JP2017201895A - ゼラチン共存セルロース三次元構造体 - Google Patents

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敏樹 澤田
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秀一 三橋
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季之 高橋
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Takeshi Nishizawa
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Abstract

【課題】新規な特性を有するセルロース構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)を用いたセルロースの合成においてゼラチンを用いることで、新規な特性を有するセルロース三次元構造体を合成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば人工的に合成したゼラチン共存セルロース三次元構造体並びにその製造方法及び利用に関する。
セルロースは、地球上で最も豊富に存在する有機高分子である。セルロースは、その資源性に加え、高いサステイナビリティをもつことから、注目されているマテリアル素材である。機械的処理や化学的処理によって天然物から得られるセルロースは、繊維状の形態であることが知られており、その構造や物性に応じた利用が展開されている。また、天然資源を酸処理することによって得られるセルロースナノ結晶(CNC)は、新たなセルロース素材としての利用が期待されている。CNCは、セルロース鎖が平行に配列したI型結晶構造を有し、高いアスペクト比や優れた機械的強度、熱的安定性等から複合材料のフィラーとして注目されている。
一方、結晶性のセルロースが人工的にも合成できることが知られている(人工合成で得られるセルロースは一般にオリゴマーであることから、このようなセルロースはセロデキストリンと呼ばれる。ここでは、区別せずにすべてセルロースと呼ぶ)。下記の反応は、セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)の逆反応を利用したセルロースの酵素合成を示す。
Figure 2017201895
上記反応に示すように、加リン酸分解酵素であるCDPの逆反応を利用した酵素合成により、長さ数μm、幅数百nm、厚さ4.5nmのナノシート構造を有するセルロース結晶(セルロースナノシート;CNS)が得られる(非特許文献1)。当該合成においては、プライマーとして働くD-(+)-グルコースに対して、α-D-グルコース一リン酸(αG1P)がモノマーとして逐次的に重合される。CDPが本来加水分解する基質に対する認識能と比較し、セルロース合成に用いられるD-(+)-グルコースは認識されにくいものの、結果として首尾良く重合反応が進む。また、CNSは、天然由来のI型結晶とは異なり、より安定な逆平行鎖のII型結晶構造を有する。そのため、CNS内でセルロース鎖は厚さ方向に逆平行に配列しており、結果としてセルロースの還元末端及び非還元末端がシート表面に規則的に露出している。また、CNSは純水に安定に分散するが、NaOH水溶液に溶解する性質を有する。
さらに、本発明者の一部は、水溶性高分子存在下で同様にセルロースを合成すると、その二次元結晶がさらに成長し、ナノリボン状のネットワーク構造を形成することを見出した(国際出願番号PCT/JP2016/057253)。
Hiraishi, M. et al., Carbohydr. Res., 2009年, Vol. 344, pp. 2468-2473
上述のCDPを用いたセルロースの合成において、多様な高分子を添加することで、セルロース分子間の相互作用が変化し、新規な特性を有するセルロース構造体を合成できると考えられる。
そこで、本発明は、これらの実情に鑑み、CDPを用いたセルロースの合成において、温度に応答してゾル-ゲル転移するゼラチンを利用し、新規な特性を有するセルロース構造体を合成することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、CDPを用いたセルロースの合成においてゼラチンを添加することで、ゼラチンとセルロースから成る新規な特性を有するセルロース三次元構造体を合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)次式(I):
Figure 2017201895
(式中、nは、4〜11である)
で示される化合物とゼラチンとを構成成分として含有するゼラチン共存セルロース三次元構造体。
(2)(1)記載のゼラチン共存セルロース三次元構造体を含む足場材。
(3)αG1Pと、プライマーとしてD-(+)-グルコースとを、ゼラチン存在下でCDPと反応させる工程を含む、次式(I):
Figure 2017201895
(式中、nは、4〜11である)
で示される化合物とゼラチンとを構成成分として含有するゼラチン共存セルロース三次元構造体の製造方法。
本発明によれば、足場材などの医療分野、およびフィルムなどの環境・エネルギー分野において有用なゼラチン共存セルロース三次元構造体を提供することができる。
実施例におけるゼラチン共存セルロース三次元構造体を構成するセルロースの1H NMRスペクトルを示す。ゼラチン濃度は8% (w/v)として調製したサンプルを測定した結果を示した。左には各サンプルにおけるCDP濃度を示した(CNSはCDP濃度0.2 U/mL)。 実施例におけるゼラチン共存セルロース三次元構造体を構成するセルロースのMALDI-TOF-MSスペクトルを示す。ゼラチン濃度が8% (w/v)、CDP濃度が0.2 U/mLとして調製したサンプルを測定した結果を示した。数字は検出されたセルロースオリゴマーの重合度を示す。 CNS及び実施例におけるゼラチン共存セルロース三次元構造体におけるαG1Pの転化率を示す。下に各サンプルにおけるCDP濃度を示した。 実施例におけるゼラチン共存セルロース三次元構造体を構成するセルロースのWAXDチャートを示す。ゼラチン濃度が8% (w/v)、CDP濃度が0.2 U/mLとして調製したサンプルを測定した結果を示す。 実施例におけるゼラチン共存セルロース三次元構造体を構成するセルロースのIRスペクトルを示す。ゼラチン濃度が8%(w/v)、CDP濃度が0.2 U/mLとして調製したサンプルを測定した結果を示した。 実施例における精製によりゼラチンを除去したセルロース三次元構造体のSEM像を示す。(a) 10000倍観察像、(b) 20000倍観察像。ゼラチン濃度が8% (w/v)、CDP濃度が0.2 U/mLとして調製したサンプルを観察した結果を示した。 実施例におけるゼラチン共存セルロース三次元構造体、精製によりゼラチンを除去したセルロース三次元構造体及びゼラチン構造体の外観を示す写真である。 実施例におけるゼラチン共存セルロース三次元構造体、精製によりゼラチンを除去したセルロース三次元構造体及びゼラチン構造体の圧縮試験結果を示す。
1.本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、次式(I):
Figure 2017201895
(式中、nは、4〜11である)
で示される化合物とゼラチンとを構成成分として含有するものである。天然由来のセルロース鎖が平行に配列したI型セルロース構造とは異なり、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、より安定な逆平行鎖のII型セルロース構造を有する。
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、セルロースから成る構造体とゼラチンから成る構造体の強度を足し合わせたよりもより高い機械的強度を有する。
また、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は複合材料であり、温度変化によって強度をコントロールすることができる。さらに、ゼラチンが溶けてしまわない温度範囲(例えば、0℃より高く35℃以下)であれば、強度のコントロールを可逆的に行うことができる。
式(I)の化合物の重合度は、例えば6以上、7以上、好ましくは8以上(すなわち、式(I)の化合物において、nが4以上、5以上、好ましくは6以上)であり、且つ13以下、12以下、好ましくは11以下(すなわち、式(I)の化合物において、nが11以下、10以下、好ましくは9以下)である。
合成の際のゼラチンの共存により、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、ゼラチンを含有する。ゼラチンとしては、例えばブタ皮膚由来酸処理ゼラチン(Sigma-Aldrich)等が挙げられる。
また、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体の製造後、60℃程度の加熱によりゼラチンを溶かして除去することで、式(I)の化合物単独から構成されるセルロース三次元構造体とすることができる。
さらに、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体の製造後、セルラーゼにより当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体を分解し、セルロースだけを除去することができる。
2.本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体の製造方法
以上に説明した本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、以下に示される反応に準じて製造することができる。
Figure 2017201895
具体的には、CDPの逆反応を利用した酵素合成により、αG1PとプライマーとしてD-(+)-グルコースとを、ゼラチン存在下でCDPと反応させることにより、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体を製造することができる。プライマーとして働くD-(+)-グルコースに対して、αG1Pがモノマーとして逐次的に重合される。
αG1P及びD-(+)-グルコースは、市販品として入手できるものであってよい。
一方、CDPは、例えばM. Krishnareddyら, J. Appl. Glycosci., 2002年, 49, 1-8に記載の方法に準じて調製することができる。具体的には、M. Krishnareddyら, J. Appl. Glycosci., 2002年, 49, 1-8によれば、Clostridium thermocellum YM4株由来のCDPを調製することができる。
また、CDPの酵素量は、例えばαG1PとD-(+)-セロビオース及びCDPをインキュベーションし、CDPにより生成されるリン酸を定量し、1分間当たり1μmolのリン酸を遊離する酵素量を1Uとして求めることができる。
例えば、10〜1000mM(好ましくは100〜300mM)のαG1P、10〜200mM(好ましくは50〜60mM)のD-(+)-グルコース、2〜20%(w/v)(好ましくは8%(w/v))のゼラチン溶液、及び0.01〜1.5U/mL(好ましくは0.05〜0.50U/mL)のCDPを、100〜1000mM(好ましくは250〜750mM)の2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.0〜8.0(好ましくはpH7.5))中で混合し、10〜80℃(好ましくは、20〜60℃)で0.5〜30日間(好ましくは、1〜14日間)インキュベートし、反応させる。さらに、反応物を0〜40℃(好ましくは4〜25℃)で数時間から1日間インキュベートすることで、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体を製造することができる。
また、製造されたゼラチン共存セルロース三次元構造体から製造時に使用したゼラチンを除去することができる。ゼラチンの除去は、例えばゼラチン共存セルロース三次元構造体を60℃程度の加熱に供し、ゼラチンを溶かすことにより行うことができる。
3.本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体の用途
3−1.医療分野
3−1−1.細胞培養足場材
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、有意に高い強度を有することから任意の足場材を形成でき、例えば医療用の細胞培養を行った場合、人体に埋め込む際の形状に予め培養段階で作製することができる。
具体的に、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、例えばその表面に動物細胞を生育させる足場材として使用することができる。
生育させる細胞としては、動物由来であれば良く、例えば哺乳類、爬虫類、又は昆虫由来の細胞が挙げられる。また、心臓、肝臓、脾臓、表皮等の臓器や組織から分離した初代培養細胞でも、継代培養した株化細胞、腫瘍細胞でも良い。さらに、間葉系幹細胞(MSC)等の体性幹細胞、人工多能性幹細胞、CHO細胞、BHK細胞、Vero細胞等の細胞株(Cell Line)等でも良い。
細胞培養に用いる培地としては、平衡塩類溶液にアミノ酸やビタミン等の低分子化合物を加えた基礎培地が挙げられる。さらに、血清或いは血清・組織抽出物、加水分解物、成長因子、ホルモン、搬送体タンパク質、脂質、ポリアミン酸、微量元素、ビタミン、増粘剤、界面活性剤、細胞接着因子等を添加した培地を使用することもできる。
当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体を、薄膜状に成形して、薄膜の表面で細胞を培養できる。栄養成分を薄膜底面からも供給することで培養効率を高めることができる。
当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体上に単層状に生育した細胞は、細胞剥離剤にて剥離し回収することができる。細胞剥離剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の2価カチオン除去のためのキレート剤、細胞・基質間、細胞・細胞間接着タンパク質のためのトリプシン等のプロテアーゼを用いることもできるし、セルラーゼにより当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体の一部又は全部を分解し、可溶化することで細胞を剥離することもできる。プロテアーゼを用いない後者の方法では、細胞・細胞間の接着は剥離することなく、また細胞への影響も無いことから、活性の高い懸濁細胞又は細胞シートを得ることができる。
得られた細胞シートは、同様に得られた細胞シートと積層するか、或いは細胞シートの表面を細胞間接着タンパク質等でコートし、さらに細胞を培養することで、三次元的に厚みを持った細胞塊を得ることができる。
3−1−2.高濃度細胞培養用足場材
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、その内部に動物細胞を生育させる足場材として使用することができる。当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体を、細胞が入ることができる大きさ程度又はそれ以上の空隙を持つ構造体に成形し、構造体の中で細胞を培養することができる。
生育させる細胞は、上記の第3−1−1節に記載するように、動物由来であればどのような細胞でも良い。また、培養に用いる培地は、上記の第3−1−1節に記載するように、基礎培地、血清添加培地又はその他成分を添加した培地でも良い。
当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体中で細胞を培養することで、浮遊懸濁培養の際に起こる撹拌のせん断応力による細胞の傷害が起こらず、培養液当たりの細胞の高濃度化が可能となる。
また、抗体やタンパク質等のバイオ医薬品の生成能を付与したrCHO細胞等を当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体で高濃度に培養すれば、バッチ当たりの抗体やタンパク質等の生産量が増大し、バイオ医薬品の製造コスト低減が可能である。さらに、目的生産物を回収後、新しい培地を添加し、再度培養を行うか、或いは連続的に目的生産物を含む培地を回収し、新しい培地を追加添加することで、バッチ連続式又は連続式に生産物を得ることができる。
さらに、高濃度培養した細胞は、足場材として利用したゼラチン共存セルロース三次元構造体をセルラーゼ処理に供することで、プロテアーゼ処理の際に起こるような細胞への傷害を起こさずに細胞を遊離させ、回収することができる。iPS細胞やES細胞等の全能性幹細胞を当該手法で大量に培養し、再生医療や創薬産業のために必要な細胞を供給することができる。
3−1−3.三次元構造体足場材
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、その内部に動物細胞を生育させる足場材として使用することができる。当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体を、細胞が入ることができる大きさ程度又はそれ以上の空隙を持つ構造体に成形し、構造体の中で細胞を培養することができる。
生育させる細胞は、上記の第3−1−1節に記載するように、動物由来であればどのような細胞でも良い。培養に用いる培地は、上記の第3−1−1節に記載するように、基礎培地、血清添加培地又はその他成分を添加した培地でも良い。
当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体を、細胞培養の前、途中又は後に、目的組織に合わせた形状に成形し、生体組織又は臓器の再生のために用いることができる。細胞培養の前に成形する場合、当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体の重合反応時に目的の形状の型枠で反応させることもできるし、成形後に切断、積層、編み込み等で目的の形状にすることができる。
当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体は、セルラーゼ処理により、細胞へ影響することなく分解可溶化することができる。臓器への移植する前に、セルラーゼ処理に供し、部分的に、又は全部を分解可溶化しても良いし、セルラーゼ処理に供することなく足場材と共に移植しても良い。
さらに、細胞を生育させた三次元構造体は、組織又は臓器の形状や機能を生体外(ex vivo)で再現したものとして、癌転移の機構解明、制癌剤の薬効評価等の基礎医学研究用、或いは、近年動物試験が禁止された化粧品の皮膚等の生体組織への影響を検討するための素材として利用することができる。
3−1−4.骨欠損部位への移植材料
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、動物の骨欠損部位への移植材料、歯周組織の再生誘導材料としても使用することができる。当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体は、容易に望む形に成形加工することができ、高圧蒸気による滅菌も可能である。当該ゼラチン共存セルロース三次元構造体は、移植する前に細胞を生着させても良いし、そのまま移植しても良い。
3−2.環境・エネルギー分野
下記に説明するように、本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、フィルム(例えば、微多孔性のフィルム(用途例:吸着材、バイオセンサー等)、緻密なフィルム(用途例:バリアフィルム等))として環境・エネルギー分野において使用することができる。
3−2−1.吸着材、濃縮(生分解性)
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、シリカ、アルミナ、ゼオライト、プルシアンブルー等の吸着材微粒子を分散、担持させることにより、アンモニア、アルデヒド等の有毒ガス、放射性廃棄物等の有害物質、海水中の有価金属等を吸着回収することが可能である。
また、該ゼラチン共存セルロース三次元構造体は、分解酵素を用いて簡単に分解可能であることから、吸着回収した物質を必要に応じて簡単に濃縮することができるといった特長も有する。
3−2−2.バイオセンサー
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、酵素や抗体を担持することによってバイオセンサーとして使用することができる。例えば、グルコースオキシダーゼ等の酵素を担持すればグルコースセンサーとして使用することが可能である。
3−2−3.ガスバリアシート(構造体も含む)
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体に無機ナノ材料を緻密に担持させることにより、例えば水蒸気等のガスを遮断するガスバリアシートとすることができる。無機ナノ材料としては、シリカ等のナノ粒子、又はモンモリロナイト等のクレイが挙げられる。
3−2−4.分離精製の基材(カラムの充填剤、電気泳動)
本発明に係るゼラチン共存セルロース三次元構造体は、ナノサイズの空間を有しているため、該空間を利用して分離精製カラムや電気泳動の充填剤として用いることが可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔ゼラチン共存セルロース三次元構造体の合成〕
1.実験方法
1−1.試薬
LB-BROTH LENNOX及びLB-AGAR LENNOXはフナコシより購入した。
グリセロール、カナマイシン硫酸塩、イソプロピル-β-D(-)-チオガラクトピラノシド(Isopropyl-β-D(-)-thiogalactopyranoside: IPTG)、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(N,N,N',N'-Tetramethyl ethylenediamine: TEMED)、ジチオトレイトール(Dithiothreitol: DTT)、1-ブタノール、αG1P二ナトリウム・n水和物、40%重水酸化ナトリウム重水溶液は和光純薬より購入した。
ニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)アガロースゲルはQIAGENより購入した。
Protein Molecular Weight Marker(Broad)はタカラバイオより購入した。
アクリルアミド、N-N'-メチレンビスアクリルアミド、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate: SDS)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate: APS)、ブタ皮膚由来酸処理ゼラチン、重水、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-Dihydroxybenxonic acid: DHBA)、ProteoMassTMBradykinin fragment 1-7 MALDI-MSスタンダード(Bradykinin)、ProteoMassTM P14R MALDI-MSスタンダード(P14R)、ProteoMassTMACTH Fragment 18-39 MALDI-MSスタンダード(ACTH)、トリフルオロ酢酸(TFA)、アセトニトリルはSigma-Aldrichより購入した。
カーボンテープ、ドータイトは日新EMより購入した。
その他の試薬は、特に表記しない限りナカライテスクより購入し、特級以上の試薬を使用した。
超純水は、Milli-Qシステム(Milli-Q Advantage A-10, Merck Millipore)で精製された水を使用した。
純水はTANK 60 Lite PE(Merck Millipore)で精製された水を使用した。
1−2.CDPの調製及び酵素活性評価
CDPは、M. Krishnareddyら, J. Appl. Glycosci., 2002年, 49, 1-8に記載の方法と同様の方法により調製した。
1−2−1.試薬の調製
(1) 滅菌精製水
500 mL広口メディウム瓶に超純水500 mLを採取してオートクレーブ(121℃、20 min、BS-245、TOMY)して室温で保存した。
(2) 50 mg/mLカナマイシンストック溶液
カナマイシン硫酸塩1.5 gを滅菌精製水に溶解させ、30 mLにメスアップした。調製した溶液をクリーンベンチ内でポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene difluoride: PVDF)製0.22 μmフィルターで濾過滅菌し、1.7 mLチューブに1 mLずつ分注して-20℃で保存した。
(3) 10 mM IPTGストック溶液
IPTG 71.5 mgを滅菌精製水に溶解させ、30 mLにメスアップした。調製した溶液をクリーンベンチ内でPVDF製0.22 μmフィルターで濾過滅菌した。1.7 mLチューブに1 mLずつ分注して-20℃で保存した。
(4) LB-AGAR/カナマイシンプレート
250 mL広口メディウム瓶にLB-AGAR LENNOX 2.8 gを採取し、超純水80 mLを添加して溶解させてオートクレーブした。60℃以下まで室温で冷却した後、クリーンベンチ内で50 mg/mLカナマイシンストック溶液80 μLを加えて混合した。滅菌済みシャーレに分注して室温で固化させた後、4℃で保存した。調製後一ヶ月以内に使用した。
(5) 50%グリセロール溶液
250 mL広口メディウム瓶にグリセロール50 mL、超純水50 mLを加えて混合した後、オートクレーブして室温で保存した。
(6) LB培地
500 mL広口メディウム瓶にLB-BROTH LENNOX 10 gを純水500 mLに溶解させ、オートクレーブして室温で保存した。
(7) MOPS-Na緩衝液(20 mM、pH 7.5)
3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS) 4.18 gを約600 mLの超純水に溶解させた。4 N水酸化ナトリウム水溶液によりpH 7.5に調整後、1 Lにメスアップした。PVDF製0.10 μmフィルターで濾過滅菌して4℃で保存した。
(8) 70%エタノール(バイオテクノロジーグレード)
エタノール(バイオテクノロジーグレード) 140 mL及び超純水60 mLを250 mL広口メディウム瓶に採取して混合した後、室温で保存した。
(9) 洗浄バッファー(20 mM MOPS、300 mM NaCl、10 mMイミダゾール、pH 7.5)
MOPS 2.09 g、塩化ナトリウム8.77 g、イミダゾール340 mgを約350 mLの超純水に溶解させた。4 N水酸化ナトリウム水溶液によりpH 7.5に調整後、500 mLにメスアップした。PVDF製0.10 μmフィルターで濾過滅菌して4℃で保存した。
(10) 溶出バッファー(20 mM MOPS、300 mM NaCl、250 mMイミダゾール、pH 7.5)
MOPS 2.09 g、塩化ナトリウム8.77 g、イミダゾール8.51 gを約350 mLの超純水に溶解させた。4 N水酸化ナトリウム水溶液によりpH 7.5に調整後、500 mLにメスアップした。PVDF製0.10 μmフィルターで濾過滅菌して4℃で保存した。
(11) 5% (w/v) アジ化ナトリウムストック溶液
調製中はアジ化ナトリウムが金属と接触しないよう細心の注意を払った。アジ化ナトリウム500 mgをプラスチック製スパチュラにより秤量してMOPS-Na緩衝液(20 mM、pH 7.5)を添加して全量が10 mLとなるよう溶解させて4℃で遮光保存した。
(12) 30%アクリルアミド/ビス混合溶液
アクリルアミドは劇物であるため、調製には細心の注意を払った。アクリルアミド29.2 g、N-N'-メチレンビスアクリルアミド0.8 gを約70 mLの超純水に撹拌しながら溶解させた。全量が100 mLになるようにメスアップして4℃で遮光保存した。
(13) Tris-HCl緩衝液(1.5 M、pH 8.8)
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris) 18.17 gを約80 mLの超純水に撹拌しながら溶解させた。6 N塩酸によりpH 8.8に調整後、全量が100 mLになるようにメスアップして4℃で保存した。
(14) Tris-HCl緩衝液(0.5 M、pH 6.8)
Tris 6.06 gを約80 mLの超純水に撹拌しながら溶解させた。6 N塩酸によりpH 6.8に調整後、全量が100 mLになるようにメスアップして4 ℃で保存した。
(15) 10% SDS水溶液
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) 10 gを約90 mLの超純水に撹拌しながら溶解させた。全量が100 mLになるようにメスアップして室温で保存した。
(16) 10% APS水溶液
過硫酸アンモニウム(APS) 0.1 gを約1 mLの超純水に溶解させて4℃で保存した。
(17) 飽和1-ブタノール
1-ブタノールと超純水を2:1の割合で混合して室温で保存した。
(18) 5×泳動バッファー(125 mM Tris、960 mM グリシン、0.5% SDS)
Tris 15.1 g、グリシン72.1 g、SDS 5.0 gを全量が1 Lとなるように超純水に溶解させて4℃で保存した。使用の際は超純水で5倍に希釈した。一度使用した泳動バッファーは回収して再度使用し、使用回数は最大で2回とした。
(19) 5×Loadingバッファー (200 mM Tris、0.05%ブロモフェノールブルー、10%SDS、50%グリセロール)
Tris 2.42 g、SDS 10.0 g、ブロモフェノールブルー50 mgを50 mLのグリセロールと約40 mLの超純水を添加して溶解させた。6 N塩酸を用いてpH 6.8に調整後、100 mLにメスアップした。1.7 mLチューブに1 mLずつ分注して4℃で保存した。
(20) 1 M DTT溶液
ジチオトレイトール(DTT) 約150 mgを1 Mとなるように約1 mLの超純水を添加して溶解させ、-20℃で保存した。
(21) 固定液
酢酸50 mL、エタノール200 mLを混合した後、超純水で500 mLにメスアップして室温で保存した。
(22) 脱色液
酢酸40 mL、エタノール125 mLを混合した後、超純水で500 mLにメスアップして室温で保存した。
(23) 染色液
クマシーブリリアントブルー R-250 0.25 gを脱色液100 mLに加え、撹拌して溶解させて室温で遮光保存した。
1−2−2.大腸菌の培養及びCDPの発現
(1) E. coli BL21-CDPグリセロールストックの調製
ガスバーナーで加熱滅菌し、放冷した白金耳を用いて、CDPの遺伝子を含むプラスミドをもつEscherichia coli BL21-Gold(DE3)株(E. coli BL21-CDP)のグリセロールストックからLB-AGAR/カナマイシンプレートに植菌し、37℃で8-12 h培養した。加熱した白金耳を用いてシングルコロニーから、予め乾熱滅菌した試験管に加えた50 mg/mLカナマイシンストック溶液5 μLとLB培地5 mLの混合溶液に植菌した。OD660が0.6-0.8に達するまで振盪培養機(BR-23FP、TAITEC)で37℃で振盪培養(往復、200 rpm)した。その後、培養液800 μLを1.7 mLチューブに採取し、50 %グリセロール溶液100 μLを添加して混合した。液体窒素で凍結して-80℃で保存した。
(2) E. coli BL21-CDPマスタープレートの調製
ガスバーナーで加熱滅菌し、放冷した白金耳を用いて、E. coli BL21-CDPのグリセロールストックもしくは作製後一ヶ月以内のマスタープレートからLB-AGAR/カナマイシンプレートに植菌して37℃で8-12 h培養した。マスタープレートから植菌した場合はそのまま4℃で保存した。グリセロールストックから植菌した場合は、さらにLB-AGAR/カナマイシンプレートに植菌して37℃で8-12 h培養して4℃で保存した。
(3) E. coli BL21-CDP前培養液の調製
乾熱滅菌した試験管にLB培地3 mLを採取して50 mg/mLカナマイシンストック溶液3 μLを加えた。加熱滅菌し、放冷した白金耳を用いて、E. coli BL21-CDPマスタープレートのシングルコロニーから植菌した。振盪培養機を用いて37℃で10-12 h振盪培養(往復、200 rpm)した。
(4) E. coli BL21-CDPの培養とCDPの発現
2本の1 Lバッフル付きフラスコにLB-BROTH LENNOX 6 gをそれぞれ秤量して純水300 mLを加えてオートクレーブして放冷した。50 mg/mLカナマイシンストック溶液300 μLをそれぞれに添加して混合した後、E. coli BL21-CDP前培養液300 μLを加えた。振盪培養機を用いて30℃で振盪培養(回転、600 rpm)してOD660が0.55-0.60に達したことを確認後、10 mM IPTGストック溶液3 mLをそれぞれ加えて25℃で20 h振盪培養(回転、200 rpm)してCDPを発現させた。
1−2−3.Hisタグ精製及び緩衝液置換
(1) E. coli BL21-CDPの破砕によるCDPの抽出
1−2−2項(2)で調製したCDPを発現させたE. coli BL21-CDP懸濁液を50 mLチューブ12 本に約50 mLずつ均等に分注し、遠心機(遠心機:EX-126、TOMY、ローター:3850-04P、TOMY)を用いて遠心(3500 rpm、20 min、4℃)した。上清をデカンテーションにより除去し、沈澱したE. coli BL21-CDPペレットにMOPS-Na緩衝液(20 mM、pH 7.5)を加えてそれぞれ約15 mLにメスアップし、手で激しく振盪して懸濁させた。E. coli BL21-CDP懸濁液を4本の100 mL自立式チューブに約45 mLずつ分注し、氷浴しながらプローブ式超音波照射器(Sonifier 250、BRANSON)を用いて超音波照射してE. coli BL21-CDPを破砕した。超音波照射は、power: 200 W (ダイヤル10) 、duty cycle: 30%の条件で2サイクル(5 s超音波照射と25 sインターバルの4回繰り返しを1サイクル)行った。1サイクル照射後、懸濁液を軽く撹拌し、氷を整えた。E. coli BL21-CDP破砕液にはCDPの他にプロテアーゼ等が含まれていることから、それらによるCDPの分解を防ぐために、以降はE. coli破砕液は常に氷浴した。4本の100 mLチューブ中のE. coli BL21-CDP破砕液をそれぞれ50 mLチューブに移して遠心(3500 rpm、>20 min、4℃)した。沈澱したE. coliペレットが舞わないよう注意を払いながら、デカンテーションにより上清を50 mLチューブに回収した。
(2) Ni-NTAアフィニティーカラムによるCDPの精製
コンタミネーションを避けるため、以後の精製操作で用いるマイクロピペットのチップ及び1.7 mLチューブはオートクレーブ後乾燥して用いた。
予め70%エタノールで滅菌し、超純水で置換した直径1.8 cm、長さ10 cmのプラスチック製カラムに、Ni-NTAアガロースゲル(GE Healthcare)分散液9.8 mLを充填した。カラム内を1−2−1項(8)で調製した70%エタノールで満たして流すことでNI-NTAアガロースゲルを殺菌・洗浄した。この操作を2回繰り返した。MOPS-Na緩衝液(20 mM、pH 7.5) 3 mLをアプライして流し、さらに3 mLアプライした。スパチュラで撹拌もしくはマイクロピペットでピペッティングしてNi-NTAアガロースゲルを再分散させて気泡を取り除いた。その後、MOPS-Na緩衝液(20 mM、pH 7.5) 5 mLで4回置換した。
E. coli BL21-CDP破砕液の上清をカラムにアプライし、カラムより流出した溶液を回収してフロースルー溶液とした。洗浄バッファー3-5 mLをアプライして置換し、さらに3-5 mLアプライした。ピペッティングによりNi-NTAアガロースゲルを再分散させてゲル層の表面を均一にした後アプライした洗浄バッファーを流した。さらに洗浄バッファー5 mLをアプライして置換する操作を繰り返し、合計で30 mL以上をアプライした。洗浄バッファーをアプライした際に通過した溶液は全て回収し、洗浄液とした。その後、溶出バッファー3-5 mLをアプライし、1.7 mLチューブに1 mLずつフラクションに分けて回収し、溶出液とした。この操作を繰り返し、合計で溶出バッファー25 mLをアプライした。それぞれのフラクションの吸光度を微量紫外可視分光光度計(NanoDrop 2000c、Thermo Scientific)で測定し、280 nmの吸光度を指標にタンパク質の溶出を確認した。この際、バックグラウンド測定には超純水を用いた。タンパク質の溶出が完了していない場合は、280 nmの吸収が無くなるまでさらにカラムに溶出バッファーをアプライした。回収した溶出液のうち、吸光度が高いフラクションを回収し、CDP溶液とした。
(3) CDP溶液の緩衝液置換
CDP溶液の緩衝液置換はPD10カラム(Sephadex G-25、GE Healthcare)を用いて、付属の説明書に従って行った。CDP溶液の容量に応じて、必要な数のPD10カラムを用いた。付属のアダプターを用いてPD10カラムを50 mLチューブに固定した。70%エタノール(バイオテクノロジーグレード)で満たし、遠心機(MX-305、TOMY)を用いて遠心(1000 g、2 min、4℃)した。この操作を2回繰り返すことでカラムを殺菌及び洗浄した。5% (w/v) アジ化ナトリウムストック溶液をMOPS-Na緩衝液(20 mM、pH 7.5)で250倍希釈して調製した0.02%アジ化ナトリウム/20 mM MOPS-Na緩衝液で満たし、静置して溶液を流す操作を4回繰り返すことでPD10カラムを緩衝液で置換した。さらに0.02%アジ化ナトリウム/20 mM MOPS-Na緩衝液を加え、遠心した。
PD10カラムを新たな50 mLチューブに移し、遠心によるSephadexの斜面を崩さないようにCDP溶液をPD10カラム1本につき1.75-2.5 mLアプライした。前述の遠心時と同じ角度で遠心機に固定し、遠心した。溶出した溶液を回収してCDPストック溶液とし、CDPストック溶液の280 nmの吸光度をNanoDrop 2000cにより測定し、1.7 mLチューブに1 mLずつ分注して4℃で保存した。なおCDPストック溶液を使用する際は、必要量を適宜クリーンベンチ内で分注した。
カラム1本につき30 mLのMOPS-Na緩衝液(20 mM、pH 7.5)を加えて静置してカラムを洗浄した。次いで超純水で満たし、遠心する操作を2回繰り返した。同様に50%エタノール水溶液で2回洗浄した。PD-10カラムを50%エタノール水溶液で満たして4℃で保存した。
1−2−4.ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)によるCDPの精製の確認
(1) 10%アクリルアミドゲルの調製
50 mLチューブに30%アクリルアミド/ビス混合溶液3.33 mL、Tris-HCl緩衝液(1.5 M、pH 8.8) 2.5 mL、超純水4.01 mLを加え、超音波照射しながらアスピレーターで吸引して脱気した。10% SDS水溶液100 μL、10% APS水溶液50 μL、TEMED 10 μLを加え、泡立たないようピペッティングして混合した。混合した溶液3.5 mLを2枚のガラスプレートの間隙(0.75 mm)に加え、飽和1-ブタノール900 μLを静かに重層し、室温で1 h静置して重合した。マイクロピペットを用いて飽和1-ブタノールを除去し、次いで超純水で洗浄し、分離ゲルとした。
50 mLチューブに30%アクリルアミド/ビス混合溶液0.44 mL、Tris-HCl緩衝液(0.5 M、pH 6.8) 0.44 mL、超純水2.03 mLを加え、超音波照射しながらアスピレーターで吸引して脱気した。10% SDS水溶液33 μL、10% APS水溶液16.7 μL、TEMED 1.65 μLを加え、泡立たないようピペッティングして混合した。溶液を分離ゲルの上に十分に加え、10ウェルのコームを空気が入らないように注意しながらセットし、室温で1 h静置して重合した。生成したゲルはガラスプレートごと十分に湿らせたキムワイプで挟み、さらにラップで包み4℃で保存した。ゲルは調製後一ヶ月以内に使用した。
(2) 電気泳動による評価
1.7 mLチューブにProtein Molecular Weight Marker (Broad) 5 μL、1 M DTT溶液2 μL、5×Loading バッファー 20 μL、滅菌精製水173 μLを加えて混合し、これをマーカーとし、-20℃で保存した。CDPストック溶液及びCDPの精製において回収したフロースルー液、洗浄液それぞれ1 μLを5×Loadingバッファー2 μL、1 M DTT 1 μL、超純水6 μLと混合した。これらと室温で解凍したマーカー10 μLを105℃で熱処理し、卓上小型遠心機(R5-AQBD02、Recenttec)によりスピンダウンした。本項(1)で調製したポリアクリルアミドゲルを電気泳動用容器(ミニプロティアン Tetraセル、BIO RAD)にセットし、超純水で5倍希釈した5×泳動バッファーを500 mL注ぎ、コームを外した。1ウェルずつに電気泳動サンプルをロードし、電気泳動装置(ミニプロティアンTetraシステム、BIO RAD)を用いて電圧150 Vで約40 min泳動した。バンドがゲルの下端より約1 cm上に達したところで泳動を止め、ゲルをガラスプレートから取り出して固定液に浸漬させ、遮光してシェイカー(Wave-PR、TAITECH)で30 min振盪した。固定液を除去し、染色液を加えてゲルを浸漬させ、遮光して60 min振盪した。染色液を回収し、脱色液を加えてゲルを浸漬させ、遮光して30 min振盪した。脱色液を除去して新たに脱色液を加えて振盪する操作を、マーカーに含まれるタンパク質のバンドが明確に見えるまで繰り返した。超純水でゲルを洗浄し、Gel Doc EZ Imager (BIO RAD)により撮影して付属のソフトウェアで解析した。
1−2−5.酵素活性測定
(1) CDPによるセルロースの酵素合成
2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES) 23.8 gを約60 mLの超純水に溶解させた。4 N水酸化ナトリウム水溶液によりpH 7.5に調整後、100 mLにメスアップしてPVDF製0.22 μmフィルターで濾過滅菌した。これをHEPES緩衝液(1 M、pH 7.5)とし、4℃で保存した。
D-(+)-グルコース及びαG1P二ナトリウム n水和物を所定量秤量し、それぞれ1 Mとなるよう超純水に溶解させた。4 mLチューブ中で、HEPES緩衝液(1 M、pH 7.5)及び1 M αG1P水溶液、1 M D-(+)-グルコース水溶液を、反応時の濃度がそれぞれ500 mM、200 mM、50 mMとなるよう混合した。使用するCDPストック溶液の量を考慮し、超純水でメスアップした。超音波照射しながらアスピレーターで吸引して脱気した。終濃度が0.2 U/mLになるようCDPストック溶液を適量加え、気泡が発生しないようピペッティングにより混合した。1.7 mLチューブに300 μLもしくは600 μL分注し、60℃で3 dインキュベーションした。この操作は1回もしくは同時に3回行った。
反応後、適宜超純水を加えて沈澱物を分散させ、遠心(15000 rpm、>10 min、4℃)し、上清を除去した。超純水を加えて沈澱物を再分散させ、遠心する操作を5回以上繰り返し、溶液の置換率が99.999%以上となるまで精製した。精製した分散液を100℃のヒートブロックにより10 min加熱し、残存するCDPを失活させた。生成物の収量は、生成物を凍結乾燥もしくは絶乾し、乾燥前後の重量変化から算出した。凍結乾燥では、予め秤量した1.7 mLチューブに生成物の水分散液を加え、液体窒素により5 min以上凍結して24 h以上凍結乾燥し、その後秤量した。絶乾では、予め105℃で一晩乾燥させデシケーター内で放冷したサンプル管を秤量し、生成物の水分散液を加えて105℃で24 h以上乾燥させ、その後デシケーター内で放冷して秤量した。乾燥前後の重量の差から生成物の濃度を算出した。この操作は1回もしくは同時に3回行い、同時に3回行った場合はそれらの平均値より濃度を算出した。
(2) CDPの酵素活性測定
CDPの活性は以下のように測定した。50mMのαG1Pと50mMの-(+)-セロビオース、及び所定倍率希釈されたCDPを含む50mMの3-モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.5)を37℃でインキュベーションした。CDPにより生成されるリン酸を定量し、1分間あたり1μmolのリン酸を遊離する酵素量を1Uと定義した際のU/mLを求め、酵素活性とした。CDPの希釈率は、反応時間が100分の際におけるαG1Pの転化率が10%以下になるように決定した。
1−3.ゼラチン共存セルロース三次元構造体の調製
1−3−1.ゼラチン存在下におけるCDPによるセルロースの酵素合成
ブタ皮膚由来酸処理ゼラチンを3.0 g秤量し、HEPES緩衝液12 mLを加えた。室温で1 h静置して粉末状のゼラチンにHEPES緩衝液を吸収させ、膨潤させた。60℃のインキュベーターで6 hインキュベーションしてゼラチンを溶解させた後、超純水で15 mLにメスアップした。ローテーター(SN-06BN、日伸理化)を用いて回転させながら50℃で20-25 h加熱してゼラチン溶液(20% (w/v) ゼラチン、800mM HEPES)を調製した。なお、ゼラチン溶液の調製に用いる試薬の使用量はスケールにより調整した。
ゼラチン溶液を1.7 mLチューブに分注し、60℃のヒートブロック上で30 min静置した。HEPES緩衝液、1 M αG1P水溶液、1 M D-(+)-グルコース水溶液を反応時の濃度がそれぞれ500 mM、200 mM、50 mMとなるよう50 mLチューブに加え、60℃のウォーターバス中で30 min静置した。50 mLチューブを予め55℃とした超音波照射しながらアスピレーターで吸引して脱気した。60℃のウォーターバス中で、ゼラチン溶液を反応時の濃度が8% (w/v)となるよう50 mLチューブに加え、次いでCDPストック溶液を反応時の濃度が0.2 U/mLもしくは0.4 U/mLとなるよう50 mLチューブに加えた。気泡が発生しないよう注意しながらピペッティングにより混合した後、1.7 mLチューブあるいは1 mLマイティーバイアルあるいは底面をPCA用粘着シールでシールしたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のリング(内径15 mm、高さ7.5 mm)に所定量分注し、60℃で3 dインキュベーションした。予め50℃に設定した温度可変型インキュベーター(FMU-133I、福島工業)で30 minインキュベーションした後、1℃/minで50℃から4℃まで降温し、4℃で6 h静置した。その後、0.2℃/minで4℃から25℃まで昇温し、25℃で3 h静置した。
1−3−2.ゼラチン存在下で酵素合成されたセルロースの精製
1−3−1項において調製された生成物を各種分析に用いるため超純水で精製した。1.7 mLチューブを用いて調製した場合、60℃のヒートブロック上で加熱しながら超純水を加えて生成物をピペッティングにより機械的に破壊して分散させ、遠心(15000 rpm、>10 min、38℃)し、上清を除去した。超純水を加えて沈澱物を再分散させ、遠心する操作を5回以上繰り返し、溶液の置換率が99.999%以上となるまで精製した。精製した分散液を100℃のヒートブロックにより10 min加熱することで、残存するCDPを失活させた。生成物の収量の算出は1−2−5項(1)と同様に絶乾させて重量を測定した。プロトン核磁気共鳴(1H NMR)法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)法、全反射型赤外分光(ATR/ FTIR)法、広角X線回折(WAXD)法による測定に用いる場合は精製後の生成物の分散液を1.7 mLチューブに分注し、24 h凍結乾燥した。原子間力顕微鏡(AFM)観察に用いる場合は乾燥することなく、分散液を用いた。生成物の観察用に1 mLマイティーバイアルを用いて調製した場合は、アルカリバス(KOH/エタノール溶液)により洗浄したガラスケース内でマイティーバイアルを超純水に浸漬させ、60℃で1 w精製した。走査型電子顕微鏡(SEM)観察、圧縮試験用にPTFE製のリングを用いて調製した場合は、リングから生成物を取り出し、同様に超純水に浸漬させて精製した。
1−4.ゼラチンハイドロゲルの調製
1−3−1項における調製条件においてCDPストック溶液を添加することなく、HEPES、αG1P、D-(+)-グルコース、ゼラチンの終濃度がそれぞれ500 mM、200 mM、50 mM、8% (w/v)となるよう同様に50 mLチューブ内で溶液を調製した。その後PTFE製のリングに所定量分注し、1−3−1項と同様にインキュベーションし、温度可変型インキュベーターにより温度変化させた。
1−5.生成されたセルロースの特性評価
1−5−1.生成物の反転倒立試験
1 mLマイティーバイアルを用いて調製したサンプルを用いて、反転倒立試験によりゲル化を評価した。バイアルを上下反転して静置し、生成物が流動しなかった場合にゲル化したと判断した。
1−5−2.生成物の化学構造及び結晶構造の評価
(1) 生成物の収量測定
1−2−5項(1)と同様に絶乾により収量を算出した。
(2) 生成物の1H NMRスペクトル測定
40%重水酸化ナトリウム重水溶液50 μL及び重水450 μLを混合して4%重水酸化ナトリウム重水溶液を調製した。凍結乾燥した生成物10 mg以上を4%重水酸化ナトリウム重水溶液500 μLに溶解させた。溶液をNMRチューブに移し、Bruker DPX-300 spectrometer (Bruker、磁場強度:300 MHz)により測定した。積算回数は生成物濃度が30 mg/mL以上の場合は32回、20-30 mg/mLの場合は64回とした。らも1D NMRにより解析し、位相補正、リファレンス補正、ベースライン補正の順に適用した。水のケミカルシフトをリファレンス(4.79 ppm)として校正した。
(3) 生成物のMALDI-TOF-MS測定
質量電荷比の校正に用いる標準サンプルはBradykin fragment 1-7水溶液(10 nmol/mL Bradykinin fragment 1-7、0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)、50%アセトニトリル)、P14R水溶液(10 nmol/mL P14R、0.1% TFA)、ACTH fragment 18-39水溶液(10 nmol/mL ACTH fragment 18-39、0.1% TFA)それぞれ5 μL、10 mg/mL DHBA水溶液5 μL、1.0% TFA水溶液1 μL、アセトニトリル4 μLを1.7 mLチューブ中で混合して調製した。
生成物の測定サンプルは、0.02% (w/v)とした生成物の水分散液6 μL、10 mg/mL DHBA水溶液5 μL、1.0% TFA水溶液3 μL、アセトニトリル15 μL、超純水1 μLをアルカリバス洗浄したマイティーバイアル中で混合して調製した。
標準サンプル及び生成物の測定サンプルそれぞれ1 μLをサンプルプレートにマウントし、風乾させる操作を5回繰り返した。1 h以上真空乾燥し、MALDI-TOF-MS(AXIMA-performance、島津製作所)で測定した。測定条件はMode: Liner (positive)、Mass Range: 1.0-3000.0、Max Leaser Rap Rate: 10、power: 100、profiles: 100、shots: 2、Ion Gate (Da) : Blank 500、Pulsed Extraction optimized at (Da) : 1500.0とした。
測定により得られたMSスペクトルは、Smoothing method: Gaussian, Smoothing filter width: 19, Baseline filter width: 1000の条件で処理した。
平均分子量及び分子量分布は、生成物のカリウムイオン付加体のピーク面積より算出した。
(4) 生成物のWAXD測定
凍結乾燥した生成物をシリコン無反射試料板の凹部にマウントし、表面を均して卓上粉末X線回折計(MiniFlex 600、リガク)にセットして測定した。測定条件は、検出器:D/teX Ultra、X線出力:40 kV及び15 mA、フィルター:Kβ、スキャンスピード:2.0000 deg/min、ステップ幅:0.0200 deg、スキャン軸:2 θ/θ、スキャン範囲:5.0000-70.0000 deg、入射スリット:1.250 degとした。
(5) 生成物のATR/FTIRスペクトル測定
凍結乾燥した生成物を全反射赤外分光光度計(FT/IR-4100typeA、日本分光)のステージのダイヤモンドセルにスパチュラを用いて乗せ、押しこみユニットを下げてサンプルをダイヤモンドセルに押し付けて測定した。測定条件は、測定波長:350-7800 cm-1、分解能:4 cm-1、積算回数:100とした。
1−5−3.生成物の顕微鏡観察
(1) 生成物のSEM観察
ガラスケース中で精製した生成物の一部を薬さじにより採取し、10%エタノール水溶液を1-2 mL加えた24穴プレートに移して15 min静置した。その後、溶液を除去し、静かに20%エタノール水溶液を加えて15 min静置した。同様に30、40、50、60、70、80、90、99.5%エタノール水溶液の順に浸漬させた。次いで溶液を除去し、静かに99.5%エタノール水溶液を加えて15 min静置した。溶液を除去し、50%エタノール/50% tert-ブチルアルコール溶液に15 min浸漬させた。溶液を除去してtert-ブチルアルコールに15 min浸漬させ、tert-ブチルアルコールを除去する操作を2回繰り返した。
溶媒がtert-ブチルアルコールに置換された生成物をパラフィルムで作製したカプセルに移し、tert-ブチルアルコールで満たしてカプセルの封をした。tert-ブチルアルコールの結晶が成長しないように速やかに液体窒素にカプセルごと沈めて10 min以上凍結した。液体窒素中でカプセルごと生成物をカミソリにより割断した。液体窒素中から生成物を取り出し、速やかに凍結乾燥した。
SEMのステージ(直径26 mm)上に小さく切ったカーボンテープを貼り、その上に凍結乾燥した生成物を割断面が上になるようにマウントし、側面にドータイトを塗ることでステージに固定した。3 h以上真空乾燥し、デシケーター内で8 h以上乾燥した。オスミウムコータ(Neoc-Pro、メイワフォーシス)を用いて、SEMのステージにマウントしたサンプルを10 mAで30 sコーティングし、走査型電子顕微鏡(JSM-7500F、日本電子)により観察した。観察条件は、加速電圧は5 kV、エミッション電流:10 μA、照射電流:No.8、カラムモード:通常、r-フィルタ:SB[0] 、ワーキングディスタンス:8 mm前後とした。
(2) 生成物のAFM観察
生成物の濃度が0.001-0.01% (w/v)となるよう希釈し、セロハンテープで表面を5回剥がしたマイカ基板に15 μLマウントして600 rpmで60 minスピンコートした。デシケーターで12 h以上乾燥し、走査型プローブ顕微鏡(SPM-9600、島津製作所)を用いてAFMにより観察した。測定条件はタッピングモード、操作速度:0.5-1 Hz、画素数:512×512、Zレンジ:×1、操作モード:力一定とした。11個の構造体を観察し、観察された構造体ひとつにつき9点の高さを算出し、それら全てを平均して構造体の高さを算出した。
1−5−4.生成物の圧縮試験
1−3−1項においてPTFE製リングを用いて調製した生成物及び1−3−2項においてガラスケースを用いて精製後の生成物及び1−4節で調製したゼラチンハイドロゲルを圧縮試験に用いた。圧縮試験用負荷治具(346-51531-04、島津製作所)を取り付けた万能小型試験機(AGS-X、島津製作所)を用い、圧縮速度を2 mm/min、温度を室温(25 ±1.0℃)とした。
ひずみを算出するため、サンプルの初期の高さを以下のようにして求めた。サンプルを乗せるステージの上面に治具を合わせ、これを初期の位置として高さを0に設定した後、測定するサンプルの上面に治具を合わせ、初期の位置との高さの差からサンプルの高さを求めた。
圧縮試験により得られた応力-ひずみ曲線の初期(ひずみ0-0.1)の範囲のうち、直線性が高く、ひずみの幅が0.05の範囲で直線近似し、その傾きからヤング率を算出した。
2.結果及び考察
2−1.酵素合成されたセルロースの構造
2−1−1.セルロースの化学構造
(1) 1H NMRスペクトル
セルロースは重合度15以下の低分子量であれば水酸化ナトリウム水溶液に溶解する特性をもち、それを利用して重水酸化ナトリウム重水溶液に溶解させることで1H NMR測定できることが知られている(A. Isogai, Cellulose, 1997年, 4, 99-107)。CDP濃度を0.2もしくは0.4 U/mLとして調製したゼラチン共存セルロース三次元構造体をピペッティングにより機械的に破壊して遠心-再分散により精製した後、凍結乾燥したサンプルを1H NMR測定して化学構造を解析した(図1、表1)。既報のセルロースオリゴマーの1H NMRスペクトルを参考に帰属した結果(M. Hiraishiら, Carbohydr. Res., 2009年, 344, 2468-2473、L. A. Fluggeら, J. Am. Chem. Soc., 1999年, 121, 7228-7238、H. Sugiyamaら, J. Mol. Struct., 2000年, 556, 173-177、B. Xiongら, Cellulose, 2013年, 20, 613-621、M. U. Roslundら, Carbohydr. Res., 2008年, 343, 101-112)、いずれのCDP濃度で調製したサンプルにおいてもセルロースに帰属されるピークを示し、確かにセルロースが合成されていることが明らかとなった。また、各ピークの積分比が各プロトン存在比から算出される計算値と良く一致しており、さらにゼラチンに由来する他のピークは見られないことから、精製によりゼラチンが除去されていることを確認した。次いで1H NMRスペクトルの積分値より、平均重合度(DP)を算出した。水に溶解したセルロース分子鎖の還元末端はαアノマーとβアノマーが平衡となっており、それぞれのアノマー位の水素(H1α、H1β)は異なるケミカルシフトにピークを示すことが知られている。さらに還元末端以外のグルコースユニットの1位の水素(H7、H13)はこれらと異なるケミカルシフトにピークを示すため、それぞれの積分値を次式に適用してDPを算出することができる。
Figure 2017201895
この方法により算出したDPは、H1α及びH1βのピーク強度が小さいことに起因して誤差を含むことが知られているが(D. M. Petrovicら, Anal. Chem., 2015年, 87, 9639-9646)、セルロースオリゴマーの重合度を簡便に決定することができる。その結果、CDP濃度0.2 U/mLにおいてはDPが8.9、CDP濃度0.4 U/mLにおいてはDPが9.3と算出され、いずれの場合もDPはおよそ9であることが明らかとなった。また、対照サンプルとしてCDPにより酵素合成されるセルロースの二次元結晶(セルロースナノシート: CNS)をCDP濃度0.2 U/mLで調製し、同様に1H NMR測定した結果、DPは9.9と算出された。本発明者は、CDP濃度0.2 U/mLで調製されたCNSを構成するセルロースオリゴマーのDPがおよそ10であることを明らかにしており(T. Serizawaら, Polym. J., 2016年, 48, 539-544)、この値と良く一致した。ゼラチン存在下で合成されたセルロースオリゴマーは、CNSの場合と比較してDPはわずかに小さいことがわかり、この結果は本発明者が報告している水溶性高分子を用いた場合の結果と同様であった(国際出願番号PCT/JP2016/057253)。ゼラチンや水溶性高分子を添加した場合、セルロース分子の溶解性が低下するためにより低分子量体で結晶化することが示唆された。
Figure 2017201895
(2) MALDI-TOF-MSスペクトル
CDP濃度が0.2 U/mLの条件で調製したゼラチン共存セルロース三次元構造体をピペッティングにより機械的に破壊して遠心-再分散により精製したサンプルをMALDI-TOF-MSにより測定した。得られたMSスペクトルからm/zが1336.9のシャープなピークが検出され、そのm/zの値はセルロースオリゴマーの8量体のナトリウムイオン付加体と一致し(図2)、さらにm/zが1336.9のピークからグルコシルユニットに対応するm/zが162の間隔で複数のピークが検出され、セルロースオリゴマーの6量体から13量体まで検出された。本発明者の過去の測定から、CDP濃度が0.2 U/mLの条件で調製されたCNSはMALDI-TOF-MS測定によりセルロースオリゴマーの6量体から15量体までの分布をもつことを明らかにしており(国際出願番号PCT/JP2016/057253)、ゼラチンの存在により高分子量のセルロースオリゴマーは酵素合成されにくくなることが示唆された。MALDI-TOF-MSではイオン化された分子のみが検出されるため、一般に算出されるピーク面積比に定量性はないが、セルロースオリゴマーの測定においては分子量の分布とピーク面積比に相関があることが報告されており(D. M. Petrovicら, Anal. Chem., 2015年, 87, 9639-9646)、それぞれのピーク面積からDPと分子量分布(PDI)を算出した。その結果、DPは8.3、PDIは1.03であり、DPは1H NMR測定から算出した値とほぼ一致した。従って、セルロースオリゴマーのDPは1H NMR測定とMALDI-TOF-MS測定のいずれの手法を用いても同様の値が得られることがわかった。本発明者はこれまでDPの算出には1H NMR測定を用いてきたことから、本実施例でも1H NMR測定により算出したDPを用いることとした。
(3) αG1Pの転化率
生成物の収量と1H NMR測定から算出したDPを用いて、モノマーであるαG1Pの転化率を算出した。CDP濃度が0.2 U/mLの条件で調製したゼラチン共存セルロース三次元構造体の場合は33.7 ± 2.0%、CNSの場合は33.8 ± 4.6%であった(図3)。本発明者が報告しているCDP濃度を0.2 U/mLとしてCNSを合成した場合のαG1Pの転化率は約35%であり(T. Serizawaら, Polym. J., 2016年, 48, 539-544)、ゼラチン共存セルロース三次元構造体ならびにCNSいずれの場合も転化率の値は同程度であった。本発明者は、CDPによる合成系に添加する水溶性高分子の種類や調製時の溶解時間や温度を変更することでαG1Pの転化率は大きく変化することを明らかにしているが、いずれもCNSの場合の転化率と比較して低い値である(国際出願番号PCT/JP2016/057253)。しかしながら、ゼラチンを用いた場合ではCNSを用いた場合と転化率が同程度であったことから、ゼラチンの存在はCDPによる酵素反応速度にほとんど影響を及ぼさないことがわかった。また、CDP濃度が0.4 U/mLの条件で調製したゼラチン共存セルロース三次元構造体の場合の転化率は43.0 ± 3.6%であり、CDP濃度が0.2 U/mLの場合と比較して1.3倍に増大した。従って酵素濃度の上昇に伴い、セルロースオリゴマーの生成量が増大することがわかった。本発明者が報告している水溶性高分子であるデキストランを用いた場合は、デキストランの濃度が10% (w/v) の条件下でCDP濃度を0.2 U/mLから0.4 U/mLに変更すると転化率が1.8倍となることを明らかにしている(国際出願番号PCT/JP2016/057253)。ゼラチンを用いた場合の方がデキストランを用いた場合よりもCDP濃度の増大に対する転化率の上昇率が小さかったが、それぞれのCDP濃度における転化率の絶対値は高かったことから、ゼラチン存在下の方が反応は3 dで平衡状態により近づいていると考えられる。
2−1−2.セルロースの結晶構造
(1) WAXDチャート
セルロースは複数の結晶形を形成し得ることが知られているため、ゼラチン存在下で生成されたセルロースの結晶構造を解析した。CDP濃度が0.2U/mLの条件で調製したゼラチン共存セルロース三次元構造体を遠心-再分散により精製し、凍結乾燥したサンプルをWAXDにより測定した結果、面間隔d = 0.72、0.45、0.40にシャープなピークを示し、これらはセルロースII型の1-10、110、020面と良く一致した(図4、表2)(M. Hiraishiら, Carbohydr. Res., 2009年, 344, 2468-2473)。従ってゼラチン存在下でCDPにより合成されたセルロースの結晶形はII型であることが明らかとなった。オリジナルのCNSはII型の結晶形をもつことから、合成中におけるゼラチンの存在は生成されるセルロースの結晶形に影響を与えないことがわかった。
Figure 2017201895
(2) ATR/FTIRスペクトル
CDP濃度が0.2 U/mLの条件で調製したゼラチン共存セルロース三次元構造体をピペッティングにより機械的に破壊して遠心-再分散により精製し、凍結乾燥したサンプル及びCNSのIRスペクトルを測定した(図5、表3)。その結果、いずれも同様の形状のスペクトルが得られ、セルロースのβ1-4グリコシド結合に由来するピークが894ならびに1160 cm-1付近に見られ、また他のピークもATR/FTIR測定からも正しくセルロースが合成されていることが支持された(D. Daiら, Mater. Sci. Appl., 2010年, 1, 336-342、S. Y. Ohら, Carbohydr. Res., 2005年, 340, 2376-2391、R. H. Marchessaultら, J. Polym. Sci., 1960年, 43, 71-84)。またいずれのIRスペクトルにおいてもセルロースのII型結晶に特徴的なOH伸縮振動に由来するピークが3442ならびに3488 cm-1付近に見られたことから、ATR/FTIR測定からもセルロースの結晶形はII型であることが支持された。また、ゼラチンはアミド結合に由来する吸収を1660-1620 cm-1(アミドI)、1550-1520 cm-1(アミドII)にもつことが知られているが(D. M. Hashimら, A. Food Chem., 2010年, 118, 856-860)、ゼラチン共存セルロース三次元構造体のIRスペクトルからはそれらピークが観察されなかったことから、ATR/FTIR測定からも精製によりゼラチンは除去されていることが支持された。
Figure 2017201895
表3において、1)〜3)の各文献は、以下の通りである:
1) D. Daiら, Mater. Sci. Appl., 2010年, 1, 336-342
2) S. Y. Ohら, Carbohydr. Res., 2005年, 340, 2376-2391
3) R. H. Marchessaultら, J. Polym. Sci., 1960年, 43, 71-84
2−1−3.セルロースのネットワーク構造
(1) SEM像
CDP濃度が0.2 U/mLの条件で調製したゼラチン共存セルロース三次元構造体を60℃の超純水で1 w精製してセルロース三次元構造体を調製した。その後溶媒を超純水から徐々にtert-ブチルアルコールに置換し、凍結乾燥してエアロゲルとした生成物をSEMにより観察した。その結果、幅が100 nm以上、長さが最大で数μmのリボン状の構造体(ナノリボン)が架橋し、三次元ネットワーク構造を形成することが明らかとなった(図6)。2−1−1項(1)における1H NMR測定ならびに2−1−2項(2)におけるATR/FTIR測定の結果から精製によってゼラチンが除去されていることを確認していることから、観察されたナノリボンはセルロースから成る構造体であると考えられる。すなわち、ゼラチン存在下でCDPにより酵素合成されたセルロースはナノリボン状のネットワークを形成し、超純水に浸漬させてゼラチンを除去した後もネットワーク構造を維持していると推察される。本発明者が用いる水溶性高分子の種類により生成されるセルロースナノリボンの形態がかわることを報告しており(国際出願番号PCT/JP2016/057253)、観察されたナノリボンは本発明者が報告している水溶性高分子であるポリビニルピロリドン存在下で酵素合成されたセルロースナノリボンと似た形状やサイズであることがわかった。
2−2.酵素合成されたセルロースの強度
図7は、ゼラチン共存セルロース三次元構造体、精製によりゼラチンを除去したセルロース三次元構造体及びゼラチン構造体の外観を示す写真である。
図8は、ゼラチン共存セルロース三次元構造体、精製によりゼラチンを除去したセルロース三次元構造体及びゼラチン構造体の圧縮試験結果を示す。
図7及び8に示すように、圧縮試験の結果、ゼラチン共存セルロース三次元構造体はセルロース三次元構造体及びゼラチン構造体と比較して高い機械的強度を示した。また、酵素濃度を上昇させることで、ゼラチン共存セルロース三次元構造体の機械的強度はさらに上昇した。

Claims (3)

  1. 次式(I):
    Figure 2017201895
    (式中、nは、4〜11である)
    で示される化合物とゼラチンとを構成成分として含有するゼラチン共存セルロース三次元構造体。
  2. 請求項1記載のゼラチン共存セルロース三次元構造体を含む足場材。
  3. α-D-グルコース一リン酸と、プライマーとしてD-(+)-グルコースとを、ゼラチン存在下でセロデキストリンホスホリラーゼと反応させる工程を含む、次式(I):
    Figure 2017201895
    (式中、nは、4〜11である)
    で示される化合物とゼラチンとを構成成分として含有するゼラチン共存セルロース三次元構造体の製造方法。
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