JP2017207935A - モータ制御装置 - Google Patents

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義生 阿部
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【課題】モータにより回転する機械のイナーシャーが大きい場合に、速度変動を短時間で抑制する。【解決手段】モータ制御装置1の速度制御器15は、入力した速度偏差Δωが0になるように、予め設定された比例ゲイン及び積分ゲインを用いてPI制御器による速度制御を行い、トルク指令τ*を算出する。微分補償器16は、入力した速度偏差Δωに対し、予め設定されたフィルタ周波数、微分周波数及び微分ゲインを用いて微分処理を施し、補償値Fを算出する。加算器19は、トルク指令τ*に補償値F及び起動値Sを加算してトルク指令τ*1を求める。そして、トルク指令τ*1に基づいて、インバータ2を介してモータ3が回転する。【選択図】図1

Description

本発明は、ロール等の負荷変動の少ない機械に連結されたモータを回転制御するモータ制御技術に関し、特に、モータと機械との間のイナーシャー比が大きい場合に適用するモータ制御装置に関する。
従来、ロール等の機械をモータにて駆動し、機械を所定の回転速度に制御するモータ制御システムが知られている。例えば、シート状の紙等の材料を一定速度で走行させ、走行する材料をロータリーカッターで所定長の製品に連続して切断するモータ制御システムでは、材料を一定速度で走行させるために、ロール状の機械が用いられる(例えば、特許文献1〜3を参照)。
このロール状の機械は、モータ制御装置によるモータの回転制御により、シート状の材料をロータリーカッターへ一定速度で供給する。
このようなモータ制御システムにおいては、負荷変動の少ないロール状の機械、すなわち慣性モーメント(イナーシャー)の大きい機械が用いられる。イナーシャーの大きい機械の方が小さい機械よりも、回転速度が安定するからである。これは、機械自体のフライホイール効果によるものである。ロール状の機械にフライホイールを設けることにより、回転速度を一層安定させることができる。
このように、負荷変動の少ないロール状の機械を用いることにより、シート状の材料の走行速度を安定させることができ、後段のロータリーカッターにて安定した長さの切断を実現することができる。
一方で、イナーシャーの大きい機械を用いた場合には、安定した速度で回転しているときに、外部からの影響を受けてその回転速度が変動すると、元の安定した速度に戻すのが難しいことが知られている。
一般に、回転速度が変動したときには、比例積分制御(PI制御)にて回転速度を安定させる。しかし、機械とモータとの間のイナーシャー比が大き過ぎると、安定するまでに時間がかかってしまう。
図4は、従来のモータ制御装置を含むモータ制御システムの概略図、及びモータ制御装置の構成例を示すブロック図である。このモータ制御システムは、モータ制御装置100によりインバータ2及びモータ3を介して、ロール6を一定速度で回転させることで、シート状の紙等の材料5を、直線の矢印の向きへ一定速度で走行させるシステムである。
一定速度で走行する材料5は、例えばロール6の後工程に設けられたロータリーカッターにより、所定長の製品に連続して切断される。
モータ制御装置100は、所定の速度指令ω*に基づいたトルク指令をインバータ2へ出力し、モータ3を一定速度で回転させる装置である。ロール6は、材料5を走行させるモータ3と機械的に連結しており、モータ3の回転に伴い回転する。
このモータ制御装置100は、F/V変換器(周波数/速度変換器)101、減算器102及び速度制御器103を備えている。尚、図4には、モータ3の回転制御に直接関連する構成部のみ示してあり、直接関連しない構成部は省略してある。
F/V変換器101は、PG(パルスジェネレータ)4から、モータ3の回転に応じたパルス信号を入力し、パルス信号をカウントし、パルス信号の周波数を速度に変換し、モータ3の回転速度である速度フィードバックωを減算器102に出力する。
減算器102は、所定の速度指令ω*を入力すると共に、F/V変換器101から速度フィードバックωを入力し、速度指令ω*から速度フィードバックωを減算し、速度偏差Δωを求める。そして、減算器102は、速度偏差Δωを速度制御器103に出力する。
速度制御器103は、減算器102から速度偏差Δωを入力すると共に、予め設定された比例ゲイン、積分ゲイン、プラスリミット及びマイナスリミットを入力する。そして、速度制御器103は、速度偏差Δωが0になるように、予め設定された比例ゲイン及び積分ゲインを用いてPI制御器による速度制御を行い、プラスリミット及びマイナスリミットの制限を加えたトルク指令τ*を算出する。速度制御器103は、トルク指令τ*をインバータ2へ出力する。
インバータ2は、モータ制御装置100の速度制御器103からトルク指令τ*を入力し、トルク指令τ*から3相交流電圧指令を生成し、3相交流電圧指令からPWM信号を生成する。そして、インバータ2は、PWM信号によってインバータのスイッチング素子のゲートをオンオフし、インバータに入力される直流バス電圧をスイッチングして交流電圧に変換する。そして、インバータ2は、交流電圧をモータ3へ供給する。PG4は、モータ3の回転に応じたパルス信号を発生する。
このように、モータ制御装置100により、速度指令ω*と速度フィードバックωとの間の速度偏差Δωに基づいて速度制御が実行され、モータ3が速度指令ω*の一定速度にて回転する。これにより、ロール6は、速度指令ω*の一定速度にて回転する。
図4に示したモータ制御システムにおいて、所定の速度指令ω*に従い、ロール6が一定速度にて回転し、材料5が一定の走行速度にて後段のロータリーカッターへ安定して供給されているものとする。速度指令ω*と速度フィードバックωとの間の速度偏差Δωは0である。
このような状態で、何らかの影響により、材料5の走行速度が変動した場合を想定する。このとき、ロール6の回転速度である速度フィードバックωが変動する。
例えば、図4において、ロール6の前段に、ロール状に巻かれた円柱形状の材料5を回転させ、シート状の材料5として巻き出し、ロール6へ供給する材料供給装置(図示せず)が設けられており、円柱形状の材料5の回転に起因してシート状の材料5の走行速度が変動することがあり得る。
図5は、ロール状に巻かれた円柱形状の材料5がシート状の材料5として供給される際に、その走行速度が変動していることを説明するイメージ図である。図5の上部に示すように、材料5の形状は、元々ロール状に巻かれた円柱であり、ロール6の一定速度の回転に伴って、シート状の材料5として供給される。
この場合、材料5の形状が真円の円柱であれば、ロール6の一定速度の回転に伴って、シート状の材料5は、一定の走行速度で供給される。しかし、ロール状に巻かれた材料5の形状にはばらつきがあり、必ずしも真円の円柱ではないため材料5の張力が変化する。このため、シート状の材料5の走行速度は必ずしも一定ではなく、変動してしまう。
図5の下部は、モータ制御装置100における速度フィードバックωのパターンのイメージを示している。横軸は時間tを示す。ロール状に巻かれた材料5の形状が真円ではない場合、ロール状の材料5の回転に伴い、その回転周期のタイミングで高周波の速度変動が生じる(図5のαの箇所)。モータ制御装置100は、このような速度変動に対応した速度制御を行う。
図4を参照して、モータ制御装置100の速度制御器103は、速度変動分の速度偏差Δωを入力し、予め設定された比例ゲイン及び積分ゲインを用いて、速度偏差Δωに応じたトルク指令τ*を算出することで、速度の安定化を図る。
ここで、モータ3に対するロール6のイナーシャー比が大きい場合には、イナーシャー比が小さい場合に比べ、微小な速度変動への追従性は低下してしまう。これは、速度制御器103が、速度指令ω*と速度フィードバックωとの差分である速度偏差Δωに対してPI制御を行っているため、速度偏差Δωが微小のときには、速度が安定するまで時間を要してしまうからである。
速度が安定するまでの時間の短縮化を図るためには、比例ゲイン及び積分ゲインを大きくすればよい。したがって、ロール6のイナーシャーが大きい場合には、比例ゲイン及び積分ゲインは、予め大きい値に設定されており、ロール6のイナーシャーが小さい場合には、比例ゲイン及び積分ゲインは、予め小さい値に設定されている。ロール6のイナーシャーの大きさに応じた比例ゲイン及び積分ゲインを予め設定しておくことにより、イナーシャーの大きさに依存しない速度応答性を得ることができる。
特開平8−174489号公報 特開2005−342827号公報 特開2008−105147号公報
しかしながら、図4に示したモータ制御システムでは、ロール6等の機械要素にバックラッシュ等があることから、モータ制御装置100のPI制御によっては、確実な速度制御を実現することができない場合がある。
前述のとおり、ロール6のイナーシャーが大きい場合には、比例ゲイン及び積分ゲインは、予め大きい値に設定しておく必要がある。しかし、比例ゲイン及び積分ゲインが一定以上の大きい値のときには、制御系が不安定になってしまう。
制御系の安定化を図るためには、比例ゲイン及び積分ゲインは、イナーシャーの大きさに応じた理想値よりも小さい値に設定しておく必要がある。しかし、比例ゲイン及び積分ゲインが理想値よりも小さい値に設定されると、速度応答性が低下してしまう。
このように、従来のモータ制御装置100による速度制御においては、ロール6のイナーシャーが大きい場合、制御系の安定化のために、比例ゲイン及び積分ゲインをイナーシャーの大きさに応じた理想値に設定することができず、理想値よりも低い値に設定する必要がある。このため、例えば図5の下部に示したような速度変動αが発生すると、その速度変動αに対する追従性が低下し、速度応答性が低下するという問題があった。
例えば、図4に示したモータ制御システムにおいて、後段の図示しないロータリーカッターにて連続的に材料5を所定長に切断する場合、従来のモータ制御装置100では、このような急峻な速度変動αに対応することができない。このため、精度の高い切断処理を実現することができない。
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、モータにより回転する機械のイナーシャーが大きい場合に、速度変動を短時間で抑制することが可能なモータ制御装置を提供することにある。
前記課題を解決するために、請求項1のモータ制御装置は、所定の速度指令に基づいてトルク指令を生成し、トルク指令に基づいてモータを回転制御し、前記モータに連結した機械を回転させるモータ制御装置において、前記所定の速度指令から前記モータの速度フィードバックを減算し、速度偏差を求める減算器と、前記減算器により求められた前記速度偏差が0となるように、比例及び積分制御し、第1のトルク指令を算出する速度制御器と、前記減算器により求められた前記速度偏差に対し、微分処理を施し、補償値を算出する微分補償器と、前記速度制御器により算出された前記第1のトルク指令に、前記微分補償器により算出された前記補償値を加算し、第2のトルク指令を求める加算器と、を備え、前記加算器により求められた前記第2のトルク指令に基づいて、前記モータを回転制御する、ことを特徴とする。
また、請求項2のモータ制御装置は、請求項1に記載のモータ制御装置において、前記微分補償器が、前記減算器により求められた前記速度偏差に対し、予め設定されたフィルタ周波数を用いて1次遅れ処理を施し、1次遅れ速度偏差を算出する1次遅れ器と、前記1次遅れ器により算出された前記1次遅れ速度偏差に対し、予め設定された微分周波数を用いて微分処理を施し、微分値を算出する微分器と、前記微分器により算出された前記微分値に、予め設定された微分ゲインを乗算し、前記補償値を求める乗算器と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項3のモータ制御装置は、請求項2に記載のモータ制御装置において、前記機械が、ロール状に巻かれた円柱形状の材料が回転することで巻き出されたシート状の材料を、前記所定の速度指令に従った一定速度で走行させるロールであり、前記モータの速度フィードバック及び前記速度偏差に、前記円柱形状の材料の回転に伴って生じる所定周期の速度変動が含まれる場合に、前記微分補償器の前記1次遅れ器が、前記速度変動を含む前記1次遅れ速度偏差を算出し、前記微分器が、前記1次遅れ速度偏差に含まれる前記速度変動に対して前記微分値を算出し、前記乗算器が、前記速度変動に対応した前記補償値を求める、ことを特徴とする。
以上のように、本発明によれば、モータにより回転する機械のイナーシャーがモータよりも大きい場合に、すなわちモータに対する機械のイナーシャー比が大き過ぎる(所定値よりも大きい)場合に、速度変動を短時間で抑制することが可能となる。
本発明の実施形態によるモータ制御装置を含むモータ制御システムの概略図、及びモータ制御装置の構成例を示すブロック図である。 微分補償器の構成例を示すブロック図である。 微分補償器の処理を説明するイメージ図である。 従来のモータ制御装置を含むモータ制御システムの概略図、及びモータ制御装置の構成例を示すブロック図である。 ロール状に巻かれた円柱形状の材料がシート状の材料として供給される際に、その走行速度が変動していることを説明するイメージ図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、従来のPI制御にて算出したトルク指令τ*に、微分制御(D制御)にて算出した補償値Fを加算することで新たなトルク指令τ*1を求め、この新たなトルク指令τ*1に基づいて、モータ3を回転させることを特徴とする。これにより、速度制御の応答性が向上し、速度変動を短時間で抑制することが可能となる。
〔モータ制御装置〕
図1は、本発明の実施形態によるモータ制御装置を含むモータ制御システムの概略図、及びモータ制御装置の構成例を示すブロック図である。このモータ制御システムは、図4に示したモータ制御システムと同様に、モータ制御装置1によりインバータ2及びモータ3を介して、図示しないロール6を一定速度で回転させることで、図示しないシート状の材料5を一定速度で走行させるシステムである。
モータ制御装置1は、図4に示したモータ制御装置100と同様に、所定の速度指令ω*に基づいた指令をインバータ2へ出力し、モータ3を一定速度で回転させる装置である。
このモータ制御装置1は、ローパスフィルタ10、Sカーブ変換器11、F/V変換器12、平滑フィルタ13、減算器14、速度制御器15、微分補償器16、ブーストトルク補償器17及び加算器18,19を備えている。尚、図1には、本発明に直接関連する構成部のみ示してあり、直接関連しない構成部は省略してある。
ローパスフィルタ10は、所定の速度指令ω*を入力し、速度指令ω*に対し、予め設定された周波数を用いてフィルタ処理を施し、フィルタ処理後の速度指令ω*1をSカーブ変換器11に出力する。これにより、速度指令ω*に付加された高周波ノイズが除去される。
Sカーブ変換器11は、いわゆるレート回路であり、ローパスフィルタ10からフィルタ処理後の速度指令ω*1を入力し、速度指令ω*1に対し、予め設定された加速時間、減速時間及びジャーク値を用いて変換処理を施す。そして、Sカーブ変換器11は、滑らかなS字カーブの時間特性を有する速度指令ω*2を生成する。Sカーブ変換器11は、滑らかなS字カーブの時間特性を有する速度指令ω*2を減算器14に出力する。
予め設定された加速時間は、ステップ状の入力信号に対し、当該時間分の加速の傾きを有する時間特性の信号となるように変換するパラメータである。減速時間は、ステップ状の入力信号に対し、当該時間分の減速の傾きを有する時間特性の信号となるように変換するパラメータである。ジャーク値は、加速度または減速度の変化の程度を定めるパラメータであり、加速または減速の始点及び終点を滑らかなS字カーブの特性の信号となるように変換するパラメータである。
F/V変換器12は、図4に示したF/V変換器101と同様に、PG4からモータ3の回転に応じたパルス信号を入力し、パルス信号をカウントする。そして、F/V変換器12は、パルス信号の周波数を速度に変換し、モータ3の回転速度である速度フィードバックωを平滑フィルタ13に出力する。
平滑フィルタ13は、F/V変換器12から速度フィードバックωを入力し、速度フィードバックωに対し、予め設定された平均値を用いて平滑化処理を施し、平滑化処理後の速度フィードバックω1を減算器14に出力する。平均値は、平滑化処理の程度を定めるパラメータである。
減算器14は、Sカーブ変換器11から速度指令ω*2を入力すると共に、平滑フィルタ13から速度フィードバックω1を入力し、速度指令ω*2から速度フィードバックω1を減算し、速度偏差Δωを求める。そして、減算器14は、速度偏差Δωを速度制御器15及び微分補償器16に出力する。
速度制御器15は、図4に示した速度制御器103と同様に、減算器14から速度偏差Δωを入力すると共に、予め設定された比例ゲイン、積分ゲイン、プラスリミット及びマイナスリミットを入力する。そして、速度制御器15は、速度偏差Δωが0になるように、予め設定された比例ゲイン及び積分ゲインを用いてPI制御器による速度制御を行い、プラスリミット及びマイナスリミットの制限を加えたトルク指令τ*を算出する。速度制御器15は、トルク指令τ*を加算器19に出力する。
微分補償器16は、減算器14から速度偏差Δωを入力すると共に、予め設定されたフィルタ周波数、微分周波数及び微分ゲインを入力する。そして、微分補償器16は、速度偏差Δωに対し、予め設定されたフィルタ周波数、微分周波数及び微分ゲインを用いて微分処理を施し、補償値Fを算出する。微分補償器16は、補償値Fを加算器18に出力する。微分補償器16の詳細については後述する。
ブーストトルク補償器17は、予め設定されたブースト値及びスケーリング値を入力し、モータ3の起動時に必要となるトルク指令τ*1に対応する起動値Sを生成し、起動値Sを加算器18に出力する。起動値Sは、予め設定されたブースト値及びスケーリング値をパラメータとした所定式にて算出される。
加算器18は、微分補償器16から補償値Fを入力すると共に、ブーストトルク補償器17から起動値Sを入力し、補償値Fに起動値Sを加算し、加算値を加算器19に出力する。
加算器19は、速度制御器15からトルク指令τ*を入力すると共に、加算器18から加算値を入力し、トルク指令τ*に加算値を加算し、トルク指令τ*1を求める。そして、加算器19は、トルク指令τ*1をインバータ2へ出力する。トルク指令τ*1は、以下の式にて表される。
[数1]
τ*1=τ*+F+S ・・・(1)
インバータ2及びPG4は図4にて説明済みであるから、ここでは説明を省略する。インバータ2へ出力されるトルク指令τ*1は、トルク指令τ*、補償値F及び起動値Sを加算した値である。この起動値Sは、モータ3の起動時に必要となるトルク指令τ*1に対応した値であるが、モータ3の起動後も、固定値としてトルク指令τ*1に含まれる。
モータ3の起動後においては、速度制御器15により、トルク指令τ*がこの起動値Sとバランスをとるように算出される。つまり、起動値Sは、速度制御器15により算出されるトルク指令τ*1に吸収されるから、速度制御は問題なく行われる。
〔微分補償器16〕
次に、図1に示した微分補償器16について詳細に説明する。前述のとおり、微分補償器16は、速度偏差Δωに対し、予め設定されたフィルタ周波数、微分周波数及び微分ゲインを用いて微分処理を施し、補償値Fを算出する。
図2は、微分補償器16の構成例を示すブロック図である。この微分補償器16は、1次遅れ器20、微分器21及び乗算器22を備えている。1次遅れ器20は、減算器14から速度偏差Δωを入力すると共に、予め設定されたフィルタ周波数を入力し、速度偏差Δωに対し、フィルタ周波数を用いて1次遅れ処理を施し、1次遅れ速度偏差を微分器21に出力する。
予め設定されたフィルタ周波数が高いほど、1次遅れ処理の効果は低く、速度偏差Δωの変化が1次遅れ速度偏差に反映され易い。一方、フィルタ周波数が低いほど、1次遅れ処理の効果は高く、速度偏差Δωの変化が1次遅れ速度偏差に反映され難く、速度偏差Δωの変化は、1次遅れ器20にて吸収され易い。
フィルタ周波数をWLG1とした場合、1次遅れ器20は、以下の伝達関数で表すことができる。
[数2]
1/{1+(s/WLG1)} ・・・(2)
微分器21は、1次遅れ器20から1次遅れ速度偏差を入力すると共に、予め設定された微分周波数を入力し、微分周波数を用いて1次遅れ速度偏差の微分値を算出する。そして、微分器21は、微分値を乗算器22に出力する。
予め設定された微分周波数が高いほど、1次遅れ速度偏差の変化が微分値に反映され易い。一方、微分周波数が低いほど、1次遅れ速度偏差の変化が微分値に反映され難く、1次遅れ速度偏差の変化は、微分器21にて吸収され易い。
微分周波数をWLG2とした場合、微分器21は、以下の伝達関数で表すことができる。
[数3]
(s/WLG2)/{1+(s/WLG2)} ・・・(3)
乗算器22は、微分器21から微分値を入力すると共に、予め設定された微分ゲインを入力し、微分値に微分ゲインを乗算し、補償値Fを求める。そして、乗算器22は、補償値Fを加算器18に出力する。
このように、微分補償器16により、予め設定されたフィルタ周波数、微分周波数及び微分ゲインを用いて、それぞれ1次遅れ処理、微分処理及び乗算処理が行われ、補償値Fが算出される。
図3は、微分補償器16の処理を説明するイメージ図であり、1次遅れ器20が入力する速度偏差Δω、及び1次遅れ器20が出力して微分器21が入力する1次遅れ速度偏差を示している。横軸は時間tを示す。
図3に示すように、速度偏差Δωには、ロール状に巻かれた材料5の形状が真円ではない場合に、そのロール状の材料5の回転に伴って周期的に生じる速度変動(図3のαの箇所)が含まれ、さらに、外乱(図3のβの箇所)も含まれる。
この速度偏差Δωが1次遅れ器20に入力されると、当該1次遅れ器20により、速度偏差Δωの信号から、速度偏差Δωに含まれる外乱βが取り除かれ、ロール状の材料5の回転に伴う速度変動αを含む1次遅れ速度偏差が出力される。
図3に示すように、1次遅れ速度偏差には、ロール状の材料5の回転に伴う速度変動αが含まれる。この1次遅れ速度偏差が微分器21に入力されると、当該微分器21により、1次遅れ速度偏差に含まれる速度変動αに対し微分値が求められ、乗算器22から補償値Fが出力される。
このように、1次遅れ器20により外乱βを取り除くことができるから、外乱βが微分器21に入力されることはなく、外乱βに対応する補償値Fが算出されることはない。また、微分器21により、ロール状の材料5の回転に伴う速度変動αに対応する補償値Fが算出される。
〔速度変動があった場合の動作〕
このようなモータ制御システムにおいて、モータ3に対するロール6のイナーシャー比が大きいものとし、所定の速度指令ω*に従い、ロール6が一定速度にて回転しているものとする。つまり、速度指令ω*2と速度フィードバックω1との間の速度偏差Δωは0である。
このような状態で、何らかの影響により、材料5の走行速度が微小変動した場合を想定する。例えば、前述のとおり、ロール状に巻かれた材料5の形状が真円ではない場合に、そのロール状の材料5の回転に伴って、シート状の材料5の走行速度が周期的に変動することを想定する。このとき、ロール6の回転速度である速度フィードバックωが変動し、速度フィードバックω1も変動するものとする。
図4に示した従来のモータ制御装置100では、速度制御器103のPI制御にて算出されたトルク指令τ*に基づいて、モータ3を回転させる。ここで、ロール6のイナーシャーが大きい場合には、制御系の安定化のために、比例ゲイン及び積分ゲインをイナーシャーの大きさに応じた理想値に設定することができず、理想値よりも低い値に設定する必要がある。このため、速度変動があったときには、これに対する追従性が低下し、速度応答性が低下してしまう。
これに対し、図1に示した本発明の実施形態のモータ制御装置1では、速度制御器15のPI制御にて算出されたトルク指令τ*に、微分補償器16のD制御にて算出された補償値Fを加算し、この加算値に基づいて、モータ3を回転させる。ここで、速度変動があったときには、速度変動に対して微分補償器16のD制御が直接実行され、速度変動に応じた補償値Fがトルク指令τ*に加算される。
このように、速度制御器15と並列して微分補償器16が設けられたことにより、速度変動に対応する補償値Fが即座にトルク指令τ*に加算される。そして、起動値Sも含めた加算値であるトルク指令τ*1に基づいて、モータ3が回転する。したがって、材料5の走行速度の微小変動が短時間に抑制される。
以上のように、本発明の実施形態によるモータ制御装置1によれば、速度制御器15は、入力した速度偏差Δωが0になるように、予め設定された比例ゲイン及び積分ゲインを用いてPI制御器による速度制御を行い、トルク指令τ*を算出する。また、微分補償器16は、入力した速度偏差Δωに対し、予め設定されたフィルタ周波数、微分周波数及び微分ゲインを用いて微分処理を施し、補償値Fを算出する。
加算器19は、トルク指令τ*に補償値F及び起動値Sを加算してトルク指令τ*1を求める。そして、トルク指令τ*1に基づいて、インバータ2を介してモータ3が回転する。
これにより、モータ3は、従来のPI制御によるトルク指令τ*に加え、本発明の実施形態にて新たに求めたD制御による補償値Fも含めた新たなトルク指令τ*1に基づいて回転することになる。したがって、モータ3により回転するロール6のイナーシャーがモータ3よりも大きい場合、すなわちモータ3に対するロール6のイナーシャー比が大き過ぎる(所定値よりも大きい)場合であっても、速度変動を短時間で抑制することが可能となる。
つまり、速度変動に伴う速度偏差Δωを比例積分して得られたトルク指令τ*に、速度変動に伴う速度偏差Δωを微分して得られた補償値Fを加算するようにしたから、速度制御の応答性を向上させることができ、速度変動を素早く収束させることができる。
また、従来技術では、ロール6のイナーシャーが大きい場合に、制御系の安定化のために、比例ゲイン及び積分ゲインをイナーシャーの大きさに応じた理想値に近い大きい値に設定する必要があった。本発明の実施形態では、比例ゲイン及び積分ゲインをさほど大きい値に設定する必要がない。
1,100 モータ制御装置
2 インバータ
3 モータ
4 PG(パルスジェネレータ)
5 材料
6 ロール
10 ローパスフィルタ
11 Sカーブ変換器
12,101 F/V(周波数/速度)変換器
13 平滑フィルタ
14,102 減算器
15,103 速度制御器
16 微分補償器
17 ブーストトルク補償器
18,19 加算器
20 1次遅れ器
21 微分器
22 乗算器
ω*,ω*1,ω*2 速度指令
ω,ω1 速度フィードバック
Δω 速度偏差
τ*,τ*1 トルク指令
F 補償値
S 起動値
α 速度変動
β 外乱

Claims (3)

  1. 所定の速度指令に基づいてトルク指令を生成し、トルク指令に基づいてモータを回転制御し、前記モータに連結した機械を回転させるモータ制御装置において、
    前記所定の速度指令から前記モータの速度フィードバックを減算し、速度偏差を求める減算器と、
    前記減算器により求められた前記速度偏差が0となるように、比例及び積分制御し、第1のトルク指令を算出する速度制御器と、
    前記減算器により求められた前記速度偏差に対し、微分処理を施し、補償値を算出する微分補償器と、
    前記速度制御器により算出された前記第1のトルク指令に、前記微分補償器により算出された前記補償値を加算し、第2のトルク指令を求める加算器と、を備え、
    前記加算器により求められた前記第2のトルク指令に基づいて、前記モータを回転制御する、ことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記微分補償器は、
    前記減算器により求められた前記速度偏差に対し、予め設定されたフィルタ周波数を用いて1次遅れ処理を施し、1次遅れ速度偏差を算出する1次遅れ器と、
    前記1次遅れ器により算出された前記1次遅れ速度偏差に対し、予め設定された微分周波数を用いて微分処理を施し、微分値を算出する微分器と、
    前記微分器により算出された前記微分値に、予め設定された微分ゲインを乗算し、前記補償値を求める乗算器と、を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
  3. 請求項2に記載のモータ制御装置において、
    前記機械は、ロール状に巻かれた円柱形状の材料が回転することで巻き出されたシート状の材料を、前記所定の速度指令に従った一定速度で走行させるロールであり、
    前記モータの速度フィードバック及び前記速度偏差に、前記円柱形状の材料の回転に伴って生じる所定周期の速度変動が含まれる場合に、
    前記微分補償器の前記1次遅れ器は、前記速度変動を含む前記1次遅れ速度偏差を算出し、
    前記微分器は、前記1次遅れ速度偏差に含まれる前記速度変動に対して前記微分値を算出し、
    前記乗算器は、前記速度変動に対応した前記補償値を求める、ことを特徴とするモータ制御装置。
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