダイは提供されていなかった。
本発明者は、上記のような課題を解決することを目的として鋭意検討を重ねた。そして、従来のステンレス鋼系のTダイについて、それが有する溶融樹脂流路の内壁面および前記リップ部の表面にプラズマ窒化処理法等によって窒素原子を注入し、窒素原子をそのTダイを構成している元素(例えば鉄やクロム等)と結合させて、その表面に窒素系金属間化合物からなる層を形成すると、その層は溶融樹脂の離型性に極めて優れ、硬度も高く、表面粗さも良好であるため、得られたTダイを用いて樹脂フィルムを成形した場合、ダイラインが長期にわたって極めて形成され難いことを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(6)である。
(1)内部に溶融樹脂流路を有し、その吐出口にリップ部を有する、プラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイの製造方法であって、
未処理Tダイにプラズマ窒化処理を施して、前記溶融樹脂流路の内壁面および前記リップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を形成する工程を備える、溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高いTダイの製造方法。
(2)バイアス電圧を−150〜−400Vとし、前記未処理Tダイの温度を250〜350℃として前記プラズマ窒化処理を行う、上記(1)に記載のTダイの製造方法。
(3)熱可塑性樹脂からなるフィルムを得るためのTダイが得られる、上記(1)または(2)に記載のTダイの製造方法。
(4)Tダイの内部の溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に対する溶融樹脂の離型性を向上させる方法であって、
前記Tダイにプラズマ窒化処理を施して、前記溶融樹脂流路の内壁面および前記リップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を形成する工程を備える、離型性向上方法。
(5)溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を有する、溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高い、プラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイ。
(6)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のTダイの製造方法によって製造された、上記(5)に記載のTダイ。
本発明によれば、溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に対する溶融樹脂の離型性が極めて高く、硬度も高く、表面粗さも低位に保持されているため、それを用いて樹脂フィルムを成形した場合に、長期にわたってダイラインが極めて形成され難いTダイおよびその製造方法を提供することができる。また、Tダイ内部の溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に対する溶融樹脂の離型性を向上させる方法を提供することができる。
好適例である本発明のTダイの縦断面図(概略図)である。 図1に示すTダイのダイ本体の内壁面を示す側面図(概略図)である。 固液間接触角測定装置の内部および測定例を表す写真である。 プラズマ窒化処理したときの温度と、295℃におけるCOP樹脂の接触角の測定結果との関係を表すグラフである。 実施例にて得られた、プラズマ窒化処理時の温度と、表面粗さRa(μm)および硬度(HV Kgf/mm2)との関係図である。 実施例にて得られた、バイアス電圧値と、表面粗さRa(μm)および硬度(HV Kgf/mm2)との関係図である。 ブラズマ窒化処理の好ましい処理条件の範囲を示す図である。
本発明について説明する。
本発明は、内部に溶融樹脂流路を有し、その吐出口にリップ部を有する、プラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイの製造方法であって、未処理Tダイにプラズマ窒化処理を施して、前記溶融樹脂流路の内壁面および前記リップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を形成する工程を備える、溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高いTダイの製造方法である。
このような溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高いTダイの製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
また、本発明は、溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を有する、溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高い、プラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイである。
このような溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高い、プラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイを、以下では「本発明のTダイ」ともいう。
本発明のTダイは、本発明の製造方法によって製造されたものであることが好ましい。
本発明のTダイについて、図1および図2にその好適態様を挙げて説明する。
図1は、本発明のTダイの好適態様の縦断面図であり、図2は、図1に示すTダイのダイ本体の内壁面を示す側面図である。
図1に示すように、本発明のTダイ1(Tダイ1)は、一対のダイ部材3、4からなるダイ本体2を有している。そして、ダイ部材3、4の間に溶融樹脂流路5が形成されている。すなわち、ダイ部材3,4の内壁面が溶融樹脂流路5を構成している。溶融樹脂流路5は、上流側から順に、流入部6、マニホールド部7、およびスリット状の吐出部8を有している。吐出部8の吐出口の近傍の部分がリップ部9である。
また、図2において、符号6a,7a,8aは、流入部6、マニホールド部7、吐出部8のそれぞれにおけるダイ部材3(4)の壁面を示している。
そして、溶融樹脂流路5を構成しているダイ部材3,4の内壁面と、リップ部9の表面とには、窒素系金属間化合物からなる層20(窒素系金属間化合物層20ともいう)が形成されている。
このようなTダイ1を用いてフィルムなどのプラスチックの成形品を成形する場合、初めに、Tダイ1の長手方向中央部にある流入部6は図示しない押出機に接続され、この流入部6から溶融樹脂流路5内に溶融樹脂が供給される。供給された溶融樹脂は、Tダイ1の長手方向に延びる略円形断面のマニホールド部7に流入し、Tダイ1の長手方向に広がった後に、スリット状の吐出部8に流入し、吐出部8の開口端縁(吐出口)から膜の形態で、図示しないローラー上に押し出される。
本発明のTダイの形状はフィルム等のプラスチック成形に用いることができるものであれば特に限定されず、従来公知のものと同様の形状であってよい。
ここで、フィルム等の成型されるプラスチックの種類は特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィン(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)またはこれらの混合物などが挙げられる。
本発明のTダイが備えるダイ本体の材質は、ステンレス鋼であれば特に限定されず、例えば従来公知のものと同様であってよい。
本発明のTダイが有する窒素系金属間化合物層は、ダイ本体を構成する元素(例えば鉄やクロム)と窒素とが結合してなる窒素系金属間化合物からなり、これが層状をなしているものである。窒素系金属間化合物としては、例えばCrxNやFeyNが挙げられる。
窒素系金属間化合物層は、従来公知のステンレス鋼系Tダイにおける溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に窒素原子を注入して形成するので、めっきのように表面を被覆する場合とは異なり、被膜(窒素系金属間化合物層)と母材(ダイ本体)とを区別する厳密な境界が存在するわけではない。ただし、従来公知の方法を用いて断面を観察すると、表面に窒素系金属間化合物からなる層が形成されていることを確認することができる。その層の中側が拡散層であり、さらにその中側は窒素が浸入していない母材である。
上記の通りであるから、窒素系金属間化合物層の厚さを厳密に規定することは困難であるが、概ね10〜50μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
上記のように、本発明のTダイは、従来公知のステンレス鋼系Tダイにおける溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に窒素原子を注入して形成するが、この窒素原子の注入は、プラズマ窒化処理によることが好ましい。すなわち、本発明のTダイは、本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
プラズマ窒化処理は従来公知のものであってよい。例えば、窒素ガスを注入しながらタングステンフィラメントに電流を流すと窒素ガスがプラズマ状態となり、プラズマ窒化処理を行う対象物(未処理Tダイ)にマイナスバイアスをかけると、窒素プラズマ(N+)が対象物(未処理Tダイ)の表面に衝突し注入されてFe4NやCr4N等が生成される。
プラズマイオン注入加工において、フィラメント電流は100〜200A、ディスチャージ電流は100〜300A、プラズマ窒化処理を行う対象物(未処理Tダイ)に対するバイアス電圧は0.1〜1000V、窒素圧力は0.5〜5Pa、処理時間は10〜1000分とすることが好ましい。
また、バイアス電圧は−150〜−400Vであることが好ましい。表面硬さが高まるからである。
プラズマ窒化処理時の処理対象物(未処理Tダイ)の温度を250〜350℃とすることが好ましい。
処理対象物(未処理Tダイ)の温度は、バイアス電圧の大きさ(負のバイアス電圧の絶対値)を大きくすると、高くなる傾向がある。また、バイアス電圧を付加しつづける時間を長くしても、同様に、処理対象物(未処理Tダイ)の温度が高くなる傾向がある。したがって、処理対象物(未処理Tダイ)のバイアス電圧の大きさや、バイアス電圧を付加する時間を調整することによって、処理対象物(未処理Tダイ)の温度を所望の温度に調整することができる。
プラズマ窒化処理は、従来公知の装置を用いて行うことができる。
例えば、真空チャンバー内に、窒素プラズマによってプラズマイオン注入加工を施すプラズマイオン注入ガンが設置され、それに対向する位置に未処理Tダイ(従来公知のステンレス鋼系Tダイであってよい)を配置できるように構成されている装置を用いることができる。
本発明の離型性向上方法について説明する。
本発明の離型性向上方法は、Tダイの内部の溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に対する溶融樹脂の離型性を向上させる方法であって、未処理Tダイに前記溶融樹脂流路の内壁面および前記リップ部の表面にプラズマ窒化処理を施して窒素系金属間化合物からなる層を形成する工程を備える方法である。
本発明の離型性向上方法は、従来公知のプラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイ(すなわち未処理Tダイ)にプラズマ窒化処理を施して、その溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を形成する工程を備える方法である。これによって、Tダイ内部の溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に対する溶融樹脂の離型性を向上させることができる。
プラズマ窒化処理の方法は、前述の本発明の製造方法におけるプラズマ窒化処理と同様であってよい。
<実施例1>
Tダイを製造するときに用い得る鋼種の鋼片を用意し、これらに各種条件でプラズマ窒化処理して試験片を得た。そして、試験片について、硬度測定試験、表面粗さ測定試験およびシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂を用いた離型性試験を行った。以下に具体的に記す。
鋼片は以下の第1表に示す組成を備えるプラスチック金型用鋼(UDDEHOLM社製、商品名:スタバックス)である。鋼片の大きさは10mm×10mm×厚さ2mmであり、熱処理後、使用面表面を、砥粒を用いて研磨加工し、Raが0.005μm(ISO4287)となるように仕上げたものである。
上記の鋼片について、後に示す第2表に示す各種条件のプラズマ窒化処理を施して、試験片を得た。プラズマ窒化処理は、新明和工業株式会社製、商品名:PINKを使用した。
硬度測定試験はマイクロビッカース硬さ試験(押込荷重10gf)に基づいて行った。
表面粗さ測定試験はJIS B 0601に基づき、算術平均粗さ(Ra)を求めて評価した。
離型性試験について説明する。
ペレット状のシクロオレフィンポリマー樹脂(COP樹脂)(日本ゼオン株式会社製、商品名ZEONOR(登録商標)、1420R(ゼオノア))を用意し、COP樹脂の各試験片に対する、295℃における接触角を測定した。以下に測定手順を具体的に示す。
なお、295℃は、Tダイを用いてCOP樹脂からフィルムの成形品を製造するときのTダイおよびCOP樹脂の温度とほぼ同一温度である。したがって、以下に具体的に示す測定手順によって測定される接触角が大きい場合は、実際にTダイを用いてCOP樹脂を溶融してフィルムの成形品を製造するときに、COP樹脂はTダイの表面に対して離型性が高いと判断できる。後述するように、実際のTダイの使用雰囲気は大気であるのに対して窒素雰囲気内で接触角を測定する。これは、金属表面が有する基本的な樹脂との離型性を、酸化や炭化の影響を除いた上で評価するためである。実際は大気中にさらされるが、炭化、酸化の影響が入り込んで、金属表面自体の特性が把握できない。また、酸化の影響は、Tダイリップを窒素雰囲気とすることで、ある程度は回避することも可能である。
接触角の測定手順は、以下の通りである。
[1]COP樹脂ペレットを予め80℃で4時間以上乾燥した。
[2]試験片を赤外線加熱炉内に装填し、その表面にCOP樹脂ペレットを設置し、窒素雰囲気内で25℃(常温)から3分間で、295℃まで昇温した。
[3]295℃に到達の後、この温度を保持し、1分間経過時点で接触角を測定した。接触角の測定には、恒温濡れ性試験機である固液間接触角測定装置(WET−1200、アルバック理工製)を使用した。そして、この測定結果に基づき、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に従って接触角を算出した。
上記のような方法で、各種条件でプラズマ窒化処理して得た試験片について、硬度測定試験、表面粗さ測定試験および接触角測定を行った。なお、比較のため、プラズマ窒化処理を施していない鋼片についても、同様の試験を行った。図3に、上記の固液間接触角測定装置の内部が295℃に到達したときのCOP樹脂ペレットの様子を示す写真を示す。
結果を第2表および図4に示す。
図4は横軸(X軸)を温度(℃)(プラズマ窒化処理したときの温度)、縦軸(Y軸)を接触角(295℃におけるCOP樹脂の接触角の測定結果)とするグラフである。
なお、図4は、各測定値にバイアス電圧を記載し、温度のみでは接触角が説明できない事実を記載したものである。
また、第2表に示すデータの中の、バイアス電圧値が300Vであってプラズマ窒化処理時の温度が240〜320℃であるもの、および、バイアス電圧値が350Vであってプラズマ窒化処理時の温度が350℃であるものについて、プラズマ窒化処理時の温度と、表面粗さRa(μm)および硬度(HV Kgf/mm2)との関係をグラフにした。図5に示す。
また、表2に示すデータの中の、プラズマ窒化処理時の温度が300℃であるものについて、バイアス電圧値と、表面粗さRa(μm)および硬度(HV Kgf/mm2)との関係をグラフにした。図6に示す。
第2表および図4〜図6に示す測定結果から、プラズマ窒化処理を施した試験片は、接触角が39°程度から54°超を示し、未処理の鋼片の35°と比較した場合に高く、高い接触角を備えることが確認できた。
また、未処理の鋼片の硬度がHV550であったのに対して、プラズマ窒化処理を施した試験片については、最大でHV1300まで硬度が上昇した。このような硬度の上昇は、プラズマ窒化処理によって窒素原子が鋼内に侵入し、Cr4N、Fe4N系の金属間化合物を生じるためと考えられる。
なお、試験片の表面粗さは未処理の鋼片の表面粗さの場合(Ra:0.005)と比べて粗くなったが、Tダイの実用上は使用可能なレベルと判断する。
<実施例2>
処理温度が最高値350℃の試験片♯3では、観察終了後約1ヶ月の大気保存で若干の着色(酸化と考える)が発生した。これはプラズマ窒化処理によって鋼材のもつ耐腐食性が若干失われたためと推測される。耐腐食性が大幅に損なわれた場合、商品価値を損ねる。
この着色を懸念して1年間の大気保存を想定し、アレニウスの式に基づき加速試験を実施した。その結果、320℃以下のプラズマ窒化処理温度を施した試験片の場合は、この着色現象は見られなかった。
実施例1、2の結果から、プラズマ窒化処理には、図7に示すような、好ましい範囲(限界領域)が存在することが発見された。
プラズマ窒化処理の温度が280℃以下では硬度が低く、逆に320℃以上では耐腐食性が弱くなる。また、バイアス電圧が−400V未満ではスパッタにより表面が粗くなり、−150V超では表面粗さへの影響は小さくなるが、硬度が低くなる。効果的な窒化の処理領域は処理温度280℃以上320℃以下、バイアス電圧−150V〜−400Vであり、この領域では耐腐食性が損なわれず、硬度も高い。
本発明のTダイを用いて、溶融樹脂をTダイから吐出しながら型に塗布する溶融微細転写(登録商標)法を行うと、本発明のTダイでは溶融樹脂とTダイのリップ部との剥離性が向上しているので、平滑な塗布表面性状が実現され、低温の金型に樹脂を高速で塗布できるようになると考える。
1 Tダイ
2 ダイ本体
3、4 ダイ部材
5 溶融樹脂流路
8 吐出部
9 リップ部
20 めっき層

Claims (6)

  1. 内部に溶融樹脂流路を有し、その吐出口にリップ部を有する、プラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイの製造方法であって、
    未処理Tダイにプラズマ窒化処理を施して、前記溶融樹脂流路の内壁面および前記リップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を形成する工程を備える、溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高いTダイの製造方法。
  2. バイアス電圧を−150〜−400Vとし、前記未処理Tダイの温度を250〜350℃として前記プラズマ窒化処理を行う、請求項1に記載のTダイの製造方法。
  3. 熱可塑性樹脂からなるフィルムを得るためのTダイが得られる、請求項1または2に記載のTダイの製造方法。
  4. Tダイの内部の溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に対する溶融樹脂の離型性を向上させる方法であって、
    前記Tダイにプラズマ窒化処理を施して、前記溶融樹脂流路の内壁面および前記リップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を形成する工程を備える、離型性向上方法。
  5. 溶融樹脂流路の内壁面およびリップ部の表面に窒素系金属間化合物からなる層を有する、溶融樹脂の離型性に優れ、硬度が高い、プラスチック成形用のステンレス鋼系Tダイ。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載のTダイの製造方法によって製造された、請求項5に記載のTダイ。
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