JP2019018357A - Pc鋼材の中間定着工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 コンクリート躯体にプレストレスを与えるための中間定着部材をPC鋼材に容易に成形(固定)できる中間定着工法を提供する。【解決手段】 本発明は、既設のPC構造物において、解体部を除いた残置部でPC鋼材を中間定着させる中間定着工法である。まず、PC構造物のコンクリート躯体の一部を除去することによって露出させたPC鋼材に型枠を装着する。そして、型枠内に溶融させた金属を充填することにより、残置部にプレストレスを与えるための中間定着部材をPC鋼材に一体的に成形する。【選択図】 図2

Description

本発明は、既設のPC構造物におけるPC鋼材の中間定着工法に関する。
PC(プレストレストコンクリート)構造物では、コンクリート躯体の内部にPC鋼材を緊張させた状態で埋設し、両端を定着装置でコンクリート躯体に固定することにより、コンクリート躯体にプレストレス(圧縮力)を与えている。
このような既設PC構造物を部分的に解体したい場合には、残置部のPC鋼材にプレストレスを残存させなければならないため、中間定着工法が用いられる。中間定着工法としては、例えば、特許文献1に記載の工法がある。特許文献1では、PC構造物の中間部においてPC鋼材を切断前にはつり出し、露出したPC鋼材を中間定着装置により残置部に定着している。中間定着装置には、楔などの機械式の定着構造や膨張材を用いた付着式による定着構造が利用されている。
特許第4712612号公報
特許文献1の中間定着工法では、PC鋼材を画一的な形状の楔で把持するため、PC鋼線を均一に密集させる必要があった。以下、図7を用いてPC鋼線の密集状態に着目しつつ、特許文献1の中間定着工法ついて説明する。図7は、複数本のPC鋼線が収容されたシースの切断面を示す断面図である。図7において、シース220の内部には複数本のPC鋼線210が収容されており、PC鋼線210の周囲にはグラウトが充填されている。
図7(A)に示す切断面Aは、複数本のPC鋼線210がシース220の中心部を基準として均一に密集した状態を示す。すなわち、切断面Aでは、複数本のPC鋼線210が円形領域内で密集している。例えば、定着装置付近では、PC鋼線210は、シース220の中心部にまとまって配置されやすいため、複数本のPC鋼線210が切断面Aのように均一な密集状態となる。
図7(B)に示す切断面Bは、複数本のPC鋼線210がシース220の内部で不均一に密集した状態を示す。すなわち、切断面Bでは、複数本のPC鋼線210がシース220の内部で偏って配置されており、非円形領域内で密集している。例えば、定着装置から離れた位置では、シース220の内部で偏って配置されやすいため、複数本のPC鋼線210が切断面Bのように不均一な密集状態となる。
中間定着は、既設PC構造物を部分的に解体する前に、残置部と解体部の境界となる中間部、すなわち定着装置から離れた位置で行われる。このため、中間部におけるPC鋼線の密集状態は、図7(B)に示す切断面Bのように不均一であることが多く、かつ、その密集状態は、コンクリート躯体からはつり出さないと正確に把握することが難しい。したがって、PC鋼線を楔などの機械的な方法により把持する中間定着装置を用いる場合、PC鋼線同士の隙間にばらつきが生じることに加え、中間定着装置とPC鋼線との間の隙間にばらつきが生じてしまうため、画一的な形状の楔を用いてPC鋼線を把持することが困難である。
上記の問題点を解決するために、特許文献1には、楔を用いた中間定着工法が記載されている。特許文献1の中間定着工法では、集合機で複数本のPC鋼線を集合させ、PC鋼線の集合体を覆うように楔を装着する。楔には、PC鋼線と触れ合う面に鋼製インサートが接着されており、定着作業で楔に締め付け力が加わると、鋼製インサートが破砕する。この破砕片がPC鋼線同士の隙間や、PC鋼線と楔の間の隙間を埋めることで、摩擦力が増大し、楔がPC鋼線を把持する。また特許文献1には、楔の装着前に、PC鋼線の隙間を埋めるようにダミー材を配置し、PC鋼線の密集状態を整える方法も開示されている。
しかしながら、特許文献1の中間定着工法は、プレストレスが導入されたPC鋼線を集合機で外力を加えて強制的に集合させているため、PC鋼線が集合機からの外力を受けて破断する可能性がある。
さらに、PC鋼材にダミー材を配置する方法では、PC鋼線の密集状態によってダミー材を配置する位置や本数が変わるため作業が煩雑となってしまう。仮に、PC鋼線の密集状態が均一に整ったとしても、ダミー材の配置でPC鋼材の径の大きさが元の径の大きさから変化することがある。この場合、画一的な形状の楔を用いてPC鋼線を把持することが困難となる。
そこで本発明は、コンクリート躯体にプレストレスを与えるための中間定着部材をPC鋼材に容易に成形(固定)できる中間定着工法を提供することを目的とする。
本願第1の発明は、既設のPC構造物において、解体部を除いた残置部でPC鋼材を中間定着させる中間定着工法であり、PC構造物のコンクリート躯体の一部を除去することによって露出させたPC鋼材に型枠を装着する。そして、型枠内に溶融させた金属を充填することにより、残置部にプレストレスを与えるための中間定着部材をPC鋼材に一体的に成形する。
上述の金属は、融点が300℃〜400℃の金属とすることができる。
中間定着部材としては、メス部材と嵌合する楔形状のオス部材とすることができる。この場合、ジャッキを用いて、プレストレスが作用する方向とは逆方向にメス部材を移動させることにより、メス部材にオス部材を嵌合させる。そして、コンクリート躯体の除去部及びメス部材の間に配置されたスペーサ装置を用いて、メス部材及びオス部材の嵌合状態を維持する。
また、メス部材及びオス部材が嵌合した状態において、ジャッキを用いて、プレストレスが作用する方向とは逆方向にメス部材及びオス部材を移動させることにより、PC鋼材の緊張力を増加させる。コンクリート躯体の除去部をコンクリートで埋め戻す前に、オス部材のうち、メス部材から突出する部分の周囲をキャップで覆うことができる。
一方、ジャッキを用いて、プレストレスが作用する方向とは逆方向に中間定着部材を移動させことにより、PC鋼材の緊張力を増加させる。コンクリート躯体の除去部及び中間定着部材の間に配置されたスペーサ装置を用いて、PC鋼材の緊張力を増加させた位置に中間定着部材を保持する。
本発明の中間定着工法によれば、既設のPC構造物で配置されているPC鋼材に対して型枠を設置して、型枠内に溶融金属を充填させるだけで、PC鋼材に中間定着装置を一体的に成形することができる。
PC構造物の内部を示す断面図である。 本実施形態の中間定着工法の工程の一例を示す図である。 本実施形態におけるジャッキ及び中間定着装置を示す上面図である。 本実施形態の中間定着工法の工程の別の例を示す図である。 本実施形態のPC鋼材に装着された中間定着装置の変形例における上面図である。 オス部材を加圧成形するときの型枠を示す断面図である。 図6AのA−A断面図である。 オス部材を加圧成形するときの型枠を示す側面図である。 オス部材を加圧成形するときの型枠を示す端面図である。 PC鋼材の密集状態を示す断面図である。
図1を用いて、本発明の実施形態である中間定着工法について説明する。図1は、PC構造物の内部を概略的に示す断面図である。
既設のPC構造物100は、例えば、T桁橋やI桁橋等である。図1では、一例としてT桁橋を示す。
PC鋼材1は、PC構造物100の幅方向(図1の左右方向)に配置され、緊張した状態でコンクリート躯体2に埋設されている。PC鋼材1の両端は、コンクリート躯体2の幅方向両端において、定着装置1A,1Bで定着されている。定着装置1A,1Bとしては、公知の定着装置が用いられる。これにより、コンクリート躯体2にPC鋼材1の復元力、すなわち、プレストレスが作用し、コンクリート躯体2はひび割れ耐性を得ることができる。図1では、PC鋼材1を1本として示しているが、例えば、複数本のPC鋼材1を束ねたものを用いることもできる。
また、図1に示すPC構造物100では、PC鋼材1を上下方向に曲げながらコンクリート躯体2に埋設している。PC鋼材1には緊張力が働いているため、2つの定着装置1A,1Bを結ぶ仮想直線に沿う方向にPC鋼材1を変位させる力が発生している。このとき、PC鋼材1の領域P(図1の点線の楕円で囲った領域)のように、PC鋼材1の曲率が大きくなるほど、領域Pでは、図7の切断面Bのように、複数本のPC鋼材がシースの中心に対して一方向に偏った状態で密集しやすい。
PC構造物100において、解体部R2(一点鎖線枠内の領域)のみを解体する場合、PC鋼材1を切断する必要がある。PC鋼材1によってコンクリート躯体2に与えられているプレストレスに悪影響を与えずに解体部R2のみを解体するためには、PC鋼材1を切断する前に、残置部R1(点線枠内の領域)と解体部R2の境界を含む所定の中間部10(実線枠内の領域)において、中間定着を施す必要がある。中間定着では、中間部10においてコンクリート躯体2の一部をはつり、このはつり出したPC鋼材1に対して、解体部R2側の定着装置1Bに代わってPC鋼材1の緊張力を受け替えるための中間定着装置が設置される。中間定着装置は、解体部R2の解体後に残置部R1に固定される。これにより、残置部R1にPC鋼材1の緊張に伴うプレストレスを残存させつつ、解体部R2のみを解体することができる。
本実施形態の中間定着工法では、中間定着装置として、互いに嵌合するオス部材とメス部材が用いられる。特に、オス部材は、鋳込み成形でPC鋼材1の外面に対して一体的に形成され、メス部材は、PC鋼材1を挿通させつつオス部材が嵌合されるスペースを備えている。そして、中間定着装置に対して解体部R2側の位置でPC鋼材1を切断することで、中間定着を施すことができる。以下、本実施形態の中間定着工法について詳細に説明する。
図2(A)〜(F)は、図1の中間部10において、本実施形態の中間定着工法の工程を経時的に示したものである。点線枠内は、コンクリート躯体2をはつり出した、はつり部である。なお、図2において、後述するオス部材61については、断面ではなく、外面を示している。以下、各工程について説明する。
図2(A)に示す工程Aでは、まず、PC構造物100のコンクリート躯体2の一部をはつることによりPC鋼材1の一部をはつり出す。ここで、PC構造物100では、PC鋼材1の周囲にシース(不図示)が配置されているとともに、PC鋼材1及びシースの間にグラウトが充填されているため、PC鋼材1を露出させるために、シースやグラウトが取り除かれる。そして、PC鋼材1の露出部分に型枠70が装着される。型枠70は、金属を溶融させた状態で充填するための充填口70aと、充填口70aから充填された溶融金属を所定形状に成形する成形部70bを有する。成形部70bには、PC鋼材1を貫通させる穴部が形成されている。例えば、型枠70は、半割の本体片二つから構成され、二つの本体片がPC鋼材1を挟むように装着される。
図2(B)に示す工程Bは、オス部材61を鋳込み成形によって成形する工程である。溶融させた金属を充填口70aから成形部70bに充填して、溶融金属を固化させることにより、成形部70bに沿った形状(楔形状)のオス部材61が成形される。ここで、成形部70b内の金属の温度がオス部材61の形状を維持できる温度以下になったら、型枠70を取り外す。これにより、オス部材61は、PC鋼材1の外面に固定される。
オス部材61は、鋳込み成形で成形されるため、型枠70の成形部70bによって、オス部材61の形状が決定される。本実施形態では、オス部材61の形状を、PC鋼材1の軸方向に対して傾斜したテーパ面を有する楔形状としている。
オス部材61を成形する原料(金属)には、鋳込温度においてPC鋼材1に与える熱影響(悪影響)を抑制できる金属が用いられる。具体的には、亜鉛合金、亜鉛アルミ合金、ホワイトメタル等の低融点合金が用いられる。これらの低融点合金の鋳込温度は300〜400℃である。ここで、鋳込時にPC鋼材1が受ける熱影響としては、鋳込時の加熱に伴うPC鋼材1の破断伸びが挙げられる。PC鋼材1の破断伸びは、コンクリート躯体2のはつり部で露出するPC鋼材1の長さと、PC鋼材1においてオス部材61が形成される領域の長さとに依存する。そこで、これらの長さを適宜決めることにより、鋳込時の加熱によるPC鋼材1の伸びがPC鋼材1の破断伸びに達しない温度にて鋳込が可能である。したがって、溶融させた低融点合金をPC鋼材1に接触させてもPC鋼材1に与える熱影響(悪影響)を抑制でき、成形部70bに溶融金属を充填するだけの簡易な方法でオス部材61を成形することができる。
図2(C)に示す工程Cは、工程Bの後、板部材30、スペーサ装置40、ジャッキ50、及びメス部材62を設置する工程であり、メス部材62は、オス部材61と嵌合することができるように設置される。オス部材61及びメス部材62によって中間定着装置60が構成される。板部材30は、コンクリート躯体2のはつり部の表面に沿って配置され、板部材30及び中間定着装置60の間には、スペーサ装置40及びジャッキ50が配置される。各部材の構成については、図3を参照して後述する。
図2(D)に示す工程Dは、工程Cの後、オス部材61をメス部材62に嵌合させる工程である。工程Dにおいて、ジャッキ50は、PC鋼材1の長手方向において、スペーサ装置40を介してメス部材62をオス部材61に向かって押圧し、メス部材62にオス部材61を嵌合させる。
オス部材61をメス部材62に嵌合させるだけでもよいが、オス部材61をメス部材62に嵌合させた状態において、メス部材62をさらにジャッキ50で押圧することにより、PC鋼材1の緊張力を増加させることができる。すなわち、オス部材61をメス部材62に嵌合させた状態では、オス部材61及びメス部材62が一体となって移動するため、オス部材61が固定されたPC鋼材1を緊張させることができ、残置部R1側の定着装置1Aと中間定着装置60の間におけるPC鋼材1に更なる緊張力を付与することができる。
ここで、図3を参照して、工程C,Dの手順について説明する。図3は、工程C,Dにおける、スペーサ装置40、ジャッキ50及び中間定着装置60などの構成を示す上面図である。
板部材30は、PC鋼材1の切断後に、スペーサ装置40を介して、中間定着装置60から受けるプレストレスを、コンクリート躯体2に伝達する板状の部材である。板部材30は、PC鋼材1を挿通させつつ、コンクリート躯体2のはつり部のうち、残置部R2側の端面に沿って当接するように設置される。
なお、板部材30は、PC鋼材1と干渉しないように配置されていればよい。例えば、板部材30は、凹部を有する一対の本体片から構成され、一対の本体片を組み合わせることにより、一対の本体片の凹部でPC鋼材1を挿通させる穴部が形成されるものでもよい。
スペーサ装置40は、略平行に配置された一対の板部材41,42と、一対の板部材41,42の間隔を調整するためのボルト43及びナット44を有する。一対の板部材41,42は、PC鋼材1と干渉しない位置であって、板部材30とメス部材62との間に設置される。このとき、板部材41は板部材30に当接し、板部材42は中間定着装置60のメス部材62に当接する。
板部材41には、板部材41,42に対して略垂直であって、板部材42に向かって延びるボルト43が設けられている。板部材42には、ボルト43を挿通させつつ、ナット44を通過させない穴部が設けられている。
ボルト43には、ナット44が噛み合うネジ山が形成されている。ナット44は、ボルト43の軸回りに回転することで、ボルト43の軸方向に移動可能である。後述するように、板部材41と板部材42の間においてナット44を移動させ、ジャッキ50で押圧された板部材42にナット44を当接させることで、一対の板部材41,42の間隔を維持させてジャッキ50を取り外すことができる。
なお、板部材41,42は、PC鋼材1と干渉しないように配置されていればよい。例えば、板部材41,42には、PC鋼材1が挿通する凹状の溝が設けられていてもよい。また、板部42に設けられる穴部(ボルト43を挿通させる穴部)、ボルト43及びナット44の位置や数は、図3で示すものに限られず、ジャッキ50による板部材42の押圧を阻害せず、中間定着装置60と干渉しないものであればよい。
ジャッキ50は、スペーサ装置40の板部材41,42の間に設置され、板部材42を介してメス部材62を押圧する。ジャッキ50としては、例えば油圧式のジャッキがある。ジャッキ50は、PC鋼材1の長手方向において、板部材42とともにメス部材62をオス部材61に向かって押圧する。これにより、上述したように、オス部材61とメス部材62を嵌合させたり、PC鋼材1の緊張力を増加させたりすることができる。
メス部材62は、PC鋼材1を挿通させるとともにオス部材61と嵌合するスペースである穴部62aと、締結部材62bとを有する。穴部62aの壁面は、オス部材61のテーパ面に沿ったテーパ面である。メス部材62は、穴部62aの一部である凹部を有する一対の本体片から構成されており、一対の本体片を締結部材62bで固定することにより、一対の本体片の凹部によって穴部62aが形成される。
工程C,Dの手順について説明する。図3(1)に示す手順(1)は、工程Cに対応している。このとき、ジャッキ50は、板部材42を押圧することができるように、一対の板部材41,42の間に設置される。
図3(2)に示す手順(2)では、ジャッキ50が、板部材41と板部材42の間の距離を広げるように板部材42を押圧することにより、板部材42を介してメス部材62をオス部材61に向けて押圧する。これにより、メス部材62の穴部62aにオス部材61を嵌合させることができる。このとき、板部材42の移動によって、板部材42がナット44から離れる。
なお、手順(2)において、オス部材61がメス部材62に嵌合した後、さらに板部材42を押圧することにより、上述したように中間定着装置60を移動させてPC鋼材1の緊張力を増加させることができる。
図3(3)に示す手順(3)では、板部材41と板部材42の間で、ボルト43に噛み合うナット44を移動させて板部材42に当接させる。これにより、ジャッキ50を外したとき、板部材42が移動してしまうことを防止できる。すなわち、ボルト43及びナット44を用いて、板部材41と板部材42の間の距離を一定に保つことができ、オス部材61をメス部材62に嵌合させた状態を維持することができる。
そして、図3(4)に示す手順(4)では、ジャッキ50による板部材42の押圧を解除し、ジャッキ50が取り外される。ここで、オス部材61をメス部材62に嵌合させるとき、スペーサ装置40を省略し、ジャッキ50だけを用いることもできる。しかし、この場合には、オス部材61をメス部材62に嵌合させ続けるために、ジャッキ50を配置したままとしなければならない。上述したように、スペーサ装置40を用いることにより、ジャッキ50を使用した後では、ジャッキ50を取り外すことができ、ジャッキ50を配置したままとなることを防止できる。
再び図2を参照して説明する。図2(E)に示す工程Eは、中間定着装置60にキャップ80を装着する工程である。キャップ80は、メス部材62に対し、板部材42の側とは反対側でPC鋼材1を挿通させつつ、オス部材61のうち、メス部材62から突出した部分(突出部分という)を覆うように装着される。キャップ80の装着により、オス部材61の突出部分の周囲に空間が形成される。例えば、PC鋼材1を挿通させるために、キャップ80は、凹部を有する一対の本体片から構成され、一対の本体片を組み合わせることにより、一対の本体片の凹部でPC鋼材1を挿通させる穴部が形成される。
図2(F)に示す工程Fは、コンクリート躯体2のはつり部をコンクリートで埋め戻した後、中間定着装置60に対して解体部R2側で、PC鋼材1とともにコンクリート躯体2を切断する工程である。解体部R2の解体作業において、PC鋼材1をコンクリート躯体2とともに切断することで、解体部R2の定着装置1B(図1参照)に代わり、中間定着装置60を用いることにより、残置部R1にプレストレス(矢印D1に示す方向の力)を与えることができる。ここで、PC鋼材1は、定着装置1Aと中間定着装置60とで残置部R1のコンクリート躯体2に定着される。
また、解体部R2側でPC鋼材1が切断されると、残置部R1におけるPC鋼材1が収縮することにより、オス部材61がメス部材62の穴部62aに進入する方向に変位することがある。上述したように、ジャッキ50を用いることにより、メス部材62をオス部材61に嵌合させているが、PC鋼材1の収縮率によっては、オス部材61がメス部材62に対して変位することがある。
ここで、上述したように、キャップ80を用いて、オス部材61の突出部分の周囲に空間を形成しておくことにより、上述したオス部材61の変位を許容することができる。キャップ80を設けておかないと、コンクリート躯体2のはつり部をコンクリートで埋め戻したとき、オス部材61の突出部分にコンクリートが付着してしまい、上述したオス部材61の変位を阻害してしまう。すなわち、オス部材61の外面はテーパ面によって構成されているため、オス部材61の突出部分とメス部材62との間に充填されたコンクリートによって、上述したオス部材61の変位が阻害されてしまう。本実施形態のように、キャップ80を設けることにより、オス部材61の変位を許容して、オス部材61及びメス部材62を強固に嵌合させることができ、中間定着装置60によるPC鋼材1の定着を安定させることができる。
以上の工程により、PC鋼材1を残置部R1に定着した上で、解体部R2を解体することができる。
図4は、図2の中間定着工法の変形例である。なお、工程A〜工程D(図4の(A)〜(D))は、図2と同様の工程である。
図4(G)に示す工程Gは、コンクリート躯体2のはつり部において、PC鋼材1を切断する工程である。中間定着装置60の解体部R2側の切断部位90でPC鋼材1を切断すると、工程Fと同様に、方向D1に向かって働くプレストレスを中間定着装置60で受け替えることができる。これにより、PC鋼材1は定着装置1Aと中間定着装置60とで残置部R1のコンクリート躯体2に定着され、PC鋼材1の緊張に伴うプレストレスが残置部R1に残存させることができる。また、PC鋼材1の切断により、上述したように、オス部材61がメス部材62に対して変位することがある。
図4(H)に示す工程Hでは、コンクリート躯体2のはつり部をコンクリートで埋め戻す。はつり部を埋め戻すときには、既にPC鋼材1が切断されているため、メス部材62に対するオス部材61の変位を考慮する必要は無くなり、図2(E)に示すように、メス部材62にキャップ80を装着する必要はない。したがって、キャップ80を装着する作業が無くなり、中間定着工法の作業を簡素化することができる。
以上の工程により、PC鋼材1を残置部R1に定着した上で、解体部R2を解体することができる。特に、図4の中間定着工法では、図2に示すキャップ80を用いなくても、メス部材62に対するオス部材61の変位を許容でき、オス部材61及びメス部材62を強固に固定することができる。
なお、工程Dにおいて、ジャッキ50によるメス部材62の押圧力は、適宜決めることができる。例えば、PC鋼材1の切断後、メス部材62に対してオス部材61が変位すると、オス部材61の変位量の分だけ、PC鋼材1の緊張力が低下してしまう。この緊張力の低下分を考慮すると、ジャッキ50によってメス部材62を押圧するときに、PC鋼材1の緊張力を増加させておけば、PC鋼材1の緊張力が低下することを抑制できる。この他、PC鋼材1の緊張力を、PC鋼材1を切断する前の緊張力よりも増加させることができる。また、ジャッキ50によるメス部材62の押圧は、図2の工程E、図4の工程Gにおいて行ってもよい。
なお、本実施形態の中間定着装置60では、楔形状のオス部材61及びメス部材62を用いているが、例えば、図5に示すようなアンカーによる中間定着工法にも本発明を適用することができる。図5に示すように、PC鋼材1にはアンカー63が固定されており、アンカー63は、上述したオス部材61と同様の成形方法によって成形することができる。具体的には、アンカー63を成形するための型枠を、コンクリート躯体2から露出したPC鋼材1に装着し、型枠内に溶融させた金属を充填し、PC鋼材1と一体化されたアンカー63を成形する。
ここで、コンクリート躯体2のはつり部及びアンカー63の間には、スペーサ装置40を設置しておくことが好ましい。特に、コンクリート躯体2のはつり部をコンクリートで埋め戻す前にPC鋼材1を切断するときには、PC鋼材1の切断に伴うアンカー63の移動を防止するために、スペーサ装置40を設置しておく必要がある。また、コンクリート躯体2のはつり部をコンクリートで埋め戻した後に、PC鋼材1を切断する場合であっても、コンクリートの硬化中にアンカー63が移動してしまうことを防止するために、スペーサ装置40を設置しておくことがよい。
スペーサ装置40を設置する場合、アンカー63の一端面にスペーサ装置40の板部材42を当接させる。ここで、PC鋼材1の長手方向に板部材42が移動しないように、板部材42は、ナット44によって固定されている。PC鋼材1を切断したとき、アンカー63からスペーサ装置40を介してコンクリート躯体2にプレストレスが作用する。なお、図5には示していないが、一対の板部材41,42の間にジャッキ50を配置し、ジャッキ50によってアンカー63を押圧すれば、PC鋼材1の緊張力を増加させることができる。
本実施形態では、一対の板部材41,42の間にジャッキ50を配置している。ここで、ジャッキ50のサイズによっては、一対の板部材41,42の間にジャッキ50を配置しにくいことがある。この場合には、特許第5779705号に記載のジャッキを用いることにより、一対の板部材41,42の間隔を広げる方向に板部材42を押圧することができる。
また、本実施形態の工程Bにおける鋳込み成形において、オス部材61の形状が完全に固化する前に、型枠70を用いてオス部材61を加圧成形することができる。この加圧成形により、加圧成形を行わない場合に比べてオス部材61とPC鋼材1の接着を高めることができる。
オス部材61の加圧成形に用いる型枠70について図6A〜図6Dを参照して説明する。なお、図6A〜図6Dでは型枠70の成形部70bでオス部材61が形成されたものとして説明する。図6Aは、型枠70の構成を示す断面図である。
型枠70は、第1の型枠71、第2の型枠72、第1の型枠71と第2の型枠72を連結するためのボルト73a及びナット73bを有する。第1の型枠71は、PC鋼材1の軸方向と直交する方向(垂直方向)で分割された一対の本体片71a,71bで構成される。本体片71a,71bは、PC鋼材1の軸方向と直交する方向において、第2の型枠72を隙間なく挟み、ボルト73a及びナット73bで連結される。
充填口70aは、本体片71aに形成される。成形部70bは、第1の型枠71の二つの本体片71a,71b及び第2の型枠72により形成される。第2の型枠72は、二つの本体片71a,71bの間で隙間なく挟まれているため、第2の型枠72は、鋳込み成形のときに溶融金属が本体片71a,71bの間の隙間から漏れ出るのを防ぐことができる。
図6Bを参照して、第2の型枠72の構成について説明する。図6Bは、図6AのA−A断面図である。第2の型枠72は、PC鋼材1の軸方向と、PC鋼材1の軸方向に対して直交する方向とで分割された、4つの本体片で構成される。具体的には、第2の型枠72は、4つの本体片72a,72b,72c,72dで構成される。なお、本体片72a,72cは、PC鋼材1の軸を対称軸とする対称的な形状である。同様に、本体片72b,72dは、PC鋼材1の軸を対称軸とする対称的な形状である。
一対の本体片72a,72bの対向面には、凹部が形成されており、これらの凹部は、本体片72a,72bを組み合わせたときに、ボルト73aを挿通させる穴部72eを形成する。また、一対の本体片72a,72bを組み合わせることにより、成形部70bの一部を構成する壁面が形成される。
第2の型枠72は、オス部材61の加圧成形の前に取り外される。ここで、第2の型枠72を取り外すときに、本体片72a,72bの凹部がボルト73aと干渉しないように、本体片72a,72bの凹部の形状を適宜決めることができる。なお、本体片72c,72dを組み合わせるときには、上述したように本体片72a,72bを組み合わせるときと同様である。
図6Cは、図6A及び図6Bに示す矢印Bの方向から型枠70を見たときの図である。本体片72aは、PC鋼材1と直交する方向に延びるエンドプレート部72a1と、エンドプレート部72a1からPC鋼材1の軸方向に沿って延びるスペーサ部72a2を有する。エンドプレート部72a1は、PC鋼材1と直交する壁面で成形部70bの一部を構成する。同様に、本体片72bは、PC鋼材1と直交する方向に延びるエンドプレート部72b1と、エンドプレート部72b1からPC鋼材1の軸方向に沿って延びるスペーサ部72b2を有する。エンドプレート部72b1は、PC鋼材1と直交する壁面で成形部70bの一部を構成する。
なお、上述したように、本体片72cは本体片72aと対称的な形状であるため、エンドプレート部72a1及びスペーサ部72a2と同様のエンドプレート部及びスペーサ部を有する。また、上述したように、本体片72dは本体片72bと対称的な形状であるため、エンドプレート部72b1及びスペーサ部72b2と同様のエンドプレート部及びスペーサ部を有する。
図6Dは、図6Cに示す矢印Cの方向から型枠70を見たときの図である。本体片72bと本体片72dには、PC鋼材1の周囲に位置する凹部が形成されている。これらの凹部は、本体片72b,72dを組み合わせたとき、PC鋼材1を挿通させる穴部を形成する。なお、PC鋼材1を挿通させる穴部は、鋳込み成形において溶融金属が漏れ出ない程度にPC鋼材1と当接する。
なお、矢印Cの方向とは逆方向から型枠70を見た場合は、本体片72aと本体片72cが組み合わせられることになるが、この組み合わせたときの構造は、図6Dに示す構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。
以下、加圧成形の手順について説明する。まず、工程Bにおいて、上記の型枠70を用いて鋳込み成形を行い、オス部材61が完全に固化する前に、第2の型枠72のみを取り外す。これにより、PC鋼材1の軸方向と直交する方向におけるスペーサ部72a2,72b2の厚みの分だけ、本体片71a及び本体片71bの間にスペースが形成される。このとき、ボルト73a及びナット73bを締め付けることにより、本体片71a及び本体片71bを互いに近づく方向に移動させることができる。これにより、オス部材61を加圧成形することができる。
上記の方法で加圧成形を行うことにより、加圧成形を行わない場合に比べて、オス部材61とPC鋼材1が強く圧着される。これにより、後の工程でオス部材61にPC鋼材1の緊張力が働いたとしても、オス部材61がPC鋼材1から剥がれにくくなる。
図6A〜図6Dでは、加圧成形時に本体片71a,71bを移動させるスペースを形成するために第2の型枠72を用いているが、これを省略するものでもよい。例えば、図2(A)及び図2(B)を用いた説明では、型枠70を二つの本体片によって構成し、これらの本体片を締結部材62bによって固定している。ここで、本体片に対する締結部材62bの締め付け力を増加させることにより、オス部材61を加圧成形することができる。
一方、本実施形態において、コンクリート躯体2のはつり部を埋め戻す前に、コンクリート躯体2のはつり部に、コンクリート躯体2の内部情報を検出するためのセンサを設置することができる。これにより、コンクリート躯体2の内部情報(例えば、コンクリート躯体2に作用するプレストレスト)をモニタリングすることができる。センサを設置した後、はつり部はコンクリートで埋め戻される。センサとしては、例えば、歪センサを用いることができる。また、センサによって検出された情報をコンクリート躯体2の外部に送信するために、信号線をはつり部に設置することができる。信号線としては、例えば、光ファイバを用いることができる。
なお、本実施形態では、PC鋼材1として、PC鋼線を用いたが、例えば、PC鋼棒、PC鋼より線等を用いてもよい。また、解体部R2の解体後、残置部R1に必要なプレストレスを与えることができるものであればよく、PC鋼材1の本数は適宜決めることができる。
本実施形態では、鋳込み成形の際、溶融させた金属が、複数本のPC鋼材1同士の隙間を埋めるように流れ込むので、オス部材61が複数本のPC鋼材1に隙間なく一体的に形成される。したがって、複数本のPC鋼材1の密集状態に関わらず、PC鋼材1にオス部材61を成形することができ、中間定着装置60によってPC鋼材1を定着することができる。また、PC鋼材1に外力を加えて密集させる必要が無く、PC鋼材1の破断や摩耗による劣化を抑制することができる。
一方、PC鋼材1がPC鋼より線である場合、PC鋼材1の表面では、PC鋼線を撚ることによって形成された溝が螺旋状に延びている。鋳込み成形の際、溶融させた金属が螺旋状の溝に流れ込むため、オス部材61は、PC鋼材1に一体的に、かつ、螺旋状の溝に噛み合うように成形される。これにより、オス部材61をPC鋼材1に強固に固定することができ、PC鋼材1の軸方向において、PC鋼材1及びオス部材61が相対的に移動することを抑制しやすくなる。
本実施形態では、煩雑な作業が不要な鋳込み成形を現場で行い、PC鋼材1に対してオス部材61を容易に成形することができるので、中間定着がより簡易である。
1:PC鋼材、2:コンクリート躯体、10:中間部、100:PC構造物、
30:板部材、50:ジャッキ、60:中間定着装置、61:オス部材、
62:メス部材、62a:穴部、62c:貫通孔、63:アンカー、
70:型枠、R1:残置部、R2:解体部
中間定着部材としては、メス部材と嵌合する楔形状のオス部材とすることができる。この場合、ジャッキを用いて、残置部から解体部に向かう方向にメス部材を移動させることにより、メス部材にオス部材を嵌合させる。そして、コンクリート躯体の除去部及びメス部材の間に配置されたスペーサ装置を用いて、メス部材及びオス部材の嵌合状態を維持する。
また、メス部材及びオス部材が嵌合した状態において、ジャッキを用いて、残置部から解体部に向かう方向にメス部材及びオス部材を移動させることにより、PC鋼材の緊張力を増加させる。コンクリート躯体の除去部をコンクリートで埋め戻す前に、オス部材のうち、メス部材から突出する部分の周囲をキャップで覆うことができる。
一方、ジャッキを用いて、残置部から解体部に向かう方向に中間定着部材を移動させることにより、PC鋼材の緊張力を増加させる。コンクリート躯体の除去部及び中間定着部材の間に配置されたスペーサ装置を用いて、PC鋼材の緊張力を増加させた位置に中間定着部材を保持する。

Claims (8)

  1. 既設のPC構造物において、解体部を除いた残置部でPC鋼材を中間定着させる中間定着工法であって、
    前記PC構造物のコンクリート躯体の一部を除去することによって露出させた前記PC鋼材に型枠を装着し、
    前記型枠内に溶融させた金属を充填することにより、前記残置部にプレストレスを与えるための中間定着部材を前記PC鋼材に一体的に成形する、
    ことを特徴とする中間定着工法。
  2. 前記金属は、融点が300℃〜400℃の金属であることを特徴とする請求項1に記載の中間定着工法。
  3. 前記型枠は、前記PC鋼材の軸方向に対して直交方向で分割された複数の本体片を有し、
    前記複数の本体片を前記PC鋼材に近づく方向に移動させることにより、前記型枠内に充填された金属を圧縮成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の中間定着工法。
  4. 前記中間定着部材は、メス部材と嵌合する楔形状のオス部材であり、
    ジャッキを用いて、プレストレスが作用する方向とは逆方向に前記メス部材を移動させることにより、前記メス部材に前記オス部材を嵌合させ、
    前記コンクリート躯体の除去部及び前記メス部材の間に配置されたスペーサ装置を用いて、前記メス部材及び前記オス部材の嵌合状態を維持する、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の中間定着工法。
  5. 前記メス部材及び前記オス部材が嵌合した状態において、前記ジャッキを用いて、プレストレスが作用する方向とは逆方向に前記メス部材及び前記オス部材を移動させることにより、前記PC鋼材の緊張力を増加させることを特徴とする請求項4に記載の中間定着工法。
  6. 前記コンクリート躯体の除去部をコンクリートで埋め戻す前に、前記オス部材のうち、前記メス部材から突出する部分の周囲をキャップで覆うことを特徴とする請求項4又は5に記載の中間定着工法。
  7. ジャッキを用いて、プレストレスが作用する方向とは逆方向に前記中間定着部材を移動させことにより、前記PC鋼材の緊張力を増加させ、
    前記コンクリート躯体の除去部及び前記中間定着部材の間に配置されたスペーサ装置を用いて、前記PC鋼材の緊張力を増加させた位置に前記中間定着部材を保持する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の中間定着工法。
  8. 前記コンクリート躯体の除去部をコンクリートで埋め戻す前に、前記コンクリート躯体の内部情報を検出するセンサを前記除去部に設置することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の中間定着方法。
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