JP2018201364A - 木質培土及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】短時間で量産でき、植物を良好に生育できる木質培土を提供する。【解決手段】針葉樹の木材を砕いて形成された、堆肥化されていない木材砕片で構成された木質培土である。木材砕片が、クエン酸鉄アンモニウムとキチン質とを含有している。【選択図】図2
Description
本発明は、農業や園芸等に好適な木質培土及びその製造方法に関する。
椰子殻の粉砕物やピートモス等、植物繊維を素材とした軽量な培土が、農業や園芸等によく利用されている。このような植物繊維を素材とした培土は、軽量なだけでなく、その繊維分により、栽培時の空隙率を高くでき、保水性や透水性に優れるといった利点もある。なお、本書でいう「培土」は、概念的なものであり、植物を栽培するための土台を構成する素材、を意味する。
しかし、例えば椰子殻の粉砕物を利用する場合には、タンニン(加水分解によって没食子酸などの多価フェノール酸を生ずる混合物)や塩分が多量に含まれており、これが植物の生育を阻害するという問題がある。そのため、長期間、野積みして雨水に曝したり水槽に浸漬したりしてタンニンや塩分を除去することが行われているが、時間と手間を要するうえに、適切な管理を行わないと、品質にバラつきが生じる。
更に、養液栽培で使用された場合には、そこから排出される排液に、椰子殻に由来するタンニン成分が混じるため、河川汚染の原因となることがある。そこで、これら植物繊維を培土として利用する際に、タンニンを鉄イオンと反応させて不活性化させる方法が提案されている(特許文献1,2)。
例えば、特許文献1では、硫酸第1鉄の水溶液に椰子殻を2週間浸漬した後、水酸化カルシウムでpHを調整し、乾燥、粉砕して培土を形成している。また、特許文献2では、鉄板等を入れた水槽で椰子の果肉を1晩浸漬した後、圧搾と水浸漬とを繰り返し、乾燥、断裁して溶液栽培用のマットを形成している。
木材は、一般に食品残渣や畜産排泄物等と混合され、堆肥化(自然発酵させる)したものが堆肥として利用されているが、堆肥化には、長い保管時間と広大な保管場所を要するという問題がある。そこで、堆肥化していない木材を素材とした培土(木質培土)も提案されている(特許文献3,4)。
すなわち、特許文献3には、剪定された樹木の幹枝葉を圧縮粉砕機で粉砕して土壌に還元する方法が開示されている。特許文献4には、木材を蒸煮爆砕処理して得られる木質解繊物からなる土壌改質資材が開示されている。木材にもタンニンは含まれているが、特許文献3,4では、タンニンについては考慮されていない。
本発明に関し、植物の栽培へのキチンやキトサンの利用も提案されている(特許文献5,6)。
特許文献5には、所定の組成からなるキチンやキトサンの混合物に、植物の生長促進効果が認められたことが開示されている。特許文献6には、廃材を細かく破砕して得られる木質チップを改質するために、所定量のキチン・キトサン類を木質チップに混合することが開示されている。木材チップにキチン・キトサン類を配合することで、木材チップに含まれるフェノール類などが吸着され、植物の発芽と発根が促進されると記載されている。
なお、キチンやキトサンは、カニやエビなどの甲殻やイカの骨格などに含まれる天然の含窒素多糖類であり、植物の栽培だけでなく、様々な分野で利用されている。キトサンは、キチンを脱アセチル化したものであるため、化学構造はキチンと異なるが、通常、キチンとキトサンは、その含有比率が異なるだけで、混在した状態で存在している。従って、これら両者は、厳密に区別することは難しく、キチン類、キトサン類、キチン・キトサンなどと呼ばれている場合が多い。
特許文献5では、キチン等の混合物を含む水溶液を用いた栽培試験で、初期生長における根の伸長を促進させる効果が認められたことが開示されているに過ぎない。その点、特許文献6には、木材チップにキチン・キトサン類を配合すれば、フェノール類などの吸着効果、植物の発芽や発根の促進効果が期待できることが示唆されている。
しかし、本発明者らが検討したところ、単に、木材の破砕物にキチン等を加えるだけでは十分な効果が得られず、改善の余地があることが判明した。
ちなみに、特許文献6では、その効果不足を補うために、トルマリン等の遠赤外線放射物質や、木炭等の炭素質物質を混合しているが、配合が複雑になって品質安定性に欠ける。更に、木材チップの原料に廃材が用いられているが、廃材には、防腐剤等の薬剤が含まれている場合があるため、食用植物の栽培には使用できず、観賞用等、非食用植物の栽培に用途が限られる不利もある。
また、特許文献3、4の技術に、特許文献1や特許文献2の技術を適用することで、木材に含まれるタンニンも取り除ける可能性はある。しかし、その場合でも、依然として時間と手間を要するため、改善の余地がある。更に、本発明者らが検討したところ、硫酸鉄は、タンニンの不活性化には有効であるが、それ自体が植物の生育を阻害し得ることを見出した。
そこで本発明の目的は、短時間で量産でき、植物を良好に生育できる木質培土を提供することにある。
本発明の1つは、針葉樹の木材を砕いて形成された、堆肥化されていない木材砕片で構成され、前記木材砕片が、クエン酸鉄アンモニウムとキチン質とを含有している木質培土である。
木材の粉砕物は、生分解が困難で腐熟し難いために、培土として使用を開始した後、前述した椰子殻等よりも長期にわたってその品質を維持できる。木材の中でも、特に針葉樹は、広葉樹に比べて腐熟しにくく、品質安定性に優れるうえに、建築用資材である合板や積層材の製造時に多量の端材が発生するため、これらを再利用することで、原料を安定して得ることができる。堆肥化されていないので、長い保管時間と広大な保管場所を要さず、短時間で製造できる。
木材を砕いた木材砕片で構成されているので、木材の繊維成分の解け具合を変えることにより、生育対象の植物に応じた保水性や透水性に調整できる。
木材砕片が、クエン酸鉄アンモニウムを含有している(つまり残存している)ので、十分量のクエン酸鉄アンモニウムが添加されていることになり、木材砕片に含まれるタンニンは十分に不活性化されている。従って、植物の生育阻害を安定的かつ効果的に防止できる。クエン酸鉄アンモニウムは、硫酸鉄のような生育阻害を招かないので、植物を良好に生育できる。
木材砕片は、更にキチン質を含有している。ここでいうキチン質とは、キチン及びキトサンの総称であり、キチンやキトサンを主成分とする物質を意味する。キチン質の形態は、適宜選択でき、粒状、粉状、液状、ゲル状等、いずれであってもよい。
クエン酸鉄アンモニウムで改質した木材砕片にキチン質を加えることで、微生物環境の改善効果が得られ、植物を、よりいっそう良好に生育できるようになる。このような微生物環境の改善効果は、特許文献6のように、単に木材の破砕物にキチン質を加えるだけでは得られない。
前記木材砕片は、更にピロリン酸鉄を含有しているようにしてもよい。
ピロリン酸鉄は、クエン酸鉄アンモニウムと同様に食品添加物として広く利用されており、安全性に優れる。従って、食用植物の栽培にも支障なく使用できるので、用途の制限を受けない利点がある。更に、硫酸鉄のような生育阻害を招かないので、木材砕片に十分量を添加してタンニンを不活性化できる。従って、植物を良好に生育できる。
本発明の他の1つは、木質培土の製造方法である。
その製造方法は、針葉樹の木材を砕いて木材砕片を形成する第1工程と、前記木材砕片を溶液で処理して改質木材砕片を得る第2工程と、前記改質木材砕片にキチン質を添加する第3工程と、を含み、前記第2工程が、前記木材砕片の絶乾重量に対して0.5重量%以下のクエン酸鉄アンモニウムを前記木材砕片に作用させる第1の改質処理を含むことを特徴とする。
この製造方法によれば、前述したような木質培土を、工業的に製造できるので、短時間で量産できる。クエン酸鉄アンモニウムは、木材砕片に対して過量に作用させても、生育阻害を招き難いことから、タンニンを効果的に不活性化できる。木材砕片の絶乾重量に対して0.5重量%以下のクエン酸鉄アンモニウムであれば、植物を安定して良好に生育させることができる。
そして、キチン質を改質木材砕片に添加することで、微生物環境の改善効果が得られることから、植物を、よりいっそう良好に生育できるようになる。
その製造方法は、針葉樹の木材を砕いて木材砕片を形成する第1工程と、前記木材砕片を溶液で処理して改質木材砕片を得る第2工程と、を含み、前記第2工程が、前記木材砕片の絶乾重量に対して、0.5重量%以下のクエン酸鉄アンモニウムと、キチン質とを前記木材砕片に作用させる第1の改質処理を含む、としてもよい。
定量的に作用させる必要があるクエン酸鉄アンモニウム及びキチン質の双方を、第1の改質処理で併せて作用させることで、木材砕片を効率的かつ安定的に改質できる。しかも、溶液に溶解又は分散させた状態で木材砕片に作用させるので、より効率的かつ安定的に改質できる。
なお、キチン質を添加する場合は、0.1〜20重量%とするのが好ましい。0.1%未満の場合、土壌中に均一に分散させるのが難しく、均一な効果を得るのが難しい。一方、20重量%を超える量を入れると、キチン質が分解され減容化した場合の影響が大きくなるため、好ましくない。
特に、前記第2工程が、前記木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%以下の硫酸鉄を前記木材砕片に作用させる第2の改質処理を含むようにしてもよい。
硫酸鉄は、タンニンとの反応性が高いため、タンニンの不活性化には有効である。しかし、適量を過ぎると、その濃度障害によって植物の生育阻害を招く。そこで、濃度障害を生じ無い、このような濃度で木材砕片に作用させ、その不足分をクエン酸鉄アンモニウムで補うことで、よりいっそう効率的に、タンニンを不活性化できる。
更に、前記第1及び第2の各改質処理は、前記クエン酸鉄アンモニウム及び前記硫酸鉄を含有する溶液を前記木材砕片に噴霧することによって行うのが好ましい。
そうすれば、より改質処理が簡単になり、簡単に、短時間で良質な木質培土を量産できるようになる。
本発明の木質培土によれば、植物を良好に育成できる。本発明の木質培土の製造方法によれば、そのような木質培土を、短時間で量産できるので、安価に提供できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
<木質培土>
現在、農業や園芸には、ピートモスや赤玉土、堆肥などを主材として構成された培土が一般に用いられている。培土は、栄養成分はもとより、植える植物に適した保水性、透水性、pH等の品質が求められる。ピートモスなどのいわゆる有機資材は、土壌の保水性・通気性の改善あるいは向上を目的として用いられる。近年では、趣味としての園芸も定着したことから、これを楽しむライトユーザーにとっては、軽量性も重要視されつつある。堆肥は、土壌改良資材(肥料)として有効であるが、その製造には、長い保管時間と広大な保管場所を要する。
現在、農業や園芸には、ピートモスや赤玉土、堆肥などを主材として構成された培土が一般に用いられている。培土は、栄養成分はもとより、植える植物に適した保水性、透水性、pH等の品質が求められる。ピートモスなどのいわゆる有機資材は、土壌の保水性・通気性の改善あるいは向上を目的として用いられる。近年では、趣味としての園芸も定着したことから、これを楽しむライトユーザーにとっては、軽量性も重要視されつつある。堆肥は、土壌改良資材(肥料)として有効であるが、その製造には、長い保管時間と広大な保管場所を要する。
そのような状況の下、木材の端材の活用により、これらの要望を満たし得る培土を開発すべく、本発明者らが鋭意検討を行った。その結果、植物の生育阻害を招くタンニンを効果的に不活性化できる改質方法、及び微生物環境を植物の生育に適した状態にできる改善方法を見出し、これらに代わる新規な培土(木質培土)を開発した。以下、その詳細について説明する。
(木質培土の原料)
木質培土は、堆肥化されていない細かな木屑状の木材砕片で構成されており、その主たる原料は、針葉樹の木材である。
木質培土は、堆肥化されていない細かな木屑状の木材砕片で構成されており、その主たる原料は、針葉樹の木材である。
ここで、堆肥化されていないとは、腐熟により、木材を構成している多糖類等が生分解されていないことを意味する。木質培土は、細分化されてはいるが、セルロースを主骨格とする木材の繊維成分は、ほとんどそのまま残存した状態となっている。木材の繊維成分は、生分解され難いため、後述するように、木材を砕いて、保水性や透水性が異なる所定の形態の木材砕片に形成することで、生育対象の植物に適した栽培条件を長期にわたって維持できる培土が得られる。
木質培土の原料には、スギやヒノキ等、国産の針葉樹が好適である。広葉樹は、針葉樹よりも腐り易いため、針葉樹に比べて品質の安定性に欠ける。針葉樹であれば、腐りにくいため、適切かつ安定したpF値(植物が、生育するために吸収できる土壌中の水分量の指標)や三相分布(固相、液相、気相)を、長期にわたって維持できる。
更に、国産の針葉樹は、建築材料や木材加工材料などに多用されており、その製造時には多量の端材(木材の余分な切れ端)が発生する。その端材が、木質培土の原料に利用できるため、安価な原料を安定して確保することができる。
タンニンは、木材の部位では、特に樹皮に多く存在するが、その内側の辺材(樹木の周辺部分)や心材(樹木の中心部分)にも存在する。そして、辺材よりも心材の方が、タンニンの含量が多い傾向がある。そのため、心材よりも辺材を原料に多く用いるのが好ましい。具体的には、辺材と心材との割合が1:0〜1:1の範囲となるように、原料となる木材の割合を設定するのが好ましい。
辺材の端材は、柱材などを製材する際に背板または加工端材として多量に発生する。このような辺材端材を優先的に使用することで辺材の割合を上げることができる。また、合板や積層材の製造時には、薄板を形成するために、長さ方向に所定の寸法に分断した丸太を、外周から中心に向かって周方向に所定の厚みで剥いでいく工程がある。その工程の最初の剥き始めを使うことで辺材の割合を増やすことができる。
一方、最後に残る、剥き芯と称する丸太の中心部分からなる端材を、木質培土の原料から排除することで、心材の割合を減らすことが可能になる。また、樹齢の若い樹木ほど樹幹中の辺材率が高いため、間伐材を使用することにより、大径木を使用する場合に比べて心材の割合を下げることができる。このようにして心材と辺材との割合を調整することができる。
木質培土には、補助的な原料として、木材に含まれるタンニンの不活性化を目的としたクエン酸鉄アンモニウムやピロリン酸鉄、硫酸鉄からなる改質剤、品質の向上を目的とした界面活性剤やpH調整剤が添加されている。更に、微生物環境の改善等を目的としたキチン質も添加されている。
硫酸鉄、具体的には、硫酸第一鉄等は、タンニンとの反応性が高いため、タンニンの不活性化には効果的であるが、過剰に添加すると、植物の生育阻害を引き起こすことが判明した(詳細は後述)。詳しくは、木材砕片に添加される硫酸鉄の濃度が、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%より多くなると、植物の生育阻害を引き起こす可能性があることが判明した。
それに対し、クエン酸鉄アンモニウムは、硫酸鉄よりもタンニンとの反応性は低いものの、木材砕片の絶乾重量に対して0.5重量%の高濃度で添加しても、植物の生育阻害が認められなかった。このことから、クエン酸鉄アンモニウムは、木質培土の改質剤として有効であることが判明した。
従って、木質培土には、タンニンを不活性化する改質剤として、木材砕片に含有されているタンニンを十分に不活性化できる量のクエン酸鉄アンモニウムを添加するのが好ましい。更には、植物の生育阻害が起きない量の硫酸鉄と、その不足分のタンニンを十分に不活性化できる量のクエン酸鉄アンモニウムと、を添加するのが、より好ましい。そのため、この木質培土では、タンニンを不活性化する改質剤として、硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムとが併用されている。
また、タンニンを不活性化する改質剤として、ピロリン酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムとを併用、あるいは硫酸鉄、ピロリン酸鉄、及びクエン酸鉄アンモニウムを併用してもよい。ピロリン酸鉄(ピロリン酸第一鉄やピロリン酸第二鉄)も、クエン酸鉄アンモニウムと同様に食品添加物として広く利用されている。そのため、ピロリン酸鉄は、硫酸鉄のように植物の生育を阻害するおそれがない。従って、過量のピロリン酸鉄を木材砕片に添加することができる。硫酸鉄の全部又は一部に代えてピロリン酸鉄を添加すれば、植物の生育阻害をよりいっそう安定して排除できる。
木材砕片は、乾燥することによって撥水性が生じる。撥水性が生じた木材砕片で木質培土が構成されていると、保水性が悪化するとともに、撥水することによって水分分布が不均質となり、植物の生育阻害を招くおそれがある。それに対し、界面活性剤を木材砕片に添加することで、乾燥による植物の生育阻害を抑制することが判明した(詳細は後述)。そのため、この木質培土では、界面活性剤が補助的な原料として添加されている。
また、植物は、一般に、弱酸性から中性のpHを好むものが多いが、それぞれ適したpHがある。そのため、この木質培土では、生育対象とする植物に応じたpH調整剤が補助的な原料として添加されている。例えば、アルカリ性調整剤としての炭酸カルシウム、苦土石灰、くん炭など、酸性調整剤としての過リン酸石灰、ピートモスなどが、仕様に応じて木質培土に添加されている。
更に、木質培土には、キチン質も添加されている。ここでいうキチン質は、キチンやキトサンを主成分とする物質を意味しており、様々な形態で市販されている。木質培土には、それらの中から適宜選択して使用できるが、分散性に優れる粉状のキチン質が好ましく、水溶液に容易に溶解ないし分散できるキチン質がより好ましい。キチン質は、直接的に、木質培土に添加して分散させてもよいし、間接的に、水溶液に溶解または分散させた後、その水溶液を木質培土に添加してもよい。
クエン酸鉄アンモニウムで改質した木材砕片にキチン質を加えることで、単に木材の破砕物にキチン質を加えるだけでは得られない、微生物環境の改善効果が得られ、植物を、よりいっそう良好に生育できるようになる(詳細は後述)。
(木質培土の特徴)
木質培土は、木材の繊維成分が、ほとんどそのまま残る、細かな木屑状の木材砕片で構成されており、生育対象の植物に応じた形態に設定されている。具体的には、木材の繊維成分の解け具合が、仕様に応じて設定されている。繊維分が解けるほど、保水性や吸水性が高くなり易く、木材組織が残るほど、透水性(水はけ)が高くなり易い。
木質培土は、木材の繊維成分が、ほとんどそのまま残る、細かな木屑状の木材砕片で構成されており、生育対象の植物に応じた形態に設定されている。具体的には、木材の繊維成分の解け具合が、仕様に応じて設定されている。繊維分が解けるほど、保水性や吸水性が高くなり易く、木材組織が残るほど、透水性(水はけ)が高くなり易い。
原料となる木材を砕く方法としては、例えば、回転鋸やカッターミルなどの切削粉砕機によって木材を細かく切断する方法(切削粉砕)、ハンマーミルやピンミルなどの衝撃粉砕機によって木材を衝撃で砕く方法(衝撃粉砕)、エクストルーダーやボールミルなどの摩砕粉砕機によって木材を磨り潰す方法(摩砕粉砕)がある。これらの中では、摩砕粉砕が最も繊維分が解け易いため、摩砕粉砕によって木材を砕くことで保水性や吸水性を高くできる。
木材砕片は、3mm〜20mmの範囲のメッシュを通過する大きさに調整するのが好ましい。20mmメッシュを通過しない大きな木材砕片は、根の延び先を塞いでその生長を阻害し易いし、そのような大きな木材砕片を含むと、粒度分布がばらついて扱い難い。20mmメッシュを通過する大きさに調整することで、適切な粒度分布が得られ、適度な保水性や透水性を調整することができる。
一方、3mmよりも小さなメッシュは、著しく生産効率を落とすため好ましくない。好ましくは、3mm以上のメッシュを通過するものを作るのが生産効率がよい。なお、ここでいうメッシュの大きさの定義は、JIS Z 8801−1に規定される試験用ふるいの公称目開きと同等のものをいう。
硫酸鉄は、タンニンとの反応性が高いうえに、木材砕片が含有するタンニンに対して不足する量が添加されるため、木材砕片に残存しないか残存しても微量である。それに対し、クエン酸鉄アンモニウムは、木材砕片が含有するタンニンに対して過剰量が添加されるため、木材砕片には、クエン酸鉄アンモニウムが残存している。その結果、木材砕片は、クエン酸鉄アンモニウムを含有するものとなっている(すなわち、木材砕片からクエン酸鉄アンモニウムを検出できる)。
ピロリン酸鉄も、クエン酸鉄アンモニウムと同様に、木材砕片が含有するタンニンに対して過剰量を添加できる。その場合、木材砕片にピロリン酸鉄が残存するため、木材砕片は、ピロリン酸鉄を含有するものとなっている(すなわち、木材砕片からピロリン酸鉄を検出できる)。
同様に、界面活性剤やpH調整剤、キチン質も添加されているため、木材砕片は、これらも含有するものとなっている。
木質培土は、このような改質した木材砕片(改質木材砕片)のみで構成された状態、例えば、改質木材砕片を袋詰め等して提供することができる。また、木質培土は、植物の生育に有用なその他の成分、例えば、肥料、炭、ベントナイトやゼオライト等の軽量骨材などを改質木材砕片に適量混合した状態で提供することもできる。
<木質培土の製造方法>
木質培土は、針葉樹の木材(端材)を砕いて木材砕片を形成する工程(第1工程)、得られた木材砕片を溶液で処理して改質木材砕片を得る工程(第2工程)を経て製造される。場合によっては、改質木材砕片にキチン質を添加する工程(第3工程)を追加してもよい。堆肥化されていない木材を原料にして、工業的に製造できるので、短時間で量産できる。
木質培土は、針葉樹の木材(端材)を砕いて木材砕片を形成する工程(第1工程)、得られた木材砕片を溶液で処理して改質木材砕片を得る工程(第2工程)を経て製造される。場合によっては、改質木材砕片にキチン質を添加する工程(第3工程)を追加してもよい。堆肥化されていない木材を原料にして、工業的に製造できるので、短時間で量産できる。
第1工程では、端材を各種粉砕機で細かく砕いて木材砕片を形成する処理(細分化処理)と、20mm以下の範囲のメッシュを通過する木材砕片を選別する処理(分級処理)とが行われる。細分化処理では、製造する木質培土の形態に応じて、前述した各種の粉砕機が選択して使用される。端材を砕くだけであるので、短時間で処理できる。
分級処理では、細分化処理で得られる木材砕片を3mm〜20mmのいずれかのメッシュを通過させることで、所定の粒度に分級された木材砕片のみを回収する。作業効率の観点からは、20mmよりサイズの大きなメッシュを前段で通過させ、粗分級を行うのが好ましい。20mmメッシュを通過しない木材砕片は、細分化処理を再度行う(リサイクルする)ことで、処理効率を向上させることができる。リサイクルしながら、細分化処理と分級処理とを同時に行うのが最も効果的である。また、3mmメッシュに満たないサイズのメッシュを使用すると著しく分級効率が落ちるため、好ましくは、3mm〜20mmのサイズのメッシュを用いるのが好ましい。
第2工程では、木材砕片に含まれるタンニンの不活性化や、品質の向上を目的とした改質処理が行われる。具体的には、硫酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、界面活性剤、pH調整剤等の各々の所定量を、木材砕片に作用させる処理が行われる。本実施形態では、所定量のキチン質を木材砕片に作用させる処理も行われる。
硫酸鉄は、タンニンとの反応性が高いため、その不活性化には有効であるが、過剰に添加すると、植物の生育阻害を引き起こす。そのため、植物の生育阻害が起きない量として、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%以下の硫酸鉄を木材砕片に作用させる。それにより、硫酸鉄の全量が木材砕片のタンニンと反応して、タンニンを不活性化する。結果的に、木質培土には、未反応の硫酸鉄は残存しないか、残存しても微量である(植物の生育阻害は生じない)。
一方、その量の硫酸鉄では、木材砕片が含有するタンニンの量に対して不足する。そのため、残存したとしても植物の生育阻害を引き起こさないクエン酸鉄アンモニウムを、残りのタンニンの不活性化に十分な量として、木材砕片の絶乾重量に対して0.5重量%以下の範囲で作用させる。そうすることで、効果的にタンニンを不活性化でき、植物の生育阻害を防ぐことができる。
また、硫酸鉄やクエン酸鉄アンモニウムは、水溶液にして木材砕片に作用させるのが一般的であるが、その際、硫酸鉄のみであると、鉄の酸化によって沈殿が生じ易いため、濃度が安定しないという問題がある。それに対し、硫酸鉄の水溶液にクエン酸鉄アンモニウムが加わると、クエン酸の還元作用によって酸化が防止されるため、沈殿が生じ難くなり、硫酸鉄の濃度が安定する利点もある。
硫酸鉄の全部又は一部に代えて、ピロリン酸鉄を木材砕片に作用させてもよい。ピロリン酸鉄であれば、植物の生育阻害を引き起こさないので、0.2重量%を超える量を添加できる。従って、木材砕片を、植物の生育に適した状態に安定して改質できる。
また、界面活性剤やpH調整剤の各々の所定量を、木材砕片に作用させる処理が行われる。それにより、生育対象の植物により適した状態に改質でき、植物の生育を促進できる。
更に、キチン質を木材砕片に作用させる、つまりは木材砕片に均等に付着させる処理が行われる。改質木材砕片(単なる木材砕片ではない)にキチン質を作用させることで、微生物環境の改善効果が得られ、植物を、よりいっそう良好に生育できるようになる。
キチン質を添加する場合は、0.1〜20重量%とするのが好ましい。0.1%未満の場合、土壌中に均一に分散させるのが難しく、均一な効果を得るのが難しい。一方、20重量%を超える量を入れると、キチン質が分解され減容化した場合の影響が大きくなるため、好ましくない。
第2工程では、改質液を溜めた水槽に木材砕片を浸漬することによって各成分を木材砕片に作用させてもよいが、効率的に量産できるように、改質液を噴霧する処理を行うのが好ましい。図1A及び図1Bに、その一例を示す。
木材砕片に対して各成分を所定量作用させればよいので、図1Aに示すように、所定量の木材砕片1を撹拌機2に投入し、木材砕片1を撹拌しながら、各成分(クエン酸鉄アンモニウム、硫酸鉄、キチン質)の含量を調整した改質液をスプレー3で所定量噴霧することにより、改質処理を行うことができる(バッチ式)。この方法によれば、各成分を、短時間で多量の木材砕片1に対して均一に作用させることができる。
また、図1Bに示すように、フィーダー4から一定量で供給される木材砕片1を、ベルトコンベア5で搬送し、各成分(クエン酸鉄アンモニウム、硫酸鉄、キチン質)の含量を調整した改質液を、スプレー3で、ベルトコンベア5で搬送される木材砕片1に向けて所定量噴霧する。そうすることによっても、木材砕片1を均一に改質処理を行うことができる。
より好ましくは、噴霧後に連続式混合撹拌装置等の撹拌機を用いて攪拌することで均質な処理が可能になる。この方法によれば、連続的に改質処理できるので、より量産化が実現できる。なお、改質液の噴霧はまとめて1度に行ってもよい。また、改質液の噴霧後または噴霧中に撹拌しながら均一になるようにしてもよい。
このように、改質液の噴霧による方法によれば、短時間で均一に各成分を木材砕片に作用させることができる。改質液も必要十分量で足りるため、極めて効率的である。噴霧時に、改質液を加温すれば(例えば、50℃以上)、水分の除去を促進できるので、より効率的に処理できる。
前述したように、第2工程の後に、改質木材砕片にキチン質を添加する工程(第3工程)を追加してもよい。すなわち、タンニンの不活性化等の改質処理を第2工程で行って、改質木材砕片を取得する。そうした後、その改質木材砕片に、所定量のキチン質を添加し、均等に付着させる。
改質木材砕片であれば、事後的にキチン質を作用させた場合でも、微生物環境の改善効果を得ることができる。従って、キチン質の適用は、タンニンの不活性化等の改質処理から独立して行えるので、生産性に優れる。
<タンニンの不活性化の検討>
次に、タンニンの不活性化について検討した内容を説明する。
次に、タンニンの不活性化について検討した内容を説明する。
(比較試験1)
硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムの植物の生育への影響を調べた。試験では、電気伝導率(EC)が同一値(略0.5μS/cm)となるように調整した硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各水溶液を作製し、個別のシャーレに敷いた濾紙に、各水溶液を添加した。各濾紙に、12粒程度の小松菜の種を播種した後、暗条件下で7日程度育苗を行った。
硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムの植物の生育への影響を調べた。試験では、電気伝導率(EC)が同一値(略0.5μS/cm)となるように調整した硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各水溶液を作製し、個別のシャーレに敷いた濾紙に、各水溶液を添加した。各濾紙に、12粒程度の小松菜の種を播種した後、暗条件下で7日程度育苗を行った。
図2に、その結果を示す。硫酸鉄では、発芽不良が認められたが、クエン酸鉄アンモニウムでは、発芽不良は認められなかった。この結果より、クエン酸鉄アンモニウムは、それ自体の存在によって植物の生育阻害を生じる可能性は低いのに対し、硫酸鉄は、それ自体の存在によって植物の生育阻害を生じることが判明した。
(比較試験2)
タンニンの存在下での、硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムの植物の生育への影響を調べた。試験では、125ppm、500ppmの各濃度で硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各水溶液を作製し、これらに400ppmのタンニン酸を加えて、比較試験1と同様の試験を行い、育苗後での根の発育状態を比較した。
タンニンの存在下での、硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムの植物の生育への影響を調べた。試験では、125ppm、500ppmの各濃度で硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各水溶液を作製し、これらに400ppmのタンニン酸を加えて、比較試験1と同様の試験を行い、育苗後での根の発育状態を比較した。
図3に、その結果を示す。同図中、(a)は、ブランクの試験結果である(タンニン酸400ppmのみ)。(b1)は、タンニン酸400ppm+硫酸鉄125ppmでの試験結果であり、(b2)は、タンニン酸400ppm+硫酸鉄500ppmでの試験結果である。(c1)は、タンニン酸400ppm+クエン酸鉄アンモニウム125ppmでの試験結果であり、(c2)は、タンニン酸400ppm+クエン酸鉄アンモニウム500ppmでの試験結果である。
図3の(a)より、タンニン酸のみの存在下では、根毛がほとんど認められず、生育が阻害されていることが判る(200ppm程度の濃度でも同様の結果であることは確認済み)。それに対し、図3の(b1)や(c1)より、400ppmのタンニン酸に対して125ppmの濃度で各鉄塩を添加した試験区では、根毛が認められ、タンニン酸による生育阻害が抑制されていることが判る。すなわち、400ppmのタンニン酸に対しては、125ppm程度の鉄塩を添加することで、タンニンによる植物の生育阻害が防止できる。
一方、図3の(b2)より、400ppmのタンニン酸に対して過量の500ppmで硫酸鉄を添加した試験区では、根毛がほとんど認められなかったのに対し、図3の(c2)より、400ppmのタンニン酸に対して過量の500ppmでクエン酸鉄アンモニウムを添加した試験区では、根毛が認められた。すなわち、硫酸鉄には濃度障害が認められ、その過剰な添加は、植物の生育阻害を引き起こすのに対し、クエン酸鉄アンモニウムには濃度障害は認められず、過剰に添加しても植物の生育阻害を引き起こす可能性は低いことが判った。
(比較試験3)
改質液の噴霧による効果について調べた。試験では、木材砕片の絶乾重量に対する重量%別(0.1、0.3、0.5)で、硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各改質液を作製し、これらを木材砕片に噴霧し、ポリフェノール量の変化を比較した。なお、タンニンの量については、フォーリン・チオカルト(Folin-Ciocalteu)法を用いたポリフェノール量の測定により行った。
改質液の噴霧による効果について調べた。試験では、木材砕片の絶乾重量に対する重量%別(0.1、0.3、0.5)で、硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各改質液を作製し、これらを木材砕片に噴霧し、ポリフェノール量の変化を比較した。なお、タンニンの量については、フォーリン・チオカルト(Folin-Ciocalteu)法を用いたポリフェノール量の測定により行った。
図4に、その結果を示す。鉄塩の種類、濃度による大きな違いは認められず、いずれの試験区でも、ブランク(無処理)と比べてポリフェノール量が低下した。従って、鉄塩を含む改質溶液を木材砕片に噴霧することにより、タンニンを不活性化できることが判明した。
(比較試験4)
硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムとの併用による効果について調べた。試験では、70℃で3日間乾燥したスギチップ(徳島産)を、カッターミル(スクリーン径2mm)で粉砕して木材砕片を作製した。この木材砕片に、その絶乾重量に対して0.5重量%のクエン酸鉄アンモニウムと、濃度が異なる硫酸鉄とを含有する改質液を噴霧し、硫酸鉄の噴霧含量が異なる木質培土を作製した。これら木質培土を用いて小松菜の育苗試験を行い、播種から35日後の収穫量を比較した。
硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムとの併用による効果について調べた。試験では、70℃で3日間乾燥したスギチップ(徳島産)を、カッターミル(スクリーン径2mm)で粉砕して木材砕片を作製した。この木材砕片に、その絶乾重量に対して0.5重量%のクエン酸鉄アンモニウムと、濃度が異なる硫酸鉄とを含有する改質液を噴霧し、硫酸鉄の噴霧含量が異なる木質培土を作製した。これら木質培土を用いて小松菜の育苗試験を行い、播種から35日後の収穫量を比較した。
図5に、その試験結果を示す。0.5重量%のクエン酸鉄アンモニウムのみの試験区を含め、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%以下の硫酸鉄が併存する試験区では、高い収量が得られたが、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%を超える硫酸鉄が併存する試験区では、収量の低下が認められた。
従って、木材砕片の絶乾重量に対し、少なくとも0.5重量%以下のクエン酸鉄アンモニウムを木材砕片に作用させることで、タンニンによる生育阻害を抑制して、植物を良好に生育できる木質培土を得ることができる。また、木材砕片の絶乾重量に対し、0.2重量%以下の硫酸鉄を、十分量のクエン酸鉄アンモニウムと併用して木材砕片に作用させることによっても、タンニンによる生育阻害を抑制して、植物を良好に生育できる木質培土を得ることができる。
(比較試験5)
界面活性剤の添加による効果について調べた。試験では、比較試験4と同様に木材砕片を作製し、その木材砕片に、クエン酸鉄アンモニウムのみからなる改質液を添加した木質培土の2試料(単独区)と、硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムを併用した改質液を添加した木質培土の2試料(併用区)とを作製した。各木質培土の一方の試料の改質液には、界面活性剤(サイマトEZ:株式会社トモグリーンケミカル製)を適量添加した。作製した各試料を用いて、同じ条件の下で小松菜の育苗試験を行った。
界面活性剤の添加による効果について調べた。試験では、比較試験4と同様に木材砕片を作製し、その木材砕片に、クエン酸鉄アンモニウムのみからなる改質液を添加した木質培土の2試料(単独区)と、硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムを併用した改質液を添加した木質培土の2試料(併用区)とを作製した。各木質培土の一方の試料の改質液には、界面活性剤(サイマトEZ:株式会社トモグリーンケミカル製)を適量添加した。作製した各試料を用いて、同じ条件の下で小松菜の育苗試験を行った。
図6に、その試験結果を示す。単独区及び併用区のいずれの試料においても、界面活性剤を添加した方が収量が増加し、界面活性剤の添加が、植物の生育に有効であることが判った。
<微生物環境の改善の検討>
タンニンを不活性化した改質木材砕片であっても、植物を良好に生育できる木質培土が得られる。しかし、本発明者らが検討したところ、その改質木材砕片にキチン質を加えることで、微生物環境への改善効果が得られ、植物をより良好に生育できる木質培土が得られることを見出した。次に、その際行った微生物試験の主な内容について説明する。
タンニンを不活性化した改質木材砕片であっても、植物を良好に生育できる木質培土が得られる。しかし、本発明者らが検討したところ、その改質木材砕片にキチン質を加えることで、微生物環境への改善効果が得られ、植物をより良好に生育できる木質培土が得られることを見出した。次に、その際行った微生物試験の主な内容について説明する。
一般に、土壌微生物は、細菌、糸状菌、放線菌の3つに大別され、これら微生物によって土壌の菌相が構成されている。そのうち、糸状菌、いわゆるカビは、土壌病害の原因となる場合が多い。そのため、植物の生育に適した土壌を形成するうえでは、糸状菌の割合を減らし、相対的に細菌や放線菌の割合を増やすことが重要視される。例えば、B/F(細菌数/糸状菌数)値やA/F(放線菌数/糸状菌数)値などが、土壌の微生物環境を評価する指標として用いられており、これらの値が高い方が好ましいとされている。
そこで、これら細菌、糸状菌、放線菌に関し、未改質な木材砕片(C1)、未改質な木材砕片にキチン質を添加(C2)、改質木材砕片(T1)、改質木材砕片にキチン質を添加(T2)の4つの試料を用いて微生物定量試験を行った。なお、T1及びT2は、前述した実施形態の木質培土に相当するものである(実施例)。
(試料の調整)
所定サイズのカップ状容器を4つ準備し、2つのカップ状容器には、未改質な木材砕片(前述した実施形態の第1工程で得られた木材砕片)を200mlずつ充填し、他の2つのカップ状容器には、クエン酸鉄アンモニウム及び硫酸鉄で改質し、タンニンを不活性化した木材砕片を200mlずつ充填した。
所定サイズのカップ状容器を4つ準備し、2つのカップ状容器には、未改質な木材砕片(前述した実施形態の第1工程で得られた木材砕片)を200mlずつ充填し、他の2つのカップ状容器には、クエン酸鉄アンモニウム及び硫酸鉄で改質し、タンニンを不活性化した木材砕片を200mlずつ充填した。
前者のカップ状容器の一方及び後者のカップ状容器の一方を、試料C1及びT1とし、前者のカップ状容器の他方及び後者のカップ状容器の他方の各々に、試料の乾燥重量に対して1重量%のキチン質を添加し、試料C2及びT2とした。
蒸留水600mlに硫酸アンモニウム2.83gを溶解し、硫安溶液を作製した。C1〜T2の各試料に、その硫安溶液を40ml添加し、更に蒸留水を加えることで、各試料の水分重量の合計が100gとなるように調整した(体積含水率50%、試料体積に対するN濃度200ppm)。
その後、各試料を、植物培養室(25℃、明期14時間、暗期10時間)に静置し、培養を行った。2日に1度の頻度で、体積含水率50%が維持されるように、各試料に給水した。これら各試料に対して、7日後にサンプリングを行い、微生物試験を行った。
(微生物試験)
サンプリングした各試料の乾燥重量2.5gをビーカーに入れた後、50mlの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザーで3分処理した。その後、濾過することにより、各試料の抽出液を作製し、微生物定量試験に供した。
サンプリングした各試料の乾燥重量2.5gをビーカーに入れた後、50mlの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザーで3分処理した。その後、濾過することにより、各試料の抽出液を作製し、微生物定量試験に供した。
微生物定量試験では、細菌用として普通寒天培地を使用し、糸状菌用としてPDA培地を使用し、放線菌用としてAIA培地を使用した。各試験は、適宜希釈した抽出液を用い、塗抹法により行った。普通寒天培地及びPDA培地は、25℃、48時間培養を行い、AIA培地は、25℃、72時間培養を行った。
図7、図8、図9に、これら微生物定量試験の結果を示す。図7は、各試料の細菌数を比較したグラブであり、図8は、各試料の糸状菌数を比較したグラブであり、図9は、各試料の放線菌数を比較したグラブである。各図の縦軸は、試料の乾燥重量1g当たりの菌数(cfu/g)である。
これら図から明らかなように、T1及びT2の試料は、C1及びC2の試料に比べて、細菌、糸状菌、放線菌のいずれにおいても、菌数が増加する傾向が認められた。特に、未改質な木材砕片にキチン質を加えたもの(C2)よりも、改質木材砕片(T1)の方が、菌数が増加する傾向が認められたことが注目される。改質木材砕片は、未改質な木材砕片に比べて微生物の増殖に適したものとなっており、タンニンを不活性化する改質により、微生物環境の改善が期待できることが確認された。
更に、その改質木材砕片にキチン質を加えた場合(T2)、糸状菌の割合が減少し、相対的に、放線菌の割合が増加する傾向が認められた。一般に、放線菌はキチン質を好むと言われており、その拮抗作用によって糸状菌の割合が減少したものと考えられる。いずれにせよ、改質木材砕片にキチン質を加えることで、微生物の増殖に適するだけでなく、菌相も、植物の生育に適した状態への改善が期待できることから、よりいっそう高品質な木質培土を得ることができる。
(植物の育成試験)
各試料による植物の生育への効果を比較するために、コマツナを用いた育成試験を行った。試験に用いた試料は、前述した各試料C1〜T2である。ただし、本試験では、所定のカップ状容器に、各試料に対応した木材砕片を200mlではなく300mlずつ充填し、試料C2及びT2では、その乾燥重量に対して1重量%のキチン質を添加した。また、液体肥料と固体肥料とで試験を行うために、各試料を2つずつ準備した。
各試料による植物の生育への効果を比較するために、コマツナを用いた育成試験を行った。試験に用いた試料は、前述した各試料C1〜T2である。ただし、本試験では、所定のカップ状容器に、各試料に対応した木材砕片を200mlではなく300mlずつ充填し、試料C2及びT2では、その乾燥重量に対して1重量%のキチン質を添加した。また、液体肥料と固体肥料とで試験を行うために、各試料を2つずつ準備した。
液体肥料には、「ハイポネックス原液」を使用し、固体肥料には、「マグアンプK小粒」を用いた。なお、これらはいずれも株式会社ハイポネックスジャパン製である(ハイポネックス及びマグアンプは登録商標)。そして、この試験では、これら液体肥料又は固体肥料が試料体積に対して200ppmとなるように各試料に添加し、体積含水率が50%となるように各試料に加水した。
そうして調整した各試料に対し、閉鎖された環境下でコマツナを用いた育成試験を実施した。22日間、育成を行った後、各試料を回収し、コマツナの収量を測定した。
図10に、その育成試験の結果を示す。図10の縦軸は、育成後に収穫したコマツナの一株当たりの乾燥重量(g)である。図10から明らかなように、液体肥料及び固体肥料のいずれにおいても、未改質な木材砕片による試料(C1,C2)より、改質木材砕片による試料(T1,T2)の方が、コマツナの収量が多く、生育が促進される傾向が認められた。
改質木材砕片にキチン質を加えた試料(T2)は、改質木材砕片にキチン質を加えていない試料(T1)と比べて、肥料の違いの影響が少なく、安定した効果が認められた。特に、改質木材砕片にキチン質を加えた試料(T2)は、固体肥料で相対的に高い育成効果が認められたことから、固体肥料との組み合わせにおいて有利な効果が期待できる。
このように、本実施形態に示す木質培土によれば、堆肥化されていないため、短時間で量産できるし、原料として端材が利用できるので安価に提供できる。しかも、植物の生育阻害を招くタンニンが不活性化されており、微生物環境も、植物の生育に適した状態に改善されているので、植物を良好に育成できる。
1 木材砕片
2 攪拌機
3 スプレー
4 フィーダー
5 ベルトコンベア
2 攪拌機
3 スプレー
4 フィーダー
5 ベルトコンベア
Claims (6)
- 木質培土であって、
針葉樹の木材を砕いて形成された、堆肥化されていない木材砕片で構成され、
前記木材砕片が、クエン酸鉄アンモニウムとキチン質とを含有している木質培土。 - 請求項1に記載の木質培土において、
前記木材砕片が、更にピロリン酸鉄を含有している木質培土。 - 木質培土の製造方法であって、
針葉樹の木材を砕いて木材砕片を形成する第1工程と、
前記木材砕片を溶液で処理して改質木材砕片を得る第2工程と、
前記改質木材砕片にキチン質を添加する第3工程と、
を含み、
前記第2工程が、前記木材砕片の絶乾重量に対して0.5重量%以下のクエン酸鉄アンモニウムを前記木材砕片に作用させる第1の改質処理を含む木質培土の製造方法。 - 木質培土の製造方法であって、
針葉樹の木材を砕いて木材砕片を形成する第1工程と、
前記木材砕片を溶液で処理して改質木材砕片を得る第2工程と、
を含み、
前記第2工程が、前記木材砕片の絶乾重量に対して、0.5重量%以下のクエン酸鉄アンモニウムと、キチン質とを前記木材砕片に作用させる第1の改質処理を含む木質培土の製造方法。 - 請求項3又は請求項4に記載の製造方法において、
前記第2工程が、前記木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%以下の硫酸鉄を前記木材砕片に作用させる第2の改質処理を含む木質培土の製造方法。 - 請求項5に記載の製造方法において、
前記第1及び第2の各改質処理が、前記クエン酸鉄アンモニウム及び前記硫酸鉄を含有する溶液を前記木材砕片に噴霧することによって行われる木質培土の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2017108046A JP2018201364A (ja) | 2017-05-31 | 2017-05-31 | 木質培土及びその製造方法 |
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Publications (1)
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|---|---|
| JP2018201364A true JP2018201364A (ja) | 2018-12-27 |
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ID=64954178
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| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2018201364A (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2020158718A1 (ja) * | 2019-01-29 | 2020-08-06 | 学校法人立命館 | 新規有機土壌、その製造方法及びそれを用いた植物の栽培方法 |
-
2017
- 2017-05-31 JP JP2017108046A patent/JP2018201364A/ja active Pending
Cited By (3)
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|---|---|---|---|---|
| WO2020158718A1 (ja) * | 2019-01-29 | 2020-08-06 | 学校法人立命館 | 新規有機土壌、その製造方法及びそれを用いた植物の栽培方法 |
| JPWO2020158718A1 (ja) * | 2019-01-29 | 2021-12-09 | 一般社団法人Sofix農業推進機構 | 新規有機土壌、その製造方法及びそれを用いた植物の栽培方法 |
| JP7123324B2 (ja) | 2019-01-29 | 2022-08-23 | 一般社団法人Sofix農業推進機構 | 新規有機土壌、その製造方法及びそれを用いた植物の栽培方法 |
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