JP2018521027A - 周囲温度または亜正常温度での組織保存のための組成物および方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、2015年6月9日付で出願された米国仮特許出願第62/173,184号に対する優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
本発明は、米国退役軍人省(United States Department of Veterans Affairs)によって授与された受賞番号第BX000817-01A1号の下での政府支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
本発明は、周囲温度で比較的長い期間にわたって生体組織および臓器を保存するための組成物および方法に特に関する。
臓器移植における主な障害は、ドナー臓器の利用可能性が限られていることと、貯蔵中の劣化によるドナー臓器の質の低下である。これは、現在、4〜6時間しかエクスビボで保存することができないドナー心臓に特に当てはまる。体外心臓貯蔵のために現在利用されている溶液は、4℃またはそれに近い温度での低温貯蔵中の浮腫の予防および代謝(代謝変性)の減速に基づく。しかしながら、そのような低い温度は、必然的に、およそ6時間の貯蔵後には不可逆となる組織および細胞損傷を引き起こす。
本明細書において記述される組成物および方法は、心停止前のドナー(Beating Heart Donor, BHD)、マージナルドナーおよび心停止後の提供(Donation after Cardiac Death, DCD)ドナーからの臓器貯蔵および/または臓器保存のための既存の方法と比べて有意な改善および利点を示す。例えば、改善された貯蔵/保存溶液、例えば、改良Somah (iSomah)は、周囲温度(25℃)でのならびに亜周囲温度(4℃超かつ25℃未満)での臓器の貯蔵およびかん流を可能にする。臓器、例えば心臓の体温低下は、臓器に損傷をもたらし、さらに障害さえももたらす。さらに、正常体温(36.4〜37.1℃、例えば36.4℃、36.5℃、36.6℃、36.7℃、36.8℃、36.9℃、37℃または37.1℃)の拍動心臓から低体温の温度、例えば4℃の非拍動心臓への移行はまた、心臓組織にとってストレスが多い。しかし、心臓が、4℃での体温低下により観察される完全な停止状態ではなく、室温、例えば、およそ20℃(21℃±4℃)での貯蔵を容易にする新規の溶液中において緩慢な収縮または動きを示し続けている場合、それは、細胞の高エネルギーリン酸貯蔵(ATP+CP)を枯渇させ、消耗するまで拍動して、細胞の恒常性の喪失、カルシウムの過負荷やアポトーシスの誘発および/または「石の心臓(stone heart)」として知られる移植不可能な臓器をもたらす壊死のような、関連した変性変化に至る。それゆえ、本明細書において記述される溶液中のカリウムイオンおよびマグネシウムイオンの濃度は、HEP合成、細胞恒常性、酸化窒素生成を同時に維持しながら(さらにトランスアミナーゼ反応から生成された有毒なアンモニウムイオンをキレートすることによって; 図33参照)、増加されて(他の貯蔵または心筋保護溶液と比べて)、亜正常温(subnormothermic)貯蔵(例えば10〜25℃)中の心臓組織の一時的麻痺を誘発する。これは、全ての組織および臓器における酸化窒素合成経路の活性の増加と、付随して浮腫の生理学的制御を引き起こす。
当技術分野において緊急に必要とされているものは、広範な亜正常温度範囲(4〜25℃)にわたってさまざまなドナー群からの臓器の保存を容易にし、したがって移植前に極低体温(4℃)での貯蔵による組織損傷を防ぐ臓器保存貯蔵溶液である。溶液の成分は、イオンバランス、エネルギー基質、アンモニアの酸化窒素シンターゼに対する基質へのキレート化、高エネルギーリン酸(high-energy phosphate, HEP)の生成のための代謝調節、フリーラジカル捕捉、抗酸化物質、還元剤、細胞内および細胞外H+キレート化、ならびに貯蔵中のヘミチャネルおよびアクアポリンの調節による浮腫の減弱を提供することによって心臓(および他の臓器)の構造および機能を保存するべきである。貯蔵溶液はまた、低酸素貯蔵中に選択的な相乗的構成要素を予め負荷して、再かん流後の初期の過酸素状態の有害な影響を相殺することによって虚血再かん流傷害(IRI)の減弱を容易にし、その結果、再かん流傷害を予防し、酸素正常状態、有酸素代謝および最適な機械的機能への順調な迅速移行を持続させるべきである。理想的な溶液は相乗的に、1) 虚血貯蔵中に臓器を保存する; 2) 再かん流時の持続的な電気機械作業に向けて、高酸素状態から正常酸素状態への迅速変換のための代謝物で臓器をプライミングする; および3) 虚血再かん流(IR)傷害を予防するであろう。そのような溶液は、レシピエントへの移植前に、ドナー臓器の体外保存のための一時的貯蔵を大きく延ばす可能性を有するであろう。
本明細書において用いられる場合、「生理学的塩」という用語は、所与の濃度で水溶液中にある場合、細胞機能または生理学的機能を補助するかまたはそれに必要とされる任意の塩をいう。生理学的塩の例としては、非限定的に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩化物、リン酸塩および硫酸塩、例えばKCl、NaCl、MgCl2、MgSO4およびそれらの混合物が挙げられる。
ドナー心臓のような臓器の貯蔵のために現在利用できる技法および組成物では、不可逆的な冷媒媒介組織および細胞障害が起こる前の、わずか4〜6時間前後の貯蔵しか可能でない。本発明の組成物は、約10〜21±4℃の、例えば約4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などのいずれかの、これらの値の範囲内にある全ての温度および範囲(約10〜25℃など)を含む、温度で生体組織または臓器を貯蔵または蘇生させるための溶液である。組織または臓器は、細胞の高エネルギーリン酸量の有意な減少なしに、または浮腫の有意な増加なしに、約24〜72時間、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72またはそれ以上の時間などのいずれかの間、本明細書において記述される組成物中で貯蔵することができる。必要とする対象への移植の前に本発明の組成物中で貯蔵された心臓に関して、冠状動脈血流、部分面積の変化率、駆出率および/または1回拍出量のような生理学的測定値が、現在利用されている臓器貯蔵溶液中で貯蔵された心臓と比べて心臓の蘇生により増加する。
本発明の組成物は、少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルコース、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリンリンゴ酸、アデノシン、オロト酸クレアチン、クレアチン一水和物もしくはその塩、オロト酸、リンゴ酸、カルノシン、カルニチンおよび/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含む水性(すなわち水ベースの)もしくは固体粉末性(使用前に蒸留水で再構成される)またはそれらの組み合わせの溶液であることができる。生理学的塩溶液は、所与の濃度で水溶液中にある場合、生体組織または臓器の内部および外部のイオン濃度を維持するような、および細胞膜を通り抜けることができる水の量を制御するような、生理学的機能を補助するかまたはそれに必要とされる任意の塩を含むことができる。生理学的塩溶液の成分は、適切なpHを緩衝および維持するのを補助することもできる。本発明において用いることができる特定の塩には、非限定的に、塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムが含まれる。
生理学的塩溶液に加えて、本発明の組成物は、グルコース、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸およびその塩など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、オロト酸、リンゴ酸およびその塩、カルノシン、カルニチン、ジクロロアセテートならびに/またはインスリンの1つまたは複数を含むこともできる。この溶液はインスリンなしで製造され販売されている。インスリンは、使用の時点でまたは使用直前にもしくは使用前に、例えば、生存患者の臓器への注入の直前(約30秒、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60分もしくはそれ以上前のいずれかのような)に、またはエクスビボ臓器への注入もしくは溶液への臓器の浸漬の直前に、特定の濃度で添加される。
心臓切開手術中の心停止のためのまたは移植用のドナー心臓のための心筋保護溶液も本明細書において提供される。1つの態様において、本発明の心筋保護溶液は、少なくとも20 mMのカリウムイオン(例えば約20 mM、21 mM、22 mM、23 mM、24 mM、25 mM、30 mM、35 mM、40 mM、45 mM、50 mM、55 mM、60 mM、65 mM、70 mM、75 mM、80 mM、85 mM、90 mM、95 mMもしくは100 mMまたはそれ以上のカリウムイオンのいずれかのような、これらの数の間に入る全ての値および範囲を含む)、ならびに糖(例えばリボース、グルコースもしくはデキストロース)、グルタチオン、アスコルビン酸、アルギニン、シトルリン(シトルリンリンゴ酸など)、アデノシン、クレアチン(オロト酸クレアチンまたはクレアチン一水和物もしくはその塩など)、オロト酸、カルノシン(L-カルノシンなど)、カルニチン(L-カルニチンなど)および/またはジクロロアセテートの1つまたは複数を含有する生理学的塩溶液を含むことができる。心臓を約4〜10℃(例えば約4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃のいずれかなど)の間で停止させるために、少なくとも20 mMのカリウムイオンを含有する心筋保護溶液を用いることができる。
A. 生体組織および臓器を貯蔵するための方法
本明細書において開示される組成物を用いて生体組織および臓器を貯蔵するための有効な方法も、本発明によって提供される。生体組織および臓器は、周囲温度(例えば、10〜21±4℃)で本明細書において開示される溶液中で貯蔵することができる。本明細書において提供される方法によれば、生体組織および臓器は、臓器が凍結点のまたは凍結点近くの温度で貯蔵される場合に一般的に観察される貯蔵浮腫、フリーラジカル損傷、および(an)/または細胞/組織損傷の有意な蓄積なく、開示される溶液中に24〜72時間の間、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72時間またはそれ以上の時間のいずれかなどの間、貯蔵されうる。
本明細書において開示される組成物のいずれかのような、生体組織および臓器を保存するための組成物を作成するための方法が本明細書において提供される。本方法は、蒸留水、脱イオン水および/または静菌水中に表示された濃度の上記の成分の1つまたは複数を混合する段階を包含する。さらなる態様において、およびiSomahの非限定的な例として、本方法は、蒸留水、脱イオン水および/または静菌水中に下記の表IIIに示される成分の1つまたは複数を混合する段階を包含する。
本明細書において開示される生体組織および臓器貯蔵/蘇生溶液を作製するための組成物は、溶液の量の2、3、5、10、20倍になるようにスケールアップするのに必要な量で、以下に列挙した成分またはその倍数でキットに任意で包装されてもよい。例示的なキットは、グルタチオン、アスコルビン酸、アデノシン、塩化カリウム、リン酸カリウム 塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、糖(リボース、グルコースまたはデキストロースなど)、アルギニン、シトルリンリンゴ酸、アデノシン、オロト酸、クレアチンおよびジクロロアセテートの1つまたは複数(例えば、約2.76 g/Lの塩化カリウム、0.06 g/Lのリン酸カリウム(一塩基性)、7.47 g/Lの塩化マグネシウム(六水和物)、0.123 g/Lの硫酸マグネシウム(七水和物)、7.30 g/Lの塩化ナトリウム、0.35 g/Lの重炭酸ナトリウム、0.05 g/Lのリン酸ナトリウム(二塩基性; 七水和物)、1.98 g/LのD-グルコース、0.462 g/Lのグルタチオン(還元)、0.18 g/Lのアスコルビン酸、0.21 g/Lのアルギニン、0.15 g/LのL-シトルリンリンゴ酸、0.27 g/Lのアデノシン、0.27 g/Lのオロト酸クレアチン、オロト酸、0.373 g/Lのクレアチン一水和物またはその塩、2.3 g/LのL-カルノシン、2.0 g/LのL-カルニチン、0.08 g/Lのジクロロアセテートおよび100単位/Lのインスリンの1つまたは複数を含有する。キットはまた、シトルリン(L-シトルリンなど)およびリンゴ酸を任意で含有してもよい。
以下の実施例において、表はアラビア数字(例えば、表1、表2、表3など)を用いて表す。
心臓摘出術
雌性ヨークシャーブタ(45〜54 kg)を、確立された人道的な政策に厳密にしたがって動物実験委員会により承認されたように用いた。心臓を他所に記述されているように(Thatte et al., Circulation 2009;120:1704-13)摘出し、40mmHg未満の収縮期圧で大動脈をクランプする前にエクスビボ実験のために大腿血液を集めた。その後、Somah (20 mmol/リットル K+)、Celsior (20 mmol/リットル K+)またはUWS (生来の140 mM K+)のいずれかによる、21℃での1,000 mlの心筋保護液を75〜100mmHgで注入した; 心臓を切除し、21±2℃(周囲温度)で5時間Somah、CelsiorまたはUWS中で貯蔵した。
心臓を21±2℃のウォータージャケット浴(waterjacketed bath)中、ジップロックバッグ(Somah、CelsiorまたはUWS 2リットルを含む)の内部に入れた。Somah中の心臓は貯蔵中に収縮性運動が緩慢であったため、Somahの麻痺能は補助的K+ (計20 mmol/リットル)およびMg2+ (37 mmol/リットル)によって増強した(Fukuhiro et al., Circulation 2000;102(III):319-25)。事前におよび5時間後に心臓の重さを量った。パンチ生検(2×4 mm)を、HEPアッセイ法のため、貯蔵の前におよび終了時に左心室(LV)後壁から採取した。
心臓組織HEPを他所に記述されているように(Devillard et al., Mol Cell Biochem 2008;307:149-57; Bessho et al., Anal Biochem 1991;192:117-24)測定した。簡潔には、組織を冷過塩素酸中に懸濁させ、ホモジナイズした。ホモジネートを0℃で遠心分離し、ペレットをタンパク質定量のためにNaOHに溶解し、上清を冷KHCO3で中和し、再度、生物発光キットおよびプロトコル(Promega GloMax-Multi+ Detection System; Sigma-Aldrich)を用いたHEP (ATP+CP)測定の前に遠心分離した。
隣接する組織および他の血管からの分離後、大動脈、肺静脈(PV)および肺動脈に、それぞれ1/2〜3/8インチ、1/2〜1/4インチおよび1/2〜3/8インチのチューブコネクタを用いてカニューレを挿入し、その一方で大静脈を結紮した。
全身ヘパリン添加血液を術中に採取し、滅菌白血球低減フィルタ(Pall Leukoguard RS)を用いて白血球除去し、41℃で貯蔵した。体外かん流中の心臓の粘性ひずみを低減させるために、SomahまたはPlasmalyte (+ 1.3 mmol/リットルのカルシウム)を1:1の比率で用いて、かん流液ヘマトクリットを20%に調整した。かん流液pH、グルコース、K+、Ca2+およびHCO3 -を、それぞれ、10%デキストロース、KCl、CaCl2およびNaHCO3を用いて、ブタ血中レベル(それぞれpH 7.5; 100 mg/dl; 3.7、1.38および32 mmol/リットル)に調整した。
心臓の体外蘇生のために特注の器具を用いた(図1)。かん流液のpH、温度、PO2、PCO2、K+およびHCO3 -のリアルタイムモニタリングのために、CDIモニタ(Clinical Documentation Improvement Monitoring System 500; Terumo Cardiovascular Systems Corp., Ann Arbor, MI)を用いた。これらのパラメータをまた、iSTAT分析装置(Abaxis, Ltd., Union City, CA)を用いて流入/流出サンプルにおいて分析した。
UWS心臓を生理食塩水で洗い流し、過剰のカリウムを除去した。Somah装置への装着時に、SomahおよびCelsior/UWS心臓を40〜60mmHgで、それぞれ1.5リットルのSomah (pH 7.5)またはPlasma-Lyte A (pH 7.5; 臨床的に使用される生理溶液)溶液、続いてかん流液により洗い流した。HMIソフトウェアを用いて圧力流データを収集した。システム温度を30分かけて37℃に上昇させた。Somah心臓におけるかん流後評価の平均持続時間は、37℃に達すると数分の再かん流後でさえも心筋拘縮の発生および/または性能の低下のための、CelsiorおよびUWS心臓のそれぞれ60分および120分とは対照的に、180分であった。電気変換(40〜50 J)および/またはエピネフリン(過去の経験(Lowalekar et al., Am J Transpl 2014 Oct;14(10):2253-62)にしたがって、Somah心臓では1:50,000〜1:100,000もしくはCelsior/UWS心臓の場合には他所で報告されているように(Hill et al., Am Thorac Surg 2005;79:168-77)1:10,000)を必要に応じて用いた。流入(大動脈)および流出(大静脈)サンプルを、開始時と、その後30分ごとに収集した(図2)。機能評価のために経食道心エコー検査(TEE)プローブを用いて、心外膜2次元(2D)心エコー検査を行った。
術中に、貯蔵中におよび再かん流時に分析計(Vetscan VS2およびiSTAT; Abaxis)を用いて血中クレアチンキナーゼ(CK)、トロポニンI (cTnI)、乳酸およびガス(酸素の分圧/二酸化炭素の分圧[PO2/PCO2])を測定した。他所に記述されているように(Klabunde R. Cardiac function. Cardiovascular physiology concepts. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins; 84-8)、再かん流中にMVO2を計算した。
システム温度がかん流開始の30分後37℃に達したら、TEEプローブ(Cypress system; Acuson, Mountain View, CA)により術中におよびエクスビボで(心外膜) 2次元心エコーデータ(心機能パラメータの短軸像および長軸像、ならびにLV中隔壁/心室壁厚さ)を収集し、その後、CYPRESS-VIEWERソフトウェアで分析した。心腔内のかん流液に浸された黄銅クロコダイルリードを用いて、2D心エコー検査中に3リードECGを記録した。全てのSomah心臓が全仕事量(full workload)(PVかん流)および洞調律を維持したが、しかし全てのCelsiorおよびUWS心臓が全仕事量への切り替えを許容できるわけではなかった。
調査ごとに、各群の同数の動物を比較分析のために割り当てた。図2に示されるように、生検および他のサンプルを時間調整した。HMIソフトウェアを用いて冠状動脈および大動脈流/圧力データを収集した。SIGMA-PLOTソフトウェアを統計分析に用いた。群間の比較のため、ノンパラメトリックデータを仮定して、Kruskal-Wallis 1方向分散分析(ANOVA)ランク検定を行った。正規性および等分散性検定に通った場合、Holm-Sidak検定またはDunnの検定を用いてさらなる分析を行った; そうでなければ、1方向ANOVAによってデータを比較した。ノンパラメトリックデータを仮定して、同じグループ内の有意な変化を判定するために、マンホイットニー順位和検定を行った。正規性および等分散性検定に通った場合、スチューデントのt検定を行った。p < 0.05を有意と見なした。全ての値を平均±SEMとして提示する。
術中の心筋保護
心臓は全て21℃で心筋保護を受けた。心停止は、おそらく非常に高いK+のため、UWS群において直ちに起こった。対照的に、Somah群およびCelsior群では、完全な心停止のためには、それぞれ20〜25秒および30〜40秒かかった。
貯蔵された心臓は全て、変色することなく正常な肉眼形態を提示し、こわばり/硬直の兆候がなく柔軟であった。心臓重量は5時間の貯蔵中に変化しなかったため、肉眼的浮腫がないことが示唆された。貯蔵中の全ての溶液において、心臓酵素(CK/cTnI)の最小放出が検出された。
貯蔵後、HEP値は、対照(タンパク質1ミリグラムあたり9.95±2.52 nmol/リットル)と比較して、Somah貯蔵心臓(28.33±5.51; p < 0.001)において有意に増強され、UWS心臓(5.92±1.46; p < 0.05)において有意に減少されたが、Celsior心臓(11.57±2.77)では変わらないままであり(図3)、比較群におけるよりもSomah心臓において有意に高いHEP蓄積が認められた(p < 0.001)。
21℃での最初のかん流時の冠状動脈流は、同様のかん流圧でCelsiorまたはUWS心臓におけるよりもSomah心臓において有意に大きかった(表2)。Celsior/UWS心臓ではなく、Somah心臓は、再かん流の開始時に直ちに遅い収縮を示した。37℃までのシステム温度の上昇により、冠状動脈流はSomahおよびUWS心臓において有意に増加したが、Celsior心臓においてはそうでなく、Somah心臓において最高かつほぼ正常であった。UWS群では、最初の急上昇の後に冠動脈循環圧の低下が認められた。
P1、P2、P3: 各温度での大動脈根圧; F1、F2、F3: 各温度での冠状動脈流。UWS、ウィスコンシン大学溶液。
a同じ温度での他群との有意差。
b同じ群における21℃との有意差。
cCelsior群の心臓との有意差。
SomahおよびCelsior心臓におけるCKおよびcTnIの放出は、再かん流の30分後に匹敵したが、UWS心臓による両者の有意に高い放出が認められた(図4AおよびB)。
MVO2および乳酸比の逆転の増大によって示唆されるように、Somah心臓における再かん流30分以内の嫌気性から好気性代謝への迅速な切り替えが認められた(図5AおよびB)。対照的に、CelsiorおよびUWS心臓においては正の乳酸生成(未反転の乳酸比)が明らかであったが、MVO2は、同じ期間にCelsior心臓では変化しなかった(図5AおよびB)。
再かん流時に、基本的な電気活動(ECG)によって補完される即時の自発房室活動が、Somah心臓において明らかであり、システム温度が37℃に上昇すると心室収縮がさらに増大し、一回の心臓除細動で洞調律を確立した。Somah心臓は、強心法またはさらなる電気的除細動を必要とせず、調査中ずっと柔軟なままであった。対照的に、CelsiorおよびUWS心臓は、電気的に検出できない最小限の視覚的な自発的活動を実証し、LV頂部から始まり、最終的にLVおよび中隔壁、ならびに究極的にはRVおよび心房を伴って、触れると漸進的に堅くなり、虚血再かん流傷害(IRI)の初期化の可能性を示唆するものであった。したがって、かん流液Ca2+値もまた急速に低下し、細胞内シフトを示唆していた。心臓除細動およびエピネフリン注入のいくつかの試みにもかかわらず、Celsior/UWS心臓は回復できなかった。かくして、機能的な2D心エコーデータは、全てのCelsior/UWS心臓において成功裏に得ることができず、心機能データからCelsior/UWS心臓において有意に低い性能が実証された(図6A〜C)。さらに、UWS心臓においてかん流後のLV前壁/中隔壁の厚さが大幅に増加した(図6D)。
本実施例では、貯蔵後の心機能性の回復が、臓器のエネルギー状態および貯蔵温度の維持に比例するかどうかを調べ、それぞれ、4℃のCelsior中でのならびに4℃、13℃および21℃のSomah中での心臓保存を比較する。
心臓摘出術、体外心臓貯蔵、ATPおよびクレアチンリン酸アッセイ法、エクスビボ蘇生および機能研究のための心臓の調製、エクスビボ研究のための血液の調製、Somah装置、ならびに機能的研究を上記の実施例1に記述したように行った。
貯蔵の開始時および5時間後の計量の前に心室を空にした。Somah心臓の組織学的検査(HP; ヘマトキシリンおよびエオシン染色)および超微細構造ならびにSomahおよびCelsior心臓のHEPアッセイ法のために左心室の後壁(LV)から心臓切除15分以内に(対照)および5時間貯蔵の終了時にパンチ鉗子を用いて心臓パンチ生検(直径2〜4 mm)を採取した。
Somah心臓組織をグルタルアルデヒド中で固定し、超構造研究のために処理した。簡潔には、電子顕微鏡(EM)研究のために採取した組織を直ちにグルタルアルデヒド中で固定し、4℃で貯蔵した。固定化、脱水および包埋後、70〜100 nmの切片をウルトラミクロトームを用いて切断し、グリッドに移し、JEOL電子顕微鏡(1200EX-80kV; JEOL USA Inc., Peabody, MA)下で調べて、超微細構造変化を同定した。
術中に、ならびに10分、2時間および5時間の心臓貯蔵の終了時に採取されたSomahサンプルにおいてVetscan VS2またはiStat (Abaxis Ltd, Union City, CA)を用いクレアチンキナーゼ(CK)、心臓トロポニン-I (cTnI)、乳酸およびガス(pO2/pCO2)を測定した。Celsiorの成分がアッセイ法に干渉した; ゆえに、貯蔵サンプルをアッセイすることができなかった。酵素アッセイ法のためにかん流液のかん流の開始後5分および90分の時点で、ならびにVetscan VS2またはi-Stat Systemを用いた、心筋O2消費(MVO2)および乳酸値の評価のために60分(ベースライン)および90分(ピーク性能)の時点で流入(大動脈)および流出(大静脈)サンプルを収集した。MVO2を計算した。インビトロ再かん流中に得られたVetscan CKアッセイ値は、これらの単離された心臓の研究において心臓に特異的であった。
TEEプローブを、Acuson Cypressシステム(Acuson, Mountain View, CA)による術中およびエクスビボでの心機能の2Dエコー評価に使用し、Cypressビューアソフトウェアを用いて画像を分析した。エクスビボ実験中、心臓をSomah装置に接続し、心臓の表面の3分の2を覆うかん流液2 Lを含有するチャンバに浮かせた。心電図を開始から記録し、もし良好な心収縮が観察された時にはかん流からおよそ45〜60分後に2Dエコーの収集を開始し、30分間隔で繰り返した。プローブを心臓に直接接触させて配し、プローブの角度およびパルスの方向を調整し短軸像および長軸像を得て、心臓の機能的パラメータならびに心室壁および中隔壁の厚さを評価した。
全ての値を平均±SEMとして表す。分析は、Celsior 4℃(n = 5)をSomah 4℃心臓(n = 6)、13℃(n = 6)および21℃(n = 6)心臓と比較することに焦点を当てた。SigmaPlot (Systat Software Inc., San Jose, CA)を用い、一方向分散分析を全ての機能測定(対照におけるおよび300分での総HEP値の差異; MVO2、乳酸、CK、cTnI、60分[ベースライン]および90分[ピーク性能]での冠状動脈流、ならびに心室壁および中隔壁の厚さ)について行った。Tukey検定を用いて、群間の特定の差異を同定した。Somah貯蔵心臓ではHEPが有意に増加しているので、Somah群ごとに無作為に3つの心臓と5つのCelsior心臓をHEP分析のために選択した。対応のあるt検定を用いて、時間0および37℃での冠状動脈流の差異、ベースラインおよび90分の時点でのMVO2および乳酸の差異を4つの群内で評価した。ミトコンドリア虚血スコア(MIS)の場合、Somah心臓(n=3/群)ではスライドごとに20個のミトコンドリアを有する4枚のEMスライド(倍率8000倍)を用いた。統計的有意性は、95%の信頼水準で許容された(p < 0.05)。異なる研究のための組織および血液サンプルを、図に示すように得た(図7)。
肉眼形態、心臓重量、HPおよびEM
CelsiorおよびSomah中で保存された心臓は正常な形態を呈し、何らの変色も示さなかった。Somah群ではEM、HP心臓重量を比較することにより心臓の浮腫を概算した(図8)。EMおよびHPは、無傷のオルガネラ膜、正常な細胞内グリコーゲン含量と収縮性タンパク質の整列、空胞形成の欠如と筋繊維束の間の明確な空間および拘縮帯の欠如を、細胞内浮腫の少なさを含め、実証した。貯蔵前および貯蔵後の心臓重量の差異は有意でなかった。核膜下のクロマチンの蓄積によって特徴付けられる心筋細胞核の最小限の可逆的変化が、Somah群において明らかであった。ミトコンドリアマトリックスの密度は十分に保存され、虚血はほんのわずかであった。0〜6 (6が最も悪い)のスケールでの平均MISは、ミトコンドリアでの無視できるほどの可逆的変化を実証し、4℃、13℃および21℃のSomah心臓においてそれぞれ、0.09±0.02、0.17±0.03、0.07±0.02であった。クリストリシス(cristolysis)、空胞形成およびミトコンドリア膜破裂のような特徴的な不可逆的損傷は、いずれの心臓においても見られなかった。
高エネルギーリン酸:
Somah中で保存された心臓は貯蔵温度に関係なくHEPを合成し、以前の知見を確認するものであった。Somah心臓ではHEP濃度の貯蔵依存的な上昇の温度が認められた。4℃、13℃および21℃でそれぞれ保存されたSomah心臓(n = 3/群)における55.7±5.1、68.4±11.0および81.5±19.8 nM/mgタンパク質の総HEP値は、貯蔵の終了時にCelsior心臓(n = 5)において観察された26.31±1.4 nM/mgタンパク質よりも有意に高かった(p < 0.05)。対照値は群間で有意差がなかった。
嫌気性乳酸生成は、21℃の心臓において2時間時点での0.41から0.75±0.05 mmol/Lまで一時的に増加したが、5時間貯蔵後の低体温Somah群では検出レベルに満たなかった。しかしながら、pHは全群において7.4±0.1で安定なままであった。さらに、より高い温度で貯蔵された心臓は、比較的活性な好気性代謝のために、Somahに溶解した酸素(pO2 210〜240mmHg)を活発に利用した。貯蔵中にそれぞれ、4℃、13℃および21℃でSomahではpO2が7.0±7.6、17.0±3.51および14.0±3.51mmHgだけ減少し、HEP合成の並行増加に対応していた。乳酸およびpO2利用は、貯蔵中にCelsiorでは測定することができなかった。
冠状動脈流:
順行性かん流の開始時に、貯蔵の溶液または温度に関係なく全ての心臓において冠状動脈流が観察された。4℃および13℃のSomah心臓は、温度が21℃に上昇するとゆっくりと不規則な4室収縮を示したが、21℃の群ではかん流の開始後に遅い律動収縮が直ちに観察された。
n = 5 Celsior心臓; n = 6 Somah心臓/温度群; 時間0 = 最初の再かん流直後の冠状動脈流。
137℃でのCelsior vs Somah群(p < 0.05)。
2時間0での21℃ vs 13℃および4℃群の心臓(p < 0.05)。
3時間0 vs 37℃(p < 0.05)。
MVO2は、4℃のSomah心臓においてかん流後60分(ベースライン)〜90分変化しないままであり、13℃および21℃のSomah心臓内で有意に増加したが、3群間に差異はなかった。対照的に、MVO2はCelsior心臓において著しく減弱した(図9A)。同様に、ベースライン時のかん流液中の乳酸値は、Somah群よりもCelsior群において有意に低かった(p < 0.05)。乳酸は90分の時点で全群において減少したが、群間で差異は有意でなかったとはいえ、13℃および21℃のSomah群内で有意に減少した(p < 0.05) (図9B)。エネルギー必要量は、貯蔵温度とは無関係に、全てのSomah心臓においてピーク性能で定常状態に達した。心臓組織における仕事量前および後のHEPレベルの比率は、作動しているSomah心臓において同等(およそ0.37)であったが、Celsior心臓ではそうでなかった。CK放出は21℃のSomah群において最も低かった; しかしながら、いずれの群の間でも有意差はなかった(図10A)。対照的に、cTnI放出は、Somah群と比べてCelsior心臓において有意に低かった(p < 0.05) (図10B)。
LV前壁および中隔の厚さは、4群間で術中およびインビトロでの蘇生の間に有意な変化を示さなかった(表2-2)。
インビボおよびインビトロ群, Celsior, n = 5; Somah, n = 6/群。
2Dエコー, 2次元心エコー検査; LV, 左心室; nt, 予測された機能がないため、試験されていない。
n = 23, インビボ群; n = 5 Celsior心臓; n = 6 Somah心臓/温度群。
113℃および21℃ vs 4℃群の心臓(p < 0.05)。
本実施例では、心循環死の30分後に採取した心臓(DCD心臓)を研究し、現在の臨床基準の4〜5倍の間貯蔵した。さらに、本研究は、移植のために機能的に実行可能な状態で、SomahにおけるDCD心臓の長期貯蔵に理想的な温度を決定するために設計された。
動物モデル
3ヶ月齢雄性Sprague-Dawleyラットを、施設内動物実験小委員会の承認を受けたプロトコルにしたがって厳密に用いた。
Somahを上記のように処方した。4℃で貯蔵された0.4 mmのフィルタ(VWR International)を用いて新たに調製した溶液をろ過滅菌し、調製の24時間以内に用いた。全ての化学物質および抗体は、特に明記しない限り、Sigma Chemical Co (St Louis, Mo, USA)、Amersham Biosciences (Piscatway, NJ, USA)、Bio-Rad (Hercules, Calif, USA)またはDAKO Corp (Carpinteria, Calif, USA)から入手した。
CO2で無意識にさせたラットを断頭し、心臓の模擬再かん流のために血液を酸-クエン酸-デキストロース管に集めた。DCD心臓を安楽死の30分後に摘出し、4℃±2℃、10℃±2℃、21℃±2℃または37℃±2℃で24時間Somah中に貯蔵した。24時間の貯蔵の終了時に、振とう水浴中30分間37℃でかん流溶液(血液:Somah :: 3:1)中にて心臓をインキュベートすることによって模擬再かん流を行った。生死およびエステラーゼアッセイ法、ミトコンドリア分極アッセイ法、タンパク質発現、ならびに組織アデノシン三リン酸(ATP)およびクレアチンリン酸(CP)値のために再かん流の前後で心臓生検をとった。
Somah DCD心臓からの心筋細胞のバイアビリティを、蛍光に基づく生死アッセイ法および多光子顕微鏡法で評価した。心臓生検材料を、1.5 mLのHBSS (ハンクス平衡塩類溶液), pH 7.4中10 mmol/Lの、カルセインAM (カルセインのアセトメトキシ誘導体)およびエチジウムホモ二量体色素(Live-Deadアッセイキット; Molecular Probes)とともに21℃で30分間インキュベートし、保存溶液で洗浄し、緑色(生細胞)および/または赤色(損傷/死細胞)蛍光について多光子顕微鏡で撮像した。心筋細胞の機能的完全性を、エステラーゼ活性を示すカルセイン蛍光の量子収率(光子数)の半定量的測定によって評価した。
心筋細胞をJC-1色素(Molecular Probes)で標識、撮像し、多光子顕微鏡法を用いてミトコンドリア極性比を決定した。
LV組織(20 mg)を300個に切り分け、プロテアーゼ阻害剤カクテルを有する溶解緩衝液(CellLytic MT; Sigma-Aldrich) 200 mLに懸濁し、10分間16,000gで遠心分離する前に30秒間ホモジナイズし、上清(総タンパク質)を回収し、次いでBio-Radタンパク質アッセイキットを用いて定量した。タンパク質を7.5%、10%または12% SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に転写した。ブロットを一次抗体(1:1000; 抗ミオシン重鎖および軽鎖、アクチニン、アクチン、およびトロポニンC)とともにインキュベートし、引き続いてHRP (西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合二次抗体とともにインキュベートし、電気化学発光(GE Healthcare)を用いてタンパク質発現を検出した。
ATPおよびCP値は、4℃、10℃、21℃または37℃で24時間貯蔵後におよび再かん流時に分光蛍光計および生物発光アッセイキット(Perkin Elmer, Waltham, MASS, USA)を用いて心臓組織において測定された。
MaiTaiモードロックチタン:サファイアレーザー(Spectra-Physics, Mountain View, Calif, USA)と一体となったBioRad撮像システム(MRC 1024ES)を用いた最新式の多光子撮像技法を、深部イメージング心臓生検および半定量的蛍光測定に用いた。画像512×512ピクセルを0.484 mmのピクセル分解能で、直接検出の設定で収集した。心筋細胞をXYZ軸走査によって同定し、切除点からLV生検で50 mmの深さで撮像した。
Metamorphソフトウェア(Molecular Devices, Downingtown, PA, USA)を、実験室の異なる成員によって盲検的に、データ抽出、定量、および多光子画像からの蛍光カウントの分析に用いた。データを平均±標準誤差として表す。群間の差異は、スチューデントt検定(対応のあるもしくは対応のない(paired on unpaired))または適用可能であれば1方向分散分析を用いて決定した。統計的有意性は、95%の信頼水準で許容された(P <.05)。データは、各温度群の場合n = 3、エステラーゼ活性およびミトコンドリア分極の場合n = 25測定、ならびにATPおよびCP値決定の場合n = 5から得た。
摘出された心臓における心筋細胞バイアビリティ
摘出直後(対照; 図12A)に行った心臓生検の生死アッセイ法および多光子顕微鏡法(図12)により、強力な緑色蛍光(生存細胞を示す)が実証されたが、赤色の核蛍光(損傷細胞を示す)は実証されなかった。Somah中での24時間の貯蔵後、37℃群における変色および構造的完全性の目に見える損失を除いて、DCD心臓の肉眼形態は他の全ての温度群でよく保存されていたが、これらの群における生死アッセイ法の緑色蛍光は対照のそれと類似していた。しかしながら、4℃、10℃および37℃で、損傷した細胞の赤色核蛍光は24時間貯蔵後にも増強されており(図12B)、心臓はとにかく保存されたが、亜正常温度(21℃)ではいくらかの同時の細胞損傷を被ったことが示唆された。貯蔵された心臓の模擬再かん流時に、4℃および37℃で貯蔵された心臓における緑色蛍光の実証可能な減少があった(図12C)。
模擬かん流の前に、エステラーゼ活性に応じて緑色蛍光の量子収量は、21℃で貯蔵された心臓において最も高く、37℃で最も低かった(表3-1)。再かん流後、エステラーゼ活性は21℃で貯蔵された心臓では変化しなかったが、しかし10℃群では有意でなかったとはいえ、4℃、10℃および37℃で貯蔵された心臓において可変的に減少した。
Somah溶液中24時間貯蔵後および再かん流時の各温度群における、心循環死後に供与された3つの心臓からのエステラーゼ活性を描く画像の分析から、定量データ(全蛍光カウント)を得た。24時間の貯蔵後(再かん流前)、エステラーゼ活性は37℃群の心臓において最も低く、21℃群の心臓において最も高かった。再かん流時には、極低体温(4℃)または正常温(37℃)の温度で保存された心臓においてエステラーゼ活性の有意な低下が明らかであったが、10℃および21℃群の心臓では変化しなかった。CF = カルセイン蛍光。
a任意単位±標準誤差
bかん流後の有意な変化
新たに摘出されたDCD心臓では、分極した状態と脱分極した状態のミトコンドリアが平衡状態にあった(図13)。貯蔵温度とは無関係に、DCD心臓の心筋細胞におけるミトコンドリア膜は、24時間の貯蔵後にも再かん流時にも分極したままであったが、再かん流後のいずれの群においても分極率は変化しなかった。さらに、再かん流前または後の異なる群におけるミトコンドリア分極状態に有意差はなかった。
対照と比較して、心臓におけるATP/CP合成は、4℃、10℃および21℃のSomahにおいて24時間貯蔵後に有意に増強された(図14)。再かん流時に、ATP合成は4℃群において有意に低下したが、10℃群では変化しなかった。対照的に、再かん流は、亜正常温度で貯蔵された心臓においてATP合成の400%増加をもたらした。ATP研究に沿って、CP合成も21℃群での再かん流時に有意に増加した。
エクスビボで貯蔵された心臓の構造的バイアビリティを、収縮機能に重要なタンパク質の発現を評価することによって決定した。ミオシンHC、アクチニン、アクチン、ミオシンLCおよびトロポニンCの発現は、21℃で24時間 Somah中で貯蔵された心臓においてよく保存されていた(図15)。対照的に、これらのタンパク質は、24時間貯蔵後にまたは再かん流時に、他の温度群において可変的に失われた。
本実施例は、低体温でのインビトロ貯蔵後の最適心機能の保存における4および21℃でのSomahの相対的効力を評価する。
心臓摘出術および心筋保護
この比較研究において10頭の雌性ヨークシャーブタ(45〜54 kg)を用いた。動物実験委員会(施設内の動物管理使用委員会)より承認されたプロトコルにしたがって、心臓を4℃(n = 5)または21℃心筋保護(n = 5)の2群に分けた。記述のように縦隔法を用いて心臓を摘出した(Thatte HS, Rousou L, Hussaini BE, Lu XG, Treanor PR, Khuri SF: Development and evaluation of a novel solution, Somah, for the procurement and preservation of beating and non-beating donor hearts for transplantation. Circulation. 2009, 120: 1704-1713)。動物を大腿血管から採血してエクスビボ実験用の血液を回収し、収縮期圧が40 mmHgを下回ったときに大動脈をクランプした。4または21℃の、SOMAH心筋保護液(20 mM K+、終濃度の添加によって改変されたSOMAH (Thatte HS, Rousou L, Hussaini BE, Lu XG, Treanor PR, Khuri SF: Development and evaluation of a novel solution, Somah, for the procurement and preservation of beating and non-beating donor hearts for transplantation. Circulation. 2009, 120: 1704-1713) 1000 mlを、ローラーポンプおよび圧力トランスデューサ(Myotherm Cardioplegia System, Medtronics, Minneapolis, MN, USA)を用いて300〜400 ml/分の流速にて75〜100 mmHgの圧力で大動脈根へ注入し、iWorksシステム(Dover, NH, USA)を用いてデータを記録した。心臓停止後、心臓を全ての付属物から切断し、SOMAH中に21℃で5時間貯蔵する前に生理食塩水ですすいだ。切除15分以内に心臓を実験室に搬送した。
心臓を、21±2℃のウォータージャケット浴中SOMAH 2 Lを含有する滅菌ジップロックバッグに入れた。保存溶液の温度は貯蔵期間全体にわたって定期的に確認した。貯蔵中、37 mM Mg2+を補完した20 mM K+を溶液に補充することでSOMAHの麻痺能を増加させることにより、心臓を非収縮状態で維持した(Fukuhiro Y, Wowk M, Ou R, Rosenfeldt F, Pepe S: Cardioplegic strategies for calcium control: low Ca2+, high Mg2+, citrate, or Na+/H + exchange inhibitor HOE-642. Circulation. 2000, 102 (19-3); Osaki S, Ishino K, Kotani Y, Honjo O, Suezawa T, Kanki K, Sano S: Resuscitation of non-beating donor hearts using continuous myocardial perfusion: the importance of controlled initial reperfusion. Ann Thorac Surg. 2006, 81: 2167-2171)。心腔を慎重に空にして5時間貯蔵の前後に各群の心臓の重さを量った。組織パンチ生検(2×4 mm)を実験室において、HEPアッセイ法のため、貯蔵に入って15分(0時間; 対照)および5時間貯蔵後に、LV後壁から採取した。
記述のように組織抽出物においてATPおよびクレアチンリン酸(CP)を測定した(Thatte HS, Rousou L, Hussaini BE, Lu XG, Treanor PR, Khuri SF: Development and evaluation of a novel solution, Somah, for the procurement and preservation of beating and non-beating donor hearts for transplantation. Circulation. 2009, 120: 1704-1713; Bessho M, Ohsuzu F, Yanagida S, Sakata N, Aosaki N, Tajima T, Nakamura H: Differential extractability of creatine phosphate and ATP from cardiac muscle with ethanol and perchloric acid solution. Anal Biochem. 1991, 192: 117-124)。簡潔には、組織生検を急速凍結し、-80℃で貯蔵した; 組織20 mgを0.4 Mの氷冷過塩素酸400 μlに懸濁し、30秒間2回ホモジナイズした。ホモジネートを0℃で10分間、1970 gで遠心分離した。上清のアリコットを等量の氷冷0.4 M KHCO3で中和し、上記のように遠心分離した。上清をATPおよびCP測定のために-80℃で貯蔵した。ペレットを等量の0.1 M NaOHに溶解し、遠心分離し、タンパク質アッセイ法に用いた。ATPおよびCPは、製造業者によって提供されたプロトコルにしたがって、生物発光アッセイキット(Sigma-AldrichおよびGloMax-Multi + Detection System, Promega)を用いて測定された。
大動脈および肺動脈(PA)を分離した。大動脈にカニューレを挿入し(1/2〜3/8インチチューブコネクタ)、冠状動脈を40〜50 mmHgの圧力で4℃および21℃の両方の心筋保護群においてSOMAH 100 mlで穏やかに洗い流し、大動脈への空気の侵入を慎重に回避した。肺静脈(PV)を分離し、1/2〜1/4インチチューブコネクタでカニューレ挿入した。PAをサンプル収集のためにカニューレ挿入し、一方で上大静脈および下大静脈を結紮した。
全身ヘパリン化した血液を術中に採取し、白血球除去(Pall Leukoguardフィルタ)し、4℃で貯蔵した。実験の前に、SOMAH溶液(心臓の粘性ひずみを低減するために1:1の比)を用いて血液のヘマトクリットを20%に調整することによってかん流液を調製し、21℃に加温した。必要に応じて、それぞれ、10%デキストロース、KCl、CaCl2およびNaHCO3を用い、かん流液のpH、グルコース、K+、Ca2+およびHCO3-をブタ血中レベル(それぞれ7.5; 100 mg/dl; 3.7、1.38および32 mmol/l)に応じて調整した。
心臓の体外蘇生のために特注の器具を用いた(図1)。かん流液のpH、温度、pO2、pCO2、K+およびHCO3-のリアルタイムモニタリングのために、CDIモニタ(Clinical Documentation Improvement Monitoring System 500, Terumo cardiovascular systems corporation, Ann Arbor, MI)を用いた。これらのパラメータをまた、i-STAT分析装置(Abaxis Ltd, Union city, CA)を用いて流入/流出サンプルにおいて分析した。回路内のさまざまな点で圧力および流量を記録した(図16)。経食道心エコー検査(TEE)プローブを用いて、2Dエコーシステムにより心臓の収縮機能を評価した。心臓周囲のかん流液に浸された黄銅クロコダイルリードを用いて、2Dエコー中に3リードECGを記録した。SOMAH Device (Comdel Inc, Wahpeton, ND)専用に書かれたHMIソフトウェアを用いて、圧力および流量データをリアルタイムで収集およびモニタした。
心臓をSOMAH装置に取り付け、これに大動脈を通じて40〜60 mmHgで5分間1〜1.5リットルの21℃(pH 7.5)のSOMAHを、次いでかん流液を、pH、血液ガスおよび電解質平衡が確立されるまでかん流させた。かん流液のpH、グルコース、K+、Ca2+、HCO3-を上記のようにブタ血中レベルに応じて調整した。システム温度を30分かけて37℃に徐々に上昇させると、強力な心収縮が両群において認められた。40分以内に血行力学的な定常状態(pH、血液ガスおよび電解質に関して)が達成された。実験的かん流の総持続時間はおよそ180分であった。心臓は、システム温度が37℃に達するまで大動脈根(仕事量なし)を通してかん流され、その後、PVかん流(全仕事量)が実験の終了まで進行した。冠状動脈血流は、最初の順行性かん流中に1分間に大動脈を通って心臓に流れるかん流液の量によって、および作動中の心臓では1分間に肺動脈(両大静脈は結紮)から集められたかん流液の量によって決定された。電気変換(40〜50 J)および/またはエピネフリン(1:50,000〜1:100,000)を必要に応じて用いた(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor R, Thatte HS: Subnormothermic preservation in SOMAH: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014)。心外膜2Dエコーは、60分(ベースライン)時およびピーク性能時に、全仕事量下の心臓を有する2群ではかん流液かん流の開始からおよそ90分後に、ならびにその後30分ごとに機能評価のためTEEプローブを用いて行われた。ピーク心臓性能は、2Dエコーによって観察された最大収縮活性によって定義された。ピーク性能時のデータを2群間の比較に用いた。
術中に、ならびに心臓貯蔵10分、2時間および5時間の終了時に採取されたSomahサンプルにおいてVetscan VS2またはiStat (Abaxis Ltd, Union City, CA)を用い心臓クレアチンキナーゼ(CK)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、トロポニン-I (cTnI)、乳酸およびガス(pO2/pCO2)の定量的レベルを測定した。酵素アッセイ法の場合5分および90分の時点で、ならびにMVO2および乳酸の場合60分(ベースライン)および90分(ピーク性能)の時点で、VetscanまたはiStatでのかん流液かん流の開始後に、酵素アッセイ法のためならびにVetscan VS2またはi-Stat Systemを用いた心筋O2消費(MVO2)および乳酸値のかん流後評価のため流入(大動脈)および流出(PA)サンプルを収集した。MVO2を記述(Klabunde R: Cardiac function. Cardiovascular Physiology Concepts. 2011, Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD USA, 84-88)のように計算した。
経食道(TEE)プローブを、Acuson Cypressシステム(Acuson, Mountain View, CA)による術中およびエクスビボでの心機能の2Dエコー評価に用い、システムに付属するCypressビューアソフトウェアを用いて画像を分析した。心臓をSOMAH装置に接続し、心臓の表面の3分の2を覆うかん流液2 Lを含有するチャンバに浮かせた。ECGを実験の全経過中に記録し、良好な心収縮が観察された時にはかん流からおよそ45〜60分後に2Dエコーの収集を開始し、30分間隔で繰り返した。プローブを心臓に直接接触させて配し、プローブの角度およびパルスの方向を、心臓の機能的パラメータならびに心室壁および中隔の厚さの計算のため短軸像および長軸像を得るように調整した。
各群からの生化学的、血行力学的および機能的測定の比較分析のために、同数の動物(n = 5)を4℃および21℃の心筋保護群に割り当てた。2群間の有意差についての統計的比較は、SigmaPlotソフトウェアを用いて行った。対応のあるt検定を全ての比較に用いた。<0.05のP値を有意と見なした。全ての値を平均±SEMとして表す。実験設計の流れ図を図16に示す。
術中の心筋保護
心停止は心筋保護の温度に依存し、4℃群では10〜15秒以内に起こり、21℃群では20〜25秒以内に起こったが、これは心停止の低体温(4℃)要素が後者では意図的に排除されたためであろう。
心筋保護の温度に関係なく、全ての心臓は、変色することなく正常な肉眼形態を提示した。心臓は硬化または硬直の兆候がなく柔軟であった。2群における5時間貯蔵中の心臓の重量は、貯蔵前と貯蔵後との間で変化せず、貯蔵により誘発される肉眼的浮腫の欠如を実証していた(図示せず)。心臓酵素の時間依存性放出は、有意差がなかった両群において最小限に明らかであった(図示せず)。
図17に示されるように、心停止15分以内(対照)の、ATP、CPおよび総高エネルギーリン酸(HEP)の濃度は、全停止のためにおよそ10秒余計に要した21℃群の心臓でのより多くのエネルギー消費におそらく起因して、21℃の心筋保護心臓と比較して4℃において有意に高かった(P < 0.001)。どちらの群も、図17Bに示されるように、貯蔵中にCPおよびATPを活発に合成した。貯蔵終了時のHEPの総濃度は4℃の心臓において有意に高かった(P < 0.01)が、0時間時の値に対する5時間時の値の正規化から、図17Cに示されるように、貯蔵終了時4℃の心臓におけるよりも21℃の心臓における高いHEP利用可能性が実証された。
同様のかん流圧での初期の順行性かん流時の、大動脈を通る冠状動脈流は、4℃群よりも21℃の心臓において有意に大きかった(P < 0.05) (表4-1)。両群における心臓は、かん流の開始時に直ちに、緩徐な4室収縮を実証した。冠状動脈流は、心臓が激しく収縮し始めると、システム温度が30℃に上昇すると最初は減少した。システム温度が37℃に上昇するにつれて、圧力も流れもともに増加した。冠状動脈流は37℃で両群において最も高かった(表4-1)。
P1, P2, P3−それぞれの温度での大動脈根圧
F1, F2, F3−それぞれの温度での冠状動脈流
*4℃から有意
CK、ASTおよびcTnI放出の速度は、かん流期間中4℃の心臓において増加した(図18)。CKおよびcTnIの両方の放出は、かん流時間とともに有意に増加したが、ASTはそうでなかった。対照的に、同じ期間中に21℃の心臓におけるこれらの3種の酵素の放出の一次的減少が認められた(図18)。しかしながら、ASTではなく、CKおよびcTnIの放出は、4℃の心臓によるよりもかん流の開始時の21℃の心臓により有意に大きかった。
以前の所見(Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor R, Thatte HS: Subnormothermic preservation in SOMAH: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014)と一致して、酸素消費の増加および再かん流90分のピーク性能時の乳酸比の反転により実証された、4℃および21℃の両方の心筋保護群での再かん流時の嫌気性から好気性への代謝の速やかな切り替えが認められた(図19Aおよび19B)。酸素抽出、乳酸生成および利用は、ピーク性能時に両群において定常状態に達し、有意差はなかった。しかしながら、再かん流時に、21℃群の心臓は、作動中の心臓において強力なHEP合成を実証した。対照的に、生成は4℃の心臓において減弱し、HEPは実験の過程において減少し続けた。ATP、CPおよび総HEPの比(かん流後/かん流前)は21℃の心臓において、それぞれ1.10、1.97および1.17であったが、これはHEPアッセイ法のためにかん流後生検をとった、実験終了時の4℃の心臓において観察された0.47、0.32および0.38の比よりも有意に大きかった(p < 0.01)。
心房および心室の両方の即時の自発的活動が、両方の群において再かん流の開始時に明らかであった。温度が上昇するにつれて、一回の心臓除細動の後に約37℃で心室収縮力がピークに達し、また、正常な電気活動および電気機械結合を洞調律において両群で確立した。21℃の心筋保護群において5つの心臓のうち4つは、一回の心臓除細動で洞調律に戻り、さらなる強心法を必要としなかったが、4℃の心筋保護群における5つの心臓のうち2つは、最適な機能を維持するためにエピネフリンの単回投与をさらに必要とした。興味深いことに、両方の群における心臓は実験の全体を通じて柔軟なままであり、LVおよび中隔の厚さの不変、表4-2により示されるようにピーク性能時に浮腫を示さなかった。2Dエコーによって得られた心機能パラメータについての4℃心筋保護群と21℃心筋保護群との比較データは、インビボで観察されたものと同様であった(表4-2)。21℃でSOMAH心筋保護を受けた心臓はいっそう良好な回復を有するようであったが、2つの群の機能パラメータには有意差はなかった。
本実施例は、肝臓のリン酸合成を維持し、長期間の静的貯蔵依存性多細胞障害の進行を停止させる能力において、新規貯蔵溶液Somahを評価するために設計された。本予備研究の目的は、低温貯蔵72時間の期間中インビトロでDCDブタ肝臓の回復を維持および増強する能力において、現在臨床的に使用されているウィスコンシン大学溶液(UWS)とのSomahの比較効能を評価することであった。移植機能を評価するための将来の移植研究の実現可能性を試験するために、制限された体外肝再かん流およびSomah貯蔵肝の機能評価も行った。
表5-1のCoStorSol (UWS) (Preservation Solutions Inc, Elkhorn, WI)およびSomah (Somahlution, LLC, Jupiter, Fl)の貯蔵特性を比較した。他の全ての化学物質は、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)から入手した。血液ガス、電解質、乳酸、グルコース、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)およびクレアチンキナーゼ(CK)酵素を測定するためのVetScan iStat、VetScan VS2、CG4+、CG8+、Large Animal Profile、Comprehensive Diagnostic Profile cartridgesは、Abaxis Inc (Union City, CA)から購入した。
本研究は、動物実験小委員会(Animal Studies Subcommittee) (IACUC), VA Boston Healthcare Systemが承認したプロトコルにしたがって、それぞれ体重が40〜50kgの14頭の雌性ブタで行われた。動物を、それぞれ動物7頭の2群に分けた。心臓死および心臓摘出の60±10分後に、全肝臓を切除した。肝臓をUWS (UWS肝臓)またはSomah溶液(Somah肝臓)中4℃で72時間貯蔵した。溶液は貯蔵中に交換されなかった。撮像およびバイアビリティの生化学的評価のために、0、6、24および72時間の時点で肝生検標本を得た。UWSおよびSomah溶液を、代謝モニタリングのためにならびに肝臓機能に関連する他のアッセイ法および化合物のために1、6、24および72時間の時点でサンプリングした。
全身麻酔をテラゾール4〜6mg/kgおよびキシラジン2mg/kgの筋肉内(i.m.)注射で誘発した。挿管後、動物を静脈内(i.v.)プロポフォール(10mg/kg/時間)、レミフェンタニル(40〜60μg/時間)およびニムベックス(シサトラクリウム) 10〜20 mgで維持し、機械的に換気した。大動脈をクロスクランプし、心停止し、他の実験のために記述のように心肺ブロックを摘出した((Lowalekar SK, Cao H, Lu XG, Treanor R, Thatte HS: Subnormothermic preservation in SOMAH: a novel approach for enhanced functional resuscitation of donor hearts for transplant. Am J Transplant. 2014)。腹部正中切開後、肝動脈上の腹部大動脈にカニューレを挿入し、肝上部下大静脈(IVC)を経て戻ってきたかん流液が澄明になるまで、それぞれ100mmHgおよび300ml/分の圧力および流速で2Lの氷冷UWSまたはSomah溶液を用いて腹部臓器をフラッシングした。摘出は肝臓全摘出で終えた。アイスボックス中4℃に維持された保存溶液を含有するプラスチック袋に肝臓を移し、さらに分析するために30分以内に研究室に輸送した。保存溶液を含有する貯蔵ボックスに肝臓を移し、4℃でさらに72時間貯蔵した。
肝組織抽出物中のATPおよびクレアチンリン酸(CP)を測定した。簡潔に述べると、肝組織20mgを氷冷した0.4M過塩素酸400μLで懸濁し、30秒間のホモジナイズを2回実施した。ホモジネートを1970gの遠心力および0℃で10分間遠心分離した。上記のとおり、上清のアリコットを、氷冷した等量の0.4M KHCO3溶液で中和して遠心分離した。上清を-80℃で貯蔵し、ATPおよびCP測定を行った。ペレットを等量の0.1M NaOHで溶解して遠心分離し、タンパク質アッセイ法に使用した。製造業者が提供するプロトコルにしたがって、生物発光アッセイキット(Sigma- Aldrich and GloMax-Multi+ Detection System, Promega)を用いてATPおよびCPを測定した。
全身ヘパリン化した血液を術中に採取し、白血球除去し、4℃で貯蔵した。実験の開始前に、Somah溶液(ここではかん流液)を用いてヘマトクリットを20%に調整した。それぞれ、10%デキストロース、KCl、CaCl2およびNaHCO3を用い、かん流液のpH、グルコース、K+、Ca2+およびHCO3-をブタ血中レベル(それぞれ7.5; 100 mg/dl; 3.7、1.38および32 mmol/l)に応じて調整した; 必要に応じてガスを調整した。
肝臓をSomah中4℃で72時間貯蔵した(n=3)。肝動脈および門脈を同定しカニューレ挿入した。肝臓を、心臓のエクスビボ蘇生に用いた特注のSomah装置に取り付けたポリプロピレンかん流チャンバ内に保持した。かん流液のpH、温度、pO2、pCO2、K+およびHCO3-apop、圧力および流速の変化のリアルタイムモニタリングのために、特注のソフトウェア(Comdel Inc, Wahpeton, ND)を備えた酸素供給器、熱交換器、CDIモニタおよびデータ取得装置をシステムに組み入れた。Somah装置リザーバにかん流液2 Lを満たした。冷Somah 2 Lを用いて門脈から肝臓を穏やかにフラッシングし、次いで肝動脈(HA)および門脈(PV)を介してSomah装置に接続した。リザーバ排出を2つの回路へ迂回させた; 第一の回路では、かん流液を8〜10 mmHg (リザーバの高さを変えることによって調整)の圧力でPVへ重力により排出させた。第二の回路では、かん流液を、酸素供給器および熱交換器を介してHAへ(80〜100 mmHgの圧力で)ポンプにより迂回させた。かん流液の温度を20分間かけて37℃に上昇させ、かん流液を、肝臓を通して次の2時間循環させた。肝かん流液は肝静脈(HV)を通ってチャンバへ排出され、別のポンプによってリザーバに戻された。HVから排出するかん流液を、以下に述べるように、アルブミン、肝臓酵素および他の代謝物について時間的にサンプリングした。UWSに貯蔵されたDCD肝臓への損傷のために、この機能評価はSomah肝臓においてのみ行われた。
流入(HA)および流出(HV)かん流液において血液パラメータを評価した。CDIモニタ、VetScan iStatおよびVetScan VS2を利用して、生化学パラメータ、血液ガス、アルブミン合成ならびにアルカリホスファターゼ(ALP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)およびクレアチンキナーゼ(CK)を含む肝臓酵素について判定した。
SomahまたはUWSのいずれかに貯蔵された肝臓の組織生検を、0、6、24および72時間の貯蔵時点でとり、10%ホルマリンで固定し、病理組織検査(10μの切片; ヘマトキシリンおよびエオシン染色)のために処理を行った。画像は、オリンパス社製顕微鏡および画像分析システム(BX51TRF; Olympus America Inc, USA)を用いて入手および分析した。画像は、病理組織検査について3人の独立した観察者により盲検的に評価された。統計分析: 測定およびデータ抽出は、盲検下で行った。2群(UWS 対 Somah、各群n = 7; 静的貯蔵)で比較を行い、臓器機能に及ぼす2種類の溶液の影響を評価した。1方向分散分析(ANOVA)を用いて、さまざまなアッセイ法で定量化した初期値を、以降の時点に各群で得た数値と比較した後、ダネットの多重比較検定を実施し、続いてt検定で対応のある群間比較分析を行った。95%信頼水準(p<0.05)を認めた場合は、統計学的に有意であると容認した。別段の指示がない限り、数値は全て平均±SEMとした。分析は、全て0.05の有意水準を使いGraphPad Prism 6 (バージョン6.1)を用いて行った。
肉眼所見
UWSに入れて4℃で貯蔵したところ、肝臓の肉眼所見が急速に変化し、貯蔵後の最初の1時間以内に変色した状態となり、その後も経時的に劣化が続いた(図示せず)。それとは対照的に、Somahに入れて貯蔵した肝臓では、時間を72時間に延長して4℃で貯蔵した後も、色は摘出した新鮮肝臓(対照)と同等であった(図20)。これに加えて、貯蔵中のSomah肝臓に重量の増加はみられなかった(図示せず)。
多くの弱拡大の視野において、UWSで貯蔵した肝臓では、核クロマチンの凝縮および肝細胞の核濃縮変化を認めたが、Somahではみられなかった。二核性および倍数体肝細胞核は、UWSおよびSomahで保存した両肝臓から採取した切片で一貫して観察された。複数の走査野で慎重に撮影したところ、Somah肝臓では、近接する肝細胞の境界に明らかな変化を認めず、顕著な胆汁うっ滞または胆管の拡大はみられなかった。72時間時点にUWSから採取した切片では、広範な空胞化による肝細胞の変性が顕著であったが、Somah肝臓にはみられなかった(図21)。
UWS肝臓では、門脈三管の小胆管および大胆管を裏打ちする核に高度な濃縮がみられたため、胆管細胞のアポトーシスまたは壊死が示唆された。これに対して、Somahで72時間貯蔵した肝臓では、胆管および小胆管の外観は、核の位置が一律で変化はみられず、核の異質性も十分に維持されていた(図21)。また、UWS肝臓では、6時間後という早い時点で、胆管上皮剥離および小胆管の基底部に位置する核の崩壊を伴う粘膜の脱落を認めた(図22)。一方のSomah肝臓では、貯蔵後72時間時点でも、このような胆管上皮剥離はみられなかった(図21および22)。
新たに再構成したUWSおよびSomahの開始時点のpHはアルカリ性であるが(pHは、UWSのほうがSomahより高い)、貯蔵中のあらゆる時点でSomah (6.8〜7.0)のほうがUWS (7.3〜7.8)より酸性度が高かった。UWSでは、pHの低下率が低かったにも関わらず、乳酸の増加率が高かった。乳酸の生成は、溶液のpHの急激な低下に対応したものではなく、いずれの溶液も緩衝能が高いことが原因であると考えられる。UWSでは、乳酸値がSomahより1.5倍多く増加し、24時間と72時間で有意差がみられた(p<0.05) (図23Aおよび23B)。
UWS肝臓では、72時間貯蔵中にATP、CPおよび総リン酸濃度が有意に低下した(p<0.05) (図25)。貯蔵中のUWS肝臓では、総リン酸濃度が経時的に低下し、最初の6時間で32%、72時間貯蔵終了時点までに50%低下した。これに対して、Somah肝臓では、保存経過全体を通して、ATP、CPおよび総リン酸値に顕著な変化はみられなかった。Somah肝臓では、72時間時点に総リン酸濃度の上昇を認め(図25)、これは代謝物であるCO2と同等であった。
貯蔵溶液において、肝組織損傷マーカーであるALT、ASTおよびCK酵素の時間依存的な放出が観察された。UWSで肝臓を貯蔵したところ、Somahで貯蔵した肝臓と比較して、3種類全ての酵素の放出が有意に増加した(p<0.05) (図26)。
Somahで(72時間)貯蔵した肝臓を、37℃で血液(かん流液)を用いて2時間再かん流し、機能を評価した。再かん流した肝臓による酸素消費量は、30分時点で38%、120分時点で64%と有意に増加した(p<0.05)。これに付随して、かん流液に放出された乳酸濃度は、30分時点で11%、2時間終了時点で41%低下したため、代謝が嫌気性から好気性に変わることが示唆された。
昨年に腎臓移植が必要となったものの受けることができなかった患者は100例あたり86例であり、待機リストに追加される移植適応患者は増加を続けている[National Kidney Foundation; http://www.kidney.org]。これは、過去数十年で臓器移植が大幅に進歩したにも関わらず起きていることであり、腎代替療法(血液透析および腹膜透析)の使用は、重度の衰弱性および/または生命を脅かす合併症の原因となるのみでなく、高頻度の通院を要するため、患者の日常生活の妨げとなり、社会への経済的負担にもなっている。
腎臓の摘出術
施設内動物実験委員会が承認したプロトコルにしたがって、体重が40〜50kgの雌性ヨークシャーブタを使用した。ブタをテラゾール4〜6mg/kgの筋肉内注射およびキシラジン2mg/kgの筋肉内注射で鎮静させて挿管し、人工呼吸器に接続した。麻酔は、プロポフォール(10mg/kg/時間)およびレミフェンタニル(40〜60μg/時間)の静脈内投与によって維持した。術前10分前に、麻酔薬のシサトラクリウム(10〜20mg静脈内投与)を投与した。胸骨正中切開後に全身ヘパリン化(300mg/kg)を行い、大動脈根にカニューレを挿入した。記述のとおり、大動脈遮断後に氷冷した心筋保護液(20mM K+)を注入して心臓を停止させ、他の実験を行うため心臓を摘出した[6,7]。心収縮が完全に停止した時刻を、他の臓器の温虚血開始時点として記録した。腹部正中切開後、肝動脈上の腹部大動脈にカニューレを挿入し、下大静脈(IVC)を経て戻ってきたかん流液が澄明になるまで、100mmHgの圧力および300mL/分の流速で2Lの氷冷したUW (CoStorSol; Preservation Solutions Inc., Elkhorn, WI)またはSomah溶液(Somahlution Inc., Jupiter, FL)を用いて、腹部臓器をフラッシングした。最初に、他の実験で使用するため、肝切除術を行って腹部臓器を摘出し、その後、慎重に腎茎を離断して両側腎全摘術を行った。腎臓をすみやかにSomahまたはUW溶液中に移し(表6-1)、4℃で72時間静置貯蔵した。0時点、6、24および72時間時点に腎臓の生検標本を採取し、病理組織検査、HEPおよびウエスタンブロットアッセイ法を行った。0時点は、貯蔵後1時間(初回生検前に動物研究施設から実験室に腎臓を移動する際に要した時間)に相当する。
組織をホルマリンで固定し、パラフィン包埋後に厚さ10μの切片を作製し、パラフィンを融解させてスライドガラスの上に載せ、さらに処理を行った。組織切片を乾燥させて、エタノール濃度を逐次上昇させた後、スライドをキシラジン除去洗浄剤に浸漬させてからヘマトキシリンおよびエオシンで染色を行い、カバーガラスを載せて顕微鏡で観察した。画像は、オリンパス社製顕微鏡および画像分析システム(BX51TRF; Olympus America Inc, USA)を用いて入手および分析し、盲検下で独立した観察者が評価を行った。
記述のとおりに腎組織抽出物中のATPおよびクレアチンリン酸(CP)を測定した[4-7,10]。簡潔に述べると、腎組織20mgを氷冷した0.4M過塩素酸400μLで懸濁し、30秒間のホモジナイズを2回実施した。ホモジネートを1970gの遠心力および0℃で10分間遠心分離した。上記のとおり、上清のアリコットを、氷冷した等量の0.4 M KHCO3溶液で中和して遠心分離した。上清を-80℃で貯蔵し、ATP/CP測定を行った。ペレットを等量の0.1M NaOHで溶解して遠心分離し、タンパク質アッセイ法に使用した。製造業者のプロトコルにしたがって、生物発光アッセイキット(Sigma-Aldrich and GloMax Multi+Detection System, Promega)を用いてATP/CPを測定した。
腎組織20mgを、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する抽出緩衝液で懸濁した。組織を30秒間ホモジナイズし、16,100×gの遠心力で10分間遠心分離した後、上清を回収した。種々のサンプルから回収した等量の総タンパク(30μg)を、5% β-メルカプトエタノールを含有するLaemmliサンプル緩衝液と混合し、100℃で3分間加熱した。タンパク質を10% SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜にエレクトロブロットした。記述のとおり[4]、タンパク質は抗体(抗カベオリン、eNOS、vWFおよびEPO)ならびに化学発光法を用いて同定し、バンドの密度をベータアクチンに対して正規化した。
VetScan iStatおよびVetScan VS2を用いて貯蔵中に、SomahおよびUWにおけるpHと乳酸の変化、グルコース代謝、酸素および二酸化炭素濃度(pO2およびpCO2)を、0時点(1時間、上記参照)、6、24および72時間時点で評価した。
測定およびデータ抽出は、盲検下で行った。2群(UW 対 Somah、各群n = 7)で比較を行い、2種類の溶液の影響を評価した。1方向分散分析(ANOVA)を用いて、さまざまなアッセイ法で定量化した初期値を、以降の時点に各群で得た数値と比較した後、ダネットの多重比較検定を実施し、続いてt検定で群間比較分析を行った。95%信頼水準(p<0.05)を認めた場合は、統計学的に有意であると容認した。別段の指示がない限り、数値は全て平均±SEMとした。分析は、全てGraphPad Prism 6 (v6.1)を用いて行った。著者らは、データを閲覧し、それらを統合する責任をすべて有していた。全ての著者が、原稿の記述を読み、その内容に同意した。
腎臓の肉眼形態
4℃で1〜3日間浸漬した状態で静置貯蔵した腎臓を観察した。UWで貯蔵した腎臓は、斑点を伴うくすんだ色の外観を呈していたことから(図1a)、臓器のうっ血が示唆された。これとは対照的に、Somahで貯蔵した腎臓は健康な外観を呈しており、貯蔵3日後も色は一様であり、形態学的にも変化はみられなかった(図1d)。
貯蔵溶液の種類を問わず、観測時点にあらゆるDCD腎臓の顕著な間質性浮腫はみられず、腎組織の構造は、全体的に十分維持されていた(図1b、1c、1eおよび1f)。尿細管内腔の正常な非結晶性物質は、あらゆる時点に近位尿細管(PCT)で観察され、貯蔵期間に伴って増加することはなかった。遠位尿細管(DCT)では、UWおよびSomahで保存した腎臓のいずれにおいても、軽微〜中等度の上皮剥離が顕著であった72時間時点を除く全ての時点で壊死組織片はほとんどみられなかった(図1cおよび1f)。両液ともあらゆる時点で腎糸球体の細胞性は正常であり、ボーマン嚢の内腔も正常な外観および連続的な壁側上皮を認めた(図1b、1c、1eおよび1f)。
体外貯蔵中に代謝機能を測定し、DCD腎臓の生理学的/生化学的バイアビリティを評価したところ、UW群とSomah群では活発な代謝に差がみられることが示された。よりアルカリ性が高い(UWではさらに高かった) pHから始めて溶液を新たに再構成したところ、SomahではpHの時間依存的低下が顕著であり、UW (7.5〜7.4)より酸性度が高い状態(6.8〜7.2)が維持された(図30A)。UW溶液ではグルコース値が一時的に上昇したため、グリコーゲン分解が示唆されたが、Somahでは6時間時点とそれ以降に比較的有意なグルコース値の低下がみられたことから(p<0.05)、Somahでは腎組織/細胞でグルコースが使用されることが示された(図2B)。反対にUWでは、72時間時点の乳酸値の上昇率がSomahより有意に高かった(p<0.05) (図30C)。
UW腎組織中のATP、クレアチンリン酸(CP)および総HEP濃度は、低体温貯蔵中に直線的かつ有意に低下した(p<0.05)。HEPは6時間以内に20%低下し(図31)、72時間貯蔵終了時点の純低下率は45%であった。一方、Somah腎臓では、ATP、CPおよび総HEP濃度に顕著な変化はみられず、ATPの低下は、同時にみられたCP濃度の上昇によって補償されたため、貯蔵している腎組織中の総エネルギーレベルは優位な状態で維持された。
貯蔵期間全体において、Somahで保存したDCD腎臓では、カベオリン、eNOS、vWFおよびEPOの発現が十分維持された(図32)。これに対して、UWで保存した腎臓でもタンパク質のカベオリンの発現に変化はみられず、eNOS、vWFおよびEPOの発現が時間依存的に減少したことから、腎組織が損傷した可能性が示唆された。
Claims (116)
- 少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、ならびにアデノシンを含む、生体組織または臓器を保存または蘇生させるための組成物。
- 生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、およびアデノシンを含む、哺乳動物の臓器を保存するための組成物であって、10〜21±4℃の温度で維持される、組成物。
- 10〜21±4℃の温度で維持される、請求項1記載の組成物。
- 生理学的塩溶液が少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む、請求項2記載の組成物。
- インスリンをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
- インスリンが使用直前に組成物に添加される、請求項5記載の組成物。
- 生理学的塩溶液が、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
- 0.4〜10 mMのリン酸カリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
- 4〜65 mMの塩化カリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
- 80〜135 mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
- 2〜25 mMの重炭酸ナトリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
- 0〜1.5 mMの塩化カルシウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
- 0.15〜30 mMのリン酸ナトリウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
- 0.5〜45 mMの塩化マグネシウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
- 0.5〜1.5 mMの硫酸マグネシウムを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
- 約2.5〜5 mMのクレアチンをさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項記載の組成物。
- 約0.001〜0.5 mMのジクロロアセテートをさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の組成物。
- 約0.5〜2 mMのオロト酸をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項記載の組成物。
- 約11〜25 mMの糖をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項記載の組成物。
- 糖がグルコースまたはデキストロースである、請求項19記載の組成物。
- 約2〜10 mMのアルギニンをさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項記載の組成物。
- 約0.001〜10 mMのリンゴ酸をさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物。
- 約1〜10 mMのシトルリンをさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項記載の組成物。
- 約0.001〜10 mMのシトルリンリンゴ酸をさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物。
- 約5〜10 mMのカルノシンをさらに含む、請求項1〜24のいずれか一項記載の組成物。
- 約5〜10 mMのカルニチンをさらに含む、請求項1〜25のいずれか一項記載の組成物。
- 生体組織または臓器を請求項1〜26のいずれか一項記載の組成物と接触させる段階を含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための方法。
- 前記組成物が10〜21±4℃の温度で維持される、請求項27記載の方法。
- 生体組織または臓器が最長24時間まで貯蔵または保存される、請求項27または28記載の方法。
- 生体組織または臓器が、心臓、腎臓、肝臓、胃、脾臓、皮膚、膵臓、肺、脳、眼、腸、および膀胱からなる群より選択される、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
- 前記組成物と接触していない生体組織または臓器と比べて、保存または蘇生後の生体組織または臓器において、高エネルギーリン酸量が高い、請求項27〜30のいずれか一項記載の方法。
- 臓器が心臓である、請求項27〜30のいずれか一項記載の方法。
- 前記組成物と接触していない生体組織または臓器と比べて、保存または蘇生後の生体組織または臓器において、冠状動脈血流量が高い、請求項32記載の方法。
- 前記組成物と接触していない心臓と比べて、保存または蘇生後の心臓において、部分面積の変化率、駆出率、および/または1回拍出量の1つまたは複数が増加する、請求項32記載の方法。
- 少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、ならびにアデノシンを組み合わせる段階を含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための組成物を製造するための方法。
- 前記組成物をインスリンと組み合わせる段階をさらに含む、請求項35記載の方法。
- インスリンが使用直前に組み合わせられる、請求項36記載の方法。
- 前記組成物が10〜21±4℃の温度で維持される、請求項35〜37のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む、請求項35〜38のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が0.44〜10 mMのリン酸カリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が4〜65 mMの塩化カリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が80〜135 mMの塩化ナトリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が2〜25 mMの重炭酸ナトリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が0〜1.5 mMの塩化カルシウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が0.15〜30 mMのリン酸ナトリウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が0.5〜45 mMの塩化マグネシウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
- 生理学的塩溶液が0.5〜1.5 mMの硫酸マグネシウムを含む、請求項35〜39のいずれか一項記載の方法。
- 約2.5〜5 mMのクレアチンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項35〜47のいずれか一項記載の方法。
- 約0.5〜2 mMのオロト酸を組み合わせる段階をさらに含む、請求項35〜48のいずれか一項記載の方法。
- 約11〜25 mMの糖を組み合わせる段階をさらに含む、請求項35〜49のいずれか一項記載の方法。
- 糖がグルコースまたはデキストロースである、請求項50記載の方法。
- 約2〜10 mMのアルギニンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜51のいずれか一項記載の方法。
- 約0.001〜10 mMのリンゴ酸を組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜52のいずれか一項記載の方法。
- 約1〜10 mMのシトルリンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜53のいずれか一項記載の方法。
- 約0.001〜10 mMのシトルリンリンゴ酸を組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜52のいずれか一項記載の方法。
- 約5〜10 mMのカルノシンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜55のいずれか一項記載の方法。
- 約5〜10 mMのカルニチンを組み合わせる段階をさらに含む、請求項36〜55のいずれか一項記載の方法。
- 少なくとも20 mMのカリウムイオンおよび少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、アデノシンを含むキット。
- インスリンをさらに含む、請求項58記載のキット。
- キットの構成要素から構成された臓器保存溶液の使用直前にインスリンを組み合わせるための取扱説明書をさらに含む、請求項59記載のキット。
- 生理学的塩溶液が、リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選択される1つまたは複数の塩を含む、請求項58〜60のいずれか一項記載のキット。
- クレアチンをさらに含む、請求項58〜61のいずれか一項記載のキット。
- オロト酸をさらに含む、請求項58〜62のいずれか一項記載のキット。
- 糖をさらに含む、請求項58〜63のいずれか一項記載のキット。
- 糖がグルコースまたはデキストロースである、請求項64記載のキット。
- アルギニンをさらに含む、請求項58〜65のいずれか一項記載のキット。
- リンゴ酸をさらに含む、請求項58〜66のいずれか一項記載のキット。
- シトルリンをさらに含む、請求項58〜67のいずれか一項記載のキット。
- シトルリンリンゴ酸をさらに含む、請求項58〜66のいずれか一項記載のキット。
- カルノシンをさらに含む、請求項58〜69のいずれか一項記載のキット。
- カルニチンをさらに含む、請求項58〜70のいずれか一項記載のキット。
- ジクロロアセテートをさらに含む、請求項58〜71のいずれか一項記載のキット。
- 20 mM塩化カリウム、0.44 mMリン酸カリウム、37 mM塩化マグネシウム、0.5 mM硫酸マグネシウム、125 mM塩化ナトリウム、5 mM重炭酸ナトリウム、1.3 mM塩化カルシウム、0.19 mMリン酸ナトリウム、11 mM D-グルコース、1.5 mMグルタチオン、1 mMアスコルビン酸、5 mM L-アルギニン、1 mM L-シトルリンリンゴ酸、2 mMアデノシン、0.5 mMオロト酸クレアチン、2.0 mMクレアチン一水和物、10 mM L-カルノシン、10 mM L-カルニチン、および0.5 mMジクロロアセテートを含む、生体組織または臓器を貯蔵、保存または蘇生させるための組成物。
- 100単位/Lのインスリンをさらに含む、請求項73記載の組成物。
- インスリンが使用直前に組成物に添加される、請求項74記載の組成物。
- 10〜21±4℃の温度で維持される、請求項73〜75のいずれか一項記載の組成物。
- 少なくとも20 mMのカリウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、およびアデノシンを含む、心臓切開手術中の心停止のためのまたは移植用のドナー心臓のための心筋保護溶液。
- 生理学的塩溶液が少なくとも20 mMの塩化カリウムを含む、請求項77記載の溶液。
- 4〜10℃で維持される、請求項77または78記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が少なくとも37 mMのマグネシウムイオンをさらに含む、請求項77または78記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が少なくとも37 mMの塩化マグネシウムを含む、請求項80記載の溶液。
- 10〜25℃で維持される、請求項80または81記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が少なくとも25 mMの塩化カリウムを含み、さらに少なくとも37 mMのマグネシウムイオンを含む、請求項77または78記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が少なくとも45 mMの塩化カリウムおよび少なくとも37 mMの塩化マグネシウムを含む、請求項83記載の溶液。
- 25〜37℃で維持される、請求項83または84記載の溶液。
- 4〜65 mMのカリウムイオンおよび1.5〜45 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、アデノシンを含む、心臓切開手術中の心停止のためのまたは移植用のドナー心臓のための心筋保護溶液。
- 生理学的塩溶液が37 mMのマグネシウムイオンを含む、請求項86記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が塩化マグネシウムを含む、請求項86または87記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が20 mMのカリウムイオンを含む、請求項86記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が塩化カリウムを含む、請求項86または89記載の溶液。
- 4〜37℃で維持される、請求項86〜90のいずれか一項記載の溶液。
- 4〜65 mMのカリウムイオンおよび1.5〜45 mMのマグネシウムイオンを含む生理学的塩溶液、グルタチオン、アスコルビン酸、ならびにアデノシンを含む、移植用のドナー肺を保存するための溶液。
- 生理学的塩溶液が2 mMのマグネシウムイオンを含む、請求項93記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が塩化マグネシウムを含む、請求項92または93記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が7.5 mMのカリウムイオンを含む、請求項92記載の溶液。
- 生理学的塩溶液が塩化カリウムを含む、請求項92または95記載の溶液。
- 4〜37℃で維持される、請求項92〜96のいずれか一項記載の溶液。
- クレアチンをさらに含む、請求項77〜97のいずれか一項記載の溶液。
- オロト酸をさらに含む、請求項77〜98のいずれか一項記載の溶液。
- 糖をさらに含む、請求項77〜99のいずれか一項記載の溶液。
- 糖がグルコースまたはデキストロースである、請求項100記載の溶液。
- アルギニンをさらに含む、請求項77〜101のいずれか一項記載の溶液。
- リンゴ酸をさらに含む、請求項77〜102のいずれか一項記載の溶液。
- シトルリンをさらに含む、請求項77〜103のいずれか一項記載の溶液。
- シトルリンリンゴ酸をさらに含む、請求項77〜102のいずれか一項記載の溶液。
- カルノシンをさらに含む、請求項77〜106のいずれか一項記載の溶液。
- カルニチンをさらに含む、請求項77〜107のいずれか一項記載の溶液。
- ジクロロアセテートをさらに含む、請求項77〜108のいずれか一項記載の溶液。
- 心臓を請求項77〜91または98〜108のいずれか一項記載の溶液と接触させる段階を含む、心臓切開手術中または心臓ドナー切除手術中の心筋保護を誘導するための方法。
- 肺を請求項92〜108のいずれか一項記載の溶液と接触させる段階を含む、移植手術の前にドナー肺を保存するための方法。
- 糖がヘキソースまたはペントースを含む、請求項19記載の組成物、請求項50記載の方法、請求項64記載のキット、および請求項100記載の溶液。
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