JP2017193520A - 抗ウイルス剤及び抗ウイルス用食品組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
ウイルスは、一般に約0.02〜0.3μmの大きさからなる微小な寄生体であって、主にタンパク質の殻(カプシド)と、その殻内部にある核酸(RNA又はDNA)から構成されている。
ウイルスは、その複製については完全に細胞に依存しており、まず宿主細胞に吸着して細胞内に侵入する。そして、細胞内でDNAやRNAを放出(脱殻)して複製されるが、その過程では特異的酵素を必要とする。ウイルスに感染した宿主細胞は、正常に機能できなくなって通常は死滅し、その宿主細胞から新しいウイルスが放出されて他の宿主細胞へさらに感染する。
ウイルスは、ゲノムとしてDNAを有するDNAウイルスと、RNAを有するRNAウイルスとに大別され、RNAウイルスの中には、代表的なウイルスとして呼吸器疾患を引き起こすインフルエンザウイルスや、消化器疾患を引き起こすロタウイルス及びノロウイルスが知られている。
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科に属し、核タンパクの抗原性の違いによってA型、B型及びC型に分類されている。その中で、A型とB型のウイルス表面にある糖タンパク質は変異が大きく、インフルエンザの種類が多い要因となっている。特に、A型インフルエンザウイルスは、抗原性が変異しやすいため、毎年インフルエンザウイルス感染を大流行させている。
またインフルエンザの治療剤としては、例えば、ウイルスの脱殻過程において細胞内でRNAを放出する際に必要なM2蛋白を阻害することで、ウイルス増殖を抑制するアマンタジン(商品名:シンメトレル(登録商標))が用いられている。また、ウイルスの放出過程において感染した宿主細胞からのウイルス放出に必要なノイラミニダーゼを阻害することで、ウイルス増殖を抑制するオセルタミビル(商品名:タミフル(登録商標))やザナミビル(商品名:リレンザ(登録商標))が用いられている。
また、インフルエンザ治療剤については、その有効性が認知されている一方で、副作用や耐性株の出現等の問題がある。またアマンタジンでは、A型ウイルスのM2蛋白を阻害する効果があるがB型ウイルスの蛋白には結合できず効果がない等、同じ活性成分でもウイルスの型によって効果が異なる(非特許文献1参照)。
インフルエンザは、現代においてもその強烈な伝播力によって大きな流行を繰り返す伝染病であって、社会に莫大な被害を及ぼしている。インフルエンザウイルスに有効で安全性の高い薬剤は少ないうえに、耐性ウイルスの出現なども問題視されているため、新規メカニズムの抗インフルエンザウイルス剤の開発が強く望まれているところである。
わが国では、ロタウイルス胃腸炎による年間の患者数は約80万人、入院者数は約7〜8万人に及ぶと推計されており、毎年数名の死亡者が報告されている。ロタウイルスは感染力が非常に強く、衛生環境の整った先進国であっても、概ね5歳までにほぼ100%のヒトがロタウイルスに一度は感染すると考えられている。アメリカ合衆国では年間約50万人以上が主に下痢症状で受診し、特に小児は重篤な下痢を起こし易く、罹患患者の約10%は入院すると言われている。地域差があると考えられるが、全世界で毎年約70万人程度が亡くなっていると考えられている。
先進国の疫学調査によると、衛生状態の改善ではロタウイルスの有病率を減少させることはできないとされている。また、ロタウイルスに対するワクチンが一応開発されているものの、ワクチンの無効な型や組み替え体が存在するため、それらの対策が求められている。そこで、新規メカニズムのロタウイルス治療剤の開発が期待されている。
ノロウイルス感染症は近年増加傾向にあり、ノロウイルスは変異を繰り返して、ヒトからヒトへ感染するよう変異することがあり、新型のノロウイルスに対する抗体をもたないために大流行することが多い。しかしながら、ノロウイルスに対するワクチンは、一部有効性が認められるものもあるがまだ開発途上にあって、ノロウイルスワクチンの開発や、新規メカニズムのノロウイルス治療剤の開発が期待されている。
特許文献2には、イネ科植物の抽出成分が、抗菌性及び抗ウイルス性を示すことが記載されている。特許文献2では、抗ウイルス活性を試験しておらず、タケノコに関する記載もない。
特許文献3には、竹抽出物(竹植物の表皮、竹如)を有効成分とする抗ウイルス組成物が記載されている。特許文献3では、インフルエンザウイルス、ネコカリシウイルス、ノロウイルスに対して抗ウイルス効果があることが試験されているが、タケノコに関する記載はない。
特許文献4には、タケノコを含むタケ類から抽出される抗腫瘍組成物が記載されている。特許文献4では、レトロウイルスの感染が原因の成人T細胞白血病に効果がある試験結果が示されている。また、B型肝炎、C型肝炎、AIDSに対して抗ウイルス剤として使用できることも記載されているが、インフルエンザ、ロタウイルス、ノロウイルスについての記載はない。
本発明の他の目的は、タケノコ由来物質の新規な利用方法となる抗ウイルス剤及び抗ウイルス用食品組成物を提供することにある。
詳しく言うと、これらウイルスは、生体内の宿主細胞に吸着して細胞内に侵入し、細胞内でRNAを放出(脱殻)して複製され、宿主細胞から複製されたウイルスが放出されて増殖するところ、本発明者らは、タケノコ由来物質が、これらウイルスの増殖メカニズムにおいてウイルスの宿主細胞への吸着を阻害することを明らかにし、また、当該ウイルスの宿主細胞内での増殖を阻害することを明らかにして、本発明をするに至った。
また、本発明者らは、タケノコ由来物質が、ロタウイルスなどのウイルスの増殖メカニズムにおいて、これらウイルスの吸着を阻害することを明らかにし、また、これらウイルスの細胞内での増殖も阻害することを明らかにして、本発明をするに至った。具体的には、タケノコ由来物質が、ロタウイルスなどのウイルスの増殖メカニズムにおいて、これらウイルスの吸着時期、また複製・放出時期に必要となる糖タンパク質(例えばヘマグルチニン等)や特異的酵素(例えばRNAポリメラーゼ等)の活性を阻害することを明らかにして、本発明をするに至った。
このとき、前記タケノコ由来物質物は、タケノコの抽出物であると良い。
また、前記ウイルスは、RNAウイルスであると良く、RNAウイルスのうち、インフルエンザウイルス、ロタウイルス及びノロウイルスからなる群より選ばれるいずれかのウイルスであるとさらに良い。
また、前記ロタウイルスは、ロタウイルスKRH−2株であると良い。
上記構成により、例えばヒト、特にウイルス感染患者にタケノコ由来物質物を投与すると、タケノコ由来物質物が生体内においてウイルス増殖を阻害する作用を果たすため、本発明をウイルス感染症の予防剤又は治療剤として用いることができる。
そして、タケノコ由来物質物を投与することで、ウイルス増殖の阻害作用が向上する。
そして、RNAウイルス感染症のうち、特にその強烈な伝播力によって社会に莫大な被害を及ぼすインフルエンザウイルス感染症、ロタウイルス感染症又はノロウイルス感染症の予防剤又は治療剤として好適に用いることができる。
また、ワクチンを接種した幼児から単離されたロタウイルスのKRH−2株に対しても、予防剤又は治療剤として用いることができる。
そして、ワクチンが効果を示さないロタウイルスに対しても、予防剤又は治療剤として用いることができる。
上記のように、抽出物の部位や、抽出物の濃度を最適化することで、RNAウイルス増殖の阻害作用の効果が一層向上する。
また、前記抽出物由来であって、前記RNAウイルスの細胞内での複製を阻害するためのウイルス放出阻害剤として用いられると良い。
また、前記抽出物由来であって、前記RNAウイルスの細胞からの放出を阻害するためのウイルス放出阻害剤として用いられると良い。
上記構成により、ウイルスは、一般に生体内の宿主細胞に吸着して細胞内に侵入し、細胞内でRNAを放出(脱殻)して複製され、宿主細胞から複製されたウイルスが放出されることで増殖するところ、本発明の抽出物が、ウイルス増殖を阻害するために宿主細胞への吸着時期において抗ウイルス活性を発揮することができる。
また本発明の抽出物は、ウイルス増殖を阻害するために宿主細胞内での複製時期において抗ウイルス活性を発揮することもできる。
また本発明の抽出物は、ウイルス増殖を阻害するために宿主細胞内での放出時期において抗ウイルス活性を発揮することもできる。
そのため、例えば、ウイルス感染症患者に対して、ウイルス増殖がどの時期まで進行しているかを把握して最適な投与タイミングで本抗ウイルス剤を投与することができる。
また、タケノコ由来物質の新規な利用方法となる抗ウイルス剤及び抗ウイルス用食品組成物を提供できる。
本実施形態は、タケノコ由来物質を有効成分とし、ヒトに投与することでヒト体内のウイルスの増殖を阻害して、ウイルス感染症の予防又は治療に用いられることを特徴とする抗ウイルス剤及び抗ウイルス用食品組成物の発明に関するものである。
詳しく言うと、ウイルス増殖を阻害するためにウイルスの宿主細胞への吸着時期において抗ウイルス活性を発揮し、また、ウイルスの宿主細胞内での複製時期において抗ウイルス活性を発揮し、さらに、ウイルスの宿主細胞内での放出時期において抗ウイルス活性を発揮することを特徴とする抗ウイルス剤及び抗ウイルス用食品組成物の発明に関するものである。
ウイルスは、ゲノムがDNAであるかRNAであるかによって、DNAウイルスとRNAウイルスに大別される。
またDNAウイルスは、DNAが一本鎖であるか二本鎖であるかによって、主に2つに分類することができる。
具体的には、一本鎖のDNAウイルスとして、パルボウイルス科などが存在し、また、二本鎖のDNAウイルスのうち、エンベロープを有するものとしてヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科及びヘパドナウイルス科などが存在し、エンベロープを有しないものとしてアデノウイルス科及びパピローマウイルス科などのウイルスが存在する。
一本鎖のDNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、ヒトパルボB19(伝染性紅班)などが挙げられ、また、二本鎖のDNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、単純ヘルペス(歯肉口内炎、唇ヘルペス、性器ヘルペスウイルス感染症)、水痘・帯状疱疹、痘瘡、B型肝炎、アデノ(咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎)、ヒトパピローマなどが挙げられる。
具体的には、まず一本鎖の−鎖RNAウイルスとして、オルトミクソウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、ブニヤウイルス科及びアレナウイルス科などのウイルスが存在する。なお、インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科に属している。
これら一本鎖の−鎖RNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、狂犬病、麻疹、ムンプス(流行性耳下腺炎)、RS(呼吸器感染症)、エボラ(出血熱)、マールブルグ(出血熱)、クリミア・コンゴ出血熱、SFTS、ラッサ(出血熱)、フニン/サビア/ガナリト/マチュポ(出血熱)などが挙げられる。
これら一本鎖の+鎖RNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、デング、ウエストナイル、日本脳炎、C型肝炎、黄熱、SARSコロナ、MERSコロナ、風疹、ヒト免疫不全(AIDS)、ヒトTリンパ好性(成人T細胞白血病)、E型肝炎、ノロ(感染性胃腸炎)、ポリオ(急性灰白髄炎)、A型肝炎、コクサッキー(手足口病、ヘルパンギーナ)、ライノ(感冒)などが挙げられる。
なお、ロタウイルスは、レオウイルス科に属している。
二本鎖RNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、ロタ(感性性胃腸炎)などが挙げられる。
インフルエンザウイルスは、ウイルス表面に存在する抗原性糖タンパク質であるヘマグルチニン(Hemagglutinin:HA)とノイラミニダーゼ(Neuraminidase:NA)の活性によって宿主細胞へ吸着し、また、ノイラミニダーゼの活性によって宿主細胞内に侵入することができる。
インフルエンザウイルスは、これら抗原性糖タンパク質の違いによってA型、B型及びC型に分類されている。特に、A型インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン16種と、ノイラミニダーゼ9種との型によって144種類の亜型に分けられる。そして、これらの組み合わせが頻繁に変化し、これに起因して抗原性の異なる新たな亜型のウイルスが出現することが知られている。
健常人では、通常約24〜48時間の潜伏期間をおいて発症し、1〜2週間程度で治癒するが、乳幼児、高齢者や呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの代謝疾患や免疫機能が低下している患者などでは、細菌などによる二次感染や肺炎を併発して死に至る場合も少なくない。また、呼吸器の局所感染にとどまらず、インフルエンザ脳炎・脳症などに代表される重症神経系合併症といった極めて重篤な症例も報告されている。このほか、腹痛、悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状がみられることもあり、特に小児では注意を要する。
ロタウイルス粒子は、コア、内殻及び外殻の3層で構成される二重殻粒子からなり、ウイルス粒子内にRNAポリメラーゼやキャップ合成関連酵素を有する。コアは、タンパク質VP1、VP2、VP3からなり、内殻タンパク質VP6によって覆われて一重殻粒子を形成し、さらに外殻タンパク質VP4、VP7で覆われて二重殻粒子つまり感染性ウイルス粒子を形成する。
ロタウイルスは、内殻タンパク質VP6の抗原性によってA〜H群の8種類に分類される。ヒトへの感染が報告されているロタウイルスは主にA群〜C群である。
ロタウイルスは、ヒトの小腸の腸管上皮細胞に感染し、微絨毛の配列の乱れや欠落などの組織病変の変化を引き起こす。これによって腸からの水の吸収が阻害され下痢症を発症する。通常約48時間の潜伏期間をおいて発症し、主に乳幼児に急性胃腸炎を引き起こす。
主症状は下痢(血便、粘血便は伴わない)、嘔気、嘔吐、発熱、腹痛であり、通常約1〜2週間で自然に治癒するが、脱水がひどくなるとショック、電解質異常、時には死に至ることもある。
ウイルスは、核酸やタンパク質の合成に必要な素材を有しておらず、必ず生体細胞を必要とする。生体細胞内に寄生して、細胞の代謝を利用して増殖し、材料、宿主細胞の代謝酵素、タンパク質合成のための宿主細胞リボソームを利用して自己成分を合成する。
例えば細菌は基本的に2分裂によって増殖していくのに対し、ウイルスは1つの粒子が感染した宿主細胞内で一気に数を増やしていく。
インフルエンザウイルスの場合、ウイルス表面にあるヘマグルチニンが細胞側にあるシアル酸受容体に結合する。
ロタウイルスの場合、ウイルス表面にある結合タンパク質(外殻タンパク質VP4、VP7)が細胞側にある受容体に結合する。
インフルエンザウイルスの融合には、宿主細胞由来のエンドプロテアーゼによるヘマグルチニンの特異的配列部位でのペプチド結合の開裂が必須である。この開裂によってヘマグルチニンの膜融合ドメインが露出し、エンドソーム膜との融合が起こる。
ロタウイルスの場合、宿主細胞由来のプロテアーゼ(トリプシン)によって、外殻タンパク質VP4が、タンパク質VP5とタンパク質VP8に開裂している必要がある。この開裂の後、まずタンパク質VP8がシアル酸を含む分子(第1レセプター)と接触し、次にタンパク質VP5及び外殻タンパク質VP7がインテグリン(第2レセプター)と結合することによって、直接侵入あるいはエンドサイトーシスで細胞内へ侵入すると考えられている。
A型インフルエンザウイルスの表面には、M2蛋白と呼ばれる膜タンパク質が存在しており、M2蛋白はH+を通過させるイオンチャネルを形成している。エンドソーム内がさらに酸性化(pHの低下)していくと、このイオンチャネルのゲートが開き、H+がウイルス内へ取り込まれる。これを契機として、ウイルスの脱殻が生じ、RNAが細胞内に放出される。
ロタウイルスの場合、細胞侵入の際に外殻タンパク質VP4、VP7が除去される。外殻タンパク質VP4、VP7が外れることで、細胞内に放出された内殻タンパク質VP6の再配置が起こり、RNA転写が開始される。
インフルエンザウイルスの場合、細胞内で増殖した後、感染した宿主細胞から放出される際には、ウイルス由来のノイラミニダーゼによるヘマグルチニンとシアル酸受容体との切断が必須である。
また、オセルタミビルやザナミビルは、インフルエンザウイルスのエンベロープに存在するスパイクタンパク質の1つであるノイラミニダーゼの作用を阻害し、複製されたインフルエンザウイルスが宿主細胞から出芽して他の宿主細胞へ感染を広げることを抑制することができるものの、近年、若年者に対する副作用が問題となっている。
ノロウイルスは、ヒトに対して嘔吐、下痢等の急性胃腸炎症状を引き起こし、症状が消失した後も約3〜7日間ほど患者の便中に排出されるため、2次感染に注意が必要である。
ノロウイルスはヒトの空腸の上皮細胞に感染して繊毛の委縮と扁平化、さらに剥離と脱落を引き起こして下痢を生じると考えられている。
潜伏期間は約24〜48時間であると考えられ、嘔気、嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感などを伴うこともある。特別な治療を必要とせずに軽快するが、乳幼児や高齢者およびその他、体力の弱っている者での嘔吐、下痢による脱水や窒息には注意をする必要がある。
現在のところ、ノロウイルスに効果のある一般的な抗ウイルス剤はなく、通常、対症療法が行われており、脱水症状を防止するための水分補給や、体力消耗を防ぐために栄養補給をすることが治療の中心となっている。また臨床症状からだけではノロウイルス感染症を特定することは難しいとされている。
本発明の抗ウイルス剤の有効成分となる「タケノコ」とは、イネ科タケ亜科に属するタケ類又はササ類の若芽である。
イネ科タケ亜科に属するタケ類又はササ類としては、マダケ属、ナリヒラダケ属、トウチク属、オカメザサ属、ササ属、アズマザサ属、ヤダケ属、メダケ属、カンチク属、ホウライチク属等を挙げることができ、マダケ属に属するモウソウチク、マダケ、またはハチクであることが好ましいが、本発明はこれらに限定されない。
また、タケノコの中には、遺伝的方法、例えば組換え、形質導入、形質転換等により得られるものも含まれる。
「タケノコの抽出物」とは、タケノコから抽出されるものを言い、タケノコの可食部、表皮を磨り潰したもの、可食部や表皮を搾汁して得られる搾り汁、可食部や表皮を搾汁した後に残る残渣、これら可食部や表皮を磨り潰したものや搾り汁、残渣をそれぞれ濾過した濾液もしくは遠心分離した上清液を含むものである。
また、極性溶媒又は非極性溶媒等で抽出した抽出物も含むものである。極性溶媒を抽出溶媒として用いる場合には、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いると良い。
親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
なお、抽出溶媒や抽出手段は、タケノコ由来の成分を抽出できるものであれば特に限定されることなく、いかなる溶媒や手段を用いても良い。
抗ウイルス剤は、タケノコ由来物質が有するウイルス増殖の阻害作用、特にRNAウイルス増殖の阻害作用を通じて、抗ウイルス作用を発揮するものである。
具体的な作用メカニズムは、以下の通りである。
(1)タケノコの抽出物は、RNAウイルスの増殖過程のうち「吸着時期」において当該ウイルス表面にある結合タンパク質(リガンド)が宿主細胞表面にある受容体(レセプター)に結合する際に、当該ウイルスの宿主細胞への吸着を阻害する作用を果たす。
詳しく言うと、RNAウイルスがインフルエンザウイルスの場合、タケノコの抽出物が、当該ウイルスの吸着時期に必要となる糖タンパク質(ヘマグルチニン等)の活性を阻害する作用を果たす。
また、RNAウイルスがロタウイルスの場合、タケノコの抽出物が、当該ウイルスの吸着時期に関与する結合タンパク質(外殻タンパク質VP4、VP7)や特異的酵素の活性を阻害する作用を果たす。
詳しく言うと、RNAウイルスがインフルエンザウイルスの場合、タケノコの抽出物が、当該ウイルスの複製時期に必要となる特異的酵素の活性を阻害する作用を果たす。
また、RNAウイルスがロタウイルス又はノロウイルスの場合、タケノコの抽出物が、これらウイルスの複製時期に関与する結合タンパク質や特異的酵素の活性を阻害する作用を果たす。
詳しく言うと、RNAウイルスがインフルエンザウイルスの場合、細胞内で増殖した後、感染した宿主細胞から放出される際に生じる、ウイルス由来のノイラミニダーゼによるヘマグルチニンとシアル酸受容体との切断を阻害する作用を果たす。
そのため、ウイルスの増殖過程のうち特定の一時期においてのみ抗ウイルス活性を発揮する従来の抗ウイルス剤と比較して、本抗ウイルス剤であれば、ウイルス増殖過程の前半の吸着時期であったとしても、また後半の複製時期や放出時期であったとしても抗ウイルス活性を発揮することが可能となる。
また、本抗ウイルス剤は、例えばA型インフルエンザウイルスには効果を発揮するもののB型、C型には効果を有さないアマンタジンのような抗ウイルス剤と比較して、A型、B型、C型を問わず、全てのインフルエンザウイルスに対して抗ウイルス活性を発揮する。
従って、従来の抗ウイルス剤として使用認可されているアマンタジンやオセルタミビル、ザナミビルに次ぐ新たな抗ウイルス剤として、臨床応用の可能性がある。
本実施形態の抗ウイルス剤は、ウイルス感染症患者、ウイルス感染症に罹患したヒト以外の動物に投与されることで、ウイルス感染症の治療剤として、またウイルス性疾患の治療剤として用いることができる。
また、ウイルス感染症を罹患する前のヒト、ウイルス感染症予備軍のヒト、これらヒト以外の動物を対象としたウイルス感染症の予防剤として、またウイルス性疾患の予防剤として用いることもできる。
また、本実施形態の抗ウイルス剤は、ウイルスを病原体とする感染性胃腸炎の予防剤又は治療剤として用いることもできる。
インフルエンザウイルスの場合、A型インフルエンザウイルスに感染した患者に対して投与されることが望ましく、さらに当該ウイルスの亜型がH1N1であることが望ましい。
ロタウイルスの場合、A群ロタウイルスに感染した患者に対して投与されることが望ましく、さらに当該ウイルスがA群ロタウイルスWa株(G1P[8])であることが望ましいが、これに限定されるものではなく、当該ウイルスがKU株、DS−1株、S2株、YO株、HOSOKAWA株、KRH−2株であっても良い。
(医薬組成物)
医薬の分野では、ウイルス増殖を阻害する作用、すなわち、ウイルスの宿主細胞への吸着阻害作用、または、ウイルスの宿主細胞における増殖阻害作用を有効に発揮できる量のタケノコ由来物質と共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、当該作用を有する医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、医薬品であっても医薬部外品であってもよい。
当該医薬組成物は、内用的に適用されても、また外用的に適用されても良い。従って、当該医薬組成物は、内服剤、静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射及び/又は腹腔内注射等の注射剤、経粘膜適用剤、経皮適用剤等の製剤形態で使用することができる。
当該医薬組成物の剤型としては、適用の形態により、適当に設定できるが、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤、散剤などの固形製剤、液剤、懸濁剤などの液状製剤、軟膏剤、またはゲル剤等の半固形剤が挙げられる。
食品の分野では、ウイルス増殖を阻害する作用を生体内で発揮できる有効な量のタケノコ由来物質を食品素材として、各種食品に配合することにより、当該作用を有する食品組成物を提供することができる。
すなわち、本発明は、食品の分野において、ウイルス増殖阻害用等と表示された食品組成物を提供することができる。当該食品組成物としては、一般の食品のほか、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメント等が挙げられる。また、食品添加物として用いることもできる。
当該食品組成物としては、例えば、調味料、畜肉加工品、農産加工品、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、濃縮飲料、菓子類(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)、パン、シリアル等が挙げられる。また、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の場合、カプセル、トローチ、シロップ、顆粒、粉末等の形状であっても良い。
また栄養機能食品とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められた上限値、下限値の範囲内にある必要があり、栄養機能表示だけでなく注意喚起表示等もする必要がある。
また機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
上記において本発明は、タケノコ由来物質を有効成分として含み、ウイルス感染症患者、ウイルス感染症を罹患したヒト以外の動物を対象とした抗ウイルス剤用特定保健用食品や、抗ウイルス剤栄養機能食品、抗ウイルス剤機能性表示食品として用いることができる。
また本発明は、タケノコ由来物質を有効成分として含み、生体、例えばウイルス感染症を罹患する前のヒト、ウイルス感染症予備軍のヒト、これらヒト以外の動物を対象とした抗ウイルス剤用特定保健用食品や、抗ウイルス剤用栄養機能食品、抗ウイルス剤用機能性表示食品として用いることができる。
本実施形態の抗ウイルス剤の用法としては、例えばインフルエンザウイルスの場合、ヒトの上気道(鼻腔や咽頭)で感染し易いため、例えば、スプレーによって鼻腔内又は口腔内へ直接噴霧することや、吸入器によって鼻腔内又は口腔内へ導入すると良い。また、うがい薬によって口腔内へ導入すると良い。そのほか、点鼻等で経鼻投与しても良いし、のど飴やトローチ、ガム等で経口投与しても良いし、マスクや消毒お手拭きに利用しても良い。
また例えばロタウイルスやノロウイルスの場合、ヒトの腸内で感染し易いため、腸内で抗ウイルス剤が溶解するように(胃では溶解しないように)処方すると良い。例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒又はシロップ等によって経口投与すると良い。
タケノコの抽出物を、以下の手順により調製した。
タケノコ(兵庫県産、モウソウチク)の皮を除き、可食部を凍結乾燥した後、粉末化した。凍結乾燥粉末2gを100mlの熱水で90分抽出した後、25℃、3500rpmで10分間遠心分離をした。得られた抽出液を5μmの濾紙で濾過した後、0.45μm滅菌フィルターにて濾過し、−30度で保管した。
市販のタケ抽出物として、ネオバンブス−2000(モウソウチク乾留抽出物70wt%/エタノール30wt%、白井松新薬株式会社製、ネオバンブスは登録商標)を比較試料として用いた。
実施例1の抗ウイルス剤を用いて、ロタウイルス増殖を阻害する作用を確認する試験を行った。宿主細胞としてMA−104細胞(アカゲザル腎細胞)を使用し、またウイルスとしてロタウイルスWa株(G1P[8])を使用し、また培地として10%FBS(Fetal Bovine Serum)含有のDMEM(Dulbecco‘s Modified Eagle Medium)培地を使用した。
その後、培地を除去し、所定濃度に希釈したタケノコの抽出物を含む公知なDMEM培地を、ウイルス感染させたMA−104細胞に対して添加し、CO2インキュベータにて48時間培養した。
その後、上清を回収し、フォーカス減少法を用いて上清中のウイルス力価(FFU/ml)を測定し、ウイルス増殖阻害率(%)を算出した。また、ウイルス増殖阻害率50%濃度(IC50)を算出した。
上記試験結果を解析して、タケノコの抽出物による各濃度(0.06mg/ml、0.3mg/ml、0.6mg/ml)のウイルス増殖阻害試験の結果を図1に示す(*:p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
各濃度のウイルス増殖阻害率は、順に94%、98%、99%であって、IC50は、0.47mg/mlであった。
ウイルス増殖阻害率は、タケノコの抽出物の濃度が高くなるにつれてさらに増加した。
なお、「タケノコの抽出物の濃度1mg/ml」とは、液体培地1mlに対して1mgのタケノコの抽出物が含まれる濃度であることを示す。
なお、これら試験は複数回行い、同様の再現性が得られた。
試験1の結果から、タケノコの抽出物を添加したものは、全ての濃度においてロタウイルス増殖を阻害する作用が確認された。また、濃度依存的にウイルス増殖を阻害する作用が高くなった。
このことから、タケノコの抽出物に含まれる成分が、ロタウイルス増殖を阻害する作用をもたらしていることが分かった。
また、ロタウイルス増殖を阻害する作用におけるタケノコの抽出物の好適な濃度は0.3mg/ml以上であって、より好適な濃度(IC50)は0.47mg/ml以上であることが分かった。
実施例1の抗ウイルス剤を用いて、ロタウイルスが増殖するために必要な過程のうち、どの増殖過程を阻害しているかを確認する試験を行った。宿主細胞としてMA−104細胞(アカゲザル腎細胞)を使用し、またウイルスとしてロタウイルスWa株(G1P[8])を使用し、また培地として10%FBS含有のDMEM培地を使用した。
まず、試験1と同様に単層培養したMA−104細胞にロタウイルスを0.01moi(感染多重度)で感染させて(添加して)室温で1時間放置した(吸着させた)。
そして、3mg/mlのタケノコの抽出物を添加したMEM培地を、ウイルス感染させたMA−104細胞に対して所定のタイミングで添加した。
ウイルス吸着から16時間経過後に、−80℃から37℃の凍結融解を3回繰り返し、細胞内のウイルス力価をフォーカス法を用いて測定し、ウイルス増殖阻害率を算出した。
詳しく言うと、(1)ではウイルス感染と同時に当該抽出物を添加し、ウイルス感染から1時間後に当該抽出物を添加していない培地と交換した。(2)ではウイルス培養開始時に当該抽出物を添加し、16時間後まで当該抽出物の存在下で培養を行った。(3)ではウイルス感染と同時に当該抽出物を添加し、ウイルス培養開始時にも当該抽出物を添加し、16時間後まで当該抽出物の存在下で培養を行った。(4)ではウイルス吸着と同時に当該抽出物を添加し、ウイルス吸着から4時間後に当該抽出物を添加していない培地と交換した。(5)ではウイルス吸着から4時間後に当該抽出物を添加し、ウイルス吸着から8時間後に当該抽出物を添加していない培地と交換した。(6)ではウイルス吸着から8時間後に当該抽出物を添加し、ウイルス吸着から12時間後に当該抽出物を添加していない培地と交換した。(7)ではウイルス吸着から12時間後に当該抽出物を添加し、ウイルス吸着から16時間後に当該抽出物を添加していない培地と交換した。
上記試験結果を解析して、タケノコの抽出物によるウイルスの吸着時、培養時、吸着・培養時における増殖阻害率を比較したグラフを図2に示す(*:p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
ウイルスの吸着時、培養時、吸着時及び培養時の双方における増殖阻害率は、順に85%、100%、100%であった。
また、培養時の異なる期間において、抽出物を添加しておいた場合のウイルス増殖阻害試験の結果を図2に示す。
抽出物の添加期間が培養0時間から4時間、培養4時間から8時間、培養8時間から12時間、培養12時間から16時間における増殖阻害率は、順に69%、72%、78%、85%であった。
試験2の結果から、タケノコの抽出物を添加することで、ウイルスの細胞への吸着時、ウイルスの細胞内での増殖時の双方でウイルスの増殖を阻害していることが判明した。また、「細胞内での増殖時」のほうが「細胞への吸着時」よりもウイルス増殖を阻害する作用が高くなった。ロタウイルスの感染過程におけるすべての過程でウイルスの増殖を阻害していることが示唆されていることから、タケノコの抽出物はロタウイルスの感染時から感染後までの長期間に渡って増殖を阻害することになり、ロタウイルスの治療剤及び予防剤として、非常に有用であると言える。
実施例1の抗ウイルス剤を用いて、タケノコの抽出物の細胞毒性の有無を検討する試験を行った。マイクロプレートに単層培養したMA−104細胞にタケノコの抽出物と終濃度1μg/mlアセチルトリプシン含有無血清MEMの混合液を添加し、37℃で3日間培養した。MTT標識試薬を加えて37℃で4時間更に培養し、可溶化溶液を加えて37℃で一晩培養した。マイクロプレートリーダーを用いて、リファレンス波長を690nmとし、550nmで吸光度を測定した。
上記試験結果を解析して、タケノコの抽出物による各濃度の吸光度をプロットしたグラフを図3に示す。
コントロールと比較して、吸光度の減少は観測されなかった。
試験3の結果から、0〜2.4mg/mlの範囲でタケノコの抽出物に細胞毒性はないことが示唆された。
実施例1の抗ウイルス剤を用いて、ロタウイルスWa株の代わりに、KU株、DS−1株、S2株、YO株、HOSOKAWA株、KRH−2株を用いて試験1と同様の試験を行った。
上記試験結果を解析して、タケノコの抽出物による各濃度(0.06mg/ml、0.3mg/ml、0.6mg/ml、1.2mg/ml)の各株に対するウイルス増殖阻害試験の結果を図4〜9に示す。
いずれのロタウイルス株に対しても、増殖阻害活性を示した。
試験4の結果から、タケノコの抽出物を添加したものは、ロタウイルスWa株以外のKU株などの株に対しても、全ての濃度においてロタウイルス増殖を阻害する作用が確認された。また、濃度依存的にウイルス増殖を阻害する作用が高くなった。
このことから、タケノコの抽出物に含まれる成分が、ロタウイルスWa株以外の株に対しても増殖を阻害する作用をもたらしていることが分かった。多くの血清型及び遺伝子型のロタウイルスに効果を示すことから、タケノコの抽出物は、非常に有用な抗ウイルス剤である。
公知のロタウイルスワクチンである、Rotarix(登録商標)やRotateq(登録商標)が効果を示す血清型及び遺伝子型は限定的であり、すべてのロタウイルス株に対して効果を発揮するものではない。Rotarix(登録商標)は、ヒトロタウイルスG1P[8]血清型を弱毒化した単価のワクチンであり、Rotateq(登録商標)は、ウシロタウイルスのV7に、ヒトロタウイルスのG1、G2、G3、G4を組み入れたリアソータント(遺伝子組み換え)のウイルス4種と、ウシロタウイルスのVP4にP[8]遺伝子を組み込んだリアソータントのウイルス1種の計5種のウイルスを混ぜた五価のワクチンである。
ロタウイルスのKRH−2株は、ワクチンを接種した幼児から単離されたものであり、本発明の抗ウイルス剤は、ワクチンが効果を示さないロタウイルスに対しても予防剤又は治療剤として用いることができるという有利な効果を備えるものである。
比較例1のタケの抽出物試料を用いて、試験1と同様にロタウイルスの増殖阻害試験を行った。
上記試験結果を解析して、タケの抽出物による各濃度(0.18mg/ml、0.24mg/ml、0.3mg/ml、0.36mg/ml、0.42mg/ml、0.48mg/ml、0.54mg/ml、0.6mg/ml)のウイルス増殖阻害試験の結果を図10に示す。
各濃度のウイルス増殖阻害率は、順に22%、−1%、−22%、38%、73%、82%、100%、100%であった。
p値が0.05より小さいときに有意差があるとした場合、0.18mg/ml、0.24mg/ml、0.3mg/ml、0.36mg/mlでは有意差がなく、0.42mg/ml、0.48mg/ml、0.54mg/ml、0.6mg/mlで有意差があった。
ウイルス増殖阻害率は、タケの抽出物の濃度が高くなるにつれてさらに増加した。
比較試験1の結果から、タケの抽出物を添加したものは、0.54mg/ml以上で強い抗ウイルス活性が確認され、0.42mg/ml以上の濃度においてロタウイルス増殖を阻害する作用が確認された。また、濃度依存的にウイルス増殖を阻害する作用が高くなった。
このことから、タケの抽出物に含まれる成分が、ロタウイルス増殖を阻害する作用をもたらしていることが分かった。
比較例1のタケの抽出物試料を用いて、試験3と同様にMTTアッセイを行った。
上記試験結果を解析して、タケの抽出物による各濃度の吸光度をプロットしたグラフを図11に示す。
0.18mg/ml、0.3mg/mlでは、コントロールと比較して、吸光度の減少は観測されなかったが、0.6mg/mlでは吸光度が減少しており、細胞障害性が確認された。
ウイルスが増殖するためには、生きた細胞が必要不可欠であるが、比較試験1で強い抗ウイルス作用を示した0.6mg/mlでは細胞の死滅が確認されていることから、細胞の死滅によってウイルス増殖が阻害された可能性もある。しかし、図11より0.3mg/mlでは細胞毒性が弱くなっていることから、0.3mg/ml〜0.6mg/mlの間に細胞毒性が軽度かつ抗ウイルス活性を発揮する濃度が存在している可能性があると考えられる。当該濃度は、試験1でタケノコの抽出物で抗ウイルス活性が観測された濃度よりも高く、タケノコの抽出物の方がタケの抽出物より低い濃度で抗ウイルス活性を示しつつ、細胞毒性も低いことが示唆された。
実施例1の抗ウイルス剤を用いて、インフルエンザウイルス増殖を阻害する作用を確認する試験を行った。宿主細胞としてMDCK(Madin−Darby canine kidney)細胞を使用し、またウイルスとしてインフルエンザウイルスA型/PR/8/34(H1N1)株を使用し、また培地として10%FBS含有のDMEM培地を使用した。
そして、培養したMDCK細胞にインフルエンザウイルスを0.001moi(感染多重度)で感染させて37℃で1時間放置した(吸着させた)。
その後、液体培地に対して、実施例1のタケノコの抽出物を所定濃度含むように添加し、CO2インキュベータにて24時間培養した。
その後、感染細胞から放出されたウイルスを含む上清を回収し、フォーカス法を用いて細胞のウイルス力価(FFU/ml)を測定し、ウイルス増殖阻害率(%)を算出した。
上記試験結果を解析して、タケノコの抽出物による各濃度(0mg/ml、0.004mg/ml、0.008mg/ml、0.016mg/ml、0.0325mg/ml、0.065mg/ml)のウイルス増殖阻害試験の結果を図12に示す。
各濃度のウイルス増殖阻害率は、順に0%、23%、70%、71%、91%、98%であって、IC50は、0.0061mg/mlであった。
ウイルス増殖阻害率は、タケノコの抽出物の濃度が高くなるにつれてさらに増加した。
なお、これら試験は複数回行い、同様の再現性が得られた。また、MDCK細胞を用いたMTTアッセイの結果、吸光度の減少はみられず、タケノコの抽出物に細胞毒性はないことが示唆された。
試験5の結果から、タケノコの抽出物を添加したものは、全ての濃度においてインフルエンザウイルス増殖を阻害する作用が確認された。また、濃度依存的にウイルス増殖を阻害する作用が高くなった。
Claims (12)
- タケノコ由来物質を有効成分として含有し、
ウイルス感染症の予防又は治療に用いられることを特徴とする抗ウイルス剤。 - 前記ウイルスは、RNAウイルスであることを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス剤。
- 前記RNAウイルスは、インフルエンザウイルス、ロタウイルス及びノロウイルスからなる群より選ばれるいずれかのウイルスであることを特徴とする請求項2に記載の抗ウイルス剤。
- 前記ロタウイルスは、ロタウイルスKRH−2株であることを特徴とする請求項3に記載の抗ウイルス剤。
- 前記タケノコ由来物質が、タケノコの可食部の抽出物であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
- 前記タケノコの可食部の抽出物が、タケノコの可食部の熱水抽出物であることを特徴とする請求項5に記載の抗ウイルス剤。
- 前記タケノコ由来物質であって、前記RNAウイルスの細胞への吸着を阻害するためのウイルス吸着阻害剤として用いられることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
- 前記タケノコ由来物質であって、前記RNAウイルスの細胞内での複製を阻害するためのウイルス複製阻害剤として用いられることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
- 前記タケノコ由来物質であって、前記RNAウイルスの細胞からの放出を阻害するためのウイルス放出阻害剤として用いられることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
- 前記タケノコ由来物質であって、前記RNAウイルスの細胞内での増殖を阻害するためのウイルス増殖阻害剤として用いられることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
- タケノコ由来物質を有効成分として含有し、
ウイルスを病原体とする感染性胃腸炎の予防又は治療に用いられることを特徴とする抗ウイルス剤。 - タケノコ由来物質を有効成分として含有し、
ウイルス感染症の予防又は改善に用いられることを特徴とする抗ウイルス用食品組成物。
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