以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料、及び個数は、説明のための例示であって、回転電機用積層鉄芯の仕様に応じて適宜変更することができる。以下において複数の実施形態や、変形例などが含まれる場合、それらを適宜組み合わせて実施することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、実施形態の製造方法で製造する回転電機用積層鉄芯であるロータコア10の軸方向一方側から見た図(a)と、(a)の一部の拡大図(b)である。図2は、図1のA−A断面図である。
ロータコア10は、回転電機を形成するために用いられる。例えば、回転電機は、3相交流電流で駆動する磁石付の同期電動機である。例えば、回転電機は、ハイブリッド車両を駆動するモータとして、または、発電機として、または、その両方の機能を有するモータジェネレータとして用いられる。回転電機は、ロータの径方向外側にステータを対向配置することにより形成される。ロータは、ロータコア10の周方向複数位置に形成された磁石挿入孔12に磁石(図示せず)を配置することにより形成される。
ロータコア10は、円筒状の部材であり、複数の鉄芯構成片20を積層することにより形成される。ロータの使用時には、ロータコア10の中心部に形成された軸孔14に回転軸(図示せず)が挿入されて固定される。
鉄芯構成片20は、円板状であり中心部に、軸孔14を形成する軸孔要素22が形成される。また、鉄芯構成片20の外周付近において、周方向複数位置には磁石挿入孔12を形成する磁石孔24が形成される。磁石孔24は、鉄芯構成片20の周方向に隣り合う2つを1組として、各組の磁石孔24で外径側に開いたV字形を形成する。
図1(b)に示すように、鉄芯構成片20において、磁石孔24の径方向最外端と鉄芯構成片20の外周縁との間にはブリッジ26が形成される。ブリッジ26は、鉄芯構成片20において、径方向幅Wが小さい部分である。これにより、鉄芯構成片20の強度は、このブリッジ26で小さくなる。このため、強度向上の面からはブリッジの径方向幅Wを大きくすることが望まれるが、径方向幅Wを小さくするほど磁石を鉄心構成片の外周面に近づけることができる。これにより、ロータコア及び回転電機の性能向上の面からは径方向幅Wを小さくすることが望まれる。実施形態は、鉄芯構成片の必要な強度を確保し、かつ、ロータコア及び回転電機の性能向上を図ることを目的とする。
鉄芯構成片20は、例えば厚みが0.5mm以下の薄板の鋼板を略環状に打ち抜いて形成される。鉄芯構成片20では、その打ち抜きによって中心部の軸孔要素22とその周囲の複数の磁石孔24とが形成される。図1に示すように、鉄芯構成片20には、径方向において磁石孔24と軸孔要素22との間には、軽量化のための複数の孔部28が形成されてもよい。ロータコア10は、予め設定された枚数の複数の鉄芯構成片20を積層して形成される。複数の鉄芯構成片20において、複数の磁石孔24が軸方向に接続されることにより、ロータコア10の磁石挿入孔12が形成される。
図3A、図3Bによりロータコア10の製造方法を説明する。図3Aは、実施形態の製造方法を示すフローチャートである。図3Bは、実施形態の製造方法において、第1工程(a)(b)及び第2工程(c)(d)を示す図である。ロータコア10の製造方法は、第1工程、第2工程、及び第3工程を有する。第1工程は、図3B(a)(b)に示すように、ロール状に巻かれて引き出された長尺状の電磁鋼板40に対し、幅方向一方側(図3B(b)の下側)の第1材料42及び幅方向他方側(図3B(b)の上側)の第2材料44に切り分ける(S10)。第1材料42及び第2材料44は帯状である。また、電磁鋼板40は、後述の図5に示すように、幅方向(図5の左右方向)において対称な強度異方性を有する。
そして、図2に示す第2工程(S12)では、打ち抜き加工装置である第1装置46(図3B)によって、第1材料42から打ち抜きにより複数の鉄芯構成片20(図1、図2)を形成する。また、第2工程では、打ち抜き加工装置である第2装置48によって、第2材料44から打ち抜きにより複数の鉄芯構成片20を形成する。
図4は、図1に示す鉄芯構成片20を帯状の第1材料42から打ち抜きによって形成する場合における打ち抜き位置を示す図である。図1に示すように、第1材料42では、幅方向(図4の左右方向)に2列で、千鳥配置状に打ち抜いて、複数の鉄芯構成片20を形成する。図4では、第1材料42において鉄芯構成片20を打ち抜く部分である打ち抜き予定部を円Pで示している。このように千鳥配置状に打ち抜き予定部を配置することで、第1材料42において、打ち抜き後の残りの部分を少なくできる。第2材料44(図3B)でも第1材料42と同様に打ち抜き位置を配置できる。
第2工程では、図3B(c)(d)に示すように第1材料42から鉄芯構成片20を打ち抜く方向と、第2材料44から鉄芯構成片20を打ち抜く方向とを、電磁鋼板40の表裏方向について反対とする。具体的には、第1装置46の前では、アンコイラ47を用いてロール状の第1材料42の上側から打ち抜く部分が引き出される、いわゆる上出しとして、第1装置46に第1材料42が移動される。第1装置46では複数のステージで構成される金型46aを用いて、第1材料42に上側から加工パンチ(図示せず)を下降させて第1材料42を打ち抜くことにより、鉄芯構成片20を形成する。
一方、第2装置48の前では、アンコイラ49を用いてロール状の第2材料44の下側から打ち抜く部分が引き出される、いわゆる下出しとして、第2装置48に第2材料44が移動される。第2装置48では、第1装置46と同様に複数のステージの金型48aを用いて、第2材料44に上側から加工パンチ(図示せず)を下降させて第2材料44を打ち抜くことにより、鉄芯構成片20を形成する。これにより、第1材料42から鉄芯構成片20を打ち抜く方向と、第2材料44から鉄芯構成片20を打ち抜く方向とは、電磁鋼板40の表裏方向について反対となる。このため、第1装置46及び第2装置48で同じ形状の金型46a、48aを用いて、鉄芯構成片の材料の強度異方性に応じて金型の形状を最適化して、複数の鉄芯構成片の間で形状を揃えて安定化させることができる。
これについて説明する前にまず、図5を用いて、電磁鋼板40、第1材料42及び第2材料44での強度異方性を説明する。図5は、帯状の電磁鋼板40において、第1材料42及び第2材料44を形成する部分のそれぞれの幅方向半部で材料の強度異方性が異なることを説明するための図である。図5(a)は、第1材料42及び第2材料44を形成する部分から円板を打ち抜いた場合において、その円板の周方向複数位置における半径の実測値を誇張して示すレーダーチャートである。図5(b)は、(a)に対応する材料の方向における強度傾向を楕円で示す図である。
電磁鋼板40は、圧延によって形成される等により、幅方向(図5の左右方向)において対称な強度異方性を有する。具体的には、電磁鋼板40を幅方向に4つに均等に分けた場合において、それぞれの部分では、方向に応じて材料の強度が異なる特性、すなわち強度異方性を有する。例えば、図5(a)で示すように、同じ形状の円板を、電磁鋼板の4つに分けた各部で打ち抜いた場合において、円板の外形が楕円に近い形状になる。この理由は、プレス成形によるせん断後の材料の伸び量が材料の強度異方性に影響されることによる。このため、楕円の形状は、材料の強度と大きな相関関係があり、楕円の長手方向は材料の強度が低い方向である。一方、楕円の短手方向は材料の強度が高い方向である。そして、図5(b)に示すように、電磁鋼板の幅方向中央の2つの部分では、楕円の長手方向が電磁鋼板40の長手方向である引き出し方向αとほぼ一致する。一方、電磁鋼板の幅方向両端の2つの部分では楕円が引き出し方向αに対し傾いて、引き出し側(図5の上側)で幅方向中央に向くように引き出し方向αに対し傾斜する。
電磁鋼板40は、幅方向一方側が第1材料42を形成する第1部分40aであり、幅方向他方側が第2材料44を形成する第2部分40bである。そして、第1部分40aのうち、幅方向一方側の第1左側部分41aLが、第1材料42から第1列の鉄芯構成片20を打ち抜く部分である。また、第1部分40aのうち、幅方向他方側の第1右側部分41aRが第1材料42から第2列の鉄芯構成片20を打ち抜く部分である。また、第2部分40bのうち、幅方向一方側の第2左側部分41bLが第2材料44から第1列の鉄芯構成片20を打ち抜く部分である。また、第2部分40bのうち、幅方向他方側の第2右側部分41bRが第2材料44から第2列の鉄芯構成片20を打ち抜く部分である。
そして、第2工程では、上記のように、第1材料42から鉄芯構成片20を打ち抜く方向と、第2材料44から鉄芯構成片20を打ち抜く方向とを、電磁鋼板40の表裏方向について反対とする。これにより、第1装置46及び第2装置48で同じ形状の金型を用いて、複数の鉄芯構成片の形状を安定化させることができる。
これを説明するために、まず比較例の製造方法として、電磁鋼板40の表裏方向を一致させて第1材料42及び第2材料44を重ねた場合を考える。このときには、図5の左側部分をそのまま右側部分の上に重ねた場合と同様になる。この場合には、図6(a)に示すように、第1材料42及び第2材料44の幅方向の各半部における材料強度異方性を示す楕円の形状が重ねた部分で互いに不一致となりやすい。このとき、第2左側部分41bLが第1左側部分41aLに重なり、第2右側部分41bRが第1右側部分41aRに重なる。これにより、第1材料42及び第2材料44を同じ形状の金型で打ち抜く場合に、材料の強度異方性に応じた最適な金型形状とすることが困難である。このため、第1材料42から形成された鉄芯構成片と第2材料44から形成された鉄芯構成片との間で形状ばらつきが発生する可能性がある。
一方、実施形態の製造方法では、第2右側部分41bRを表裏方向で逆にして第1左側部分41aLに重ねて、かつ、第2左側部分41bLを表裏方向で逆にして第1右側部分41aRに重ねることができる。このときには、図6(b)に示すように、第1材料42及び第2材料44の幅方向の各半部における材料強度異方性を示す楕円をほぼ一致させることができる。これにより、第1材料42及び第2材料44を同じ形状の金型を用いて、材料の強度異方性に応じた最適な金型形状とすることが容易である。このため、第1材料42及び第2材料44から形成された鉄芯構成片の形状を安定化させることができる。また、複数の鉄芯構成片の打ち抜き方向を一致させて積層することにより、打ち抜きで発生するバリが互いに向き合って、積層が妨げられることがない。
また、第2工程では、各鉄芯構成片20において、ブリッジ26の径方向幅であるブリッジ幅を、対応する第1材料42または第2材料44における、複数の方向での強度の違いである強度異方性に応じて異ならせる。例えば打ち抜く前の第1材料42の各半部において、図7のように強度異方性を示す楕円が考えられる場合に、その強度異方性に応じて鉄芯構成片20のブリッジ幅の大きさを変える。具体的には、強度を示す楕円の中心と鉄芯構成片20の中心とを一致させた状態で、楕円の長手方向Lに位置するブリッジのブリッジ幅はW1とし、楕円の短手方向Cに位置するブリッジ26のブリッジ幅はW1より小さいW2とする。また、楕円の周方向について長手方向Lと短手方向Cとの間の中間方向Mに位置するブリッジの径方向幅はW1、W2の中間の大きさのW3とする。例えば、図1に戻って、鉄芯構成片20において、材料の強度を示す楕円の長手方向、短手方向、中間方向が図1の矢印L,C,Mでそれぞれ示す方向である場合を考える。この場合には、長手方向Lに位置するブリッジ26のブリッジ幅W1、中間方向Mに位置するブリッジ26のブリッジ幅W3、短手方向Cに位置するブリッジ26のブリッジ幅W2を順に小さくする(W1>W3>W2)。図1、図7では、中間方向Mが長手方向L,短手方向Cに対し約45度の角度をなすように示しているが、中間方向Mのブリッジ26は、長手方向L及び短手方向Cの間に位置すればよい。中間方向Mに位置する複数のブリッジは、長手方向Lから短手方向Cに近づく方向に位置するブリッジ26ほど、ブリッジ幅を小さくする。第2材料44から形成する鉄芯構成片20のブリッジ幅の大きさも、同様に、強度異方性に応じて変える。
そして、図3Aに戻って、第3工程(S14)では、第2工程で形成した複数の鉄芯構成片20を積層して、積層鉄芯であるロータコア10を形成する。ロータコア10は、第1材料42から形成された鉄芯構成片20と、第2材料44から形成された鉄芯構成片20とを含んでいる。また、第3工程では、ブリッジ26のブリッジ幅の周方向の位相が異なる第1組B1(図2)及び第2組B2(図2)の鉄芯構成片20を積層して、ロータコア10を形成する。具体的には、第1組B1では、ブリッジ幅の周方向の位相を一致させた複数枚の鉄芯構成片20を積層する。また、第2組B2では、第1組とは異なる位相で、ブリッジ幅の周方向の位相を一致させた複数枚の鉄芯構成片20を積層する。そして、同じ積層枚数の第1組B1と第2組B2とを、打ち抜き方向を一致させて交互に積層してロータコア10を構成する。具体的には、ブリッジ幅が最大となる所定位置での位相を基準とした場合に、第1組B1と第2組B2とでは、90度位相を異ならせて積層する。このような積層方法は、「転積」と呼ばれる。例えば、図2では、第1組B1及び第2組B2の積層枚数を6枚とし、2つずつの第1組B1及び第2組B2を、1つずつ交互に積層する。これにより、ロータコア10を形成する。各組B1,B2の積層枚数は6枚に限定するものではない。また、1つずつ、または3つ以上ずつの第1組及び第2組によりロータコア10を形成してもよい。また、各組で鉄芯構成片20を1枚ずつとしてもよい。
上記のロータコア10の製造方法によれば、強度異方性を有する電磁鋼板40の幅方向一方側、他方側それぞれの部分から鉄芯構成片20を打ち抜いてその鉄芯構成片20からロータコア10を形成する。そしてこの場合に、同じ形状の金型を用いて、各鉄芯構成片20の形状を安定化させることができる。また、材料強度に応じてブリッジ幅を変える。具体的には材料強度が高い部分でブリッジ幅を大きくし、材料強度の低い部分でブリッジ幅を小さくする。これにより、鉄芯構成片20の必要な強度を確保できる。また、材料の強度異方性を示す楕円の傾向を揃えて、同じ金型で材料を打ち抜くので、ブリッジの捩じれ方向を含めて材料の捩じれ方向が一律になる。これにより、鉄芯構成片の強度を安定化させることができる。
さらに、鉄芯構成片20の材料強度の低い部分に合わせてすべてのブリッジ26でブリッジ幅を一律に大きくする必要がないので、少なくとも一部で、磁石の径方向最外端をロータ外周面に近づけることができる。これにより、ロータコア10及びロータコア10から構成する回転電機の性能向上を図れる。
なお、各磁石挿入孔12に配置される磁石を、各第1組B1及び各第2組B2で軸方向に分離した分割磁石とし、各第1組B1及び各第2組B2の間で異なる分割磁石を配置してもよい。この場合には、ブリッジ幅を小さくした部分で分割磁石自体の径方向最外端を外径側に配置して、ロータと対向するステータに接近させやすい。これにより、ロータコア10及びロータコア10から構成する回転電機の性能向上を図れる。
また、ロータコア10において、第1組B1と第2組B2との間でブリッジ幅の周方向の位相が異なる状態で第1組B1及び第2組B2を積層しているので、方向に応じたブリッジ幅に基づく磁気特性のばらつきである、磁気アンバランスを抑制できる。これにより、ロータコア10の性能低下を抑制できる。なお、上記では、第1組B1及び第2組B2を、90度位相を異ならせて積層する場合を説明したが、鉄芯構成片20を重ねる際のブリッジ幅の差による磁気バラツキを抑制すればよく、90度以外で異相を異ならせて積層してもよい。
また、上記では、第1材料42及び第2材料44のそれぞれから2列で鉄芯構成片20を打ち抜きにより形成する場合を説明したが、第1材料42及び第2材料44のそれぞれから1列、または3列以上で鉄芯構成片20を打ち抜きにより形成してもよい。例えば1列で打ち抜きによって鉄心構成片を形成する場合でも、電磁鋼板は、幅方向に対称な強度異方性を有する。これにより、電磁鋼板の各半部で打ち抜き方向を反対にすることにより、同じ形状の金型を用いて、鉄芯構成片の形状を安定化させることができる。
図8は、比較例の製造方法において、電磁鋼板40から第1材料42及び第2材料44に切り分けて、鉄芯構成片20を打ち抜きによって形成する方法を示す図である。図8(a)(b)に示す第1工程は、図3B(a)(b)に示した第1工程と同様である。一方、図8(c)に示す第2工程では、電磁鋼板40から形成された第1材料42及び第2材料44のいずれも同じ第1装置46によって、表裏方向を同じにした状態で、別々に打ち抜き加工を行う。このような比較例では、図6(a)で説明したように、第1材料42及び第2材料44の強度異方性が左右両側のそれぞれで異なることにより、同じ形状の金型を用いて、鉄芯構成片の形状を安定することが困難である。実施形態では、このような不都合を防止できる。