JP2017197389A - 半導体磁器組成物の製造方法、半導体磁器組成物、並びにptc素子 - Google Patents

半導体磁器組成物の製造方法、半導体磁器組成物、並びにptc素子 Download PDF

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Abstract

【課題】Baの一部を例えばBi-Naで置換した組成を有する半導体磁器組成物において抵抗温度係数αを向上することが可能な製造方法の提供。【解決手段】BaTiO3系酸化物におけるBaの一部をBiおよびA(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを必須で含む)で置換した組成を有する半導体磁器組成物の製造方法であって、1350℃超の温度で焼成した後、150℃/h以下の降温速度で降温を始め、その後、1150〜1350℃の範囲の間で150℃/h超の降温速度に変える降温過程を有する半導体磁器組成物の製造方法。【選択図】図1

Description

この発明は、PTCヒータ、PTCサーミスタ、PTCスイッチ、温度検知器などに用いられる、半導体磁器組成物の製造方法、半導体磁器組成物、その半導体磁器組成物に電極を形成したPTC素子に関する。
従来より、PTC(Positive Temperature Coefficient of resistivity)特性を示す材料として、BaTiO3系酸化物に様々な半導体化元素を加えた半導体磁器組成物が提案されている。この半導体磁器組成物に電極を設けたものは、PTC素子として使用することができる。
BaTiO3系酸化物の半導体磁器組成物は、そのキュリー温度が120℃前後であるものが殆どである。これらの半導体磁器組成物は、用途に応じてキュリー温度をシフトさせることが必要になる。例えば、BaTiO3系酸化物にSrTiO3系酸化物を添加することによってキュリー温度をシフトさせることが提案されているが、この場合、キュリー温度は負の方向にのみシフトし、正の方向にはシフトしない。現在実用化されている材料で、キュリー温度を正の方向にシフトさせる添加物として知られているのはPbTiO3である。しかし、鉛は環境汚染を引き起こす元素であるため、鉛を含まない非鉛の半導体磁器組成物が要望されている。
非鉛でキュリー温度が高い半導体磁器組成物として、BaTiO3系酸化物におけるBaの一部をBi-Naで置換したものが知られている。
例えば特許文献1は、組成式が[(BiA)x(Ba1-yRy)1-x][Ti1-zMz]O3(AはNa,Li,Kのうち少なくとも一種、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種)で表わされ、x、y、zが、0<x≦0.2、0≦y≦0.02、0≦z≦0.01(但し、y+z>0)を満足する結晶粒を有する半導体磁器組成物が記載されている。
また特許文献1は、その製造方法として、(BiA)TiO3系の第1の原料と(BaR)[TiM]O3(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種であり、R,Mは少なくともどちらか一方が必須である)系の第2の原料をそれぞれ用意し、前記第1の原料を700℃以上950℃以下で仮焼、前記第2の原料を900℃以上1300℃以下で仮焼し、仮焼したそれぞれの材料を混合して第3の原料とし、前記第3の原料を900℃以上1250℃以下で熱処理し、その後焼成することが記載されている。但し、降温過程については詳述がない。
また特許文献2では、所定の焼成温度でチタン酸バリウム系半導体磁器の焼成を行う際、その降温時に焼成温度よりも低く、かつ、800℃以上とされた設定温度で保持することが記載され、これにより、比抵抗を制御し、耐電圧特性や抵抗温度特性の向上を確実に図ることができると記載されている。
国際公開第2013/157649号公報 特開平3−164467号公報
特許文献1に記載のBaTiO3系酸化物におけるBaの一部を例えばBi-Naで置換した半導体磁器組成物は、キュリー温度を正の方向にシフトするのには有効である。
抵抗温度係数αが十分に高いものが得られない場合、特許文献2の製造方法は抵抗温度係数αを改善するには有効ではあるが、上記のBi-Naで置換した半導体磁器組成物の製造方法として用いる場合は抵抗温度係数αを改善できないことが分かった。
BaTiO3系酸化物におけるBaの一部をBi-Naで置換した半導体磁器組成物で抵抗温度係数αを向上させるためには、この組成特有の半導体磁器組成物の製造方法を見つけ出す必要がある。
そこで本発明は、Baの一部を例えばBi-Naで置換した組成を有する半導体磁器組成物において抵抗温度係数αを向上することが可能な製造方法を提供することを目的とする。また、その製造方法により得られる半導体磁器組成物、及び、その半導体磁器組成物に電極を形成したPTC素子を提供することを目的とする。
本発明は、BaTiO3系酸化物におけるBaの一部をBiおよびA(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを必須で含む)で置換した組成を有する半導体磁器組成物の製造方法であって、1350℃超の温度で焼成した後、150℃/h以下の降温速度で降温を始め、その後、1150℃以上1350℃以下の範囲の間で150℃/h超の降温速度に変える降温過程を有することを特徴とする。
前記焼成は、酸素濃度1%未満の雰囲気中で行うことが好ましい。
これらの製造方法により得られる半導体磁器組成物は、結晶粒の粒界におけるNa量が3mol%以上であることを特徴とする。
前記半導体磁器組成物は、その結晶粒の組成式が[(BiA)x(Ba1-yRy)1-x][Ti1-zMz]O3(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを必須で含み、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種)で表わされ、x、y、zが、0<x≦0.2、0≦y≦0.02、0≦z≦0.01を満足するものを採用できる。
これらの半導体磁器組成物に電極を形成することでPTC素子が得られる。
本発明の半導体磁器組成物の製造方法は高い抵抗温度係数αを有する半導体磁器組成物を得ることができる。そして、この半導体磁器組成物に電極を形成すれば、抵抗温度係数αに優れたPTC素子が得られる。
本発明の製造方法である焼成の温度パターンを説明するための図である。 本発明で用いた焼成工程までの製造方法の一例を示す図である。 結晶粒界の位置を説明するためのSEM画像である。 抵抗温度係数αを説明するための図である。
本発明は、BaTiO3系酸化物におけるBaの一部をBiおよびA(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを必須で含む)で置換した組成を有する非鉛の半導体磁器組成物の製造方法において、焼成の際に図1に示すような降温過程で降温速度を変える温度パターン、即ち、1350℃超の温度で焼成した後、150℃/h以下の降温速度で降温を始め、その後、1150℃以上1350℃以下の範囲の間で150℃/h超の降温速度に変える降温過程を適用する。これにより、抵抗温度係数αを大きくすることができることを知見した。
この要因は、降温過程でNaが粒界に析出することによる。Naが粒界に析出することで抵抗温度係数αが大きくなる理由は、推定であるが、Naが粒界に析出することで粒界準位が大きくなり、粒界でのショットキー障壁が増大したためと考えられる。
より具体的には以下のように考えられる。
焼成の際、特定の温度以上ではBaの一部をBiおよびAで置換した場合、特定の温度以上では、Biがより多く揮発し、それに伴い価数調整で余剰となった結晶粒中のNaが粒界側に移動する。一方で、粒界に存在するNaは粒界から結晶粒の3重点に存在する異相側に移動するという現象が起こる。Biが揮発している間は粒内から粒界へのNaの供給が起こって粒界のNa量は増加するが、その後Biが揮発しなくなると、Naは粒界から異相側への移動が優勢となって粒界のNa量は減少する。
ここで、Na量が増加する温度域は高温側にあり、Na量が減少する温度域は低温側にある。両者の温度域の境界は降温過程における1150℃以上1350℃以下の間にあることが分かった。
よって、高温側の温度域は150℃/h以下の速度で降温することで時間をかけてNaを粒界に集めて増加させ、その後、低温側の温度域に移行したとき150℃/h超の速度で降温することでNaが粒界から異相へ移動する時間を短縮し、Naの移動を抑制することができる。
その結果、従来の製造方法で作製したものよりも粒界に存在するNa量が多い半導体磁器組成物を得ることができたものと推定される。
ここで焼成は1350℃超の温度で行う。焼成の温度が1350℃以下であると、抵抗温度係数αが小さく、PTC素子としての特性が不十分になるという問題がある。1400℃以上とすることが好ましい。但し焼成温度が1500℃を超えると、半導体磁器組成物が焼成中に軟化して所望の形状にならなくなったり抵抗温度係数αが小さくなりやすいため、焼成温度は1500℃以下とすることが好ましい。
1350℃超の保持温度からの降温は150℃/h以下の降温速度で行う。ここでの降温速度が150℃/h超であると、抵抗温度係数αが大きくならずに4.5%/℃未満になる。ここでの降温速度は120℃/h以下とすることが好ましい。
その後、1150℃以上1350℃以下の範囲で降温速度を変える。降温速度を変えるタイミングが、1150℃未満もしくは1350℃超では抗温度係数αを増加させる効果は得られない。具体的には、抵抗温度係数αが4.5%/℃以上にできない。降温速度を変えるタイミングは、温度が1180℃以上1320℃以下の範囲に設定することがさらに好ましい。
また降温速度を変えてからの降温速度は150℃/h超とする。150℃/h以下では抵抗温度係数αを増加させる効果は得られず、抵抗温度係数αが4.5%/℃以上にならない。ここでの降温速度は180℃/h以上とすることがより好ましい。また、降温速度を150℃/h超とする温度域は、少なくとも800℃迄冷却される範囲とすることが好ましい。
焼成の際の雰囲気は、特に規定しないが、例えば大気中または還元雰囲気中、あるいは低酸素濃度の不活性ガス雰囲気とすることができる。特に酸素濃度1%未満の雰囲気中で行うことが好ましい。酸素濃度が1%未満であれば、室温比抵抗を低減する効果も得ることができる。
焼成温度での保持時間は1時間以上10時間以下とすることが好ましい。保持時間が1時間未満では焼結が不十分となる場合がある。一方、保持時間が10時間を超えると、粒界に析出しているNaが粒界から拡散し、結晶同士の間に正方晶ではない別の相を形成し、その結果として抵抗温度係数αが小さくなってしまう可能性がある。保持時間はより好ましくは2時間以上6時間以下である。
本発明において、焼成前の製造工程は既知の製造方法を適用できる。
以下に、焼成前の製造工程の一例を示して本発明を説明するが、本発明はこの製造方法に捕らわれるものではない。
本発明の半導体磁器組成物を得るための製造方法は、例えば、図2に示すような以下の(Step1)〜(Step5)の工程を持つ製造方法を採用できる。
(Step1) (BiA)TiO3系(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを含む)の第1の原料と、(BaR)[TiM]O3(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種であり、R,Mは少なくともどちらか一方が必須である)系の第2の原料をそれぞれ用意し、
(Step2) 前記第1の原料を700℃以上950℃以下で仮焼、前記第2の原料を900℃以上1300℃以下で仮焼し、
(Step3) 仮焼したそれぞれの材料を混合して第3の原料とし、
(Step4) 成形し、
(Step5) 1350℃を超える温度で焼成する。
以下にこの製造方法について説明する。
(Step1)について詳述する。(BiA)TiO3系の第1の原料は、原料粉末となるA2CO3、Bi2O3、TiO2を混合して作製する。なお、(BiA)TiO3系の第1の原料とは、(BiA)TiO3酸化物を形成するための原料を指す。
また、(BaR)[TiM]O3系の第2の原料は、BaCO3、TiO2、R,Mの原料粉末、例えば、La2O3等のR元素酸化物や、Nb2O5等のM元素酸化物を混合して作製する。R,Mは半導体化元素として用いるものである。なお、(BaR)[TiM]O3系の第2の原料とは、(BaR)[TiM]O3酸化物を形成するための原料を指す。
(Step1)の工程においては、第1の原料及び第2の原料ともに、原料粉末の混合の際に、原料粉末の粒度に応じて粉砕を施してもよい。また、原料粉末の混合は純水やエタノールを用いた湿式混合または乾式混合のいずれでもよいが、乾式混合を行うと、組成ずれをより防止しやすい。なお、第1の原料として、A2CO3、Bi2O3、TiO2などの他に、別のA化合物、Bi化合物、Ti化合物を用いてもよい。また、第2の原料も同様に、BaCO3、TiO2などの他に、別のBa化合物、Ti化合物を用いてもよい。
(Step2)の(BiA)TiO3系の第1の原料の仮焼について詳述する。
第1の原料の仮焼温度は700℃以上950℃以下とする。仮焼温度が700℃未満では未反応のA2CO3やBi、Tiと未反応のA2Oが、炉内雰囲気の水分あるいは湿式混合の場合はその溶媒と反応して発熱し、組成が所望の値からずれてPTC特性が不安定になりやすい。一方、仮焼温度が950℃を超えると、Biの揮散が進み、組成ずれを起こし、異相の生成が促進されてしまう。その他にも仮焼に用いる匣鉢との反応が増大して劣化を速めてしまうという問題があるため望ましくない。
仮焼時間は0.5時間以上10時間以下が好ましい。仮焼時間が0.5時間未満では、仮焼温度が700℃未満のときと同様の理由で、得られるPTC特性が不安定になりやすい。仮焼時間が10時間を超えると、仮焼温度が950℃を超えるときと同様の理由で、異相の生成が促進されやすくなる。1時間以上8時間とすることがより好ましい。
第1の原料の仮焼は大気中で行うことが好ましい。
また、Biの揮発を抑制するため、第1の原料の仮焼温度は、第1の原料の仮焼温度よりも低い温度とすることが好ましい。
(Step2)の(BaR)[TiM]O3系の第2の原料の仮焼について詳述する。
第2の原料の組成は、前述と同様に、R、Mが共に添加されない組成(y=z=0)でもよいが、得られる半導体磁器組成物の室温比抵抗が大きくなるため、少なくともR,Mのどちらかは必須とすることが好ましい。
第2の原料の仮焼温度は900℃以上1300℃以下とする。仮焼温度が900℃未満であると (BaR)[TiM]O3が完全に形成されず、BaCO3から分解した一部のBaOが水と反応したり、残存したBaCO3の一部が水に溶解したりするため、組成ずれの原因となって特性がばらつく可能性がある。
一方、仮焼温度が1300℃を超えると、仮焼粉の一部が互いに焼結し、後に混合する(BiA)TiO3仮焼粉との固溶の妨げになるため好ましくない。その他にも、仮焼に用いる匣鉢に固着してしまうため仮焼粉の取扱が難しくなることや、匣鉢の劣化を速めるという問題があるため望ましくない。
仮焼時間は0.5時間以上が好ましい。仮焼時間が0.5時間未満では組成ずれの原因となる。上限は特に限定されないが、100時間以下とすることが、後に混合する(BiA)TiO3仮焼粉との固溶を促進できるため好ましい。
第2の原料の仮焼は大気中で行うことが好ましい。
(Step1)と(Step2)の工程により、Biの揮発が抑制されるとともに、Bi-Aの組成ずれを防止してA元素を含有する異相の生成を抑制し、室温比抵抗を低下させるとともに、キュリー温度のバラツキを抑制することができる。
(Step3)について詳述する。
第1と第2の各仮焼粉を所定量で配合した後、混合して第3の原料とする。
混合は、純水やエタノールを用いた湿式混合または乾式混合のいずれでもよい。また、仮焼粉の粒度に応じて、混合の後に粉砕するか、あるいは混合と粉砕を同時に行ってもよい。混合、粉砕後の仮焼粉の平均粒度は、0.5μm〜7.0μmが好ましい。さらには、0.8μm〜5.0μmが好ましく、1.0μm〜4.0μmがより好ましい。
第3の原料は、組成式が[(BiA)x(Ba1-yRy)1-x][Ti1-zMz]O3(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを含み、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種)で表わされ、x、y、zが、0<x≦0.2、0≦y≦0.02、0≦z≦0.01を満足するものとすることが好ましい。この組成を得るには、第1と第2の原料を調整しておくことが好ましい。以下、好ましい組成式の規定理由を述べる。
xの範囲を0を超え0.2以下とすることでキュリー温度を130℃〜200℃にすることができる。xが0.2を超えてしまうと異相ができ易くなるため好ましくない。xの範囲は0.03以上0.1以下がさらに好ましい。
R、Mが共に添加されない組成(y=z=0)でもよい。但し、低電圧用途として用いられるヒーター素子に用いる場合には、y=z=0だと室温比抵抗が200Ωcmを超えて効率が下がるため、y+z>0とすることが好ましい。但しこの場合でもRとMの両方を必須とする必要はなく、少なくともどちらか一方を用いればよい。
Rのyの値は、0<y≦0.02が好ましい範囲である。yが0では組成物が十分に半導体化し難い。また、0.02を超えると室温比抵抗が大きくなりやすい。yの値を変化させることで原子価制御ができる。但し、BaTiO3系酸化物におけるBaの一部をBiおよびAで置換した系において組成物の原子価制御を行う場合、3価の陽イオンを半導体化元素として添加すると半導体化の効果が1価のAイオンの存在のために低下し、室温比抵抗が高くなるという問題がある。そのため、より好ましい範囲は0.002≦y≦0.02である。RはYを含む希土類(Sc,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Tb,Tm,Yb,Lu)から選ばれる少なくとも一種以上の元素であり、特にLa,Yが優れたPTC特性を得られるため好ましい。
M量を示すzは、0<z≦0.01が好ましい範囲である。zが0では原子価制御ができずに組成物が十分に半導体化し難い。また、z=0.01を超えると室温比抵抗が高くなったりキュリー温度が低下しやすい。より好ましい範囲は0.001≦z≦0.005である。Mは特にNbが優れたPTC特性を得られるため好ましい。
BiとAの比は1:1が良い。但し材料の配合時はこの比が1:1であっても、仮焼や焼成の工程によりBiが揮散してBiとAの比にずれが生じることで焼結体では1:1になっていない場合も本発明に含まれる。Bi:A=0.78〜1.55:1の範囲で許容でき、この範囲内であれば異相の増大を抑制できるので、室温比抵抗の増大や経時変化を抑制できる。さらに好ましい範囲はBi:A=0.90〜1.2:1である。
なお、これら以外に焼結助剤としてSi原料、Ca原料を用いることができる。これらの焼結助剤を用いた場合は、上記組成式にSi,Caが含まれることもある。
なお、焼結助剤は後述の工程で添加することもできる。
(Step4)について詳述する。
混合物を成形する。成形前に必要に応じて混合物を造粒装置によって造粒してもよい。成形後の成形体密度は2.5〜4.2g/cm3が好ましい。
また、成形する前に、前記第3の原料を900℃以上1250℃以下で熱処理しておくことが好ましい。この熱処理で第1の仮焼粉と第2の仮焼粉の組成を均一化させることができる。均一化された状態は結晶粒が育成される直前の状態に近く、その後の焼結でこの組成が大きく変わらないまま結晶粒を育成させることができるので、結晶粒の内と外の組織形態を意図的に変えやすくなる。例えば、この熱処理の後にYを添加し、その後、成形および焼成をすることで、Yが結晶粒の外に偏析したことで経時変化が小さくなった半導体磁器組成物を得ることができる。
熱処理の温度は、この工程により両者の組成のX線回折の回折線ピークが同じ位置、つまり固溶状態になる温度とすることが好ましい。900℃未満ではBiが十分に拡散されない。1250℃を超えると(BiA)TiO3系の融点が1250℃付近であるためにBiが炉内雰囲気へ蒸発してしまったり、一部が焼結し熱処理用の匣鉢に固着して取扱が難しくなったり、匣鉢の劣化を速めてしまう問題がある。Biの蒸発を防ぐためには低い温度で熱処理することが望ましいが、低すぎると熱処理を長時間行う必要がある。さらに好ましい熱処理温度は1000℃以上1200℃以下である。
熱処理時間は0.5時間以上20時間以下が好ましい。0.5時間より短い場合は(BaR)[TiM]O3系の仮焼粉と(BiA)TiO3系の仮焼粉の固溶が安定せず得られるPTC特性が安定しなくなる。これに対して20時間を超えるとBiの揮散が多くなり組成ずれを起こしやすくなる。好ましい熱処理時間は1時間以上12時間以下、さらに好ましくは1.5時間以上6時間以下である。この第3の原料の熱処理は、大気中で行うことが好ましい。
(Step5)の焼成については先に説明したとおりであり、説明を省略する。
本発明の製造方法により得られる半導体磁器組成物は、結晶粒の粒界におけるNa量が3mol%以上とすることができる。このNa量が3mol%以上とすることで、抵抗温度係数αが4.5%/℃以上の半導体磁器組成物になる。
本発明において、結晶粒界とは、図3に示すように、異なる二つの正方晶の結晶粒(BaTiO3系酸化物)1a,1bの境界面を指す。粒界Na量はその境界面の断面中央部を走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)により10万倍の視野で測定したものである。測定方法の詳細は後述する。
この半導体磁器組成物は、BaTiO3系酸化物におけるBaの一部をBiおよびNaで置換した組成を有する結晶粒を有する。
その中でも、組成式が[(BiA)x(Ba1-yRy)1-x][Ti1-zMz]O3(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを必須で含み、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種)で表わされ、x、y、zが、0<x≦0.2、0≦y≦0.02、0≦z≦0.01を満足する結晶粒を有するものが好ましい。
各数値の限定理由は、先の第3の原料で説明した組成式の理由と同じで有り、説明を省略する。
本発明の半導体磁器組成物は、板状に加工し、その板の両面に電極を設けることでPTC素子とすることができる。電極の形成方法は既知の手段を採用できるが、電極ペーストを塗布した後に焼付ける手段が低コストである。
本発明において、結晶粒界におけるNa量の測定、抵抗温度係数α、室温比抵抗R25の評価方法は以下のように行った。
(結晶粒界におけるNa量)
まず、JEOL社製の原子分解能分析電子顕微鏡(型番JEM-ARM200F)を用いて、2つの結晶粒の断面(粒界)が隣接した視野を定める。これらの結晶粒がBaTiO3系の正方晶であることを確認する。その後、この二つの結晶の境界面をSTEM-EDXで元素分析する。倍率は10万倍とする。加速電圧は200kV、ビーム径は0.2 nmとする。任意に境界面の5箇所を測定し、その平均値を結晶粒界におけるNa量とする。
(抵抗温度係数α)
抵抗温度係数αは、半導体磁器組成物を260℃まで昇温しながら抵抗−温度特性を測定して算出した。
尚、抵抗温度係数αは次式で定義される。
α=(lnRL-lnRC)×100/(TL-TC)
なお図4(横軸:温度、縦軸(対数表記):比抵抗)に示すように、RLは260℃の比抵抗、TLは260℃、TCはキュリー温度、RCはTCにおける比抵抗である。ここでキュリー温度TCは比抵抗が室温比抵抗R25の2倍となる温度とした。
(室温比抵抗R25
半導体磁器組成物の室温比抵抗R25(Ωcm)は、25℃、4端子法で測定した。
(実施例)
焼成工程における降温過程での降温条件を変え、それに伴う抵抗温度係数αの関係を調べた。
図2に示すように、原料として、(BiA)TiO3系の第1の原料と(BaR)[TiM]O3系の第2の原料をそれぞれ用意した(Step1)。本実施例では、(BiA)TiO3系の第1の原料として、Na2CO3、Bi2O3、TiO2の原料粉末を準備し、BiとNaのモル比率Bi/Naが1.05の(Bi0.525Na0.500)TiO3となるように配合し、乾式混合した。また、(BaR)[TiM]O3系の第2の原料としてBaCO3、TiO2、La2O3の原料粉末を準備し、(Ba0.994La0.006)TiO3となるように配合し、純水で混合した。
前記第1の原料を700℃以上950℃以下で仮焼し、前記第2の原料を900℃以上1300℃以下で仮焼した(Step2)。本実施例では、得られた第1の原料を800℃で2時間大気中で仮焼し、(BiA)TiO3系の仮焼粉を用意した。また、第2の原料を1200℃で4時間大気中で仮焼し、(BaR)[TiM]O3系の仮焼粉を用意した。
その後、仮焼したそれぞれの材料を混合した(Step3)。本実施例では、(BiA)TiO3系の仮焼粉と(BaR)[TiM]O3系の仮焼粉を、0.085:0.915の比で混合し、[(BiNa)0.085(Ba0.994La0.006)0.915]TiO3となるように混合した。この材料を、純水を媒体としてポットミルにより、平均粒径が2.0μm〜3.0μmになるまで混合、粉砕し、その後、乾燥させた。
この原料を900℃以上1250℃以下で熱処理した。具体的には、この原料を1150℃で、4時間大気中で熱処理を行った。この温度で処理した第3の原料は、X線回折で測定すると(BaR)[TiM]O3系の仮焼粉と(BiA)TiO3系の仮焼粉のそれぞれの回折線がひとつになっていた。
その後、本実施例では、Ba6Ti17O40とY2O3とCaCO3を添加した。なお、Ba6Ti17O40は焼成条件を安定化させる効果を持つ。Y2O3は経時変化を抑制する効果を持つ。CaCO3は焼結助剤の効果を持つ。Ba6Ti17O40とY2O3とCaCO3の添加量は、第3の原料を100mol%として、Ba6Ti17O40は0.6mol%、Y2O3は1mol%、CaCO3は2mol%とした。
その後、成形した(Step4)。本実施例では、PVAを添加、混合し、造粒した。得られた造粒粉を一軸プレス装置で成形し、700℃で脱バインダーした。
その後、焼結した(Step5)。本実施例では、窒素中、酸素濃度0.007vol%(70ppm)の雰囲気にて1440℃、4時間保持した後、表1に示した各降温条件にて降温して焼結体を得た。
得られた焼結体を10mm×10mm×1.0mmの板状に加工して試験片を作製し、卑金属性のオーミック電極を塗布し、さらにAgを主成分とするカバー電極を塗布して180℃で乾燥後600℃、10分保持で焼き付けて電極を形成した。
焼成時の保持温度からの降温速度、降温速度を変更する温度、変更後の降温速度、抵抗温度係数α、室温比抵抗R25、粒界Na量の測定結果を表1に示す。なお比較例には*を付けて表記した。
Figure 2017197389
No.1は降温条件を従来から変更せずに100℃/hで一律に降温した比較用の半導体磁器組成物であるが、その抵抗温度係数αは4.42%/℃と低いものであった。No.2は降温速度を1100℃で変更した比較用の半導体磁器組成物であるが、抵抗温度係数αの増加はNo.1に対して僅かであり、それぞれ4.44%/℃と低いものであった。
対してNo.3,4は降温速度を1200℃と1300℃でそれぞれ変更し、その後の降温速度を300℃/hとした実施例の半導体磁器組成物であるが、抵抗温度係数αはNo.1に対して大幅に増加し、それぞれ5.31%/℃、5.15%/℃といずれも4.5%/℃以上となった。
No.5は降温速度を変更する温度を1200℃とし、それ以後の降温速度を200℃/hとした実施例の半導体磁器組成物である。No.3,4と同様に抵抗温度係数αは増大して4.93%/℃となり、4.5%/℃以上となる結果であった。
一方、No.6はNo.5に対して降温速度を50℃/hとして降温した比較用の半導体磁器組成物である。この場合は抵抗温度係数αは4.33%/℃と減少し、4.5%/℃以下となる結果であった。
なお、表1の各半導体磁器組成物の結晶粒の組成を調べたところ、組成式が[(BiA)x(Ba1-yRy)1-x][Ti1-zMz]O3(AはNa,Li,Kのうち少なくとも一種であってNaを含み、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種)で表わされ、x、y、zが、0<x≦0.2、0≦y≦0.02、0≦z≦0.01を満足するものであった。

Claims (5)

  1. BaTiO3系酸化物におけるBaの一部をBiおよびA(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを必須で含む)で置換した組成を有する半導体磁器組成物の製造方法であって、
    1350℃超の温度で焼成した後、150℃/h以下の降温速度で降温を始め、その後、1150℃以上1350℃以下の範囲の間で150℃/h超の降温速度に変える降温過程を有することを特徴とする半導体磁器組成物の製造方法。
  2. 前記焼成は、酸素濃度1%未満の雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体磁器組成物の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法により得られる半導体磁器組成物であって、
    結晶粒の粒界におけるNa量が3mol%以上であることを特徴とする半導体磁器組成物。
  4. 前記半導体磁器組成物は、その結晶粒の組成式が[(BiA)x(Ba1-yRy)1-x][Ti1-zMz]O3(Aはアルカリ金属の少なくとも一種の元素であってNaを必須で含み、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種)で表わされ、x、y、zが、0<x≦0.2、0≦y≦0.02、0≦z≦0.01を満足することを特徴とする請求項3に記載の半導体磁器組成物。
  5. 請求項3又は4に記載の半導体磁器組成物に電極を形成したことを特徴とするPTC素子。
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