JP2018178221A - 脂肪酸塩の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】脂肪酸塩を製造する新規な方法を提供すること。【解決手段】アノード及びSi含有カソードを用い、環状カーボネートと塩とを含有する原料溶液を電気分解して前記Si含有カソードの表面に脂肪酸塩を析出させる生成工程を具備する、脂肪酸塩の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪酸塩の製造方法に関する。
脂肪酸を製造する方法としては、従来から種々の方法が提案されている。例えば、酢酸リチウムの原料たる酢酸を製造する方法としては、エタノールの酢酸発酵、アセトアルデヒドの酸化、アルカンの酸化、エチレンの酸化、メタノールのカルボニル化等が挙げられる。現在、酢酸の製造方法としては、メタノールのカルボニル化が主流である。
メタノールのカルボニル化は、以下の三段階の反応で進行する。
CHOH+HI→CHI+H
CHI+CO→CHCOI
CHCOI+HO→CHCOOH+HI
この反応のうち2段階目の反応は触媒を必要とする。また、特許文献1〜特許文献3に開示されるように、メタノールのカルボニル化による酢酸の製造は、比較的高温かつ比較的高圧下で行われるのが一般的である。
特許文献1には、ロジウム含有固体触媒を用い、一酸化炭素分圧7〜30kg/cm、全反応圧15〜60kg/cmG、反応温度140〜250℃で、メタノールのカルボニル化により酢酸を製造する方法が開示されている。
特許文献2には、炭素質担体ロジウム金属触媒を用い、反応圧力0〜100kg/cmG、反応温度150〜300℃で、メタノールのカルボニル化により酢酸を製造する方法が開示されている。
特許文献3には、ロジウム錯体を触媒として用い、反応圧力15〜40atm、反応温度150〜250℃で、メタノールのカルボニル化により酢酸を製造する方法が開示されている。
特開平5−306253号公報 特開平5−339196号公報 特開平7−25813号公報
特許文献1〜特許文献3に示されるように、従来の方法によると、触媒の存在下、高温かつ高圧下で多段階を経て酢酸を製造していた。このような製造方法は煩雑であり、かつ、製造コストを低減し難い。また、酢酸塩を製造するためには、かくも煩雑な製造工程に加えて、更に、酢酸から酢酸リチウムを生成する工程が必要となる。
このように、従来の脂肪酸塩の製造方法は充分に完成された方法とは言い難く、更なる製造技術の向上が望まれていた。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、脂肪酸塩を製造する新規な方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の脂肪酸塩の製造方法は、
アノード及びSi含有カソードを用い、環状カーボネートと塩とを含有する原料溶液を電気分解して前記Si含有カソードの表面に脂肪酸塩を析出させる生成工程を具備する、脂肪酸塩の製造方法である。
本発明の脂肪酸塩の製造方法は、脂肪酸塩を製造する新規な方法である。
実施例1の製造装置を説明する説明図である。 実施例1の製造方法及び実施例2の製造方法の各段階においてSi含有カソードに析出した脂肪酸塩の量を表すグラフである。 実施例1の製造方法で得た脂肪酸塩をTOF−SIMSで分析した結果である。 比較例1の製造方法で得た生成物をTOF−SIMSで分析した結果である。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな数値範囲の上限や下限の数値とすることができる。
本発明の脂肪酸塩の製造方法は、アノード及びSi含有カソードを用い、環状カーボネートと塩とを含有する原料溶液を電気分解して前記Si含有カソードの表面に脂肪酸塩を析出させる生成工程を具備する、脂肪酸塩の製造方法である。以下、必要に応じて、本発明の脂肪酸塩の製造方法を本発明の製造方法、或いは単に製造方法と略する場合がある。
本発明の発明者は、実際に様々な方法によって脂肪酸の製造を試みた。そして、偶然にも、環状カーボネートと塩とを含有する原料溶液を電気分解したところ、Si含有カソードに脂肪酸塩が析出することを見出した。
リチウムイオン二次電池のなかには負極としてSiを含有するものや、電解液に環状カーボネートを含むものがある。また、リチウムイオン二次電池は電解液に塩を含む。更には、リチウムイオン二次電池の負極にはSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜が形成され、当該SEIは電解液に含まれる有機溶媒と塩との反応生成物を含むことが知られている。
本発明の発明者は、本発明の製造方法をリチウムイオン二次電池の挙動になぞらえて、リチウムイオン二次電池における電解液の反応生成物について探索した。
例えば、The state of understanding of the lithium−ion−battery graphite solid electrolyte interphase(SEI) and its relationship to formation cycling, S.J. An et al, Carbon 105(2016)52−76には、グラファイト負極に形成されるSEIが(CHOCOLi)、ROCOLi等のカルボン酸リチウムを含むことが開示されている。特開2014−517996号公報にも、SEIが当該カルボン酸リチウムを含むことが開示されている。
しかしこれらの文献には、SEIに含まれる化合物として−O−(C=O)−O−で表されるカーボネート基を有するカルボン酸リチウムが挙げられるものの、当該カーボネート基に含まれる一方の−O−が−C−で置換された脂肪酸塩、つまり脂肪酸リチウムについては何らの記載もない。
つまり、本発明の製造方法は、従来のリチウムイオン二次電池において生成するなどとは考えられていなかった脂肪酸塩を製造する方法である。
本発明の製造方法によると、非常にシンプルな原料を用いシンプルな方法で脂肪酸塩を製造できる。本発明の製造方法においては、ロジウム触媒を使用する必要はなく、反応は常温かつ常圧下で進行し得る。更に言えば、後述するように、本発明の製造方法によると脂肪酸塩を連続的に製造することも可能である。したがって、本発明の製造方法によると、脂肪酸塩を安価に製造することも可能だと考えられる。更にいえば、脂肪酸塩に強酸を反応させることで脂肪酸塩から脂肪酸を生成することも可能である。この場合にも、本発明の製造方法によると、脂肪酸を連続的かつ容易に製造することが可能である。
本発明の製造方法の生成物である脂肪酸塩において、脂肪酸の部分つまり脂肪酸骨格は、原料溶液に含まれる環状カーボネートの種類に依存すると考えられる。また、脂肪酸塩において脂肪酸骨格とともに塩を形成する部分は、原料溶液の塩の種類に依存すると考えられ、金属が例示される。具体的には、リチウム、ナトリウム及びカルシウムを挙げることができる。
原料溶液に用いる環状カーボネートは、特に限定しないが、飽和の5〜7員環を有するものを例示できる。より具体的には、5員環の1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネート)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(フルオロエチレンカーボネート)、6員環の1,3−ジオキサン−2−オン(トリメチレンカーボネート)、7員環の1,3−ジオキセパン−2−オンが例示される。
脂肪酸塩における脂肪酸骨格もまた特に限定しないが、当該脂肪酸骨格として直鎖脂肪酸、炭素数6以下の直鎖脂肪酸を例示することができる。より具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸が例示される。
原料溶液に含まれる塩の種類もまた特に限定しないが、塩として、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、Li(CFSON、Li(FSONに代表されるリチウム塩、NaPF、NaClO、NaBF、NaCFSO、NaCFCO、Na(CFSON、Na(CFCONに代表されるナトリウム塩、Ca(ClO、Ca((CFSON)に代表されるカルシウム塩、を例示することができる。
原料溶液は、上記した環状カーボネート以外の有機溶媒を含み得る。当該有機溶媒は脂肪酸塩の生成を妨げないものであれば良く、特に限定しない。有機溶媒として、例えば、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル類等が使用できる。環状エステルとしては、ガンマブチロラクトン、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネートを例示でき、鎖状エステルとしては、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。原料溶液に含まれる環状カーボネート以外の有機溶媒としては、このうち鎖状カーボネートが好ましい。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
Si含有カソードとしては、以下のSiを含有するカソード構成材料と、導電性基材と、の複合体を用い得る。カソード構成材料としては、Si単体を用いても良いし、Si以外の元素を含有するSi含有材料を用いても良い。
Si含有材料としては、例えば、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)等のSi酸化物や、SnSiO等のSi含有複合酸化物が挙げられる。なお、SiOにおけるxの範囲は0.5≦x≦1.5であるのがより好ましく、0.7≦x≦1.2であるのがさらに好ましい。
Si含有材料の具体例として、国際公開第2014/080608号などに開示されるシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」という。)を挙げることができる。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものである。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
シリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
既述のとおり、シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。板状シリコン体は、厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
上記したカソード構成材料は、炭素材料と複合化しても良いし、炭素で被覆しても良い。カソード構成材料と炭素材料との複合化の方法としては、ミリング等の既知の方法を用いれば良い。複合化に因り、特にケイ素の構造が安定し、Si含有カソードの耐久性が向上する。複合化に用いられる炭素材料としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等を採用すればよい。黒鉛は、天然黒鉛でも良く、人造黒鉛でも良い。
カソード構成材料を炭素で被覆する方法としては、CVD法等の既知の方法で行えば良い。炭素で被覆することで、カソード構成材料に優れた導電性を付与できる。
カソード構成材料としては粒子状のものを用いるのが好ましい。カソード構成材料は、当該粉末状のカソード構成材料に結着剤等の添加剤を加えたスラリーを、導電性基材に結着して製造するのが好ましい。
SiOの好ましい平均粒子径は0.6〜30μmの範囲内が好ましく、1〜20μmの範囲内がより好ましく、2〜10μmの範囲内が更に好ましく、3〜8μmの範囲内が特に好ましい。なお、本明細書における平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合におけるD50を意味する。
シリコン材料の平均粒子径は、2〜7μmの範囲内が好ましく、2.5〜6.5μmの範囲内がより好ましい。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
また、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーをジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを、結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
カソード構成材料と結着剤の配合割合は、質量比で、カソード構成材料:結着剤=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。結着剤が少なすぎるとSi含有カソードの形状を維持し難く、また、結着剤が多すぎるとSi含有カソードに含有されるカソード構成材料の量が相対的に低下するためである。
必要に応じて、添加剤として導電助剤を用いても良い。導電助剤は、Si含有カソードの導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、Si含有カソードの導電性が不足する場合に任意に加えればよく、Si含有カソードの導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせてSi含有カソードに添加することができる。カソード構成材料と導電助剤の配合割合は、質量比で、カソード構成材料:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎるとSi含有カソードの形状を維持し難く、かつ、Si含有カソードに含有されるカソード構成材料の量が相対的に低下するためである。
カソード構成材料を含むスラリーを導電性基材の表面に塗布する方法としては、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用い得る。具体的には、カソード構成材料および上記の添加剤に、溶剤を加え混合してスラリーにしてから、当該スラリーを導電性基材の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。また、乾燥後のものを圧縮しても良い。
導電性基材は、Siを含有するカソード構成材料を支持し化学的に不活性な電子伝導体をいう。導電性基材の材料は、電気分解時の電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。導電性基材の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。導電性基材は公知の保護層で被覆されていても良いし、導電性基材の表面を公知の方法で処理しても良い。
導電性基材は、箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、導電性基材として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。導電性基材が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
アノードとしては、特に限定はないが、炭素電極や、金属リチウム、金属ナトリウム又は金属カルシウム等を用い得る。アノードとして導電性基材そのものを用いても良い。或いは、アノードとして、導電性基材と以下のアノード構成材料との複合体を用いても良い。導電性基材については既述したSi含有カソードの導電性基材と同様である。
アノード構成材料としては、例えば、層状岩塩構造の一般式:ANiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、AはLi又はNa、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表される複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。
また、アノード構成材料として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、NaMPO、NaFe(PO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Fe、Vのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、アノード構成材料として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物、NaFePOF、Na(PO、を挙げることができる。アノード構成材料として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、アノード構成材料として、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物をアノード構成材料として採用してもよい。必要に応じて、アノード、Si含有カソード、原料溶液の少なくとも一つに、リチウム及び/又はナトリウムを添加しても良い。
高容量及び耐久性などに優れる点から、アノード構成材料として、層状岩塩構造の一般式:ANiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、AはLi又はNa、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表される複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、AがLiの場合には、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100の範囲であることが好ましく、20/100<b<80/100、12/100<c<70/100、10/100<d<60/100の範囲であることがより好ましく、30/100<b<70/100、15/100<c<50/100、12/100<d<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
AがNaの場合には、DがFeかつ0=cであり、それに加えて、0<b<1、0<d<1、0<e<1かつb+d+e=1であるものが良い。さらに、b、d、eの少なくともいずれか一つが5/100<b<70/100、5/100<d<70/100、5/100<e<70/100の範囲であることが好ましく、10/100<b<70/100、10/100<d<50/100、10/100<e<50/100の範囲であることがより好ましく、15/100<b<60/100、15/100<d<50/100、15/100<e<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
AがLiの場合、eについては、好ましくは0≦e<0.2、より好ましくは0≦e<0.1を例示できる。
アノード構成材料として、スピネル構造のLiMn2―y(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び、Niなどの遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素から選択される。0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。xの値の範囲としては、0.5≦x≦1.8、0.7≦x≦1.5、0.9≦x≦1.2を例示でき、yの値の範囲としては、0≦y≦0.8、0≦y≦0.6を例示できる。具体的なスピネル構造の化合物として、LiMn、LiMn1.5Ni0.5を例示できる。
具体的なアノード構成材料として、LiFePO、LiFeSiO、LiCoPO、LiCoPO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOFを例示できる。他の具体的なアノード構成材料として、LiMnO−LiCoOを例示できる。他の具体的なアノード構成材料として、NaFePO、NaVPO、NaFePOF、NaFe(PO、Na(POを例示できる。
アノードは既述したSi含有カソードと同様に、アノード構成材料に加えて結着剤、導電助剤等の添加剤を含有するのが好ましい。アノードに含有される添加剤については、Si含有カソードで説明したものを適宜適切に採用すれば良い。
本発明の製造方法における生成工程では、Si含有カソード及びアノードを用いて、環状カーボネートと塩とを含有する原料溶液を電気分解する。具体的には、Si含有カソード及びアノードを、各々外部電源に接続して、原料溶液に接触させる。そして、外部電源の陰極に接続したSi含有カソードに電子を供給し、陽極に接続したアノードから電子を奪う。すると、原料溶液に接触しているSi含有カソードの表面に、脂肪酸塩が析出する。その反応機構は明らかでないが、環状カーボネートの還元分解と部分的な酸化とが生じて、酢酸等の脂肪酸骨格が形成され、当該脂肪酸骨格が原料溶液に含まれる塩と反応して脂肪酸塩が生成すると考えられる。Si含有カソードの表面に析出した当該脂肪酸塩は、例えば、物理的に掻き取ることで回収可能である。
つまり、本発明の製造方法は、上記の生成工程後に、脂肪酸塩を回収する回収工程を具備し得る。
後述するように、Si含有カソードに析出した脂肪酸塩の量は増減する場合がある。この場合には、Si含有カソードに析出した脂肪酸塩は、再度、原料溶液中に移動すると考えられる。例えば、Si含有カソードに脂肪酸塩が析出している状態で、Si含有カソードから電子を奪いアノードに電子を供給すると、Si含有カソードに析出した脂肪酸塩は原料溶液に移動する場合がある。したがって、この状態の原料溶液を回収し、原料溶液中の脂肪酸塩を分離すれば、脂肪酸塩を回収することが可能である。
つまり、本発明の製造方法は、生成工程後に、脂肪酸塩をSi含有カソードから原料溶液に移動させる移動工程を具備し得る。この場合、回収工程では、移動工程後の原料溶液中の脂肪酸塩を回収すれば良い。生成工程及び移動工程を経た原料溶液は、電気分解により生じた脂肪酸塩だけでなく、環状カーボネート、塩、及び電気分解の副生物を含む。また、Si含有カソードから物理的に掻き取った脂肪酸塩についても、環状カーボネート、塩、副生物等との混合物として回収される。したがって、本発明の製造方法は、必要に応じて、回収工程後に、このような脂肪酸塩混合物から脂肪酸塩を分離する分離工程を有しても良い。脂肪酸塩混合物から脂肪酸塩を分離する方法は、既知の方法を用いれば良く、例えば、脂肪酸塩混合物に対して洗浄、濾過、乾燥等の前処理を行った後に、イオン交換クロマトグラフィーにより分離する方法が挙げられる。
なお、本発明の製造方法においては、リチウムイオン二次電池の負極をSi含有カソードとし正極をアノードとして、リチウムイオン二次電池を充放電することで、上記の生成工程及び移動工程を行っても良い。
本発明の製造方法に包含される各工程は、不活性ガス雰囲気下で実施されるのが好ましい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下、実施例及び比較例により、本発明の製造方法をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施例を含む本明細書に示した各要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて本発明の製造方法に使用し得る。
(実施例1)
(シリコン材料の製造)
シリコン材料の製造においては、先ず、氷浴中の36質量%HCl水溶液に、アルゴンガス雰囲気下、CaSiを加えて撹拌し、反応液を濾過し、蒸留水、及び、アセトン又はメタノールで洗浄した。洗浄後の残渣をさらに減圧乾燥して、ポリシランを含む層状シリコン化合物を分離した。層状シリコン化合物をアルゴンガス雰囲気下、900℃で1時間加熱することで、水素を脱離させて、シリコン材料を得た。
(Si含有カソード)
上記したシリコン材料の製造工程で得たシリコン材料を72.5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13.5質量部、及び結着剤としてポリアクリル酸をジアミンで架橋した架橋ポリマー14質量部を混合して混合物とした。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを製造した。導電性基材として銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥してN−メチル−2−ピロリドンを除去し、その後、当該銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で加熱乾燥して、Si含有カソードを得た。
なお、実施例1の脂肪酸塩の製造装置におけるSi含有カソードは、後述する第1工程と第2工程との両方を行い得る蓄電性電極である。
(アノード)
アノード構成材料としてLiNi5/10Co2/10Mn3/10を69質量部、アノード構成材料として炭素被覆されたLiFePOを25質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを3質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを3質量部、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。導電性基材としてアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を乾燥してN−メチル−2−ピロリドンを除去し、その後、当該アルミニウム箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で加熱乾燥して、アノードを得た。
(原料溶液)
フルオロエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比3:3:4で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解し、原料溶液とした。なお、当該原料溶液においては、環状カーボネートとしてフルオロエチレンカーボネートを用い、塩としてLiPFを用いた。
(装置)
実施例1の脂肪酸塩の製造装置を図1に示す。図1に示す製造装置は、反応槽1、Si含有カソード11、アノード12、第1リード21、第2リード22、供給槽3、回収槽4、供給経路部51、第1ポンプP1、回収経路部52、第2ポンプP2、攪拌子61、モータM、及び、電源装置8を有する。
供給槽3と反応槽1とは供給経路部51で接続され、反応槽1と回収槽4とは回収経路部52で接続される。供給経路部51にはバルブ付きの第1ポンプP1が取り付けられ、回収経路部52にはバルブ付きの第2ポンプP2が取り付けられる。
供給槽3には原料溶液90が収容される。供給槽3には攪拌子61が取り付けられ、供給槽3内の原料溶液90は、攪拌子61により攪拌される。攪拌子61はモータMにより駆動される。モータMは後述する電源装置8に接続され、モータMの駆動制御は電源装置8の制御部(図略)により行われる。
供給槽3の原料溶液90は供給経路部51を通じて反応槽1に輸送される。供給槽3から反応槽1への原料溶液90の流量は、第1ポンプP1の出力を調整することで適宜設定される。なお、第1ポンプP1のバルブを閉じれば、供給槽3から反応槽1への原料溶液90の輸送は停止する。第1ポンプP1は後述する電源装置8に接続され、第1ポンプP1の駆動制御は電源装置8の制御部(図略)により行われる。
反応槽1にはSi含有カソード11とアノード12とが配置されている。Si含有カソード11及びアノード12は反応槽1の内部で原料溶液90に接触する。Si含有カソード11は第1リード21によって電源装置8に接続される。アノード12は第2リード22によって電源装置8に接続される。
電源装置8は、Si含有カソード11に電子を供給しアノード12から電子を奪う態様(第1態様と呼ぶ)と、Si含有カソード11から電子を奪いアノード12に電子を供給する態様(第2態様と呼ぶ)と、の何れかになるよう、Si含有カソード11及びアノード12に電圧を与える。つまり、第1態様においては、Si含有カソード11からアノード12に向けて電流が流れる。また、第2態様においては、アノード12からSi含有カソード11に向けて電流が流れる。電源装置8は、Si含有カソード11及びアノード12に供給する電流及び電圧を制御可能な制御部を有する。なお、実施例1の脂肪酸塩の製造装置においては、電源装置8は図略の外部電源に接続され、当該外部電源からの給電を受けるが、電源装置8は発電機を内蔵しても良い。
反応槽1の原料溶液90は回収経路部52を通じて回収槽4に輸送される。反応槽1から回収槽4への原料溶液90の流量は、第2ポンプP2の出力を調整することで適宜設定される。なお、第2ポンプP2のバルブを閉じれば、反応槽1から回収槽4への原料溶液90の輸送は停止する。第2ポンプP2は電源装置8に接続され、第2ポンプP2の駆動制御は電源装置8の制御部(図略)により行われる。
(脂肪酸塩の製造)
脂肪酸塩の製造は、上記した脂肪酸の製造装置を用いて行い得る。実施例1の製造方法は、以下の生成工程、移動工程及び回収工程を有する。なお、移動工程及び回収工程については後述する。
(生成工程)
実施例1の生成工程では、反応槽に原料溶液を入れた状態で、電源装置からSi含有カソード及びアノードに電圧を与えて、Si含有カソードに電子を供給する第1態様と、Si含有カソードから電子を奪う第2態様とを交互に繰り返した。
具体的には、初回の第1態様は、Si含有カソード及びアノードに対して、Si含有カソードに電子が供給されアノードから電子が奪われる方向、つまり、Si含有カソードからアノードに向けて電流が流れる方向に、電圧3.0Vまで、0.85mAの定電流で給電を行った。
電圧3.0Vに到達後、更に、Si含有カソード及びアノードに対して、電圧3.9Vとする定電流及び定電圧での給電を4時間行った。このときの電流の大きさは13.6mAであった。
4時間の経過後、電源装置をオフにして、反応槽を60℃に加熱し、20時間放置した。以上の工程を初回の第1態様とした。
初回の第1態様後のSi含有カソードの表面には、析出物がみられた。当該析出物を掻き取ってサンプリングした。このようにして得られた析出物を、イオンクロマトグラフ法により成分分析した。その結果、評価の項にて詳説するように、析出物は脂肪酸塩の1種である酢酸リチウムを含んでいた。つまり、実施例1の製造方法における生成工程によると、脂肪酸塩が得られるといえる。なお、析出物を掻き取ってサンプリングする工程は、実施例1の製造方法における回収工程に相当する。
上記した初回の第1態様後、反応槽を25℃にし、電源装置をオンにして初回の第2態様を行った。
初回の第2態様は、Si含有カソード及びアノードに対して、Si含有カソードから電子を奪いアノードに電子を供給する方向、つまり、アノードからSi含有カソードに向けて電流が流れる方向に、電圧2.8Vまで、定電流で給電を行った。このときの電流の大きさは17.0mAであった。
初回の第2態様後、Si含有カソードの表面の析出物を上記と同様にサンプリングした。
初回の第2態様後、17.0mAの定電流で電圧2.8Vから4.24Vまで電圧を印加する第1態様と、17.0mAの定電流で電圧4.24Vから電圧2.8Vまで電圧を印加する第2態様と、を交互に繰り返した。実施例1の製造方法においては、初回〜6回目、51回目、及び201回目の第1態様後、並びに、初回〜6回目、51回目、及び201回目の第2態様後に、各々、Si含有カソードの表面の析出物をサンプリングした。得られた析出物の分析結果については、評価の項にて詳説する。
(実施例2)
原料溶液として、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比3:3:4で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解したものを用いたこと以外は、実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様にして、脂肪酸塩を製造した。実施例2の製造方法において、原料溶液は、環状カーボネートとしてエチレンカーボネートを含む。
実施例2の製造方法においては、初回、51回目、及び201回目の第1態様後、並びに、初回、51回目、及び201回目の第2態様後に、各々、Si含有カソードの表面の析出物をサンプリングした。得られた析出物の分析結果については、評価の項にて詳説する。
(比較例1)
原料溶液として、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートを体積比3:7で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解したものを用いたこと以外は、実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様にして、脂肪酸塩を製造した。比較例1の製造方法において、原料溶液は、環状カーボネートを含まない。
比較例1の製造方法においては、初回〜8回目、51回目、及び201回目の第1態様後、並びに、初回〜8回目、51回目、及び201回目の第2態様後に、各々、Si含有カソードの表面の析出物をサンプリングした。得られた析出物の分析結果については、評価の項にて詳説する。
(評価1 イオンクロマトグラフ分析)
実施例1の製造方法及び実施例2の製造方法で得られた析出物を、各々、イオンクロマトグラフ法により分析し、単位面積あたりのSi含有カソードに析出する酢酸リチウムの量(μモル/cm)を算出した。分析結果を表1及び図2に示す。なお、図2の「第1態様#n」とは「n回目の第1態様後」を意味する。同様に、「第2態様#n」とは「n回目の第2態様後」を意味する。
表1および図2に示すように、第1態様及び第2態様後に、Si含有カソードの表面に析出した析出物には、酢酸リチウムが含まれていた。この結果から、本発明の製造方法によると脂肪酸塩を製造し得ることがわかる。
酢酸リチウムの量に着目すると、各第1態様後の酢酸リチウム量は、各第2態様後の酢酸リチウム量に比べて多い。この結果から、主として生成工程の第1態様によってSi含有カソードの表面に脂肪酸塩が析出することがわかる。
また、各第2態様後の酢酸リチウム量は、直前の第1態様後の酢酸リチウム量に比べて少ない。この結果から、第1態様後に第2態様を行うことで、第1態様により生じた脂肪酸塩がSi含有カソードから移動することがわかる。実施例1及び実施例2の脂肪酸塩の製造装置の構成上、脂肪酸塩の移動先は原料溶液であるといえる。第2態様は、本発明の製造方法における移動工程に相当する。
上記したように、第1態様によりSi含有カソードの表面に析出した脂肪酸塩は、第2の態様により原料溶液中に移動すると考えられる。一方、第1態様においては原料溶液中の環状カーボネート及び塩から脂肪酸塩が生成する。したがって、第1態様と第2態様とを交互に繰り返すことで、原料溶液中の脂肪酸塩の濃度を高め、脂肪酸塩を効率的に製造できるといえる。
更に、環状カーボネートとしてフルオロエチレンカーボネートを用いた場合にもエチレンカーボネートを用いた場合にも、同様に、Si含有カソードの表面に脂肪酸塩が析出したことから、環状カーボネートとしてフルオロエチレンカーボネート及びエチレンカーボネートを好適に使用し得ることがわかる。
(評価2 TOF−SIMS分析)
実施例1の製造方法及び比較例1の製造方法で得られた析出物を、各々、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS:Time−of−Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)により分析した。具体的には、実施例1の製造方法で得られた析出物については6箇所で、初回の第1態様後の析出物につき分析を行った。比較例1の製造方法で得られた析出物については8箇所で初回の第1態様後の析出物につき分析を行った。実施例1の製造方法で得られた析出物の分析結果を図3に示し、比較例1の製造方法で得られた析出物の分析結果を図4に示す。なお、図3、4のNはN数を表し、測定箇所が異なる。
TOF−SIMS分析によると、酢酸リチウムに由来する負の二次イオンとしてLiCが検出され、正の二次イオンとしてLiが検出される。図3に示すように、実施例1の製造方法で得られた各析出物からは、LiCに由来する125m/zのピーク、及び、Liに由来する73m/zのピークが検出された。これに対して、図4に示すように、比較例1の製造方法で得られた各析出物からは、LiCに由来する125m/zのピーク、及び、Liに由来する73m/zのピークは検出されなかった。つまり、実施例1の製造方法によると酢酸リチウムを製造できるのに対して、比較例1の製造方法では酢酸リチウムを製造できなかった。
この結果から、環状カーボネートを含む原料溶液を用いる実施例1の製造方法によると脂肪酸塩を製造でき、環状カーボネートを含まず鎖状カーボネートのみを含む原料溶液を用いる比較例1の製造方法では脂肪酸塩を製造できないことがわかる。つまり、本発明の製造方法においては、環状カーボネートを含む原料溶液を用いることで、脂肪酸塩を製造できる。
実施例1の製造方法及び実施例2の製造方法では、Si含有カソードから析出物を掻き取ることで、脂肪酸塩を回収したが、本発明の製造方法で得られる脂肪酸塩はこれ以外の方法によっても回収可能である。例えば、第1態様後のSi含有カソードを水に浸し、Si含有カソードの表面に析出した酢酸リチウムを水に溶解させて、酢酸リチウムを水溶液状で回収しても良い。
Si含有カソード、アノード、原料溶液の構成によっては、Si含有カソードに脂肪酸塩を連続的に析出させ、成長した析出物を回収しても良い。図1を基に説明すると、電源装置8によって、第1態様のみを連続的に行うよう電圧の制御を行う。このとき第1ポンプP1を連続的に又は所定間隔で駆動して、供給槽3から反応槽1に原料溶液90を輸送する。また、第2ポンプP2を連続的に又は所定間隔で駆動して、反応槽1から回収槽4に原料溶液90を輸送する。こうすることで、反応工程において、電気分解により環状カーボネート及び塩が低減した原料溶液90は反応槽1から回収槽4に回収され、充分な量の環状カーボネート及び塩を含む新たな原料溶液90が供給槽3から反応槽1に供給される。このため原料溶液90の電気分解による脂肪酸塩の製造を連続的かつ効率的に行い得る。
なお、実施例1及び実施例2のように、第1態様と第2態様とを交互に繰り返し行う場合にも、反応工程において、供給槽3から反応槽1への原料溶液90の輸送と、反応槽1から回収槽4への原料溶液90の輸送とを行っても良い。この場合にも、充分な量の環状カーボネート及び塩を含む原料溶液90が反応槽1に供給されることで、脂肪酸塩の製造を連続的かつ効率的に行い得る。
更には、電源装置8によって、第1態様及び第2態様を交互に所定の回数繰り返した後、第2態様の後で電気分解を休止するよう、電圧の制御を行っても良い。換言すると、脂肪酸塩を原料溶液に移動させる移動工程後に、電気分解を休止しても良い。
この場合には、電源装置8により電気分解の休止後に第2ポンプP2を駆動制御して、原料溶液90を反応槽1から回収槽4に輸送する。そして、回収槽4に回収された原料溶液90に含まれる脂肪酸塩を回収する。こうすることで、脂肪酸塩を簡単に回収でき、脂肪酸塩の製造を効率的に行い得る。
また、この場合には、反応槽1から回収槽4への原料溶液90の輸送後に、電源装置8によって第1ポンプP1を駆動制御し、供給槽3から反応槽1に原料溶液90を輸送する。そして輸送が完了した後に、再度、第1態様及び第2態様を交互に所定の回数繰り返した後、第2態様の後で電気分解を休止する電圧の制御を行うことで、休止時間のほぼない状態で反応工程を行うことができる。こうすることで、脂肪酸塩の製造を連続的かつ効率的に行い得る。
1:反応槽 11:Si含有カソード 12:アノード
21:第1リード 22:第2リード 3:供給槽
4:回収槽 51:供給経路部 P1:第1ポンプ
52:回収経路部 P2:第2ポンプ 61:攪拌子
M:モータ 8:電源装置 90:原料溶液

Claims (6)

  1. アノード及びSi含有カソードを用い、環状カーボネートと塩とを含有する原料溶液を電気分解して前記Si含有カソードの表面に脂肪酸塩を析出させる生成工程を具備する、脂肪酸塩の製造方法。
  2. 前記脂肪酸塩は酢酸塩である、請求項1に記載の脂肪酸塩の製造方法。
  3. 前記環状カーボネートは、エチレンカーボネート又はフルオロエチレンカーボネートである、請求項1又は請求項2に記載の脂肪酸塩の製造方法。
  4. 前記Si含有カソードは、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料を有する、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の脂肪酸塩の製造方法。
  5. 前記生成工程後に、前記脂肪酸塩を回収する回収工程を具備する、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の脂肪酸塩の製造方法。
  6. 前記Si含有カソードが蓄電性電極の場合、前記生成工程後に、前記Si含有カソードから外部に電子を供給して前記脂肪酸塩を前記Si含有カソードから前記原料溶液に移動させる移動工程を具備し、
    前記回収工程は、前記移動工程後における前記原料溶液中の前記脂肪酸塩を回収する、請求項5に記載の脂肪酸塩の製造方法。
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