JP2018178264A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Tomoko Ichikawa
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Abstract

【課題】マトリックス樹脂との界面剪断強度の高い炭素繊維の製造方法を提供すること。【解決手段】X線源としてAlKα1,2を用いたX線光電子分光法によって、光電子脱出速度45°で測定される炭素繊維表面のSi量が0.5モル%以上になるよう、炭素繊維を低温プラズマ処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法、である。【選択図】なし

Description

本発明は、マトリックス樹脂との接着性に優れる炭素繊維の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、低温プラズマで処理する炭素繊維の表面を改質する工程を含む炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、軽量でありながら、強度および弾性率に優れるため、種々のマトリックス樹脂と組み合わせた複合材料は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に用いられている。炭素繊維を用いた複合材料において、炭素繊維の優れた特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が優れることが重要である。
炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させるため、通常、炭素繊維に液相酸化、気相酸化等の酸化処理を施し、炭素繊維表面に酸素含有官能基を導入する方法が行われている。例えば、炭素繊維に電解処理を施すことにより、接着性の指標である層間剪断強度を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。また、気相酸化では炭素繊維に低温プラズマで処理することで接着性を向上する方法が提案されている(特許文献2参照)。
一方、炭素繊維は脆く、集束性および耐摩擦性に乏しいため、高次加工工程において毛羽や糸切れが発生しやすい。このため、炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献3および4参照)。
また、樹脂の含浸性を向上する目的で、サイジング剤を塗布した炭素繊維に、オゾン酸化、紫外線照射、プラズマ処理などの気相酸化を施す方法が提案されている(特許文献5参照)。
特開平04−361619号公報 特開昭59−082466号公報 米国特許第3,957,716号明細書 特開昭57−171767号公報 特開2014−227641号公報
炭素繊維強化複合材料の適用がさらに進むにあたり、上記の方法は、必ずしも十分であるとはいえない。すなわち、サイジング剤を塗布していない炭素繊維のみならず、サイジング剤を塗布して取り扱い性が向上した炭素繊維(本発明において、「サイジング剤を塗布していない炭素繊維」および「サイジング剤を塗布した炭素繊維」を総称し、単に「炭素繊維」とすることがある。)においてもさらなる接着性の向上が求められている。
そこで本発明の目的は、上記の従来技術における問題点に鑑み、マトリックス樹脂との接着性、すなわちマトリックス樹脂との界面剪断強度の高い炭素繊維の製造方法を提供することである。
本発明者らは、炭素繊維を特定の低温プラズマ処理することで、炭素繊維とマトリックス樹脂との界面剪断強度を向上できることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、X線源としてAlKα1,2を用いたX線光電子分光法によって、光電子脱出速度45°で測定される炭素繊維表面のSi量が0.5モル%以上になるよう、炭素繊維を低温プラズマ処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
本発明の炭素繊維の製造方法は上記発明において、炭素繊維としてサイジング剤を塗布した炭素繊維を用いることが好ましい。
本発明の炭素繊維の製造方法は上記発明において、低温プラズマ処理を内部電極方式の低温プラズマ処理機を用いて行うことが好ましい。
本発明の炭素繊維の製造方法は上記発明において、低温プラズマ処理を二酸化炭素雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明によれば、炭素繊維に低温プラズマで処理を施すことにより、マトリックス樹脂との界面剪断強度の高い炭素繊維を得ることができる。かかる効果は、炭素繊維としてサイジング剤を塗布した炭素繊維を用いた場合に顕著である。
以下、更に詳しく、本発明の炭素繊維の製造方法を実施するための形態について説明する。
本発明は、X線源としてAlKα1,2を用いたX線光電子分光法によって、光電子脱出速度45°で測定される炭素繊維表面のSi量が0.5モル%以上になるよう、炭素繊維を低温プラズマ処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
本発明は、炭素繊維の表面Si量が0.5モル%以上となるように、炭素繊維を低温プラズマ処理することが重要である。炭素繊維の表面Si量を0.5モル%以上とすることで、マトリックス樹脂との界面剪断強度が向上する。炭素繊維の表面Si量は、2.5モル%以上が好ましく、4.2モル%以上がより好ましい。炭素繊維表面のSi量は後述する低温プラズマ処理の条件によって制御することができる。
本発明の炭素繊維の表面Si量は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めたものである。まず、炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち測定した。光電子脱出角度45°で測定した。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sのメインピークであるC−C、C−Hx(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。Si2pピーク面積は、96〜110eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。炭素繊維表面における、それぞれの元素の原子数比(モル比)は、それぞれの元素のピーク面積の比を装置固有の感度補正値で割ることにより算出する。Si量は全元素の原子数比を100とした時のSiの原子数比で算出する。
本発明の製造方法で存在量(モル%)が制御されるSiは、二酸化ケイ素由来のSiであることが好ましい。炭素繊維表面のSiが二酸化ケイ素由来であることで炭素繊維とマトリックス樹脂との相互作用が強固になり、界面剪断強度が向上する。
本発明で用いる低温プラズマの発生源としては公知のプラズマ装置を用いることができる。
本発明における低温プラズマとは、気体温度(格子温度)が1万K未満で、電子温度が1万K以上の非平衡状態にあるプラズマを示す。気体温度が1万K以上で、平衡状態にある熱プラズマは本発明には含まれない。
本発明の炭素繊維の製造方法は、きわめて高電圧の放電電圧のもとに形成させた低温プラズマで炭素繊維を処理することが好ましい。装置内にいずれか一方がアースされた対放電電極を有する内部電極方式の低温プラズマ処理機で処理することが好ましい。
かかる方法でプラズマ処理された炭素繊維はマトリックス樹脂との界面剪断強度が顕著に改善されるので好ましい。
プラズマ処理に用いる電極の形状については特に制限はなく、対電極の両者が同一形状でもあるいは異なった形状のいずれでもよく、それらは平板状、リング状、棒状、シリンダー状等種々可能であり、さらには処理装置の金属内壁に一方をアースした形式のものであってもよい。安定な低温プラズマの形成を維持するためには、入力電極にかなりの耐電圧をもった絶縁被覆を施すことが好ましい。電極の絶縁被覆および/または電極近傍に少なくとも二酸化ケイ素を含む材料を用いることが重要である。電極近傍に二酸化ケイ素を含む材料を配置する場合には、二酸化ケイ素と電極の距離は5cm以下が好ましく、1cm以下がさらに好ましい。本発明の炭素繊維の製造方法において、低温プラズマが放電する際に二酸化ケイ素が放出されて炭素繊維表面に存在することとなり、マトリックス樹脂との界面剪断強度が向上することが好ましい。電極の絶縁被覆として石英、水晶、シリカ、リンケイ石、クリストバライトなどが用いることができる。石英がさらに好ましい。
本発明で用いる低温プラズマは、減圧下に無機ガスを流通させながらグロー放電を行わせることにより発生させた低温プラズマであることが好ましい。無機ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、酸素、窒気、−酸化窒素、二酸化窒素、−酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素などが例示され、これらは単独または二種以上のものが温合して使用される。本発明においてはこの無機ガスとして二酸化炭素、または窒素を少なくとも10容量%含む気体を使用することで、炭素繊維の表面のSi量が増加し、それにより炭素繊維とマトリックス樹脂との界面剪断強度を向上できる観点から好ましい。特に、低温プラズマ処理は二酸化炭素雰囲気下で行われることが好ましい。なお、これら無機ガスに有機化合物のガスを混入してもよい。
低温プラズマ処理を行う装置内のガス雰囲気の圧力は1〜100Paの範囲が好ましい。1Pa以上にすることで無機ガスによる炭素繊維の改質効果が向上し、100Pa以下にすることで表面処理の斑が低減することで好ましい。
本発明において、対放電電極間に1000ボルト以上の放電電圧を与えてグロー放電を行わせることが好ましく、1500ボルト以上であることがさらに好ましい。放電電圧を上げることで、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面剪断強度の向上効果が高く、短時間で十分な接着性改良をすることができる。なお、発熱によるエネルギー効率の低減を抑制するため、放電電圧は6000ボルト程度で十分である。
本発明において低温プラズマ処理をする炭素繊維は単糸であっても良いが、炭素繊維束を同時に処理することが好ましい。また、複数本の炭素繊維束を同時に処理する場合には、炭素繊維束はシート状に形成されていることが好ましい。炭素繊維束を一方向に引き揃えたトウ、織物、編物、組み紐、ウェブ、マットおよびチョップド等の形態が好ましい。特に、炭素繊維として織物の形態に製織されたものを用いた場合には、糸よれなどなく、織物の表面にある炭素繊維を均一に処理できるため好ましい。
また、本発明でプラズマ処理を行う炭素繊維束は、その炭素繊維束の断面の扁平率が10以上であることが好ましい。より好ましくは40以上、さらに好ましくは100以上であることが好ましい。ここで扁平率とは繊維束の束幅(D)と厚み(t)の比、D/tである。扁平率が10以上になると均一にプラズマ処理されるため、接着性が向上して好ましい。
なお、炭素繊維束断面の扁平率は以下の手順により算出する。該炭素繊維束の任意の3点について、繊維方向に直交するように繊維束幅を計測し、3点におけるその長さの平均を該繊維束の束幅(D)とする。また、繊維束の厚みは次式により算出する。
繊維束の厚み(t)[cm] =(繊維束の1m当たり質量[g])/{100×(繊維束の比重[g/cm])×(束幅(D)[cm])}
以上により求めた束幅と厚みの比、D/tを該繊維束の扁平率とする。
本発明の製造方法で得られる炭素繊維は、低温プラズマ処理前の炭素繊維表面のSi量に比べて、炭素繊維表面のSi量が2倍以上になることが好ましい。Si量を2倍以上にすることで、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面剪断強度が向上することで好ましい。かかるSi量の比率は15倍以上がより好ましく、50倍以上がさらに好ましい。
次に、本発明で使用する炭素繊維について説明する。本発明において使用する炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系およびピッチ系の炭素繊維が挙げられる。なかでも、強度と弾性率のバランスに優れたPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
本発明にかかる炭素繊維は、得られた炭素繊維束のストランド強度が、3.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GPa以上である。また、得られた炭素繊維束のストランド弾性率が、220GPa以上であることが好ましく、より好ましくは280GPa以上であり、さらに好ましくは350GPa以上である。
本発明において、上記の炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めることができる。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、130℃、30分を用いる。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
本発明において炭素繊維のフィラメント数は好ましくは1000〜80000本である。本発明において、炭素繊維の単糸繊度は0.5〜1.0デシテックスが好ましい。1.0デシテックス以下であることで、強度と弾性率の高い炭素繊維を得られるため、好ましく用いられる。0.5デシテックス以上で工程における単繊維切断が起きにくくなり、本発明で得られた炭素繊維の品位が向上する。
本発明において、サイジング剤を塗布する前の炭素繊維表面の、X線光電子分光法により測定される酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度(O/C)が、0.10以下である炭素繊維を低温プラズマ処理することが好ましい。より好ましくは0.01〜0.10の範囲内、さらに好ましくは0.01〜0.06の範囲内のものである。表面酸素濃度(O/C)が0.10以下であることにより、プラズマ処理によるマトリックス樹脂との界面剪断強度の向上が大きく好ましい。
本発明の炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めたものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着している汚れなどを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち測定した。光電子脱出角度45°で測定した。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sのメインピーク(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。表面酸素濃度(O/C)は、上記O1sピーク面積の比を装置固有の感度補正値で割ることにより算出した原子数比で表す。
本発明では、低温プラズマ処理する炭素繊維としてサイジング剤を塗布した炭素繊維を用いることが好ましい。また、本発明では、低温プラズマ処理した炭素繊維にサイジング剤を塗布することもできる。サイジング剤を塗布した炭素繊維を低温プラズマ処理する場合には、低温プラズマ処理の前と後工程で用いるサイジング剤の種類は同一でも良いし、異なっていても良い。
本発明のサイジング剤は公知のものを単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いるサイジング剤はエポキシ基を有する化合物を含むことが好ましい。エポキシ基があると、炭素繊維の表面官能基と相互作用し、炭素繊維表面と強固に接着するとともに、マトリックス樹脂、とりわけエポキシ樹脂との相互作用および反応性が高く、炭素繊維強化複合材料の物性が向上する。エポキシ化合物の具体例としては、ポリオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物、複数活性水素を有するアミンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ化合物、ポリカルボン酸から誘導されるグリシジルエステル型エポキシ化合物、および分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるエポキシ化合物などが挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、およびテトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。また、このエポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物、およびビフェニルアラルキル骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。さらに、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、および4−アミノ−3−メチルフェノールのアミノフェノール類の水酸基とアミノ基の両方を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、およびダイマー酸を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ化合物が挙げられる。
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化させて得られるエポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ化合物が挙げられる。さらに、このエポキシ化合物としては、エポキシ化大豆油が挙げられる。
これらのエポキシ化合物以外にも、トリグリシジルイソシアヌレートのようなエポキシ化合物が挙げられる。さらには、上に挙げたエポキシ化合物を原料として合成されるエポキシ化合物、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンジイソシアネートからオキサゾリドン環生成反応により合成されるエポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物として、1個以上のエポキシ基と、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有するエポキシ化合物を用いることもできる。
本発明のサイジング剤としてポリウレタン化合物が好ましく用いられるポリウレタン化合物はポリイソシアネートと、ポリエーテルまたはポリエステルとの反応により誘導されるものである。
本発明のポリウレタン化合物を形成するポリイソシアネートとしては、炭素原子数4〜100のイソシアネート、例えば芳香族ポリイソシアネート類、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環式ポリイソシアネート類があげられる。これらは2種類以上を併用することができる。
上記芳香族ポリイソシアネート類としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、粗製ジアミノフェニルメタンのホスゲン化物、すなわち、ホルムアルデヒドとアニリン等の芳香族アミンとの縮合反応生成物(ジアミノフェニルメタン)と少量(5〜20質量%)の3官能以上のポリアミンの混合物のホスゲン化物、1,3−ビス(フェニルメチル)ベンゼン−4,4’,4''−トリイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記脂肪族ポリイソシアネート類としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(2−イソシアネートエチル)カーボネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート等が挙げられる。
また、上記脂環式ポリイソシアネート類としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。
ポリエーテルとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの1種または2種以上を付加重合させた末端にヒドロキシル基を有するポリエーテル、テトラヒドロフランの開環重化合物であるポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールのような多価フェノール類のアルキレンオキサイド付加重合物、コハク酸、アジピン酸、フマール酸、マレイン酸、グルタール酸、アゼライン酸、フタル酸、テレフタル酸、ダイマー酸、ピロメリット酸等の多塩基性カルボン酸類のアルキレンオキサイド付加重合物等が挙げられる。
本発明で用いる分散剤および界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系界面活性剤が挙げられるが、水エマルジョン溶液とした際の溶液安定性の面から、ノニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸ショ糖エステル、アルキロールアミド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーなどを挙げることができる。
さらに、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、サイジング剤に収束性あるいは柔軟性を付与する成分を添加してもよい。これにより炭素繊維の取り扱い性、耐擦過性および耐毛羽性を高め、またマトリックス樹脂の含浸性を向上させることができる。
本発明で用いるサイジング剤は、分子内に1以上の芳香環を持つ化合物が好ましい。また、分子内に2以上の芳香環を有する化合物が好ましい。理由は明確ではないが、芳香族を持つ化合物をサイジング剤として用いると炭素繊維とマトリックス樹脂の界面剪断強度が向上するため好ましい。芳香族化合物の合計量が溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、50質量%以上配合することが好ましく、70質量%以上配合することがさらに好ましい。
本発明において、サイジング剤の炭素繊維への付着量は、サイジング剤を塗布した炭素繊維に対して、0.1〜10.0質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0質量%の範囲である。サイジング剤の付着量が0.1質量%以上であると、サイジング剤を塗布した炭素繊維を製織する際に、通過する金属ガイド等による摩擦に耐えることができ、毛羽発生が抑えられ、炭素繊維シートの平滑性などの品位が優れる。一方、サイジング剤の付着量が10.0質量%以下であると、サイジング剤を塗布した炭素繊維の周囲のサイジング剤膜に阻害されることなくマトリックス樹脂が炭素繊維内部に含浸され、得られる複合材料においてボイド生成が抑えられ、複合材料の品位が優れ、同時に機械物性が優れる。
サイジング剤の付着量は、サイジング剤を塗布した炭素繊維を約2±0.5g採取し、窒素雰囲気中450℃にて加熱処理を15分間行ったときの該加熱処理前後の質量の変化を測定し、質量変化量を加熱処理前の質量で除した値(質量%)とする。
次に、本発明において炭素繊維へのサイジング剤の塗布は公知の方法を用いることができる。
本発明において、サイジング剤は溶媒にサイジング剤に用いる成分を同時に溶解または分散したサイジング剤含有液を用いて、炭素繊維に塗布する方法が好ましく用いられる。
本発明でサイジング剤成分の希釈に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドなどが挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観点から有利であることから、水が好ましく用いられる。
塗布手段としては、例えば、ローラーを介してサイジング剤含有液に炭素繊維を浸漬する方法、サイジング剤含有液の付着したローラーに炭素繊維を接する方法、サイジング剤含有液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などがあるが、本発明のサイジング剤を塗布した炭素繊維を製造する上では、ローラーを介してサイジング剤含有液に炭素繊維を浸漬する方法が好ましく用いられる。炭素繊維にサイジング剤を塗布した後、熱処理することが好ましい。
本発明の製造方法で得られた炭素繊維はマトリックス樹脂として、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂(ここで説明される樹脂は、樹脂組成物であってもよい)を使用して炭素繊維強化樹脂組成物、成形体として用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂およびビスマレイミド樹脂等の樹脂およびこれらの変性体、これらを2種類以上ブレンドした樹脂が挙げられる。なかでも、機械特性のバランスに優れ、硬化収縮が小さいという利点を有するため、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
エポキシ樹脂に用いるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではなく、ビスフェノール型エポキシ化合物、アミン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物、イソシアネート変性エポキシ化合物、テトラフェニルエタン型エポキシ化合物、トリフェニルメタン型エポキシ化合物等のなかから1種類以上を選択して用いることができる。
また、硬化剤としては特に限定はされないが、芳香族アミン硬化剤、ジシアンアミドもしくはその誘導体などが挙げられる。また、脂環式アミン等のアミン、フェノール化合物、酸無水物、ポリアミドアミノ、有機酸ヒドラジド、イソシアネートを芳香族アミン硬化剤に併用して用いることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂としては、例えば、主鎖に炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合(ポリエーテルイミド等)、エステル結合、エーテル結合、シロキサン結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、フェノキシ樹脂およびビニル系ポリマー等の耐熱性と靭性とを兼備したものを好ましく使用することができる。
特に、熱分解温度が高いため、ポリエーテルスルホンやポリエーテルイミドが好適である。ポリエーテルスルホンとしては、“スミカエクセル(登録商標)”3600P、“スミカエクセル(登録商標)”5003P、“スミカエクセル(登録商標)”5200P、“スミカエクセル(登録商標)”7200P(以上、住友化学工業(株)製)、ポリエーテルイミドとしては、“ウルテム(登録商標)”1000、“ウルテム(登録商標)”1010、“ウルテム(登録商標)”1040(以上、日本ジーイープラスチックス(株)製)などを使用することができる。
本発明の繊維強化複合材料は、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェアリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根などが挙げられる。特に、航空機部材、風車の羽根、自動車外板および電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどに好ましく用いられる。
以下、本発明の炭素繊維の製造方法について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
各実施例、および各比較例でサイジング剤成分として用いた材料は以下の通りである。
(1)サイジング剤成分
(a)脂肪族エポキシ化合物
“デナコール(登録商標)”EX―411(ナガセケムテックス(株)製:ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル)。Siを含まない。
(b)芳香族エポキシ化合物
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製:ビスフェノールA型グリシジルエーテル)。Siを含まない。
(c)芳香族ウレタン化合物
“VONDIC(登録商標)”1230NE(DIC(株)製:芳香族イソシアネートと芳香族ポリエステルの重合物)Siを含まない。
(2)炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)
炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従いX線光電子分光法により求めた。まず、炭素繊維を、約20mmにカットし、銅製の試料支持台に拡げる。次に、試料支持台を試料チャンバー内にセットし、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保った。続いて、X線源としてAlKα1,2 を用い、光電子脱出角度を45°として測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sのメインピーク(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせた。C1sピーク面積は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、O1sピーク面積は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用い、上記装置固有の感度補正値は2.33であった。
(3)炭素繊維の表面のSi量
炭素繊維の表面Si量は、次の手順に従いX線光電子分光法により求めた。まず、炭素繊維を、約20mmにカットし、銅製の試料支持台に拡げる。次に、試料支持台を試料チャンバー内にセットし、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保った。続いて、X線源としてAlKα1,2 を用い、光電子脱出角度を45°として測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sのメインピークであるC−C、C−H(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせた。Si2pピーク面積は、96〜110eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。炭素繊維表面における、それぞれの元素の原子数比(モル比)は、それぞれの元素のピーク面積の比を装置固有の感度補正値で割ることにより算出して求めた。Si量は全元素の原子数比を100とした時のSiの原子数比で算出した。
(4)サイジング剤付着量の測定
約2gのサイジング剤を塗布した炭素繊維束を秤量(W1)(小数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させた。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、次式よりサイジング剤付着量を求めた。
サイジング剤付着量(質量%)=[W1(g)−W2(g)]/[W1(g)]×100
サイジング剤を塗布した炭素繊維100質量部に対するサイジング剤付着量を、付着したサイジング剤の質量部とした。本実施例では、測定は2回おこない、その平均値をサイジング剤の質量部とした。
(5)界面剪断強度(IFSS)の測定
界面剪断強度(IFSS)の測定は、次の(イ)〜(ニ)の手順でおこなった。
(イ)樹脂の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂化合物“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)100質量部とメタフェニレンジアミン(シグマアルドリッチジャパン(株)製)14.5質量部を、それぞれ容器に入れた。その後、上記のjER828の粘度低下とメタフェニレンジアミンの溶解のため、75℃の温度で15分間加熱をおこなった後、両者をよく混合し80℃の温度で約15分間真空脱泡をおこなった。
(ロ)炭素繊維単糸を専用モールドに固定
炭素繊維束から単繊維を抜き取り、ダンベル型モールドの長手方向に単繊維に一定張力を与えた状態で両端を接着剤で固定した。その後、炭素繊維およびモールドに付着した水分を除去するため、80℃の温度で30分間以上真空乾燥をおこなった。ダンベル型モールドはシリコーンゴム製で、注型部分の形状は、中央部分巾5mm、長さ25mm、両端部分巾10mm、全体長さ150mmである。
(ハ)樹脂注型・硬化
上記(ロ)の手順の真空乾燥後のモールド内に、上記(イ)の手順で調製した樹脂を流し込み、オーブンを用いて、昇温速度1.5℃/分で75℃の温度まで上昇し2時間保持後、昇温速度1.5分で125℃の温度まで上昇し2時間保持後、降温速度2.5℃/分で30℃の温度まで降温させた。その後、脱型して試験片を得た。
(ニ)界面剪断強度(IFSS)測定
上記(ハ)の手順で得られた試験片に繊維軸方向(長手方向)に引張力を与え、歪みを12%生じさせた後、偏光顕微鏡により試験片中心部22mmの範囲における繊維破断数N(個)を測定した。次に、平均破断繊維長laを、la(μm)=22×1000(μm)/N(個)の式により計算し、さらに平均破断繊維長laから臨界繊維長lcを、lc(μm)=(4/3)×la(μm)の式により計算した。ストランド引張強度σと炭素繊維単糸の直径dを測定し、炭素繊維と樹脂界面の接着強度の指標である界面剪断強度IFSSを、次式で算出した。実施例では、測定数n=5の平均を試験結果とした。
界面剪断強度IFSS(MPa)=σ(MPa)×d(μm)/(2×lc)(μm)
なお、ストランド引張強度は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めた。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/三フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、硬化時間は30分とした。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度とした。
界面剪断強度IFSSは、炭素繊維とマトリックス樹脂界面の接着強度の指標となる。
本発明において、IFSSが25MPa以上を◎、11MPa以上、25MPa未満を○、6MPa以上、11MPa未満を△、6MPa未満を×とした。◎、○が好ましい範囲である。サイジング剤を塗布していない炭素繊維を低温プラズマ処理した場合には、サイジング剤として脂肪族エポキシ化合物を塗布した後IFSS評価を行った。
さらに、サイジング剤を塗布した炭素繊維をプラズマ処理した場合にはプラズマ処理前の炭素繊維のIFSSを100とした時のプラズマ照射後の炭素繊維のIFSSを接着性向上効果の指標として用いた。
(参考例1)
原料となる炭素繊維は以下の通りに製造した。
アクリロニトリル共重合体を乾湿式紡糸し、焼成することで、総フィラメント数12,000本、総繊度500テックス、ストランド引張弾性率295GPaの炭素繊維Aを得た。次いでこの炭素繊維を硫酸水溶液を電解質として用い、電気量を変えることで表1に示す表面酸素濃度O/Cの炭素繊維A〜Cを得た。また、炭素繊維表面のSi量を表1に示す。
(参考例2)
焼成の最高到達温度を変更した以外は、参考例1と同様に行い、ストランド引張弾性率390GPaの炭素繊維Dを得た。また、炭素繊維表面のSi量を表1に示す。
Figure 2018178264
(参考例3)
サイジング剤(a)〜(c)をアセトンに溶解してサイジング剤含有液を作成した。このサイジング剤含有液を浸漬法により炭素繊維A〜Dに塗布した後、熱処理をして、サイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、サイジング剤を塗布した炭素繊維に対して1.0質量%となるように調整した。
(比較例1)
表面Si量が0.03モル%の炭素繊維Dを扁平率が200になるように一方向に引き揃えたトウを作成した。電極の絶縁被覆に二酸化ケイ素を用いた低温プラズマ処理装置を用い、二酸化炭素雰囲気下、真空度30Pa、電圧2.0kV、処理回数を1回で通したところ、炭素繊維表面のSi量は0.3モル%と増加した。プラズマ処理を行った炭素繊維に脂肪族エポキシ化合物をサイジング剤として塗布してIFSSを算出した。表2に示す通りで十分ではなかった。
(実施例1)
処理回数を4倍にして炭素繊維表面のSi量を0.7モル%とした以外は、比較例1と同様に評価した。接着性は、表2に示す通り好ましかった。
(比較例2)
雰囲気を窒素にした以外は、実施例1と同様に評価した。接着性は、表2に示す通り低かった。
(実施例2)
真空度を表2の通りにした以外は、実施例1と同様に評価した。接着性は、表2に示す通り好ましかった。
(実施例3)
真空度と電圧を表2の通りにした以外は、実施例1と同様に評価した。接着性は、表2に示す通り高い接着性を示した。
(比較例3)
扁平率を表2の通りにした以外は、実施例1と同様に評価した。接着性が低かった。

(比較例4)
電極の絶縁被覆として二酸化ケイ素を用いない低温プラズマ処理装置を用いた以外は実施例1と同様に評価した。接着性は表2に示す通りに低かった。
Figure 2018178264
(実施例4)
サイジング剤として(a)を塗布した炭素繊維Dを用いて表3の条件で低温プラズマを照射した。炭素繊維表面のSi量は0.03モル%から4.0モル%に増加した。接着性も好ましかった。
(比較例5)
電圧と処理回数を表3の通りに変えた以外は実施例4と同一の方法で実施した。接着性が不十分だった。
(比較例6)
電圧と処理回数に加えて雰囲気を表3の通りに変えた以外は実施例4と同一の方法で実施した。接着性が不十分だった。
Figure 2018178264
(実施例5〜9)
表4のサイジング剤と炭素繊維を用いてサイジング剤を塗布した炭素繊維を作成し、低温プラズマを照射した。接着性は好ましかった。
続いて、低温プラズマ処理をする前のサイジング剤を塗布した炭素繊維のIFSSを測定した。また、接着性向上効果は110以上が好ましく、150以上がより好ましく、180以上がさらに好ましい。
Figure 2018178264

Claims (10)

  1. X線源としてAlKα1,2を用いたX線光電子分光法によって、光電子脱出速度45°で測定される炭素繊維表面のSi量が0.5モル%以上になるよう、炭素繊維を低温プラズマ処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  2. 炭素繊維表面のSiが二酸化ケイ素由来のSiである、請求項1に記載の炭素繊維の製造方法
  3. 低温プラズマ処理により、炭素繊維表面のSi量を低温プラズマ処理前の炭素繊維表面のSi量の2倍以上とする、請求項1または2記載の炭素繊維の製造方法。
  4. 前記炭素繊維が、炭素繊維束断面の扁平率(幅/長さ)が10以上の炭素繊維である、請求項1から3のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
  5. 前記炭素繊維が、織物の形態に製織された炭素繊維である、請求項1から4のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
  6. 前記炭素繊維が、サイジング剤を塗布した炭素繊維である、請求項1から5のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
  7. 前記サイジング剤が、芳香族を含むエポキシ化合物および/またはウレタン化合物を含むサイジング剤である、請求項6に記載の炭素繊維の製造方法。
  8. サイジング剤を塗布する前の炭素繊維表面の、X線光電子分光法により測定されるO/Cが0.01〜0.10である、請求項6または7に記載の炭素繊維の製造方法。
  9. 前記低温プラズマ処理が、内部電極方式の低温プラズマ処理機を用いた処理である、請求項1から8のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
  10. 前記低温プラズマ処理が、二酸化炭素雰囲気下で行われる、請求項1から9のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
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