JP2019019075A - ペメトレキセド含有液状医薬組成物 - Google Patents

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武広 西村
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Abstract

【課題】ペメトレキセドを有効成分として含有する、医薬品として保存安定性が担保された新規な液状医薬組成物またはその製造方法を提供することを主な課題とする。【解決手段】本発明として、例えば、ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を水溶液中に含み、加熱処理が施されてなることを特徴とする液状医薬組成物や、ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を含む水溶液をガラス容器内に封入する工程、ならびに封入された前記水溶液に対して加熱処理を施す工程を含むことを特徴とする液状医薬組成物の製造方法を挙げることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、有機活性成分を含有する医薬品製剤の技術分野に属する。本発明は、ペメトレキセドまたはその塩を有効成分として含有する液状医薬組成物であって、医薬品として保存安定性が担保された当該液状医薬組成物、またはその製造方法に関するものである。
ペメトレキセド(N−{4−[2−(2−アミノ−4−オキソ−4,7−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイル}−L−グルタミン酸)は、下記の化学構造を有する薬物であり、主に悪性胸膜中皮腫、および小細胞肺がんに対する抗がん剤として使用されている。日本においては、当該薬物のナトリウム水和物を含有する製剤が、日本イーライリリー社より、アリムタ(登録商標)の名称で販売されている。当該製剤には、点滴用と注射用があるが、共に凍結乾燥製剤であり、使用に際して生理食塩水等に溶解し調製する必要のある用時調製型製剤である。
Figure 2019019075
ペメトレキセドの即時使用型製剤(Ready−to−use製剤)、例えば、生理食塩水にペメトレキセドを溶解した液状製剤は、使用前の調製を必要とせず、非常に有用である。しかしながら、経時的に水溶液中でペメトレキセドの分解が容易に起こり、類縁物質が顕著に生成するという問題がある。多くの類縁物質の生成は、副作用の原因にもなり好ましくない。
上記の問題に対して、ペメトレキセドの水溶液中での酸化分解を抑制する手段が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、モノチオグリセロール、L−システイン、またはチオグリコール酸といった抗酸化剤を含有することにより、水溶液中でのペメトレキセドの酸化分解を抑えた医薬組成物が開示されている。特許文献2には、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム、クエン酸、またはアスコルビン酸といった抗酸化剤を含有することにより、水溶液中でのペメトレキセドの酸化分解を抑えた医薬組成物が開示されている。
また、特許文献3には、亜硫酸、亜硫酸水素、ピロ亜硫酸、亜硝酸、二酸化硫黄、チオ硫酸といった化合物を含有することにより、水溶液中でのペメトレキセドの酸化分解を抑えた医薬組成物が開示されている。特許文献4および5には、システインおよびエデト酸ナトリウムなどのキレート剤を含有することにより、水溶液中でのペメトレキセドの酸化分解を抑えた医薬組成物が開示されている。
特表2003−521518号公報 特開2014−237607号公報 特開2015−124215号公報 国際公開第2016/024369号 特開2016−41684号公報
本発明は、ペメトレキセドまたはその塩を有効成分として含有する、医薬品として保存安定性が担保された新規な液状医薬組成物またはその製造方法を提供することを主な課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ペメトレキセド含有水溶液に脱酸素剤および抗酸化剤を配合し、さらに加熱処理を施すことにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明としては、例えば、下記を挙げることができる。
[1]ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を水溶液中に含み、加熱処理が施されてなることを特徴とする、液状医薬組成物。
[2]脱酸素剤が、亜硫酸、亜硫酸水素、ピロ亜硫酸、亜硝酸、またはそれらの塩である、上記[1]に記載の液状医薬組成物。
[3]抗酸化剤が、L−システインもしくはその塩、またはαチオグリセリンである、上記[1]または[2]に記載の液状医薬組成物。
[4]液状医薬組成物の液性が、pH6.5〜9.0の範囲内である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の液状医薬組成物。
[5]液状医薬組成物が、ガラス容器中に封入された注射剤である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の液状医薬組成物。
[6]ガラス容器内空間が、酸素濃度として5%以下であるか、または真空である、上記[5]に記載の液状医薬組成物。
[7]25℃で3か月保管後の未知類縁物質の量が0.2%以下である、上記[5]または[6]に記載の液状医薬組成物。
[8]ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を含む水溶液をガラス容器内に封入する工程、ならびに封入された前記水溶液に対して加熱処理を施す工程を含むことを特徴とする、液状医薬組成物の製造方法。
[9]さらに、ガラス容器内空間の酸素濃度を5%以下に調整する工程、またはガラス容器内空間を真空にする工程を含む、上記[8]に記載の液状医薬組成物の製造方法。
[10]さらに、液状医薬組成物の液性をpH6.5〜9.0の範囲内に調整する工程を含む、上記[8]または[9]に記載の液状医薬組成物の製造方法。
[11]ガラス容器がバイアルである、上記[8]〜[10]のいずれか一項に記載の液状医薬組成物の製造方法。
[12]脱酸素剤が、亜硫酸、亜硫酸水素、ピロ亜硫酸、亜硝酸、またはそれらの塩である、上記[8]〜[11]のいずれか一項に記載の液状医薬組成物の製造方法。
[13]抗酸化剤が、L−システインもしくはその塩、またはαチオグリセリンである、上記[8]〜[12]のいずれか一項に記載の液状医薬組成物の製造方法。
本発明によれば、ペメトレキセドの分解ないし類縁物質(未知類縁物質を含む。)の生成が抑制された、ペメトレキセドを有効成分として含有する医薬的に保存安定な液状医薬組成物を調製し、提供することができる。
1 本発明に係る液状医薬組成物
本発明に係る液状医薬組成物(以下、「本発明組成物」という。)は、ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を水溶液中に含み、加熱処理が施されてなることを特徴とする。
ここで、「液状医薬組成物」としては、例えば、液状の注射剤、点滴剤を挙げることができる。本発明においては、液状注射剤が好ましい。
1.1 ペメトレキセドまたはその塩
本発明組成物は、ペメトレキセドまたはその塩(以下、単に「ペメトレキセド」ともいう。)を水溶液中に含む。
ペメトレキセドの塩としては、医薬上許容される塩であれば特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、モノエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、置換ピリジニウム塩などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、非毒性金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩を挙げることができる。上記塩は、水和物であってもよい。ペメトレキセドの好ましい塩としては、例えば、ナトリウム塩、ナトリウム塩の水和物を挙げることができる。
本発明組成物中におけるペメトレキセドの配合量としては、剤型、塩の種類などによって異なるが、例えば、液状注射剤の場合、単位形態1mL当りペメトレキセドの量として、1〜100mgの範囲内が適当であり、5〜50mgの範囲内が好ましく、25mgがより好ましい。
1.2 脱酸素剤
本発明組成物は、脱酸素剤を水溶液中に含む。
脱酸素剤としては、一般的に液状製剤に使用されるものであれば特に制限されないが、例えば、亜硫酸、亜硫酸水素、ピロ亜硫酸、亜硝酸、およびそれらの塩を挙げることができる。
亜硫酸、亜硫酸水素、ピロ亜硫酸、亜硝酸の塩としては、医薬上許容されるものであれば特に制限されないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、銅塩などの遷移金属塩、塩基性アンモニウムとの塩、トリエタノールアミンとの塩、L−ヒスチジン、L−アルギニン、L−リジンなどのアミノ酸との塩を挙げることができる。これらの中、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムが好ましい。これらの一種または二種以上を適宜併用することができる。
本発明組成物中における脱酸素剤の配合量としては、脱酸素剤の種類、剤型などによって異なるが、例えば、液状注射剤の場合、単位形態1mL当り、0.1〜10mgの範囲内が適当であり、0.5〜6mgの範囲内が好ましく、1〜4mgの範囲内がより好ましい。0.1mgより少ないと、本発明組成物(ペメトレキセド)の安定性を十分に保てないおそれがある。
1.3 抗酸化剤
本発明組成物は、抗酸化剤を水溶液中に含む。
抗酸化剤としては、一般的に液状製剤に使用されるものであれば特に制限されないが、例えば、L−システインまたはその塩、αチオグリセリン、アスコルビン酸またはその塩を挙げることができる。
L−システインの塩としては、医薬上許容されるものであれば特に制限されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などの無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、アスコルビン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アスコルビン酸の塩としては、医薬上許容されるものであれば特に制限されないが、例えば、前記亜硫酸等の塩と同様のものを挙げることができる。これら塩は、水和物であってもよい。これらの中、L−システインまたはその塩(例、塩酸塩)、αチオグリセリンが好ましく、L−システイン塩酸塩がより好ましい。これらの一種または二種以上を適宜併用することができる。
本発明組成物中における抗酸化剤の配合量としては、抗酸化剤の種類、剤型などによって異なるが、例えば、液状注射剤の場合、単位形態1mL当り、0.1〜10mgの範囲内が適当であり、0.5〜6mgの範囲内が好ましく、1〜4mgの範囲内がより好ましい。0.1mgより少ないと、本発明組成物(ペメトレキセド)の安定性を十分に保てないおそれがある。
1.4 加熱処理
本発明組成物は、加熱処理が施されてなる。
従来、安定性が悪い注射剤などの場合、最終滅菌は、メンブランフィルターなどを用いたろ過滅菌により実施されることが一般的である。そして、加熱処理(熱滅菌)は製剤を不安定化する可能性を有するため、一般的には、それらの製剤の滅菌法として選択されない。本発明者らは、ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を水溶液中に含む液状医薬組成物において、加熱処理を施すことにより、施さない場合と比べ、意外にも当該組成物の安定性を保ち、ペメトレキセドの未知類縁物質の生成を抑制し、かつその他の類縁物質の増加も抑制しうることを見出した。したがって、本発明組成物は加熱処理されたものである。
加熱処理の温度は、一般的に薬剤の加熱滅菌に使用される温度であっても、それより低い温度であってもよい。具体的には、50〜150℃の範囲内の温度を挙げることができ、通常、60〜140℃の範囲内であり、80℃〜130℃の範囲内が好ましく、105〜121℃の範囲内がより好ましい。
加熱処理の時間は、設定温度などによって異なり、適宜設定されるが、一般には加熱温度が低いと長く、加熱温度が高いと短くてよい。例えば、5分間〜15日間の範囲内で設定することができる。具体的には、100℃〜150℃の温度範囲内であれば、5〜120分間(好ましくは10〜60分間の範囲内)の比較的短時間で十分であり、100℃より低い、例えば、60℃または70℃であれば、通常、4〜12日間(好ましくは6〜10日間の範囲内)の比較的長時間を要する。
当該加熱処理は、オートクレーブなどの薬剤の加熱滅菌に一般的に使用される機器を用いて行うこともできる。したがって、例えば、オートクレーブを用いて、100℃以上の温度で当該加熱処理を行うことにより、滅菌処理も併せて行うことができる。当該加熱処理は、通常、本発明組成物の製造における最終段階で行われる。
1.5 本発明組成物を封入する容器
本発明組成物を封入する容器(包材)としては、特に制限されないが、例えば、ガラス製、樹脂製、金属製の容器を挙げることができる。これらの中でも、本発明組成物は加熱処理されて製造されることから、ガラス容器が好ましい。
本発明組成物を封入するための容器の形状については特に制限されないが、例えば、バイアル状、アンプル状、カップ状、袋状など適宜選択される。特に、携帯性や服用あるいは投薬時の利便性を考慮した場合、本発明組成物の最終形態にもよるが、バイアル状であるものが好ましい。
また、本発明組成物のための容器は、酸素を遮断でき密封状態で製品化できるものが好ましい。
当該容器内空間の酸素濃度は5%以下であることが適当である。これにより本発明組成物中のペメトレキセドの安定性をより向上することができ、分解物(主としてペメトレキセドの類縁物質)の生成を抑制することができる。
当該容器内空間の酸素濃度は、少なければ少ないほどよく、2%以下が好ましい。加えて容器内から酸素を含むガスを除去し真空状態とすることがより好ましい。ここで真空状態とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態であり、真空乾燥機や真空ポンプなどにより周囲の圧力より減圧された状態を意味する。
当該容器内空間の酸素濃度の調整は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを封入することにより容易に行うことができる。
ペメトレキセドの長期保存により生成される類縁物質には、構造が既に特定されている後述の、LY338979−1、LY338979−2、Imp.B、およびImp.Cが知られている。それら以外にも構造が特定されていない未知類縁物質(以下、「未知類縁」という。)があることも知られている。
本発明組成物は、25℃で3か月保管後の未知類縁の量が0.2%以下ないし0.249%以下であることが好ましく、0.15%以下であるものがより好ましい。0.1%以下であるものがさらに好ましい。ここで、未知類縁の量%は、HPLCにおける分析において、ペメトレキセドに由来する全ピーク面積中の未知類縁のピーク面積の割合を表す。
1.6 液性、添加剤、その他
本発明組成物は、通常、pH5〜10の範囲内に調整される。好ましくはpH6.5〜9.0の範囲内であり、より好ましくはpH7〜8の範囲内である。pH5より低いと、またpH10より高いと、本発明組成物(ペメトレキセド)の安定性にとって好ましくない。
液性の調整には、pH調整剤を用いることができ、かかるpH調整剤は、医薬上許容されるものであれば特に制限されない。具体的には、pH調整剤として、例えば、塩酸、リン酸またはその塩、クエン酸またはその塩、炭酸またはその塩、マレイン酸、グリシン、水酸化ナトリウムを挙げることができる。これらの一種または二種以上を適宜併用することができる。また、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、炭酸緩衝液などの緩衝液を用いることもできる。
前記した以外の添加剤も、本発明の効果を損なわない限り、適宜適量添加することができる。そのような添加剤として、例えば、可溶化剤、界面活性剤、甘味料、矯味剤、香料、増粘剤、保存剤、賦形剤を挙げることができる。
本発明組成物の溶媒としての水は、医薬上許容されるものであれば特に制限されないが、例えば、注射用水、生理食塩水、精製水、蒸留水を挙げることができる。液状注射剤や点滴剤の場合、通常、注射用水、生理食塩水が用いられる。
2 本発明組成物の製造方法
本発明組成物の製造方法(以下、「本発明製造方法」という。)は、ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を含む水溶液をガラス容器に封入する工程、および加熱処理を施す工程を含むことを特徴とする。なお、ペメトレキセドの塩、脱酸素剤、抗酸化剤、水などの用語は、前記と同義である。
以下、本発明製造方法について詳述する。
(1)ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を含む水溶液をガラス容器に封入する工程
本工程には、本発明組成物のpHを調整する工程、ガラス容器空間内の酸素濃度を調整する工程、ガラス容器空間内を真空にする工程などを含むことができる。
まず、各々所望の、ペメトレキセド、脱酸素剤、抗酸化剤、その他添加剤の所定量を、常法により水に溶解し、通常、pH調整剤により所望のpH(例えば、pH6.5〜9.0)に調整し、当該水溶液をガラスバイアル等のガラス容器に常法により充填する。そして、ガラス容器内空間の酸素濃度を調整する場合には、所望の酸素濃度(例えば、2%)になるよう不活性ガス(例、窒素、アルゴン)を封入する。ガラス容器内空間を真空にする場合には、例えば、真空乾燥機や真空ポンプを用いて、常法により真空にすることができる。ガラス容器内空間の酸素濃度を調整した後、またはガラス容器内空間を真空にした後、液状組成物入りガラス容器を密封ないし密栓など行うことにより、本工程を実施することができる。
本発明組成物が注射剤や点滴剤の場合、本工程は、クリーンルーム内で行うことが好ましい。
(2)加熱処理を施す工程
本工程における加熱処理は、常法により行うことができる。例えば、医薬製剤の製造に用いられる加熱器ないしオートクレーブに、前記工程で得られた液状組成物入りガラス容器を静置し、所定の温度で所定の時間、当該液状組成物を加熱することにより、本工程を実施することができる。
加熱処理の温度は、一般的に薬剤の加熱滅菌に使用される温度であっても、それより低い温度であってもよい。具体的には、50〜150℃の範囲内の温度を挙げることができ、通常、60〜140℃の範囲内であり、80℃〜130℃の範囲内が好ましく、105〜121℃の範囲内がより好ましい。
加熱処理の時間は、設定温度などによって異なり、適宜設定されるが、一般には加熱温度が低いと長く、加熱温度が高いと短くてよい。例えば、5分間〜15日間の範囲内で設定することができる。具体的には、100℃〜150℃の温度範囲内であれば、5〜120分間(好ましくは10〜60分間の範囲内)の比較的短時間で十分であり、100℃より低い、例えば、60℃または70℃であれば、通常、4〜12日間(好ましくは6〜10日間の範囲内)の比較的長時間を要する。
当該加熱処理は、オートクレーブなどの薬剤の加熱滅菌に一般的に使用される機器を用いて行うこともできるから、オートクレーブを用いて、100℃以上の温度で当該加熱処理を行うことにより、滅菌処理も併せて行うことができる。
(3)その他の工程
本発明製造方法は、上記以外の工程を含むことができる。例えば、その他の工程として、メンブランフィルターによるろ過滅菌工程を挙げることができる。
また、その他の工程は、上記工程の間にあることも、上記工程の前後にあることもある。
以下に実施例や比較例、試験例などを掲げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。
<安定性試験>
(1)熱安定性試験
熱安定性試験は、25℃または40℃の条件下で、1か月〜6か月間保存することにより行った。
(2)類縁物質の測定方法
試料溶液中の各類縁物質(類縁1(LY338979−1)、類縁2(LY338979−2)、類縁3(Imp.B)、類縁4(Imp.C)、未知類縁)および総類縁物質の量は、HPLC法で測定した。そして、各類縁物質または総類縁物質の量を、HPLCのペメトレキセドに由来する全ピーク面積中の各類縁物質または総類縁物質のピーク面積の割合(%)で示した。
本測定に使用したHPLCの測定条件は、以下の通りである。
〔HPLC測定条件〕
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:250nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に3.5μmの液体クロマトグラフ用オクチルシリル化シリカゲルを充填したもの。
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相A:pH3.5のギ酸アンモニウム緩衝液
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及び移動相の混合比を適宜調整し、濃度勾配制御する。濃度勾配制御は、注入後0〜3分間は移動相A:移動相B=95%:5%、注入後3〜45分間は移動相A:移動相B=95→30%:5→70%、注入後45〜45.1分間は移動相A:移動相B=30→95%:70→5%、注入後45.1〜57分間は移動相A:移動相B=95%:5%で行った。
流量:毎分1.0mL
なお、各類縁物質は、それぞれ下記の構造を有する。未知類縁とは、これら4種の類縁物質以外の構造未特定の類縁物質を意味する。また、総類縁物質(以下、「総類縁」という。)とは、類縁1、類縁2、類縁3、類縁4、および未知類縁を含むすべての不純物を合わせたものである。
Figure 2019019075
Figure 2019019075
Figure 2019019075
[実施例1]
下記の表1に示す処方1にしたがって、L−システイン塩酸塩水和物264mg、亜硫酸水素ナトリウム352mg、およびαチオグリセリン73mgを注射用水80mLに溶解した。次いで、その溶液にペメトレキセドナトリウム2.5水和物3,035mg(ペメトレキセドとして2,500mg)を加え溶解した。適量の塩酸溶液および適量の水酸化ナトリウム溶液で、当該水溶液をpH7.4に調整し、注射用水を加えて全量を100mLにした。
上記で得られた溶液を孔径0.22μmのPVDF製メンブランフィルターで無菌ろ過し、ガラスバイアルにろ過した液4mLを充填し、窒素を満たしたグローブボックス内で、バイアル内の酸素濃度を2%とした。最後に、打栓し、アルミキャップで巻締めを行い、密封した。
密封したバイアルを高圧蒸気滅菌器に入れ、115℃で30分間加熱処理を施し、本発明組成物を調製した。
Figure 2019019075
[比較例1、2]
加熱処理を施さなかったこと以外は、処方1にしたがって、実施例1と同様にして、比較用組成物(比較例1)を調製した。また、バイアル内の酸素濃度を0.5%にし、加熱処理を施さなかったこと以外は、処方1にしたがって、実施例1と同様にして、比較用組成物(比較例2)を調製した。
[試験例1]安定性試験(実施例1、比較例1、比較例2)
実施例1の本発明組成物および比較例1、2の組成物について、安定性試験を行った。その結果を表2〜4にそれぞれ示す。
Figure 2019019075
Figure 2019019075
Figure 2019019075
表2〜4に示した通り、加熱処理を施した実施例1の本発明組成物は、所定の保存温度において、6か月に渡って、未知類縁の生成が抑制され、かつその他の類縁物質の増加も抑制され、保存安定性が良好であった。一方、加熱処理を施さなかった比較例1および2の組成物は、25℃における3か月保存で、ICHガイドラインによる安全性の確認が必要とされる閾値である0.2%を超えた。
[実施例2]
下記の表5に示す処方2にしたがって、実施例1と同様にして、本発明組成物を調製した。
Figure 2019019075
[試験例2]安定性試験(実施例2)
実施例2の本発明組成物について、安定性試験を行った。その結果を表6に示す。
Figure 2019019075
表6に示した通り、加熱処理を施した実施例2の本発明組成物は、所定の保存温度において、6か月に渡って、未知類縁の生成が抑制され、かつその他の類縁物質の増加も抑制され、保存安定性が良好であった。
[実施例3]
下記の表7に示す処方3にしたがって、実施例1と同様にして、本発明組成物を調製した。
Figure 2019019075
[比較例3]
加熱処理を施さなかったこと以外は、処方3にしたがって、実施例1と同様にして、比較用組成物(比較例3)を調製した。
[試験例3]安定性試験(実施例3、比較例3)
実施例3の本発明組成物、および比較例3の組成物について、安定性試験を行った。その結果を表8および9にそれぞれ示す。
Figure 2019019075
Figure 2019019075
表8および9に示した通り、加熱処理を施した実施例3の本発明組成物は、所定の保存温度において、6か月に渡って、未知類縁の生成が抑制され、かつその他の類縁物質の増加も抑制され、保存安定性が良好であった。一方、加熱処理を施さなかった比較例3の組成物は、実施例3の本発明組成物と比べて、未知類縁および総類縁の生成が高かった。
[実施例4]
下記の表10に示す処方4にしたがって、以下の条件で加熱処理した以外は、実施例1と同様にして、本発明組成物を調製した。
・105℃、30分間(実施例4−1)
・115℃、10分間(実施例4−2)
・115℃、30分間(実施例4−3)
・115℃、60分間(実施例4−4)
・121℃、20分間(実施例4−5)
Figure 2019019075
[試験例4]安定性試験(実施例4−1〜4−5)
実施例4−1〜4−5について、安定性試験を行った。その結果を表11〜15にそれぞれ示す。
Figure 2019019075
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表11〜15に示した通り、実施例4−1〜4−5の本発明組成物は、いずれも、所定の保存温度において、3か月に渡って、未知類縁の生成が抑制され、かつその他の類縁物質の増加も抑制され、保存安定性が良好であった。
[実施例5]
下記の表16に示す処方5にしたがって、70℃に設定した恒温機中で9日間(実施例5−1)または60℃に設定した恒温機中で7日間(実施例5−2)加熱処理を施した以外は、実施例1と同様にして、本発明組成物を調製した。
Figure 2019019075
[試験例5]安定性試験(実施例5−1、実施例5−2)
実施例5−1および実施例5−2の本発明組成物について、安定性試験を行った。その結果を表17および18にそれぞれ示す。
Figure 2019019075
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表17および18に示した通り、より低温度で加熱処理した本発明組成物においても、未知類縁の生成が抑制され、かつその他の類縁物質の増加も抑制された。
[実施例6]
実施例1と同様にして調製した処方1のろ過液4mLをガラスバイアルに充填し、酸素濃度を調整せず、当該ろ過液4mL入りガラスバイアルを凍結乾燥機に入れ、その凍結乾燥機の中でバイアル内を減圧真空(約5,000Pa)にし、その後打栓して本発明組成物を調製した。
なお、本発明組成物を調製後、凍結乾燥機内を大気圧まで戻し、本発明組成物(ガラスバイアル)を凍結乾燥機から取り出して、以下の試験に供した。
[試験例6]安定性試験(実施例6)
実施例6の本発明組成物について、安定性試験を行った。その結果を表19に示す。
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表19に示した通り、酸素濃度調整と加熱処理を施した実施例1の本発明組成物(表2)に比べ、ガラス容器(バイアル)内を真空にし、かつ加熱処理を施した実施例6の本発明組成物は、さらに安定性が高かった。
本発明組成物は、ペメトレキセドの分解物である類縁物質(未知類縁を含む。)の生成が抑制されており、保存安定性が担保されているから、医薬品として有用である。また、本発明製造方法は、当該類縁物質の生成を抑制した保存安定な液状医薬組成物を製造することができるため、ペメトレキセドを含む液状医薬品の製造において有用である。

Claims (13)

  1. ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を水溶液中に含み、加熱処理が施されてなることを特徴とする、液状医薬組成物。
  2. 脱酸素剤が、亜硫酸、亜硫酸水素、ピロ亜硫酸、亜硝酸、またはそれらの塩である、請求項1に記載の液状医薬組成物。
  3. 抗酸化剤が、L−システインもしくはその塩、またはαチオグリセリンである、請求項1または2に記載の液状医薬組成物。
  4. 液状医薬組成物の液性が、pH6.5〜9.0の範囲内である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状医薬組成物。
  5. 液状医薬組成物が、ガラス容器中に封入された注射剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液状医薬組成物。
  6. ガラス容器内空間が、酸素濃度として5%以下であるか、または真空である、請求項5に記載の液状医薬組成物。
  7. 25℃で3か月保管後の未知類縁物質の量が0.2%以下である、請求項5または6に記載の液状医薬組成物。
  8. ペメトレキセドまたはその塩、脱酸素剤、および抗酸化剤を含む水溶液をガラス容器内に封入する工程、ならびに封入された前記水溶液に対して加熱処理を施す工程を含むことを特徴とする、液状医薬組成物の製造方法。
  9. さらに、ガラス容器内空間の酸素濃度を5%以下に調整する工程、またはガラス容器内空間を真空にする工程を含む、請求項8に記載の液状医薬組成物の製造方法。
  10. さらに、液状医薬組成物の液性をpH6.5〜9.0の範囲内に調整する工程を含む、請求項8または9に記載の液状医薬組成物の製造方法。
  11. ガラス容器がバイアルである、請求項8〜10のいずれか一項に記載の液状医薬組成物の製造方法。
  12. 脱酸素剤が、亜硫酸、亜硫酸水素、ピロ亜硫酸、亜硝酸、またはそれらの塩である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の液状医薬組成物の製造方法。
  13. 抗酸化剤が、L−システインもしくはその塩、またはαチオグリセリンである、請求項8〜12のいずれか一項に記載の液状医薬組成物の製造方法。
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