JP2017197857A - 嵩高構造糸 - Google Patents

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Abstract

【課題】高次加工における取扱性が良好でありながらも、ソフトな風合いに加え、軽量・保温性等に優れた嵩高構造糸を提供する。【解決手段】ループを形成する鞘糸1と鞘糸1とを交錯することで実質的に鞘糸1を固定する芯糸2からなる嵩高構造糸において、鞘糸1が破断することなく連続的なループを形成し、かつ鞘糸1が密度1.00g/cm3未満の複合繊維である嵩高構造糸。鞘糸1及び芯糸2が夫々中空率10%以上の中空断面を有した海島複合繊維であって、3次元捲縮を有する嵩高構造糸。【選択図】図1

Description

本発明は、合成繊維からなる表層部に大ループが多数形成された嵩高構造糸に関するものである。本発明の嵩高構造糸は、表層に鞘糸が大ループ形状を有することで非常に嵩高いものであり、互いの嵩高構造糸が排除体積をもって存在することで、ソフトな風合いを奏でる。また、この大ループが適度な剛性を有しながらも、糸自身が非常に軽量な繊維であるため、軽量・保温性等が極めた優れた嵩高構造糸になる。更に、鞘糸が3次元的な捲縮を有することで、嵩高構造糸間での絡み合い等が抑制され、成形加工における取扱性が良好なものであり、衣料用途から産資用途まで幅広い分野での適用が可能となる。
ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性ポリマーからなる合成繊維は、力学特性や寸法安定性等の基本特性が高く、そのバランスに優れるという特徴がある。このため、これらを活用した繊維素材は、ポリマー特性から製糸による基本性能の発現に加え、高次加工により様々な構造形態とすることで、衣料用途のみならずインテリアや車両内装、産業用途等幅広く利用されている。合成繊維に関する新規技術の開発は、天然素材の模倣をモチベーションとして技術革新がなされてきたといっても過言ではなく、天然の複雑な構造形態に由来した機能を合成繊維により発現させるために様々な技術提案がなされている。例えば、シルクの断面を模倣することによる特異な風合い(キシミ、柔軟性)の発現からモルフォ蝶に代表される構造発色やハスの葉に見られる撥水性能など様々なものが存在するが、その一つに天然羽毛によるソフトな風合いと軽量・保温性といった機能発現に対する取り組みが存在する。
天然羽毛は、一般に水鳥の胸部から少量採取されるダウンボール(粒綿状)とフェザー(羽状)を混合して使用するものである。これらは、そのケラチン繊維からなる特異的な構造形態に由来し、ソフトな風合いに富み、体に沿いやすく優れた軽量・保温性を発現する。このため、天然羽毛を詰め綿として用いた製品は一般ユーザーまでもがその機能を認知しており、寝装具やジャケット等の衣料品など幅広く適用されている。しかしながら、自然保護の観点から水鳥の捕獲は制限があり、天然羽毛の総生産量には制約がある。更には、昨今の異常気象や疫病の発生によって、その供給量が大きく変動し、価格の高騰に加えて、不安定な供給量が問題視されつつある。また、天然羽毛の使用には、採毛、選別、消毒、脱脂等多くの工程を経るにも関わらず特有の臭い、動物アレルギーがしばしば問題になるなど、また動物愛護の観点から欧州等では天然羽毛の使用を排除する動きも出ている。このため、安定供給等が可能な合成繊維による中綿素材に注目が集まっている。
合成繊維からなる中綿素材は、古くから多数のものが提案されているが、嵩高性や圧縮回復、またソフトな風合いといった基本特性という点で天然羽毛に到達した事例はない。
例えば、特許文献1及び特許文献2ではシリコーン系油剤を通常の繊維に付着させて繊維の摩擦特性を改質する方法の開示がある。確かにシリコーン系油剤を活用することで、繊維にヌメリ感が生まれ、風合いが若干改善される可能性がある。しかしながら、そもそもその繊維構造体自体が嵩高性及び圧縮回復性に乏しいため、天然羽毛には及んでいない。
また、特許文献3及び特許文献4に示されるように繊維集合状態を球状あるいは放射状にすることで、その構造に由来する嵩高性が改善されたものとなる。しかしながら、圧縮した際に異物感を感じるものであり、天然羽毛のソフトな風合いという観点では及んでいない。
これらの短繊維を主体とした繊維構造体では、構造体の嵩高性と柔軟性(圧縮回復)は用いる力学特性や繊度(太さ)に起因する。このため、天然羽毛のように嵩高性と柔軟性とが相反する特性を両立するには更なる改善が必要となるものであった。
従来から繊維の高付加価値化等を目的として用いられる糸加工技術は、例えば、繊維に実撚りをかけた後に開撚し、あるいは1種類または2種類以上の繊維を流体加工ノズル等により混繊させることで、嵩高性を有した加工糸が製造可能であることが一般に知られている。このような嵩高性を有した加工糸は基本的には長繊維であるため、様々な形態に加工することができ、加工糸の嵩高性とソフトな風合いを活かし、中綿素材に適用することも考えられる。
特許文献5では、2種類の繊維を用いて、一方の繊維にだけ糸揺れ等を付与しながらウエストゲージに供給し、まとめて実撚りをかけることで、糸揺れ等を付与した繊維により表層にループを形成させる。この後更に2枚のディスク等で擦過させることによって開撚し、嵩高性の加工糸を得る技術が開示されている。確かに、この技術では、従来の手法にのっとり糸揺れ等の程度を調整することで鞘糸からなるループを有した嵩高構造糸を得る可能性がある。更に、バインダーを予め混繊しておき、加工後に融着させてループを固定することで中綿素材として適用できる可能性がある。但し、鞘糸が部分的に突出したループヤーンに実撚りをかけ、機械的揉み機にてゴムなどにより擦過させながら開撚する場合には、突出したループは部分的に破断されるか劣化したものとなる。該加工糸を中綿として活用する場合には最終的には数本から数十本を束ねるなどして充填することになるため、鞘糸が部分的に破断され、あるいは劣化した部分(毛羽)が他の加工糸の鞘糸と絡み合うことで成形加工における解舒不良や工程通過性を悪化させる場合がある。更には、一部に顕著に絡み合った鞘糸が充填した際の異物感を生んで風合いを損ねたり、あるいは絡み合いを助長することで経時的に嵩高性が低下する場合がある。特許文献5では、開撚工程以後に熱処理を加え、あるいは鞘糸の固定を強固にするために鞘糸同士をバインダーにより融着させることを特徴している。このため、絡み合った箇所が融着固定されることで異物感が顕著化するという課題もある。
特許文献6では、交絡ノズル内で走行糸条に対して垂直方向から圧空を噴射し、開繊、絡ませることにより、過剰に供給した鞘糸が糸長差をもって固定する技術である。特許文献6では、特許文献5と同様にループ形状を有した鞘糸が表層に存在する嵩高性を有した加工糸を得ることができる可能性がある。しかしながら、特許文献6のように、ノズル内での走行糸条を撹乱し、開繊して交絡処理する場合には、非常に短周期で糸が揺れて走行糸条の絡み合いを発生させることとなる。このため、自ずとノズル形状に影響を受けた小さいループが高頻度で過剰に形成されることになる。また、鞘糸がランダムに芯糸と交絡することでループの大きさは繊維軸方向で変動し、嵩高性には制約のあるものであった。また、ノズル内で形成されたループヤーンはノズル内部で滞留した後に、噴射エアーによりノズル外に排出されることとなる。このため、加工糸の繊維軸方向でループの大きさやループを形成する鞘糸の長さが変動してたるみを形成することとなる。この場合、特にたるみを持った鞘糸は他方の鞘糸と絡まり易く、やはり、高次加工における工程通過性や鞘糸が絡み合った箇所が異物感に繋がるなど課題が残るものであった。
このようなたるみ等を持った嵩高加工糸同士の絡み合いは、一般にはファスナー現象として認知されているものであり、高次加工における解舒不良や繊維製品の風合いの悪化や耐久性に影響を与えるものとされている。このため、流体加工糸を主体として、改善を試みる取り組みもある。
このため、大ループによる極めて高い嵩高性を有しながらも、加工糸間の絡み合いが抑制された嵩高構造糸が所望されている。
特公昭52−28426号公報(特許請求の範囲) 特公昭52−50308号公報(特許請求の範囲) 特公昭48−7955号公報(特許請求の範囲) 特公昭51−39134号公報(特許請求の範囲) 特開2011−246850号公報(特許請求の範囲) 特開2012−67430号公報(特許請求の範囲)
本発明は、合成繊維からなる嵩高構造糸において、表層に大ループ形状を有しながらも嵩高構造糸間での絡み合い等が抑制されたものであり、高次加工における取扱性が良好であり、ソフトな風合いに加え、軽量・保温性等に優れる嵩高構造糸を提供することにある。
上記課題は、以下の手段により達成される。
(1)ループを形成する鞘糸と該鞘糸とを交錯することで実質的に鞘糸を固定する芯糸からなる嵩高構造糸において、鞘糸が破断することなく連続的なループを形成し、かつ鞘糸が密度1.00g/cm未満の複合繊維であることを特徴とする嵩高構造糸。
(2)鞘糸が3次元的な捲縮を有することを特徴とする(1)に記載の嵩高構造糸。
(3)鞘糸が中空率10%以上の中空断面を有した海島複合繊維であることを特徴とする(1)または(2)に記載の嵩高構造糸。
(4)芯糸が中空率10%以上の中空断面を有した海島複合繊維であって、3次元捲縮を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の嵩高構造糸。
(5)海島複合繊維の島成分がポリオレフィン、海成分がポリエステルで構成されることを特徴とする(3)または(4)のいずれかに記載の嵩高構造糸。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の嵩高構造糸を少なくとも一部に含む繊維製品。
本発明の嵩高構造糸は、表層に大ループ形状を有しながらも嵩高構造糸間での絡み合い等が抑制されたものであり、高次加工における取扱性が良好でありながらも、ソフトな風合いに加え、軽量・保温性等に優れる。
本発明の嵩高構造糸の一例の概略側面図 糸表面測定方法を説明するための模擬図 3次元的な捲縮構造を説明するための模擬図 本発明の嵩高構造糸を構成する中空海島複合糸の断面の一例を模式的に示す図 本発明の嵩高構造糸の製造方法の一例を模式的に示す概略工程図 本発明の嵩高構造糸の製造方法に用いるサクションノズルを説明するための概略側面図 本発明の嵩高構造糸の製造方法に用いる中空断面用紡糸口金の吐出孔を説明するための概略断面図
以下、本発明について、望ましい実施形態とともに詳述する。
本発明の嵩高構造糸は、ループを形成する鞘糸と該鞘糸と交錯することで実質的に鞘糸を固定する芯糸から構成されている。また、本発明においては、鞘糸が破断することなく連続的なループを形成し、かつ密度1.00g/cm未満の複合繊維であることを特徴としている。
本発明の嵩高構造糸を構成する鞘糸および芯糸には合成繊維が用いられる。ここで言う合成繊維とは、高分子ポリマーからなる繊維のことを言う。この合成繊維は溶融紡糸や溶液紡糸などで製造した繊維を採用することができる。高分子ポリマーのうち、溶融成形が可能な熱可塑性ポリマーは生産性が高い溶融紡糸法を採用して、本発明に用いる繊維を製造することができるため本発明に用いるには好適である。
ここで言う熱可塑性ポリマーとは、例えば、ポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタンなどの溶融成形可能なポリマーが挙げられる。これ等の熱可塑性ポリマーのうち、ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは結晶性ポリマーであり、融点が高いため後工程、成形加工及び実使用の際に比較的高い温度で加熱された場合でも劣化やヘタリがなく好適である。この耐熱性という観点では、ポリマーの融点が165℃以上であると良好であり好ましい。
本発明に用いるポリマーには、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいても良い。
特にポリオレフィンを選択する場合には、本発明の目的である軽量性の向上という観点から好ましく、中でも低密度であるポリプロピレンを選択することがより好ましい。また、軽量性のみならず、圧縮等に対する耐ヘタリ性をもたせるために、嵩高構造糸を構成する合成繊維に十分な強度を持たせる観点から、使用するポリプロピレンの分子量は高い方が好ましく、その分子量の指標となるメルトフローレイト(MFR)が20g/10min以下であることが好ましい。ここでいうMFRとは、JIS K 7210:1999に記載の方法に従って測定された10分間あたりに押出された樹脂量のことであり、一般に樹脂の分子量が高いほど、MFRは小さくなる傾向にある。使用するポリプロピレンのMFRが係る範囲にあれば、嵩高構造糸として、使用中に受ける圧縮や屈曲に対してヘタリにくいものとなることに加え、加工時に受ける衝撃にも十分耐えることから、工程通過性にも問題のないものとなる。また、本発明の嵩高構造糸にポリプロピレンを使用する場合、衣料製品等への使用時に酸化発熱を引き起こす恐れがあり、こうした弊害を避けるために酸化防止の観点から、使用するポリプロピレンは酸化防止剤を含有していることが好ましい。
本発明の嵩高構造糸は、図1に例示される通り、ループを形成する鞘糸(図1の1)と該鞘糸と交錯することで実質的に鞘糸を固定する芯糸(図1の2)から構成されている。
ここで言う芯糸とは、糸表面(図2の3)から0.6mm以下に存在するフィラメントのことを意味する。この糸表面とは一対の糸道ガイド(図2の4)の間に定長で加工糸を糸かけした場合の糸道ガイド4を結んだ直線を意味する。該糸表面からの距離(図2の5)が0.6mm以下に存在するフィラメントが本発明で言う芯糸になり、大ループの基点となるものである。また、この糸表面からの距離が1.0mm以上にループ状に突出したフィラメントが本発明で言う鞘糸であり、本発明の嵩高構造糸の嵩高性をつかさどるものである。本発明は大ループを形成する鞘糸を実質的に固定する芯糸からなることを特徴としているが、ここで言う実質的に固定するとは、鞘糸が芯糸と交錯している点を基点とし、自立していることを意味する。芯糸と鞘糸の交錯点を起点として、嵩高構造糸の外層方向に鞘糸が立ってループを形成していることが自立している状態を表す。また、芯糸と交錯している点、すなわち、ループの起点付近は、実際にはフィラメントが入り混じった状態となっていることが多い。このため、糸表面から1.0mm以上にループの頂点を形成する鞘糸が糸表面から0.6mmに位置した直線と交差する点を交錯点としている。
該交錯点は、本発明の特徴である鞘糸からなるループの自立を支えるという役割があり、ある程度の周期で存在した方が好適である。この観点から嵩高構造糸における芯糸と鞘糸の交錯点が1から30個/mmで存在することが好ましい。係る範囲であれば、鞘糸が3次元捲縮を有するものであっても、適度な間隔を有してループが存在することとなるため、好ましいのである。この観点を推し進めると、該交錯点は5から15個/mmで存在することがより好ましい。
この芯糸と鞘糸の判定や、単位長さ辺りのループの個数を加工糸の繊維軸方向に連続的に評価するには、光電型の毛羽検知装置を活用することができる。例えば、光電型毛羽測定機(TORAY FRAY COUNTER)を用い、糸速度10m/分、走行糸張力0.1cN/dtexの条件で、糸表面から0.6mmならびに1.0mmを評価すると良い。
本発明の大ループを有する鞘糸は、芯糸により実質的に固定され、加工糸の断面において外層方向に突出した形態を有している。
ここで言う大ループの突出とは、糸表面からの距離(図2の5)に相当し、一対の糸ガイドに定長で糸掛けした加工糸を側面から2次元的に観察し、この観察した画像から測定するものである。無作為に選んだ10本の加工糸をループ全体が観察できるように撮影し、各画像において10箇所のループの突出を撮影する。この作業を計10画像について行い、合計100箇所をミリメートル単位で小数点第2位までを測定する。これ等の数値の平均値を算出し、小数点第2位以下を四捨五入した値を本発明におけるループの大きさとした。
本発明者等の検討によれば、大ループは糸表面から1.0mm以上100.0mm以下の範囲で突出していることが好ましく、係る範囲であれば、鞘糸同士が絡み合いにくくなり、本発明の目的とする嵩高性と絡み合い抑制の効果を問題なく発揮することができる。また、後述する嵩高構造糸の加工性を考慮すると、3.0mm以上70.0mm以下がより好ましい。また、スポーツ衣料など過酷な環境下で繰り返しの圧縮回復変形が加わることを考慮すると、5.0mm以上60.0mm以下とすることが特に好ましい。
また、本発明者等の検討においては、鞘糸からなる大ループが途中で破断し、あるいは部分的に劣化している場合には、前述した効果が低下する傾向にあることが分かった。このため、従来にはない嵩高性と絡み合いの抑制の相反する特性の両立を目的とする本発明では、鞘糸がループの途中で破断されることなく、連続したループを形成していることが重要である。
この破断の判定においては、加工糸から無作為に選出した10箇所において、それぞれ芯糸と鞘糸の交錯点から次の交錯点(ループ全体)を確認できる倍率で観察することで確認することができる。観察する10箇所において、各々10本の鞘糸について観察し、計100本の平均で破断している箇所が0.2以下であることが本発明の言う鞘糸が部分的に破断することなく、連続的なループを形成している状態にあることを意味する。係る範囲であれば、糸端が自由になった鞘糸が実質的に存在しないものであり、他の鞘糸と絡み合うことなく存在することができる。従来の実撚りを加えた後に開撚工程を加えたり、強力なエアー噴射によりノズル内で撹乱、開繊する場合には、高周波で金属からなるノズル内部に走行糸条が叩きつけられ、破断や劣化する場合がある。更に本発明のような大ループを形成しようとした場合には、ラバーディスク等の間で擦過し、開撚する必要があるため、鞘糸は破断し、あるいは大きく劣化したものとなる。このため、破断した鞘糸が他の鞘糸に巻きついたり、あるいは絡み合うことでファスナー効果を助長することになり、加工糸の構造形態や高次加工に制約をつける結果になったと考える。本発明においては、この点大きく改善されたものであり、ループを形成する鞘糸が織り成す効果を十分に発揮することができるのである。
本発明の嵩高構造糸は、鞘糸の密度が1.00g/cm未満の複合繊維であることが必要である。ここでいう鞘糸の密度とは、鞘糸の単位体積当たりの重量のことであり、JIS L 1013:2010に準じた方法により、密度勾配管を用いて測定されるものである。鞘糸の密度が係る範囲であれば、衣料や寝具等の詰め綿として使用した場合に、軽量性に富んだ製品となり、使用時の快適性が高いものとなる。嵩高構造糸の軽量性を高める観点から、鞘糸の密度は0.95g/cm以下であることが好ましく、0.90g/cm以下であることがより好ましい。なお、鞘糸を低密度化するために、例えば低密度ポリマーの使用や後述するように中空断面とする方法が挙げられるが、繊維形態が保持可能な範囲を考慮すると、本発明における鞘糸の密度は、実質的に0.70g/cmが下限となる。
また、ここでいう複合繊維とは2種以上の異なるポリマーから構成される合成繊維のことであり、用いる異種ポリマーの組合せによって、単独ポリマーからなる合成繊維では得ることのできない様々な特性を付与することが可能である。この複合繊維に使用するポリマーの組合せとしては、例えば、上記したポリマー群から適宜選択することが可能である。
本発明の嵩高構造糸において、鞘糸からなるループの形状は、芯糸から交錯点を始点に外層に突出したものであり、その形状は、一般的な交絡により形成されるアーチ型ループよりも、クルノーダル型ループ(涙滴形状)であることが好ましい。アーチ型ループの場合には、芯糸と鞘糸の交錯点が固定されておらずループが自由度を持って移動するという特徴を有するが、嵩高構造糸に圧縮変形を加えた場合には、交錯点が移動することとなる。このため、圧縮変形後には元の形状に戻りにくいため、嵩高性の耐久性という観点では不利になる場合がある。一方、クルノーダル型ループの場合には、芯糸との交錯点において、ループがほぼ固定されているため、圧縮変形後も鞘糸のループが元の形状に復帰しやすく、そもそも反発性を持った嵩高性を発揮するには、該形状が好適なのである。一般には、このクルノーダル型ループの形成は、本発明の目的である鞘糸同士の絡み合い抑制という観点では、不利な形状とされてきた。こうしたループ形状に伴う鞘糸同士の絡み合いを抑制する観点から、鞘糸は3次元捲縮を有することが好ましい。本発明者等は従来にはない嵩高構造糸に到達するため、クルノーダル型ループの採用に向けて鋭意検討した結果、本発明の鞘糸への3次元捲縮糸の採用が従来の課題であった鞘糸の絡み合いを抑制し、ループ形状との相乗効果により飛躍的な嵩高性の発現が可能であることを見出したのである。
本発明における3次元的な捲縮構造とは、図3に例示されるようなフィラメントの単糸がスパイラルな構造を有していることを意味する。この3次元的な捲縮の評価は、加工糸から無作為に選出した10箇所において、各々10本以上の単糸を採取し、それぞれの単糸をデジタルマイクロスコープ等で捲縮形態が確認できる倍率で観察することで評価できる。この画像において、観察される単糸がらせん状に旋回した形態を有している場合には、3次元的な捲縮構造を有していると判定し、ストレートな形態の場合には捲縮構造を有していないと判定する。
本発明をより効果的にするには、この3次元的な捲縮のサイズが、従来のサイドバイサイド複合繊維や中空繊維のような一般的な製法で採取された潜在捲縮糸が発現するミクロンオーダー(10−6m)よりも、ミリオーダー(10−3m)であることが好適である。本発明においては、この3次元的な捲縮のサイズによって、加工糸の円周方向及び断面方向の嵩高性や反発性を自在に制御することができ、当然この反発性を利用して、本発明の目的の一つである鞘糸同士の絡み合いを抑制することも可能となる。特に、捲縮のサイズをミリオーダーとすることにより、主に鞘糸の嵩高性と圧縮性の両立、加えて鞘糸の絡み合い抑制とのバランスという観点から優れるのである。
本発明の嵩高構造糸において、鞘糸として使用される複合繊維の断面形態は特に限定されるものではないが、中空率10%以上の中空断面を有した海島複合繊維であることが好ましい。ここでいう海島複合繊維とは、あるポリマーからなる島成分が、他方のポリマーからなる海成分の中に点在する断面構造を有する複合繊維のことである。鞘糸が中空断面を有することは、後述する製造方法の利点として、3次元的な捲縮のサイズを大サイズから小サイズまで比較的自由に制御できるという点に加えて、大ループの自立という観点から好適なのである。すなわち、本発明の嵩高構造糸では、鞘糸からなる大ループが自立することが嵩高性を担うことになる。鞘糸の自立は芯糸との交錯点を起点とし、鞘糸の剛性により自立を可能としているが、耐ヘタリ等を考えると、鞘糸自身の重量も軽量であることが好ましい。このため、具体的には鞘糸の密度(単位体積あたりの重量)がより低いことが好適であり、中空断面を有する繊維が好ましく用いられる。この鞘糸の軽量性という観点では、中空率20%以上の中空断面を有することがより好ましい。ここで言う中空率とは、中空断面を有する繊維を切削した後、その切削面を電子顕微鏡(SEM)にて繊維が10本以上観察できる倍率で2次元的に撮影する。撮影した画像から無作為に選定した10本の繊維を抽出し、画像処理ソフトを用いて繊維及び中空部分の面積を測定し、面積比率として求めるものである。以上の値は全て10ヶ所の各画像について測定を行い、10画像の平均値を本発明の中空断面繊維の中空率とした。また、簡易にこの中空率を評価するには、繊維側面を顕微鏡等で観察し、その画像から丸断面換算の繊維径を測定する。該繊維径より、中実繊維として換算した繊度(換算重量)に対する実測した繊度(実測重量)の比率を評価することで中空率を計算することも可能である。
本発明の目的である軽量・保温性という観点では、嵩高構造糸がより空気層を有していることが好適であり、鞘糸は中空率30%以上であることが特に好ましい。係る範囲であれば、加工糸を束で持った際により良好な軽量性を実感することができるし、より熱伝導率の低い空気層を有していることを意味するため、保温性にも優れるのである。
この中空断面を有した海島複合繊維の一例としては、図4に示すように繊維断面中央に中空部分(図4の7)を有し、その周囲の海成分中に島成分が点在(図4の8)したドーナツ型の海島複合繊維が挙げられる。
前述したように、繊維断面中央の中空部が空気を含むことにより、軽量性のみならず、中空部に含まれる空気層によって、断熱効果を発揮することにより保温性が得られることとなる。さらに中空部周囲の海島構造によって、嵩高構造糸に対する圧縮や屈曲といった衝撃に対して、海成分中に点在する島成分が衝撃を分散することにより、鞘糸の柔軟性を維持しつつ補強することとなり、中空でありながら、ヘタリにくく、反発性に富んだ嵩高構造糸を構成することにつながる。
鞘糸として使用する海島複合繊維の島成分および海成分に使用するポリマーの組合せとしては、特に限定されるものではなく、上記したポリマー群から適宜選択して用いることが可能であるが、嵩高構造糸の軽量化を推し進め、かつ繊維製品としての使用に十分耐えうる物性を持たせる観点から、中でも島成分がポリオレフィン、海成分がポリエステルであることが好ましい。ポリオレフィンは密度が低いことから、島成分に使用することで海島複合繊維が軽量性に富んだものとなる。また、海成分をポリエステルとすることで、海島複合繊維の強伸度といった物性を繊維製品に適したものとすることができ、海島複合繊維のマトリックスとなる海成分が結晶性を有することから加工や使用における劣化やヘタリに対して、耐性の高いものとなる。なお、該海島複合繊維を繊維製品として使用する際に十分な物性をもたせる観点から、島/海の複合比率は50/50〜10/90であることが好ましい。さらに島成分の低密度なポリオレフィン比率を増やして、海島複合繊維の軽量性を向上させる観点から、島/海の複合比率が50/50〜20/80であることがより好ましく、50/50〜30/70であることがさらに好ましい。
本発明の目的である軽量性をさらに高める観点から、嵩高構造糸の低密度化を推し進め、嵩高構造糸全体の密度を1.00g/cm未満にすることも可能である。これを達成するためには、芯糸も鞘糸と同様に低密度化を図る観点から、中空率10%以上の中空断面を有した繊維を芯糸とした海島複合繊維とすることが好ましい。
嵩高構造糸の低密度化によって、同一重量でより大きな体積を占めることにつながる。結果、嵩高構造糸間に多くの空気層を形成することができるため、より一層軽量性を高め、かつその空気層の断熱効果によって保温性をさらに高めることが可能となる。
前述した鞘糸と同様の観点から、芯糸に使用する中空断面を有した海島複合繊維の中空率は20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。
また、嵩高構造糸において、さらなる風合いの良質化および絡み合い抑制の観点から、芯糸に使用する中空断面を有した海島複合繊維は3次元捲縮を有することが好ましい。これは、鞘糸を実質的に固定する芯糸の交錯点において、糸が自由な状態にある際には、交錯点が芯糸の3次元捲縮に由来するフィラメント間空隙が存在した状態となっている。この様な嵩高構造糸がほぼ無張力の場合には、鞘糸のループが繊維軸方向にも限られたスペースで横滑りできるため、鞘糸の可動空間が拡がり、本発明の絡み合い抑制やソフトな風合いという効果がより顕著となるためである。一方、嵩高構造糸に張力が付与された場合には、鞘糸が伸長することにより、交錯点における拘束力が高まり、ループの解け、鞘糸の脱落を防ぐなど、実用面において有効な効果を発揮する。この芯糸の3次元的な捲縮に関しても、前述した鞘糸の3次元的な捲縮評価方法に準じて無作為に採取した芯糸の観察から確認することができる。
本発明では、嵩高構造糸を構成する鞘糸および芯糸の少なくとも一方が3次元捲縮を有する場合、3次元的な捲縮によってなされるスパイラル構造の曲率半径(r)が1.0から30.0mmの範囲にあることが好ましい。ここで言うスパイラル構造の曲率半径とは、前述した3次元的な捲縮の有無を判定するのと同じ方法で、デジタルマイクロスコープ等によって2次元的に観察される画像において、スパイラル構造を有した繊維が形成する湾曲(図3の6)に2箇所以上で最も多く内接する真円の半径に相当する。加工糸から無作為に選出した10箇所において、各々10本以上の単糸を採取し、それぞれの単糸をデジタルマイクロスコープ等で捲縮形態が確認できる倍率で観察することで計100本の単糸をミリメートル単位で小数点第2位までを測定する。これ等の測定値の単純平均を算出し、小数点第2位以下を四捨五入した値を本発明の3次元的な捲縮構造の曲率半径とした。
該3次元的な捲縮な構造によってなされるスパイラル構造の曲率半径は、2.0から20.0mmであることがより好ましく、係る範囲であれば鞘糸からなる大ループがバネのような捲縮を有していることを意味する。このため、嵩高加工糸の断面方向の圧縮に対して、適度な反発感を有しつつも、鞘糸が点で接触することになり、非常に心地のよい嵩高性を奏でることとなる。更に、後述する加工性が高い大ループとのバランスを考慮し、本発明の効果を良好に発揮する範囲としては、3.0から15.0mmであることが特に好ましい。係る範囲においては、長期的な耐久性についても問題なく、繰り返し圧縮回復が加わる衣料用途、特に過酷な環境下で使用されるスポーツ衣料に適用すると本発明の効果が有効に作用する。
この現象に有効となるのは、機械的な押し込み等で付与できる2次元的な屈曲ではなく、単糸自体が3次元的な立体形状を有し、スパイラルもしくはそれに類似した構造を有していることである。従来はこれらの捲縮形態においては、比較的絡みやすい構造として認識されており、鞘糸に取り入れられることはなかった。これは主に採用されていた繊維がミクロンオーダーの微細な捲縮を有した一般的な潜在捲縮繊維である。この場合、微細なスパイラル構造同士がお互いにかみ込むことで、ファスナー効果を助長する場合もあった。
一方、本発明者等は、本願の一つの目的である加工糸同士の絡み合い抑制を達成するため、原糸の形態に着目した検討を推し進めた。結果、特に大ループを有した嵩高構造糸にミリオーダーの3次元的な捲縮が形成された場合では、従来の認識とは全く逆の現象が起こることを発見したのである。これは、鞘糸が3次元的な捲縮を有していることで、糸束にした場合でも、嵩高構造糸同士が逆に排除体積を持って存在し、絡み合いが大きく抑制されたためであり、鞘糸からなる大ループという構造との相乗効果と考えることができる。すなわち、本発明の嵩高構造糸の鞘糸はそのループの大きさに依存した可動空間を有しており、本発明の定義に従えば、ループの固定点を中心として半径1.0mm以上の半球状の比較的大きな可動空間を有していることになる。この場合、繊維径に対して圧倒的に大きいサイズの3次元的な捲縮を有した単糸同士はお互いに点で接触し、反発しあうため、絡み合うことなく単独で存在することができる。また、3次元的な捲縮を有したフィラメントにおいては、前述した可動空間に加えて、更に単糸自体が繊維軸方向にばねの様に伸長できるため、単糸同士が交差した場合、振動を加えることにより簡単に解舒することができるのである。これは、本発明の嵩高構造糸のように、従来の数倍から数十倍の大ループを鞘糸が形成する構造形態ならではの現象であることは言うまでもない。更には、この鞘糸の3次元的な捲縮は本発明の基本特性である嵩高性という観点でも有効に作用する。すなわち、前述した鞘糸同士の点接触は、1本の加工糸内でも、互いに反発する効果を生み、初期の嵩高性はもとより、加工糸断面方向において放射状に開繊した状態を経時的に維持できるのである。本発明の放射状に開繊した鞘糸のばねのような挙動は、従来の単にストレートなフィラメントによるものでは達成が難しい。加えて、鞘糸同士が互いに反発することにより生まれるものであり、3次元的な捲縮を有した鞘糸同士がお互いを支えあうことによって鞘糸のヘタリを大幅に抑制できるのである。
本発明の鞘糸が大ループを形成し、かつ3次元的な捲縮構造を有するという形態的特徴は、摩擦係数の低下としてみることができる。これは前述した通り、その他との接触が、点で接触することの効果であり、本発明の特異構造を有した嵩高構造糸の奏でる効果の一つである。本発明者等の検討では、嵩高性を有しつつも、加工糸間の絡み合いが抑制されるには、繊維間静摩擦係数が0.3以下であることが好ましい。ここで言う繊維間静摩擦係数とは、レーダー式摩擦係数試験機により、JIS L 1015(2010年)に準じた方法で測定するものである。なお、ここでの繊維間静摩擦係数評価は、加工糸を円筒に平行に並べることで評価するものである。本発明の嵩高構造糸を繊維製品に加工した際、圧縮時に繊維が適度に滑って移動すると風合いが高まるため、繊維間静摩擦係数は低い方が好適であり、0.2以下であることがより好ましく、0.1以下であることが特に好ましい。
また、本発明の嵩高構造糸でより優れた触感を訴求するという観点では、鞘糸と芯糸の単糸繊度比(鞘/芯)は0.5から2.0の範囲が好ましい。係る範囲であれば、鞘糸と芯糸の繊度が近く、圧縮した際の異物感等を感じることなく使用することができる。また、効率的に嵩高加工可能な範囲としては、単糸繊度比(鞘/芯)が0.7から1.5を挙げることができ、本発明の効果をより顕著化するという点でより好ましいのである。また、本発明の嵩高構造糸においては、様々な繊維を組み合せることも可能であるが、前述した効率的な流体加工及び圧縮した際の異物感を全く感じないという点で、芯糸及び鞘糸が単糸繊度及び力学特性が同じ繊維であることが好適である。具体的には、本発明においては、同じ製糸条件で製造した繊維を2ドラム以上用意しておき、これを芯糸と鞘糸に用いることが好適である。
本発明の嵩高構造糸は、優れた嵩高性を有したものであり、これを構成する糸は適度な反発性を有していることが好適である。この反発性は繊維の断面2次モーメントとしてみることができ、本発明の目的効果を鑑みると、構成する合成繊維の単糸繊度は3.0dtex以上であることが好ましい。また、詰め物とした場合には、繰り返し圧縮回復等の変形を加えられることとなるため、構成するフィラメントは適度な剛性を有することがよく、単糸繊度が6.0dtex以上であることがより好ましい。ここで言う繊度とは、求めた繊維径、フィラメント数および密度から算出した値、もしくは、繊維の単位長さの重量を複数回測定した単純な平均値から、10000m当たりの重量を算出した値を意味する。
本発明の嵩高構造糸は、破断強度が0.5〜10.0cN/dtexであり、伸度が5〜700%であることが好ましい。ここで言う、強度とは、JIS L1013(1999年)に示される条件で加工糸の荷重−伸長曲線を求め、破断時の荷重値を初期の繊度で割った値であり、伸度とは、破断時の伸長を初期試長で割った値である。また、本発明の嵩高構造糸の破断強度は、高次加工工程の工程通過性や実使用に耐えうるものとするためには、0.5cN/dtex以上とすることが好ましく、実施可能な上限値は10.0cN/dtexである。また、伸度についても、後加工工程の工程通過性も考慮すれば、5%以上であることが好ましく、実施可能な上限値は700%である。破断強度および伸度は、目的とする用途に応じて、製造工程における条件を制御することにより、調整が可能である。本発明の嵩高構造糸をインナーやアウターなどの一般衣料用途や布団や枕などの寝装具に用いる場合には、破断強度が0.5〜4.0cN/dtexとすることが好ましい。また、比較的使用状況が過酷になる、スポーツ衣料用途などでは、破断強度が1.0〜6.0cN/dtexとすることが好ましい。
本発明の嵩高構造糸は、繊維巻き取りパッケージやトウ、カットファイバー、わた、ファイバーボール、コード、パイル、織編、不織布など多様な繊維構造体とし、様々な繊維製品とすることが可能である。ここで言う繊維製品は、一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途やフィルター、有害物質除去製品などの環境・産業資材用途に使用することができる。特に本発明の嵩高構造糸は、その嵩高性と絡み合いが抑制されるなどの効果から、中綿として活用することが好適である。この場合、側地に充填することから数本から数十本の糸束とする方法や不織布などのシート状物にするとよい。特にシート化した際には、側地への充填が簡易であり、充填量を用途に応じて調整しやすい。このため、薄地の軽量・保温素材になり、更には側地から抜ける出る心配もなく、不必要に縫製を施す必要がないため、繊維製品の形態に制約がなく、複雑なデザイン等も可能となる。
以下に本発明の嵩高構造糸の製造方法の一例を詳述する。
本発明に用いられる芯糸及び鞘糸は熱可塑性ポリマーを溶融紡糸方法によって繊維化した合成繊維を用いればよい。但し、本発明においては鞘糸に用いる合成繊維は複合繊維であって、その密度が1.00g/cm未満である必要があり、例えば該複合繊維に低密度ポリマーを組合せることや中空断面を含む構造とすることによって達成しうる。
芯糸および鞘糸に用いられる合成繊維の断面形状に関しては、特に限定される必要もなく、紡糸口金における吐出孔の形状を変更することで、一般的な丸断面、三角断面、Y型、八葉型、偏平型などや多様型や中空型など不定形なものにすることができる。但し、本発明の好ましい要件である鞘糸の3次元的な捲縮を発現するという観点では、上記のうち、中空断面や2種類のポリマーが貼り合わされたサイドバイサイド型の複合繊維を用いることも好適である。すなわち、製糸及び糸加工を施した後に熱処理を施すことにより、断面方向における構造差から3次元的な捲縮を発現することが好ましい様態となる。このため、後述する流体加工時においては、いわゆるストレートな繊維であるものの、鞘糸による大ループ形成工程を経た後に、熱処理を施すことによって3次元的な捲縮が発現するのである。嵩高加工時に繊維がストレートであると、ノズル等で糸詰まりなどを起こすことなく糸条が安定的に走行しやすい。更に、本発明の大ループを形成させることにおいても、芯糸と鞘糸の旋回が効率的に行われることとなり、加工糸の繊維軸方向において、大ループが非常に均質に形成されることとなる。加工糸を使用したポリマーの結晶化温度を目安にこの大ループが外層に形成された加工糸を熱処理することで鞘糸は3次元的な捲縮を発現し、本発明の嵩高構造糸となる。この鞘糸の3次元的な捲縮は、加工糸の円周方向及び断面方向のいずれにも良好な嵩高性を発現するものであり、求める特性に応じて、適度に制御することが好適である。この熱処理後の捲縮発現の制御という観点からは、本発明に用いる繊維は、中空断面を有することがより好ましい。中空断面繊維の場合には、繊維の中心に熱伝導率が低い空気層を有している。このため、例えば、中空断面が形成できる紡糸口金から吐出後、過剰な冷却風等で強制的に片側を冷却する、あるいは延伸時に加熱ローラ等で過剰に片側を熱処理することで、繊維の断面方向で構造差が生まれ、3次元的な捲縮のサイズを大サイズから小サイズまで比較的自由に制御可能である。このため、本発明に用いるには好適であり、前述した操作による捲縮制御という観点では、中空率20%以上の中空断面を有することがより好ましく、中空率30%以上の中空断面を有することが特に好ましい。
さらに、軽量化を推し進めながら、繊維のヘタリや形態維持を図る観点から、図4に例示するような繊維断面の中央に中空部分を有し、その周囲にドーナツ状に海島構造を形成する断面形状とすることが好ましい。この海島複合繊維においては、中空部分が軽量化に寄与し、さらに海島構造部分の島成分が海成分に対して補強材のように作用し、繊維形態の保持力を高め、曲げや圧縮に対するヘタリ等を抑制することとなる。加えて、島成分に低密度ポリマーを使用すれば、さらなる軽量化にもつながる。
なお、芯糸に関しては単独ポリマーからなる合成繊維であってもよいが、芯糸も鞘糸と同様の観点から上記したような中空断面を有した海島複合繊維であることが好ましい。
このような複合繊維の紡糸に使用する口金については、2成分以上のポリマーを複合できるものであれば、特に限定されるものではないが、中空断面の位置と海島構造部分の位置を精密に制御する必要がある場合には、特開2011−174215号公報に記載の計量プレートおよび分配プレートからなる複合口金が好適に用いられる。この複合紡糸口金を利用することで断面形状を精度良く形成できるため、所望の繊維断面形状を安定的に得ることが可能である。
繊維断面の中央部に中空部を有し、その周囲にドーナツ状に海島構造(島成分:ポリマーA、海成分:ポリマーB)を形成するためには、分配プレートにおける分配孔を以下に述べる通りにアレンジすることで達成することが可能である。すなわち、分配プレート中央部に分配孔が穿設されない円形のスペースを設け、その周囲に海成分となるポリマーBの分配孔を円環状に配列する。その外周にポリマーAの分配孔を穿設するが、ポリマーAの分配孔1孔に対して、海成分となるポリマーBの分配孔を6孔で囲い込む配置とする。この配置により、ポリマーAをポリマーBによって形成される海成分中に島成分として点在させることができる。また、中央部の分配孔が穿設されない円形のスペースにはポリマーが吐出されないことから、中空部分を形成することとなる。
複合繊維を紡糸する際に用いる島成分のポリマーAおよび海成分のポリマーBの比率は、吐出量を基準にして、A/B比率で5/95〜95/5の範囲で選択することができる。中空海島断面の形成性という観点から、このA/B比率は、5/95〜80/20であることが好ましい。ポリマー比率が係る範囲であれば、島成分が繊維表面および繊維中央の中空部分に飛出すことなく、海島構造を良好に形成し、所望の断面を有した複合繊維となる。
本発明に用いる合成繊維を紡糸する際の紡糸温度は、用いるポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、該ポリマーの融点が目安となり、融点+60℃以下で設定すればよい。これ以下であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制されるため、好ましい。また、吐出量は、安定して吐出できる範囲として、吐出孔当たり0.1g/min/hole〜20.0g/min/holeを挙げることができる。この際、吐出の安定性を確保できる吐出孔における圧力損失を考慮することが好ましい。ここで言う圧力損失は、0.1MPa〜40MPaを目安にポリマーの溶融粘度、吐出孔径、吐出孔長との関係から吐出量を係る範囲より決定することが好ましい。
このように吐出された溶融ポリマーは、冷却固化されて、油剤を付与されて周速が規定されたローラによって引き取られることで合成繊維となる。ここで、この引取速度は、吐出量および目的とする繊維径から決定すればよいが、安定に製造するには、100〜7000m/minの範囲とすることが好ましい。この合成繊維は、高配向とし力学特性を向上させるという観点から、一旦巻き取られた後で延伸を行うことも良いし、一旦、巻き取ることなく、引き続き延伸を行うことも良い。この延伸条件としては、例えば、一対以上のローラからなる延伸機において、一般に溶融紡糸可能な合成繊維を示すポリマーからなる繊維であれば、ガラス転移温度以上融点以下の温度に設定された第1ローラと結晶化温度相当とした第2ローラの周速比によって、繊維軸方向に無理なく引き伸ばされ、且つ熱セットされて巻き取られる。また、ガラス転移を示さないポリマーの場合には、複合繊維の動的粘弾性測定(tanδ)を行い、得られるtanδの高温側のピーク温度以上の温度を予備加熱温度として、選択すればよい。ここで、延伸倍率を高め、力学物性を向上させるという観点から、この延伸工程を多段で施すことも好適な手段である。
本発明の嵩高構造糸は、ニップローラなどを有した供給ローラ(図5の10)により前述した合成繊維(図5の11)を規定量供給し、圧空の噴射が可能なサクションノズル(図5の12)によって芯糸及び鞘糸を吸引することが第1の工程になる。
このサクションノズル(図5の12)において、ノズルから噴射する圧空の流量は、供給ローラからノズルに挿入する糸条が必要最低限の張力を有して供給ローラ−ノズル間及びノズル内で糸揺れ等を起こさず安定的に走行する流量を噴射すればよい。この圧空の流量は、使用するサクションノズルの孔径により最適量が変化するが、糸張力を付与でき、後述する大ループの形成が円滑にできる範囲としては、ノズル内での気流速度が100m/s以上であることが目安となる。この気流速度の上限値の目安は、700m/s以下とすることであり、係る範囲であれば、過剰に噴射された圧空により、走行糸条が糸揺れ等を起こすことなく、安定的にノズル内を走行することになる。
また、このノズル内での撹乱、開繊を予防するという観点から、圧空の噴射角度(図6の19)は、走行糸条に対して60°未満で噴射する推進ジェット流とすることが好ましく、高い生産性で、鞘糸による大ループ形成を均質に行うという点から好適である。当然、走行糸条に対して90°に流体を噴射する垂直ジェット流による加工も本発明の嵩高構造糸を製造することは不可能ではないが、垂直方向からジェット流の噴射による走行糸条の開繊、及びノズル内の狭い空間で単糸同士の絡み合いを抑制するという観点から推進ジェット流による加工が好ましい。この推進ジェット流による加工は、垂直ジェット流の場合には形成しやすいアーチ型の小ループが短周期で形成することも抑制できる。
本発明の嵩高構造糸に必要となる鞘糸からなる大ループの形成には、サクションノズル内で撹乱や開繊を施さないことが好適である。数本から数十本の糸からなるマルチフィラメントをノズル内では開繊させずに走行させるという観点では、圧空の噴射角度が、走行糸条に対して45°以下であることがより好ましい。更に、後述するノズル外での大ループを形成させるには、ノズル直後の噴射気流の安定性及び推進力が高いことが好適であり、この観点では、噴射角度が走行糸条に対して20°以下であることが特に好ましい。
次にサクションノズルにより吸引された糸条をノズル外で旋回させ、鞘糸による大ループを形成させる工程が本発明の第2の工程になる。
このサクションノズルに導く糸条は、1フィードで行う場合と2フィードで行う場合があるが、本発明の嵩高構造糸を製造するには、2フィードによる加工を行うことが好適である。ここで言う2フィードとは、2本以上の糸に予め供給ローラなどで供給速度(量)に差をつけて、ノズルに供給する手法を意味し、後述する気流による旋回力を利用することで過剰に供給された側の糸(鞘糸)が外層に大ループを形成した嵩高構造を形成することになる。この2フィードを活用する場合には、ノズル内で走行糸条に撹乱、開繊及び交絡の効果を付与するインターレース加工ノズルやタスラン加工ノズルでループを有した加工糸を製造することも不可能ではない。但し、これ等の加工ノズルで加工される糸では、ループが短周期で形成されることに加えて、そのサイズも小さくなる。このため、本発明の目的を満足する嵩高構造糸を製造するには、多数存在するパラメータを緻密に制御する必要が生じ、非常に困難なことである。また、多錘化した場合に、錘毎に加工糸の嵩高性が異なるものになるという可能性があるため、品質の安定性という観点からも後述するノズル外の気流制御を活用した手法を採用することが好適である。この点に関して、ノズル内での撹乱、開繊処理は付与せず、ノズルから離れた位置で供給された2本の糸を旋回させることで大ループが形成可能になるというコンセプトに着想し、ノズルから噴射された気流の制御という観点から鋭意検討した結果、気流速度と糸速度の比(気流速度/糸速度)が100から3000にある場合に鞘糸が開繊しながら旋回するという特異的な現象を発見したのである。
ここで言う気流速度とは、サクションノズルの下流から走行糸条に随伴して噴射された気流の速度を言い、ノズルの吐出径と圧空の流量により制御可能である。また、糸速度は流体加工ノズル後に加工糸を引き取るローラの周回速度等により制御することが可能である。この走行糸条の旋回力は気流と糸との速度比に依存して増減するため、目的とする嵩高構造糸の交錯点を強固にする場合には、該速度比を3000に近づければよいし、交錯点を緩慢にしたい場合には逆に100に近づければよい。この速度比は、例えば、圧空の流量を間歇的に変化させ、あるいは引取ローラの速度を変動させることで、交錯点の度合いに変化を持たせることも可能である。一方、本発明の嵩高構造糸を詰め物などの繰り返しの圧縮回復の変形が付与される用途に使用する場合には、気流速度/糸速度を200から2000にすることが好ましい。特に、高頻度で変形が加わるジャケット等の衣料用に用いる加工糸を製造する場合には、適度な拘束と柔軟性を付与するという観点から、気流速度/糸速度が400から1500とすることが特に好ましい。
この旋回力が発現する基点となる旋回点(図5の13)は、随伴していた気流から走行糸条を離脱させることにより開始される。具体的には、バーガイド等で糸道を変更することで良く、走行糸条の進行方向にある引取ローラ(図5の15)により、走行糸条を規定の速度で引き取ることにより芯糸の周りを鞘糸が旋回し、大ループを形成する。この旋回を起こすためのスペースとノズルから噴射された気流の拡散を利用した鞘糸の振動によるほぐれを得るという観点から、走行糸条の旋回点は、ノズル吐出口から離れた位置にあることが好適である。但し、本発明の嵩高構造糸を製造するために適したノズル−旋回点間の距離は噴出した気流速度により変化するものであり、噴出気流が1.0×10−5から1.0×10−3秒間走行する間に旋回点(図5の13)が存在することが好ましい。気流の拡散とのバランスで適度な周期で芯糸と鞘糸の交錯点を形成させるためには、ノズル−旋回点間の距離は噴出気流が2.0×10−5から5.0×10−4秒間走行する間に存在することがより好ましい。
この旋回点を調整することで、本発明の嵩高構造糸の交錯点の周期を制御することもできる。該交錯点は、本発明の特徴である鞘糸からなるループの自立を支えるという役割があり、ある程度の周期で存在した方が好適である。この観点から嵩高構造糸における芯糸と鞘糸の交錯点を1から30個/mmで存在するように旋回点を調整することが好ましい。係る範囲であれば、鞘糸の3次元捲縮を発現させた後でも、適度な間隔を有してループが存在することとなるため、好ましいのである。この観点を推し進めると、該交錯点は5から15個/mmで存在するように旋回点を調整することがより好ましい。
鞘糸からなる大ループが形成された加工糸(図5の14)は、形態固定や3次元的な捲縮を発現させるために、一旦巻き取った後あるいは嵩高加工に引き続いて熱処理を施すことが好ましい。図5においては、大ループ形成工程に引き続き熱処理を行う加工工程を例示している。
この熱処理(図5の16)は、ヒータ等によって加工糸を加熱することにより処理するものであり、加工温度は使用するポリマーの結晶化温度±30℃がその目安となる。この温度範囲での処理であれば、ポリマーの融点から処理温度が離れているため、鞘糸間や芯糸間で融着して硬化した箇所がなく、異物感がなく本発明の嵩高構造糸の良好な触感を損ねることはない。この熱処理工程に用いるヒータは一般的な接触式あるいは非接触式のヒータを採用することができるが、熱処理前の嵩高性や鞘糸の劣化抑制という観点では、非接触式のヒータが好適に採用される。ここで言う非接触式のヒータとは、スリット型ヒータやチューブ型ヒータ等の空気加熱式ヒータ、高温蒸気により加熱するスチームヒータ、輻射加熱を利用したハロゲンヒータやカーボンヒータ、マイクロ波ヒータ等が該当する。
ここで加熱効率という観点では、輻射加熱を利用したヒータが好ましい。加熱時間に関しては、例えば、結晶化が進み加工糸を構成する繊維の繊維構造の固定、加工糸の形態固定及び鞘糸の捲縮発現が完了する等の時間が目安となり、処理温度及び時間にて求める特性に応じて調整することが好適である。熱処理工程が完了した加工糸はデリバリーローラ(図5の17)を介して速度を規制し、張力制御機能を具備したワインダ等で巻き取ればよい(図5の18)。この巻き形状に関しては、特に限定されるものではなく、いわゆるチーズ巻きやボビン巻きとすることが可能である。また、最終的な製品への加工を考慮して、複数本を予め合糸し、トウとすることやそのままシート化することも可能である。
本発明の嵩高構造糸は、熱処理工程前後でシリコーン系油剤を均一に付着させることが好ましい。ここで付着させるシリコーンは、熱処理するなどして適度に架橋をさせることで、鞘糸及び芯糸にシリコーンの皮膜を形成させると良い。ここで言うシリコーン系油剤とは、ジメチルポリシロキサン、ハイドロジエンメチルポリシロキサン、アミノポリシロキサン、エポキシポリシロキサン等が該当し、これ等を単独あるいは混合することで使用すると良い。また、嵩高構造糸に均一に皮膜を形成するという観点から、シリコーン付着の目的を損なわない範囲で、分散剤、粘度調整剤、架橋促進剤、酸化防止剤、防燃剤及び静電防止剤を含有させることができる。このシリコーン系油剤はストレートであっても、水性エマルジョンとして使用することもできるが、油剤の均一付着という観点では、水性エマルジョンとして使用することが好適である。シリコーン系油剤は、油剤ガイド、オイリングローラーまたはスプレーによる散布を利用して、質量比で嵩高構造糸に対して0.1〜5.0wt%付着できるように処理することが好適である。その後任意の温度及び時間で乾燥し、架橋反応させることが好ましい。このシリコーン系油剤は、複数回に分けて付着させることも可能であり、同じ種類のシリコーンあるいは種類の異なるシリコーンを分けて付着させることで強固なシリコーン皮膜を積層させることも好適である。前述した処理により、嵩高構造糸にシリコーンの皮膜を形成させることで、嵩高構造糸の滑り性、触感が増し、本発明の効果を更に引き立たせることができる。
以下実施例を挙げて、本発明の嵩高構造糸について具体的に説明する。
実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.繊度
繊維の100mの重量を測定し、100倍することで繊度を算出した。これを10回繰り返し、その単純平均値の小数点第2位を四捨五入した値をその繊維の繊度とした。単糸繊度とは、その繊維を構成するフィラメント数により前述した繊度を除することにより、算出した。この場合も、小数点第2位を四捨五入した値を単糸繊度とした。
B.繊維の力学特性
繊維をオリエンテック社製引張試験機テンシロン UCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度100%/minの条件で応力−歪曲線を測定する。破断時の荷重を読みとり、その荷重を初期繊度で除することで破断強度を算出した。また、破断時の歪を読みとり、試料長で除した値を100倍することで、破断伸度を算出した。いずれの値も、この操作を水準毎に5回繰り返し、得られた結果の単純平均値を求め、破断強度は小数点第2位を四捨五入した値とし、破断伸度は小数点第1位を四捨五入して整数値とした。
C.芯糸および鞘糸の密度
嵩高構造糸の芯糸および鞘糸の密度をJIS L 1013:2010に準じて、密度勾配管を用いて方法により測定した。試料が液の中で平衡位置に達して静止した後,試料の沈降深さを1mmまで密度勾配管の目盛から読み取り、その数値を補正曲線と比較して密度を求めた。これを水準毎に2回行い、得られた結果の単純平均値を求め、小数点第3位を四捨五入した値を密度とした。
D.中空率
中空断面を有する繊維を剃刀によって繊維軸と垂直方向に切断して、その切断面を日立ハイテクノロジーズ社製電子顕微鏡SU−1510により、繊維が10本以上観察できる倍率で2次元的に撮影した。撮影した画像から無作為に選定した10本の繊維を抽出し、画像処理ソフトを用いて繊維及び中空部分の面積を測定し、中空率を面積比率として、下記の式により算出した。
中空率(%)=(中空部の断面積)/(繊維の断面積(中空部を含む))
10ヶ所の各画像について測定を行い、10画像の平均値について小数点以下1桁目を四捨五入して整数とした値を本発明の中空率とした。
E.ループ評価(大きさ、交錯点、破断点)
加工糸にたるみが出ないように0.01cN/dtexの荷重をかけ、図2に例示されるように定長で一対の糸ガイドに糸掛けする。糸掛けした加工糸の側面を(株)キーエンス社製マイクロスコープVHX−2000にてループ全体が観察できる倍率で撮影した。この画像から無作為に選定した10箇所について、画像処理ソフト(WINROOF)を用いてループ先端の糸表面からの距離(図2の5)を評価した。この作業を計10画像について行い、合計100箇所をミリメートル単位で小数点第2位までを測定する。これ等の数値の平均値を算出し、小数点第2位を四捨五入した値を本発明におけるループ大きさとした。
ループ大きさを評価したものと同じ10箇所についてループの交錯点及び鞘糸の破断点をカウントし、1ミリメートル当たりの交錯点及び破断点を評価した。同じ作業を10画像について行い、計100箇所の平均値の小数点以下を四捨五入し、その整数値を交錯点として評価した。また、ループの破断点については、カウントされたループの破断点を平均し、小数点第2位を四捨五入することでループの破断点とした。ここで破断点が0.2個/mm未満のサンプルは本発明で言うループが連続して存在しているものとして、破断無し(評価:○)とし、0.2個/mm以上のものは、破断有り(評価:×)として評価した。
F.捲縮形態評価(3次元捲縮、曲率半径)
加工糸から無作為に選出した10箇所において、各々10本以上の単糸を採取し、それぞれの単糸を(株)キーエンス社製マイクロスコープVHX−2000にて捲縮形態が確認できる倍率で観察した。この画像において、観察される単糸がらせん状に旋回した形態を有している場合には、3次元的な捲縮構造有り(評価:○)と判定し、ストレートな形態の場合には捲縮構造無し(評価:×)と判定した。また、同じ画像から、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、捲縮した繊維の湾曲(図3の6)に2箇所以上で最も多く内接する真円の半径を評価した。前述の通り無作為に抽出した計100本の単糸をミリメートル単位で小数点第2位までを測定し、この単純平均の小数点第2位を四捨五入した値を本発明の3次元的な捲縮構造の曲率半径とした。
G.繊維間静摩擦係数
レーダー式摩擦係数試験機により、JIS L 1015(2010年)に準じた方法で測定するものである。なお、ここでの繊維間静摩擦係数評価は加工糸を円筒に平行に並べることで評価するものである。繊維間静摩擦係数は測定値の小数点第2位を四捨五入した値とした。
H.解舒性(ファスナー現象の抑制効果)
加工糸を500m以上巻き付けたドラムをクリールに仕掛け、ドラムの断面方向に30m/min速度で5分間解除し、ファスナー現象による糸の踊り、引っ掛かり等を目視により確認し、下記の4段階で評価した。
◎:糸の踊りがみられず、解舒性に優れる。
○:わずかに糸の踊りがみられるが、良好に解舒できる。
△:糸の踊り及びわずかに引っ掛かりがみられるが解舒はできる。
×:糸の踊り及び引っ掛かりが起こり解舒できない。
I.触感
加工糸を500m以上巻き付けたドラムをクリールに仕掛け、ドラムの断面方向に検尺機を用いて、糸を解舒して巻き形態とすることで10mの糸カセとした。糸カセの一箇所を固定して風合い評価用サンプルを作成した。このサンプルを握った場合の触感を下記の4段階で評価した。
◎:柔軟性に優れた風合い。
○:柔軟性が良好な風合い。
△:柔軟性を有した風合い。
×:柔軟性がなく、異物感を感じる不良な風合い。
J.嵩高構造糸の嵩高評価
嵩高構造糸を内径28.8cm、高さ50.0cmのシリンダー状容器に20g充填し、充填した嵩高構造糸に対して垂直方向に上から0.15g/cmの荷重を掛けたときの嵩高構造糸が占める空間の高さH(cm)を測定し、以下の式から嵩高性(in/20g)を算出し、その値の小数点第1位を四捨五入した整数値を嵩高とした。
嵩高(in/20g)=(14.4π/2.54)×H 。
実施例1
島成分としてポリプロピレン(PP:MFR=9g/10分)を265℃、海成分としてポリエチレンテレフタレート(PET:0.65dl/g)を300℃で別々に溶融後、計量して、紡糸パックに流入させ、スピンブロック温度を280℃で、繊維断面の中央に中空部を有し、その周囲にドーナツ状に海島構造を有した中空海島複合糸を溶融紡糸した。紡糸パックに組み込んだ紡糸口金は特開2011−174215号公報に記載の計量プレートおよび分配プレートからなる複合口金を用い、分配プレートとして、プレート中央部に分配孔が穿設されない円形のスペースを設け、その周囲に海成分ポリマーの分配孔を円環状に配列し、さらに外周に島成分ポリマーの分配孔1孔に対して、海成分ポリマーの分配孔を6孔で囲い込んだ配置のものを使用した。島/海=30/70の複合比率で吐出された複合ポリマー流は20℃の冷却風を100m/minの流れで片側から吹き付けて冷却固化後に油剤付与し、紡糸速度1200m/minで未延伸糸を巻き取った後、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸速度600m/minで2.9倍延伸し、繊度78dtex、フィラメント数12、1フィラメント当たりの島数が32島、中空率30%、密度0.87g/cmの延伸糸とした。
得られた中空海島複合糸を図5に例示される工程にて、2個の供給ローラにそれぞれ1本ずつ中空海島複合糸を供給し、一方の供給ローラを速度50m/min、他方を速度1000m/minとして、サクションノズルで吸引した。サクションノズルでは走行糸条に対して20°で気流速度を400m/sになるように圧空を噴射し、芯糸と鞘糸が交錯しないように随伴気流とともにノズルから噴出させた。ノズルから噴射した糸条を気流共に1.0×10−4秒間走行させ、セラミックガイドを利用して糸道を変更し、鞘糸からなる大ループを形成した加工糸とし、引取ローラで50m/minで引き取った。
引き続き、ローラを介して該加工糸をチューブヒータに導き、150℃の加熱空気で10秒間熱処理し、嵩高構造糸の形態をセットするとともに、鞘糸に3次元的な捲縮を発現させた。該嵩高構造糸は、チューブヒータ後に設置された張力制御式巻取り機により、52m/minでドラムに巻き取った。さらに、採取した嵩高構造糸にポリシロキサンが濃度8wt%で含まれたシリコーン系油剤を最終的なポリシロキサン付着量が嵩高構造糸に対して1wt%になるようにスプレーで均一に散布し、165℃の温度で20分間熱処理しで加工糸を採取した。
実施例1で採取した嵩高構造糸は、鞘糸からなる大ループが平均で21.0mm糸表面から突出した構造であり、該大ループが10個/mmの頻度で形成されたものであった。この突出したループはサイズ、周期の均一性に優れるものであった。
芯糸及び鞘糸は曲率半径4.5mmのミリメートルオーダーの3次元的な捲縮構造を有しており、鞘糸の大ループには破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。(破断箇所:0.0個)
該嵩高構造糸では連続的な大ループを形成する鞘糸が3次元的な捲縮構造を有しており、繊維間静摩擦係数0.1であり、巻き取ったドラムからの解舒は非常にスムーズであり、解舒性に優れたものであった(解舒性:◎)。また、本発明の特異的な構造に由来した嵩高性を有し、柔軟性にも優れた風合いを有したものであった(風合い:◎)。また嵩高評価では、628in/20gと優れた嵩高を発揮した。結果を表1に示す。
実施例2、3
鞘糸に使用する中空海島複合糸の島/海の複合比率および延伸糸の密度を島/海=20/80および密度0.90g/cm(実施例2)、島/海=10/90および密度0.93g/cm(実施例3)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例2で採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性に優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性に優れた風合いを有したものであった(風合い:◎)。また嵩高評価では、606in/20gと優れた嵩高を発揮した。
実施例3で採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性に優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性に優れた風合いを有したものであった(風合い:◎)。また嵩高評価では、582in/20gと良好な嵩高を発揮した。結果を表1に示す。
実施例4
鞘糸に使用する中空海島複合糸の中空率を20%に変更し、延伸糸の密度を0.99g/cmに変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性は良好なもの(解舒性:○)であり、柔軟性に優れた風合いを有したものであった(風合い:◎)。また嵩高評価では、554in/20gと十分な嵩高を発揮した。結果を表1に示す。
実施例5
鞘糸に使用する中空海島複合糸の島/海の複合比率を50/50、中空率を20%に変更して、延伸糸の密度を0.98g/cmに変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性は良好なもの(解舒性:○)であり、柔軟性に優れた風合いを有したものであった(風合い:◎)。また嵩高評価では、563in/20gと十分な嵩高を発揮した。結果を表1に示す。
比較例1
鞘糸に使用する中空海島複合糸の中空率を8%に変更して、延伸糸の密度を1.14g/cmに変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性にも優れた風合いであった(風合い:◎)。一方、嵩高評価においては、457in/20gと嵩高が不十分なものであった。結果を表1に示す。
比較例2
鞘糸に使用する中空海島複合糸の島/海の複合比率を5/95、中空率を20%に変更して、延伸糸の密度を1.09g/cmに変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性にも優れた風合いであった(風合い:◎)。一方、嵩高評価においては、504in/20gと嵩高が不十分なものであった。結果を表1に示す。
比較例3
本発明の嵩高加工の効果を検証するため、圧空の噴射角度を90°に変更したノズルを用い、セラミックガイドによる旋回点を設けないこと以外は実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、熱処理前の時点で鞘糸によるループサイズが実施例1と比較して小さく、非常に短周期で形成されているものであった。このため、熱処理することで鞘糸を捲縮加工した場合には、糸にループは形成できているものの、嵩高性に乏しいものであった。鞘糸からなるループの詳細を確認すると、ループサイズに斑が見られ、熱処理前では確認できなかった破断点が比較的多く見られた(破断有り:破断点0.5)。柔軟性を有した風合い(風合い:△)ではあったが、巻き取ったドラムからの解舒性は、糸の踊りや引掛りが起こり不良なもの(解舒性:×)であった。結果を表1に示す。
実施例6
ポリエチレンテレフタレート(PET:IV=0.65dl/g)を290℃で溶融後、計量し、紡糸パックに流入させ、図7例示されるような3つのスリット(幅0.1mm、図7の17)が同心円状に配置された中空断面用吐出孔から中空率30%となるように吐出した。吐出された糸条に20℃の冷却風を100m/minの流れで片側から吹き付けて冷却固化後、非イオン系の紡糸油剤付与し、紡糸速度1500m/minで未延伸糸を巻き取った。引き続き、巻き取った未延伸糸を90℃と140℃に加熱したローラ間で延伸速度800m/minで3.0倍延伸し、繊度78dtex、フィラメント数12、中空率30%の延伸糸とした。この延伸糸を芯糸として用いたこと以外は実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性が良好な風合いであった(風合い:○)。また嵩高評価では、591in/20gと良好な嵩高を発揮した。結果を表2に示す。
実施例7
一般的な丸断面繊維となるように丸孔が12ホール穿設された紡糸口金に変更し、実施例6と同様の条件でポリエチレンテレフタレート単独の延伸糸を採取した。該延伸糸を芯糸として使用したこと以外は全て実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性が良好な風合いであった(風合い:○)。また嵩高評価では、579in/20gと良好な嵩高を発揮した。結果を表2に示す。
比較例4
芯鞘共にポリエチレンテレフタレート単独の中空率30%の中空繊維を使用したこと以外は嵩高構造糸の加工を実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性にも優れた風合いであった(風合い:◎)。一方、嵩高評価においては、540in/20gと嵩高が不十分であった。結果を表2に示す。
比較例5
芯鞘共に中空ではないポリエチレンテレフタレート単独糸を使用したこと以外は嵩高構造糸の加工を実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。鞘糸は3次元的な捲縮構造を有しており、巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性も良好な風合いであった(風合い:○)。一方、嵩高評価においては、533in/20gと嵩高が不十分であった。結果を表2に示す。
実施例8〜10
流体加工における気流速度を350m/s(実施例8)、175m/s(実施例9)、88m/s(実施例10)にそれぞれ変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例8で採取した嵩高構造糸は、鞘糸からなる大ループが平均で60.0mm糸表面から突出した構造であり、破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性に優れた風合いであった(触感:◎)。また、嵩高評価では603in/20gと優れた嵩高を発揮した。
実施例9で採取した嵩高構造糸は、鞘糸からなる大ループが平均で70.0mm糸表面から突出した構造であり、破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。巻き取ったドラムからの解舒性は良好(解舒性:○)であり、柔軟性も良好な風合いであった(触感:○)。また、嵩高評価では607in/20gと優れた嵩高を発揮した。
実施例10で採取した嵩高構造糸は、鞘糸からなる大ループが平均で100.0mm糸表面から突出した構造であり、破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。巻き取ったドラムからは糸の踊り及びわずかに引っ掛かりがみられたが解舒できるもの(解舒性:△)であり、十分な柔軟性を有する風合いであった(触感:△)。また、嵩高評価では612in/20gと優れた嵩高を発揮した。結果を表3に示す。
実施例11および12
流体加工における圧空の噴射角度を55°(実施例11)、45°(実施例12)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例11で採取した嵩高構造糸は鞘糸からなる大ループが平均で3.0mm糸表面から突出した構造であり、破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性が良好な風合いであった(触感:○)。また、嵩高評価では573in/20gと良好な嵩高を発揮した。
実施例12で採取した嵩高構造糸は鞘糸からなる大ループが平均で5.0mm糸表面から突出した構造であり、破断箇所が見られない連続したループを形成したものであった。巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性が優れた風合いであった(触感:◎)。また、嵩高評価では600in/20gと優れた嵩高を発揮した。結果を表3に示す。
実施例13〜17
鞘糸に使用する中空海島複合糸の単糸繊度を変更し、単糸繊度比(鞘/糸)を2.0(実施例13)、1.5(実施例14)、0.7(実施例15)、0.5(実施例16)、0.3(実施例17)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例13で採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したもので、該ループの曲率半径は1.3mmであった。巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、十分な柔軟性を有した風合いであった(触感:△)。また、嵩高評価では550in/20gと十分な嵩高であった。
実施例14で採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したもので、該ループの曲率半径は2.2mmであった。巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性が良好な風合いであった(触感:○)。また、嵩高評価では573in/20gと良好な嵩高を発揮した。
実施例15で採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したもので、該ループの曲率半径は14.4mmであった。巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性にも優れた風合いであった(触感:◎)。また、嵩高評価では614in/20gと優れた嵩高を発揮した。
実施例16で採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したもので、該ループの曲率半径は19.4mmであった。巻き取ったドラムからの解舒性は良好なもの(解舒性:○)であり、柔軟性も良好な風合いであった(触感:○)。また、嵩高評価では582in/20gと良好な嵩高を発揮した。
実施例17で採取した嵩高構造糸は、鞘糸の大ループに破断箇所が見られない連続したループを形成したもので、該ループの曲率半径は19.4mmであった。巻き取ったドラムからは糸の踊り及びわずかに引っ掛かりがみられたが解舒できるもの(解舒性:△)であり、柔軟性が良好な風合いであった(触感:○)。また、嵩高評価では557in/20gと嵩高が十分なものであった。結果を表4に示す。
実施例18〜20
走行糸条の旋回点をそれぞれ噴射気流が9.0×10−4秒(実施例18)、4.8×10−4秒(実施例19)、1.2×10−5秒(実施例20)走行する間に存在するよう調整したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例18で採取した嵩高構造糸は、糸の踊り及びわずかに引っ掛かりがみられるが解舒はできるもの(解舒性:△)であり、柔軟性が良好な風合いであった(触感:○)。また、嵩高評価では616in/20gと優れた嵩高を示した。
実施例19で採取した嵩高構造糸は、巻き取ったドラムからの解舒性は優れたもの(解舒性:◎)であり、柔軟性にも優れた風合いであった(触感:◎)。また、嵩高評価では、603in/20gと優れた嵩高を発揮した。
実施例20で採取した嵩高構造糸は、巻き取ったドラムからスムーズに解舒することができた(解舒性:◎)。また、風合いは良好な触感であった(触感:○)。嵩高評価では、561in/20gと十分な嵩高を示した。結果を表5に示す。
実施例21
採取した嵩高構造糸にポリシロキサンが含まれたシリコーン系油剤の付与およびシリコーン固定化熱処理を施さなかったこと以外は、実施例1に従い実施した。
採取した嵩高構造糸は繊維間静摩擦係数0.3であり、巻き取ったドラムからの解舒性は良好なもの(解舒性:○)であり、柔軟性も良好な風合いであった(触感:○)。また嵩高評価では624in/20gと優れた嵩高を発揮した。結果を表5に示す。
本発明の嵩高構造糸は、ソフトな風合いを有し、軽量で保温性に優れており、糸同士が絡み合いにくく成形加工時の取扱い性にも優れたもので、衣料、寝装寝具、断熱材に向けた中綿、詰め綿などに好適である。
1 鞘糸
2 芯糸
3 糸表面
4 糸ガイド
5 糸表面からの距離
6 3次元的な捲縮
7 中空部分
8 島成分
9 海成分
10 供給ローラ
11 合成繊維
12 サクションノズル
13 旋回点
14 加工糸
15 引取ローラ
16 ヒータ
17 デリバリーローラ
18 ワインダ
19 圧空の噴射角度
20 スリット状吐出孔

Claims (6)

  1. ループを形成する鞘糸と該鞘糸とを交錯することで実質的に鞘糸を固定する芯糸からなる嵩高構造糸において、鞘糸が破断することなく連続的なループを形成し、かつ鞘糸が密度1.00g/cm未満の複合繊維であることを特徴とする嵩高構造糸。
  2. 鞘糸が3次元的な捲縮を有することを特徴とする請求項1に記載の嵩高構造糸。
  3. 鞘糸が中空率10%以上の中空断面を有した海島複合繊維であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の嵩高構造糸。
  4. 芯糸が中空率10%以上の中空断面を有した海島複合繊維であって、3次元捲縮を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の嵩高構造糸。
  5. 海島複合繊維の島成分がポリオレフィン、海成分がポリエステルで構成されることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の嵩高構造糸。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の嵩高構造糸を少なくとも一部に含む繊維製品。
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