JP2019019193A - 樹脂組成物及びガラス樹脂一体成形品 - Google Patents

樹脂組成物及びガラス樹脂一体成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 特性がばらつき難い樹脂組成物及び当該樹脂組成物を用いたガラス樹脂一体成形品を提供する。【解決手段】 樹脂組成物は、表面に炭素−酸素結合を有しかつサイジング剤による表面処理がされていない炭素短繊維と、シランカップリング剤により表面処理されているガラス繊維及びセラミック繊維の少なくとも一方である非炭素繊維と、炭素−酸素結合を有する炭素短繊維の表面と親和性を有する熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂と、を備える。炭素短繊維の平均繊維長は、非炭素繊維の平均繊維長よりも短く、マトリクス樹脂の内部で、炭素短繊維及び非炭素繊維のそれぞれが分散しており、非炭素繊維の間隙において長手方向が不規則に配向した炭素短繊維が存在している。【選択図】 図4

Description

本発明は、熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維強化樹脂複合材料である樹脂組成物と、当該樹脂組成物とガラス部材とが一体成形されているガラス樹脂一体化成形品に関する。
従来、機械的強度が必要とされる樹脂成形品(例えば、自動車の部品や構造部材など)においては、機械的強度に優れた熱硬化性樹脂が用いられてきた。また、熱硬化性樹脂は、充填剤の添加量を調整することで線膨張係数を容易に調整することができるため、樹脂組成物とガラス部材とを一体化したガラス樹脂一体成形品(例えば、複写機の原稿設置台や、現金自動預払機の紙幣読取部など)のように、樹脂以外の部材を一体化した成形品にも用いられてきた。
しかし、熱硬化性樹脂には、成形工程が煩雑かつ長時間を要するなど、生産性が悪いという大きなデメリットがある。そのため、これまで熱硬化性樹脂が用いられてきた成形品においても、熱可塑性樹脂を使用したいというニーズが強かった。
熱可塑性樹脂も、熱硬化性樹脂と同様に、炭素繊維などの充填剤を添加することで、機械的強度を高めたり、線膨張係数を調整したりすることが可能である。例えば、非特許文献1では、熱可塑性樹脂に添加可能な炭素繊維が紹介されている。また例えば、特許文献1では、熱可塑性樹脂に炭素繊維及びガラス繊維を添加することで、機械的強度をさらに高めた樹脂組成物が提案されている。
ただし、熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と比べて粘度が高いため、炭素繊維やガラス繊維などの充填剤を内部に分散させることが困難である。この点、特許文献1では、エポキシ系サイジング剤などのサイジング剤で炭素繊維を表面処理するとともに、シランカップリング剤でガラス繊維を表面処理することで、炭素繊維及びガラス繊維のそれぞれを熱可塑性樹脂内に分散させている。
そして、特許文献1では、繊維長3mmのガラス繊維(チョップドストランド)と、ガラス繊維よりも繊維長が長い繊維長6mmの炭素繊維(ピッチ系のチョップドファイバー、製品名「ダイアリードK223HE」)とのそれぞれを熱可塑性樹脂であるポリカーボネートに添加することによって、高い熱伝導性と耐衝撃性、引張特性及び曲げ特性等の機械特性に優れ、さらに高度の流動性と高度に低減された成形収縮率並びにセルフタップ強度に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られることが記載されている。
特開2015−164993号公報
細田直ら、「独自製法の炭素短繊維を含有した先進的ハイブリッドプリプレグを用いたCFRP成形材の開発」61st FRP CON−EX 2016 講演要旨集、119〜121頁
しかしながら、特許文献1で提案されている樹脂組成物では、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に対して炭素繊維を分散させるために最適化されているエポキシ系サイジング剤などのサイジング剤で炭素繊維を表面処理しているため、熱可塑性樹脂内における炭素繊維の分散が不十分になり得る。また、特許文献1で提案されているように、サイジング剤で表面処理した炭素繊維と、シランカップリング剤で表面処理したガラス繊維との両方を充填剤として用いると、融解して高温になっている熱可塑性樹脂の内部で近接している炭素繊維及びガラス繊維において、サイジング剤とシランカップリング剤とが反応する(例えば、両者に含まれるエポキシ基同士が引き合う)ことで、炭素繊維の分散が阻害され得る。
そして、特許文献1で提案されている樹脂組成物では、熱可塑性樹脂内における炭素繊維の分散が不十分になり得ることから、成形品ごとに炭素繊維の分散の程度にばらつきが生じ、成形品ごとの特性(例えば、線膨張係数や曲げ弾性率)もばらつくという問題がある。特に、樹脂組成物とガラス部材という異種の部材が一体化されたガラス樹脂一体成形品では、成形品ごとに樹脂組成物における炭素繊維の分散の程度がばらつくと、樹脂組成物とガラス部材のそれぞれの線膨張係数の差が大きいことからガラス部材の脱落や樹脂組成物の変形といった致命的な欠陥を有する不良品が、数多く発生してしまう。
そこで、本発明は、成形品ごとの特性がばらつき難い樹脂組成物及び当該樹脂組成物を用いたガラス樹脂一体成形品を提供することを目的とする。
本発明は、表面に炭素−酸素結合を有し、かつ、サイジング剤による表面処理がされていない炭素短繊維と、シランカップリング剤により表面処理されている、ガラス繊維及びセラミック繊維の少なくとも一方である非炭素繊維と、前記炭素−酸素結合を有する前記炭素短繊維の表面と親和性を有する熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂と、を備え、前記炭素短繊維の平均繊維長は、非炭素繊維の平均繊維長よりも短く、前記マトリクス樹脂の内部で、前記炭素短繊維及び前記非炭素繊維のそれぞれが分散しており、前記非炭素繊維の間隙において長手方向が不規則に配向した前記炭素短繊維が存在していることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
この樹脂組成物によれば、炭素短繊維が表面に炭素−酸素結合を有していることで熱可塑性樹脂に対して親和性を有するとともに、炭素短繊維がサイジング剤で表面処理されていないことからサイジング剤とシランカップリング剤との反応によって炭素短繊維の分散が阻害されることがない。また、この樹脂組成物は、非炭素繊維の間隙において長手方向が不規則に配向した炭素短繊維が存在する組織を有する。したがって、この樹脂組成物では、マトリクス樹脂内において炭素短繊維が十分に分散している。
さらに、この樹脂組成物は、非炭素繊維の間隙において長手方向が不規則に配向した炭素短繊維が存在するという特殊な組織を有するため、当該樹脂組成物を用いた成形品の曲げ弾性率を劇的に向上させることができる。
また、上記特徴の樹脂組成物において、前記マトリクス樹脂が、極性官能基を有する熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。また、上記特徴の樹脂組成物において、前記マトリクス樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートABSアロイ樹脂、及び、ポリカーボネートAESアロイ樹脂の少なくとも1種を含んでいてもよい。
また、上記特徴の樹脂組成物において、前記マトリクス樹脂が、非晶質である前記熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
この樹脂組成物によれば、結晶性の熱可塑性樹脂のように結晶化に伴って収縮するため成形が難しいという問題や、液晶性の熱可塑性樹脂のように成形後に層分離が生じて充填剤の濃度が均一にならないという問題が生じない、非晶質の熱可塑性樹脂がマトリクス樹脂に含まれる。
また、上記特徴の樹脂組成物において、前記炭素短繊維の平均繊維長が、30μm以上1500μm以下であり、前記非炭素繊維の平均繊維長が、1mm以上10mm以下であり、前記炭素短繊維の平均繊維長が、前記非炭素繊維の平均繊維長の10分の1以下であってもよい。
この樹脂組成物によれば、炭素短繊維及び非炭素繊維のそれぞれの平均繊維長が短くなることでマトリクス樹脂内に分散し易くなるとともに、炭素短繊維の平均繊維長が非炭素繊維の平均繊維長よりも十分に短くなることで非炭素繊維の間隙に炭素短繊維が入り込み易くなる。そのため、非炭素繊維の間隙において長手方向が不規則に配向した炭素短繊維が存在している組織を有する樹脂組成物を、容易に得ることができる。
また、上記特徴の樹脂組成物において、前記炭素短繊維が、表面に炭素−水素結合と炭素−窒素結合の少なくとも一方の結合をさらに有していてもよい。また、上記特徴の樹脂組成物において、前記炭素短繊維が、PAN系炭素短繊維であってもよい。
また、上記特徴の樹脂組成物において、成形品におけるMD方向の線膨張係数が1×10−5/℃以下、かつ、曲げ弾性率が13GPa以上になる割合であってもよい。例えば、前記炭素短繊維、前記非炭素繊維及び前記マトリクス樹脂の合計に対する前記炭素短繊維の質量比が15%以上、かつ、前記非炭素繊維に対する前記炭素短繊維の質量比が50%以上であってもよい。
この樹脂組成物によれば、特許文献1で提案されているような従来の樹脂組成物では実現不可能な特性を有する成形品を得ることができる。
また、本発明は、上記の樹脂組成物と前記ガラス部材とが一体化されていることを特徴とするガラス樹脂一体成形品を提供する。例えば、前記樹脂組成物におけるMD方向の線膨張係数が、前記ガラス部材の線膨張係数の0.8倍以上かつ1.3倍以下であってもよい。
このガラス樹脂一体型成形品によれば、成形品ごとの樹脂組成物の特性のばらつきが抑制されるため、ガラス部材の脱落や樹脂組成物の変形といった致命的な欠陥を有する不良品の発生を抑制することができる。
上記特徴の樹脂組成物によれば、マトリクス樹脂内において炭素短繊維が十分に分散するため、成形品ごとの特性のばらつきを抑制することができる。
過熱水蒸気自燃分解法で得られた炭素短繊維のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)の結果を示す図。 本発明の実施形態に係る樹脂組成物の組織を示した走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図。 本発明の実施例及び比較例における質量比及び特性を示す表。 図3に示した実施例1〜5の特性と、特許文献1の実施例の特性とを対比して示すグラフ。
<樹脂組成物>
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂に対して、炭素短繊維と、ガラス繊維及びセラミック繊維の少なくとも一方である非炭素繊維とを、充填剤として添加するものである。なお、以下の説明において、炭素短繊維及び非炭素繊維の平均繊維長とは、繊維の長手方向の長さの平均値を指すものとする。例えば、チョップドファイバーのように、特定の長さに切り揃えられた繊維は、その特定の長さがそのまま平均繊維長になる。また例えば、ミルドファイバーのように、個々の繊維の長手方向の長さが一定の範囲内でばらつき得る場合は、そのばらついている長さの平均値が平均繊維長になる。また、以下の説明において、平均繊維長とは主として重量平均繊維長を意味している。
炭素短繊維は、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を原料に用いたPAN系炭素繊維や、石炭ピッチまたは石油ピッチを原料に用いたピッチ系炭素繊維などで構成される。ただし、炭素短繊維は、表面に炭素−酸素結合を有し、かつ、サイジング剤による表面処理がされていないものとする。
このような、表面に炭素−酸素結合を有し、かつ、サイジング剤による表面処理がされていない炭素短繊維は、例えば、本願出願人による特許5809019号に記載の製造方法(以下、「過熱水蒸気自燃分解法」という)によって得られる。過熱水蒸気自燃分解法は、炭素繊維が含まれている樹脂材料(例えば、廃材、端材、リサイクル品、デッドストック品など)を、常圧過熱水蒸気に接触させ、マトリクス樹脂の分解ガスが充満する雰囲気で、マトリックス樹脂を300℃以上600℃以下で加熱分解(自燃焼成)するという方法である。この方法において、分解時の雰囲気に含まれる酸素原子(さらには水素原子及び窒素原子)が、炭素短繊維の表面に対して化学修飾により導入される。
また、過熱水蒸気自燃分解法によって得られた炭素短繊維を、篩等を用いて分級することで、所望の平均繊維長である炭素短繊維が得られる。炭素短繊維を分級する工程は、例えば、過熱水蒸気自燃分解法によって得られた炭素短繊維を、任意の重量平均繊維長(Lw)を有する1種または2種以上の炭素短繊維群に分級する工程である。かかる工程を加えることで、所望の重量平均繊維長を有する炭素短繊維を製造することができる。重量平均繊維長(Lw)は、下記式(1)により求められる。
Lw=ΣWi・Li/ΣWi …(1)
上記式(1)において、Liは、個々の炭素短繊維の繊維長を表し、Wiは、繊維長がLiの炭素短繊維の重量を表す。なお、Wiは、下記式(2)を意味する。
Wi=α・Ni・Li …(2)
上記式(2)において、αは、πrρ(rは、各炭素短繊維の半径を表し、ρは、各炭素短繊維の密度を表す)を意味する。また、上記式(1)に上記式(2)を代入することによって、下記式(3)及び(4)を求めることができ、平均繊維長は下記式(4)として示される。また、例えば、重量平均繊維長(Lw)は、顕微鏡等の画像処理により、繊維長がLiである炭素短繊維の数(Ni)を計測することで得られる。
Lw=Σ(α・Ni・Li)Li/Σα・Ni・Li …(3)
Lw=ΣNi・Li/ΣNi・Li …(4)
分級された炭素短繊維の平均繊維長は、±50%の変動幅を含む値である。また、分級の目的は、所定の平均繊維長(Lw)である炭素短繊維の割合が85重量%以上になるように炭素短繊維群を選別することである。具体例を挙げると、平均繊維長が100μmの炭素短繊維を分級するとは、繊維長が50μm(100μm×0.5)〜150μm(100μm×1.5)の範囲にある炭素短繊維群を選別し、その選別した炭素短繊維群中において、繊維長が50μm〜150μmの炭素短繊維が85重量%以上含まれていることである。
なお、画像処理による繊維長の測定では、上述のLi及びNiが計測されることが多いので、一般に平均繊維長といえば、数平均繊維長(Ln)を意味することが多い。数平均繊維長は、下記式(5)で示される。なお、重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比較から、繊維長分布の状態がわかる。例えば、Lw=Ln、即ち、Ln/Lw=1.0であれば、繊維長が全て同じ(単分散性)である。
Ln=ΣNi・Li/ΣNi …(5)
炭素短繊維の平均繊維長は、好ましくは30μm以上1500μm以下であり、より好ましくは30μm以上1000μm以下である。また、炭素短繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは5以上であり、より好ましくは8以上である。また、炭素短繊維の平均繊維長は、非炭素繊維の平均繊維長よりも短く、好ましくは非炭素繊維の平均繊維長の10分の1以下であり、より好ましくは非炭素繊維の平均繊維長の30分の1以下である。
図1に、過熱水蒸気自燃分解法で得られた炭素短繊維のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)の結果を示す。なお、図1では、過熱水蒸気自燃分解法とは異なる製造方法で得られた炭素短繊維のフーリエ変換赤外分光分析の結果を、比較のために示している。図1(a)は、過熱水蒸気自燃分解法で得られた炭素短繊維の分析結果である。図1(b)は、過熱水蒸気を用いずにマトリクス樹脂を加熱分解して得られた炭素短繊維の分析結果である。図1(c)は、市販の炭素短繊維(東邦テナックス(株)製、製品名「HTA」)の分析結果である。
図1(a)に示すように、過熱水蒸気自燃分解法で得られた炭素短繊維の分析結果からは、炭素短繊維の表面に炭素−酸素結合(−C=O)が導入されていることを示す1735cm−1のピークが確認されるが、図1(b)及び(c)に示す分析結果には同様のピークが確認されない。なお、図1(a)に示すように、フーリエ変換赤外分光分析の結果において炭素−酸素結合を示すピークが明確に確認されることをもって、炭素短繊維が表面に炭素−酸素結合を有していると解釈してもよい。また、図示はしていないが、エックス線光電子分光分析(XPS)の結果から、炭素−酸素結合を示すピークが明確に確認されることをもって、炭素短繊維が表面に炭素−酸素結合を有していると解釈してもよい。
同様に、図1(a)に示す分析結果からは、炭素短繊維の表面に炭素−水素結合が導入されていることを示す2941cm−1のピークと、炭素短繊維の表面に炭素−窒素結合(−C≡N)が導入されていることを示す2249cm−1のピークと、炭素短繊維の表面に炭素−炭素結合(−C=C)が導入されていることを示す1617cm−1のピークとが確認されるが、図1(b)及び(c)に示す分析結果には同様のピークが確認されない。なお、図1(a)に示すように、フーリエ変換赤外分光分析の結果において炭素−水素結合や炭素−窒素結合を示すピークが明確に確認されることをもって、炭素短繊維が表面にこれらの結合を有していると解釈してもよい。また、図示はしていないが、エックス線光電子分光分析の結果から、炭素−水素結合や炭素−窒素結合を示すピークが明確に確認されることをもって、炭素短繊維が表面にこれらの結合を有していると解釈してもよい。
なお、表面に炭素−酸素結合を有し、かつ、サイジング剤による表面処理がされていない炭素短繊維は、上述した過熱水蒸気自燃分解法以外の方法でも得ることができる。例えば、サイジング剤による表面処理がされていない市販の炭素短繊維を酸素プラズマに曝露するという方法であっても、表面に炭素−酸素結合を有し、かつ、サイジング剤による表面処理がされていない炭素短繊を得ることができる。
非炭素繊維は、シランカップリング剤により表面処理されたものである。例えば、非炭素繊維は、シランカップリング剤で表面処理されたガラス繊維やセラミック繊維を切断することで得られる。非炭素繊維は、10mmを超えるような長繊維ではなく、その平均繊維長は、好ましくは1mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である。
マトリクス樹脂は、炭素短繊維の表面の炭素−酸素結合と親和性を有する熱可塑性樹脂を含む。例えば、エステル基や水酸基、アミド基などの極性官能基を有する熱可塑性樹脂は、炭素−酸素結合と親和性を有するため、これらの熱可塑性樹脂がマトリクス樹脂に含まれていると好ましい。また、マトリクス樹脂に含まれる熱可塑性樹脂としては、非晶質の熱可塑性樹脂が好ましい。結晶性の樹脂は、結晶化に伴い収縮するため非晶質の樹脂と比較して成形が難しいという問題があり、液晶性の樹脂は、成形後に層分離が生じて充填剤の濃度が均一にならない可能性があるという問題があるからである。
上記の条件を満たす熱可塑性樹脂として、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートABSアロイ樹脂、ポリカーボネートAESアロイ樹脂が挙げられる。マトリクス樹脂は、これらの熱可塑性樹脂の少なくとも1種を含んでいると、好ましい。なお、マトリクス樹脂が、結晶性であるが極性官能基を有する高強度の熱可塑性樹脂であるポリアミドを含んでいてもよい。
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、高温で融解したマトリクス樹脂に、上述した炭素短繊維及びガラス繊維を添加して、周知の混合及び混練方法及び装置を用いて混合及び混練することで得られる。例えば、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用いて混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
そして、得られた樹脂組成物を、射出成形などの周知の成形方法で成形することで、当該樹脂組成物を用いた成形品を得ることができる。このとき、例えば、金型内にガラス部材を載置して、当該金型内に融解した樹脂組成物を流し込むことで、ガラス樹脂一体化成形品を得ることができる。なお、樹脂組成物とガラス部材との接合を強化するために、ガラス部材における樹脂組成物との接合面を、シランカップリング剤で表面処理してもよい。また、本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、ガラス部材に限らず、セラミックなどの他の材料の部材と一体成形することも可能である。
ところで、本発明の実施形態に係る樹脂組成物において、非炭素繊維は、シランカップリング剤で表面処理されており、マトリクス樹脂に対する親和性が高められているため、マトリクス樹脂内に分散する。一方、炭素短繊維は、非炭素繊維よりも平均繊維長が短く、その表面にマトリクス樹脂と親和性を有する炭素−酸素結合を有しているため、サイジング剤で表面処理されていなくても、マトリクス樹脂内に分散する。また、炭素短繊維は、サイジング剤で表面処理されていないため、融解した高温のマトリクス樹脂内で炭素短繊維と非炭素繊維が近接したとしても、サイジング剤とシランカップリング剤が反応して炭素短繊維及び非炭素繊維の分散が阻害されるということは生じない。
以上のような理由から、本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、炭素短繊維及び非炭素繊維がマトリクス樹脂に対して十分に分散する。ここで、本発明の実施形態に係る樹脂組成物の組織について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施形態に係る樹脂組成物の組織を示した走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。なお、図2(a)は低倍率のSEM画像、図2(b)は高倍率のSEM画像である。
図2(a)及び(b)において、径が細く短い繊維が炭素短繊維Cであり、径が太く長い繊維が非炭素繊維(ガラス繊維)Nである。図2(a)及び(b)に示すように、本発明の実施形態に係る樹脂組成物では、マトリクス樹脂内において、炭素短繊維Cが非炭素繊維Nの間隙に入り込むとともに、任意の方向を向いている。即ち、本発明の実施形態に係る樹脂組成物では、非炭素繊維Nの間隙において長手方向が不規則に配向した炭素短繊維Cが存在する組織になっている。
このように、本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、マトリクス樹脂内において炭素短繊維Cが十分に分散するため、成形品ごとの特性のばらつきを抑制することが可能である。
特に、本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、ガラス樹脂一体型成形品のような、成形品ごとの樹脂組成物の特性のばらつきが許容され難い成形品に適用することができる。例えば、本発明の実施形態に係る樹脂組成物をガラス樹脂一体型成形品に適用した場合、成形品ごとの樹脂組成物の線膨張係数のばらつきが抑制されるため、ガラス部材の脱落や樹脂組成物の変形といった致命的な欠陥を有する不良品の発生を抑制することができる。なお、本発明の実施形態に係る樹脂組成物をガラス樹脂一体型成形品に適用する場合、樹脂組成物におけるMD方向(成形時における樹脂の流れ方向)の線膨張係数が、ガラス部材の線膨張係数の0.8倍以上かつ1.3倍以下になるように樹脂組成物を設計すると、好ましい。
<実施例>
以下、本発明の実施形態に係る樹脂組成物を用いた成形品(試料)の特性について、具体的な実施例を挙げて説明する。
最初に、本発明の実施例について図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例及び比較例における質量比及び特性を示す表である。なお、図3では、特性として線膨張係数(10−6/℃)と曲げ弾性率(GPa)を示している。線膨張係数は、MD方向の値であって、ISO11359−2に準拠した方法で測定した値である。曲げ弾性率は、ISO178に準拠した方法で測定した値である。
図3に示すように、本発明の実施例1〜5は、ポリカーボネートABSアロイまたはポリカーボネートであるマトリクス樹脂に対して、ガラス繊維及び炭素短繊維の両方を添加した樹脂組成物を成形した試料である。一方、比較例1〜3は、ポリカーボネートABSアロイであるマトリクス樹脂に対して、ガラス繊維及び炭素短繊維のいずれか一方を添加した樹脂組成物を成形した試料である。
本発明の実施例1〜5及び比較例1〜3において、ガラス繊維は、平均繊維長が3mmのチョップドストランドである。また、炭素短繊維は、上述の過熱水蒸気自燃分解法で得られたPAN系のミルドファイバーであり、平均繊維長は60μmである。即ち、炭素短繊維の平均繊維長は、ガラス繊維の平均繊維長の50分の1である。なお、過熱水蒸気自燃分解法で得られる炭素短繊維は、平均繊維長が同じであっても、個々の繊維(単繊維)の繊維長の分布が異なり得る。そこで、炭素短繊維における個々の繊維の繊維長の分布の影響を調べるために、実施例1及び2では、各成分の質量比は同じであるが、個々の炭素短繊維の繊維長の分布状態(例えば、分布範囲の広狭や分散など)が異なる炭素短繊維を用いている。
図3において、質量比が同じである実施例1及び2は、線膨張係数及び曲げ弾性率も同じである。そのため、個々の炭素短繊維の繊維長の分布状態は、線膨張係数及び曲げ弾性率には大きな影響を与えないと考えられる。
また、実施例1〜5及び比較例1〜3から明らかなように、炭素短繊維の質量比を大きくするほど、線膨張係数を小さくすることができる。
ところで、ガラス繊維や炭素短繊維の質量比を大きくすると、曲げ弾性率が大きくなることは知られている。ただし、それには限界があり、比較例3のように、炭素短繊維の質量比を20%まで大きくしても、曲げ弾性率は8GPaまでしか上がらない。同様に、比較例1及び2のように、ガラス繊維の質量比を45%まで大きくしても、曲げ弾性率は12GPaまでしか上がらない。
しかし、実施例1〜5のように、ガラス繊維及び炭素短繊維の両方をマトリクス樹脂に添加すると、上記の限界を超えて、曲げ弾性率を劇的に向上させることが可能である。例えば、実施例1〜4のように、曲げ弾性率を13GPa以上(さらには、14GPa以上)まで大きくすることができる。即ち、実施例1〜5のように、ガラス繊維及び炭素短繊維の両方をマトリクス樹脂に添加することで、ガラス繊維及び炭素短繊維の相乗効果によって曲げ弾性率を劇的に向上させることができる。
具体的に、実施例1〜5は、図2に示したように、ガラス繊維の間隙において長手方向が不規則に配向した炭素短繊維が存在する組織を有する。そして、このような特殊な組織に起因して、機械的強度が劇的に向上したものと考えられる。なお、炭素短繊維の平均繊維長を30μm以上1500μm以下かつガラス繊維(非炭素繊維)の平均繊維長を1mm以上10mm以下にするとともに、炭素短繊維の平均繊維長を非炭素繊維の平均繊維長の10分の1以下(より好ましくは非炭素繊維の平均繊維長の30分の1以下)にすると、炭素短繊維及びガラス繊維のそれぞれの平均繊維長が短くなることで分散し易くなるとともに、炭素短繊維の平均繊維長がガラス繊維の平均繊維長よりも十分に短くなることでガラス繊維の間隙に炭素短繊維が入り込み易くなるため、上記のような組織が得やすくなる。
次に、図4を参照して、図3に示した実施例1〜5の特性を、特許文献1で提案されている樹脂組成物の実施例と比較して説明する。図4は、図3に示した実施例1〜5の特性と、特許文献1の実施例の特性とを対比して示すグラフである。なお、図4に示すグラフにおいて、横軸は線膨張係数(10−6/℃)であり、縦軸は曲げ弾性率(GPa)である。また、図4では、本発明及び特許文献1のそれぞれについて、最小二乗法で線形近似した近似直線と相関係数(R)を併せて示している。
図4に示すように、特許文献1の実施例(明細書の段落[0135]の[表2]参照)は、実施例1〜3,5〜6の炭素繊維の質量比が20%で等しいにもかかわらず、線膨張係数が10×10−6から7.2×10−6まで変動している。また、線膨張係数の減少に伴って曲げ弾性率が大きくなるという傾向は一応見られるが、相関係数Rは0.68であって1からほど遠い。
特許文献1の実施例では、熱可塑性樹脂であるポリカーボネートに炭素繊維を分散させるにもかかわらず、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に対して炭素繊維を分散させるために最適化されているエポキシ系サイジング剤などのサイジング剤で炭素繊維を表面処理している。また、特許文献1の実施例では、サイジング剤で表面処理した炭素繊維と、シランカップリング剤で表面処理したガラス繊維との両方を充填剤として用いているため、融解して高温になっているポリカーボネートの内部で近接している炭素繊維及びガラス繊維において、サイジング剤とシランカップリング剤とが反応する(例えば、両者に含まれるエポキシ基同士が引き合う)。これらの要因から、特許文献1の実施例は、熱可塑性樹脂内における炭素繊維の分散が不十分であり、個々の実施例ごとに炭素繊維の分散の程度が異なるため、実施例1〜3,5〜6において炭素繊維の質量比が20%で等しいにもかかわらず線膨張係数が10×10−6から7.2×10−6まで変動するなど、特性が大きくばらついていると考えられる。
一方、本発明の実施例は、図3を参照して説明した通り、炭素短繊維の質量比が大きくなるにつれて線膨張係数が小さくなっている。さらに、本発明の実施例は、線膨張係数の減少に伴って曲げ弾性率が大きくなるという明確な傾向が見られ、相関係数Rは0.92であって1に近い。
本発明の実施例は、炭素短繊維が表面に炭素−酸素結合を有しており、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂と親和性がある。また、本発明の実施例は、炭素短繊維がサイジング剤で表面処理されておらず、融解して高温になっている熱可塑性樹脂の内部で炭素繊維及びガラス繊維が近接したとしても、サイジング剤とシランカップリング剤とが反応することがない。これらの要因から、本発明の実施例は、熱可塑性樹脂内において炭素短繊維が十分に分散しているため、炭素短繊維の質量比の増加に伴って線膨張係数及び曲げ弾性率が規則的に変動(線膨張係数は低下、曲げ弾性率は増大)しており、特性のばらつきが非常に小さくなっていると考えられる。
また、特許文献1の実施例及び本発明の実施例のそれぞれは、MD方向の線膨張係数が1×10−5/℃以下になり得る。しかし、特許文献1の実施例は、曲げ弾性率が良いものであっても13GPaを超えることができずに頭打ちする。これに対して、本発明の実施例1〜4は、曲げ弾性率が13GPaで頭打ちせず、それ以上の値を取り得る。このように、本発明の実施形態に係る樹脂組成物を用いることで、特許文献1で提案されているような従来の樹脂組成物では実現不可能な特性を有する成形品を得ることができる。なお、本発明の実施例1〜4は、炭素短繊維、ガラス繊維(非炭素繊維)及びマトリクス樹脂の合計に対する炭素短繊維の質量比が15%以上、かつ、ガラス繊維に対する炭素短繊維の質量比が50%以上の試料である。
この違いは、特許文献1の実施例と本発明の実施例とのそれぞれにおける組織の違いに起因していると考えられる。本発明の実施例は、図2に示したように長手方向が不規則に配向した炭素短繊維がガラス繊維の間隙に存在する組織を有しており、このような組織であることから曲げ弾性率が劇的に向上していると考えられる。しかし、特許文献1の実施例は、炭素繊維の繊維長が6mmであり、ガラス繊維の繊維長3mmよりも長いため、本発明の実施例のような組織にはなり得ず、曲げ弾性率も向上してないと考えられる。
なお、本発明の実施例1〜5は、非炭素繊維としてガラス繊維を用いているが、ガラス繊維に代えてセラミック繊維を用いても、ガラス繊維とともにセラミック繊維を用いても、本発明の実施例1〜5と同様の効果が得られる。
本発明は、熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維強化樹脂複合材料である樹脂組成物と、当該樹脂組成物とガラス部材とが一体成形されているガラス樹脂一体化成形品に利用可能である。
C 炭素短繊維
N 非炭素繊維(ガラス繊維)

Claims (11)

  1. 表面に炭素−酸素結合を有し、かつ、サイジング剤による表面処理がされていない炭素短繊維と、
    シランカップリング剤により表面処理されている、ガラス繊維及びセラミック繊維の少なくとも一方である非炭素繊維と、
    前記炭素−酸素結合を有する前記炭素短繊維の表面と親和性を有する熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂と、を備え、
    前記炭素短繊維の平均繊維長は、非炭素繊維の平均繊維長よりも短く、
    前記マトリクス樹脂の内部で、前記炭素短繊維及び前記非炭素繊維のそれぞれが分散しており、前記非炭素繊維の間隙において長手方向が不規則に配向した前記炭素短繊維が存在していることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記マトリクス樹脂が、極性官能基を有する熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記マトリクス樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートABSアロイ樹脂、及び、ポリカーボネートAESアロイ樹脂の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記マトリクス樹脂が、非晶質である前記熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記炭素短繊維の平均繊維長が、30μm以上1500μm以下であり、
    前記非炭素繊維の平均繊維長が、1mm以上10mm以下であり、
    前記炭素短繊維の平均繊維長が、前記非炭素繊維の平均繊維長の10分の1以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記炭素短繊維が、表面に炭素−水素結合と炭素−窒素結合の少なくとも一方の結合をさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記炭素短繊維が、PAN系炭素短繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 成形品におけるMD方向の線膨張係数が1×10−5/℃以下、かつ、曲げ弾性率が13GPa以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記炭素短繊維、前記非炭素繊維及び前記マトリクス樹脂の合計に対する前記炭素短繊維の質量比が15%以上、かつ、前記非炭素繊維に対する前記炭素短繊維の質量比が50%以上であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物とガラス部材とが一体化されていることを特徴とするガラス樹脂一体成形品。
  11. 前記樹脂組成物におけるMD方向の線膨張係数が、前記ガラス部材の線膨張係数の0.8倍以上かつ1.3倍以下であることを特徴とする請求項10に記載のガラス樹脂一体成形品。
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