JP2018024985A - 杭の性能評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡易に杭の性能を評価することができる杭の性能評価方法を提案する。【解決手段】 杭の性能評価方法は、取得処理S10と、推定処理S12と、評価処理S14と、を含む。取得処理S10は、測定された杭頭の常時微動に基づいて実際の杭頭の所定周波数における実際変位を取得する。推定処理S12は、測定された地盤の諸元に基づいて杭頭の所定周波数における推定変位を推定する。評価処理S14は、実際変位と推定変位とに基づいて杭頭を有する杭の性能の評価を行う。推定処理S12は、予め設定された杭・地盤ばねモデルに、仮の杭諸元と、常時微動に基づいて設定された地盤ばね諸元と、を入力して杭・地盤ばねモデルを作成する作成処理を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、杭の性能評価方法に関する。
既設の杭の性能を評価する方法としては、これまでにも多数の方法が提案されている。代表的なIT試験(Integrity Test)は、ハンマーで杭頭を叩いて弾性波を発生させ、その振動応答を杭頭に押し当てたセンサで測定する方法である。簡易な方法であるが、杭長しか評価することができない。
また、例えば、起振機(または加振機)を用いて地盤に埋設された杭を強制的に振動させることにより算出される固有振動数に基づいて杭の健全性を評価する杭の品質管理方法が提案されている(特許文献1,2及び非特許文献1)。杭の支持力性能等を推定することができる方法であるが、比較的大がかりな起振機を用意する必要があった。
特開平10−153497号公報 特開2011−220003号公報
西岡英俊、他3名、「起振器を用いた杭の水平地盤抵抗の非破壊調査手法の提案」地盤工学会誌、61−8(667)、14−17、2013−08−01
本発明は、簡易に杭の性能を評価することができる杭の性能評価方法を提案することを目的とする。
[適用例1]
本適用例に係る杭の性能評価方法は、
測定された杭頭の常時微動に基づいて実際の前記杭頭の所定周波数における実際変位を取得する取得処理と、
測定された地盤の諸元に基づいて前記杭頭の所定周波数における推定変位を推定する推定処理と、
前記実際変位と前記推定変位とに基づいて前記杭頭を有する杭の性能の評価を行う評価処理と、
を含むことを特徴とする。
本適用例に係る杭の性能評価方法によれば、杭頭の常時微動と地盤の諸元とを測定することで、簡易に杭の性能評価を行うことができる。
[適用例2]
本適用例に係る杭の性能評価方法において、
前記取得処理における常時微動は、第1常時微動であり、
前記推定処理は、
前記地盤における第2常時微動に基づいて前記地盤の諸元を測定する測定処理と、
前記地盤の諸元に基づいて所定周波数の地盤変位を算出する算出処理と、
予め設定された杭・地盤ばねモデルに、仮の杭諸元と、前記第2常時微動に基づいて設定された地盤ばね諸元と、を入力して第1杭・地盤ばねモデルを作成する作成処理と、を含み、
作成された前記第1杭・地盤ばねモデルに前記地盤変位を入力して前記推定変位を推定することができる。
本適用例に係る杭の性能評価方法によれば、杭・地盤ばねモデルを予め設定することで、地盤変位から杭頭の推定変位を推定することができる。
[適用例3]
本適用例に係る杭の性能評価方法において、
前記推定処理は、
前記実際変位と前記推定変位とを比較した結果、差がある場合に、
前記実際変位と前記推定変位との差が所定範囲に収まるように、前記第1杭・地盤ばねモデルにおける杭諸元を変更して第2杭・地盤ばねモデルを作成する修正処理をさらに含み、
作成された前記第2杭・地盤ばねモデルを用いて前記推定変位を修正し、修正後の前記推定変位を用いて前記評価処理を行うことができる。
本適用例に係る杭の性能評価方法によれば、実際変位と推定変位との差が所定範囲に収まるように、第1杭・地盤ばねモデルにおける杭諸元を変更して第2杭・地盤ばねモデルを求めることにより、実際の杭により近い性能を把握して評価することができる。
[適用例4]
本適用例に係る杭の性能評価方法において、
前記第2常時微動は、微動アレイ探査によって測定され、
前記算出処理は、前記微動アレイ探査の測定結果に基づいて、少なくとも前記杭の杭長の深さの前記地盤変位を算出し、
前記推定変位は、前記第1杭・地盤ばねモデルにおける前記杭頭の水平−回転変位比(u/θ)及び水平−鉛直変位比(u/v)の少なくともいずれか1つを用いた値であり、
前記第1常時微動は、前記杭頭に設置した第1微動計によって測定され、
前記実際変位は、前記第1微動計の測定結果に基づいて算出された、前記杭頭の水平−回転変位比(u/θ)及び水平−鉛直変位比(u/v)の少なくともいずれか1つを用いた値であることができる。
本適用例に係る杭の性能評価方法によれば、地盤変位を微動アレイ探査に基づいて算出することができるため、地盤のボーリングや掘削をすることなく地盤変位を算出することができる。また、杭頭の各変位を第1微動計に基づいて算出することができるため、杭の載荷装置や加振装置が不要であって、非破壊検査によって算出できる。さらに、杭頭の各変位を第1微動計に基づいて算出することができるため、測定可能な杭の長さに制限がない。
図1は、杭と地盤とを模式的に示す図である。 図2は、杭の性能評価方法のフローチャートである。 図3は、第1常時微動測定装置及び第2常時微動測定装置の設置状態を示す断面図である。 図4は、第1常時微動測定装置が設置された杭頭の平面図である。 図5は、杭頭の実際変位を説明する模式図である。 図6は、推定処理を説明するフローチャートである。 図7は、杭・地盤ばねモデルを説明する模式図である。 図8は、第2常時微動測定装置を説明する平面図である。 図9は、所定周波数における地盤の水平変位を示すグラフである。 図10は、所定周波数における杭頭応答(u/θ)を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
本実施形態に係る杭の性能評価方法は、測定された杭頭の常時微動に基づいて実際の前記杭頭の所定周波数における実際変位を取得する取得処理と、測定された地盤の諸元に基づいて前記杭頭の所定周波数における推定変位を推定する推定処理と、前記実際変位と前記推定変位とに基づいて前記杭頭を有する杭の性能の評価を行う評価処理と、を含むことを特徴とする。
1.杭と地盤との関係
図1を用いて杭10と地盤22との関係を説明する。図1は、杭10と地盤22とを模式的に示す図である。
図1に示すように、杭10は、地盤22内にあって、杭頭12が地表面20に現れている。杭頭12は地盤22内にあってもよい。
杭頭12とは、杭10の頂部である。杭10とは、構造物の荷重を基礎などを介して地盤22に伝達させるための柱状の構造部材である。杭10としては、材料面から、例えば、木杭、既成コンクリート杭、鉄筋コンクリート杭、鋼(管)杭などの種類がある。また、杭10としては、施工面から、例えば、打込み杭、場所打ち杭、埋込み杭などの種類がある。さらに、杭としては、機能面から、例えば、主に先端(最下端)支持力によって上部構造物を支える支持杭、主に杭の周面と地盤との摩擦力によって上部構造物を支える摩擦杭などの種類がある。
地盤22はわずかではあるが常に振動しており、このような微小な地盤振動を常時微動という。常時微動は、地盤22中を伝播する微小な地盤振動であって、例えば地上を走行する車両が発生する振動や工場の機械類から発生する振動などの人工的な振動、及び風や波による自然的な振動等によって生ずる。
この地盤22の常時微動が地盤22と一体化している杭10へと伝わり、杭頭12を振動させる。一方、地盤22の地層構成は公知の測定方法を用いて推定することができる。そこで、本発明者らは、測定された地盤22の諸元を用いて常時微動による杭頭12の変位を推定し、実際に測定した杭頭12の変位と比較することで、杭10の性能を評価することに想到したのである。
2.杭の性能評価方法
図2を用いて杭10の性能評価方法について説明する。図2は、杭10の性能評価方法のフローチャートである。
図2に示すように、杭10の性能評価方法は、取得処理(S10)と、推定処理(S1
2)と、評価処理(S14)と、を含む。取得処理(S10)と推定処理(S12)の順番は逆であってもよい。
取得処理(S10)は、測定された杭頭12の常時微動(以下、「第1常時微動」という)に基づいて実際の杭頭12の所定周波数における実際変位を取得する。第1常時微動の測定方法の具体例については後述する。
ここで変位は、杭頭12の位置の変化量であるが、これに限らず、当該変化量に基づいた対比可能な値であってもよい。
推定処理(S12)は、測定された地盤22の諸元に基づいて杭頭12の所定周波数における推定変位を推定する。推定処理(S12)の具体例については後述する。
ここで地盤22の諸元とは、推定処理(S12)において杭10の力学モデルを用いて杭頭12の所定周波数における推定変位を推定するために必要な地盤22に関する要素であり、例えば、杭10の支持層24の深度から2倍ぐらいの深さまでの各地層の層厚、地盤22の密度(単位体積当たりの質量)、せん断波速度とせん断波の減衰定数、粗密波速度と粗密波の減衰定数などがある。地盤22の諸元としていずれの要素を用いるかは推定処理(S12)に用いる方法に合わせて適宜選択される。地盤22の諸元は、公知の各種地盤調査方法を用いることができる。地盤調査方法としては、例えば、微動アレイ探査、表面波探査、速度検層(PS検層)、弾性波探査、磁気探査、電気探査(比抵抗二次元探査)、地中レーダー探査、重力探査、標準貫入試験(N値)結果からの推定などを用いることができる。本実施形態では微動アレイ探査を用いた測定法について後述する。
評価処理(S14)は、実際変位と推定変位とに基づいて杭頭12を有する杭10の性能の評価を行う。
ここで杭10の性能とは、推定処理(S12)によって得られた杭10の状態である。杭10の状態は、例えば、推定処理(S12)において仮定した杭10の諸元(仮の杭諸元)及び仮の杭諸元から推定され及び推測される。仮の杭諸元とは、後述する杭10の力学モデルを設定するために必要な杭10に関する要素であり、例えば、杭10の密度、杭10の断面積、杭10のヤング率、杭10の断面2次モーメント、杭径、杭長(地表面20からの深度)などがある。杭諸元としていずれの要素を用いるかは推定処理(S12)に用いる方法に合わせて適宜選択される。
また、ここで杭10の性能評価とは、例えば、杭10の性能が設計通り(仮の杭諸元と同じ)であるかどうかという評価、設計値が不明の杭10の性能がどの程度(仮の杭諸元に近似)であるかという評価などがある。
このように杭10の性能評価方法によれば、地盤22の諸元と杭頭12の第1常時微動とを測定することで、簡易に杭10の性能評価を行うことができる。
2−1.取得処理
図2〜図5を用いて取得処理(S10)について説明する。図3は第1常時微動測定装置30及び第2常時微動測定装置40の設置状態を示す断面図であり、図4は第1常時微動測定装置30が設置された杭頭12の平面図であり、図5は杭頭12の実際変位Uを説明する模式図である。
取得処理(S10)は、測定された杭頭12の第1常時微動に基づいて実際の杭頭12の所定周波数における実際変位を取得する。杭頭12の第1常時微動の測定方法は、杭頭
12の所定周波数における実際変位が測定できる方法であれば特に限定されない。第1常時微動は、例えば、杭頭12に設置した第1微動計32によって測定することができる。杭頭12の各変位を第1微動計32に基づいて算出することができることで、杭10の載荷装置や加振装置が不要であって、非破壊検査によって算出できる。また、杭頭12の各変位を第1微動計32に基づいて算出することができることで、IT試験のように測定可能な杭10の長さに制限がない。
図3及び図4に示すように、第1常時微動測定装置30は、杭頭12の表面に設置された複数の第1微動計32と、第1微動計32によって計測された計測値から所定周波数における実際変位を演算する制御部34と、を含む。制御部34は、図示しない記録部と、蓄電部と、演算部と、を含む。記録部は第1微動計32の計測値を記録し、蓄電部は第1微動計32を動作させるために必要な電力を供給し、演算部は第1微動計32の計測値から杭頭12の実際変位を演算する。
第1微動計32は、図3のように正三角形の頂点に当たる部分に3箇所設置することができる。第1微動計32の数は、目的とする実際変位を測定するために必要な数であればよく、特に限定されないが、水平方向の変位と鉛直方向の変位の他に杭頭12の傾きを測定する場合には、3個または5個が好ましい。第1微動計32は、杭頭12の水平方向の2成分と鉛直方向の1成分を計測できることが好ましい。第1微動計32が杭頭12の水平方向の2成分と鉛直方向の1成分と傾きとを計測できる場合には、1個だけでもよい。
第1微動計32は、微小な振動を測定することができるものであればよく、例えば加速度センサや速度センサなどの公知の微動計を用いることができる。
杭頭12の第1常時微動における所定周波数は、あらかじめ定められた複数の周波数である。周波数に応じて杭頭12の変位が定まる。後述する第2微動における所定周波数も第1常時微動に対応するため、第1常時微動における所定周波数と少なくとも同じ周波数を含む。
図5に示すように、地盤22の振動(例えば第2常時微動56)によって破線で示した杭頭12は実線で示した杭頭12へと実際変位U(矢印で示した)だけ移動する。杭頭12の実際変位Uは、杭頭12における水平方向変位uと、鉛直方向変位vと、傾きθで表すことができる。制御部34における演算部は、杭頭12の実際変位として、例えば、第1微動計32の測定結果に基づいて算出された、杭頭12の水平−回転変位比(u/θ)及び水平−鉛直変位比(u/v)の少なくともいずれか1つを用いた値を演算することができる。
このように、杭頭12の各変位を第1微動計32に基づいて算出することができるため、杭10の載荷装置や加振装置が不要であって、非破壊検査によって算出できる。さらに、杭頭12の各変位を第1微動計32に基づいて算出することができるため、測定可能な杭10の長さに制限がない。
2−2.推定処理
図2、図3、図6〜図10を用いて、推定処理(S12)について説明する。図6は推定処理(S12)を説明するフローチャートであり、図7は杭・地盤ばねモデル50を説明する模式図であり、図8は第2常時微動測定装置40を説明する平面図であり、図9は所定周波数における地盤22の水平変位を示すグラフであり、図10は所定周波数における杭頭応答(u/θ)を示すグラフである。
推定処理(S12)は、測定された地盤22の諸元に基づいて杭頭12の所定周波数に
おける推定変位を推定する。推定処理(S12)は、杭頭12の推定変位を推定できる各種の方法を採用できる。
杭頭12が所定周波数の振動においてどの程度変位するかは地盤22の諸元と杭10の諸元とから定まる固有の値を有すると考えられる。地盤22の振動、例えば第2常時微動時における地盤変位の深度分布は地盤22の諸元から定まり、地盤22の変位が杭10にどのように伝わるかは杭10の諸元により定まるからである。
図6に示すように、推定処理は、例えば、地盤22における第2常時微動に基づいて地盤22の諸元を測定する測定処理(S120)と、地盤22の諸元に基づいて所定周波数の地盤変位を算出する算出処理(S121)と、予め設定された杭・地盤ばねモデルに、仮の杭諸元と、第2常時微動に基づいて設定された地盤ばね諸元と、を入力して第1杭・地盤ばねモデルを作成する作成処理(S122)と、を含み、作成された第1杭・地盤ばねモデルに地盤変位を入力して推定変位を推定することができる。
このように、第1杭・地盤ばねモデルを予め設定することで、地盤変位から杭頭12の推定変位を計算することができる。なお、各処理の詳細については後述する。
また、図6に示すように、推定処理は、推定変位と実際変位とを比較した結果、差がある場合に、推定変位と実際変位との差が所定範囲に収まるように、第1杭・地盤ばねモデルにおける杭諸元を変更して第2杭・地盤ばねモデルを作成する修正処理(S128)をさらに含み、作成された第2杭・地盤ばねモデルを用いて推定変位を修正し、修正後の推定変位を用いて評価処理を行うことができる。
このように推定変位と実際変位との差が所定範囲に収まるように、第1杭・地盤ばねモデルにおける杭諸元を変更して第2杭・地盤ばねモデルを求めることにより、実際の杭により近い性能を把握して評価することができる。なお、修正処理(S128)の詳細については後述する。
2−2−1.測定処理
測定処理(S120)は、地盤22における第2常時微動に基づいて地盤22の諸元を測定する。測定処理(S120)における地盤22の第2常時微動に基づく地盤22の諸元を測定する方法は、地盤22の所定周波数における地盤変位を算出するのに必要な地盤22の諸元が測定できる方法であれば常時微動に限定されない。
第2常時微動は、微動アレイ探査によって測定することができる。地盤変位を微動アレイ探査に基づいて算出することができることで、地盤22のボーリングや掘削をすることなく地盤変位を算出することができる。
図3及び図8を用いて地盤22の第2常時微動を微動アレイ探査によって測定する方法について説明する。
図3及び図8に示すように、微動アレイ探査は、地表面20においた複数の第2微動計42により多点での微動を同時観測し、得られた表面波の位相速度を逆解析して地盤22のS波構造を推定する地盤調査方法である。第2微動計42は、微小振動を測定することができる地震計を用いることができる。第2微動計42は、加速度センサとしてもよい。
第2微動計42の配置は、例えば、地表面20における正三角形の頂点とすることができる。第2微動計42を複数の正三角形の頂点に配置してもよい。第2微動計42は、杭10の周囲の地盤22の諸元を得るために、杭10の周囲に配置される。
微動アレイ探査によって地盤22の地層構造を同定することができる。地盤22の地層構造を同定することができれば、所定周波数の振動における地盤変位を推定することができる。
2−2−2.算出処理
算出処理(S121)は、地盤22の諸元に基づいて所定周波数の地盤変位を算出する。算出処理(S121)における地盤変位を算出する方法は特に限定されない。算出処理(S121)は、例えば、微動アレイ探査の測定結果に基づいて、少なくとも杭10の杭長の深さの地盤変位を算出することができる。少なくとも杭長の深さの地盤変位が算出できれば、杭10の変位に大きく影響を与える地盤変位が含まれるからである。
一般に、常時微動における地盤変位は「正規モード解」(久田嘉明「成層地盤における正規モード解及びグリーン関数の効率的な計算法」日本建築学会構造系論文集,第501号,pp.49−56,1997)で近似することができる。「正規モード解」は、表面波の寄与のみを考慮した地盤の振動応答を表すものである。「正規モード解」は地盤22の地層構成がわかっていれば、弾性波理論により計算することができる。
図9は、微動アレイ探査によって同定した地盤22の地層構造に基づいて算出した「正規モード解」の一部である。ここでは5Hz、10Hz、20Hz、40Hzの周波数における「正規モード解」として、地盤22の水平方向の変位の深度分布をグラフで示している。ここに示す周波数は、所定周波数の一部である。このように各周波数における地盤変位は、「正規モード解」を用いて算出することができる。
地盤変位を微動アレイ探査に基づいて算出すれば、地盤22のボーリングや掘削が不要である。なお、所定周波数における地盤変位を算出するのに必要な地盤22の諸元を得ることができれば、微動アレイ探査に限らず、他の測定方法を採用することができる。
地盤変位とは、杭10の周辺の地盤22の位置の変化量である。
2−2−3.作成処理
作成処理(S122)は、予め設定された杭・地盤ばねモデルに、仮の杭諸元と、第2常時微動に基づいて設定された地盤ばね諸元と、を入力して第1杭・地盤ばねモデルを作成する。こうして作成された第1杭・地盤ばねモデルに地盤変位を入力して推定変位を推定することができる。このように、杭・地盤ばねモデルを予め設定することで、地盤変位から杭頭の推定変位を推定することができる。
図7は、杭・地盤ばねモデル50を説明する模式図である。杭・地盤ばねモデル50は、杭10(図3等)の力学モデルである。具体的には、杭・地盤ばねモデル50は、杭10を1本の杭(梁)52にモデル化し、その杭52に沿って周辺の地盤22の存在による力学効果を表す地盤ばね54を付けたモデルである。杭・地盤ばねモデル50は、例えば、地盤の変位(u等)と地盤ばね定数と杭の(仮)諸元とがわかれば、杭頭53における変位(u等)を求めることができる。
地盤ばね54は、杭・地盤ばねモデル50において、杭52の剛性と地盤22の剛性とが異なるために生じる両者間の相互作用を定量的に表すための力学要素である。地盤ばね54は、杭52の深さ方向zに複数並んで独立して作動するように配置され、地盤ばね54ごとに地盤22の剛性に応じたばね定数を設定できる。各地盤ばね54の深さにおける地盤22の変位(u等)によって、各地盤ばね54における杭52の相当部分に加わる応力を計算することができ、この応力によって杭52がどの程度変形するかを計算するこ
とができる。
杭・地盤ばねモデル50は、例えば、下記式(1)及び式(2)に、地盤ばね54ごとに地盤22の変位(u,v)を入力することで、杭52の縦断方向に生じる変位(u,v)を仮想的に求めることができる。
ここで、ρ:杭52の密度、A:杭52の断面積、t:時間、E:杭52のヤング率、I:杭52の断面2次モーメント、z:深度、k:水平地盤反力係数、B:杭径、u:杭52の水平変位、u:地盤22の水平変位、k:鉛直地盤反力係数、v:杭の鉛直変位、v:地盤22の鉛直変位である。
また、式(1)及び式(2)における各項の物理的な意味は以下の通りである。
左辺の第1項目:杭52の慣性力項、左辺の第2項目:杭52の復元力項、左辺の第3項目:杭52の変位に対する地盤の反力項、右辺:杭52に対する外力項(地盤変位による力)である。
地盤22の水平変位uと地盤22の鉛直変位vが地盤22の諸元から推定され、かつ、地盤ばね54の水平地盤反力係数k及び鉛直地盤反力係数k(ばね定数)と杭52の仮諸元が定まっていれば、式(1)及び式(2)の微分方程式を解くことで、杭頭53の変位uを算出することができる。式(1)及び式(2)は一例であって、上述した通り、他の公知の式を用いてもよい。杭52の仮諸元は、例えば、杭の力学モデルを設定するために必要な杭に関する要素であり、例えば、杭の密度、杭の断面積、杭のヤング率、杭の断面2次モーメント、杭径、杭長(地表からの深度)などがある。杭52の仮諸元は、実際の杭10を施工した時の設計情報から求めることができる。施工時の設計情報がない場合には、適当な杭52の仮諸元を推測してもよいが、後述する修正処理が必要になる。
杭・地盤ばねモデル50としては、公知のモデルを用いることができ、例えば、耐震計算手法における応答変位法によって用いられるモデルがある。地盤ばね54の水平地盤反力係数k及び鉛直地盤反力係数k(ばね定数)の決め方は多数提案されている。本実施形態では後述する「修正処理」の過程で、初期値を逐次修正していくため、いずれの方法で初期値を決めてもよい。例えば、代表的な地盤ばねの設定方法は、k:Francis(フランシス)の式(Francis, A. J.の「Analysis of Pile Groups with Flexural Resistance」、J.
Soil Mech. and Foundations Div., ASCE,Vol.90,No.Sm3,pp.1−32、1994)、k:Randolf(ランドルフ)の式(Randolf, M. F. and Wroth, C. P.の「Analysis of Deformation of Vertically Loaded Piles」、J. Geotech. Engrg. Div., ASC
E,Vol.104,pp.1465−1488、1978)、Mindlin(ミンドリン)解を用いた方法(Mindlin, R. D.の「Force at a Point in the Interior of a Semi−Infinite Solid」、J. Appl. Phys.,Vol.7,pp.195−202、1936)、薄層法による方法(長谷川正幸,中井正一の「杭基礎のインピーダンス関数に基づいた群杭効率の研究」日本建築学会論文報告集,No.417,pp.133−145、1990)、日本建築学会基礎構造設計指針の方法(日本建築学会の「建築基礎構造設計指針」、建築基礎構造設計指針,pp.173−313、2001)、その他各団体(国土交通省,土木学会,鉄道総研,日本道路協会など)の提示する方法などがある。
次に、作成処理(S122)で作成された第1杭・地盤ばねモデルに、所定周波数における地盤変位(u,v)を入力して杭頭53の推定変位を推定する(S124)。
次に、推定変位と、上述した取得処理(S10)によって取得した杭頭12の所定周波数における実際変位と、を比較する比較処理(S126)を実行する。比較処理(S126)において推定変位と実際変位とが略同一と判断された場合(YES)には、推定処理は終了する。また、比較処理(S126)において推定変位と実際変位とが略同一ではないと判断された場合(NO)には、修正処理(S128)を実行する。
2−2−4.修正処理
修正処理(S128)は、比較処理(S126)において推定変位と実際変位とを比較した結果、略同一ではないと判断された場合、例えば、推定変位と実際変位とに差がある場合に、実行する。修正処理(S128)は、推定変位と実際変位との差が所定範囲に収まるように、第1杭・地盤ばねモデルにおける杭諸元を変更して第2杭・地盤ばねモデルを作成する。修正処理(S128)は、推定変位と実際変位とが略同一になるまで繰り返し実行することができる。
このように、推定変位と実際変位との差が所定範囲に収まるように、第1杭・地盤ばねモデルにおける杭諸元を変更して第2杭・地盤ばねモデルを求めることにより、実際の杭10により近い性能を把握して評価することができる。
比較処理(S126)における推定変位は、第1杭・地盤ばねモデルにおける杭頭53の水平−回転変位比(u/θ)及び水平−鉛直変位比(u/v)の少なくともいずれか1つを用いた値とすることができる。
比較処理(S126)における実際変位は、第1微動計32(図4)の測定結果に基づいて算出された、杭頭12の水平−回転変位比(u/θ)及び水平−鉛直変位比(u/v)の少なくともいずれか1つを用いた値とすることができる。
図10は、横軸に周波数(Hz)、縦軸に杭頭応答(u/θ)をとって、実際変位60と、推定変位62と、参考変位64,66を示した一例である。推定変位62は設計値から求めた杭頭53の推定変位の水平−回転変位比(u/θ)を示し、実際変位60は第1微動計32の値から算出された実際の杭頭12の水平−回転変位比(u/θ)を示す。実際変位60は、丸印の一つ一つが適宜設定した複数の所定周波数における実測値である。また、参考変位64は杭52の先端が地盤22における支持層に到達していないと仮定した場合の杭頭53の推定変位(u/θ)であり、推定変位62は杭52が深さ10m(杭52の中央部)のところで破損していると仮定した場合の杭頭53の推定変位(u/θ)である。
実際変位60は、参考変位64,66よりも推定変位62に近似していることがわかる
。推定変位62を実際変位60と略同一であるとして推定処理(S12)を終了してもよいし、さらに推定変位62を実際変位60に近似させるべく仮に設定した杭諸元を修正してもよい。ここでは、略同一であるとして推定処理(S12)を終了させ、評価処理(S14)を実行する。評価処理(S14)では、修正処理(S128)で修正した第2杭・地盤ばねモデルにおける修正後の杭頭53の推定変位を用いて行う。
図10では水平−回転変位比(u/θ)のみを比較したが、さらに水平−鉛直変位比(u/v)の両方を用いて比較してもよい。
このように、変位の比を用いて対比することで、環境による変動要因を排除して安定した結果を得ることができる。
修正処理(S128)における推定変位及び実際変位の値は、水平−回転変位比(u/θ)及び水平−鉛直変位比(u/v)に限らず、杭頭12,53の変位に関する値であれば他の値を用いてもよい。
2−3.評価処理
図2に示すように、評価処理(S14)は、推定処理(S12)の結果を用いて実行する。評価処理(S14)は、例えば、推定処理(S12)の作成処理(S122)または修正処理(S128)において設定した仮の杭諸元(設計時)と同じであれば、設計通りの杭10であるという評価をすることができる。また、評価処理(S14)は、設計値が不明の杭10の性能を、修正処理(S128)によって修正された仮の杭諸元に近似していれば、実際の杭10の諸元を推定することができ、杭10の性能評価をすることができる。
図10に示した例では、杭10は、設計値の杭の諸元と略同一であり、設計通りの杭10が施工されていると判断することができる。
このように、本実施形態に係る杭10の性能評価方法によれば、簡易に杭10の性能評価を行うことができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…杭、12…杭頭、20…地表面、22…地盤、24…支持層、30…第1常時微動測定装置、32…第1微動計、34…制御部、40…第2常時微動測定装置、42…第2微動計、50…杭・地盤ばねモデル、52…杭、53…杭頭、54…地盤ばね、56…第2常時微動、60…実際変位、62…推定変位、64…参考変位、66…参考変位

Claims (4)

  1. 測定された杭頭の常時微動に基づいて実際の前記杭頭の所定周波数における実際変位を取得する取得処理と、
    測定された地盤の諸元に基づいて前記杭頭の所定周波数における推定変位を推定する推定処理と、
    前記実際変位と前記推定変位とに基づいて前記杭頭を有する杭の性能の評価を行う評価処理と、
    を含むことを特徴とする、杭の性能評価方法。
  2. 請求項1において、
    前記取得処理における常時微動は、第1常時微動であり、
    前記推定処理は、
    前記地盤における第2常時微動に基づいて前記地盤の諸元を測定する測定処理と、
    前記地盤の諸元に基づいて所定周波数の地盤変位を算出する算出処理と、
    予め設定された杭・地盤ばねモデルに、仮の杭諸元と、前記第2常時微動に基づいて設定された地盤ばね諸元と、を入力して第1杭・地盤ばねモデルを作成する作成処理と、を含み、
    作成された前記第1杭・地盤ばねモデルに前記地盤変位を入力して前記推定変位を推定することを特徴とする、杭の性能評価方法。
  3. 請求項2において、
    前記推定処理は、
    前記実際変位と前記推定変位とを比較した結果、差がある場合に、
    前記実際変位と前記推定変位との差が所定範囲に収まるように、前記第1杭・地盤ばねモデルにおける杭諸元を変更して第2杭・地盤ばねモデルを作成する修正処理をさらに含み、
    作成された前記第2杭・地盤ばねモデルを用いて前記推定変位を修正し、修正後の前記推定変位を用いて前記評価処理を行うことを特徴とする、杭の性能評価方法。
  4. 請求項2または3において、
    前記第2常時微動は、微動アレイ探査によって測定され、
    前記算出処理は、前記微動アレイ探査の測定結果に基づいて、少なくとも前記杭の杭長の深さの前記地盤変位を算出し、
    前記推定変位は、前記第1杭・地盤ばねモデルにおける前記杭頭の水平−回転変位比(u/θ)及び水平−鉛直変位比(u/v)の少なくともいずれか1つを用いた値であり、
    前記第1常時微動は、前記杭頭に設置した第1微動計によって測定され、
    前記実際変位は、前記第1微動計の測定結果に基づいて算出された、前記杭頭の水平−回転変位比(u/θ)及び水平−鉛直変位比(u/v)の少なくともいずれか1つを用いた値であることを特徴とする、杭の性能評価方法。
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