JP2017201979A - インビトロでの毛包組織の作製方法 - Google Patents

インビトロでの毛包組織の作製方法 Download PDF

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昌悟 宮田
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Abstract

【課題】インビトロ(生体外)において、毛包組織又はその周辺組織(毛包組織等)を簡便に作製する方法、又はかかる方法に用いるためのキットや、毛包組織等の形成が促進されるか、或いは抑制されるかを簡便に評価する方法、又はかかる方法に用いるキットを提供すること。
【解決手段】哺乳動物由来の表皮細胞を包埋する略球状のゲル(表皮細胞ゲル)と、かかる表皮細胞ゲルに被覆された、哺乳動物由来の多能性幹細胞を包埋する略球状のゲル(多能性幹細胞ゲル)と、かかる多能性幹細胞ゲルに被覆された、細胞増殖因子を含有する略球状のゲル(細胞増殖因子ゲル)とを含む3層のゲルを調製し、培養すると、毛包組織等を作製したり、毛包組織等の形成が促進されるか、或いは抑制されるかを評価することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、インビトロにおいて、毛包組織又はその周辺組織(以下、「毛包組織等」ということがある)を作製する方法、又はかかる方法に用いるキットや、毛包組織等の形成を評価する方法、又はかかる方法に用いるキットに関する。
毛包組織は、毛を産生する哺乳類の皮膚付属器官であり、成熟した生体において、自己再生をほぼ一生涯通じて繰り返す。毛包組織それ自体は、生命活動の維持に直接必要ではないものの、薄毛や脱毛、或いはムダ毛に悩みを抱える人は少なくなく、QOL(Quality Of Life)の観点から、これら毛包組織に関する疾患(脱毛症や多毛症等)の予防や治療は必要とされている。
育毛剤又は抑毛剤の開発には、育毛又は抑毛効果を正確に評価できるアッセイ系が必要となる。例えば、ヒト毛包上皮系培養細胞の増殖活性を有する対象物質を、さらにヒト頭髪毛包の器官培養法により育毛効果を評価するスクリーニング方法が知られている(特許文献1)。しかし、ヒトの毛包組織自体の入手が困難であるため、簡便性の面で問題があり、また網羅的なスクリーニングには適さない。また、ヒトに代えてマウスやブタ由来の毛包を器官培養するスクリーニング方法も知られている(特許文献2、3)。しかし、ヒト以外のモデル動物を用いている点でスクリーニング結果の信頼性が高いとはいえない。
一方、近年の細胞工学や幹細胞に関連する研究の進展により、細胞移植による生体内での毛髪再生が盛んに進められている。例えば、生体外(インビトロ)で歯髄由来の間葉系幹細胞(非特許文献1)や、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)(非特許文献2)から細胞集塊を調製し、移植すると、生体内(インビボ)において毛髪が再生することが報告されている。また、毛乳頭細胞をインビトロで培養し、移植すると、インビボにおいて毛包組織が再生することが報告されている(特許文献4)。しかしながら、これら方法は、いずれも生体内において毛包組織を再生するものであり、生体外において、毛包組織を作製する方法はこれまで報告されていなかった。
特開平11−49647号公報 特開2002−62289号公報 特開2009−139353号公報 特開2007−274949号公報
Toyoshima, K.E., et al., Nature Communications, 3:784 (2012) Veraitch, O., et al., J Invest Dermatol, 133: 1479-1488, (2013)
本発明の課題は、インビトロ(生体外)において、毛包組織等を簡便に作製する方法、又はかかる方法に用いるためのキットや、毛包組織等の形成が促進されるか、或いは抑制されるかを簡便に評価する方法、又はかかる方法に用いるキットを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けている。その過程において、インビボでの毛包組織等の形態を、インビトロにおいて模擬できれば、毛包組織等を作製できると考えた。そこで、多能性幹細胞を包埋する略球状のゲル(多能性幹細胞ゲル)が、細胞増殖因子を含有する略球状のゲル(細胞増殖因子ゲル)を被覆し、表皮細胞を包埋する略球状のゲル(表皮細胞ゲル)が、さらに前記多能性幹細胞ゲルを被覆することにより形成される3層ゲルを調製し、毛乳頭細胞増殖因子を含む細胞増殖培養液中で培養し、その後通常の細胞増殖培養液に代えて培養を行うと、毛包組織等が形成されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕以下の(p)〜(s)を備えることを特徴とする毛包組織又はその周辺組織形成の評価用キット。
(p)哺乳動物表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料;
(q)哺乳動物多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料;
(r)細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料;
(s)哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルを、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルに被覆し、哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルを、前記哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルに被覆することについて記載された添付文書;
〔2〕(p)哺乳動物表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料、及び(q)哺乳動物多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料が、コラーゲンであり、(r)細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料が、アルギン酸又はその塩であることを特徴とする上記〔1〕に記載の評価用キット。
〔3〕細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の評価用キット。
〔4〕以下の工程(A)〜(C)を備えたことを特徴とする毛包組織又はその周辺組織形成の評価方法であって、工程(A)における哺乳動物細胞培養用基礎培養液、及び工程(B)における哺乳動物細胞培養用基礎培養液のいずれか一方又は両方に被検薬剤又は被検物質が含まれる、前記評価方法。
(A)哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルと、
前記哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルに被覆された、哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルと、
前記多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルに被覆された、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルと
を含む3層のゲルを、1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子と、血清又は血清代替物とを含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する工程;
(B)工程(A)の培養後、前記3層のゲルを、血清又は血清代替物を含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する工程;
(C)工程(B)の培養後、前記3層のゲルにおける毛包組織又はその周辺組織の形成効率の上昇又は低下を検出する工程;
〔5〕工程(A)の培養を、4〜13日間行うことを特徴とする上記〔4〕に記載の評価方法。
〔6〕哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲル、及び哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルが、コラーゲンゲルであり、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルが、2価以上のカチオンとのアルギン酸塩ゲルであることを特徴とする上記〔4〕又は〔5〕に記載の評価方法。
〔7〕2種以上の毛乳頭細胞増殖因子が、少なくともウシ下垂体抽出液(BPE)及びサイプロテロンアセテート(Cyp)を含むことを特徴とする上記〔4〕〜〔6〕のいずれかに記載の評価方法。
〔8〕細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2であることを特徴とする上記〔4〕〜〔7〕のいずれかに記載の評価方法。
〔9〕以下の(p)〜(s)を備えることを特徴とする毛包組織又はその周辺組織の作製用キット。
(p)哺乳動物表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料;
(q)哺乳動物多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料;
(r)細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料;
(s)哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルを、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルに被覆し、哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルを、前記哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルに被覆することについて記載された添付文書;
〔10〕(p)哺乳動物表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料、及び(q)哺乳動物多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料が、コラーゲンであり、(r)細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料が、アルギン酸又はその塩であることを特徴とする上記〔9〕に記載の作製用キット。
〔11〕細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2であることを特徴とする上記〔9〕又は〔10〕に記載の作製用キット。
〔12〕以下の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とするインビトロでの毛包組織又はその周辺組織の作製方法。
(a)哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルと、
前記哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルに被覆された、哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルと、
前記多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルに被覆された、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルと
を含む3層のゲルを、1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子と、血清又は血清代替物とを含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する工程;
(b)工程(a)の培養後、前記3層のゲルを、血清又は血清代替物を含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する工程;
〔13〕工程(a)の培養を、4〜13日間行うことを特徴とする上記〔12〕に記載の作製方法。
〔14〕哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲル、及び哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルが、コラーゲンゲルであり、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルが、2価以上のカチオンとのアルギン酸塩ゲルであることを特徴とする上記〔12〕又は〔13〕に記載の作製方法。
〔15〕2種以上の毛乳頭細胞増殖因子が、少なくともウシ下垂体抽出液(BPE)及びサイプロテロンアセテート(Cyp)を含むことを特徴とする上記〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載の作製方法。
〔16〕細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2であることを特徴とする上記〔12〕〜〔15〕のいずれかに記載の作製方法。
また、本発明の実施の他の形態として、上記工程(A)〜(C)を備えたことを特徴とする、脱毛症若しくは無毛症、又は多毛症の予防剤又は治療剤のスクリーニング方法や、毛髪の増減に影響のある皮膚刺激性物質のスクリーニング方法であって、工程(A)における哺乳動物細胞培養用基礎培養液、及び工程(B)における哺乳動物細胞培養用基礎培養液のいずれか一方又は両方に被検薬剤又は被検物質が含まれる、前記スクリーニング方法(以下、これらを総称して「本件スクリーニング方法」ということがある)を挙げることができる。
また、本発明の実施の他の形態として、上記(p)〜(s)を備えることを特徴とする、脱毛症若しくは無毛症、又は多毛症の予防剤又は治療剤のスクリーニング用キットや、毛髪の増減に影響のある皮膚刺激性物質のスクリーニング用キット(以下、これらを総称して「本件スクリーニング用キット」ということがある)を挙げることができる。本件スクリーニング用キットは、脱毛症若しくは無毛症、又は多毛症の予防又は治療剤をスクリーニングするためのキットに関する用途発明や、毛髪の増減に影響のある皮膚刺激性物質をスクリーニングするためのキットに関する用途発明であり、かかるキットとしては、一般にこの種のキットに用いられる成分、例えば担体、pH緩衝剤、安定剤、上記ゲル材料をゲル化するための架橋剤、1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子、血清、血清代替物、哺乳動物細胞培養用基礎培養液、取扱説明書を含んだものであってもよい。
本発明の作製方法や作製用キットを用いると、インビトロにおいて、比較的簡便に、毛包組織等を作製することができる。作製された毛包組織等は、脱毛症(円形脱毛症、男性型脱毛症等)又は無毛症(先天性無毛症、後天性無毛症等)患者の治療に有用である。また、本発明の評価方法や評価用キットを用いると、被検薬剤又は被検物質が、毛包組織等の形成促進作用を有しているか、或いは、毛包組織等の形成抑制(阻害)作用を有しているかを評価することができ、脱毛症;無毛症;多毛症;栄養不足、頭皮や髪へのダメージ、血流不足、女性ホルモンの減少、ストレスなどの原因によって生じるヘアサイクル異常(細く短い状態で髪の毛が抜ける状態)等の毛包組織等に関する疾患の予防剤又は治療剤の候補薬剤又は候補物質のスクリーニングや、毛髪の増減に影響のある皮膚刺激性物質のスクリーニングに有用である。
線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor:FGF)−2(塩基性線維芽細胞増殖因子[basic fibroblast growth factor:bFGF]ともいう)を含有する略球状のアルギン酸カルシウムゲル層(第1層)、ES細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層(第2層)、及び表皮細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層(第3層)からなる略球状の3層ゲルの概念図である。 図1の3層ゲルを、第3層の上部から観察したときの位相差顕微鏡画像を示す図である。破線で囲まれた部分は、内側から順に、第1層、第2層、及び第3層を示す。 図1の3層ゲルを培養後、28日目のCombination群におけるヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin Eosin:HE)染色画像を示す図である。上段の画像の破線で囲った領域(a及びb)を、それぞれ拡大したものが下段の画像のa及びbに示す。また、図中のスケールバーは200μmを示す。 マウス胎児における毛包組織のHE染色画像(左図a)と、図1の3層ゲルを培養後、48日目のCombination群における毛包組織のHE染色画像(右図b)とを示す図である。図中の矢印は、毛包組織を示す。 図1の3層ゲルを培養後、28〜49日目のCombination群におけるHE染色画像(上段)、サイトケラチン免疫染色画像(中段)、及び平滑筋アクチン免疫染色画像(下段)を示す図である。左から1番目の図中矢印は、毛包組織を示し、それらの拡大図を、左から2番目の図に示す。また、図中のスケールバーは100μmを示す。 ES細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層(第2層)と、表皮細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層(第3層)とからなる2層ゲルを、第3層の上部から観察したときの位相差顕微鏡画像である。破線で囲まれた部分は、内側から順に、第2層及び第3層を示す。 ES細胞及び表皮細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層の単層ゲルを、上部から観察したときの位相差顕微鏡画像である。 FGF−2を含有する略球状のアルギン酸カルシウムゲル層(第1層)、ES細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層(第2層)、及び表皮細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層(第3層)からなるシート状の3層ゲルを、第3層の上部から観察したときの位相差顕微鏡画像である。 図6の2層ゲルを培養後、28日目のCombination群におけるHE染色画像を示す図である。 図8のシート状の3層ゲルを培養後、18日目のCombination群における位相差顕微鏡画像を示す図である。
本発明の作製方法としては、哺乳動物由来の表皮細胞を包埋する略球状のゲル(以下、「表皮細胞ゲル」ということがある)と、かかる表皮細胞ゲルに被覆された、哺乳動物由来の多能性幹細胞を包埋する略球状のゲル(以下、「多能性幹細胞ゲル」ということがある)と、かかる多能性幹細胞ゲルに被覆された、細胞増殖因子を含有する略球状のゲル(以下、「細胞増殖因子ゲル」)とを含む3層のゲル(以下、「本件3層ゲル」ということがある)を、1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子と、血清又は血清代替物とを含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液(以下、「本件分化誘導用培養液」ということがある)中で培養する工程(a)と、工程(a)の培養後、本件3層ゲルを、血清又は血清代替物を含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液(以下、「本件基礎培養液」ということがある)中で培養する工程(b)とを備える、インビトロ(生体外)において毛包組織又はその周辺組織を作製する方法(以下、「本件作製方法」ということがある)であれば特に制限されない。
また、本発明の作製用キットとしては、哺乳動物由来の表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料(p)と、哺乳動物由来の多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料(q)と、細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料(r)と、多能性幹細胞ゲルを細胞増殖因子ゲルに被覆し、表皮細胞ゲルを、前記多能性幹細胞ゲルに被覆することについて記載された添付文書(s)とを備える、毛包組織又はその周辺組織の作製に用いるためのキット(以下、「本件作製用キット」ということがある)であれば特に制限されず、本件作製用キットは、毛包組織又はその周辺組織を作製するためのキットに関する用途発明であり、かかるキットとしては、一般にこの種のキットに用いられる成分、例えば担体、pH緩衝剤、安定剤、上記ゲル材料をゲル化するための架橋剤、1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子、血清、血清代替物、哺乳動物細胞培養用基礎培養液、取扱説明書を含んだものであってもよい。
本発明の評価方法としては、本件3層ゲルを、本件分化誘導用培養液中で培養する工程(A)と、工程(A)の培養後、本件3層ゲルを、本件基礎培養液中で培養する工程(B)と、工程(B)の培養後、前記3層のゲルにおける毛包組織又はその周辺組織の形成効率の上昇又は低下を検出する工程(C)とを備える、毛包組織形成、或いは毛包組織の周辺組織形成を評価する方法であって、工程(A)における本件分化誘導用培養液、及び工程(B)における本件基礎培養液のいずれか一方又は両方に被検薬剤又は被検物質が含まれる、前記評価方法(以下、「本件評価方法」ということがある)であれば特に制限されない。
また、本発明の評価用キットとしては、上記ゲル材料(p)〜(r)と、上記添付文書(s)とを備える、毛包組織形成の評価、或いは毛包組織の周辺組織形成の評価に用いるためのキット(以下、「本件評価用キット」ということがある)であれば特に制限されず、本件評価用キットは、毛包組織形成、或いは毛包組織の周辺組織形成を評価するためのキットに関する用途発明であり、かかるキットとしては、一般にこの種のキットに用いられる成分、例えば担体、pH緩衝剤、安定剤、上記ゲル材料をゲル化するための架橋剤、1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子、血清、血清代替物、哺乳動物細胞培養用基礎培養液、取扱説明書を含んだものであってもよい。
本発明において、「毛包組織」とは、内側は上皮性成分である毛根鞘(内毛根鞘及び外毛根鞘)で構成され、外側は結合組織成分である結合組織性毛包で構成されている二重構造からなる組織を意味する。また、本発明において、「毛包組織の周辺組織」とは、毛包組織に付属してその周辺部に存在する組織(例えば、立毛筋、毛隆起、毛脂腺等)を意味する。
本発明において、「脱毛症又は無毛症」とは、遺伝的(先天的)要因や、加齢、ストレス、抗癌剤等の薬剤投与などの後天的要因により、毛が少なくなった状態、又は毛が全く生えなくなった状態を意味し、脱毛症には、円形脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、抗癌剤等の薬剤投与による脱毛症が含まれる。また、本発明において、「多毛症」とは、皮膚筋炎、全身性疾患(進行したHIV感染症等)、甲状腺機能低下症等の内分泌性疾患、低栄養、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬等の薬剤投与などが要因となり、男性ホルモンが過剰産生したり、男性ホルモンに対する反応性が向上することにより、軟毛が硬毛に変化した状態を意味する。
本件作製方法、本件評価方法、又は本件スクリーニング方法において、毛包組織等が形成されたことは、ヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin Eosin:HE)染色法や、毛包組織のマーカー(サイトケラチン、Versican[Vcan]、ALP[Alkaline phosphatase]、CD200、CD34等)に対する抗体、又は毛包周辺組織のマーカー(平滑筋アクチン[αSMA]、カルポニン、K15、CD200等)に対する抗体を用いた免疫組織化学染色法を行い、位相差顕微鏡により確認することができる。
上記哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等の霊長類などを例示することができ、作製した毛包組織等を、それら疾患に対する治療薬のスクリーニングに用いる場合、マウス又はヒトが好ましく、作製した毛包組織等を再生医療に用いる場合、ヒトが好ましい。
本発明において、「略球状」とは、全体として真球、楕円体などの団子状(団子のように丸く固まった形)の他、表面に細かな凹凸(しわ、突起、陥没等)を有する略球状を意味する。なお、「略球状」には、便宜上、略多面体状(略4面体、略5面体、略6面体等)や、略筒状も含まれる。前述の「略多面体状」における「多面体」としては、「凸多面体」が好ましく挙げられる。
本発明において、「XがYに被覆された」としては、本発明の効果が得られる限り、Xの少なくとも一部がYに覆われていればよいが、好適な態様として、Xの全表面積のうち、Yによって覆われている割合としては、通常40〜100%の範囲内であり、好ましくは45〜100%、より好ましくは50〜100%、さらに好ましくは55〜100%、さらにより好ましくは60%〜100%、特に好ましくは65〜100%、また特に好ましくは70〜100%、特により好ましくは75〜100%、特にさらに好ましくは80〜100%、特にさらにより好ましくは85〜100%、最も好ましくは90%〜100%である。なお、かかる割合は、各層毎に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
上記表皮細胞ゲルや多能性幹細胞ゲルにおけるゲルとしては、表皮細胞や多能性幹細胞を含有するゲル材料(溶液)をゲル化したときに、これら細胞をゲル内に包埋することができ、これら細胞の培養に悪影響がなく、かつ、本件3層ゲルの培養温度(通常30〜40℃)でゲル状態が維持されるものであればよく、また、上記表皮細胞ゲルにおけるゲルとしては、細胞増殖因子を含有するゲル材料(溶液)をゲル化したときに、ゲル中に含まれる細胞増殖因子が徐々に放出(徐放)することができ、かつ、本件3層ゲルの培養温度でゲル状態が維持されるものであればよく、具体的には、2価以上のカチオン(例えば、カルシウムイオン、2価又は3価の鉄イオン、アルミニウムイオン等)とのアルギン酸塩ゲル;ゼラチンゲル;コラーゲンゲル;寒天ゲル;寒天精製物(アガロース)ゲル;カラギーナンゲル;セルロースゲル等を挙げることができ、表皮細胞ゲルや多能性幹細胞ゲルの場合、コラーゲンゲルが好ましく、細胞増殖因子ゲルの場合、2価以上のカチオンとのアルギン酸塩ゲルが好ましい。
上記コラーゲンゲルとしては、線維形成が可能な線維性コラーゲンゲルであればよく、具体的には、I型、II型、III型、V型、XI型コラーゲンゲルや、I型、II型、III型、V型、及びXI型コラーゲンから選択される2種以上の組合せを材料とするゲルを挙げることができ、I型コラーゲンゲルを好適に例示することができる。
また、上記ゲル材料(p)やゲル材料(q)としては、表皮細胞や多能性幹細胞を含有するゲル材料(溶液)をゲル化したときに、これら細胞をゲル内に包埋することができ、これら細胞の培養に悪影響がなく、かつ、本件3層ゲルの培養温度でゲル状態が維持されるものであればよく、また、上記ゲル材料(r)としては、細胞増殖因子を含有するゲル材料(溶液)をゲル化したときに、ゲル中に含まれる細胞増殖因子が徐々に放出(徐放)することができ、かつ、本件3層ゲルの培養温度でゲル状態が維持されるものであればよく、具体的には、アルギン酸又はその塩、ゼラチン、コラーゲン、寒天又はその精製物(アガロース)、カラギーナン、セルロース等を挙げることができ、ゲル材料(p)やゲル材料(q)の場合、コラーゲンゲルが好ましく、ゲル材料(r)の場合、アルギン酸又はその塩が好ましい。
上記アルギン酸の塩としては、2価以上のカチオン(例えば、カルシウムイオン、2価又は3価の鉄イオン、アルミニウムイオン等)とのアルギン酸塩や、1価のカチオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等)とのアルギン酸塩を挙げることができる。
上記コラーゲンとしては、線維形成が可能な線維性コラーゲンであればよく、具体的には、I型、II型、III型、V型、XI型コラーゲン、及びこれらから選択される2種以上の組合せを材料とするものを挙げることができ、I型コラーゲンを好適に例示することができる。
上記表皮細胞としては、表皮組織由来の細胞であれば、哺乳動物からその都度調製(用時調製)したものであっても、インビトロでの培養により株化されたものであってもよい。かかる株化された表皮細胞としては、成人ヒト由来の表皮細胞(HaCaT細胞)、マウス新生仔由来の表皮細胞(Balb/MK細胞)、ラット胎仔由来の表皮細胞(FRSK細胞)等を挙げることができる。
上記多能性幹細胞(pluripotent stem ce11)としては、毛包組織等に分化誘導可能な細胞であれば特に制限されず、初期胚より単離される胚性幹細胞(embryonic stem cells:ES細胞)や、胎児期の始原生殖細胞から単離される胚性生殖細胞(embryonic germ cells:EG細胞)(例えばProc Natl Acad Sci U S A. 1998, 95:13726-31参照)や、出生直後の精巣から単離される生殖細胞系列幹細胞(germline stem cells:GS細胞)(例えば、Nature. 2008, 456:344-9参照)や、皮膚、骨髄等の間葉系組織から選択して得られた多能性を有する細胞(Muse細胞[Multi-lineage differentiating Stress Enduring cell])や、皮膚細胞等の体細胞に複数の遺伝子を導入することで、被検体自身の体細胞の脱分化を誘導し、ES細胞同様の多能性を有する体細胞由来の誘導多能性幹細胞(iPS;induced pluripotent stemcell)や、ネスチン発現細胞を分離することにより得られた毛包幹細胞(特表2005−502377号公報)を挙げることができ、これらの中でもES細胞やiPS細胞が好ましい。
ES細胞は、内部細胞塊を、マイトマイシンC処理済のマウス胎仔由来の初代線維芽細胞[MEF]、STO細胞、SNL細胞等のフィーダー細胞上で上記血清含有又は無血清培養液中に培養することにより製造することができる。ES細胞の製造方法は、例えば、WO96/22362、WO02/101057、US5,843,780、US6,200,806、US6,280,718等に記載されている。EG細胞は、始原生殖細胞をmSCF、LIF及びFGF−2を含む上記血清含有又は無血清培養液中で培養することにより製造することができる(例えば、Ce11. 1992, 70:841-847参照)。Muse細胞は、皮膚、骨髄等の間葉系組織を、トリプシンや低酸素処理などのストレスを与えることによりストレス耐性の細胞を選択したり、あるいは多能性幹細胞の表面抗原であるSSEA−3の発現を指標として細胞を選択し、さらに単一細胞の状態で浮遊培養を重ねることにより、細胞を単離することにより製造することができる(特許第5185443号公報、Proc Natl Acad Sci U S A. 2010, 107: 8639-8643)。iPS細胞は、体細胞(例えば線維芽細胞、皮膚細胞等)にOct3/4、Sox2及びKlf4(必要に応じて更にc−Myc又はn−Myc)等のリプログラミング因子を導入することにより製造することができる(例えば、Ce11. 2006, 126:663-676、Nature. 2007, 448:313-317、Nat Biotechno1. 2008, 26;101-106、Cel1. 2007, 131:861‐872、Science. 2007, 318:1917-1920、Ce11 Stem Cells. 2007, 1:55-70、Nat Biotechnol. 2007, 25:1177-1181、Nature. 2007, 448:318-324、Cell Stem Cells. 2008, 2:10-12、Nature. 2008, 451:141-146、Science. 2007, 318:1917-1920参照)。体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立した幹細胞も、多能性幹細胞としてまた好ましい(例えば、Nature. 1997, 385:810-813、Science. 1998, 280:1256-1258、Nature Biotechnology. 1999, 17:456-461、Nature. 1998, 394:369-374、Nature Genetics. 1999, 22:127-128、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1999, 96:14984-14989、Nature Genetics. 2000, 24:109-110)。多能性幹細胞としては、具体的に、ヒトES細胞H9株(WA09)、ヒトES細胞H1(WA01)株(National Stem Cell bank、WISC Bank)や、KhES−1、KhES−2及びKhES−3(いずれも京大再生研付属幹細胞医学研究センター)や、マウスES細胞(EB3、EB5等)(理研セルバンク)や、HES3、HES4、及びHES6(National Stem Cell bank、モナッシュ大学)等のヒトES細胞や、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、C−Myc遺伝子及びSox2遺伝子を導入することによって得られるiPS細胞(理研バイオリソースセンター、京都大学)や、Tic(JCRB1331株)、Dotcom(JCRB1327株)、Squeaky(JCRB1329株)、及びToe(JCRB1338株)、 Lollipop(JCRB1336株)(以上成育医療センター、医薬基盤研究所難病・疾患資源研究部・JCRB細胞バンク)や、UTA−1株及びUTA−1−SF−2−2株(いずれも東京大学)や、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子及びSox2遺伝子を導入することによって得られるiPS細胞(Nat Biotechnol. 2008, 26: 101-106)等のiPS細胞を例示することができる。
上記細胞増殖因子としては、哺乳動物細胞の細胞増殖を促進できるもの(化合物、サイトカイン、抽出液等)であればよく、具体的には、ウシ下垂体抽出液(Bovine PituitaryExtract:BPE)、サイプロテロンアセテート(Cyproterone acetate:Cyp)、特開2006−45098号公報に記載の成長阻害ペプチド(Growth Blocking Peptide)、ミノキシジル、ポリアミン(オリザポリアミン[ORYZA POLYAMINE]、プトレシン、スペルミジン、スペルミン等)、インスリン、トランスフェリン、トリヨードサイロニン(Triiodothyronine:TIT)、血管内皮細胞増殖因子(Vesicular endothelial growthfactor:VEGF)、肝細胞増殖因子(Hepatocyte growth factor:HGF)、インスリン様成長因子1(Insulin-like Growth Factor-1:IGF−1)、Wnt10、ソニック・ヘッジホッグ (Sonic hedgehog:SHH)、上皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)、血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor:PDGF)、FGF−2、FGF−7、FGF−9、骨形成タンパク質4[Bone Morphogenetic Protein 4:BMP4]、BMP5、アクチビンA、幹細胞因子(Stem Cell Factor:SCF)、Dkk1(Dickkopf-1)、Wnt阻害剤(XAV、IWP4等)、Wnt活性化剤(CHIR、Kenpaullone等)、白血病抑制因子(Leukemia Inhibitory Factor:LIF)、Wnt、TGF−β、及びこれらの組合せを挙げることができ、これらの中でもFGF−2が好ましい。
上記血清としては、具体的には、ウシ胎児血清(Fetal bovine serum;FBS)、子牛血清(Calf bovine serum;CS)を挙げることができる。また、上記血清代替物としては、血清の代わりに細胞を培養・増殖させるために用いるもの(成分)であり、血清と同様の効果を有するものであればよく、具体的には、市販のB27サプリメント(−インスリン)(Life Technologies社製)、N2サプリメント(Life Technologies社製)、B27サプリメント(Life Technologies社製)、Knockout Serum Replacement(Invitrogen社製)等を挙げることができる。
上記哺乳動物細胞培養用基礎培養液としては、哺乳動物細胞の増殖に必要な栄養源、例えば、アミノ酸(グルタミン、アラニン、アスパラギン、セリン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リジン、オルニチン、フェニルアラニン、タウリン、トレオニン、トリプトファン、バリン等)、ビタミン類(塩化コリン、パントテン酸塩、葉酸、ニコチンアミド、塩酸ピリドキサル、リボフラビン、塩酸チアミン、アスコルビン酸、ビオチン、イノシトール等)、糖類(グルコース、グルコサミン等)を含むものであればよく、具体的には、GMEM(Glasgow's Minimal Essential Medium)、IMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)、M−199(Medium 199)、EMEM(Eagle's Minimum Essential Medium)、αMEM、DMEM(Dulbecco's modified Eagle's Medium)、Ham's F12、RPMI 1640、Fischer's、AIM−V、PCGM(TMTPGM-250、東洋紡社製)等の培養液を挙げることができる。また、上記哺乳動物細胞培養用基礎培養液には、必要に応じて、鉄源(トランスフェリン、ラクトフェリン等)、ミネラル(亜セレン酸ナトリウム、炭酸コバルト、ヨウ素酸カルシウム等)、ステロイド(プロゲステロン、β-エストラジオール等)、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン等)、緩衝剤(TRIS[Tris(hydroxymethyl)aminomethane]、HEPES[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid]、PIPES[Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid]、MOPS[3-Morpholinopropanesulfonic acid]等)などの添加物を適宜補充してもよい。
1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子としては、毛乳頭細胞の細胞増殖を促進できるもの(化合物、サイトカイン、抽出液等)であればよく、具体的には、BPE、Cyp、特開2006−45098号公報に記載の成長阻害ペプチド、ミノキシジル、ポリアミン(オリザポリアミン[ORYZA POLYAMINE]、プトレシン、スペルミジン、スペルミン等)、FGF−2、FGF−7、インスリン、トランスフェリン、TIT、VEGF、HGF、IGF−1、Wnt10、SHH、及びこれらの組合せを挙げることができ、少なくともBPE及びCypを含むものが好ましい。
本件3層ゲルは、例えば以下の手順にしたがって調製することができる。まず、細胞増殖因子を、溶液の状態の上記ゲル材料(r)に混合して細胞増殖因子含有溶液を調製し、微小量滴下(排出)手段(マイクロディスペンサー、マイクロディスペンサー等)を用いて培養器(ガラス製又はプラスチック製のマルチウエルプレート、培養皿[シャーレ、ディッシュ]等)上に滴下した後、ゲル化処理を行い、細胞増殖因子ゲルを調製する。ゲル溶液中の細胞増殖因子の濃度は、ゲルの体積及び/又は表面積や、使用する細胞増殖因子の種類等に応じて適宜決定されるが、通常0.1ng/mL〜100μg/mLの範囲内であり、好ましくは1ng/mL〜10μg/mLであり、より好ましくは1ng/mL〜3μg/mLであり、さらに好ましくは1〜1000ng/mLであり、最も好ましくは5〜500ng/mLである。また、滴下する細胞増殖因子含有ゲル溶液の体積としては、培養器上に滴下したゲル溶液が略球状となればよく、通常0.1μL〜10mLの範囲内であり、好ましくは0.1〜1000μLであり、より好ましくは0.3〜300μLであり、さらに好ましくは0.3〜100μLであり、さらにより好ましくは0.3〜30μLであり、最も好ましくは0.5〜5μLである。
続いて、哺乳動物多能性幹細胞を、溶液の状態の上記ゲル材料(q)中に懸濁して哺乳動物多能性幹細胞懸濁液を調製し、上記微小量滴下手段を用いて細胞増殖因子ゲル上に滴下した後、ゲル化処理を行い、多能性幹細胞ゲルに被覆された細胞増殖因子ゲル(略球状の2層ゲル)を調製する。懸濁液中の哺乳動物多能性幹細胞の濃度は、ゲルの体積及び/又は表面積や、使用する哺乳動物多能性幹細胞の種類等に応じて適宜決定されるが、通常1×10〜1×10細胞/μLの範囲内であり、好ましくは1×10〜1×10細胞/μLであり、より好ましくは、1×10〜1×10細胞/μLであり、さらに好ましくは1×10〜1×10細胞/μLである。また、滴下する哺乳動物多能性幹細胞懸濁液の体積としては、培養器上に滴下した細胞懸濁液が略球状となればよく、通常0.1μL〜10mLの範囲内であり、好ましくは0.1〜1000μLであり、より好ましくは0.5〜300μLであり、さらに好ましくは1〜100μLであり、さらにより好ましくは1〜30μLであり、最も好ましくは1〜10μLである。
次いで、哺乳動物表皮細胞を、溶液の状態の上記ゲル材料(p)中に懸濁して哺乳動物表皮細胞懸濁液を調製し、上記微小量滴下手段を用いて多能性幹細胞ゲル上に滴下した後、ゲル化処理を行い、表皮細胞ゲルと、多能性幹細胞ゲルとに順次被覆された細胞増殖因子ゲル(本件3層ゲル)を調製する。懸濁液中の哺乳動物表皮細胞の濃度は、ゲルの体積及び/又は表面積や、使用する哺乳動物表皮細胞の種類等に応じて適宜決定されるが、通常1×10〜1×10細胞/μLの範囲内であり、好ましくは1×10〜1×10細胞/μLであり、より好ましくは、1×10〜1×10細胞/μLであり、さらに好ましくは1×10〜1×10細胞/μLである。また、滴下する哺乳動物表皮細胞懸濁液の体積としては、培養器上に滴下した細胞懸濁液が略球状となればよく、通常0.1μL〜10mLの範囲内であり、好ましくは0.1〜1000μLであり、より好ましくは0.5〜500μLであり、さらに好ましくは1〜200μLであり、さらにより好ましくは1〜50μLであり、最も好ましくは1〜20μLである。
本件3層ゲルは、多能性幹細胞ゲルが細胞増殖因子ゲルを被覆し、表皮細胞ゲルがさらに前記多能性幹細胞ゲルを被覆することにより形成される。このため、各ゲルの体積は、通常、細胞増殖因子ゲル、多能性幹細胞ゲル、及び表皮細胞ゲルの順で大きくなるように適宜(1:2:3、1:2:4、1:3:5、1:3:4、1:3:6等)決定される。
ゲル材料としてアルギン酸を用いる場合、その特性(水に不溶性)を考慮すると、1価のカチオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等)を添加した、1価のカチオンとのアルギン酸塩溶液中に、細胞増殖因子を混合したり、哺乳動物多能性幹細胞又は表皮細胞を懸濁する。また、ゲル材料として2価以上のカチオンとのアルギン酸塩を用いる場合、その特性(2価以上のカチオンによるイオン架橋[ゲル化]が生じる)を考慮すると、キレート剤(EDTA[Ethylene Diamine Tetraacetic Acid]、EGTA[Ethylene Glycol Tetraacetic Acid])により調製した、2価以上のカチオンとのアルギン酸塩溶液中に、細胞増殖因子を混合したり、哺乳動物多能性幹細胞又は表皮細胞を懸濁する。また、ゲル材料としてコラーゲンを用いる場合、その特性(酸性であり、凝固温度が15℃前後)を考慮すると、通常、アルカリ剤(水酸化カリウム又はナトリウム、炭酸カリウム又はナトリウム等)により中性に調整した低温(通常0〜20℃)のコラーゲン溶液中に、細胞増殖因子を混合したり、哺乳動物多能性幹細胞又は表皮細胞を懸濁する。また、ゲル材料として寒天、アガロース、又はカラギーナンを用いる場合、それらの特性(凝固温度が35℃前後)を考慮すると、30〜40℃の寒天、アガロース、又はカラギーナン溶液中に、細胞増殖因子を混合したり、哺乳動物多能性幹細胞又は表皮細胞を懸濁する。
上記ゲル化処理は、ゲル材料の種類に応じて、架橋剤や温度条件等は適宜選択することができる。例えば、ゲル材料がアルギン酸又はその塩である場合、上記2価以上のカチオンを架橋剤として添加し、2価以上のカチオンによるイオン架橋を生じさせることによりゲル化させる。また、ゲル材料がコラーゲンである場合、低温(通常0〜20℃)の細胞増殖因子含有溶液や、多能性幹細胞又は表皮細胞懸濁液を、25〜40℃の範囲内まで加温することによりゲル化させる。また、ゲル材料が寒天、アガロース、又はカラギーナンである場合、30〜40℃の細胞増殖因子含有溶液や、多能性幹細胞又は表皮細胞懸濁液を、0〜28℃の範囲内まで冷却することによりゲル化させる。
本件3層ゲルは、本発明の効果が得られる限り、3層ゲル以外の任意の構成を含んでいてもよく、かかる任意の構成として、3層ゲル以外のゲル層が挙げられる。本件3層ゲルには、かかる3層ゲル以外の1層又は2層以上の任意のゲル層を有するものも含まれ、例えば、本件3層ゲルにおける第1層に該当するゲル層を2層以上有するものや、本件3層ゲルにおける第2層に該当するゲル層を2層以上有するものや、本件3層ゲルにおける第3層に該当するゲル層を2層以上有するものなどが挙げられる。例えば、第1層に該当するゲル層を2層有する場合、それら2層は全く同じ組成であってもよいし、細胞増殖因子の種類が異なっていてもよい。
本件作製方法の工程(a)や、本件評価方法又は本件スクリーニング方法の工程(A)において、本件3層ゲルを、本件分化誘導用培養液、すなわち、毛乳頭細胞増殖因子を含む基礎培養液中で培養すると、本件3層ゲル中の哺乳動物多能性幹細胞が毛包組織等に分化誘導する。一方、かかる培養が過度に及ぶと、毛包組織等以外の組織(神経組織、心筋組織等)に分化誘導する割合が増加するため、工程(a)や工程(A)の後、本件3層ゲルを本件分化誘導用培養液に代えて本件基礎培養液、すなわち、通常、毛乳頭細胞増殖因子をほとんど、或いは全く含まない基礎培養液中で培養する。
本件作製方法の工程(a)における培養期間や、本件評価方法又は本件スクリーニング方法の工程(A)における培養期間としては、本件3層ゲル中の哺乳動物多能性幹細胞を、毛包組織等に分化誘導させるのに十分な期間であり、かつ、毛包組織等以外の組織に分化誘導しないのに十分な期間であればよく、通常12時間〜20日の範囲内であり、例えば、12時間〜18日、12時間〜16日、12時間〜14日、12時間〜13日、12時間〜12日、12時間〜11日、12時間〜10日、1〜20日、1〜18日、1〜16日、1〜14日、1〜13日、1〜12日、1〜11日、1〜10日、3〜20日、3〜18日、3〜16日、3〜14日、3〜13日、3〜12日、3〜11日、3〜10日、4〜20日、4〜18日、4〜16日、4〜14日、4〜13日、4〜12日、4〜11日、4〜10日、5〜20日、5〜18日、5〜16日、5〜14日、5〜13日、5〜12日、5〜11日、5〜10日、6〜20日、6〜18日、6〜16日、6〜14日、6〜13日、6〜12日、6〜11日、6〜10日、7〜20日、7〜18日、7〜16日、7〜14日、7〜13日、7〜12日、7〜11日、7〜10日であってもよいが、4〜13日が好ましい。
本件作製方法の工程(b)や、本件評価方法又は本件スクリーニング方法の工程(B)において、工程(a)や工程(A)の培養後、本件3層ゲルを、血清又は血清代替物を含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する。工程(b)や工程(B)の培養を行うに際しては、工程(a)や工程(A)の培養後、培養液除去手段(アスピレーター、ピペット、ピペットマン等)を用いて本件分化誘導用培養液を除き、新たな本件基礎培養液を加えることが好ましい。本件作製方法の工程(b)や、本件スクリーニング方法の工程(B)における培養期間としては、毛包組織等が形成されるのに十分な期間であればよく、通常5〜60日の範囲内であり、好ましくは10〜56日であり、より好ましくは20〜53日であり、さらに好ましくは30〜50日であり、さらにより好ましくは36〜46日である。
本件作製方法の工程(a)及び(b)や、本件評価方法又は本件スクリーニング方法の工程(A)及び(B)において、本件3層ゲルの培養は、哺乳動物多能性幹細胞や表皮細胞の培養に適した条件で実施することができる。例えば、培養器上に調製した本件3層ゲル全体が液面下となるように、本件分化誘導用培養液や本件基礎培養液を前記培養器へ加え、適切な温度(通常約30〜40℃の範囲であり、好ましくは36〜38℃)、CO濃度(通常1〜10%の範囲であり、好ましくは4〜6%)、及び湿度(通常70〜100%の範囲であり、好ましくは95〜100%)下で培養する。また、本件分化誘導用培養液や本件基礎培養液は、培養期間中、必要に応じて適宜新しいものに交換してもよい。
本件評価方法又は本件スクリーニング方法の工程(C)において、本件3層ゲルにおける毛包組織等の形成効率(%)は、前述のHE染色法や、毛包組織のマーカーに対する抗体、又は毛包周辺組織のマーカーに対する抗体を用いた免疫組織化学染色法を行い、位相差顕微鏡により毛包組織等が形成された本件3層ゲル数と、解析した本件3層ゲルの合計数とを算出し、式[(毛包組織等が形成された本件3層ゲル数/本件3層ゲルの合計数)×100]に入力することにより算出することができる。
本件評価方法の工程(C)において、本件3層ゲルにおける毛包組織等の形成効率の上昇が検出された場合、被検薬剤又は被検物質は、毛包組織等の形成促進作用を有していると評価することができる。本件評価方法の工程(C)において、本件3層ゲルにおける毛包組織等の形成効率の低下が検出された場合、被検薬剤又は被検物質は、毛包組織等の形成抑制(阻害)作用を有していると評価することができる。
本件スクリーニング方法の工程(C)において、本件3層ゲルにおける毛包組織等の形成効率の上昇が検出された場合、被検薬剤又は被検物質を、脱毛症又は無毛症の予防又は治療剤の候補薬剤又は物質として選択したり、毛髪の増加に影響のある皮膚刺激性物質として選択することができる。本件スクリーニング方法の工程(C)において、本件3層ゲルにおける毛包組織等の形成効率の低下が検出された場合、被検薬剤又は被検物質を、多毛症の予防又は治療剤の候補薬剤又は物質として選択したり、毛髪の減少に影響のある皮膚刺激性物質として選択することができる。
本件評価方法の工程(C)や本件スクリーニング方法の工程(C)において、毛包組織等の形成効率の上昇又は低下を判断するための比較対象は、通常、被検薬剤又は被検物質非存在下で本件3層ゲルを培養(好ましくは、同一の条件下で培養)した場合の、毛包組織等の形成効率である。かかる比較対象の形成効率は、本件スクリーニング方法を実施する際、その都度算出したものであってもよいし、予め算出したものであってもよい。
本件作製方法の工程(a)及び(b)における人為的操作は、埃や細菌等の混入(コンタミネーション)を避けるため、クリーンベンチ等を用いて無菌的に行うことが好ましい。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、細胞培養はインキュベーター(37℃、5%CO)内で行った。
1.3層ゲルを用いた毛包組織及びその周辺組織の作製
インビボでの毛包組織の形態を、インビトロにおいて模擬できれば、毛包組織及びその周辺組織を作製できると考えた。そこで、図1に示す3層ゲル(実施例サンプル)を作製し、インビトロで培養することを試みた。
1−1 方法
[ES細胞の調製]
マウス胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell:ES細胞、EB3クローン、理研セルバンク)を凍結解凍後、0.1% ゼラチン溶液でゼラチンコートを施した25cmセルカルチャーフラスコ(BioLite 25cm2Flask, Vented、ThermoScientific)に播種し、10% ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)、1% 抗生物質−抗真菌剤(Antimycotic-Antibiotic:Invitrogen)、0.1mM MEM非必須アミノ酸(Non-Essential AminoAcid Solution:NEAA、ナカライテスク)、1mM ピルビン酸ナトリウム(100mmol/L Sodiun Pyruvate Solution[×100]、和光純薬工業)、0.1mM 2−メルカプトエタノール(2-Mercaptoethanol、メルク)、1000units/mL 白血球阻害因子(Leukemia Inhibitory Factor:LIF、和光純薬工業)100μL、及びブラストサイジンS(Blasticidin S Solution)を含むGMEM(Glasgow Modified Minimum Essential Medium、シグマアルドリッチ)中で培養し、実験に必要となる細胞数まで増殖させた。
[表皮細胞の調製]
在胎17日目の妊娠マウスに麻酔を施し、子宮内から胎児マウスを摘出した後、皮膚片を採取し、0.25% トリプシン溶液中に浸漬し、酵素処理を施した。処理後の皮膚片を、10% FBS、100units/mL ペニシリン(明治製菓)、100units/mL カナマイシン(明治製菓)、10ng/mL コレラ毒素(シグマアルドリッチ)、10ng/mL EGF(和光純薬工業)、0.5μg/mLヒドロコルチゾン(ファイザー)、5μg/mL インスリン(日本イーライリリー)、及び2×10−9M トリヨードチロニン(武田薬品工業)を含有するダルベッコ変法イーグル最小必須培養液(Dulbecco's Modified Eagle Medium:DMEM)中に撹拌し、細胞を分散させた後、セルストレイナー(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を用いて皮膚残渣を除去した。得られた細胞浮遊液を遠心分離処理し、上清を除き、細胞(表皮細胞)を得た(Iwamoto, S. et al. “Effect of Teprenone on Cultured Normal Human Keratinocytes” Journal of Japan Society of Plastic and Reconstructive Surgery 31:224-230 (2011))。
[3層ゲルの作製法]
まず、第1層として細胞増殖因子(FGF−2)を含有するアルギン酸カルシウムゲルを作製した。具体的には、FGF−2(BioVision)を、最終濃度が40ng/mLとなるように0.2% アルギン酸ナトリウム溶液に混合し、マイクロディスペンサーで1μLずつ、直径60mmの細胞培養皿の上に滴下した。その後、102mM 塩化カルシウム水溶液を上記培養皿に5mL加えることにより、アルギン酸ナトリウム溶液をゲル化させ、アルギン酸カルシウムゲルを調製した。なお、ゲル化後は、余分な塩化カルシウム水溶液を除去した。
続いて、上記[ES細胞の調製]及び[表皮細胞の調製]の項目に記載の方法にしたがって調製したES細胞及び表皮細胞を、それぞれ2.4mg/mL I型コラーゲン中性溶液(I−AC、高研)中に、細胞数が1.4〜1.8×10細胞/3μLビーズ、及び1.4〜1.8×10細胞/5μLビーズとなるように分散させた。調製したES細胞含有コラーゲン溶液、及び表皮細胞含有コラーゲン溶液を、マイクロディスペンサーを用いてそれぞれ3μL(1.4〜1.8×10細胞)、及び5μL(1.4〜1.8×10細胞)ずつアルギン酸ゲルビーズ上に順に滴下した後、インキュベーター(37℃、5%CO)内でゲル化させ、3層ゲル(図2)を作製した。
なお、かかる3層ゲルにおいて、第1層は、その全表面積のおよそ90〜100%を第2層(ES細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層)によって覆われており、第2層は、その全表面積のおよそ90〜100%を第3層(表皮細胞を包埋するI型コラーゲンゲル層)によって覆われていた。
[3層ゲルの培養及び免疫組織化学染色]
上記[3層ゲルの作製法]に記載の方法にしたがって作製した3層ゲル(実施例サンプル)を、1% FCS(FBS)、及び毛乳頭細胞増殖因子(0.5% ITT[インスリン・トランスフェリン・トリヨードサイロニン混液]、1% BPE、及び0.5% Cyp)を含むPCGM培養液(TMTPGM-250、東洋紡社製)中で28〜49日間培養するPapilla群、かかるPCGM培養液中で7〜10日間培養した後、10% FBS、1% 抗生物質−抗真菌剤、0.1mM NEAA、及び1mM ピルビン酸ナトリウムを含むGMEM培養液中でさらに21〜39日間培養するCombination群、及びかかるGMEM培養液中で28〜49日間培養するGMEM群の3群に分けて培養した。なお、培養液は2〜3日に一度交換した。
培養後の3層ゲルを10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋を行い、定法にしたがってパラフィン切片を作製し、HE染色法を用いて細胞を染色した。また、毛包組織全体を染色するために抗サイトケラチン抗体(AE1/AE3クローン、DAKO)と、毛包組織の周辺組織(立毛筋)を染色するために抗平滑筋アクチン(αSMA)抗体(DAKO)とを用い、定法にしたがってDAB(3,3'-diaminobenzidine)染色を行った。なお、コントロールとして、マウス胎児の皮膚組織における毛包組織を同様に染色した。
1−2 結果及び考察
Combination群において、20個の3層ゲル(実施例サンプル)をHE染色法により解析したところ、そのうち9個(45%)について、同心円状の毛包様組織(図3b)と、その周辺に平滑筋様組織(図3a)が形成されることが示された。かかる毛包様組織は、マウス胎児の毛包組織(図4a)と同じ構造であること、及びサイトケラチン陽性であることが示された(図5の上段及び中段)。さらに、上記平滑筋様組織は、平滑筋アクチン陽性であることが示された(図5の下段)。これらの結果は、3層ゲルを、基礎培養液中で培養後、毛乳頭細胞増殖因子を含む基礎培養液中で培養すると、毛包組織及びその周辺組織が形成されることを示している。
一方、Papilla群においては、毛包組織及びその周辺組織は3%(1/30個)と低い割合でしか形成されず、また、GMEM群においては、毛包組織及びその周辺組織は全く(0/20個)形成されなかった。この結果から、3層ゲルの基礎培養液中での培養と、その後の毛乳頭細胞増殖因子を含む基礎培養液中での培養が、毛包組織及びその周辺組織形成に必要であることを示している。
なお、上記3群では、培養時間の経過とともに3層ゲルが収縮し、組織再生が認められたが、特にCombination群及びPapilla群では収縮率が大きく、組織再生が顕著であった。
2.3層ゲルの評価
3層ゲル(実施例サンプル)を培養すると、毛包組織及びその周辺組織が形成されることが示されたので、ゲルを3層ではなく2層にした場合や、略球状ではなくシート状にした場合に、毛包組織及びその周辺組織が形成されるかどうかを解析した。具体的には、アルギン酸カルシウムゲル層(第1層)のない、第2層(ES細胞)及び第3層(表皮細胞)からなる2層ゲル(比較例サンプル1)や、ES細胞と表皮細胞の混合からなる単(1)層ゲル(比較例サンプル2)や、略球状ではなくシート状の3層ゲル(比較例サンプル3)を、以下の「2−1 方法」に記載の方法にしたがって作製し、上記[3層ゲルの培養及び免疫組織化学染色]に記載の方法にしたがって培養し、免疫組織化学染色を行った。
2−1 方法
[比較例サンプル1の作製法]
上記[ES細胞の調製]及び[表皮細胞の調製]の項目に記載の方法にしたがって調製したES細胞及び表皮細胞を、それぞれ2.4mg/mL I型コラーゲン中性溶液(I−AC、高研)中に、細胞数が1.4〜1.8×10細胞/3μLビーズ、及び1.4〜1.8×10細胞/5μLビーズとなるように分散させた。調製したES細胞含有コラーゲン溶液、及び表皮細胞含有コラーゲン溶液を、マイクロディスペンサーを用いてそれぞれ3μL(1.4〜1.8×10細胞)、及び5μL(1.4〜1.8×10細胞)ずつ直径60mmの細胞培養皿の上に滴下した。その後、インキュベーター(37℃、5%CO)内でゲル化させ、比較例サンプル1(図6)を作製した。
[比較例サンプル2の作製法]
上記[ES細胞の調製]及び[表皮細胞の調製]の項目に記載の方法にしたがって調製したES細胞及び表皮細胞を、2.4mg/mL I型コラーゲン中性溶液(I−AC、高研)中に、それぞれの細胞数が1.4〜1.8×10細胞/8μLビーズとなるように混合・分散させた。調製したES細胞及び表皮細胞含有コラーゲン溶液8μL(ES細胞1.4〜1.8×10細胞、及び表皮細胞1.4〜1.8×10細胞)を、マイクロディスペンサーを用いて細胞増殖因子を含まないアルギン酸ゲルビーズ上に順に滴下した後、インキュベーター(37℃、5%CO)内でゲル化させ、比較例サンプル2(図7)を作製した。
[比較例サンプル3の作製法]
上記[3層ゲルの作製方法]の項目に記載の方法にしたがって、細胞増殖因子(FGF−2)を含有するアルギン酸カルシウムゲル100μLを、直径60mmの細胞培養皿の上に調製することにより、シート状のアルギン酸カルシウムゲルを作製した。続いて、上記[ES細胞の調製]及び[表皮細胞の調製]の項目に記載の方法にしたがって調製したES細胞及び表皮細胞を、それぞれ2.4mg/mL I型コラーゲン中性溶液(I−AC、高研)中に、細胞数が1.4〜1.8×10細胞/300μLゲルシート、及び1.4〜1.8×10細胞/500μLビーズとなるように分散させた。調製したES細胞含有コラーゲン溶液、及び表皮細胞含有コラーゲン溶液を、マイクロディスペンサーを用いてそれぞれ300μL(1.4〜1.8×10細胞)、及び500μL(1.4〜1.8×10細胞)ずつ上記シート状のアルギン酸カルシウムゲル上に滴下した。その後、インキュベーター(37℃、5%CO)内でゲル化させ、比較例サンプル3(図8)を作製した。
2−2 結果及び考察
比較例サンプル1を用いた場合、Combination群及びPapilla群では、培養時間の経過とともにゲルの収縮率が大きく、組織再生が認められたものの、GMEM群も含めて、毛包組織及びその周辺組織は全く(0/20個)形成されなかった(図9)。また、比較例サンプル2及び3については、3群(Combination群、Papilla群、及びGMEM群)ともに、ゲルの収縮率が小さく、組織再生があまり認められず、また、毛包組織及びその周辺組織も全く(0/15個)形成されなかった(図10)。これらの結果から、多能性幹細胞と、表皮細胞を三次元的な位置関係が制御されるように配置し、かつ、多能性幹細胞を、培養初期の段階から細胞増殖因子が徐放される条件下で培養することが、インビトロでの毛包組織及びその周辺組織の形成に必要であることが示された。さらに、実施例1に結果から、上記培養は、毛乳頭細胞増殖因子を含む細胞増殖培養液中で7〜10日前後行い、その後通常の細胞増殖培養液に代えて培養を行うことが必要であることも示された。
本発明の作製方法や作製用キットを用いると、インビトロにおいて、比較的簡便に、毛包組織等を作製することができる。このため、本発明は、脱毛症又は無毛症の治療に資するものである。また、本発明の評価方法や評価用キットを用いると、被検薬剤又は被検物質が、毛包組織等の形成促進作用を有しているか、或いは、毛包組織等の形成抑制(阻害)作用を有しているかを評価することができ、脱毛症;無毛症;多毛症;栄養不足、頭皮や髪へのダメージ、血流不足、女性ホルモンの減少、ストレスなどの原因によって生じるヘアサイクル異常(細く短い状態で髪の毛が抜ける状態)等の毛包組織等に関する疾患の予防剤又は治療剤の候補薬剤又は候補物質のスクリーニングや、毛髪の増減に影響のある皮膚刺激性物質のスクリーニングに有用である。このため、本発明は、脱毛症若しくは無毛症、又は多毛症の予防又は治療剤の開発に資するものである。

Claims (16)

  1. 以下の(p)〜(s)を備えることを特徴とする毛包組織又はその周辺組織形成の評価用キット。
    (p)哺乳動物表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料;
    (q)哺乳動物多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料;
    (r)細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料;
    (s)哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルを、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルに被覆し、哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルを、前記哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルに被覆することについて記載された添付文書;
  2. (p)哺乳動物表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料、及び(q)哺乳動物多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料が、コラーゲンであり、(r)細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料が、アルギン酸又はその塩であることを特徴とする請求項1に記載の評価用キット。
  3. 細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の評価用キット。
  4. 以下の工程(A)〜(C)を備えたことを特徴とする毛包組織又はその周辺組織形成の評価方法であって、工程(A)における哺乳動物細胞培養用基礎培養液、及び工程(B)における哺乳動物細胞培養用基礎培養液のいずれか一方又は両方に被検薬剤又は被検物質が含まれる、前記評価方法。
    (A)哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルと、
    前記哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルに被覆された、哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルと、
    前記多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルに被覆された、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルと
    を含む3層のゲルを、1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子と、血清又は血清代替物とを含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する工程;
    (B)工程(A)の培養後、前記3層のゲルを、血清又は血清代替物を含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する工程;
    (C)工程(B)の培養後、前記3層のゲルにおける毛包組織又はその周辺組織の形成効率の上昇又は低下を検出する工程;
  5. 工程(A)の培養を、4〜13日間行うことを特徴とする請求項4に記載の評価方法。
  6. 哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲル、及び哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルが、コラーゲンゲルであり、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルが、2価以上のカチオンとのアルギン酸塩ゲルであることを特徴とする請求項4又は5に記載の評価方法。
  7. 2種以上の毛乳頭細胞増殖因子が、少なくともウシ下垂体抽出液(BPE)及びサイプロテロンアセテート(Cyp)を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の評価方法。
  8. 細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の評価方法。
  9. 以下の(p)〜(s)を備えることを特徴とする毛包組織又はその周辺組織の作製用キット。
    (p)哺乳動物表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料;
    (q)哺乳動物多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料;
    (r)細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料;
    (s)哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルを、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルに被覆し、哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルを、前記哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルに被覆することについて記載された添付文書;
  10. (p)哺乳動物表皮細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料、及び(q)哺乳動物多能性幹細胞を、略球状のゲルに包埋するためのゲル材料が、コラーゲンであり、(r)細胞増殖因子を、略球状のゲルに含有するためのゲル材料が、アルギン酸又はその塩であることを特徴とする請求項9に記載の作製用キット。
  11. 細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2であることを特徴とする請求項9又は10に記載の作製用キット。
  12. 以下の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とするインビトロでの毛包組織又はその周辺組織の作製方法。
    (a)哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルと、
    前記哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲルに被覆された、哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルと、
    前記多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルに被覆された、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルと
    を含む3層のゲルを、1種又は2種以上の毛乳頭細胞増殖因子と、血清又は血清代替物とを含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する工程;
    (b)工程(a)の培養後、前記3層のゲルを、血清又は血清代替物を含む哺乳動物細胞培養用基礎培養液中で培養する工程;
  13. 工程(a)の培養を、4〜13日間行うことを特徴とする請求項12に記載の作製方法。
  14. 哺乳動物表皮細胞を包埋する略球状のゲル、及び哺乳動物多能性幹細胞を包埋する略球状のゲルが、コラーゲンゲルであり、細胞増殖因子を含有する略球状のゲルが、2価以上のカチオンとのアルギン酸塩ゲルであることを特徴とする請求項12又は13に記載の作製方法。
  15. 2種以上の毛乳頭細胞増殖因子が、少なくともウシ下垂体抽出液(BPE)及びサイプロテロンアセテート(Cyp)を含むことを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の作製方法。
  16. 細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)−2であることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の作製方法。
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