JP2017201583A - インク組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】泡の発生を抑制しつつ燃料電池の触媒層を形成するためのインク組成物をろ過する。【解決手段】燃料電池の触媒層を形成するためのインク組成物(Icf)の製造方法であって、アルコール(54)と混合されたガス(34)を接触させて加圧しつつ、インク組成物の液状の中間品(Ict)を濾過する工程(S46)を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池の触媒層を形成する組成物の製造方法に関するものである。
燃料電池に触媒層を設けるために使用される触媒インク中に、所定の基準値を超える大きさを有するカーボンの塊や、高分子電解質の塊が存在すると、生成される燃料電池において以下のような問題が生じる。すなわち、電解質膜への触媒インクの塗布によって生成される触媒層に微小な欠陥が生じ、燃料電池が十分な発電性能および耐久性を発揮できなくなる。
このような問題を解決するため、特許文献1の技術においては、触媒インクを電解質膜に塗布する前に、フィルタを使用して加圧条件下で触媒インクを濾過し、所定の基準値を超える大きさを有するカーボンの塊や、高分子電解質の塊を除去している。
特開2004−241362号公報 特開2013−37940号公報
しかし、加圧条件下で触媒インクを濾過すると、加圧用のガスが接触している触媒インクの液面において大量の泡が発生し、効率的に触媒インクを濾過することができない。また、気泡を含んだまま触媒インクが電解質膜に塗布されると、電解質膜が欠陥を含むこととなり、燃料電池が十分な発電性能および耐久性を発揮できなくなる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
燃料電池の触媒層を形成するためのインク組成物の製造方法であって、アルコールと混合されたガスを接触させ前記ガスを介して加圧しつつ、インク組成物の液状の中間品をろ過する工程を含む、インク組成物の製造方法。
このような態様においては、泡の発生を抑制するためのアルコールがインク内に含まれている態様に比べて、泡の内側におけるガスとインクとの界面にアルコールが集中しやすい。このため、インクにアルコールを添加する態様に比べて、少ない量のアルコールを使用して、泡の発生を抑制することができる。なお、この態様は、インク組成物の中間品を構成する成分の凝集物と、インク組成物の中間品を構成する成分の未溶解成分と、の少なくとも一方を、ろ過前のインク組成物の液状の中間品が含む場合に、特に好適である。
本発明は、インク組成物の製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。たとえば、インク組成物の製造装置、インク組成物の製造装置の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
本実施形態に係る触媒インクの製造方法を示すフローチャートである。 ステップS4で使用されるろ過装置1の概略構成を示す説明図である。 アイオノマと触媒担持カーボンと溶媒中で混合してスラリーを生成する処理を複数種類のアイオノマおよび水分率で実施した場合の、触媒担持カーボンへのアイオノマの吸着率を示すグラフである。 ろ過処理を、触媒インクへの様々な量のアルコールの添加、および複数種類のアイオノマの組み合わせによって実施した場合に発生した、触媒インクIctの泡の数を示すグラフである。 ろ過処理を、窒素ガスへのアルコールの添加を複数種類の割合で実施した場合に発生した、触媒インクIctの泡の数を示すグラフである。 触媒インクに消泡剤としてのアルコールを添加した場合の泡の近傍の状態を示した概念図である。 加圧ガスに消泡剤としてのアルコールを添加した場合の泡の近傍の状態を示した概念図である。 図1のステップS4で使用されるろ過装置1bの概略構成を示す説明図である。
A.第1実施形態:
A1.触媒インクの製造:
図1は、本実施形態に係る触媒インクの製造方法を示すフローチャートである。ステップS1においては、アイオノマ(高分子電解質)の材料を加熱し混合することにより、ゲル状のアイオノマを作製する。なお、「アイオノマ」とは、金属イオンによる凝集力を利用して高分子を凝集体とした合成樹脂である。本実施形態において使用されるアイオノマは、プロトン(H)伝導性を有する高分子電解質である。
また、本実施形態において使用されるアイオノマは、基本骨格として環状構造を有する環式化合物を含むことにより、高い酸素透過性を有する。このようなアイオノマを、本明細書において、「高酸素透過性アイオノマ」と呼ぶ。本実施形態において使用される高酸素透過性アイオノマの酸素透過性は、温度80℃および相対湿度50%の環境下において2.2×10-14mol/(m・s・Pa)以上である。
図1のステップS2において、触媒材料を調合する。この処理においては、触媒とイオン交換水の混合物に、さらにカーボンを混合し、分散させることで、カーボンに触媒を担持させる。触媒としては、たとえば、金属触媒(Pt、Pt−Fe、Pt−Cr、Pt−Ni、Pt−Ru、Pt−Coなど)を用いることができる。カーボンとしては、たとえば、V、F、Ni、Tiを不純物として含むカーボンを用いることができる。なお、触媒およびカーボンの成分や、構成比を変えることで、アノード用の触媒インクと、カソード用の触媒インクと、のいずれの触媒用インクも、準備することができる。なお、ステップS1とステップS2は、いずれを先に実施してもよいし、並行して実施してもよい。
ステップS3においては、ステップS1で作製したゲル状のアイオノマと、ステップS2で作製した触媒担持カーボンとを、溶媒中で混合し、乳化させて、触媒担持カーボンとアイオノマとを含む触媒インクIctとしてのスラリー(懸濁体)を生成する。ステップS3において形成される触媒インクIctは、固形分(触媒担持カーボンおよびアイオノマ)を、10重量%含む液状の触媒インクである。ステップS3で生成された触媒インクIctは、後述するろ過装置1の第1のタンク10に供給される。
なお、ステップS3の処理が終了した状態では、触媒インク中Ictに、触媒担持カーボンおよびアイオノマの凝集物や未溶解成分が存在している。それらの凝集物や未溶解成分は、所定の基準を超える大きさを有する塊(いわゆる「ダマ」)となっている。触媒インクIctは、完成品としての触媒インクではなく、インク組成物の中間品である。しかし、本明細書では、技術の理解を容易にするため、この中間品も「触媒インク」と呼ぶ。
ステップS4においては、ステップS3で生成された凝集物や未溶解成分を含む触媒インクをろ過する。その結果、所定の基準を超える大きさを有するカーボンの塊や、高分子電解質の塊が除去される。なお、本実施形態においては、ステップS4は、2500gずつの触媒インクを対象として、バッチ処理で実行される。
図2は、ステップS4で使用されるろ過装置1の概略構成を示す説明図である。ろ過装置1は、第1のタンク10と、第2のタンク20と、圧力制御装置30と、フィルタユニット40と、アルコール添加装置50と、を備える。
第1のタンク10は、ろ過前の触媒インクIctを収容することができる容器である。第1のタンク10は、ろ過前の触媒インクIctを2500g収容することができる。第1のタンク10は、ろ過前の触媒インクIctを収容している他の容器(図2において図示せず)に接続されており、その容器からろ過前の触媒インクIctの供給を受ける(図2の矢印Aict参照)。触媒インクIctの供給を受けた後、触媒インクIctの供給経路は閉鎖される。
第1のタンク10は、配管34に接続されており、配管34から窒素ガスの供給を受ける。さらに、第1のタンク10は、配管54に接続されており、配管54からアルコールの供給を受ける。本実施形態においては、1−ヘキサノールを50重量%含むアルコール水溶液の形態で、配管54からアルコールが供給される。
第1のタンク10は、上部に2流体ノズル62を備える。配管34から供給される窒素ガスと、配管54から供給されるアルコール水溶液とは、2流体ノズル62によって混合され、第1のタンク10内に供給される。2流体ノズル62は、供給された液体(アルコール水溶液)をスプレーする機能を奏する。その結果、2流体ノズル62を通過した後の窒素ガスは、霧状のアルコール水溶液を含んでいる。アルコール水溶液と混合された窒素ガスは、第1のタンク10内に収容された触媒インクIctの液面に接触してこれを加圧する。第1のタンク10内の触媒インクIctは、第1のタンク10下部に設けられた開口14を介して第1のタンク10外部に排出される。
フィルタユニット40は、第1のタンク10の開口14を塞ぐように、第1のタンク10の下部に配されている。フィルタユニット40は、フィルタ支持体48によって、位置を固定されて支持されている。
フィルタユニット40は、フィルタハウジング41内に金属製のメッシュフィルタ42を備える。フィルタユニット40は、フィルタハウジング41に設けられた開口43を介して、第1のタンク10の開口14から排出されるろ過前の触媒インクIctを受け取り、これをろ過して、フィルタハウジング41に設けられた開口44から排出する。
メッシュフィルタ42は、直径300mmの円盤状に設けられている。メッシュフィルタ42の孔径は、10μmである。メッシュフィルタ42の材料としては、耐食性のあるSUS316やTiを用いることができる。メッシュフィルタ42は、編み込み、エッチング、リソグラフィ等の製法により製造されることができる。
第2のタンク20は、ろ過後の触媒インクIcfを収容することができる容器である。第2のタンク20は、フィルタユニット40の開口43,44をはさんで、第1のタンク10の開口14の下方に配されている。第2のタンク20の上部に設けられた開口22の外縁は、ろ過装置1を鉛直方向に投影した場合に、フィルタユニット40の開口44を包含する。第2のタンク20は、開口22を介して、フィルタユニット40から、ろ過後の触媒インクIcfの供給を受ける(図2の矢印Aicf参照)。
圧力制御装置30は、ガスボンベ32、配管34、減圧装置36、および圧力計38を備えている。ガスボンベ32は、高圧の窒素ガスを保持している。本実施形態では、ガスボンベ32は、最大400kPaの窒素ガスを保持している。配管34は、ガスボンベ32内の窒素ガスを第1のタンク10に供給する。減圧装置36は、配管34の途中に設けられた複数のレギュレータを備え、それらのレギュレータによって、ガスボンベ32から供給される窒素ガスの圧力を低減する。本実施形態においては、窒素ガスの圧力は、第1のタンク10に供給される段階において、40kPa以下に低減されている。圧力計38は、配管34の途中であって、最も下流に配されたレギュレータと第1のタンク10の間の位置に配されており、第1のタンク10に供給される窒素ガスの圧力を測定する。
圧力制御装置30は、さらに、制御部(図示せず)を備えている。制御部は、圧力計38によって計測されるガス圧に基づいて、減圧装置36の各レギュレータを制御し、第1のタンク10に供給されるガスの圧力を40kPa以下に制御する。その結果、窒素ガスに押圧される第1のタンク10内のろ過前の触媒インクIctの圧力が制御される。
アルコール添加装置50は、アルコールタンク52、配管54、ポンプ56を備えている。アルコールタンク52は、窒素ガスに添加するアルコールを保持している。本実施形態においては、アルコールタンク52は、1−ヘキサノールを50重量%含む水溶液を保持している。
配管54は、アルコールタンク52内のアルコール(1−ヘキサノール水溶液)を第1のタンク10に供給する。具体的には、ポンプ56が、配管54を介して、アルコールタンク52内のアルコールを第1のタンク10に供給する。ポンプ56によって、アルコールタンク52内の1−ヘキサノール水溶液が、0.1g/秒の速度で第1のタンク10に供給される。配管54から供給されるアルコールと、配管34から供給される窒素ガスとは、2流体ノズル62によって混合され、第1のタンク10内に供給される。
図1のステップS4に示すろ過工程について、図2を参照しつつ詳細に説明する。ステップS42(図1参照)において、ガスボンベ32から供給される窒素ガスが、減圧装置36によって減圧されつつ、第1のタンク10に向かって供給される。なお、本実施形態においては、第1のタンク10内の2500gの触媒インクIctをろ過するために、配管34からの窒素ガスの供給は、400ml/分の速度で、15秒間行われる。
ステップS44において、2流体ノズル62によって、窒素ガスは、配管54から供給されるアルコールと混合される。なお、第1のタンク10内の2500gの触媒インクIctをろ過するために、配管54からのアルコールの供給は、0.1g/秒の速度で15秒間行われる。その結果、ろ過前の触媒インクIctの固形分に対するアルコールの全添加割合は、0.3重量%となる。なお、配管54からのアルコールの供給と配管34からの窒素ガスの供給は、同期して行われる。本明細書においては、ガスとアルコールの混合や、ガスへのアルコールの添加を「加湿」とも呼ぶ。
ステップS46において、第1のタンク10内において、アルコールを添加されたガスによって、ろ過前の触媒インクIctが加圧され、ろ過が実行される。その結果、所定の基準値を超える大きさを有するカーボンの塊や、高分子電解質の塊は、メッシュフィルタ42上に残り、第2のタンク20に配送されることはない。そして、所定の基準以下の大きさの要素のみで構成される触媒インクIcfが第2のタンク20に内に貯留される。
なお、本明細書においては、触媒用インクにフィルタを通過させる処理(ステップS46参照)を狭義の「ろ過」と呼び、狭義のろ過に加えて、加圧用ガスの減圧、加圧用ガスへのアルコールの添加、ガスによる触媒用インクの加圧などを含む処理(ステップS4参照)全体を、広義の「ろ過」と呼ぶ。
なお、ここでは、技術の理解を容易にするために、ステップS42,S44,S46について、順に説明した。しかし、ステップS4のろ過処理の開始直後の一定期間、および終了直前の一定期間を除き、ステップS42,S44,S46の処理は、ろ過装置1の各所において並行して実行される。
図1の処理で触媒インクIcfが生成された後、触媒インクIcfがプロトン伝導性を有する電解質膜の両面に塗布され、触媒層が形成される。その両外側にカーボンファバーやカーボンペーパーによるガス拡散層が配される。触媒層と、ガス拡散層とが、燃料電池の電極を構成する。その後、その両外側にガス流路を構成する層が配され、さらにその両外側にセパレータが配される。
そのように構成されたユニットが積層され、両側をエンドプレートに挟まれて、燃料電池が生産される。なお、触媒インクIcfを電解質膜に塗布して触媒層を形成した後、ガス流路を構成する層を配する前に、触媒層が含む水分量およびアルコールの量が所定量になるまで乾燥する工程を含んでもよい。
A2.ろ過工程における泡の発生を抑制するための他の態様:
以下では、窒素ガスへのアルコール水溶液の添加(図1のステップS44参照)以外の方法によるろ過工程の泡の発生の抑制の効果について、説明する。
(1)触媒インク中の水分の増加:
図3は、アイオノマと触媒担持カーボンと溶媒中で混合してスラリーを生成する処理(図1のステップS3参照)を複数種類のアイオノマおよび水分率で実施した場合の、触媒担持カーボンへのアイオノマの吸着率を示すグラフである。アイオノマIaは、上述の本実施形態で使用される高酸素透過性アイオノマである。アイオノマIbは、アイオノマIaよりも酸素透過性が低い比較例のアイオノマである。図3においては、(i)水分率が85%の溶媒と、本実施形態で使用されるアイオノマIaとを使用して、本実施形態で使用される触媒担持カーボンと混合し、乳化させて、スラリーを生成した場合の、触媒カーボンへのアイオノマの吸着率、(ii)溶媒中の水分率が65%である点を除いて、上記(i)と同じ処理を行って、スラリーを生成した場合の、触媒カーボンへのアイオノマの吸着率、(iii)アイオノマIaに代えてアイオノマIbを使用した点を除いて、上記(ii)と同じ処理を行って、スラリーを生成した場合の、触媒カーボンへのアイオノマの吸着率、を左から順に示す。
なお、アイオノマの吸着率は以下の処理によって得られる。まず、アイオノマと触媒担持カーボンと溶媒中で混合して得たスラリー(上記(i)〜(iii))を、吸着したアイオノマを伴った触媒担持カーボンと、それ以外の成分とに分離する。具体的には、所定の穴径を有するフィルタを使用してスラリーを濾過することにより、吸着したアイオノマを伴った触媒担持カーボンを、スラリーから分離する。
その後、得られた濾液について示差熱分析(differential thermal analysis (DTA))とともに熱重量測定(thermogravimetry (TG))を行う。具体的には、濾液を基準物質とともに以下のように加熱する。(a)毎分20度Cで240度Cまで昇温させ、(b)40分間、240度Cを維持する。その後、(c)さらに、毎分20度Cで600度Cまで昇温させ、(d)40分間、600度Cを維持する。工程(a)〜(d)については、窒素ガスを流通させつつ、処理を行う。その後、(e)さらに、毎分20度Cで900度Cまで昇温させる。工程(e)では、空気を流通させつつ、処理を行う。
上記工程(b)においては、対象物(濾液)中の溶媒が蒸発する。上記工程(d)においては、対象物中のアイオノマが熱分解する。そして、上記工程(e)においては、対象物中のアイオノマが燃焼する。なお、各工程において生じている現象は、示差熱分析に基づいて特定することができる。たとえば、工程(b)においては、DTAの値(対象物と基準物質の温度差)は略一定であるのに対して、工程(c)においては、DTAの値はなだらかな山を示す。工程(d)においては、DTAの値は微減少するのに対して、工程(d)と工程(e)の境界においてピークを生じる。
工程(b)の後(溶媒が蒸発した後)の重量の減少分が、触媒担持カーボンに吸着せず、濾液中に残ったアイオノマの量を示す。スラリーを生成した際の、アイオノマを含む各成分の量と、熱重量測定によって得られた濾液中に残ったアイオノマの量と、から、アイオノマの触媒担持カーボンへの吸着率を計算することができる。
図3から明らかなように、溶媒中の水分率が同じ(65%)である場合には、高酸素透過性アイオノマIaは、より酸素透過性が低いアイオノマIbに比べて、触媒担持カーボンへの吸着率が低いことがわかる。このため、高酸素透過性アイオノマIaにおいては、混合処理(図1のステップS3参照)後も触媒担持カーボンに吸着せず、溶媒中に浮遊しているアイオノマの量が多い。その結果、加圧ろ過処理(図1のステップS4参照)において、溶媒中に浮遊しているアイオノマに起因して、大量の泡が発生しうる。これは、溶媒中に浮遊しているアイオノマが、界面活性剤として機能するためである。
一方、図3より、高酸素透過性アイオノマIaを使用する場合にも、溶媒中の水分率を高い値(85%)に設定することにより、触媒担持カーボンへのアイオノマの吸着率を、より酸素透過性が低いアイオノマIbと同程度にできることがわかる。ただし、溶媒中の水分率を高い値に設定すると、以下のような問題が生じ得る。
図1の処理後の触媒インクを電解質膜に塗布して触媒層を形成する際、触媒層の水分が所定量になるまで水分を蒸発させる必要がある。溶媒中の水分率を高い値に設定すると、溶媒中の水分率をより低い値に設定した場合に比べて、触媒層の水分が所定量になるまで水分を蒸発させるのに、長い時間を要する。その結果、製造コストが増大する。よって、触媒インク中の水分を増加させる方法は、加圧ろ過処理における泡の発生を抑制する方法として、優れているとはいえない。
(2)触媒インクへのアルコールの添加:
一方、溶媒中の水分率を低く維持しつつ、触媒インクの溶媒にアルコールを添加して、触媒インクの表面張力を低下させ、気泡の発生を抑制する対応が考えられる。アルコールには、液体に添加された場合に、その液体の表面張力を低下させる作用があるためである。
しかし、たとえば、溶媒に使用するアルコールとして、沸点が高い(たとえば、100℃以上)アルコール(たとえば、ヘキサノール〜n−オクタノール)を使用する場合は、以下のような問題が生じる。すなわち、触媒インクを電解質膜に塗布して触媒層を形成する際、触媒層中のアルコールが所定量以下になるまでアルコールを蒸発させる必要がある。このため、アルコールを添加しない場合に比べて、触媒層中のアルコールが所定量以下になるまでアルコールを蒸発させるのに時間を要する。その結果、製造コストが増大する。また、触媒インクの乾燥時間を短くするために、高温環境下で乾燥処理を行うと、触媒インク中に含まれるアルコールが発火する可能性がある。このため、乾燥のための処理温度を高く設定することも難しい。
図4は、ろ過処理(図1のステップS46参照)を、触媒インク自体への様々な量のアルコールの添加、および複数種類のアイオノマの組み合わせにおいて実施した場合に発生すると想定される、第1のタンク10内の触媒インクIctの泡の数を示すグラフである。ただし、加圧ガスである窒素ガスへのアルコール水溶液の添加(図1のステップS44参照)は行っていない。なお、いずれの場合も、溶媒中の水分率は、65%とした(図3参照)。
触媒インクIct1〜Ict4は、本実施形態で使用される高酸素透過性アイオノマIaを使用した触媒インク(図1のステップS3参照)の例である。触媒インクIct1は、アルコールを添加していない触媒インクの例である。触媒インクIct2は、0.03%分の1−ヘキサノールを添加した触媒インクの例である。触媒インクIct3は、0.3%分の1−ヘキサノールを添加した触媒インクの例である。触媒インクIct4は、1.0%分の1−ヘキサノールを添加した触媒インクの例である。なお、1−ヘキサノールの添加割合は、触媒インクIct中の固形分に対する重量%である。
一方、触媒インクIctcは、上記の酸素透過性が低いアイオノマIbを使用した触媒インク(図1のステップS3参照)の例である。触媒インクIctcは、アルコールを添加していない触媒インクの例である。
そのように生成された各触媒インクについて、図1のステップS4のろ過処理を想定した処理を行った場合に発生した泡の数を測定した。より具体的には、第1のタンク10に相当し上方に位置する第1の容器と、第2のタンク20に相当し下方に位置する第2の容器とを、流路で結んだ装置を用意する(図2参照)。流路は、それぞれ透明な向かい合う2枚の平板(具体的にはガラス板)によって画定された空間として構成されている。2枚の平板によって画定された空間の両側部と、その空間の上下端部のうち第1の容器内または第2の容器内に接続されている部分以外の部分は、封止されている。第1の容器に触媒インクを投入し、第1の容器内を加圧する。その結果、第1の容器内の触媒インクは、透明な2枚の平板の間の流路を通って、第2の容器内に移動する。その際、2枚の透明な平板の一方の側から光を当て、他方の側で流路内の触媒インクの写真を撮影する。そして、写真に写った泡の数を計測する。
そのような方法で測定された泡の数は、触媒インクIct1〜Ict4について、それぞれ、8881個/cc、2775個/cc、740個/cc、93個/ccであった。
また、触媒インクIctcにおいては、上記の測定における泡の発生数は、7個/ccであった。
図4から明らかなように、触媒インクにアルコールを添加しない場合には、高酸素透過性アイオノマIaを使用した触媒インクIct1は、より酸素透過性が低いアイオノマIbを使用した触媒インクIctcに比べて、1000倍以上の泡が発生することが分かる。そして、触媒インクに添加するアルコールの量を増やすと、それに応じて発生する泡の数が減ることが分かる。しかし、触媒インクIct中の固形分に対する重量%が1.0である1−ヘキサノールを添加した触媒インクIct4でも、泡の発生量は、アルコールを添加しないアイオノマIbを使用した触媒インクIctcの例の13倍〜14倍ある。
よって、触媒インクの溶媒に沸点が高いアルコールを添加して、気泡の発生を抑制する対応は、乾燥工程に時間がかかり、製造コストが増大する一方で、泡の発生を抑える効果は十分ではないことが分かる。
一方、加圧ろ過処理における泡の発生を抑制するために、溶媒に使用するアルコールとして、沸点が低い(たとえば、100℃未満)アルコールを使用する対応も考えられる。ただし、この場合、酸素透過性が低いアイオノマIbを使用した触媒インクIctcと同程度に、ろ過工程における泡の発生を抑制する効果を得るためには、溶媒中のアルコールの比率を35%〜50%に設定する必要がある。
しかし、一般に、アルコールの比率が35%〜50%の溶媒中では、高酸素透過性アイオノマはほとんど触媒担持カーボンに吸着しない(図1のステップS3参照)。このため、触媒インクを生成した後、凝集が発生してしまう。そのような触媒インクを使用して電解質膜状に触媒層を形成すると、塗面の性状が著しく悪化する。
よって、触媒インクにアルコールを添加する方法は、加圧ろ過処理における泡の発生を抑制する方法として、優れているとはいえない。
(3)触媒インクへの消泡剤の添加:
さらに、触媒インクに消泡剤を添加することによって、泡の発生を抑制する対応も考えられる。しかし、Si系の消泡剤を触媒インクに添加した場合には、触媒インクを電解質膜に塗布した場合に、電解質膜の脆化を引き起こす可能性がある。また、他の消泡剤は、消泡剤の効果が有効となる程度に触媒インクに添加すると、白金触媒の被毒や、電解質膜におけるプロトン電導性の低下を招く。
よって、触媒インクに消泡剤を添加する方法は、加圧ろ過処理における泡の発生を抑制する方法として、優れているとはいえない。
A3.本実施形態の効果:
図5は、ろ過処理における加圧流体である窒素ガスへのアルコールの添加(図1のステップS44参照)を、複数種類の割合で実施して、ろ過処理を行った場合に発生すると想定される、第1のタンク10内の触媒インクIctの泡の数を示すグラフである。なお、いずれの場合も、溶媒中の水分率は、65%とした(図3参照)。
触媒インクとしては、高酸素透過性アイオノマIaを使用し、アルコールを添加していない触媒インクIct1(図4参照)を使用した。そして、窒素ガスへの1−ヘキサノール添加割合を、それぞれ0、0.03%、0.3%、1.0%として、発生する泡の数を測定した。なお、1−ヘキサノールの添加割合は、触媒インクIct1中の固形分に対する重量%である。
窒素ガスへのアルコールの添加を複数種類の割合で実施する処理は、より具体的には、以下のように行った。1−ヘキサノールの添加割合が0の例においては、図1のステップS44の処理において、アルコールの供給は行われない。1−ヘキサノールの添加割合が0.03%の例においては、アルコールの供給は、0.01g/秒の速度で15秒間行われる。1−ヘキサノールの添加割合が0.3%の例においては、アルコールの供給は、0.1g/秒の速度で15秒間行われる。1−ヘキサノールの添加割合が1.0%の例においては、アルコールの供給は、0.33g/秒の速度で15秒間行われる。他の処理は、図1を用いて説明した上述の処理と同じである。
そのように生成された各触媒インクについて、上記A2.(2)で説明したろ過処理を想定した処理を行った場合に発生した泡の数を測定した。測定された泡の数は、窒素ガスへの1−ヘキサノール添加割合が0、0.03%、0.3%、1.0%である触媒インクについて、それぞれ、8881個(図4のIct1参照)、652個/cc、70個/cc、35個/ccであった。
図5および図4より、1−ヘキサノールを加圧流体である窒素ガスに加えた場合(図5)は、同量の1−ヘキサノールを触媒インク自体に加えた場合(図4)と比較して、いずれも大幅に泡の発生が抑えられていることが分かる。たとえば、1−ヘキサノール添加割合が0.03%の場合は、泡の発生量は、652個/2775個=23.5%に減少している。1−ヘキサノール添加割合が0.3%の場合は、泡の発生量は、70個/740個=9.5%に減少している。1−ヘキサノール添加割合が0.03%の場合は、泡の発生量は、35個/93個=37.6%に減少している。
また、0.3%の1−ヘキサノールを触媒インク自体に加えた場合、740個の泡が発生するのに対して(図4のIct3参照)、1/10の0.03%の1−ヘキサノールを窒素ガスに加えた場合の泡の発生量は、同程度の652個である(図5の0.03%のグラフ参照)。1.0%の1−ヘキサノールを触媒インク自体に加えた場合、93個の泡が発生するのに対して(図4のIct4参照)、0.3%の1−ヘキサノールを窒素ガスに加えた場合の泡の発生量は、同程度の(より少ない)70個である(図5の0.3%のグラフ参照)。すなわち、同程度に泡の発生を抑制するために必要なアルコール量は、アルコールを加圧ガスに加えた場合は、アルコールを触媒インクに加えた場合の1/10程度である。
このように、窒素ガスへのアルコールの添加を行った場合には、触媒インクへのアルコールの添加を行った場合に比べて、少量で大きな効果が得られることが分かる。これは、以下のような原理によるものと考えられる。
図6は、触媒インクに消泡剤としてのアルコールを添加した場合の泡の近傍の状態を示した概念図である。触媒インクに消泡剤を添加した場合には、消泡剤Afは、触媒インクIct中の様々な場所に分散して存在する。このため、触媒インクIctおよび界面活性剤としてのアイオノマSftに囲まれている泡Bbの一部分の近傍には、消泡剤Afが存在するが、泡Bbの他の部分については、近傍に消泡剤Afが存在しない。このため、泡Bbが発生した後、泡Bbの近傍に存在する消泡剤Afによって、泡が破裂するが(図6の矢印Ad参照)、泡Bbの近傍に存在しない消泡剤Afは、泡の抑制や消去には貢献しない(図4も参照)。
図7は、加圧ガスに消泡剤としてのアルコールを添加した場合の泡の近傍の状態を示した概念図である。加圧ガスに消泡剤を添加した場合には、消泡剤Afは、泡Bbの内部を構成するガス自体に含まれることとなる。このため、ガス中の消泡剤Afは、泡Bbの外縁を構成するガスと触媒インクIctの界面に容易に到達し、界面の触媒インクIct内に留まる。その結果、泡Bbの外縁に効果的に消泡剤Afが集まり、泡Bbは発生した直後に破裂して消えることとなる(図7の矢印Ad参照)。
加圧ガスに消泡剤としてのアルコールを添加した場合に、触媒インクに消泡剤としてのアルコールを添加した場合よりも、泡の発生を抑制できるのは(図4および図5も参照)、以上のような原理によるものと考えられる。その結果、加圧ガスに少量のアルコールを添加するだけで十分に泡の発生を抑制することができ、触媒層の乾燥工程に要する時間を短縮することができる。
なお、加圧ガスに消泡剤としてのアルコールを添加することにより、加圧ガスにアルコールを添加しない場合に比べて、メッシュフィルタ42が乾燥し、目詰まりを起こす可能性を低減することができる。
なお、本実施形態のろ過後の触媒インクIcfが、[課題を解決するための手段]における「燃料電池の触媒層を形成するためのインク組成物」に対応する。2流体ノズル62を介して第1のタンク10内に射出された窒素ガスが、「アルコールと混合されたガス」に相当する。ろ過前の触媒インクIctが、「インク組成物の液状の中間品」に相当する。図1のステップS46が「インク組成物の液状の中間品をろ過する工程」に相当する。
B.第2実施形態:
第2実施形態は、加圧ガスにアルコールを含む消泡剤を添加する加湿工程(図1のステップS44)の処理と、そのためのアルコール添加装置(図2の50参照)の構成が第1実施形態とは異なる。第2実施形態の他の点は、第1実施形態と同じである。
図8は、図1のステップS4で使用されるろ過装置1bの概略構成を示す説明図である。ろ過装置1bは、アルコール添加装置50に代えてアルコール添加装置58を備える。そして、ろ過装置1bは、第1のタンク10に2流体ノズル62を備えない。ろ過装置1bの他の点は、ろ過装置1と同じである。
アルコール添加装置58はバブラーである。アルコール添加装置58は、浴槽内に1−ヘキサノールを50重量%含む水溶液を保持している。アルコール添加装置58は、配管34の途中に設けられている。配管34によって配送される窒素ガスは、アルコール添加装置58内の1−ヘキサノール水溶液内を通って、第1のタンク10に供給される。アルコール添加装置58内の1−ヘキサノール水溶液内を通る際に、窒素ガスには、アルコールと水分が添加される。アルコール添加装置58は、ろ過前の触媒インクIctの固形分に対するアルコールの添加割合は、0.3重量%となるように調整されている。
第2実施形態に係る触媒インクの製造方法においては、加圧ガスにアルコールを含む消泡剤を添加する加湿工程(図1のステップS44)は、以上のように実行される。
このような態様としても、第1実施形態と同様に、ステップS46におけるろ過処理において泡が発生する事態を抑制することができる。
C.変形例:
C1.変形例1:
上記実施形態においては、触媒インクを生成する際に、基本骨格として環状構造を有する環式化合物を含むことにより、高い酸素透過性を有する高酸素透過性アイオノマが使用される。しかし、触媒インクを生成する際に使用されるアイオノマは、高い酸素透過性を有さない、他の樹脂とすることもできる。たとえば、触媒インクを生成する際に使用されるアイオノマとして、フッ素系樹脂であるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーや、非フッ素系樹脂であるのBPSH(ポリアリーレンエーテルスルホン酸共重合体)などを有するプロトン伝導性のイオン交換樹脂などを用いることができる。
C2.変形例2:
上記実施形態においては、メッシュフィルタ42のの孔径は、10μmである。しかし、フィルタのの孔径は、他の値とすることができる。フィルタの孔径は、触媒担持カーボンの径より大きい所定の値とすることができる。たとえば、使用される触媒担持カーボンの径が、最大3μmである場合は、フィルタの孔径は、3μm以上かつ30μm以下とすることができ、好ましくは8μm以上12μm以下とすることができる。
C3.変形例3:
上記実施形態においては、フィルタとして金属メッシュフィルタ42を用いてろ過を行っている。しかし、ろ過は、他のフィルタを使用して行うこともできる。ろ過は、たとえば、PP、PTFE、PFA等の耐薬品性に優れたメッシュフィルタを用いて行ってもよい。また、たとえば、メッシュフィルタ以外にもメンブレンフィルタ、焼結フィルタ等を用いてろ過を行うことも可能である。
C4.変形例4:
上記実施形態においては、加圧ガスに添加されるアルコール水溶液は、1−ヘキサノールを50重量%含むアルコール水溶液である。しかし、加圧ガスに添加されるアルコール水溶液は、他のアルコールおよび他の濃度とすることができる。ただし、アルコールは、液体に添加された際にその液体の表面張力を低下させ、泡の発生を抑えることができるアルコールであることが好ましく、より具体的には、6価以下の低級アルコールであることが好ましい。そして、アルコール水溶液中のアルコールの濃度は、50%以下であることが好ましい。
C5.変形例5:
上記実施形態においては、加圧ガスへのアルコールの添加は、2流体ノズルやバブラーによって行われる。しかし、加圧ガスへのアルコールの添加は、加圧ガスをアルコールを含む液面状を通過させる方法など、他の方法で行うこともできる。
C6.変形例6:
上記実施形態においては、触媒インクを加圧するためのガスとして、窒素ガスが使用される。しかし、触媒インクを加圧するためのガスとして、空気など、他のガスを使用することもできる。ただし、触媒インクを加圧するためのガスは、触媒インクおよび使用される消泡剤と反応しないものであることが好ましく、いわゆる不活性ガスであることが好ましい。
C7.変形例7:
上記実施形態においては、ステップS44〜S46の広義のろ過の処理は、触媒インク2500g単位で、バッチ処理で行われる。しかし、触媒インクを加圧しつつろ過を行うことができる場合には、ろ過の処理は、連続処理で実行することもできる。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
1,1b…過装置
10…第1のタンク
14…開口
20…第2のタンク
22…第2のタンクの開口
30…圧力制御装置
32…ガスボンベ
34…配管
36…減圧装置
38…圧力計
40…フィルタユニット
41…フィルタハウジング
42…メッシュフィルタ
43,44…フィルタハウジングの開口
48…フィルタ支持体
50,58…アルコール添加装置
52…アルコールタンク
54…配管
56…ポンプ
62…2流体ノズル
Ad…触媒インクの移動を示す矢印
Af…消泡剤
Aict…ろ過前の触媒インクIctの投入を示す矢印
Aicf…ろ過後の触媒インクIcfの排出を示す矢印
Bb…泡
Ia…高酸素透過性アイオノマ
Ib…比較例のアイオノマ
Icf…ろ過後の触媒インク
Ict…ろ過前の触媒インク
Ict1〜Ict4…高酸素透過性アイオノマIaを使用した触媒インク
Ictc…比較例の触媒インク
Sft…アイオノマ

Claims (1)

  1. 燃料電池の触媒層を形成するためのインク組成物の製造方法であって、
    アルコールと混合されたガスを接触させ前記ガスを介して加圧しつつ、インク組成物の液状の中間品をろ過する工程を含む、インク組成物の製造方法。
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