JP2018521027A - 周囲温度または亜正常温度での組織保存のための組成物および方法 - Google Patents

周囲温度または亜正常温度での組織保存のための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本明細書において、周囲温度で最長24時間まで臓器および組織の機能的完全性を回復、保存および維持するための方法および組成物を特に提供する。ATPレベル、ミトコンドリア機能、浮腫の予防を維持することにより、ならびにカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび塩化物イオンを調節することにより、代謝機能を維持する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月9日付で出願された米国仮特許出願第62/173,184号に対する優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
政府利益
本発明は、米国退役軍人省(United States Department of Veterans Affairs)によって授与された受賞番号第BX000817-01A1号の下での政府支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
発明の分野
本発明は、周囲温度で比較的長い期間にわたって生体組織および臓器を保存するための組成物および方法に特に関する。
背景
臓器移植における主な障害は、ドナー臓器の利用可能性が限られていることと、貯蔵中の劣化によるドナー臓器の質の低下である。これは、現在、4〜6時間しかエクスビボで保存することができないドナー心臓に特に当てはまる。体外心臓貯蔵のために現在利用されている溶液は、4℃またはそれに近い温度での低温貯蔵中の浮腫の予防および代謝(代謝変性)の減速に基づく。しかしながら、そのような低い温度は、必然的に、およそ6時間の貯蔵後には不可逆となる組織および細胞損傷を引き起こす。
概要
本明細書において記述される組成物および方法は、心停止前のドナー(Beating Heart Donor, BHD)、マージナルドナーおよび心停止後の提供(Donation after Cardiac Death, DCD)ドナーからの臓器貯蔵および/または臓器保存のための既存の方法と比べて有意な改善および利点を示す。例えば、改善された貯蔵/保存溶液、例えば、改良Somah (iSomah)は、周囲温度(25℃)でのならびに亜周囲温度(4℃超かつ25℃未満)での臓器の貯蔵およびかん流を可能にする。臓器、例えば心臓の体温低下は、臓器に損傷をもたらし、さらに障害さえももたらす。さらに、正常体温(36.4〜37.1℃、例えば36.4℃、36.5℃、36.6℃、36.7℃、36.8℃、36.9℃、37℃または37.1℃)の拍動心臓から低体温の温度、例えば4℃の非拍動心臓への移行はまた、心臓組織にとってストレスが多い。しかし、心臓が、4℃での体温低下により観察される完全な停止状態ではなく、室温、例えば、およそ20℃(21℃±4℃)での貯蔵を容易にする新規の溶液中において緩慢な収縮または動きを示し続けている場合、それは、細胞の高エネルギーリン酸貯蔵(ATP+CP)を枯渇させ、消耗するまで拍動して、細胞の恒常性の喪失、カルシウムの過負荷やアポトーシスの誘発および/または「石の心臓(stone heart)」として知られる移植不可能な臓器をもたらす壊死のような、関連した変性変化に至る。それゆえ、本明細書において記述される溶液中のカリウムイオンおよびマグネシウムイオンの濃度は、HEP合成、細胞恒常性、酸化窒素生成を同時に維持しながら(さらにトランスアミナーゼ反応から生成された有毒なアンモニウムイオンをキレートすることによって; 図33参照)、増加されて(他の貯蔵または心筋保護溶液と比べて)、亜正常温(subnormothermic)貯蔵(例えば10〜25℃)中の心臓組織の一時的麻痺を誘発する。これは、全ての組織および臓器における酸化窒素合成経路の活性の増加と、付随して浮腫の生理学的制御を引き起こす。
心筋保護は、心臓活動の意図的かつ一時的な停止である。そのような心拍の一時的停止は、心筋保護溶液のような化学物質の注射または注入によってなど、さまざまな方法のいずれかによって行われる。例えば、心臓はそのような方法で心臓手術のために停止される。そのような手術には、バイパス手術、心臓弁置換術、大動脈修復手術、および心臓移植などが含まれる。
この状態を改善/保存すること、例えば心臓臓器の組織損傷を低減させることに加えて、本溶液は、費用の低減、可能性としては心臓への最小限の内皮および組織の損傷による移植後の免疫抑制の必要性の低減、強心法の必要性の低減(例えば、心臓収縮を増加させるために薬物が必要とされない)および心洞調律機能を維持するための絶え間ない電気的除細動(electroversion)の必要性の低減、短縮されたCPB時間ならびにICUおよび病院での滞在(ゆえに、費用の減少)のような他の利点を提供する。さらに、本明細書において提供される臓器保存溶液の使用は、患者の罹患率の低下および長期間の転帰の改善、したがって最も重要なことには患者の生活の質の改善をもたらす。心臓が溶液から取り除かれると、溶液は手術中に心臓組織から洗い流される。その後、臓器は洞調律へ移行(sinus conversion)し、インビトロでの、血液による再かん流、復温時に; または移植時のクロスクランプの解除時、正常体温への患者の復温中に拍動を再開する。
本明細書において、とりわけ、周囲温度で生体組織または臓器を保存または蘇生させるための組成物、方法およびキットが提供される。
したがって、いくつかの局面において、少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、約5〜10 mMの、例えば約5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMもしくは10 mMなどのいずれかの濃度のグルコース(またはラクトース、マルトースおよび/もしくはリボースのような他の糖)、ならびに0 mM〜約5 mMの濃度のグルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリンリンゴ酸(あるいは、任意で、シトルリンもしくはその塩および/またはリンゴ酸もしくはその塩)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩)、オロト酸(もしくはその塩)、カルノシン(L-カルノシンなど)、カルニチン(L-カルニチンなど)、オロト酸および/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含む生体組織または臓器を保存または蘇生させるための組成物が本明細書において提供される。少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび/または少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含有する本明細書において記述される臓器貯蔵溶液は、既述された臓器貯蔵溶液(米国特許第8,211,628号を参照、この開示は参照により本明細書に組み入れられる)と比べて、より多様な貯蔵条件(例えば、温度)の範囲にわたり貯蔵中および心筋保護のような処置中、臓器の保護および保存に関して優れた特性を示す。したがって、本明細書において開示する貯蔵溶液を、「改良Somah」(iSomah)と呼ぶ。
他の局面において、生理学的塩溶液、ならびに5もしくは6炭素糖(リボース、グルコースもしくはデキストロースなど)、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸など)、リンゴ酸、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、カルノシン(L-カルノシンなど)、カルニチン(L-カルニチンなど)、オロト酸および/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含む哺乳動物臓器を保存するための組成物が本明細書において提供され、ここで組成物または臓器が21±4℃の温度で維持される。
本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物または臓器は、21±4℃の温度で維持される。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物はインスリンをさらに含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、インスリンは使用直前に組成物に添加される。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は0.44〜10 mMのリン酸カリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は4〜65 mMの塩化カリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は80〜135 mMの塩化ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は2〜25 mMの重炭酸ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は0〜1.5 mMの塩化カルシウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は0.15〜30 mMのリン酸ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は0.5〜45 mMの塩化マグネシウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は0.5〜1.5 mMの硫酸マグネシウムを含む。
例えば、貯蔵および/または保存溶液に加えて、本明細書において記述される生理学的に適合性のある溶液(改変Somah)は、心臓切開手術中に遭遇する温度範囲にわたって心臓を停止させるためのならびに移植用のおよび移植中のドナーおよびレシピエント心臓のための心筋保護溶液として有用である。そのような適用の場合、4〜10℃で、溶液は20 mMのカリウムイオン、例えば20 mMのKCl終濃度を含有し; 10〜25℃で、溶液は20 mMのカリウムイオン、例えば20 mMのKClおよび37 mMのマグネシウムイオン、例えば37 mMのMgCl2終濃度を含有し; 25〜37℃で、溶液は45 mMのカリウムイオン、例えば45 mMのKClおよび37 mMのマグネシウムイオン、例えば37 mMのMgCl2を含有する。他の態様において、25〜37℃で、溶液は25 mMのカリウムイオン、例えば25 mMのKClおよび37 mMのマグネシウムイオン、例えば37 mMのMgCl2を含有する。
カリウムイオンおよびマグネシウムイオン濃度(例えば、KClおよびMgCl2の濃度)だけでなく、臓器停止(例えば、心臓の心筋保護)ならびに臓器貯蔵(例えば、エクスビボでの心臓、肺または他の臓器貯蔵)のための例示的な温度範囲を以下に記述する。
1つの態様において、心臓は、4〜37℃の20 mM KCl (範囲4.0〜65 mM)および37 mM MgCl2 (範囲1.5〜45 mM)を含有するSomah心筋保護液で停止され、移植の場合には4〜37℃の同じ溶液中で保存される。別の態様において、肺は、4〜37℃の7.5 mM KClおよび2 mM MgCl2を含有する改変Somah中で、ならびに移植の場合には4〜37℃の20 mM KCl (範囲4.0〜65 mM)および37 mM MgCL2 (範囲1.5〜45 mM)を含有するSomah中で保存される。
他の局面において、生体組織または臓器を本明細書においてまたは上記に開示される組成物のいずれかと接触させる段階を含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための方法が本明細書において提供される。いくつかの態様において、組成物は10〜21±4℃の温度で維持される。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生体組織または臓器は24〜72時間貯蔵または保存される。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生体組織または臓器は、心臓、腎臓、肝臓、胃、脾臓、皮膚、膵臓、肺、脳、眼、腸および膀胱からなる群より選択される。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物と接触していない生体組織または臓器と比べて、保存または蘇生後の生体組織または臓器において、高エネルギーリン酸量が高い。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、臓器は心臓である。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物と接触していない生体組織または臓器と比べて、保存または蘇生後の生体組織または臓器において、冠状動脈血流量が高い。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物と接触していない心臓と比べて、保存または蘇生後の心臓において、部分面積の変化率、駆出率ならびに/または1回拍出量および心拍出量の1つまたは複数が増加する。
さらなる局面において、少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液ならびにグルコース(11〜25 mM)、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩(0.5〜10 mM)など)、オロト酸(0.5〜2.5 mM)、カルノシン(L-カルノシンなど)、カルニチン(L-カルニチンなど)および/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を組み合わせる段階を含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための組成物を製造するための方法が本明細書において提供される。いくつかの態様において、本方法は組成物をインスリンと組み合わせる段階をさらに含む。いくつかの態様において、インスリンは使用直前に組み合わせられる。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は10〜21±4℃の温度で維持される。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は0.44〜10 mMのリン酸カリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は4〜65 mMの塩化カリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は80〜135 mMの塩化ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は2〜25 mMの重炭酸ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は0〜1.5 mMの塩化カルシウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は0.15〜30 mMのリン酸ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は0.5〜45 mMの塩化マグネシウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、生理学的塩溶液は0.5〜1.5 mMの硫酸マグネシウムを含む。
別の局面において、少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液ならびにグルコース、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、カルノシン(L-カルノシンなど)、オロト酸、カルニチン(L-カルニチンなど)、ジクロロアセテートおよび/またはインスリンの1つまたは複数を含むキットが本明細書において提供される。いくつかの態様において、生理学的塩溶液は、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、キットは0.4〜10 mMのリン酸カリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、キットは4〜65 mMの塩化カリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、キットは80〜135 mMの塩化ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、キットは2〜25 mMの重炭酸ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、キットは0〜1.5 mMの塩化カルシウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、キットは0.15〜030 mMのリン酸ナトリウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、キットは0.5〜45 mMの塩化マグネシウムを含む。本明細書において開示される態様のいずれかのいくつかの態様において、キットは0.5〜1.5 mMの硫酸マグネシウムを含む。
さらに他の局面において、7 mM塩化カリウム、0.44 mMリン酸カリウム(一塩基性)、0.5塩化マグネシウム(六水和物)、0.5 mM硫酸マグネシウム(七水和物)、125 mM塩化ナトリウム、5 mM重炭酸ナトリウム、1.3 mM塩化カルシウム、0.19 mMリン酸ナトリウム(二塩基性; 七水和物)、11 mM D-グルコース、1.5 mMグルタチオン(還元)、1 mMアスコルビン酸、5 mM L-アルギニン、1 mM L-シトルリンリンゴ酸、2 mMアデノシン、0.5 mMオロト酸クレアチン、2.0 mMクレアチン一水和物またはその塩、10 mM L-カルノシン、10 mM L-カルニチンおよび0.5 mMジクロロアセテートを含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための組成物が本明細書において提供される。いくつかの態様において、組成物は100単位/Lのインスリンをさらに含む。いくつかの態様において、インスリンは使用直前に組成物に添加される。本明細書において提供される態様のいずれかのいくつかの態様において、組成物は21±4℃の温度で維持される。
本明細書において記述される改善された臓器貯蔵保存溶液の利点は、以下を含む: (1) 低体温(4℃)での心臓の保存が、現在の臨床的に使用される溶液CelsiorおよびUWSよりも優れている; (2) 周囲温度で完全に機能する状態で心臓を保存するが、臨床的に使用される溶液(CelsiorおよびUWSなど)ではそうできない; (3) 4〜25℃の温度範囲にわたって心臓を優れた状態に保存するが、他のものではそうできない(心臓代謝および恒常性はこの温度範囲にわたって保存または増強されるが、他の溶液ではそうでない); (4) 心臓は貯蔵の温度範囲にわたって高エネルギーリン酸の保存および合成に起因して蘇生のために最小限の刺激介入しか必要としないが、他の溶液中の心臓ではそうできない; (5) 24時間のBHD(心停止前のドナー)およびDCD(心停止後の提供)心臓ならびに72時間にわたる他の臓器の機能的保存を上記温度範囲にわたって容易にするが、他の溶液ではそうできない。
本明細書において記述される局面および態様の各々は、態様または局面の文脈から明白にまたは明確に除外されない限り、一緒に用いることができる。
本明細書の全体を通して、さまざまな特許、特許出願および他のタイプの刊行物(例えば、学術論文、電子データベースエントリなど)が参照される。本明細書において引用される全ての特許、特許出願、および他の刊行物の開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
心臓の体外蘇生のために特別に設計された特注の器具が用いられたSomah装置を描く。第一は心臓の初期再かん流中の大動脈を通じた冠状動脈の順行性かん流のための、および第二は作動中の心臓におけるPVを通じた心臓のかん流のための、2つの回路を調製した。簡潔には、回路1 (緑色)では、かん流液は、心臓チャンバから酸素供給器-熱交換器システムに、そして最終的には冠状動脈のかん流のために大動脈へ送り出された。この回路はPAを通じて心臓チャンバへかん流液が戻ることによって完結した。回路2 (赤色)では、心臓チャンバから酸素供給器-熱交換器システムに送り出された血液を、前負荷バッグに集め、そこから重力によってPVへ排出した。前負荷バッグの高さを変えることによって圧力/流量を調整した。この回路は2つの構成要素へ振り向けられた。第一の構成要素は、冠状動脈に入り、PAを通じて心臓チャンバに戻ったかん流液の部分であった。第二の構成要素は、大動脈を通じて後負荷チャンバへと続き、そこから重力によって心臓チャンバに戻されたかん流液により形成された。かん流液のpH、温度、PO2、PCO2、K+およびHCO3 -の変化のリアルタイムモニタリングのために酸素供給器-熱交換器システムに加えて、CDIモニタをシステムに組み入れた。2つの回路内のさまざまな点で圧力および流量を記録した。コンピュータおよびSomah装置(Comdel, Inc., Wahpeton, ND)専用に書かれたHMIソフトウェアを用いて、圧力および流量データをリアルタイムで収集およびモニタした。DAS, データ収集システム。Somah装置および作動中の心臓のビデオは、https://www.youtube.com/watch?v=PTga7aeuVzkで見ることができる。 実験設計を示す流れ図を描く。図は、心停止のための術中心筋保護から始まりエクスビボでの心臓再かん流実験の終了までの、本研究の一般的な実験設計を示す。 貯蔵中の高エネルギーリン酸を描く。グラフは、Somah、CelsiorおよびUWS群の心臓における5時間貯蔵中のHEP値の変化を示す。星印: 対照よりも有意に高い; 剣印: 対照よりも有意に低い。 図4Aおよび図4Bは、再かん流時の心臓酵素を描く。Somah装置による心臓の再かん流時のエクスビボ循環への心臓酵素のクレアチンキナーゼおよびトロポニンIの放出を示すグラフを、それぞれ、図4Aおよび図4Bに描く。星印: 他群と比べて有意に高い。 図5Aおよび図5Bは、再かん流時の代謝シフトを描く。Somah、CelsiorおよびUWS群における再かん流30分以内の心臓における心筋酸素消費および乳酸比の変化を示すグラフを、それぞれ、図5Aおよび図5Bに描く。星印: ベースラインよりも有意に高い。 図6A、図6B、図6Cおよび図6Dは、機能パラメータを示す体外かん流中の二次元心エコー分析を描く。部分面積の変化率を図6Aに描き、 駆出率を図6Bに描き、1回拍出量を図6Cに描く。この知見は、Somah、CelsiorおよびUWS群の心臓での2D心エコー検査から推測される。図6D: Somah、CelsiorおよびUWS群における心臓の再かん流時の左心室前壁および中隔壁の厚さの変化を描く。星印: Somah群におけるよりも有意に低い。 実験設計の流れ図を描く。図は、心停止のための術中心筋保護から始まりエクスビボでの心臓再かん流実験の終了までの、本研究の一般的な実験設計を示す。 5時間の心臓貯蔵中の浮腫の評価を描く。心臓生検は、4℃(左)、13℃(中央)および21℃(右)群の心臓での電子顕微鏡法(EM) (上パネル; 倍率−8000×; 最初のEM画像中の挿入図は、3つ全ての群において見られる可逆的変化を表す心筋細胞核を示し、核膜の下のクロマチン物質の部分凝縮を実証している)および病理組織検査(中パネル; 倍率−400×); 代表的な画像による浮腫および虚血性変化の評価のために得られた。下側のグラフは、貯蔵後の心臓重量の変化を、3つの群における収集時前の重量から示している。M, ミトコンドリア; SR, 筋小胞体; G, グリコーゲン顆粒。 図9Aおよび図9Bは、作動中の心臓における心臓代謝を描く。4℃、13℃および21℃で貯蔵された心臓のかん流時の、心筋O2消費(MVO2)を図9Aに描き、乳酸比を図9Bに描く。MVO2および乳酸比は、流出および流入かん流液サンプルにおけるそれぞれのパラメータの差異から決定された。ベースライン = 血行力学的な定常状態で、再かん流後60分; 30分 = ピーク性能で、再かん流後90分。各バーは、それぞれ、各Somahの場合n = 6およびCelsior群の場合n = 5の平均±SEMを表す。‡ 対応する時点での、Celsior vs Somah群の、有意な変化; ベースラインからの有意な変化(p < 0.05)。 図10Aおよび図10Bは、再かん流時のクレアチンキナーゼ(CK)および心臓トロポニンI (cTnI)の放出を描く。4℃、13℃および21℃で貯蔵された心臓の再かん流の開始後5分および90分(ピーク性能)に、かん流液においてCK (図10A)およびcTnI (図10B)値を決定した; 各Somah群の場合n = 6およびCelsior群の場合n = 5。Celsiorからの有意な変化(p < 0.05)。 経食道心エコー検査(TEE)プローブを用いてインビトロ実験中に得られた二次元心エコー検査(2Dエコー)画像を描く。エクスビボ実験中の2Dエコー画像を、TEEプローブを用いて取得した。画像は、左心室の乳頭筋レベルで、4℃(左列)、13℃(中央列)または21℃(右列)のいずれかで貯蔵された心臓のインビトロ冠状動脈再かん流時のピーク性能でTEEプローブにより取得された拡張終期(上パネル)および収縮終期(下パネル)画像(短軸像)を示す。独立した実験の代表的な画像(各群ごとにn = 6)。 図12A、図12Bおよび図12Cは、貯蔵された心臓のバイアビリティ評価を描く。心臓生検は、摘出してすぐに(図12Aに描かれるように; 対照)またはSomah中4℃、10℃、21℃もしくは37℃で24時間保存された心循環死(cardiocirculatory death)後に提供された心臓の再かん流前(図12Bに描かれるように)もしくは後(図12Cに描かれるように)にとられた。緑色蛍光(下パネル)は細胞バイアビリティを示す; 赤色蛍光(上パネル)、損なわれた心筋細胞。Somah中で24時間保存された心臓では(図12Bに描かれるように)、生存細胞の強い緑色蛍光が全ての温度群で明らかであった。赤色蛍光は4℃、10℃および37℃で認められた。独立した実験の代表的な画像; 倍率320×。 図13A、図13B、図13C、図13Dおよび図13Eは、貯蔵された心臓におけるミトコンドリア膜分極を描く。対照におけるミトコンドリア膜分極を図13Aに描き; Somah中24時間異なる温度で保存された心循環死後に提供された心臓を図13Bに描き; または再かん流後を図13Cに描く。24時間貯蔵後(図13Dに描かれるように)および再かん流時(図13Eに描かれるように)の分極ミトコンドリアの脱分極ミトコンドリア(各群でn = 3)に対する比率は、各温度群間でおよび再かん流時に変化しなかった。ミトコンドリア分極は、全ての温度群において平衡状態にあった。代表的な画像、倍率320×。 図14Aおよび図14Bは、貯蔵された心臓における高エネルギーリン酸合成を描く。グラフは、摘出時の心循環死後に提供された心臓(対照)での、異なる温度で24時間Somah中で保存後のおよび模擬再かん流時のアデノシン三リン酸(ATP; 図14Aに描写した)およびクレアチンリン酸(CP; 図14Bに描いた)濃度を示す。37℃を除く全ての温度群において、ATP合成もCP合成もともにSomah中24時間の貯蔵後に有意に増加した(P < .005)。再かん流時に、4℃および10℃で貯蔵された心臓はATP合成の低下を示した(P < .005)が、CP合成は変化しなかった。21℃および37℃で保存された心臓では、再かん流により21℃で非常に有意なATP合成の増加(P < .001)がもたらされたが、CP合成は21℃群においてのみ有意に増加した(P < .005)。エラーバーは平均の標準誤差を表す。 対照からの有意な変化。‡ かん流前(24時間貯蔵)値からの有意な変化。 心筋細胞の構造成分および収縮成分を描く。心循環死後に提供された心臓は、再かん流の前に、4℃、10℃、21℃または37℃で24時間Somah中で保存された。左心室生検を模擬再かん流の前および後にとった。ミオシン重鎖(H)および軽鎖(L)、アクチニン、アクチンおよびトロポニンCの分解を調べた。対照生検は、心臓摘出の直後にとった。構造性および収縮性タンパク質は21℃で良好に保存されたが、他の温度群では示差的に失われた。21℃群での再かん流時に、ミオシン軽鎖タンパク質は、おそらくリン酸化を示す、正常よりも高いレベルに移動した。 実験設計の流れ図を描く。図は、心停止のための術中心筋保護から始まりエクスビボでの心臓再かん流実験の終了までの、本研究の一般的な実験設計を示す。 図17A、図17Bおよび図17Cは、SOMAH中で停止および貯蔵された心臓における高エネルギーリン酸値を描くグラフである。左心室からの心臓組織生検を、4および21℃のSOMAH心筋保護群の心臓におけるATPおよびCP値を含むHEPの決定のために5時間貯蔵の前および後に得た。心臓におけるHEP濃度の心筋保護停止依存性増加の温度があった。図17A: 対照を描く; 図17AB: 5時間貯蔵を描く; および図17C: 正規化された値(0時間に対して5時間)を描く。エラーバーは各群についてn = 5の平均±SEMを表す。 4℃の心筋保護群の心臓と有意差あり。 図18A、図18Bおよび図18Cは、再かん流時のクレアチンキナーゼおよび心臓トロポニン-Iの放出を描くグラフである。4および21℃の心筋保護心臓の再かん流の開始後5分および90分(ピーク性能)に、かん流液においてCK (図18Aに描いた)、AST (図18Bに描いた)およびcTnI (図18Cに描いた)値を決定した; 各SOMAH群の場合n = 5。 5分からの有意な変化(p <0.05); 同様の時点で4℃の心筋保護群の心臓と有意差あり。 図19Aおよび図19Bは、作動中の心臓における心臓代謝を描く棒グラフである。図19A: 心筋O2消費を描き、図19B: 4および21℃心筋保護心臓のかん流時の乳酸比(B)を描く。MVO2および乳酸比は、流出および流入かん流液サンプルにおけるそれぞれのパラメータの差異から決定された。ベースライン = 血行力学的な定常状態で、再かん流後60分; 90分 = ピーク性能時。各バーは各群についてn = 5の平均±SEMを表す。 UWSまたはSomah溶液中で貯蔵された肝臓の肉眼所見を描く。DCD肝臓の形態。UWS中で貯蔵された肝臓は、貯蔵1時間以内に著しい変色を示した。対照的に、Somah中で貯蔵された肝臓は、72時間の貯蔵期間を通してその色および形態を維持した。さらなる分析のために全ての肝臓の生検を進行につれて行った。代表的な画像: UWS n = 7; Somah n = 6 ウィスコンシン大学(University of Wisconsin; UWS)およびSomah溶液中で貯蔵された6、24および72時間時点の肝臓の組織病理を描く。UWS中で貯蔵された肝臓において、小胆管が、粘膜潰瘍や、無秩序に積重し凝縮した核を示すことに留意されたい。これらの変化は早くも6時間で見られた。対照的に、72時間Somah中で貯蔵された肝臓は、正常に見える小胆管を門脈域において示し、明確で丸みのある均一な内腔および規則的な基底核を有する無傷の粘膜を伴った。上のパネルでは、いくつかの門脈周囲肝細胞が膨化変性およびアポトーシス核(矢印)を示す一方で、門脈周囲肝細胞が正常細胞境界および核小体を有する異質染色質の、開放面(open-faced)の核を、Somah中で貯蔵された肝臓(矢印)において示したことにも留意されたい。星印は、異なる内径の胆管および小胆管を示す(全ての画像、×200)。 6時間時のUWSおよびSomah中で冷蔵貯蔵された肝臓から得られた小胆管の後出力表示(×400)を描く。0時間の時点で見られる中程度のサイズの胆管における規則的に配置された基底核および明瞭な内腔に留意されたい(矢印、左パネル)。対照的に、UWS中で貯蔵された肝臓の3時の位置における凝縮核および反応性(増殖性)核変化を含む、小管核の多染性の外観に留意されたい。小管内腔を閉塞するはがれた物質および不均一に染色されたでこぼこの粘膜外観に留意されたい。対照的に、Somah貯蔵された肝臓においては小胆管の管腔が無傷の粘膜を伴って規則的に見えた。これらの変化は、異なる直径の胆管において均一に見られた(星印)。緑色の星印は、門脈/静脈を示す(×400)。 図23Aおよび図23Bは、貯蔵中の肝臓におけるpH、乳酸およびグルコース値の変化を描く棒グラフである。グラフは、DCD肝臓の体外貯蔵中のUWS (図23A)およびSomah (図23B)溶液におけるpH (上パネル)、乳酸(中央パネル)およびグルコース(下パネル)値の時間依存的変化を示す。代謝パラメータは、4℃で72時間UWSおよびSomah中でのDCD肝臓の体外貯蔵中に貯蔵溶液中で一時的に評価された。 図24Aおよび図24Bは、貯蔵された肝臓における酸素消費およびCO2生成を描く。図24A: 酸素消費の程度を示す。図24B: 0、6、24および72時間時点のUWSおよびSomah溶液中での肝臓の体外貯蔵中のCO2生成を示す。 Somahにおけるベースライン値からの有意な変化。 貯蔵された肝臓における総リン酸を示すグラフを描く。グラフは、UWS (上)およびSomah (下)中でのDCD肝臓の長期体外貯蔵中の肝臓組織におけるATP、CPおよび総リン酸値の時間依存的変化を示す。 p <0.05、1時間と比較。 臓器貯蔵中の肝臓酵素の放出を示すグラフを描く。DCD肝臓の体外保存中の肝臓酵素の放出を、0、6、24および72時間の時点で各UWSまたはSomah溶液中で決定した。ALT (上)、AST (中)およびCK (下)値を評価した。 肝臓酵素の再かん流誘発放出を示す棒グラフを描く。DCD Somah肝臓の体外再かん流中の肝臓酵素の放出を0 (シングルパス)、0.5および2時間の時点でかん流液(HV)において決定した。ALP、GGT、AST、ALTおよびCK値を評価した。再構成されたかん流液における72時間貯蔵血液中の酵素の内部変動性のため、データを時間0hの値に対して正規化した; 独立した実験からの平均±SEM。 72時間Somah中で貯蔵された肝臓によるアルブミンの再かん流誘発合成および放出を示す棒グラフを描く。Somah肝臓は一時的にアルブミンを合成し、かん流液(HV)中にアルブミンを放出した。アルブミン合成の増加は、0.5時間(P<0.03)および2時間(P<0.01)で非常に有意であった。値は、独立した実験からの平均±SEMを表す。 図29Aおよび図29Bは、UW (図29A)またはSomah (図29B)中で貯蔵された腎臓の肉眼形態を描く。腎臓を72時間貯蔵し、4℃での体外保存0、ならびに6、24および72時間の時点で肉眼形態評価のために画像を得、病理組織検査のために生検をとった。UWで洗い流された腎臓は、全ての時点で斑状の変色を伴って色むらを呈した(a)。Somahで洗い流された腎臓は、斑状の変化なしに均一な色と滑らかな形態を呈した(d)。組織学的検査により、調べられた全ての時点でUW (b, 200×; c, 400×)およびSomah (e, 200×; f, 400×)貯蔵DCD腎臓の両方において間質水腫のないことが示された。さらに高い倍率により、6、24および72時間の時点でSomah腎臓(f)と比較してUW腎臓(c)の尿細管上皮細胞の核濃色性(nuclear hyperchromacity)に対する傾向が高いことが示された。 図30A、図30B、図30C、図30Dおよび図30Eは、72時間にわたってDCD腎臓を貯蔵しているUWまたはSomah溶液中での代謝パラメータの変化を示す棒グラフを描く。図30A: pHを示す; 図30B: グルコースを示す; 図30C: 乳酸を示す; 図30D: pO2を示す、および図30E: pCO2を示す。 72時間の体外保存期間中のUW (左)およびSomah (右)貯蔵DCD腎臓におけるエネルギー代謝の変化を示す線グラフを描く。 時間0と有意差あり(p<0.05)。 UWまたはSomah溶液中で72時間貯蔵されたDCD腎臓におけるカベオリン、内皮酸化窒素シンターゼ(eNOS)、フォンウィルブランド因子(vWF)およびエリスロポエチン(EPO)タンパク質の発現の時間依存的変化を示す棒グラフを描く。 Somahに曝露された細胞におけるアンモニア産生および利用を描くチャートである。
詳細な説明
当技術分野において緊急に必要とされているものは、広範な亜正常温度範囲(4〜25℃)にわたってさまざまなドナー群からの臓器の保存を容易にし、したがって移植前に極低体温(4℃)での貯蔵による組織損傷を防ぐ臓器保存貯蔵溶液である。溶液の成分は、イオンバランス、エネルギー基質、アンモニアの酸化窒素シンターゼに対する基質へのキレート化、高エネルギーリン酸(high-energy phosphate, HEP)の生成のための代謝調節、フリーラジカル捕捉、抗酸化物質、還元剤、細胞内および細胞外H+キレート化、ならびに貯蔵中のヘミチャネルおよびアクアポリンの調節による浮腫の減弱を提供することによって心臓(および他の臓器)の構造および機能を保存するべきである。貯蔵溶液はまた、低酸素貯蔵中に選択的な相乗的構成要素を予め負荷して、再かん流後の初期の過酸素状態の有害な影響を相殺することによって虚血再かん流傷害(IRI)の減弱を容易にし、その結果、再かん流傷害を予防し、酸素正常状態、有酸素代謝および最適な機械的機能への順調な迅速移行を持続させるべきである。理想的な溶液は相乗的に、1) 虚血貯蔵中に臓器を保存する; 2) 再かん流時の持続的な電気機械作業に向けて、高酸素状態から正常酸素状態への迅速変換のための代謝物で臓器をプライミングする; および3) 虚血再かん流(IR)傷害を予防するであろう。そのような溶液は、レシピエントへの移植前に、ドナー臓器の体外保存のための一時的貯蔵を大きく延ばす可能性を有するであろう。
本明細書において記述される発明は、とりわけ、哺乳動物の臓器および組織を保存するための組成物ならびにそれを利用するための方法およびキットを提供する。任意の哺乳動物の臓器または組織を、本明細書に記述される方法を用いて本明細書に記述される組成物中に保存することができるが、体外の心臓を貯蔵する利点は特に有利である。レシピエントへの移植前に体外の心臓を保存するために現在利用可能な組成物および技法とは対照的に、本発明の組成物および方法は、ドナーからの切除後24〜72時間のエクスビボでの貯蔵を可能にする。凍結温度近くでの貯蔵を必要とする、現在利用可能な心臓保存用の組成物とはさらに対照的に、本発明の組成物および方法では、相当量の浮腫の蓄積なしにならびに心臓の低温貯蔵がもたらす特徴的な低温媒介性の組織および細胞損傷なしに周囲温度で貯蔵することができる。貯蔵時間の増加および貯蔵中に周囲温度で心臓を維持する能力の組み合わせは、本明細書に記述される組成物を用い大幅に増加した期間にわたりかつ低温貯蔵の必要性なしに、ドナー心臓をさらに長距離にわたって運搬することを可能にするであろう。ドナー心臓が不足しているという事実のために、本発明の組成物および方法は、現在可能なものよりも遠隔距離にある適当な移植レシピエントに心臓を到達させる可能性を有する。
I. 定義
本明細書において用いられる場合、「生理学的塩」という用語は、所与の濃度で水溶液中にある場合、細胞機能または生理学的機能を補助するかまたはそれに必要とされる任意の塩をいう。生理学的塩の例としては、非限定的に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩化物、リン酸塩および硫酸塩、例えばKCl、NaCl、MgCl2、MgSO4およびそれらの混合物が挙げられる。
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物またはヒトであることができる。哺乳動物には、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定されることはない。1つの局面において、対象はヒトである。
本明細書において用いられる場合、「正常温の温度」とは、約36.4〜37.1℃の範囲の任意の温度、例えば36.4℃、36.5℃、36.6℃、36.7℃、36.8℃、36.9℃、37℃または37.1℃をいう。本明細書において用いられる「周囲温度」または「亜正常温度」は、10〜21±4℃の範囲の温度、または他の態様において、約6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃もしくは25℃のいずれかのような、21±2℃の範囲の温度をいう。「低体温の温度」または「低体温」とは、約0℃、1℃、2℃、3℃、4℃または5℃のいずれかのような、約0℃〜約5℃の範囲の温度をいう。
本明細書において他に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書において用いられる場合、単数の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明らかに他に指示がない限り、複数の言及を含む。
「含む(including)」、「含有する(containing)」または「によって特徴付けられる」と同義語である「含む(comprising)」という移行語は、包括的または無制限であり、追加の、引用されていない要素または方法の段階を除外するものではない。対照的に、「からなる(consisting of)」という移行句は、特許請求の範囲に明記されていない、いかなる要素、段階または成分も除外する。「本質的にからなる」という移行句は、特許請求の範囲を、明記された材料または段階、ならびに主張される本発明の「基本かつ新規の特徴」に実質的に影響を与えないものに限定する。
II. 本発明の組成物
ドナー心臓のような臓器の貯蔵のために現在利用できる技法および組成物では、不可逆的な冷媒媒介組織および細胞障害が起こる前の、わずか4〜6時間前後の貯蔵しか可能でない。本発明の組成物は、約10〜21±4℃の、例えば約4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などのいずれかの、これらの値の範囲内にある全ての温度および範囲(約10〜25℃など)を含む、温度で生体組織または臓器を貯蔵または蘇生させるための溶液である。組織または臓器は、細胞の高エネルギーリン酸量の有意な減少なしに、または浮腫の有意な増加なしに、約24〜72時間、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72またはそれ以上の時間などのいずれかの間、本明細書において記述される組成物中で貯蔵することができる。必要とする対象への移植の前に本発明の組成物中で貯蔵された心臓に関して、冠状動脈血流、部分面積の変化率、駆出率および/または1回拍出量のような生理学的測定値が、現在利用されている臓器貯蔵溶液中で貯蔵された心臓と比べて心臓の蘇生により増加する。
任意の臓器または生体組織を、例えば心臓、腎臓、肝臓、胃、脾臓、皮膚、膵臓、肺、脳、眼、腸または膀胱のいずれかを本明細書において記述される組成物中で貯蔵することができる。いくつかの態様において、貯蔵される臓器は心臓である。
A. 生理学的塩溶液
本発明の組成物は、少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルコース、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリンリンゴ酸、アデノシン、オロト酸クレアチン、クレアチン一水和物もしくはその塩、オロト酸、リンゴ酸、カルノシン、カルニチンおよび/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含む水性(すなわち水ベースの)もしくは固体粉末性(使用前に蒸留水で再構成される)またはそれらの組み合わせの溶液であることができる。生理学的塩溶液は、所与の濃度で水溶液中にある場合、生体組織または臓器の内部および外部のイオン濃度を維持するような、および細胞膜を通り抜けることができる水の量を制御するような、生理学的機能を補助するかまたはそれに必要とされる任意の塩を含むことができる。生理学的塩溶液の成分は、適切なpHを緩衝および維持するのを補助することもできる。本発明において用いることができる特定の塩には、非限定的に、塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムが含まれる。
本明細書において開示される組成物のいずれかの生理学的塩溶液は、ナトリウムイオン源を含有することができる。ナトリウムイオンは、例えば、NaAlO2、NaBO2、NaCl、NaClO、NaClO2、NaClO3、NaClO4、NaF、Na2FeO4、NaHCO3、NaH2PO4、NaHSO3、NaHSO4、NaI、NaMnO4、NaNH2、NaNO2、NaNO3、NaOH、NaPO2H2、NaSH、Na2MnO4、Na3MnO4、Na2N2O2、Na2O2、Na2SO3、Na2SO4、Na2S2O4、Na2SeO3、Na2SeO4、Na2SiO3、Na2Si2O5、Na4SiO4、Na2Ti3O7、Na2Zn(OH)4、NaH2C6H5O7およびNa3PO4からなる群より選択される1つまたは複数のナトリウム塩のような、ナトリウム塩の形態で生理学的塩溶液に添加することができる。いくつかの態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物中のナトリウムイオンは、約80〜145 mMの、例えば約80 mM、約81 mM、約82 mM、約83 mM、約84 mM、約85 mM、約86 mM、約87 mM、約88 mM、約89 mM、約90 mM、約91 mM、約92 mM、約93 mM、約94 mM、約95 mM、約96 mM、約97 mM、約98 mM、約99 mM、100 mM、約101 mM、約102 mM、約103 mM、約104 mM、約105 mM、約106 mM、約107 mM、約108 mM、約109 mM、約110 mM、約111 mM、約112 mM、約113 mM、約114 mM、約115 mM、約116 mM、約117 mM、約118 mM、約119 mM、約120 mM、約121 mM、約122 mM、約123 mM、約124 mM、約125 mM、約126 mM、約127 mM、約128 mM、約129 mM、約130 mM、約131 mM、約132 mM、約133 mM、約134 mM、約135 mM、約136 mM、約137 mM、約138 mM、約139 mM、約140 mM、約141 mM、約142 mM、約143 mM、約144 mM、または約145 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む、濃度であることができる。
本明細書において開示される組成物の他の態様において、生理学的塩溶液は塩化ナトリウムを含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中の塩化ナトリウムの濃度は、約80〜135 mM、例えば約80 mM、約81 mM、約82 mM、約83 mM、約84 mM、約85 mM、約86 mM、約87 mM、約88 mM、約89 mM、約90 mM、約91 mM、約92 mM、約93 mM、約94 mM、約95 mM、約96 mM、約97 mM、約98 mM、約99 mM、100 mM、約101 mM、約102 mM、約103 mM、約104 mM、約105 mM、約106 mM、約107 mM、約108 mM、約109 mM、約110 mM、約111 mM、約112 mM、約113 mM、約114 mM、115 mM、約116 mM、約117 mM、約118 mM、約119 mM、約120 mM、約121 mM、約122 mM、約123 mM、約124 mM、約125 mM、約126 mM、約127 mM、約128 mM、約129 mM、約130 mM、約131 mM、約132 mM、約1303 mM、約134 mMまたは約135 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、約7.3 g/Lの塩化ナトリウムを含有することができる。
本明細書において開示される組成物のさらなる態様において、生理学的塩溶液はリン酸ナトリウムを含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中のリン酸ナトリウムの濃度は、約0.15〜30 mM、例えば約0.15 mM、約0.16 mM、約0.17 mM、約0.18 mM、約0.19 mM、約0.2 mM、約0.21 mM、約0.22 mM、約0.23 mM、約0.24 mM、約0.25 mM、約0.5 mM、約1 mM、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約20 mM、約21 mM、約22 mM、約23 mM、約24 mM、約25 mM、約26 mM、約27 mM、約28 mM、約29 mMまたは約30 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、約0.05 g/Lのリン酸ナトリウムを含有することができる。非限定的に、二塩基性七水和物形態を含む、任意の形態のリン酸ナトリウムを本発明において用いることができる。
本明細書において開示される組成物の別の態様において、生理学的塩溶液は重炭酸ナトリウムを含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中の重炭酸ナトリウムの濃度は、約2〜25 mM、例えば約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約20 mM、約21 mM、約22 mM、約23 mM、約24 mM、約25 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、約0.35 g/Lの重炭酸ナトリウムを含有することができる。
本明細書において開示される組成物の別の態様において、生理学的塩溶液はカルシウムイオン(例えば、塩化カルシウムのようなカルシウム塩によって供給されるカルシウムイオン)を含有する。いくつかの態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物中のカルシウムイオンは、約0〜1.5 mMの、例えば約0.1 mM、約0.2 mM、約0.3 mM、約0.4 mM、約0.5 mM、約0.6 mM、約0.7 mM、約0.8 mM、約0.9 mM、約1 mM、約1.1 mM、約1.2 mM、約1.3 mM、約1.4 mM、または約1.5 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、本明細書において開示される組成物の生理学的塩溶液は、例えば、酢酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、カルシウムアルミノフェライト、アルミノケイ酸カルシウム、硝酸アンモニウムカルシウム、ヒ酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、アジ化カルシウム、安息香酸カルシウム、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸カルシウム、重炭酸カルシウム、重亜硫酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、臭素酸カルシウム、臭化カルシウム、炭化カルシウム、炭酸カルシウム、塩素酸カルシウム、クロム酸カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸リンゴカルシウム、チタン酸カルシウム銅、カルシウムシアナミド、グルタミン酸カルシウム、エリソルビン酸カルシウム、フッ化カルシウム、ギ酸カルシウム、フマル酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルコヘプトン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グアニル酸カルシウム、ホウ化カルシウム、水素化カルシウム、水酸化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、イノシン酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸乳酸カルシウム、酢酸カルシウムマグネシウム、リンゴ酸カルシウム、一水素化カルシウム、一リン化カルシウム、カルシウムモルフェネート、硝酸カルシウム、窒化カルシウム、亜硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酸化カルシウム、パンガミン酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、過マンガン酸カルシウム、過酸化カルシウム、リン酸カルシウム、リン化カルシウム、プロパン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム水和物、カルシウムシリサイド、ソルビン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫化カルシウム、亜硫酸カルシウム、酒石酸カルシウム、チタン酸カルシウム、塩化カルシウムおよびシアン化カルシウムからなる群より選択されるものなどの、1つまたは複数のカルシウム塩から供給されるカルシウムイオンを含有する。
本明細書において開示される組成物のいずれかの生理学的塩溶液は、カリウムイオン源を含有することができる。カリウムイオンは、例えば、KAsO2、KBr、KBrO3、KCN、KCNO、KCl、KClO3、KClO4、KF、KH、KHCO2、KHCO3、KHF2、KHS、KHSO3、KHSO4、KH2AsO4、KH2PO3、KH2PO4、KI、KIO3、KIO4、KMnO4、KN3、KNH2、KNO2、KNO3、KOCN、KOH、KO2、KPF6、KCH3COO、K2Al2O4、K2CO3、K2CrO4、K2Cr2O7、K2FeO4、K2HPO4、K2MnO4、K2O、K2O2、K2S、K2SeO4、K2SO3、K2SO4、KHSO5、K2S2O5、K2S2O7、K2S2O8、K2SiO3、K3[Fe(C2O4)3]、K4[Fe(CN)6]、K3PO4およびK4Mo2Cl8からなる群より選択される1つまたは複数のカリウム塩のような、カリウム塩の形態で生理学的塩溶液に添加することができる。いくつかの態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物中のカリウムイオンは、約4〜65 mMの、例えば約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約20 mM、約21 mM、約22 mM、約23 mM、約24 mM、約25 mM、約26 mM、約27 mM、約28 mM、約29 mMまたは約30 mM、約31 mM、約32 mM、約33 mM、約34 mM、約35 mM、約36 mM、約37 mM、約38 mM、約39 mM、約40 mM、約41 mM、約42 mM、約43 mM、約44 mM、約45 mM、約46 mM、約47 mM、約48 mM、約49 mM、約50 mM、約51 mM、約52 mM、約53 mM、約54 mM、約55 mM、約56 mM、約57 mM、約58 mM、約59 mM、約60 mM、約61 mM、約62 mM、約63 mM、約64 mMまたは約65 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。本明細書において開示される組成物の他の態様において、生理学的塩溶液は、リン酸カリウムを含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中のリン酸カリウムの濃度は、約0.4〜10 mM、例えば約0.5 mM、約0.6 mM、約0.7 mM、約0.8 mM、約0.9 mM、約1 mM、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mMまたは約10 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、約0.06 g/Lのリン酸カリウムを含有することができる。非限定的に、一塩基性形態を含む、任意の形態のリン酸カリウムを本発明において用いることができる。
本明細書において開示される組成物のいくつかの態様において、生理学的塩溶液は塩化カリウムを含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中の塩化カリウムの濃度は、約4〜65 mM、例えば約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約20 mM、約21 mM、約22 mM、約23 mM、約24 mM、約25 mM、約26 mM、約27 mM、約28 mM、約29 mMまたは約30 mM、約31 mM、約32 mM、約33 mM、約34 mM、約35 mM、約36 mM、約37 mM、約38 mM、約39 mM、約40 mM、約41 mM、約42 mM、約43 mM、約44 mM、約45 mM、約46 mM、約47 mM、約48 mM、約49 mM、約50 mM、約51 mM、約52 mM、約53 mM、約54 mM、約55 mM、約56 mM、約57 mM、約58 mM、約59 mM、約60 mM、約61 mM、約62 mM、約63 mM、約64 mMまたは約65 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、約0.522 g/Lの塩化カリウムを含有することができる。
本明細書において開示される組成物のいずれかの生理学的塩溶液は、マグネシウムイオン源を含有することができる。マグネシウムイオンは、MgB2、MgBr2、MgCO3、MgC2O4、MgC6H6O7、MgC14H10O4、MgCl2、Mg(ClO4)2、MgF2、MgH2、Mg(HCO3)2、MgI2、Mg(NO3)2、MgO、MgO2、Mg(OH)2、MgS、MgSO3、MgSO4、Mg2Al3、Mg2Si、Mg2SiO4、Mg2Si3O8、Mg3N2、Mg3(PO4)2およびMg2(CrO4)2からなる群より選択される1つまたは複数のマグネシウム塩のような、マグネシウム塩の形態で生理学的塩溶液に添加することができる。いくつかの態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物中のマグネシウムイオンは、約0.5〜45 mMの、例えば約0.5 mM、約0.6 mM、約0.7 mM、約0.8 mM、約0.9 mM、約1 mM、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約20 mM、約21 mM、約22 mM、約23 mM、約24 mM、約25 mM、約26 mM、約27 mM、約28 mM、約29 mMまたは約30 mM、約31 mM、約32 mM、約33 mM、約34 mM、約35 mM、約36 mM、約37 mM、約38 mM、約39 mM、約40 mM、約41 mM、約42 mM、約43 mM、約44 mMまたは約45 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。
本明細書において開示される組成物のさらなる態様において、生理学的塩溶液は塩化マグネシウムを含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中の塩化マグネシウムの濃度は、約0.5〜45 mM、例えば約0.5 mM、約0.6 mM、約0.7 mM、約0.8 mM、約0.9 mM、約1 mM、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約20 mM、約21 mM、約22 mM、約23 mM、約24 mM、約25 mM、約26 mM、約27 mM、約28 mM、約29 mMまたは約30 mM、約31 mM、約32 mM、約33 mM、約34 mM、約35 mM、約36 mM、約37 mM、約38 mM、約39 mM、約40 mM、約41 mM、約42 mM、約43 mM、約44 mMまたは約45 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、約101.00 g/Lの塩化マグネシウムを含有することができる。非限定的に、六水和物形態を含む、任意の形態の塩化マグネシウムを本発明において用いることができる。
本明細書において開示される組成物の他の態様において、生理学的塩溶液は硫酸マグネシウムを含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中の硫酸マグネシウムの濃度は、約0.5〜1.5 mM、例えば約0.5 mM、約0.6 mM、約0.7 mM、約0.8 mM、約0.9 mM、約1 mM、約1.1、約1.2 mM、約1.3 mM、約1.4 mMまたは約1.5 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、約0.123 g/Lの硫酸マグネシウムを含有することができる。非限定的に、七水和物形態を含む、任意の形態の硫酸マグネシウムを本発明において用いることができる。
B. 他の成分
生理学的塩溶液に加えて、本発明の組成物は、グルコース、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸およびその塩など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、オロト酸、リンゴ酸およびその塩、カルノシン、カルニチン、ジクロロアセテートならびに/またはインスリンの1つまたは複数を含むこともできる。この溶液はインスリンなしで製造され販売されている。インスリンは、使用の時点でまたは使用直前にもしくは使用前に、例えば、生存患者の臓器への注入の直前(約30秒、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60分もしくはそれ以上前のいずれかのような)に、またはエクスビボ臓器への注入もしくは溶液への臓器の浸漬の直前に、特定の濃度で添加される。
糖、例えば、グルコース(D-グルコースもしくはデキストロースなど)のような6炭素糖および/またはリボースのような5炭素糖は、高エネルギーリン酸(ATPなど)の生成のための基質としての役割を果たすことができ、約5〜25 mMの、例えば約5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mM、10 mM、11 mM、12 mM、13 mM、14 mM、15 mM、16 mM、17 mM、18 mM、19 mM、20 mM、21 mM、22 mM、23 mM、24 mMまたは25 mMのいずれかなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む、濃度で本明細書において記述される生体組織および臓器貯蔵組成物中に含めることができる。1つの態様において、グルコースの濃度は約1.98 g/Lである。別の態様において、グルコースは約11 mMの濃度で存在する。
生体組織および臓器貯蔵中に反応性酸素種が生成されうる; しかしながら、溶液中に存在するアスコルビン酸および還元グルタチオン(すなわち、還元剤)が、貯蔵中に酸素フリーラジカルを使い果たしうる。したがって、アスコルビン酸も還元グルタチオンもともに、約0.5 mM〜3 mMの、例えば約0.5 mM、1 mM、1.5 mM、2 mM、2.5 mMまたは3 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む、濃度で本明細書において記述される生体組織および臓器貯蔵組成物中に存在することができる。1つの態様において、アスコルビン酸の濃度は約0.178 g/Lである。別の態様において、アスコルビン酸は約1 mMの濃度で存在する。いくつかの態様において、還元グルタチオンの濃度は約0.462 g/Lである。別の態様において、還元グルタチオンは約1.5 mMの濃度で存在する。
本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵組成物の他の成分は、トリカルボン酸(TCA)サイクルによるATPの生成を補助する。シトルリンリンゴ酸-アルギニンサイクルにおいて、リンゴ酸(シトルリンから切断された)はTCAサイクルに入り、より多くのATPを生成する。また、シトルリンリンゴ酸はアルギニンおよびフマル酸に変換される; フマル酸はTCAサイクルに入り、より多くのATP生成を促進する。TCAサイクル中のリンゴ酸もフマル酸も共に、より多くのATP生成をもたらす。
さらに、肝臓のみが正常な生理学的環境下で腎臓による排泄のために尿素サイクル中のアンモニアを解毒することが一般的に知られているが、本明細書において開示される臓器貯蔵組成物は、シトルリンを含めることによって大部分の臓器および組織における一酸化窒素合成経路へ本来なら毒性のアンモニウムイオンを追いやることができうる(図33参照)。NOの生成増加は、長期間の臓器貯蔵に非常に有益である。具体的には、収集および貯蔵中に臓器への循環が中断されるとすぐに、タンパク質の変性破壊の一部としてトランスアミナーゼ(および/またはプロテアーゼ)反応が加速する。これらの酵素はアミノ酸を代謝し、それによって貯蔵溶液中に蓄積しうるアンモニウムイオンを放出し、組織への毒性および損傷を引き起こす可能性がある。この有害なチェンジシトルリン(changecitrulline)を無効とするために、シトルリンリンゴ酸および/またはその塩が、本明細書において提供される臓器貯蔵溶液中に含まれる場合には、この増加したアンモニウム生成への拮抗勢力となることができる。理論に束縛されるわけではないが、アンモニウムイオンは細胞内に存在するグルタミンと結合してカルバモイルリン酸を形成し、これがL-シトルリンの形成によりNOサイクルへ追いやられるものと考えられる(図33参照)。このサイクルを維持するためおよびシトルリン枯渇を抑止するため、シトルリンリンゴ酸を溶液中に含めることができる。NO生成中にシトルリンはアルギニン(NO生成に至る)およびクレブスのサイクル中間体に代謝される(図33参照)。コハク酸、フマル酸およびリンゴ酸のような、これらの中間体は、クレブスのサイクルに入り、さらなるATPの作出をもたらし、したがって貯蔵された臓器でのエネルギー状態の保存にさらに寄与する。さらに、カルノシンとカルニチンとの組み合わせは、本明細書において開示される溶液のいずれかに貯蔵された臓器においていっそう多量の高エネルギーリン酸を、これらの成分を欠いた貯蔵溶液を用いて生成されたHEPの量と比べて、相乗的に生成する。別の態様において、カルノシン、カルニチン、グルコースおよびクレアチンの組み合わせは、本明細書において開示される溶液のいずれかに貯蔵された臓器においていっそう多量の高エネルギーリン酸を、これらの成分を欠いた貯蔵溶液を用いて生成されたHEPの量と比べて、相乗的に生成する。他の態様において、シトルリンとアルギニンとの組み合わせは、本明細書において開示される溶液のいずれかに貯蔵された臓器においていっそう多量の亜酸化窒素(NO)を、これらの成分を欠いた貯蔵溶液を用いて生成されたNOの量と比べて、相乗的に生成する。これらの成分の組み合わせによって実証される相乗作用は、予期せぬことでもあり、驚くべきことでもある。
したがって、アルギニン(L-アルギニンなど)およびシトルリン(シトルリンリンゴ酸、例えばL-シトルリンリンゴ酸またはその塩など)は、約0.5 mM〜7 mMの、例えば約0.5 mM、1 mM、1.5 mM、2 mM、2.5 mM、3 mM、3.5 mM、4 mM、4.5 mM、5 mM、5.5 mM、6 mM、6.5 mMまたは7 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む、濃度で本明細書において記述される生体組織および臓器貯蔵組成物中に存在することができる。いくつかの態様において、臓器貯蔵組成物はシトルリンリンゴ酸を含まない。1つの態様において、アルギニンの濃度は約1.074 g/Lである。別の態様において、アルギニンは約5 mMの濃度で存在する。いくつかの態様において、シトルリンリンゴ酸の濃度は約0.175 g/Lである。別の態様において、シトルリンリンゴ酸は約1 mMの濃度で存在する。任意で、シトルリン(L-シトルリンなど)およびリンゴ酸が、それぞれ約1〜10 mMのシトルリン(例えば約1 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMまたは10 mMのいずれかなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む)および約1〜5 mMのリンゴ酸(例えば約1 mM、2 mM、3 mM、4 mMまたは5 mMのいずれかなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む)の範囲で組成物に個別に添加されてもよい。いくつかの態様において、臓器貯蔵組成物はシトルリンまたはシトルリンリンゴ酸を含まない。さらに他の態様において、臓器貯蔵組成物は約0.001〜約7 mMの、例えば約0.001 mM、1 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mMまたは7 mMのいずれかなどの、リンゴ酸を含む。さらなる態様において、臓器貯蔵溶液はリンゴ酸塩またはリンゴ酸を含まない。
ATP値を維持するのに有用な別の成分はアデノシンである。アデノシンは、約1〜4 mMの、例えば約1 mM、1.5 mM、2 mM、2.5 mM、3 mM、3.5 mMまたは4 mMのいずれかなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む、濃度で本明細書において開示される組成物中に存在することができる。1つの態様において、アデノシンの濃度は約0.534 g/Lである。別の態様において、アデノシンは約2 mMの濃度で存在する。アデノシンはまた、迅速停止に向けて心臓の分極を変化させる; 冠状血管の拡張を促進し、貯蔵中の臓器貯蔵溶液による心臓(臓器)分布/かん流を促進し、それにより低酸素/虚血関連損傷を軽減する。アデノシンはまた、K+誘発膜脱分極の速度を遅くし、心室筋細胞におけるK+誘発細胞内Ca2+負荷を低減する。理論に束縛されるわけではないが、そのような知見は、アデノシンが高カリウム性心筋保護においてまたは手術および/もしくは臓器収集中に緩やかな停止を促進することにより; 特に高いK+のシナリオで用いる場合、かくしてそのような作用によって誘発される心臓への固有の損傷を抑止することにより心臓保護的役割を果たすという考えを支持する。さらに、理論に束縛されるわけではないが、マグネシウムも、高エネルギーリン酸生成およびイオン恒常性におけるその役割に加えて、特に長期の臓器貯蔵中、プレコンディショニングによっておよび心臓切開手術または移植時の術後心室不整脈に対する保護によって反復虚血および損傷から心臓を保護する。また、高いカリウム濃度もマグネシウム濃度もともに、ミトコンドリアにおけるカルシウム蓄積およびその後の臓器への損傷を防ぐ。
本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵組成物のいくつかの態様において、組成物溶液はクレアチンを含有する。いくつかの態様において、クレアチンはオロト酸クレアチンおよび/またはクレアチン一水和物もしくはその塩の形態で存在する。生体組織および臓器貯蔵組成物中のクレアチンの濃度は、約2〜5 mM、例えば約2 mM、約3 mM、約4 mMまたは約5 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、0.5 mMのオロト酸クレアチンを含有することができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、0.27 g/Lのオロト酸クレアチンを含有することができる。他の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、2 mMのクレアチン一水和物もしくはその塩を含有することができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、0.3 g/Lのクレアチン一水和物もしくはその塩を含有することができる。さらに別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、0.5 mMのオロト酸クレアチンおよび2 mMのクレアチン一水和物もしくはその塩の両方を含有する。オロト酸クレアチンは、入手することが困難な場合がある。ゆえに、いくつかの態様において、これを0.5 mMのオロト酸およびその塩(0.50〜2.50 mM)ならびに2.50 mMのクレアチン一水和物またはその塩(2.50〜10 mM)に変えることができる。エクスビボ実験でもインビボ実験でもともに、心筋機能およびISに対する再かん流の開始時のMg-Or (オロト酸マグネシウム)投与から有益な効果を示す。インビトロアッセイ法により、Mg-OrがI/R後にmPTP (ミトコンドリア細孔移行)開口を有意に遅延させることが示された。理論に束縛されるわけではないが、このことは、再かん流のまさに開始時に投与されるMg-Orが心筋機能を保存し、ISを低減させうることを示唆している。この有益な効果は、I/Rに続くアポトーシスによる心臓細胞死の通常のトリガーである、mPTP開口の有意な低減に関連しうる。
本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵組成物のいくつかの態様において、組成物溶液は、カルノシン(例えば、L-カルノシン)のような、細胞内酸性のための緩衝液を含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中のカルノシンの濃度は、約5〜15 mM、例えば約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mMまたは約15 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、2.3 g/LのL-カルノシンを含有することができる。
本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵組成物の他の態様において、溶液は、心筋乳酸生成の低下を促進し、ゆえに酸性度を低減させるカルニチン(例えば、L-カルニチン)を含有する。生体組織および臓器貯蔵組成物中のカルニチンの濃度は、約5〜15 mM、例えば約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mMまたは約15 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、2 g/LのL-カルニチンを含有することができる。
ジクロロアセテートは、本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵組成物中に存在する場合、保存された臓器、したがって溶液中の乳酸値を低下させることにより酸性度を制御することができる。生体組織および臓器貯蔵組成物中のジクロロアセテートの濃度は、約0.1〜2.5 mM、例えば約0.1 mM、約0.2 mM、約0.3 mM、約0.4 mM、約0.5 mM、約0.6 mM、約0.7 mM、約0.8 mM、約0.9 mM、約1 mM、約1.1 mM、約1.2 mM、約1.3 mM、約1.4 mM、約1.5 mM、約1.6 mM、約1.7 mM、約1.8 mM、約1.9 mM、約2 mM、約2.1 mM、約2.2 mM、約2.3 mM、約2.4 mMまたは約2.5 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含むものであることができる。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、0.08 g/Lのジクロロアセテートを含有することができる。他の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物は、ジクロロアセテートを含有しない。
さらなる態様において、本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵組成物は、インスリンを含有することができる。インスリンは、他の成分が混合された後に、および/または本明細書において開示される貯蔵組成物の使用直前に添加することができる。例えば、インスリンは、溶液中に臓器を浸す数分前、例えば0.5、1、2、5分前から数時間前、例えば0.5、1、2、3、4または5時間前に添加することができる。いくつかの態様において、約100単位/Lが生体組織および臓器貯蔵組成物に添加される。
本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵組成物は、例えば約pH 7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6または7.7などの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む、中性またはわずかに塩基性のpHで維持することができる。1つの態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物のpHは7である。別の態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物のpHは、THAM (トリス-ヒドロキシメチルアミノメタン)を用いて調節される。
他の態様において、臓器貯蔵組成物は、脱イオン水、蒸留水および/または静菌水中に混ぜ合わせた、iSomah活性のために表Iに示される通りの以下の公称のまたは基礎の成分を含む。
Figure 2018521027
いくつかの態様において、表Iに示される非限定的な処方物で用いるためのリン酸カリウム塩は、一塩基性リン酸カリウムであることができる。別の態様において、表Iに示される非限定的な処方物で用いるための塩化マグネシウム塩は、塩化マグネシウム六水和物であることができる。他の態様において、表Iに示される非限定的な処方物で用いるための硫酸マグネシウム塩は、硫酸マグネシウム七水和物であることができる。さらに他の態様において、表Iに示される非限定的な処方物で用いるためのリン酸ナトリウム塩は、リン酸水素二ナトリウム七水和物であることができる。いくつかの態様において、表Iに示される非限定的な処方物で用いるためのグルタチオンは、還元グルタチオンであることができる。別の態様において、表Iに示される非限定的な処方物で用いるためのクレアチンは、クレアチン一水和物またはその塩であることができる。他の態様において、表Iに示される非限定的な処方物は、約2〜約10 mMの、例えば約2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMもしくは10 mMのいずれかなどの濃度のアルギニン(例えば、L-アルギニン)、約5〜約10 mMの、例えば約5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMもしくは10 mM (10 mMの場合2.26 g/L)のいずれかなどの濃度のカルノシン(例えば、L-カルノシン)、約5〜約10 mMの、例えば約5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMもしくは10 mM (10 mMの場合には2.26 g/L)のいずれかなどの濃度のカルニチン(例えば、L-カルニチン)、例えば、約0.5〜2 mMの、例えば約0.5、1、1.5もしくは2 mMのいずれかなどの濃度のオロト酸、または約2〜5 mMの、例えば約2 mM、3 mM、4 mMもしくは5 mMのいずれかなどの濃度の、クレアチン(例えば、クレアチン一水和物もしくはその塩)の1つまたは複数をさらに含むことができる。別の態様において、表Iに示される非限定的な処方物は、10 mg〜100 mg/ml/リットルまたは100〜1000単位/Lの濃度のインスリンをさらに含むことができる。インスリンが組成物に含まれる場合、インスリンは、臓器保存溶液として用いる直前に任意で添加されてもよい。
さらに他の態様において、表Iに示される非限定的な処方物は、限定されるものではないが、約11 mM〜約25 mMの、例えば約11 mM、12 mM、13 mM、14 mM、15 mM、16 mM、17 mM、18 mM、19 mM、20 mM、21 mM、22 mM、23 mM、24 mMまたは25 mMの糖の濃度の6炭素糖(例えば、アロース、アルトロース、ガラクトース、グルコース(D-グルコース(別名デキストロース)およびL-グルコースを含む)、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、フコース、フクロースもしくはラムノース)または5炭素糖(例えばアラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ケトペントース、リブロースもしくはキシルロース)のような、糖をさらに含むことができる。
さらに他の態様において、表Iに示される非限定的な処方物は、約2〜約10 mM、例えば約2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMまたは10 mMのいずれかなどの濃度の、1〜10 mMのシトルリン(例えば、L-シトルリン)またはその塩を任意で含んでもよい。別の態様において、表IIに示される非限定的な処方物は、約0 mM、1 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMまたは10 mMのいずれかなどの、約0〜10 mMのリンゴ酸を任意で含んでもよい。別の態様において、表Iに示される非限定的な処方物は、約0 mM、1 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMまたは10 mMのシトルリンリンゴ酸のいずれかのような、約0 mM〜約10 mMまたは約2 mM〜約7 mMの濃度のリンゴ酸および/またはシトルリンの代わりにシトルリンリンゴ酸(L-シトルリンリンゴ酸など)を任意で含んでもよい。
他の態様において、およびiSomahの非限定的な例として、生体組織および臓器貯蔵組成物は、表IIに示される通りの脱イオン水および/または静菌水中に混ぜ合わせた以下の成分を含む。
Figure 2018521027
いくつかの態様において、インスリンは、他の成分が混合された後に、および/または貯蔵組成物の使用直前に添加される。例えば、インスリンは、溶液中に臓器を浸す数分前、例えば0.5、1、2、5分前から数時間前、例えば0.5、1、2、3、4または5時間前に添加することができる。
C. 心筋保護溶液
心臓切開手術中の心停止のためのまたは移植用のドナー心臓のための心筋保護溶液も本明細書において提供される。1つの態様において、本発明の心筋保護溶液は、少なくとも20 mMのカリウムイオン(例えば約20 mM、21 mM、22 mM、23 mM、24 mM、25 mM、30 mM、35 mM、40 mM、45 mM、50 mM、55 mM、60 mM、65 mM、70 mM、75 mM、80 mM、85 mM、90 mM、95 mMもしくは100 mMまたはそれ以上のカリウムイオンのいずれかのような、これらの数の間に入る全ての値および範囲を含む)、ならびに糖(例えばリボース、グルコースもしくはデキストロース)、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、オロト酸、カルノシン(L-カルノシンなど)、カルニチン(L-カルニチンなど)および/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含有する生理学的塩溶液を含むことができる。心臓を約4〜10℃(例えば約4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃のいずれかなど)の間で停止させるために、少なくとも20 mMのカリウムイオンを含有する心筋保護溶液を用いることができる。
別の態様において、本発明の心筋保護溶液は、少なくとも20 mMのカリウムイオン(例えば約20 mM、25 mM、30 mM、35 mM、40 mM、45 mM、50 mM、55 mM、60 mM、65 mM、70 mM、75 mM、80 mM、85 mM、90 mM、95 mMもしくは100 mMまたはそれ以上のカリウムイオンのいずれかのような、これらの数の間に入る全ての値および範囲を含む)および少なくとも37 mMのマグネシウムイオン(例えば約37 mM、38 mM、39 mM、40 mM、41 mM、42 mM、43 mM、44 mM、45 mM、50 mM、55 mM、60 mM、65 mM、70 mM、75 mM、80 mM、85 mM、90 mM、95 mMもしくは100 mMまたはそれ以上のマグネシウムイオンのいずれかのような、これらの数の間に入る全ての値および範囲を含む)、ならびに糖(例えばリボース、グルコースもしくはデキストロース)、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、カルノシン(L-カルノシンなど)、オロト酸、カルニチン(L-カルニチンなど)および/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含有する生理学的塩溶液を含むことができる。心臓を約10〜25℃、例えば約10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃ 20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃のいずれかなどの間で停止させるために、少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含有する心筋保護溶液を用いることができる。さらに他の態様において、本発明の心筋保護溶液は、少なくとも25 mMのカリウムイオン(例えば約25 mM、26 mM、27 mM、28 mM、29 mM、30 mM、31 mM、32 mM、33 mM、34 mM、35 mM、45 mM、46 mM、47 mM、48 mM、49 mM、50 mM、55 mM、60 mM、65 mM、70 mM、75 mM、80 mM、85 mM、90 mM、95 mM、100 mM、105、110、115、120、125またはそれ以上のカリウムイオンのいずれかのような、これらの数の間に入る全ての値および範囲を含む)および少なくとも37 mMのマグネシウムイオン(例えば約37 mM、38 mM、39 mM、40 mM、41 mM、42 mM、43 mM、44 mM、45 mM、50 mM、55 mM、60 mM、65 mM、70 mM、75 mM、80 mM、85 mM、90 mM、95 mMもしくは100 mMまたはそれ以上のマグネシウムイオンのいずれかのような、これらの数の間に入る全ての値および範囲を含む)、ならびに糖(例えばリボース、グルコースもしくはデキストロース)、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、オロト酸、カルノシン(L-カルノシンなど)、カルニチン(L-カルニチンなど)および/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含有する生理学的塩溶液を含むことができる。心臓を約25〜37℃、例えば約25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃35℃、36℃または37℃のいずれかなどの間で停止させるために、少なくとも25 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含有する心筋保護溶液を用いることができる。心臓切開手術中の心停止のためのまたは移植用のドナー心臓のための心筋保護溶液の他の態様では、約4〜65 mMのカリウムイオン(例えば約4 mM、5 mM、6 mM、7、8 mM、9 mM、10 mM、15 mM、20 mM、25 mM、30 mM、35 mM、40 mM、45 mM、50 mM、55 mM、60 mM、61 mM、62 mM、63 mM、64 mMまたは65 mMのカリウムイオンのいずれかのような、これらの数の間に入る全ての値および範囲を含む)および約1.5〜45 mMのマグネシウムイオン(例えば約1.5 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mM、10 mM、15 mM、20 mM、25 mM、30 mM、35 mM、40 mM、41 mM、42 mM、43 mM、44 mMまたは45 mMのマグネシウムイオンのいずれかのような、これらの数の間に入る全ての値および範囲を含む)、ならびに糖(例えばリボース、グルコースもしくはデキストロース)、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、カルノシン(L-カルノシンなど)、オロト酸、カルニチン(L-カルニチンなど)および/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含有する生理学的塩溶液を含む。心臓を約4〜37℃、例えば約4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃ 35℃、36℃または37℃のいずれかなどの間で停止させるために、少なくとも45 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含有する心筋保護溶液を用いることができる。
III. 本発明の方法
A. 生体組織および臓器を貯蔵するための方法
本明細書において開示される組成物を用いて生体組織および臓器を貯蔵するための有効な方法も、本発明によって提供される。生体組織および臓器は、周囲温度(例えば、10〜21±4℃)で本明細書において開示される溶液中で貯蔵することができる。本明細書において提供される方法によれば、生体組織および臓器は、臓器が凍結点のまたは凍結点近くの温度で貯蔵される場合に一般的に観察される貯蔵浮腫、フリーラジカル損傷、および(an)/または細胞/組織損傷の有意な蓄積なく、開示される溶液中に24〜72時間の間、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72時間またはそれ以上の時間のいずれかなどの間、貯蔵されうる。
長期貯蔵中の生体組織および臓器における高エネルギーリン酸濃度(ATPなど)の維持は、いったんそれらがドナーに移植される(または心臓移植の場合には蘇生される)と組織および臓器の健康状態にとって重要である。本明細書において開示される方法によって本明細書において開示される溶液のいずれかに貯蔵された生体組織および臓器は、本明細書において開示される溶液中で貯蔵されていない生体組織および臓器と比べて有意に多くの高エネルギーリン酸(例えば約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%多くの高エネルギーリン酸のいずれかなどの、これらの割合の範囲内にある全ての範囲および数を含む)を示す。
長期間にわたって貯蔵される生体組織および臓器は、乳酸生成の有意な増加を示し、これが貯蔵媒体のpHに悪影響を与え、組織および細胞損傷の増大につながりうる。本明細書において開示される方法によって本明細書において開示される溶液のいずれかに貯蔵された生体組織および臓器は、本明細書において開示される溶液中で貯蔵されていない生体組織および臓器と比べて有意に低い乳酸生成(例えば約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%低い乳酸生成のいずれかなどの、これらの割合の範囲内にある全ての範囲および数を含む)を示す。
心臓が体外で貯蔵されると、貯蔵および蘇生後に冠状動脈血流が閉塞または減少することが多い。本明細書において開示される方法によって本明細書において開示される溶液のいずれかに貯蔵された心臓は、本明細書において開示される溶液中で貯蔵されていない心臓と比べて有意に高いレベルの冠状動脈血流(例えば約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%多い冠状動脈血流のいずれかなどの、これらの割合の範囲内にある全ての範囲および数を含む)を示す。
さらに、心臓が体外で貯蔵されると、心外膜2次元(2D)心エコー検査によって測定される部分面積の変化率、駆出率および/または1回拍出量の1つまたは複数が、貯蔵および/または蘇生後に減少されうる。本明細書において開示される方法によって本明細書において開示される溶液のいずれかに貯蔵された心臓は、本明細書において開示される溶液中で貯蔵されていない心臓と比べて有意に高いレベルの部分面積の変化率、駆出率および/または1回拍出量(例えば約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%以上の部分面積の変化率、駆出率および/または1回拍出量のいずれかなどの、これらの割合の範囲内にある全ての範囲および数を含む)を示す。
B. 生体組織および臓器貯蔵組成物を作成するための方法
本明細書において開示される組成物のいずれかのような、生体組織および臓器を保存するための組成物を作成するための方法が本明細書において提供される。本方法は、蒸留水、脱イオン水および/または静菌水中に表示された濃度の上記の成分の1つまたは複数を混合する段階を包含する。さらなる態様において、およびiSomahの非限定的な例として、本方法は、蒸留水、脱イオン水および/または静菌水中に下記の表IIIに示される成分の1つまたは複数を混合する段階を包含する。
Figure 2018521027
いくつかの態様において、インスリンは、他の成分が混合された後に、および/または貯蔵組成物の使用直前に添加される。例えば、インスリンは、溶液中に生体組織または臓器を浸す数分前、例えば0.5、1、2、5分前から数時間前、例えば0.5、1、2、3、4または5時間前に添加することができる。
本明細書において開示される方法の1つの態様において、組成物にシトルリンリンゴ酸(L-シトルリンリンゴ酸など)を添加するのではなく、1〜10 mM (例えば約1 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMまたは10 mMのいずれかなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む)のシトルリン(L-シトルリンなど)を、それぞれ、1〜5 mM (例えば約1 mM、2 mM、3 mM、4 mMまたは5 mMなどの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む)のリンゴ酸とともに添加することができる。
他の態様において、およびiSomahの非限定的な例として、本方法は、蒸留水、脱イオン水および/または静菌水中に下記の表IVに示される成分の1つまたは複数を混合する段階を包含する。
Figure 2018521027
いくつかの態様において、インスリンは、他の成分が混合された後に、および/または貯蔵組成物の使用直前に添加される。例えば、インスリンは、溶液中に生体組織または臓器を浸す数分前、例えば0.5、1、2、5分前から数時間前、例えば0.5、1、2、3、4または5時間前に添加することができる。
いくつかの態様において、表IVに示される非限定的な処方物の製造に用いるためのリン酸カリウム塩は、一塩基性リン酸カリウムであることができる。別の態様において、表IVに示される非限定的な処方物で用いるための塩化マグネシウム塩は、塩化マグネシウム六水和物であることができる。他の態様において、表IVに示される非限定的な処方物で用いるための硫酸マグネシウム塩は、硫酸マグネシウム七水和物であることができる。さらに他の態様において、表IVに示される非限定的な処方物で用いるためのリン酸ナトリウム塩は、リン酸ナトリウム二塩基性七水和物であることができる。いくつかの態様において、表IVに示される非限定的な処方物で用いるためのグルタチオンは、還元グルタチオンであることができる。別の態様において、表IVに示される非限定的な処方物で用いるためのクレアチンは、クレアチン一水和物またはその塩であることができる。別の態様において、表IVに示される非限定的な処方物で用いるためのアルギニンは、L-アルギニンであることができる。別の態様において、表IVに示される非限定的な処方物で用いるためのカルノシンは、L-カルノシンであることができる。別の態様において、表IVに示される非限定的な処方物で用いるためのカルニチンは、L-カルニチンであることができる。
本方法はまた、溶液のpHを中性またはわずかに塩基性のレベル(例えば約pH 7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6または7.7などの、これらの値の範囲内にある全ての範囲および数を含む)に調整する段階を含むことができる。1つの態様において、生体組織および臓器貯蔵組成物のpHは、7.5に調整される。
好ましい態様において、およびiSomahの非限定的な例として、臓器保存組成物を製造するための方法は、蒸留水、脱イオン水および/または静菌水中に表Vまたは表Vaにおける表示された濃度の以下の成分の1つまたは複数を混合する段階を包含する。
Figure 2018521027
ここでインスリンは使用直前に添加される。
Figure 2018521027
いくつかの態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物で用いるためのリン酸カリウム塩は、一塩基性リン酸カリウムであることができる。別の態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物で用いるための塩化マグネシウム塩は、塩化マグネシウム六水和物であることができる。他の態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物で用いるための硫酸マグネシウム塩は、硫酸マグネシウム七水和物であることができる。さらに他の態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物で用いるためのリン酸ナトリウム塩は、リン酸ナトリウム二塩基性七水和物であることができる。いくつかの態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物で用いるためのグルタチオンは、還元グルタチオンであることができる。
さらなる態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物は、約2〜約10 mMの、例えば約2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMもしくは10 mMのいずれかなどの濃度のアルギニン(例えば、L-アルギニン)、約5〜約10 mMの、例えば約5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMもしくは10 mM (10 mMの場合2.26 g/L)のいずれかなどの濃度のカルノシン(例えば、L-カルノシン)、約5〜約10 mMの、例えば約5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMもしくは10 mM (10 mMの場合には2.26 g/L)のいずれかなどの濃度のカルニチン(例えば、L-カルニチン)、例えば、約0.5〜2 mMの、例えば約0.5、1、1.5もしくは2 mMのいずれかなどの濃度のオロト酸、または約2〜5 mMの、例えば約2 mM、3 mM、4 mMもしくは5 mMのいずれかなどの濃度の、クレアチン(例えば、クレアチン一水和物もしくはその塩)の1つまたは複数をさらに含むことができる。別の態様において、表Vに示される非限定的な処方物は、10 mg〜100 mg/ml/リットルまたは100〜1000単位/Lの濃度のインスリンをさらに含むことができる。インスリンが組成物に含まれる場合、インスリンは、臓器保存溶液として用いる直前に任意で添加されてもよい。
さらに他の態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物は、限定されるものではないが、約11 mM〜約25 mMの、例えば約11 mM、12 mM、13 mM、14 mM、15 mM、16 mM、17 mM、18 mM、19 mM、20 mM、21 mM、22 mM、23 mM、24 mMまたは25 mMの糖の濃度の6炭素糖(例えば、アロース、アルトロース、ガラクトース、グルコース(D-グルコース(別名デキストロース)およびL-グルコースを含む)、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、フコース、フクロースもしくはラムノース)または5炭素糖(例えばアラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ケトペントース、リブロースもしくはキシルロース)のような、糖をさらに含むことができる。
さらに他の態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物は、約2〜約10 mM、例えば約2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMまたは10 mMのいずれかなどの濃度の、1〜10 mMのシトルリン(例えば、L-シトルリン)またはその塩を任意で含んでもよい。別の態様において、表Vまたは表Vaに示される非限定的な処方物は、約0 mM、1 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMまたは10 mMのシトルリンリンゴ酸のいずれかのような、約0 mM〜約10 mMまたは約2 mM〜約7 mMの濃度のリンゴ酸および/またはシトルリンの代わりにシトルリンリンゴ酸(L-シトルリンリンゴ酸など)を任意で含んでもよい。
別の態様において、およびiSomahの非限定的な例として、臓器保存組成物を製造するための方法は、蒸留水、脱イオン水および/または静菌水中に表VIにおける表示された濃度の以下の成分の1つまたは複数を混合する段階を包含する。
Figure 2018521027
Figure 2018521027
ここでインスリンは使用直前に添加される。
IV. キット
本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵/蘇生溶液を作製するための組成物は、溶液の量の2、3、5、10、20倍になるようにスケールアップするのに必要な量で、以下に列挙した成分またはその倍数でキットに任意で包装されてもよい。例示的なキットは、グルタチオン、アスコルビン酸、アデノシン、塩化カリウム、リン酸カリウム 塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、糖(リボース、グルコースまたはデキストロースなど)、アルギニン、シトルリンリンゴ酸、アデノシン、オロト酸、クレアチンおよびジクロロアセテートの1つまたは複数(例えば、約2.76 g/Lの塩化カリウム、0.06 g/Lのリン酸カリウム(一塩基性)、7.47 g/Lの塩化マグネシウム(六水和物)、0.123 g/Lの硫酸マグネシウム(七水和物)、7.30 g/Lの塩化ナトリウム、0.35 g/Lの重炭酸ナトリウム、0.05 g/Lのリン酸ナトリウム(二塩基性; 七水和物)、1.98 g/LのD-グルコース、0.462 g/Lのグルタチオン(還元)、0.18 g/Lのアスコルビン酸、0.21 g/Lのアルギニン、0.15 g/LのL-シトルリンリンゴ酸、0.27 g/Lのアデノシン、0.27 g/Lのオロト酸クレアチン、オロト酸、0.373 g/Lのクレアチン一水和物またはその塩、2.3 g/LのL-カルノシン、2.0 g/LのL-カルニチン、0.08 g/Lのジクロロアセテートおよび100単位/Lのインスリンの1つまたは複数を含有する。キットはまた、シトルリン(L-シトルリンなど)およびリンゴ酸を任意で含有してもよい。
これらの成分は、使用説明書とともに包装されることができ、0.01〜2.0 Lの蒸留水中で混合される。キットはまた、組み合わされた生体組織および臓器保存/貯蔵溶液(例えばTHAM)のpHを調整するための手段の溶液を含有しうる。キットは、滅菌および/または脱イオン水成分の有無にかかわらず、包装または販売されることができる。
本明細書の全体にわたって与えられたあらゆる最大数値限定は、あらゆるより低い数値限定を、こうしたより低い数値限定が本明細書において明示的に記載されているかのように含むことが意図される。本明細書の全体にわたって与えられたあらゆる最小数値限定は、あらゆるより高い数値限定を、こうしたより高い数値限定が本明細書において明示的に記載されているかのように含む。本明細書の全体にわたって与えられたあらゆる数値範囲は、こうしたより広い数値範囲の範囲内にあるあらゆるより狭い数値範囲を、こうしたより狭い数値範囲が全て本明細書において明示的に記載されているかのように含む。
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに理解することができるが、これらは実例として提供されるものであり、限定することを意味するものではない。
実施例1
以下の実施例において、表はアラビア数字(例えば、表1、表2、表3など)を用いて表す。
この40年間で、肝臓および腎臓のような実質臓器の保存において顕著な進展がなされ、最長で数時間までの体外保存が可能となった。残念ながら、心臓の保存は同じようにはいかず、数十年の多大な労力を費やしてさえ、4〜6時間しかエクスビボで保存することができない(Churchill TA. Organ preservation for transplantation. In: Storey KB, editor. Functional metabolism: regulation and adaptation. John Wiley- Liss; 2004;529-55)。主な進展にはCelsiorおよびウィスコンシン大学溶液(University of Wisconsin Solution, UWS; 表1-1)のような、溶液の概念発達が含まれ、その処方は、短期間のエクスビボ貯蔵のみを可能にする臓器保存の視点に深く根ざした概念である「4℃での低体温貯蔵」中の浮腫の予防に基づいていた。このような極低温では、組織/細胞が損傷し、時間とともに不可逆となるため、この理論の存在可能性は高い(Devillard et al., Mol Cell Biochem 2008;307:149-57; Belzer et al., Transplantation 1988;45:673-6; Southard et al., Annu Rev Med 1995;46:235-47)。臓器浮腫は、Celsiorへのマンニトールおよびラクトビオン酸、ならびにUWSへのラクトビオン酸、ラフィノースおよびヒドロキシエチルデンプンのような細胞不透過性物質の添加によって予防される。細胞のアデノシン三リン酸(ATP)の消費/合成は本質的に41℃で非常に低いため、UWSでのアデノシンの添加を除き、CelsiorおよびUWSの処方物における心筋細胞高エネルギーリン酸(HEP; ATPおよびクレアチンリン酸など)の維持に大きなストレスはない。
本実施例では、高エネルギーリン酸(HEP)合成を増強することにより、さらに高い温度での心臓の体外貯蔵が可能であることが示される。Celsiorとは異なり、Somah中4℃で貯蔵されたブタ心臓は、4時間の貯蔵後に臓器バイアビリティの強力な維持を実証する(Thatte et al., Circulation 2009;120:1704-13)。さらに、Somah中21℃で貯蔵された心臓は、極低体温(4℃)で貯蔵されたものよりも生存できる状態で優れており(Lowalekar et al., Transplant Proc 2013;45:3192-7)、はるかに優れた機能的再生を体外再かん流で実証している(Lowalekar et al., Am J Transpl 2014 Oct;14(10):2253-62)。
材料および方法
心臓摘出術
雌性ヨークシャーブタ(45〜54 kg)を、確立された人道的な政策に厳密にしたがって動物実験委員会により承認されたように用いた。心臓を他所に記述されているように(Thatte et al., Circulation 2009;120:1704-13)摘出し、40mmHg未満の収縮期圧で大動脈をクランプする前にエクスビボ実験のために大腿血液を集めた。その後、Somah (20 mmol/リットル K+)、Celsior (20 mmol/リットル K+)またはUWS (生来の140 mM K+)のいずれかによる、21℃での1,000 mlの心筋保護液を75〜100mmHgで注入した; 心臓を切除し、21±2℃(周囲温度)で5時間Somah、CelsiorまたはUWS中で貯蔵した。
体外心臓貯蔵
心臓を21±2℃のウォータージャケット浴(waterjacketed bath)中、ジップロックバッグ(Somah、CelsiorまたはUWS 2リットルを含む)の内部に入れた。Somah中の心臓は貯蔵中に収縮性運動が緩慢であったため、Somahの麻痺能は補助的K+ (計20 mmol/リットル)およびMg2+ (37 mmol/リットル)によって増強した(Fukuhiro et al., Circulation 2000;102(III):319-25)。事前におよび5時間後に心臓の重さを量った。パンチ生検(2×4 mm)を、HEPアッセイ法のため、貯蔵の前におよび終了時に左心室(LV)後壁から採取した。
ATPおよびクレアチンリン酸アッセイ法
心臓組織HEPを他所に記述されているように(Devillard et al., Mol Cell Biochem 2008;307:149-57; Bessho et al., Anal Biochem 1991;192:117-24)測定した。簡潔には、組織を冷過塩素酸中に懸濁させ、ホモジナイズした。ホモジネートを0℃で遠心分離し、ペレットをタンパク質定量のためにNaOHに溶解し、上清を冷KHCO3で中和し、再度、生物発光キットおよびプロトコル(Promega GloMax-Multi+ Detection System; Sigma-Aldrich)を用いたHEP (ATP+CP)測定の前に遠心分離した。
(表1−1)Somah、CelsiorおよびUW溶液の組成
Figure 2018521027
a別段の指定がない限り、1リットルあたりのミリモル(mmol/リットル)でデータを表した。
エクスビボ蘇生および機能研究のための心臓の調製
隣接する組織および他の血管からの分離後、大動脈、肺静脈(PV)および肺動脈に、それぞれ1/2〜3/8インチ、1/2〜1/4インチおよび1/2〜3/8インチのチューブコネクタを用いてカニューレを挿入し、その一方で大静脈を結紮した。
エクスビボ研究のための血液の調製
全身ヘパリン添加血液を術中に採取し、滅菌白血球低減フィルタ(Pall Leukoguard RS)を用いて白血球除去し、41℃で貯蔵した。体外かん流中の心臓の粘性ひずみを低減させるために、SomahまたはPlasmalyte (+ 1.3 mmol/リットルのカルシウム)を1:1の比率で用いて、かん流液ヘマトクリットを20%に調整した。かん流液pH、グルコース、K+、Ca2+およびHCO3 -を、それぞれ、10%デキストロース、KCl、CaCl2およびNaHCO3を用いて、ブタ血中レベル(それぞれpH 7.5; 100 mg/dl; 3.7、1.38および32 mmol/リットル)に調整した。
Somah装置
心臓の体外蘇生のために特注の器具を用いた(図1)。かん流液のpH、温度、PO2、PCO2、K+およびHCO3 -のリアルタイムモニタリングのために、CDIモニタ(Clinical Documentation Improvement Monitoring System 500; Terumo Cardiovascular Systems Corp., Ann Arbor, MI)を用いた。これらのパラメータをまた、iSTAT分析装置(Abaxis, Ltd., Union City, CA)を用いて流入/流出サンプルにおいて分析した。
エクスビボ機能研究
UWS心臓を生理食塩水で洗い流し、過剰のカリウムを除去した。Somah装置への装着時に、SomahおよびCelsior/UWS心臓を40〜60mmHgで、それぞれ1.5リットルのSomah (pH 7.5)またはPlasma-Lyte A (pH 7.5; 臨床的に使用される生理溶液)溶液、続いてかん流液により洗い流した。HMIソフトウェアを用いて圧力流データを収集した。システム温度を30分かけて37℃に上昇させた。Somah心臓におけるかん流後評価の平均持続時間は、37℃に達すると数分の再かん流後でさえも心筋拘縮の発生および/または性能の低下のための、CelsiorおよびUWS心臓のそれぞれ60分および120分とは対照的に、180分であった。電気変換(40〜50 J)および/またはエピネフリン(過去の経験(Lowalekar et al., Am J Transpl 2014 Oct;14(10):2253-62)にしたがって、Somah心臓では1:50,000〜1:100,000もしくはCelsior/UWS心臓の場合には他所で報告されているように(Hill et al., Am Thorac Surg 2005;79:168-77)1:10,000)を必要に応じて用いた。流入(大動脈)および流出(大静脈)サンプルを、開始時と、その後30分ごとに収集した(図2)。機能評価のために経食道心エコー検査(TEE)プローブを用いて、心外膜2次元(2D)心エコー検査を行った。
酵素アッセイ法および血液化学
術中に、貯蔵中におよび再かん流時に分析計(Vetscan VS2およびiSTAT; Abaxis)を用いて血中クレアチンキナーゼ(CK)、トロポニンI (cTnI)、乳酸およびガス(酸素の分圧/二酸化炭素の分圧[PO2/PCO2])を測定した。他所に記述されているように(Klabunde R. Cardiac function. Cardiovascular physiology concepts. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins; 84-8)、再かん流中にMVO2を計算した。
心外膜エコー検査
システム温度がかん流開始の30分後37℃に達したら、TEEプローブ(Cypress system; Acuson, Mountain View, CA)により術中におよびエクスビボで(心外膜) 2次元心エコーデータ(心機能パラメータの短軸像および長軸像、ならびにLV中隔壁/心室壁厚さ)を収集し、その後、CYPRESS-VIEWERソフトウェアで分析した。心腔内のかん流液に浸された黄銅クロコダイルリードを用いて、2D心エコー検査中に3リードECGを記録した。全てのSomah心臓が全仕事量(full workload)(PVかん流)および洞調律を維持したが、しかし全てのCelsiorおよびUWS心臓が全仕事量への切り替えを許容できるわけではなかった。
統計分析
調査ごとに、各群の同数の動物を比較分析のために割り当てた。図2に示されるように、生検および他のサンプルを時間調整した。HMIソフトウェアを用いて冠状動脈および大動脈流/圧力データを収集した。SIGMA-PLOTソフトウェアを統計分析に用いた。群間の比較のため、ノンパラメトリックデータを仮定して、Kruskal-Wallis 1方向分散分析(ANOVA)ランク検定を行った。正規性および等分散性検定に通った場合、Holm-Sidak検定またはDunnの検定を用いてさらなる分析を行った; そうでなければ、1方向ANOVAによってデータを比較した。ノンパラメトリックデータを仮定して、同じグループ内の有意な変化を判定するために、マンホイットニー順位和検定を行った。正規性および等分散性検定に通った場合、スチューデントのt検定を行った。p < 0.05を有意と見なした。全ての値を平均±SEMとして提示する。
結果
術中の心筋保護
心臓は全て21℃で心筋保護を受けた。心停止は、おそらく非常に高いK+のため、UWS群において直ちに起こった。対照的に、Somah群およびCelsior群では、完全な心停止のためには、それぞれ20〜25秒および30〜40秒かかった。
貯蔵中の肉眼形態、心臓重量および酵素放出
貯蔵された心臓は全て、変色することなく正常な肉眼形態を提示し、こわばり/硬直の兆候がなく柔軟であった。心臓重量は5時間の貯蔵中に変化しなかったため、肉眼的浮腫がないことが示唆された。貯蔵中の全ての溶液において、心臓酵素(CK/cTnI)の最小放出が検出された。
貯蔵中の心臓組織HEP値
貯蔵後、HEP値は、対照(タンパク質1ミリグラムあたり9.95±2.52 nmol/リットル)と比較して、Somah貯蔵心臓(28.33±5.51; p < 0.001)において有意に増強され、UWS心臓(5.92±1.46; p < 0.05)において有意に減少されたが、Celsior心臓(11.57±2.77)では変わらないままであり(図3)、比較群におけるよりもSomah心臓において有意に高いHEP蓄積が認められた(p < 0.001)。
再かん流時の冠状動脈流
21℃での最初のかん流時の冠状動脈流は、同様のかん流圧でCelsiorまたはUWS心臓におけるよりもSomah心臓において有意に大きかった(表2)。Celsior/UWS心臓ではなく、Somah心臓は、再かん流の開始時に直ちに遅い収縮を示した。37℃までのシステム温度の上昇により、冠状動脈流はSomahおよびUWS心臓において有意に増加したが、Celsior心臓においてはそうでなく、Somah心臓において最高かつほぼ正常であった。UWS群では、最初の急上昇の後に冠動脈循環圧の低下が認められた。
(表1−2)Somah装置のシステム温度の上昇による、Somah、CelsiorおよびUWS群の心臓における冠状動脈流の変化
Figure 2018521027
P1、P2、P3: 各温度での大動脈根圧; F1、F2、F3: 各温度での冠状動脈流。UWS、ウィスコンシン大学溶液。
a同じ温度での他群との有意差。
b同じ群における21℃との有意差。
cCelsior群の心臓との有意差。
再かん流時の酵素の放出
SomahおよびCelsior心臓におけるCKおよびcTnIの放出は、再かん流の30分後に匹敵したが、UWS心臓による両者の有意に高い放出が認められた(図4AおよびB)。
再かん流心臓における代謝
MVO2および乳酸比の逆転の増大によって示唆されるように、Somah心臓における再かん流30分以内の嫌気性から好気性代謝への迅速な切り替えが認められた(図5AおよびB)。対照的に、CelsiorおよびUWS心臓においては正の乳酸生成(未反転の乳酸比)が明らかであったが、MVO2は、同じ期間にCelsior心臓では変化しなかった(図5AおよびB)。
再かん流時の機能的再生
再かん流時に、基本的な電気活動(ECG)によって補完される即時の自発房室活動が、Somah心臓において明らかであり、システム温度が37℃に上昇すると心室収縮がさらに増大し、一回の心臓除細動で洞調律を確立した。Somah心臓は、強心法またはさらなる電気的除細動を必要とせず、調査中ずっと柔軟なままであった。対照的に、CelsiorおよびUWS心臓は、電気的に検出できない最小限の視覚的な自発的活動を実証し、LV頂部から始まり、最終的にLVおよび中隔壁、ならびに究極的にはRVおよび心房を伴って、触れると漸進的に堅くなり、虚血再かん流傷害(IRI)の初期化の可能性を示唆するものであった。したがって、かん流液Ca2+値もまた急速に低下し、細胞内シフトを示唆していた。心臓除細動およびエピネフリン注入のいくつかの試みにもかかわらず、Celsior/UWS心臓は回復できなかった。かくして、機能的な2D心エコーデータは、全てのCelsior/UWS心臓において成功裏に得ることができず、心機能データからCelsior/UWS心臓において有意に低い性能が実証された(図6A〜C)。さらに、UWS心臓においてかん流後のLV前壁/中隔壁の厚さが大幅に増加した(図6D)。
結論として、Somahは心臓移植患者の予後を改善するための鍵となる「解決策/溶液(solution)」でありうる。健全な代謝、蘇生時の優れた機能的再生、IRI依存性損傷の減少および刺激介入に対する必要性の減少から、亜正常温のSomah中で貯蔵された心臓は、他の保存溶液と比べて健全な機能性に急速に戻る可能性がいっそう高い。
実施例2
本実施例では、貯蔵後の心機能性の回復が、臓器のエネルギー状態および貯蔵温度の維持に比例するかどうかを調べ、それぞれ、4℃のCelsior中でのならびに4℃、13℃および21℃のSomah中での心臓保存を比較する。
材料および方法
心臓摘出術、体外心臓貯蔵、ATPおよびクレアチンリン酸アッセイ法、エクスビボ蘇生および機能研究のための心臓の調製、エクスビボ研究のための血液の調製、Somah装置、ならびに機能的研究を上記の実施例1に記述したように行った。
心臓重量および生検
貯蔵の開始時および5時間後の計量の前に心室を空にした。Somah心臓の組織学的検査(HP; ヘマトキシリンおよびエオシン染色)および超微細構造ならびにSomahおよびCelsior心臓のHEPアッセイ法のために左心室の後壁(LV)から心臓切除15分以内に(対照)および5時間貯蔵の終了時にパンチ鉗子を用いて心臓パンチ生検(直径2〜4 mm)を採取した。
電子顕微鏡法
Somah心臓組織をグルタルアルデヒド中で固定し、超構造研究のために処理した。簡潔には、電子顕微鏡(EM)研究のために採取した組織を直ちにグルタルアルデヒド中で固定し、4℃で貯蔵した。固定化、脱水および包埋後、70〜100 nmの切片をウルトラミクロトームを用いて切断し、グリッドに移し、JEOL電子顕微鏡(1200EX-80kV; JEOL USA Inc., Peabody, MA)下で調べて、超微細構造変化を同定した。
酵素アッセイ法および血液化学
術中に、ならびに10分、2時間および5時間の心臓貯蔵の終了時に採取されたSomahサンプルにおいてVetscan VS2またはiStat (Abaxis Ltd, Union City, CA)を用いクレアチンキナーゼ(CK)、心臓トロポニン-I (cTnI)、乳酸およびガス(pO2/pCO2)を測定した。Celsiorの成分がアッセイ法に干渉した; ゆえに、貯蔵サンプルをアッセイすることができなかった。酵素アッセイ法のためにかん流液のかん流の開始後5分および90分の時点で、ならびにVetscan VS2またはi-Stat Systemを用いた、心筋O2消費(MVO2)および乳酸値の評価のために60分(ベースライン)および90分(ピーク性能)の時点で流入(大動脈)および流出(大静脈)サンプルを収集した。MVO2を計算した。インビトロ再かん流中に得られたVetscan CKアッセイ値は、これらの単離された心臓の研究において心臓に特異的であった。
心外膜エコー検査
TEEプローブを、Acuson Cypressシステム(Acuson, Mountain View, CA)による術中およびエクスビボでの心機能の2Dエコー評価に使用し、Cypressビューアソフトウェアを用いて画像を分析した。エクスビボ実験中、心臓をSomah装置に接続し、心臓の表面の3分の2を覆うかん流液2 Lを含有するチャンバに浮かせた。心電図を開始から記録し、もし良好な心収縮が観察された時にはかん流からおよそ45〜60分後に2Dエコーの収集を開始し、30分間隔で繰り返した。プローブを心臓に直接接触させて配し、プローブの角度およびパルスの方向を調整し短軸像および長軸像を得て、心臓の機能的パラメータならびに心室壁および中隔壁の厚さを評価した。
統計分析
全ての値を平均±SEMとして表す。分析は、Celsior 4℃(n = 5)をSomah 4℃心臓(n = 6)、13℃(n = 6)および21℃(n = 6)心臓と比較することに焦点を当てた。SigmaPlot (Systat Software Inc., San Jose, CA)を用い、一方向分散分析を全ての機能測定(対照におけるおよび300分での総HEP値の差異; MVO2、乳酸、CK、cTnI、60分[ベースライン]および90分[ピーク性能]での冠状動脈流、ならびに心室壁および中隔壁の厚さ)について行った。Tukey検定を用いて、群間の特定の差異を同定した。Somah貯蔵心臓ではHEPが有意に増加しているので、Somah群ごとに無作為に3つの心臓と5つのCelsior心臓をHEP分析のために選択した。対応のあるt検定を用いて、時間0および37℃での冠状動脈流の差異、ベースラインおよび90分の時点でのMVO2および乳酸の差異を4つの群内で評価した。ミトコンドリア虚血スコア(MIS)の場合、Somah心臓(n=3/群)ではスライドごとに20個のミトコンドリアを有する4枚のEMスライド(倍率8000倍)を用いた。統計的有意性は、95%の信頼水準で許容された(p < 0.05)。異なる研究のための組織および血液サンプルを、図に示すように得た(図7)。
結果
肉眼形態、心臓重量、HPおよびEM
CelsiorおよびSomah中で保存された心臓は正常な形態を呈し、何らの変色も示さなかった。Somah群ではEM、HP心臓重量を比較することにより心臓の浮腫を概算した(図8)。EMおよびHPは、無傷のオルガネラ膜、正常な細胞内グリコーゲン含量と収縮性タンパク質の整列、空胞形成の欠如と筋繊維束の間の明確な空間および拘縮帯の欠如を、細胞内浮腫の少なさを含め、実証した。貯蔵前および貯蔵後の心臓重量の差異は有意でなかった。核膜下のクロマチンの蓄積によって特徴付けられる心筋細胞核の最小限の可逆的変化が、Somah群において明らかであった。ミトコンドリアマトリックスの密度は十分に保存され、虚血はほんのわずかであった。0〜6 (6が最も悪い)のスケールでの平均MISは、ミトコンドリアでの無視できるほどの可逆的変化を実証し、4℃、13℃および21℃のSomah心臓においてそれぞれ、0.09±0.02、0.17±0.03、0.07±0.02であった。クリストリシス(cristolysis)、空胞形成およびミトコンドリア膜破裂のような特徴的な不可逆的損傷は、いずれの心臓においても見られなかった。
貯蔵中の心臓代謝
高エネルギーリン酸:
Somah中で保存された心臓は貯蔵温度に関係なくHEPを合成し、以前の知見を確認するものであった。Somah心臓ではHEP濃度の貯蔵依存的な上昇の温度が認められた。4℃、13℃および21℃でそれぞれ保存されたSomah心臓(n = 3/群)における55.7±5.1、68.4±11.0および81.5±19.8 nM/mgタンパク質の総HEP値は、貯蔵の終了時にCelsior心臓(n = 5)において観察された26.31±1.4 nM/mgタンパク質よりも有意に高かった(p < 0.05)。対照値は群間で有意差がなかった。
貯蔵中の乳酸生成および酸素消費:
嫌気性乳酸生成は、21℃の心臓において2時間時点での0.41から0.75±0.05 mmol/Lまで一時的に増加したが、5時間貯蔵後の低体温Somah群では検出レベルに満たなかった。しかしながら、pHは全群において7.4±0.1で安定なままであった。さらに、より高い温度で貯蔵された心臓は、比較的活性な好気性代謝のために、Somahに溶解した酸素(pO2 210〜240mmHg)を活発に利用した。貯蔵中にそれぞれ、4℃、13℃および21℃でSomahではpO2が7.0±7.6、17.0±3.51および14.0±3.51mmHgだけ減少し、HEP合成の並行増加に対応していた。乳酸およびpO2利用は、貯蔵中にCelsiorでは測定することができなかった。
心機能研究
冠状動脈流:
順行性かん流の開始時に、貯蔵の溶液または温度に関係なく全ての心臓において冠状動脈流が観察された。4℃および13℃のSomah心臓は、温度が21℃に上昇するとゆっくりと不規則な4室収縮を示したが、21℃の群ではかん流の開始後に遅い律動収縮が直ちに観察された。
対照的に、Celsior心臓は、心室ではなく心房の不規則な収縮を示した。心臓収縮および洞調律は、温度上昇とともに増強され、全てのSomah群においてかん流開始からおよそ90分後に37℃でピーク性能に達したが、Celsior心臓ではそうでなかった。初期冠状動脈流は、21℃で貯蔵されたSomah心臓において、4℃および13℃で貯蔵された心臓におけるよりも有意に大きかった(p < 0.05)。378Cで、さらに、Somah群では冠状動脈流の有意な並行増加が認められた(p < 0.05)が、Celsior群ではそうでなかった(表2-1)。さらに、Somah群における37℃での冠状動脈流はCelsior心臓におけるよりも有意に大きかった(p < 0.05)。
(表2−1)再かん流およびシステム温度の上昇時のCelsior 4℃、13℃および21℃群の心臓における冠状動脈流(ミリメートル/分)の変化
Figure 2018521027
n = 5 Celsior心臓; n = 6 Somah心臓/温度群; 時間0 = 最初の再かん流直後の冠状動脈流。
137℃でのCelsior vs Somah群(p < 0.05)。
2時間0での21℃ vs 13℃および4℃群の心臓(p < 0.05)。
3時間0 vs 37℃(p < 0.05)。
作動中の心臓における再かん流時の心臓代謝および酵素放出:
MVO2は、4℃のSomah心臓においてかん流後60分(ベースライン)〜90分変化しないままであり、13℃および21℃のSomah心臓内で有意に増加したが、3群間に差異はなかった。対照的に、MVO2はCelsior心臓において著しく減弱した(図9A)。同様に、ベースライン時のかん流液中の乳酸値は、Somah群よりもCelsior群において有意に低かった(p < 0.05)。乳酸は90分の時点で全群において減少したが、群間で差異は有意でなかったとはいえ、13℃および21℃のSomah群内で有意に減少した(p < 0.05) (図9B)。エネルギー必要量は、貯蔵温度とは無関係に、全てのSomah心臓においてピーク性能で定常状態に達した。心臓組織における仕事量前および後のHEPレベルの比率は、作動しているSomah心臓において同等(およそ0.37)であったが、Celsior心臓ではそうでなかった。CK放出は21℃のSomah群において最も低かった; しかしながら、いずれの群の間でも有意差はなかった(図10A)。対照的に、cTnI放出は、Somah群と比べてCelsior心臓において有意に低かった(p < 0.05) (図10B)。
TEEおよびインビトロ2Dエコー撮像:
LV前壁および中隔の厚さは、4群間で術中およびインビトロでの蘇生の間に有意な変化を示さなかった(表2-2)。
(表2−2)区別して貯蔵された心臓における左心室(LV)前壁および中隔壁の術中およびインビトロの厚さ(収縮終期)の比較
Figure 2018521027
インビボおよびインビトロ群, Celsior, n = 5; Somah, n = 6/群。
Somah心臓では、2Dエコーにより貯蔵温度依存的な性能が目に見えて実証された(図11)。より高い温度群では、前負荷(順行性冠状動脈かん流)中および後負荷(PVかん流)中の両方で、他の心機能パラメータの増強(図6)を伴うさらに大きな程度の壁運動およびLV収縮が明らかであった。21℃の群において、左心房圧4±2mmHgで、示差的刺激介入を必要とした4℃および13℃の心臓の場合の12±3mmHgとは対照的に、心臓の最適機能が達成された(表2-3)。
(表2−3)4℃、13℃または21℃で貯蔵された心臓の機能的回復に必要とされた心臓除細動の数およびエピネフリンの量
Figure 2018521027
対照的に、Celsior心臓は、同期的な4室収縮を生ずることができず、複数の刺激介入(表2-3)でさえ、何ら仕事量を維持することができず、最終的には実験期間中に硬化を起こした。それゆえ、Celsior心臓から機能データを収集することができなかった。Somah群でのかん流および全仕事量へのピーク性能90分で得られたデータを比較分析に用いた。計算された部分面積の変化率、冠状動脈流、血圧、1回拍出量、駆出率および心拍出量は、21℃群の心臓における生理的パラメータに近づいた(表2-4)。
(表2−4)手術中のおよび体外再かん流によるピーク性能時の心機能パラメータ
Figure 2018521027
2Dエコー, 2次元心エコー検査; LV, 左心室; nt, 予測された機能がないため、試験されていない。
n = 23, インビボ群; n = 5 Celsior心臓; n = 6 Somah心臓/温度群。
113℃および21℃ vs 4℃群の心臓(p < 0.05)。
これは、21℃で5時間体外保存後に最小限の損傷で生理学的に関連する心臓-血行力学的パラメータ内での完全な機能状態への心臓の早期再生を実証する最初の報告である。本研究は、貯蔵中に臓器のエネルギー状態を増強しながら、低体温障害を防止できるなら、構造的完全性、細胞恒常性、機能の修復および回復を維持することが可能であることを示唆する。Somah溶液は、臓器保存の基本的な必要条件、すなわち浮腫の予防、活性酸素種依存的な損傷およびHEP合成の増強を満たすため、極低体温(4℃)貯蔵のための要件および関連する細胞損傷を軽減する。
実施例3
本実施例では、心循環死の30分後に採取した心臓(DCD心臓)を研究し、現在の臨床基準の4〜5倍の間貯蔵した。さらに、本研究は、移植のために機能的に実行可能な状態で、SomahにおけるDCD心臓の長期貯蔵に理想的な温度を決定するために設計された。
材料および方法
動物モデル
3ヶ月齢雄性Sprague-Dawleyラットを、施設内動物実験小委員会の承認を受けたプロトコルにしたがって厳密に用いた。
Somah溶液調製および他の材料
Somahを上記のように処方した。4℃で貯蔵された0.4 mmのフィルタ(VWR International)を用いて新たに調製した溶液をろ過滅菌し、調製の24時間以内に用いた。全ての化学物質および抗体は、特に明記しない限り、Sigma Chemical Co (St Louis, Mo, USA)、Amersham Biosciences (Piscatway, NJ, USA)、Bio-Rad (Hercules, Calif, USA)またはDAKO Corp (Carpinteria, Calif, USA)から入手した。
心臓の摘出、貯蔵および模擬再かん流
CO2で無意識にさせたラットを断頭し、心臓の模擬再かん流のために血液を酸-クエン酸-デキストロース管に集めた。DCD心臓を安楽死の30分後に摘出し、4℃±2℃、10℃±2℃、21℃±2℃または37℃±2℃で24時間Somah中に貯蔵した。24時間の貯蔵の終了時に、振とう水浴中30分間37℃でかん流溶液(血液:Somah :: 3:1)中にて心臓をインキュベートすることによって模擬再かん流を行った。生死およびエステラーゼアッセイ法、ミトコンドリア分極アッセイ法、タンパク質発現、ならびに組織アデノシン三リン酸(ATP)およびクレアチンリン酸(CP)値のために再かん流の前後で心臓生検をとった。
生死バイアビリティ(Live-Dead Viability)およびエステラーゼ活性アッセイ法
Somah DCD心臓からの心筋細胞のバイアビリティを、蛍光に基づく生死アッセイ法および多光子顕微鏡法で評価した。心臓生検材料を、1.5 mLのHBSS (ハンクス平衡塩類溶液), pH 7.4中10 mmol/Lの、カルセインAM (カルセインのアセトメトキシ誘導体)およびエチジウムホモ二量体色素(Live-Deadアッセイキット; Molecular Probes)とともに21℃で30分間インキュベートし、保存溶液で洗浄し、緑色(生細胞)および/または赤色(損傷/死細胞)蛍光について多光子顕微鏡で撮像した。心筋細胞の機能的完全性を、エステラーゼ活性を示すカルセイン蛍光の量子収率(光子数)の半定量的測定によって評価した。
ミトコンドリア膜電位のJC-1アッセイ法
心筋細胞をJC-1色素(Molecular Probes)で標識、撮像し、多光子顕微鏡法を用いてミトコンドリア極性比を決定した。
タンパク質抽出およびウエスタンブロッティング
LV組織(20 mg)を300個に切り分け、プロテアーゼ阻害剤カクテルを有する溶解緩衝液(CellLytic MT; Sigma-Aldrich) 200 mLに懸濁し、10分間16,000gで遠心分離する前に30秒間ホモジナイズし、上清(総タンパク質)を回収し、次いでBio-Radタンパク質アッセイキットを用いて定量した。タンパク質を7.5%、10%または12% SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に転写した。ブロットを一次抗体(1:1000; 抗ミオシン重鎖および軽鎖、アクチニン、アクチン、およびトロポニンC)とともにインキュベートし、引き続いてHRP (西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合二次抗体とともにインキュベートし、電気化学発光(GE Healthcare)を用いてタンパク質発現を検出した。
ATPおよびCPアッセイ法
ATPおよびCP値は、4℃、10℃、21℃または37℃で24時間貯蔵後におよび再かん流時に分光蛍光計および生物発光アッセイキット(Perkin Elmer, Waltham, MASS, USA)を用いて心臓組織において測定された。
多光子撮像
MaiTaiモードロックチタン:サファイアレーザー(Spectra-Physics, Mountain View, Calif, USA)と一体となったBioRad撮像システム(MRC 1024ES)を用いた最新式の多光子撮像技法を、深部イメージング心臓生検および半定量的蛍光測定に用いた。画像512×512ピクセルを0.484 mmのピクセル分解能で、直接検出の設定で収集した。心筋細胞をXYZ軸走査によって同定し、切除点からLV生検で50 mmの深さで撮像した。
統計分析
Metamorphソフトウェア(Molecular Devices, Downingtown, PA, USA)を、実験室の異なる成員によって盲検的に、データ抽出、定量、および多光子画像からの蛍光カウントの分析に用いた。データを平均±標準誤差として表す。群間の差異は、スチューデントt検定(対応のあるもしくは対応のない(paired on unpaired))または適用可能であれば1方向分散分析を用いて決定した。統計的有意性は、95%の信頼水準で許容された(P <.05)。データは、各温度群の場合n = 3、エステラーゼ活性およびミトコンドリア分極の場合n = 25測定、ならびにATPおよびCP値決定の場合n = 5から得た。
結果
摘出された心臓における心筋細胞バイアビリティ
摘出直後(対照; 図12A)に行った心臓生検の生死アッセイ法および多光子顕微鏡法(図12)により、強力な緑色蛍光(生存細胞を示す)が実証されたが、赤色の核蛍光(損傷細胞を示す)は実証されなかった。Somah中での24時間の貯蔵後、37℃群における変色および構造的完全性の目に見える損失を除いて、DCD心臓の肉眼形態は他の全ての温度群でよく保存されていたが、これらの群における生死アッセイ法の緑色蛍光は対照のそれと類似していた。しかしながら、4℃、10℃および37℃で、損傷した細胞の赤色核蛍光は24時間貯蔵後にも増強されており(図12B)、心臓はとにかく保存されたが、亜正常温度(21℃)ではいくらかの同時の細胞損傷を被ったことが示唆された。貯蔵された心臓の模擬再かん流時に、4℃および37℃で貯蔵された心臓における緑色蛍光の実証可能な減少があった(図12C)。
エステラーゼ活性測定
模擬かん流の前に、エステラーゼ活性に応じて緑色蛍光の量子収量は、21℃で貯蔵された心臓において最も高く、37℃で最も低かった(表3-1)。再かん流後、エステラーゼ活性は21℃で貯蔵された心臓では変化しなかったが、しかし10℃群では有意でなかったとはいえ、4℃、10℃および37℃で貯蔵された心臓において可変的に減少した。
(表3−1)DCD心臓におけるカルセイン蛍光(エステラーゼ活性)の定量的評価
Figure 2018521027
Somah溶液中24時間貯蔵後および再かん流時の各温度群における、心循環死後に供与された3つの心臓からのエステラーゼ活性を描く画像の分析から、定量データ(全蛍光カウント)を得た。24時間の貯蔵後(再かん流前)、エステラーゼ活性は37℃群の心臓において最も低く、21℃群の心臓において最も高かった。再かん流時には、極低体温(4℃)または正常温(37℃)の温度で保存された心臓においてエステラーゼ活性の有意な低下が明らかであったが、10℃および21℃群の心臓では変化しなかった。CF = カルセイン蛍光。
a任意単位±標準誤差
bかん流後の有意な変化
ミトコンドリア分極のJC-1アッセイ法
新たに摘出されたDCD心臓では、分極した状態と脱分極した状態のミトコンドリアが平衡状態にあった(図13)。貯蔵温度とは無関係に、DCD心臓の心筋細胞におけるミトコンドリア膜は、24時間の貯蔵後にも再かん流時にも分極したままであったが、再かん流後のいずれの群においても分極率は変化しなかった。さらに、再かん流前または後の異なる群におけるミトコンドリア分極状態に有意差はなかった。
高エネルギーリン酸合成
対照と比較して、心臓におけるATP/CP合成は、4℃、10℃および21℃のSomahにおいて24時間貯蔵後に有意に増強された(図14)。再かん流時に、ATP合成は4℃群において有意に低下したが、10℃群では変化しなかった。対照的に、再かん流は、亜正常温度で貯蔵された心臓においてATP合成の400%増加をもたらした。ATP研究に沿って、CP合成も21℃群での再かん流時に有意に増加した。
タンパク質発現
エクスビボで貯蔵された心臓の構造的バイアビリティを、収縮機能に重要なタンパク質の発現を評価することによって決定した。ミオシンHC、アクチニン、アクチン、ミオシンLCおよびトロポニンCの発現は、21℃で24時間 Somah中で貯蔵された心臓においてよく保存されていた(図15)。対照的に、これらのタンパク質は、24時間貯蔵後にまたは再かん流時に、他の温度群において可変的に失われた。
結論として、本実施例は、最近設計された臓器保存溶液Somahを用いて、静的貯蔵中のDCD心臓を、低体温貯蔵4〜5時間の現在許容される時間を超えて、亜正常温度で生存可能な状態で保存できることを初めて実証した。
実施例4
本実施例は、低体温でのインビトロ貯蔵後の最適心機能の保存における4および21℃でのSomahの相対的効力を評価する。
材料および方法
心臓摘出術および心筋保護
この比較研究において10頭の雌性ヨークシャーブタ(45〜54 kg)を用いた。動物実験委員会(施設内の動物管理使用委員会)より承認されたプロトコルにしたがって、心臓を4℃(n = 5)または21℃心筋保護(n = 5)の2群に分けた。記述のように縦隔法を用いて心臓を摘出した(Thatte HS, Rousou L, Hussaini BE, Lu XG, Treanor PR, Khuri SF: Development and evaluation of a novel solution, Somah, for the procurement and preservation of beating and non-beating donor hearts for transplantation. Circulation. 2009, 120: 1704-1713)。動物を大腿血管から採血してエクスビボ実験用の血液を回収し、収縮期圧が40 mmHgを下回ったときに大動脈をクランプした。4または21℃の、SOMAH心筋保護液(20 mM K+、終濃度の添加によって改変されたSOMAH (Thatte HS, Rousou L, Hussaini BE, Lu XG, Treanor PR, Khuri SF: Development and evaluation of a novel solution, Somah, for the procurement and preservation of beating and non-beating donor hearts for transplantation. Circulation. 2009, 120: 1704-1713) 1000 mlを、ローラーポンプおよび圧力トランスデューサ(Myotherm Cardioplegia System, Medtronics, Minneapolis, MN, USA)を用いて300〜400 ml/分の流速にて75〜100 mmHgの圧力で大動脈根へ注入し、iWorksシステム(Dover, NH, USA)を用いてデータを記録した。心臓停止後、心臓を全ての付属物から切断し、SOMAH中に21℃で5時間貯蔵する前に生理食塩水ですすいだ。切除15分以内に心臓を実験室に搬送した。
心臓の体外貯蔵
心臓を、21±2℃のウォータージャケット浴中SOMAH 2 Lを含有する滅菌ジップロックバッグに入れた。保存溶液の温度は貯蔵期間全体にわたって定期的に確認した。貯蔵中、37 mM Mg2+を補完した20 mM K+を溶液に補充することでSOMAHの麻痺能を増加させることにより、心臓を非収縮状態で維持した(Fukuhiro Y, Wowk M, Ou R, Rosenfeldt F, Pepe S: Cardioplegic strategies for calcium control: low Ca2+, high Mg2+, citrate, or Na+/H + exchange inhibitor HOE-642. Circulation. 2000, 102 (19-3); Osaki S, Ishino K, Kotani Y, Honjo O, Suezawa T, Kanki K, Sano S: Resuscitation of non-beating donor hearts using continuous myocardial perfusion: the importance of controlled initial reperfusion. Ann Thorac Surg. 2006, 81: 2167-2171)。心腔を慎重に空にして5時間貯蔵の前後に各群の心臓の重さを量った。組織パンチ生検(2×4 mm)を実験室において、HEPアッセイ法のため、貯蔵に入って15分(0時間; 対照)および5時間貯蔵後に、LV後壁から採取した。
ATPおよびクレアチンリン酸アッセイ法
記述のように組織抽出物においてATPおよびクレアチンリン酸(CP)を測定した(Thatte HS, Rousou L, Hussaini BE, Lu XG, Treanor PR, Khuri SF: Development and evaluation of a novel solution, Somah, for the procurement and preservation of beating and non-beating donor hearts for transplantation. Circulation. 2009, 120: 1704-1713; Bessho M, Ohsuzu F, Yanagida S, Sakata N, Aosaki N, Tajima T, Nakamura H: Differential extractability of creatine phosphate and ATP from cardiac muscle with ethanol and perchloric acid solution. Anal Biochem. 1991, 192: 117-124)。簡潔には、組織生検を急速凍結し、-80℃で貯蔵した; 組織20 mgを0.4 Mの氷冷過塩素酸400 μlに懸濁し、30秒間2回ホモジナイズした。ホモジネートを0℃で10分間、1970 gで遠心分離した。上清のアリコットを等量の氷冷0.4 M KHCO3で中和し、上記のように遠心分離した。上清をATPおよびCP測定のために-80℃で貯蔵した。ペレットを等量の0.1 M NaOHに溶解し、遠心分離し、タンパク質アッセイ法に用いた。ATPおよびCPは、製造業者によって提供されたプロトコルにしたがって、生物発光アッセイキット(Sigma-AldrichおよびGloMax-Multi + Detection System, Promega)を用いて測定された。
エクスビボ蘇生および機能研究のための心臓の調製
大動脈および肺動脈(PA)を分離した。大動脈にカニューレを挿入し(1/2〜3/8インチチューブコネクタ)、冠状動脈を40〜50 mmHgの圧力で4℃および21℃の両方の心筋保護群においてSOMAH 100 mlで穏やかに洗い流し、大動脈への空気の侵入を慎重に回避した。肺静脈(PV)を分離し、1/2〜1/4インチチューブコネクタでカニューレ挿入した。PAをサンプル収集のためにカニューレ挿入し、一方で上大静脈および下大静脈を結紮した。
エクスビボ研究のための血液の調製
全身ヘパリン化した血液を術中に採取し、白血球除去(Pall Leukoguardフィルタ)し、4℃で貯蔵した。実験の前に、SOMAH溶液(心臓の粘性ひずみを低減するために1:1の比)を用いて血液のヘマトクリットを20%に調整することによってかん流液を調製し、21℃に加温した。必要に応じて、それぞれ、10%デキストロース、KCl、CaCl2およびNaHCO3を用い、かん流液のpH、グルコース、K+、Ca2+およびHCO3-をブタ血中レベル(それぞれ7.5; 100 mg/dl; 3.7、1.38および32 mmol/l)に応じて調整した。
SOMAH装置
心臓の体外蘇生のために特注の器具を用いた(図1)。かん流液のpH、温度、pO2、pCO2、K+およびHCO3-のリアルタイムモニタリングのために、CDIモニタ(Clinical Documentation Improvement Monitoring System 500, Terumo cardiovascular systems corporation, Ann Arbor, MI)を用いた。これらのパラメータをまた、i-STAT分析装置(Abaxis Ltd, Union city, CA)を用いて流入/流出サンプルにおいて分析した。回路内のさまざまな点で圧力および流量を記録した(図16)。経食道心エコー検査(TEE)プローブを用いて、2Dエコーシステムにより心臓の収縮機能を評価した。心臓周囲のかん流液に浸された黄銅クロコダイルリードを用いて、2Dエコー中に3リードECGを記録した。SOMAH Device (Comdel Inc, Wahpeton, ND)専用に書かれたHMIソフトウェアを用いて、圧力および流量データをリアルタイムで収集およびモニタした。
エクスビボ機能研究
心臓をSOMAH装置に取り付け、これに大動脈を通じて40〜60 mmHgで5分間1〜1.5リットルの21℃(pH 7.5)のSOMAHを、次いでかん流液を、pH、血液ガスおよび電解質平衡が確立されるまでかん流させた。かん流液のpH、グルコース、K+、Ca2+、HCO3-を上記のようにブタ血中レベルに応じて調整した。システム温度を30分かけて37℃に徐々に上昇させると、強力な心収縮が両群において認められた。40分以内に血行力学的な定常状態(pH、血液ガスおよび電解質に関して)が達成された。実験的かん流の総持続時間はおよそ180分であった。心臓は、システム温度が37℃に達するまで大動脈根(仕事量なし)を通してかん流され、その後、PVかん流(全仕事量)が実験の終了まで進行した。冠状動脈血流は、最初の順行性かん流中に1分間に大動脈を通って心臓に流れるかん流液の量によって、および作動中の心臓では1分間に肺動脈(両大静脈は結紮)から集められたかん流液の量によって決定された。電気変換(40〜50 J)および/またはエピネフリン(1:50,000〜1:100,000)を必要に応じて用いた(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor R, Thatte HS: Subnormothermic preservation in SOMAH: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014)。心外膜2Dエコーは、60分(ベースライン)時およびピーク性能時に、全仕事量下の心臓を有する2群ではかん流液かん流の開始からおよそ90分後に、ならびにその後30分ごとに機能評価のためTEEプローブを用いて行われた。ピーク心臓性能は、2Dエコーによって観察された最大収縮活性によって定義された。ピーク性能時のデータを2群間の比較に用いた。
酵素アッセイ法および血液化学
術中に、ならびに心臓貯蔵10分、2時間および5時間の終了時に採取されたSomahサンプルにおいてVetscan VS2またはiStat (Abaxis Ltd, Union City, CA)を用い心臓クレアチンキナーゼ(CK)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、トロポニン-I (cTnI)、乳酸およびガス(pO2/pCO2)の定量的レベルを測定した。酵素アッセイ法の場合5分および90分の時点で、ならびにMVO2および乳酸の場合60分(ベースライン)および90分(ピーク性能)の時点で、VetscanまたはiStatでのかん流液かん流の開始後に、酵素アッセイ法のためならびにVetscan VS2またはi-Stat Systemを用いた心筋O2消費(MVO2)および乳酸値のかん流後評価のため流入(大動脈)および流出(PA)サンプルを収集した。MVO2を記述(Klabunde R: Cardiac function. Cardiovascular Physiology Concepts. 2011, Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD USA, 84-88)のように計算した。
心外膜エコー検査
経食道(TEE)プローブを、Acuson Cypressシステム(Acuson, Mountain View, CA)による術中およびエクスビボでの心機能の2Dエコー評価に用い、システムに付属するCypressビューアソフトウェアを用いて画像を分析した。心臓をSOMAH装置に接続し、心臓の表面の3分の2を覆うかん流液2 Lを含有するチャンバに浮かせた。ECGを実験の全経過中に記録し、良好な心収縮が観察された時にはかん流からおよそ45〜60分後に2Dエコーの収集を開始し、30分間隔で繰り返した。プローブを心臓に直接接触させて配し、プローブの角度およびパルスの方向を、心臓の機能的パラメータならびに心室壁および中隔の厚さの計算のため短軸像および長軸像を得るように調整した。
統計分析
各群からの生化学的、血行力学的および機能的測定の比較分析のために、同数の動物(n = 5)を4℃および21℃の心筋保護群に割り当てた。2群間の有意差についての統計的比較は、SigmaPlotソフトウェアを用いて行った。対応のあるt検定を全ての比較に用いた。<0.05のP値を有意と見なした。全ての値を平均±SEMとして表す。実験設計の流れ図を図16に示す。
結果
術中の心筋保護
心停止は心筋保護の温度に依存し、4℃群では10〜15秒以内に起こり、21℃群では20〜25秒以内に起こったが、これは心停止の低体温(4℃)要素が後者では意図的に排除されたためであろう。
貯蔵中の肉眼形態、心臓重量および酵素放出
心筋保護の温度に関係なく、全ての心臓は、変色することなく正常な肉眼形態を提示した。心臓は硬化または硬直の兆候がなく柔軟であった。2群における5時間貯蔵中の心臓の重量は、貯蔵前と貯蔵後との間で変化せず、貯蔵により誘発される肉眼的浮腫の欠如を実証していた(図示せず)。心臓酵素の時間依存性放出は、有意差がなかった両群において最小限に明らかであった(図示せず)。
停止後および貯蔵中の心臓組織HEP値
図17に示されるように、心停止15分以内(対照)の、ATP、CPおよび総高エネルギーリン酸(HEP)の濃度は、全停止のためにおよそ10秒余計に要した21℃群の心臓でのより多くのエネルギー消費におそらく起因して、21℃の心筋保護心臓と比較して4℃において有意に高かった(P < 0.001)。どちらの群も、図17Bに示されるように、貯蔵中にCPおよびATPを活発に合成した。貯蔵終了時のHEPの総濃度は4℃の心臓において有意に高かった(P < 0.01)が、0時間時の値に対する5時間時の値の正規化から、図17Cに示されるように、貯蔵終了時4℃の心臓におけるよりも21℃の心臓における高いHEP利用可能性が実証された。
エクスビボ心機能研究 - 再かん流時の冠状動脈流
同様のかん流圧での初期の順行性かん流時の、大動脈を通る冠状動脈流は、4℃群よりも21℃の心臓において有意に大きかった(P < 0.05) (表4-1)。両群における心臓は、かん流の開始時に直ちに、緩徐な4室収縮を実証した。冠状動脈流は、心臓が激しく収縮し始めると、システム温度が30℃に上昇すると最初は減少した。システム温度が37℃に上昇するにつれて、圧力も流れもともに増加した。冠状動脈流は37℃で両群において最も高かった(表4-1)。
(表4−1)SOMAH装置のシステム温度の上昇を伴う差温心筋保護心臓における冠状動脈流(ml/分)
Figure 2018521027
P1, P2, P3−それぞれの温度での大動脈根圧
F1, F2, F3−それぞれの温度での冠状動脈流
4℃から有意
再かん流時の酵素の放出
CK、ASTおよびcTnI放出の速度は、かん流期間中4℃の心臓において増加した(図18)。CKおよびcTnIの両方の放出は、かん流時間とともに有意に増加したが、ASTはそうでなかった。対照的に、同じ期間中に21℃の心臓におけるこれらの3種の酵素の放出の一次的減少が認められた(図18)。しかしながら、ASTではなく、CKおよびcTnIの放出は、4℃の心臓によるよりもかん流の開始時の21℃の心臓により有意に大きかった。
再かん流心臓における代謝
以前の所見(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor R, Thatte HS: Subnormothermic preservation in SOMAH: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014)と一致して、酸素消費の増加および再かん流90分のピーク性能時の乳酸比の反転により実証された、4℃および21℃の両方の心筋保護群での再かん流時の嫌気性から好気性への代謝の速やかな切り替えが認められた(図19Aおよび19B)。酸素抽出、乳酸生成および利用は、ピーク性能時に両群において定常状態に達し、有意差はなかった。しかしながら、再かん流時に、21℃群の心臓は、作動中の心臓において強力なHEP合成を実証した。対照的に、生成は4℃の心臓において減弱し、HEPは実験の過程において減少し続けた。ATP、CPおよび総HEPの比(かん流後/かん流前)は21℃の心臓において、それぞれ1.10、1.97および1.17であったが、これはHEPアッセイ法のためにかん流後生検をとった、実験終了時の4℃の心臓において観察された0.47、0.32および0.38の比よりも有意に大きかった(p < 0.01)。
再かん流時の機能的再生
心房および心室の両方の即時の自発的活動が、両方の群において再かん流の開始時に明らかであった。温度が上昇するにつれて、一回の心臓除細動の後に約37℃で心室収縮力がピークに達し、また、正常な電気活動および電気機械結合を洞調律において両群で確立した。21℃の心筋保護群において5つの心臓のうち4つは、一回の心臓除細動で洞調律に戻り、さらなる強心法を必要としなかったが、4℃の心筋保護群における5つの心臓のうち2つは、最適な機能を維持するためにエピネフリンの単回投与をさらに必要とした。興味深いことに、両方の群における心臓は実験の全体を通じて柔軟なままであり、LVおよび中隔の厚さの不変、表4-2により示されるようにピーク性能時に浮腫を示さなかった。2Dエコーによって得られた心機能パラメータについての4℃心筋保護群と21℃心筋保護群との比較データは、インビボで観察されたものと同様であった(表4-2)。21℃でSOMAH心筋保護を受けた心臓はいっそう良好な回復を有するようであったが、2つの群の機能パラメータには有意差はなかった。
(表4−2)手術中のならびに4℃および21℃ SOMAH心筋保護群の心臓における体外再かん流によるピーク性能時の心機能パラメータ
Figure 2018521027
本実施例は、心筋保護のために4℃の標準温度の代わりに21℃で晶質性SOMAHを用いることにより、SOMAH中で周囲温度にて保存された心臓の品質をさらに改善できるかどうか、および最適機能へのインビトロでのその最終的蘇生を評価するために行われた。
50 mmHgほどに低い心臓保護かん流圧で停止された心臓において心筋浮腫が報告されている(Mehlhorn U, Geissler HJ, Laine GA, Allen SJ: Myocardial fluid balance. Eur J Cardiothorac Surg. 2001, 20: 1220-1230)。しかしながら、現在および過去の研究では、心筋保護温度に関係なく、100 mmHgの晶質性SOMAH心筋保護注入圧が常に用いられているが、心臓のいずれにも浮腫は見られなかった(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor PR, Thatte HS: Sub-normothermic preservation of donor hearts for transplantation using a novel solution, SOMAH: a comparative pre-clinical study. J Heart Lung Transplant. 2014, 33 (9): 963-970)。SOMAH心筋保護は、心臓性浮腫からの保護およびエネルギー代謝のための基質の提供という点で、血液心筋保護の全ての利点を提供し、また、明確な外科的領域を提供する。さらに、SOMAH溶液中にカルシウムの生理学的濃度を提供することにより、「カルシウムパラドックス」による心筋損傷の可能性も防止される(Yamamoto H, Yamamoto F: Myocardial protection in cardiac surgery: a historical review from the beginning to the current topics. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2013, 61: 485-496. 10.1007/s11748-013-0279-4)。さらに、再かん流傷害における不都合な、白血球および血小板の存在などの血液の欠点(Han S, Huang W, Liu Y, Pan S, Feng Z, Li S: Does leukocyte-depleted blood cardioplegia reduce myocardial reperfusion injury in cardiac surgery? A systematic review and meta-analysis. Perfusion. 2013, 28 (6): 474-483)も回避される。対照的に、他の晶質性溶液(CelsiorおよびUWS)は、最近の研究において心筋保護に用いられた際に、貯蔵された心臓における高エネルギーリン酸の喪失、再かん流時の浮腫ならびに非機能性の心臓を引き起こす可能性のある高K+媒介性カルシウム過負荷および硬直を防止しなかった(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor R, Thatte HS: Subnormothermic preservation in SOMAH: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014)。
本研究では、急速停止のため4℃の心臓においてHEPが保存され、結果として、これらの心臓において貯蔵終了時にHEPの総濃度もいっそう高かった。対照的に、K +濃度(20 mM)は2つの群において同等であったにもかかわらず、21℃の心臓は、低体温要素が存在しないために全停止に長い時間がかかり、HEPの枯渇を引き起こした。両群ともSOMAH中での貯蔵中にHEPを合成したが、HEPの機能的な利用可能性は5時間の終わりに4℃の心臓よりも21℃の心臓において大きかった(図3)。同様に、再かん流時に、21℃の心臓は、4℃の心臓とは異なり、作動中の心臓の要求を満たすためにHEPを合成し続けた。ピーク性能時に、21℃の心臓における利用可能なHEPは、4℃の心臓よりも有意に高く、実験の過程においてそうであり続けた。対照的に、4℃の心臓はエネルギー需要を維持するためにHEPを合成することができず、したがってHEPは作動中の心臓において減少し続けた。これらの結果は、周囲温度でSOMAHに保存された心臓とは異なり、重度の低体温に曝されると、これらの心臓における再かん流時にHEP合成が減弱するという以前の観察と一致する(Lowalekar SK, Lu XG, Thatte HS: Further evaluation of somah: long-term preservation, temperature effect and prevention of ischemia-reperfusion injury in rat hearts harvested after cardiocirculatory death. Transplant Proc. 2013, 45 (9): 3192-3197)。
順行性かん流は、4℃の心臓で21℃の心臓よりも有意に低く、システム温度が37℃で安定するまで高いかん流圧でさえも減少したままであった(表4-1)。理論に束縛されるわけではないが、正常温度の拍動心臓が4℃心筋保護で直面する突然のショックは、貯蔵中には解消せず、再かん流の開始によりおよび37℃への温度の上昇によって、そして潜在的には、血管拡張薬である一酸化窒素およびプロスタサイクリンの活性放出によってのみ解消する、深刻な血管収縮をもたらすというのはもっともである(Thatte HS, Rousou L, Hussaini BE, Lu XG, Treanor PR, Khuri SF: Development and evaluation of a novel solution, Somah, for the procurement and preservation of beating and non-beating donor hearts for transplantation. Circulation. 2009, 120: 1704-1713)。血管拡張の増加、より大きな冠血管開放および好ましい代謝状態は、急速な栄養供給とH+排出をもたらし、21℃の心臓において強力なHEP合成と迅速な機能回復を引き起こす。これらの心臓は、一回の心臓除細動で洞調律に戻り、インビボ範囲に迫る心臓および血行動態パラメータを急速に達成し(表4-2)、いずれの強心法も要しなかった。その一方で、4℃の心臓は、37℃に加温した場合にのみ強い収縮を示し、一部の心臓では心拍出量を維持するために、インビトロでヒト心臓において報告されたものの10分の1に過ぎなかったが、さらなる電気的除細動および/または変力的介入を必要とした(Hill AJ, Laske TG, Coles JA, Sigg DC, Skadsberg ND, Vincent SA, Soule CL, Gallagher BA, Iaizzo PA: In vitro studies in human hearts. Am Thorac Surg. 2005, 79: 168-177)。
心臓酵素の放出は、再かん流時に両方の群において観察された。心筋細胞からの酵素放出の重要な機構は、作動中の心臓におけるインスリンのような外部刺激および代謝要求の増加に応じた、HEP依存性プロセスによる、細胞内小胞輸送中のサイトゾル漏出および(グルコース輸送体; GLUTを担持する小胞などの)細胞膜への取り込みによるものである(Ferrera R, Benhabbouche S, Bopassa JC, Li B: One hour reperfusion is enough to assess function and infarct size with TTC staining in Langendorff rat model. Cardiovasc Drugs Ther. 2009, 23: 327-331)。したがって、細胞酵素の放出は、心筋細胞に対する実際の損傷がない場合でさえも起こりうる(酵素パラドックス)。理論に束縛されるわけではないが、再かん流の開始時の21℃心筋保護群における酵素放出の初期バーストは、システム温度および心収縮性の増加とともに代謝要求が増すため、小胞輸送のための貯蔵終了時のHEP利用可能性がより高くなることから生じた可能性が高い(図17)。しかしながら、代謝定常状態に達すると、酵素のさらなる放出は一時的に弱められた。対照的に、4℃の心臓において、酵素の放出速度は、これらの機能に対してより多くのHEPが利用可能になるにつれて時間とともに増加した。本データは酵素放出の進行を区別しないとしても、両方の群の心機能パラメータが類似し、インビボで観察される生理学的値に近づくという事実(表4-2)から、SOMAH心臓による酵素の放出は組織損傷ではなく代謝のマーカーであり、ゆえにこれらの心臓が移植時に良好に機能するものと示唆される。
実施例5
本実施例は、肝臓のリン酸合成を維持し、長期間の静的貯蔵依存性多細胞障害の進行を停止させる能力において、新規貯蔵溶液Somahを評価するために設計された。本予備研究の目的は、低温貯蔵72時間の期間中インビトロでDCDブタ肝臓の回復を維持および増強する能力において、現在臨床的に使用されているウィスコンシン大学溶液(UWS)とのSomahの比較効能を評価することであった。移植機能を評価するための将来の移植研究の実現可能性を試験するために、制限された体外肝再かん流およびSomah貯蔵肝の機能評価も行った。
材料および方法
表5-1のCoStorSol (UWS) (Preservation Solutions Inc, Elkhorn, WI)およびSomah (Somahlution, LLC, Jupiter, Fl)の貯蔵特性を比較した。他の全ての化学物質は、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)から入手した。血液ガス、電解質、乳酸、グルコース、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)およびクレアチンキナーゼ(CK)酵素を測定するためのVetScan iStat、VetScan VS2、CG4+、CG8+、Large Animal Profile、Comprehensive Diagnostic Profile cartridgesは、Abaxis Inc (Union City, CA)から購入した。
(表5−1)Somah臓器保存溶液(pH 7.5)およびウィスコンシン大学溶液(UWS; pH 7.8)の組成
Figure 2018521027
肝臓貯蔵およびサンプル調製
本研究は、動物実験小委員会(Animal Studies Subcommittee) (IACUC), VA Boston Healthcare Systemが承認したプロトコルにしたがって、それぞれ体重が40〜50kgの14頭の雌性ブタで行われた。動物を、それぞれ動物7頭の2群に分けた。心臓死および心臓摘出の60±10分後に、全肝臓を切除した。肝臓をUWS (UWS肝臓)またはSomah溶液(Somah肝臓)中4℃で72時間貯蔵した。溶液は貯蔵中に交換されなかった。撮像およびバイアビリティの生化学的評価のために、0、6、24および72時間の時点で肝生検標本を得た。UWSおよびSomah溶液を、代謝モニタリングのためにならびに肝臓機能に関連する他のアッセイ法および化合物のために1、6、24および72時間の時点でサンプリングした。
外科手術
全身麻酔をテラゾール4〜6mg/kgおよびキシラジン2mg/kgの筋肉内(i.m.)注射で誘発した。挿管後、動物を静脈内(i.v.)プロポフォール(10mg/kg/時間)、レミフェンタニル(40〜60μg/時間)およびニムベックス(シサトラクリウム) 10〜20 mgで維持し、機械的に換気した。大動脈をクロスクランプし、心停止し、他の実験のために記述のように心肺ブロックを摘出した((Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor R, Thatte HS: Subnormothermic preservation in SOMAH: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014)。腹部正中切開後、肝動脈上の腹部大動脈にカニューレを挿入し、肝上部下大静脈(IVC)を経て戻ってきたかん流液が澄明になるまで、それぞれ100mmHgおよび300ml/分の圧力および流速で2Lの氷冷UWSまたはSomah溶液を用いて腹部臓器をフラッシングした。摘出は肝臓全摘出で終えた。アイスボックス中4℃に維持された保存溶液を含有するプラスチック袋に肝臓を移し、さらに分析するために30分以内に研究室に輸送した。保存溶液を含有する貯蔵ボックスに肝臓を移し、4℃でさらに72時間貯蔵した。
ATPおよびクレアチンリン酸アッセイ法
肝組織抽出物中のATPおよびクレアチンリン酸(CP)を測定した。簡潔に述べると、肝組織20mgを氷冷した0.4M過塩素酸400μLで懸濁し、30秒間のホモジナイズを2回実施した。ホモジネートを1970gの遠心力および0℃で10分間遠心分離した。上記のとおり、上清のアリコットを、氷冷した等量の0.4M KHCO3溶液で中和して遠心分離した。上清を-80℃で貯蔵し、ATPおよびCP測定を行った。ペレットを等量の0.1M NaOHで溶解して遠心分離し、タンパク質アッセイ法に使用した。製造業者が提供するプロトコルにしたがって、生物発光アッセイキット(Sigma- Aldrich and GloMax-Multi+ Detection System, Promega)を用いてATPおよびCPを測定した。
エクスビボ研究のための血液の調製
全身ヘパリン化した血液を術中に採取し、白血球除去し、4℃で貯蔵した。実験の開始前に、Somah溶液(ここではかん流液)を用いてヘマトクリットを20%に調整した。それぞれ、10%デキストロース、KCl、CaCl2およびNaHCO3を用い、かん流液のpH、グルコース、K+、Ca2+およびHCO3-をブタ血中レベル(それぞれ7.5; 100 mg/dl; 3.7、1.38および32 mmol/l)に応じて調整した; 必要に応じてガスを調整した。
エクスビボかん流
肝臓をSomah中4℃で72時間貯蔵した(n=3)。肝動脈および門脈を同定しカニューレ挿入した。肝臓を、心臓のエクスビボ蘇生に用いた特注のSomah装置に取り付けたポリプロピレンかん流チャンバ内に保持した。かん流液のpH、温度、pO2、pCO2、K+およびHCO3-apop、圧力および流速の変化のリアルタイムモニタリングのために、特注のソフトウェア(Comdel Inc, Wahpeton, ND)を備えた酸素供給器、熱交換器、CDIモニタおよびデータ取得装置をシステムに組み入れた。Somah装置リザーバにかん流液2 Lを満たした。冷Somah 2 Lを用いて門脈から肝臓を穏やかにフラッシングし、次いで肝動脈(HA)および門脈(PV)を介してSomah装置に接続した。リザーバ排出を2つの回路へ迂回させた; 第一の回路では、かん流液を8〜10 mmHg (リザーバの高さを変えることによって調整)の圧力でPVへ重力により排出させた。第二の回路では、かん流液を、酸素供給器および熱交換器を介してHAへ(80〜100 mmHgの圧力で)ポンプにより迂回させた。かん流液の温度を20分間かけて37℃に上昇させ、かん流液を、肝臓を通して次の2時間循環させた。肝かん流液は肝静脈(HV)を通ってチャンバへ排出され、別のポンプによってリザーバに戻された。HVから排出するかん流液を、以下に述べるように、アルブミン、肝臓酵素および他の代謝物について時間的にサンプリングした。UWSに貯蔵されたDCD肝臓への損傷のために、この機能評価はSomah肝臓においてのみ行われた。
代謝物および肝臓酵素の分析
流入(HA)および流出(HV)かん流液において血液パラメータを評価した。CDIモニタ、VetScan iStatおよびVetScan VS2を利用して、生化学パラメータ、血液ガス、アルブミン合成ならびにアルカリホスファターゼ(ALP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)およびクレアチンキナーゼ(CK)を含む肝臓酵素について判定した。
病理組織検査
SomahまたはUWSのいずれかに貯蔵された肝臓の組織生検を、0、6、24および72時間の貯蔵時点でとり、10%ホルマリンで固定し、病理組織検査(10μの切片; ヘマトキシリンおよびエオシン染色)のために処理を行った。画像は、オリンパス社製顕微鏡および画像分析システム(BX51TRF; Olympus America Inc, USA)を用いて入手および分析した。画像は、病理組織検査について3人の独立した観察者により盲検的に評価された。統計分析: 測定およびデータ抽出は、盲検下で行った。2群(UWS 対 Somah、各群n = 7; 静的貯蔵)で比較を行い、臓器機能に及ぼす2種類の溶液の影響を評価した。1方向分散分析(ANOVA)を用いて、さまざまなアッセイ法で定量化した初期値を、以降の時点に各群で得た数値と比較した後、ダネットの多重比較検定を実施し、続いてt検定で対応のある群間比較分析を行った。95%信頼水準(p<0.05)を認めた場合は、統計学的に有意であると容認した。別段の指示がない限り、数値は全て平均±SEMとした。分析は、全て0.05の有意水準を使いGraphPad Prism 6 (バージョン6.1)を用いて行った。
結果
肉眼所見
UWSに入れて4℃で貯蔵したところ、肝臓の肉眼所見が急速に変化し、貯蔵後の最初の1時間以内に変色した状態となり、その後も経時的に劣化が続いた(図示せず)。それとは対照的に、Somahに入れて貯蔵した肝臓では、時間を72時間に延長して4℃で貯蔵した後も、色は摘出した新鮮肝臓(対照)と同等であった(図20)。これに加えて、貯蔵中のSomah肝臓に重量の増加はみられなかった(図示せず)。
肝細胞
多くの弱拡大の視野において、UWSで貯蔵した肝臓では、核クロマチンの凝縮および肝細胞の核濃縮変化を認めたが、Somahではみられなかった。二核性および倍数体肝細胞核は、UWSおよびSomahで保存した両肝臓から採取した切片で一貫して観察された。複数の走査野で慎重に撮影したところ、Somah肝臓では、近接する肝細胞の境界に明らかな変化を認めず、顕著な胆汁うっ滞または胆管の拡大はみられなかった。72時間時点にUWSから採取した切片では、広範な空胞化による肝細胞の変性が顕著であったが、Somah肝臓にはみられなかった(図21)。
胆管および小胆管
UWS肝臓では、門脈三管の小胆管および大胆管を裏打ちする核に高度な濃縮がみられたため、胆管細胞のアポトーシスまたは壊死が示唆された。これに対して、Somahで72時間貯蔵した肝臓では、胆管および小胆管の外観は、核の位置が一律で変化はみられず、核の異質性も十分に維持されていた(図21)。また、UWS肝臓では、6時間後という早い時点で、胆管上皮剥離および小胆管の基底部に位置する核の崩壊を伴う粘膜の脱落を認めた(図22)。一方のSomah肝臓では、貯蔵後72時間時点でも、このような胆管上皮剥離はみられなかった(図21および22)。
貯蔵した肝臓における代謝
新たに再構成したUWSおよびSomahの開始時点のpHはアルカリ性であるが(pHは、UWSのほうがSomahより高い)、貯蔵中のあらゆる時点でSomah (6.8〜7.0)のほうがUWS (7.3〜7.8)より酸性度が高かった。UWSでは、pHの低下率が低かったにも関わらず、乳酸の増加率が高かった。乳酸の生成は、溶液のpHの急激な低下に対応したものではなく、いずれの溶液も緩衝能が高いことが原因であると考えられる。UWSでは、乳酸値がSomahより1.5倍多く増加し、24時間と72時間で有意差がみられた(p<0.05) (図23Aおよび23B)。
図23(下パネル)に示すとおり、UWSおよびSomah溶液中のグルコース濃度の上昇は同等であった。0mg/dLであったUWS中のグルコース濃度は、72時間貯蔵終了時点で140mg/dLと高値に上昇した。同様に、Somahでも同期間におけるベースライン値が180mg/dLであったグルコース濃度が、320mg/dLと1.72倍に上昇したことから、グリコーゲンが分解される量のほうがグルコースの取り込み量より多いことが示された。酸化的リン酸化は、温度の低下によって減衰する。開放システムであったため、水中の大気酸素の溶解度は温度と逆相関し、SomahおよびUWSの両液は4℃で酸素が過飽和した状態であり、貯蔵開始時点のpO2は200±13mmHgであった。したがって、時間を延長して低体温貯蔵したときの肝臓による酸素の使用を酸素消費量で明確に示すことができず、たとえあったとしても、それはゼロ次反応速度論に基づくものであった。
むしろ臓器非存在下のSomahまたはUWS溶液では、溶存CO2の指標であるpCO2に変化はみられず(図示せず)、現時点の研究では、貯蔵する肝臓が入っているSomah中のpCO2が72時間貯蔵中に有意に上昇したため、Somahで貯蔵したDCD肝臓では、酸化的代謝が行われることが示された。これとは対照的に、肝臓貯蔵中のUWSでは、72時間貯蔵期間中のCO2濃度が有意に低く、その後も変化はみられなかった。肝臓を浸漬し、研究室に搬入してから30分経過した時点に測定されたUWS中のpCO2 (6.30±0.38mmHg)は、24時間貯蔵時点では7.33±0.48mmHg、72時間貯蔵時点では9.27±0.89mmHgとわずかであり、有意な増加はみられなかった。これに対してSomahでは、肝臓の初回浸漬後30分以内は10.8±1.13mmHgであったpCO2が、1時間時点で15±1.45mmHg、72時間貯蔵終了時点で27±1.14mmHgと有意に増加したため、代謝が経時的に亢進することが示された。Somahの30分時点のpCO2のほうがUWSより高いことは、Somahでは貯蔵開始時点から代謝が活発であることを示している。Somah中の重炭酸塩がこのpCO2の上昇に寄与する可能性は、72時間貯蔵中のHCO3濃度がほぼ一定で変化しない事実(4.23mM/L)によって否定される。一方、72時間貯蔵したUWS中のHCO3濃度は7.30mM/Lから5.33mM/Lに低下し、これは理論に束縛されるわけではないが、当該貯蔵期間中にUWSでみられたpCO2の有意な上昇に寄与すると考えられる(図25)。もう一つの可能性として、乳酸生成における嫌気的解糖が、Somah中のpCO2の上昇に関与していることも考えられる(肝臓貯蔵中のUWSでも軽度の上昇を認めた)。これらのデータは、少なくとも細胞内代謝が変化なく維持されていることを示唆している。
貯蔵中の肝臓におけるリン酸の測定
UWS肝臓では、72時間貯蔵中にATP、CPおよび総リン酸濃度が有意に低下した(p<0.05) (図25)。貯蔵中のUWS肝臓では、総リン酸濃度が経時的に低下し、最初の6時間で32%、72時間貯蔵終了時点までに50%低下した。これに対して、Somah肝臓では、保存経過全体を通して、ATP、CPおよび総リン酸値に顕著な変化はみられなかった。Somah肝臓では、72時間時点に総リン酸濃度の上昇を認め(図25)、これは代謝物であるCO2と同等であった。
貯蔵中の肝臓酵素の放出
貯蔵溶液において、肝組織損傷マーカーであるALT、ASTおよびCK酵素の時間依存的な放出が観察された。UWSで肝臓を貯蔵したところ、Somahで貯蔵した肝臓と比較して、3種類全ての酵素の放出が有意に増加した(p<0.05) (図26)。
Somah肝臓の機能評価
Somahで(72時間)貯蔵した肝臓を、37℃で血液(かん流液)を用いて2時間再かん流し、機能を評価した。再かん流した肝臓による酸素消費量は、30分時点で38%、120分時点で64%と有意に増加した(p<0.05)。これに付随して、かん流液に放出された乳酸濃度は、30分時点で11%、2時間終了時点で41%低下したため、代謝が嫌気性から好気性に変わることが示唆された。
再かん流中の経時的な肝臓酵素の放出に有意差はみられなかった(図27)。2時間終了時点のALP (15.33±0.96)およびγ-GT (17.5±1.06U/L)は、いずれも生理的濃度の範囲内であった。しかし、かん流液中のAST (2151±81)、ALT (228±32)およびCK (1428±205U/L)濃度は、再かん流終了時点に上昇した。Somah肝臓では、再かん流後30分以内にアルブミンの合成および放出が有意に増加し(p<0.03)、2時間にわたって経時的な増加を認めた(p<0.01) (図28)。かん流後のSomah肝臓では、胆汁の合成および放出も経時的に増加した(データ未公開)。
本実施例の目的は、ブタDCD肝臓を長期体外保存した「Somah」およびUWS溶液を比較することである。本研究によって、SomahがDCD肝臓の機能を保護する上で効率的な貯蔵特性は、UWSより優れていることの実証が得られた。理論に束縛されるわけではないが、Somah特有の処方によって、体外貯蔵中の臓器のエネルギー状態が経時的に維持される、および/または増強されるため、細胞の恒常性および構造的完全性が強化され、その結果として、貯蔵期間中に摘出臓器の全体的な修復度および回復度が効率的に向上するとの仮説を立てた。
本研究の結果は、DCD肝臓の進行性組織損傷は、貯蔵溶液の成分によって防止できる可能性があることを示している。UWS肝臓では、6時間という早期に肝細胞の核濃縮および胆管上皮細胞の反応性変化を認めたが、Somah肝臓では72時間時点でもみられなかった。また、本研究によって、種々の胆管損傷に関する詳細な結果が示されたが、これらの損傷が報告されたのは早期のみで、ごく少数であった(Kochhar et al., 2013, World J. Gasterenterol., 19:2841-46)。UWSで貯蔵したDCD肝臓では、小胆管および大胆管の両部位に変性変化がみられ、これが非吻合部胆管狭窄および胆管機能不全の原因となると考えられる。
これによって、移植後の生着不全(Kochhar et al., 2013, World J. Gasterenterol., 19:2841-46)および死亡率の上昇(Yan et al., 2011, J. Surg. Res., 169:117-124)が生じることが報告されている。理論に束縛されるわけではないが、UWS肝臓において、K+高値および虚血によって細胞損傷が促進されたと考えられる(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor PR, Thatte HS. Subnormothermic preservation in somah: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014; 14:2253-62)。さらに、酸性に傾いたpHは、肝細胞および類洞内皮細胞に恒常的に有効であり(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor PR, Thatte HS: Sub-normothermic preservation of donor hearts for transplantation using a novel solution, SOMAH: a comparative pre-clinical study. J Heart Lung Transplant. 2014, 33 (9): 963-970)、SomahのpHは、UWSと比較して、保存期間を通して相対的に酸性に維持されることが報告されている。酵素アッセイ研究では、Somahに貯蔵した肝臓の肝細胞損傷がUWSより有意に減少したことが示された。
低体温かん流した臓器の貯蔵中の解糖は、主要なエネルギー源であると考えられ、pO2は150mmHgであったが(Opie LH, Lopaschuck GD (2004) Fuels: aerobic and anaerobic metabolism. In: Opie LH, ed. Heart physiology: From Cell to Circulation. 4th ed. Philadelphia, PA: Lippincott, Williams and Wilkins 306-354)、Somah中のジクロロ酢酸(DCA)は、解糖で生成されたピルビン酸をクレブス回路に組み込むと考えられるため、さらにATPの合成が促進され、リン酸が保持される(図25)。また、Somahで貯蔵した肝臓では、ピルビン酸の酸化的代謝が亢進するため、DCAも乳酸の蓄積を防止する。これに加えて、細胞のグルコースの取り込みを促進するインスリンは、肝再生因子であり、肝臓の超微細構造および再生能の維持に不可欠である。UWSより2.5倍高い濃度の100U/Lを使用すれば、Somah溶液でこのインスリンの能力を利用することができる。したがって、UWS肝臓では、DCA非存在下の閾値を超えて乳酸が蓄積し、インスリン濃度がより低くなることが、この群でみられた比較的な変化に寄与している。
摘出臓器中のリン酸が貯蔵中に不足すると、臓器に不可逆的な変性変化が生じる。UWSおよびSomah溶液に入っている肝臓では、貯蔵中にみられたグリコーゲン分解に依存するグルコース濃度の上昇は同等であったが、リン酸の蓄積は、UWSでは低下したのに対して、Somahでは促進された。理論に束縛されるわけではないが、これはUWS肝臓が実際に異化状態にあるため、リン酸が不足することを示唆している。これとは対照的に、Somah肝臓では、グルコースの酸化的リン酸化が促進されるため、嫌気的解糖単独より15倍多くリン酸が生成される(グルコース分子と同等) (Brown, Biochem J, 1992, 284:1-13)。また、低体温かん流中の肝臓のATP値が高いことは、再加温時の酸化ストレスが弱いことを示している(Belzer F, Southard JH, Transplantation. 1988 Apr;45(4):673-6)。
臓器を静置保存することは、移植前の肝臓の外植片の維持において、常に重要な構成要素であると認識されている(Pegg et al., Transplantation, 1981, 32:437-43)。数は限られるが、複数の研究でUWS溶液を用いた肝臓の貯蔵が及ぼす悪影響に関する取り組みが行われた(Startzl et al., Hepatology, 2010, 5:1869-84)。しかし、これはSomahで保存したDCD肝臓では生じることはないようである。予備的機能研究は、代謝が直ちに好気性から嫌気性に変わったことを示しており、心臓でも同様にみられた所見によって裏付けられた(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor R, Thatte HS: Subnormothermic preservation in SOMAH: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014)。同様に、再かん流したSomah肝臓では、アルブミンの合成および胆汁の放出が顕著に増加したため、長期保存後も代謝および機能が維持されることが示唆された。UWSで貯蔵した肝臓では、これらの臓器に肉眼的な損傷を認めたため、機能の回復に関する評価は行われなかった。
Somah肝臓では、胆管系が開口した無傷の状態が維持されていたことから、明らかな損傷はないことが確認された。特に臓器のエネルギー状態が維持されている場合、肝細胞が修復される、または再生することは周知の事実である。胆管系機能不全は、PNFおよびDGFに至る(Kochhar et al., 2013, World J. Gasterenterol., 19:2841-46)。Somahを用いたエクスビボでの貯蔵によって、胆管機能異常を防止することができると考えられる。
実施例6
昨年に腎臓移植が必要となったものの受けることができなかった患者は100例あたり86例であり、待機リストに追加される移植適応患者は増加を続けている[National Kidney Foundation; http://www.kidney.org]。これは、過去数十年で臓器移植が大幅に進歩したにも関わらず起きていることであり、腎代替療法(血液透析および腹膜透析)の使用は、重度の衰弱性および/または生命を脅かす合併症の原因となるのみでなく、高頻度の通院を要するため、患者の日常生活の妨げとなり、社会への経済的負担にもなっている。
2015年に、米国で腎臓移植を受けた患者は14,000例、1ヵ月間で腎臓移植待機リストに追加された患者は2,500例であり、本稿執筆時点の腎臓移植待機患者は約100,000例である。平均待機期間は、3〜5年である。移植腎の65%は、死亡したドナーから提供されたものであるが(DCD; 心停止後の提供)、これらの移植腎で臓器移植後臓器機能障害(DGF)が起こる可能性は、標準的適応(standard-criteria)ドナーより2倍高く、早期機能不全(primary non-function, PNF)の発症率も上昇し、全移植腎の生着数は半減する。温虚血および/または冷虚血への移植臓器の曝露は、臓器移植において絶対的に避けられないことであるが、その結果としてこの期間に生じる細胞/組織損傷によって、移植後の腎機能は期待を下回る。上記のデータは、保存技術を進歩させることで、移植するDCD腎臓の質が向上し、それによって期待できる長期患者転帰がさらに改善される可能性が非常に高いことを示している。
本実施例は、DCD腎臓の長期貯蔵に関して、新規臓器保存溶液であるSomahの能力を、ウィスコンシン大学(UW)溶液と比較評価したものである。
材料および方法
腎臓の摘出術
施設内動物実験委員会が承認したプロトコルにしたがって、体重が40〜50kgの雌性ヨークシャーブタを使用した。ブタをテラゾール4〜6mg/kgの筋肉内注射およびキシラジン2mg/kgの筋肉内注射で鎮静させて挿管し、人工呼吸器に接続した。麻酔は、プロポフォール(10mg/kg/時間)およびレミフェンタニル(40〜60μg/時間)の静脈内投与によって維持した。術前10分前に、麻酔薬のシサトラクリウム(10〜20mg静脈内投与)を投与した。胸骨正中切開後に全身ヘパリン化(300mg/kg)を行い、大動脈根にカニューレを挿入した。記述のとおり、大動脈遮断後に氷冷した心筋保護液(20mM K+)を注入して心臓を停止させ、他の実験を行うため心臓を摘出した[6,7]。心収縮が完全に停止した時刻を、他の臓器の温虚血開始時点として記録した。腹部正中切開後、肝動脈上の腹部大動脈にカニューレを挿入し、下大静脈(IVC)を経て戻ってきたかん流液が澄明になるまで、100mmHgの圧力および300mL/分の流速で2Lの氷冷したUW (CoStorSol; Preservation Solutions Inc., Elkhorn, WI)またはSomah溶液(Somahlution Inc., Jupiter, FL)を用いて、腹部臓器をフラッシングした。最初に、他の実験で使用するため、肝切除術を行って腹部臓器を摘出し、その後、慎重に腎茎を離断して両側腎全摘術を行った。腎臓をすみやかにSomahまたはUW溶液中に移し(表6-1)、4℃で72時間静置貯蔵した。0時点、6、24および72時間時点に腎臓の生検標本を採取し、病理組織検査、HEPおよびウエスタンブロットアッセイ法を行った。0時点は、貯蔵後1時間(初回生検前に動物研究施設から実験室に腎臓を移動する際に要した時間)に相当する。
(表6−1)SomahおよびUW溶液の組成
Figure 2018521027
病理組織検査
組織をホルマリンで固定し、パラフィン包埋後に厚さ10μの切片を作製し、パラフィンを融解させてスライドガラスの上に載せ、さらに処理を行った。組織切片を乾燥させて、エタノール濃度を逐次上昇させた後、スライドをキシラジン除去洗浄剤に浸漬させてからヘマトキシリンおよびエオシンで染色を行い、カバーガラスを載せて顕微鏡で観察した。画像は、オリンパス社製顕微鏡および画像分析システム(BX51TRF; Olympus America Inc, USA)を用いて入手および分析し、盲検下で独立した観察者が評価を行った。
ATPおよびクレアチンリン酸アッセイ法
記述のとおりに腎組織抽出物中のATPおよびクレアチンリン酸(CP)を測定した[4-7,10]。簡潔に述べると、腎組織20mgを氷冷した0.4M過塩素酸400μLで懸濁し、30秒間のホモジナイズを2回実施した。ホモジネートを1970gの遠心力および0℃で10分間遠心分離した。上記のとおり、上清のアリコットを、氷冷した等量の0.4 M KHCO3溶液で中和して遠心分離した。上清を-80℃で貯蔵し、ATP/CP測定を行った。ペレットを等量の0.1M NaOHで溶解して遠心分離し、タンパク質アッセイ法に使用した。製造業者のプロトコルにしたがって、生物発光アッセイキット(Sigma-Aldrich and GloMax Multi+Detection System, Promega)を用いてATP/CPを測定した。
ウエスタンブロッティング
腎組織20mgを、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する抽出緩衝液で懸濁した。組織を30秒間ホモジナイズし、16,100×gの遠心力で10分間遠心分離した後、上清を回収した。種々のサンプルから回収した等量の総タンパク(30μg)を、5% β-メルカプトエタノールを含有するLaemmliサンプル緩衝液と混合し、100℃で3分間加熱した。タンパク質を10% SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜にエレクトロブロットした。記述のとおり[4]、タンパク質は抗体(抗カベオリン、eNOS、vWFおよびEPO)ならびに化学発光法を用いて同定し、バンドの密度をベータアクチンに対して正規化した。
代謝分析
VetScan iStatおよびVetScan VS2を用いて貯蔵中に、SomahおよびUWにおけるpHと乳酸の変化、グルコース代謝、酸素および二酸化炭素濃度(pO2およびpCO2)を、0時点(1時間、上記参照)、6、24および72時間時点で評価した。
統計分析
測定およびデータ抽出は、盲検下で行った。2群(UW 対 Somah、各群n = 7)で比較を行い、2種類の溶液の影響を評価した。1方向分散分析(ANOVA)を用いて、さまざまなアッセイ法で定量化した初期値を、以降の時点に各群で得た数値と比較した後、ダネットの多重比較検定を実施し、続いてt検定で群間比較分析を行った。95%信頼水準(p<0.05)を認めた場合は、統計学的に有意であると容認した。別段の指示がない限り、数値は全て平均±SEMとした。分析は、全てGraphPad Prism 6 (v6.1)を用いて行った。著者らは、データを閲覧し、それらを統合する責任をすべて有していた。全ての著者が、原稿の記述を読み、その内容に同意した。
結果
腎臓の肉眼形態
4℃で1〜3日間浸漬した状態で静置貯蔵した腎臓を観察した。UWで貯蔵した腎臓は、斑点を伴うくすんだ色の外観を呈していたことから(図1a)、臓器のうっ血が示唆された。これとは対照的に、Somahで貯蔵した腎臓は健康な外観を呈しており、貯蔵3日後も色は一様であり、形態学的にも変化はみられなかった(図1d)。
腎臓の組織形態
貯蔵溶液の種類を問わず、観測時点にあらゆるDCD腎臓の顕著な間質性浮腫はみられず、腎組織の構造は、全体的に十分維持されていた(図1b、1c、1eおよび1f)。尿細管内腔の正常な非結晶性物質は、あらゆる時点に近位尿細管(PCT)で観察され、貯蔵期間に伴って増加することはなかった。遠位尿細管(DCT)では、UWおよびSomahで保存した腎臓のいずれにおいても、軽微〜中等度の上皮剥離が顕著であった72時間時点を除く全ての時点で壊死組織片はほとんどみられなかった(図1cおよび1f)。両液ともあらゆる時点で腎糸球体の細胞性は正常であり、ボーマン嚢の内腔も正常な外観および連続的な壁側上皮を認めた(図1b、1c、1eおよび1f)。
UWおよびSomahで貯蔵した腎臓では、いずれにおいても深色効果(hyperchromaticity)の増大を伴って、時間依存的に尿細管上皮細胞の核の異質性が徐々に消失し、細胞縁の消失がみられたことから、尿細管上皮の損傷が示唆された(図1cおよび1f)。しかし、これらの変化の程度は、UWで貯蔵した腎臓のほうが有意に高かった(p<0.05)。0時点、6、24および72時間時点に高度な深色効果を認めた(PCT/DCTの)上皮細胞核は、UW腎臓ではそれぞれ平均3.5%、24.4%、39.7%および37%、Somah腎臓ではそれぞれ4.4%、6.2%、10.9%および11.6%であったことから、Somahで貯蔵したDCD腎臓の腎尿細管上皮細胞は、UWで貯蔵した腎臓より長期間虚血に耐えることができることが示唆された。
貯蔵した腎臓における代謝
体外貯蔵中に代謝機能を測定し、DCD腎臓の生理学的/生化学的バイアビリティを評価したところ、UW群とSomah群では活発な代謝に差がみられることが示された。よりアルカリ性が高い(UWではさらに高かった) pHから始めて溶液を新たに再構成したところ、SomahではpHの時間依存的低下が顕著であり、UW (7.5〜7.4)より酸性度が高い状態(6.8〜7.2)が維持された(図30A)。UW溶液ではグルコース値が一時的に上昇したため、グリコーゲン分解が示唆されたが、Somahでは6時間時点とそれ以降に比較的有意なグルコース値の低下がみられたことから(p<0.05)、Somahでは腎組織/細胞でグルコースが使用されることが示された(図2B)。反対にUWでは、72時間時点の乳酸値の上昇率がSomahより有意に高かった(p<0.05) (図30C)。
本発明者らの開放実験システムにおいては、溶液中の大気酸素の溶解度は温度と逆相関し、酸素消費量はゼロ次反応速度論に基づくものであること、SomahおよびUWのいずれも4℃で酸素が過飽和した状態であったこと、ならびにあらゆる時点のpO2は200±13mmHgであったことから(図30D)、腎臓による酸素の使用を明確に示すことはできなかった。しかし、UWとは対照的に、Somahでは貯蔵期間を通してpCO2が有意に低く(1時間時点:7.28±0.40mmHg、72時間時点:7.50±0.48mmHg)、SomahではDCD腎臓貯蔵後1時間以内という初期にpCO2が有意に上昇し(p<0.01) (初期の腎臓浸漬後は5.8±1.15mmHgであったが、17.00±0.45mmHgに上昇した)、72時間にわたって一貫して高値であったため、貯蔵期間開始直後から酸化的代謝が行われることが示唆された(図30E)。留意しなければならない点は、臓器非存在下のSomahまたはUW溶液では、溶存CO2の指標であるpCO2に変化がみられなかったことである(図示せず)。Somah中の重炭酸塩がpCO2の上昇に寄与する可能性は、72時間貯蔵中にHCO3濃度(4.86mM/L)が一定でほとんど変化しなかった事実によって否定された。反対にUWでは、72時間貯蔵中にHCO3濃度が6.30mM/Lから4.33mM/Lに低下したことから、有意ではなかったものの、これがpCO2の上昇に寄与したと考えられる(図30E)。
貯蔵した腎臓における高エネルギーリン酸
UW腎組織中のATP、クレアチンリン酸(CP)および総HEP濃度は、低体温貯蔵中に直線的かつ有意に低下した(p<0.05)。HEPは6時間以内に20%低下し(図31)、72時間貯蔵終了時点の純低下率は45%であった。一方、Somah腎臓では、ATP、CPおよび総HEP濃度に顕著な変化はみられず、ATPの低下は、同時にみられたCP濃度の上昇によって補償されたため、貯蔵している腎組織中の総エネルギーレベルは優位な状態で維持された。
血管内皮機能のマーカー
貯蔵期間全体において、Somahで保存したDCD腎臓では、カベオリン、eNOS、vWFおよびEPOの発現が十分維持された(図32)。これに対して、UWで保存した腎臓でもタンパク質のカベオリンの発現に変化はみられず、eNOS、vWFおよびEPOの発現が時間依存的に減少したことから、腎組織が損傷した可能性が示唆された。
虚血に対する耐性が最も高い内臓の一つであるため、死亡したドナー(DCD)から提供された腎臓は、世界各国の診療で一般的に移植に使用されている(Morrissey PE, Monaco AP (2014) Donation after circulatory death: Current practices, ongoing challenges, and potential improvements. Transplantation 97: 258-264)。プールされているDCD腎臓は、まだ十分に活用されていないが、移植後のDCD腎臓の予後は、レシピエントのDGFおよびPNFの発症率の観測可能な上昇ならびに移植臓器の生着期間の短縮と関連している。理論に束縛されるわけではないが、本研究の結果は、Somahを用いて貯蔵しているDCD腎臓では、エネルギーレベルが維持されることから、細胞レベルでの微小な損傷を回避できることを示唆している。
これらの結果は、UWで保存した腎臓では、摘出後にUWで臓器をかん流してから数分以内に斑状の変色を認め、72時間貯蔵中に消失することはなかったことを示している。一方、Somahで保存した腎臓では、あらゆる時点で外的形態は一様に維持された。Somahは生理食塩水に近い粘度を有しているが、UWはヒドロキシエチルデンプン(HES; 表6-1)を含有するため、粘度がはるかに高いことが特徴である(Collins GM, Wicomb WN (1992) New organ preservation solutions. Kidney Int Suppl 38: S197-S202)。HESは、貯蔵中の臓器の浮腫予防に有用であるが、これによって溶液の密度が上昇するため、臓器のあらゆる部分のかん流に干渉する可能性がある。肉眼形態は、臓器のバイアビリティの最も優れた指標ではないが、多量のかん流液を使用しても摘出時の腎臓のかん流が不均一となることで、UWの高い粘性によって腎臓が斑状に変色すると考えられる(図29)。
腎臓の病理組織検査では、UWまたはSomahで貯蔵した腎臓の皮質または髄質部位のいずれにも微細構造の肉眼的変化はみられなかった。しかし、高倍率で観察したところ、深色効果の増大を伴う核の異質性の消失を特徴とする細胞核の軽微な変化を、特に尿細管上皮細胞で認め、これはUWで貯蔵した腎臓のほうが有意に多かった。これは、摘出および体外貯蔵時に、腎臓のあらゆる部位にUWは十分に到達しなかったが(上記参照)、Somahは効果的に到達し、腎臓全体の組織に必要な栄養が供給されたため、軽微な病変の発現も回避され、移植後の転帰が改善された可能性があることと一致する。Somahでは腎組織の耐久性が向上したが、SomahのpHは、あらゆる時点でUWより酸性度が高かった。酸性に傾いたpHは、肝細胞、類洞内皮細胞および心筋細胞に恒常的に有効であることが報告されているが(Lemasters JJ, Bond JM, Currin RT, Nieminen AL, Caldwell-Kenkel (1993) Reperfusion Injury to Heart and Liver Cell: Protection by acidosis during ischemia and a ‘pH paradox’ during reperfusion. In: Hochachka PW, Lutz PL, Sick TJ, Rosenthal M (eds) Surviving Hypoxia: Mechanisms of Control and Adaptation. CRC Press, Inc, Florida 495-508)、これは腎臓の体外保存における相対的な酸性の環境の利点を初めて示した報告である。
グルコースは、代謝が活発な腎組織に重要なエネルギー源であるが、体外貯蔵中の嫌気的代謝による産物である乳酸の蓄積が促進されることで浮腫が生じると考えられたため、現在の診療で使用されている腎臓保存溶液から除外されている(Kallerhoff M, Holscher M, Kehrer G, Klab G, Bretschneider HJ (1985) Effects of preservation conditions and temperature on tissue acidification in canine kidneys. Transplantation 485-489)。腎臓の貯蔵に一般的に使用されている溶液であるUWも、グルコースは含有していない。しかし、UWでは、腎臓のグリコーゲン分解が原因と思われるグルコース濃度の内因的上昇を認めたため、グルコースが腎臓の体外貯蔵中の重要なエネルギー源であることが明らかになった。本質的に高濃度のグルコースを含有するSomahでは、これに対応したグルコース濃度の低下がみられた(表6-1)。他の溶液に関する過去の研究結果に反して、Somahでは腎臓の長期貯蔵後も、肉眼または組織学的検査で浮腫の発現は観察されなかった(Kallerhoff M, Blech M, Kehrer G, Kleinert H, Langheinrich M, et al. (1987) Effects of glucose in protected ischemic kidneys. Urol Res 15: 215-222)。
腎臓を72時間貯蔵したところ、Somah腎臓では、グルコースが代謝(嫌気的および好気的)されたにも関わらず、Somah中あらゆる時点で乳酸は常に低値であり(図30C)、これに対応して組織中のHEPが維持されたが、UWでは乳酸が有害なレベルまで大幅に上昇した(図31)。貯蔵中のSomahでは、代謝によってCO2が増加することが観察されたため、Somah腎臓における好気性酸化的リン酸化の活性が確認された。これは想定内の結果であった。なぜならば、Somahは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の活性を促進するため、ピルビン酸からアセチルCoAに変換して乳酸の蓄積を防止する化合物であるジクロロ酢酸(DCA)も含有しており(Shangraw RE, Winter R, Hromco J, Robinson ST, Gallaher EJ (1994) Amelioration of lactic acidosis with dichloroacetate during liver transplantation in humans. Anesthesiology 81: 1127-1138)、Somahで貯蔵した心臓および肝臓でも観察されることを確認したからである(Thatte HS, Rousou L, Hussaini BE, Lu XG, Treanor PR, et al. (2009) Development and evaluation of a novel solution, Somah, for the procurement and preservation of beating and non-beating donor hearts for transplantation. Circulation 20: 1704-1713)。また、理論に束縛されるわけではないが、DCAには血管保護能という長所があるため、移植後の腎動脈狭窄の発現予防に有用であり、移植したDCD腎臓の予後がさらに向上する可能性がある(Deuse T, Hua X, Wang D, Maegdefessel L, Heeren J, et al. (2014) Dicholoroacetate prevents restenosis in preclinical animal models of vessel injury. Nature 509: 641-644)。
貯蔵中の摘出臓器のエネルギー状態(HEP)の顕著な減損は、当該臓器に不可逆的な変性変化をもたらす(Vajdova K, Graf R, Clavien PA (2002) ATP-supplies in the cold preserved liver: a long-neglected factor of organ viability. Hepatology 36: 1543-1551)。したがって、臓器の恒常性を維持し、および/または臓器の代謝経路を調節して長期貯蔵中の回復を可能とする保存溶液に必要不可欠である。エネルギー状態が明らかに維持されるSomah腎臓とは大きく異なり、貯蔵中のUWでは、グルコース濃度がグリコーゲン分解に依存して上昇する可能性はあるが(図30B)、腎臓に貯蓄されたHEPは顕著に枯渇する(図31)。これは、UW腎臓の異化作用が高度であり、これによってHEPの不足や組織損傷が生じることを示唆している(図29)。これとは対照的に、Somahで貯蔵した腎臓では、グルコースの酸化的リン酸化がより行われることで、嫌気的解糖単独より(同等のグルコース分子に対する) HEPの生成が促進されるため、貯蔵中の臓器のエネルギー状態が増進される。理論に束縛されるわけではないが、UWで貯蔵したDCD腎臓にみられたようにHEPが低値となると、少なくとも臓器移植後臓器機能障害(DGF)が起こり、早期機能不全(PNF)まで生じることが予想される。したがって、UWは、摘出した腎臓の保存溶液として主に使用されているものの、DCD (またはBHD)腎臓の長期貯蔵に最適な状況をもたらすものではないと考えられる。これに対して、Somahでの保存は、実行可能な代替策となる可能性がある。
腎髄質に多く存在する管状構造の腎皮質組織の大半は、血管(毛細血管)で形成されている。ヒスチジン-トリプトファン-ケトグルタル酸(HTK)溶液では、貯蔵後6時間以内に糸球体係蹄が崩壊することが報告されているが(Kallerhoff M, Blech M, Kehrer G, Kleinert H, Langheinrich M, et al. (1987) Effect of glucose in protected ischemic kidneys. Urol Res 15: 215-222)、このような腎糸球体の劇的な変化は、SomahまたはUWで貯蔵した腎臓ではあらゆる時点で観察されなかった(図29)。UWでDCD腎臓を72時間貯蔵したところ、eNOS(血管運動機能に重要)、フォンウィルブランド因子(vWF; 血管内皮のマーカー)およびエリスロポエチン(EPO; 傍尿細管上皮細胞に特化したマーカー)の発現が一貫して減少したことから、血管および尿細管の両構造が僅かに損傷されたことが示唆された(図32)。これは、UWで貯蔵した腎臓にみられた尿細管の核の深色効果が増大した組織学的所見と一致する。これに対して、Somahで保存した腎臓では、カベオリン、eNOS、vWFおよびEPOなどを検討したあらゆるタンパク質の発現に変化はみられなかったため、皮質および尿細管の両腎組織が維持されることが示唆された。
本実施例は、DCD腎臓の静置保存を目的としたSomahの使用によって、DGFおよびPNFの発症率が低下し、移植した臓器の生着期間が延長する可能性があることを実証するものである。

Claims (116)

  1. 少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、ならびにアデノシンを含む、生体組織または臓器を保存または蘇生させるための組成物。
  2. 生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、およびアデノシンを含む、哺乳動物の臓器を保存するための組成物であって、10〜21±4℃の温度で維持される、組成物。
  3. 10〜21±4℃の温度で維持される、請求項1記載の組成物。
  4. 生理学的塩溶液が少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む、請求項2記載の組成物。
  5. インスリンをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
  6. インスリンが使用直前に組成物に添加される、請求項5記載の組成物。
  7. 生理学的塩溶液が、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
  8. 0.4〜10 mMのリン酸カリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
  9. 4〜65 mMの塩化カリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
  10. 80〜135 mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
  11. 2〜25 mMの重炭酸ナトリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
  12. 0〜1.5 mMの塩化カルシウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
  13. 0.15〜30 mMのリン酸ナトリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
  14. 0.5〜45 mMの塩化マグネシウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
  15. 0.5〜1.5 mMの硫酸マグネシウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
  16. 約2.5〜5 mMのクレアチンをさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項記載の組成物。
  17. 約0.001〜0.5 mMのジクロロアセテートをさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の組成物。
  18. 約0.5〜2 mMのオロト酸をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項記載の組成物。
  19. 約11〜25 mMの糖をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項記載の組成物。
  20. 糖がグルコースまたはデキストロースである、請求項19記載の組成物。
  21. 約2〜10 mMのアルギニンをさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項記載の組成物。
  22. 約0.001〜10 mMのリンゴ酸をさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物。
  23. 約1〜10 mMのシトルリンをさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項記載の組成物。
  24. 約0.001〜10 mMのシトルリンリンゴ酸をさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物。
  25. 約5〜10 mMのカルノシンをさらに含む、請求項1〜24のいずれか一項記載の組成物。
  26. 約5〜10 mMのカルニチンをさらに含む、請求項1〜25のいずれか一項記載の組成物。
  27. 生体組織または臓器を請求項1〜26のいずれか一項記載の組成物と接触させる段階を含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための方法。
  28. 前記組成物が10〜21±4℃の温度で維持される、請求項27記載の方法。
  29. 生体組織または臓器が最長24時間まで貯蔵または保存される、請求項27または28記載の方法。
  30. 生体組織または臓器が、心臓、腎臓、肝臓、胃、脾臓、皮膚、膵臓、肺、脳、眼、腸、および膀胱からなる群より選択される、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
  31. 前記組成物と接触していない生体組織または臓器と比べて、保存または蘇生後の生体組織または臓器において、高エネルギーリン酸量が高い、請求項27〜30のいずれか一項記載の方法。
  32. 臓器が心臓である、請求項27〜30のいずれか一項記載の方法。
  33. 前記組成物と接触していない生体組織または臓器と比べて、保存または蘇生後の生体組織または臓器において、冠状動脈血流量が高い、請求項32記載の方法。
  34. 前記組成物と接触していない心臓と比べて、保存または蘇生後の心臓において、部分面積の変化率、駆出率、および/または1回拍出量の1つまたは複数が増加する、請求項32記載の方法。
  35. 少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、ならびにアデノシンを組み合わせる段階を含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための組成物を製造するための方法。
  36. 前記組成物をインスリンと組み合わせる段階をさらに含む、請求項35記載の方法。
  37. インスリンが使用直前に組み合わせられる、請求項36記載の方法。
  38. 前記組成物が10〜21±4℃の温度で維持される、請求項35〜37のいずれか一項記載の方法。
  39. 生理学的塩溶液が、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む、請求項35〜38のいずれか一項記載の方法。
  40. 生理学的塩溶液が0.44〜10 mMのリン酸カリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
  41. 生理学的塩溶液が4〜65 mMの塩化カリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
  42. 生理学的塩溶液が80〜135 mMの塩化ナトリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
  43. 生理学的塩溶液が2〜25 mMの重炭酸ナトリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
  44. 生理学的塩溶液が0〜1.5 mMの塩化カルシウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
  45. 生理学的塩溶液が0.15〜30 mMのリン酸ナトリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
  46. 生理学的塩溶液が0.5〜45 mMの塩化マグネシウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
  47. 生理学的塩溶液が0.5〜1.5 mMの硫酸マグネシウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
  48. 約2.5〜5 mMのクレアチンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項35〜47のいずれか一項記載の方法。
  49. 約0.5〜2 mMのオロト酸を組み合わせる段階をさらに含む、請求項35〜48のいずれか一項記載の方法。
  50. 約11〜25 mMの糖を組み合わせる段階をさらに含む、請求項35〜49のいずれか一項記載の方法。
  51. 糖がグルコースまたはデキストロースである、請求項50記載の方法。
  52. 約2〜10 mMのアルギニンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜51のいずれか一項記載の方法。
  53. 約0.001〜10 mMのリンゴ酸を組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜52のいずれか一項記載の方法。
  54. 約1〜10 mMのシトルリンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜53のいずれか一項記載の方法。
  55. 約0.001〜10 mMのシトルリンリンゴ酸を組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜52のいずれか一項記載の方法。
  56. 約5〜10 mMのカルノシンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜55のいずれか一項記載の方法。
  57. 約5〜10 mMのカルニチンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜55のいずれか一項記載の方法。
  58. 少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、アデノシンを含むキット。
  59. インスリンをさらに含む、請求項58記載のキット。
  60. キットの構成要素から構成された臓器保存溶液の使用直前にインスリンを組み合わせるための取扱説明書をさらに含む、請求項59記載のキット。
  61. 生理学的塩溶液が、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む、請求項58〜60のいずれか一項記載のキット。
  62. クレアチンをさらに含む、請求項58〜61のいずれか一項記載のキット。
  63. オロト酸をさらに含む、請求項58〜62のいずれか一項記載のキット。
  64. 糖をさらに含む、請求項58〜63のいずれか一項記載のキット。
  65. 糖がグルコースまたはデキストロースである、請求項64記載のキット。
  66. アルギニンをさらに含む、請求項58〜65のいずれか一項記載のキット。
  67. リンゴ酸をさらに含む、請求項58〜66のいずれか一項記載のキット。
  68. シトルリンをさらに含む、請求項58〜67のいずれか一項記載のキット。
  69. シトルリンリンゴ酸をさらに含む、請求項58〜66のいずれか一項記載のキット。
  70. カルノシンをさらに含む、請求項58〜69のいずれか一項記載のキット。
  71. カルニチンをさらに含む、請求項58〜70のいずれか一項記載のキット。
  72. ジクロロアセテートをさらに含む、請求項58〜71のいずれか一項記載のキット。
  73. 20 mM塩化カリウム、0.44 mMリン酸カリウム、37 mM塩化マグネシウム、0.5 mM硫酸マグネシウム、125 mM塩化ナトリウム、5 mM重炭酸ナトリウム、1.3 mM塩化カルシウム、0.19 mMリン酸ナトリウム、11 mM D-グルコース、1.5 mMグルタチオン、1 mMアスコルビン酸、5 mM L-アルギニン、1 mM L-シトルリンリンゴ酸、2 mMアデノシン、0.5 mMオロト酸クレアチン、2.0 mMクレアチン一水和物、10 mM L-カルノシン、10 mM L-カルニチン、および0.5 mMジクロロアセテートを含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための組成物。
  74. 100単位/Lのインスリンをさらに含む、請求項73記載の組成物。
  75. インスリンが使用直前に組成物に添加される、請求項74記載の組成物。
  76. 10〜21±4℃の温度で維持される、請求項73〜75のいずれか一項記載の組成物。
  77. 少なくとも20 mMのカリウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、およびアデノシンを含む、心臓切開手術中の心停止のためのまたは移植用のドナー心臓のための心筋保護溶液。
  78. 生理学的塩溶液が少なくとも20 mMの塩化カリウムを含む、請求項77記載の溶液。
  79. 4〜10℃で維持される、請求項77または78記載の溶液。
  80. 生理学的塩溶液が少なくとも37 mMのマグネシウムイオンをさらに含む、請求項77または78記載の溶液。
  81. 生理学的塩溶液が少なくとも37 mMの塩化マグネシウムを含む、請求項80記載の溶液。
  82. 10〜25℃で維持される、請求項80または81記載の溶液。
  83. 生理学的塩溶液が少なくとも25 mMの塩化カリウムを含み、さらに少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む、請求項77または78記載の溶液。
  84. 生理学的塩溶液が少なくとも45 mMの塩化カリウムおよび少なくとも37 mMの塩化マグネシウムを含む、請求項83記載の溶液。
  85. 25〜37℃で維持される、請求項83または84記載の溶液。
  86. 4〜65 mMのカリウムイオンおよび1.5〜45 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、アデノシンを含む、心臓切開手術中の心停止のためのまたは移植用のドナー心臓のための心筋保護溶液。
  87. 生理学的塩溶液が37 mMのマグネシウムイオンを含む、請求項86記載の溶液。
  88. 生理学的塩溶液が塩化マグネシウムを含む、請求項86または87記載の溶液。
  89. 生理学的塩溶液が20 mMのカリウムイオンを含む、請求項86記載の溶液。
  90. 生理学的塩溶液が塩化カリウムを含む、請求項86または89記載の溶液。
  91. 4〜37℃で維持される、請求項86〜90のいずれか一項記載の溶液。
  92. 4〜65 mMのカリウムイオンおよび1.5〜45 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、ならびにアデノシンを含む、移植用のドナー肺を保存するための溶液。
  93. 生理学的塩溶液が2 mMのマグネシウムイオンを含む、請求項93記載の溶液。
  94. 生理学的塩溶液が塩化マグネシウムを含む、請求項92または93記載の溶液。
  95. 生理学的塩溶液が7.5 mMのカリウムイオンを含む、請求項92記載の溶液。
  96. 生理学的塩溶液が塩化カリウムを含む、請求項92または95記載の溶液。
  97. 4〜37℃で維持される、請求項92〜96のいずれか一項記載の溶液。
  98. クレアチンをさらに含む、請求項77〜97のいずれか一項記載の溶液。
  99. オロト酸をさらに含む、請求項77〜98のいずれか一項記載の溶液。
  100. 糖をさらに含む、請求項77〜99のいずれか一項記載の溶液。
  101. 糖がグルコースまたはデキストロースである、請求項100記載の溶液。
  102. アルギニンをさらに含む、請求項77〜101のいずれか一項記載の溶液。
  103. リンゴ酸をさらに含む、請求項77〜102のいずれか一項記載の溶液。
  104. シトルリンをさらに含む、請求項77〜103のいずれか一項記載の溶液。
  105. シトルリンリンゴ酸をさらに含む、請求項77〜102のいずれか一項記載の溶液。
  106. カルノシンをさらに含む、請求項77〜106のいずれか一項記載の溶液。
  107. カルニチンをさらに含む、請求項77〜107のいずれか一項記載の溶液。
  108. ジクロロアセテートをさらに含む、請求項77〜108のいずれか一項記載の溶液。
  109. 心臓を請求項77〜91または98〜108のいずれか一項記載の溶液と接触させる段階を含む、心臓切開手術中または心臓ドナー切除手術中の心筋保護を誘導するための方法。
  110. 肺を請求項92〜108のいずれか一項記載の溶液と接触させる段階を含む、移植手術の前にドナー肺を保存するための方法。
  111. 糖がヘキソースまたはペントースを含む、請求項19記載の組成物、請求項50記載の方法、請求項64記載のキット、および請求項100記載の溶液。
  112. 以下:
    Figure 2018521027
    を含む生体組織または臓器保存溶液。
  113. 以下:
    Figure 2018521027
    Figure 2018521027
    を含む生体組織または臓器保存溶液であって、インスリンは任意で使用直前に溶液に添加されてもよい、生体組織または臓器保存溶液。
  114. 以下:
    Figure 2018521027
    を含む生体組織または臓器保存溶液。
  115. 以下:
    Figure 2018521027
    を含む生体組織または臓器保存溶液であって、インスリンは任意で使用直前に溶液に添加されてもよい、生体組織または臓器保存溶液。
  116. 以下:
    Figure 2018521027
    を含む生体組織または臓器保存溶液。
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