JP2019031431A - 塩基性塩化アルミニウム溶液及びその製造方法 - Google Patents

塩基性塩化アルミニウム溶液及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高い凝集性能と高い保存安定性を持つ塩基性塩化アルミニウム溶液を低コストで生産可能な製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】[Al2(OH)nCl(6−n)]m(0<n<6、m≦10)で表される塩基性塩化アルミニウムを含み、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液に対して、塩化物イオン源及びアルカリを加える塩素添加工程を行い、塩基度が63以上75以下であり、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下である塩基性塩化アルミニウム溶液を得ることを特徴とする塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法を用いる。【選択図】図1

Description

本発明は、凝集剤などとして使用される塩基性塩化アルミニウム溶液及びその製造方法に関するものである。
塩基性塩化アルミニウム(Poly Aluminum Chloride;PAC)は、原水の浄化などを目的として、硫酸バンドとならんで広く使用されている凝集剤である。このPACは一般的に[Al2(OH)nCl(6−n)]m(0<n<6、10≦m)で表される無機ポリマーである。このポリマー中のAlに対するOHの割合を塩基度と呼び、塩基度45以上60以下のものが原水処理に広く用いられている。
近年、集中豪雨などによる一時的な降雨量の増加による原水の汚濁や、温暖化による原水の温度上昇に伴う藻の大量発生などにより、原水中に含まれる濁質が増加する傾向にある。そのため、凝集性能の高いPACが求められてきた。
塩基度の高いPAC、特に塩基度が65以上のPACを使用することにより、少ない添加量で高い凝集性能が得られるといわれている。しかしながら、高い塩基度のPACの水溶液は、加水分解によるPACの自己重合、すなわちポリマー化が進みやすく、粘度が高くなりやすいという問題点があった。
一方、PACは水溶液の形態や粉末の形態で保存される。PACは元々、水溶液の形態で製造される場合が多く、通常、水溶液の形態で保存や輸送され、処理される原水にPACの水溶液(以下「PAC溶液」という場合がある)として投入する方法が採用される。PAC溶液は使用する浄水場などにおいて、大型のポンプや攪拌器を用いて原水と混合する。そのため、極端に高い粘度を有するPAC溶液はこれらの機器に負荷をかけてしまう。また、PAC溶液は、原水の濁度の変化に応じて随時使用するため、ある程度まとまった量を長期にわたって保管する必要がある。そのため、PAC溶液は少なくとも半年以上にわたって、性能の劣化や粘度の増加がないことが求められている。
従来のPACの製造方法としては、(1)易溶性のアルミナゲルを、塩酸、又は塩酸のアルミニウム塩に溶解してPACを得る方法、(2)塩化アルミニウムと硫酸アルミニウムの混合物にカルシウム化合物を添加するか、硫酸アルミニウムに塩化カルシウムと炭酸カルシウムを添加し、硫酸イオンを硫酸カルシウム(石膏)として除去してPACを得る方法、(3)常温常圧で塩酸に難溶の水酸化アルミニウムを、加熱加圧雰囲気で塩酸と反応させてPACを得る方法、などがある。
高い塩基度を持つPAC溶液を得るために、前述の(1)の方法を改良した、低塩基度のPAC溶液とアルミナゲルを混合する方法が主に行われていた。例えば、特許文献1では、張水した反応容器に、攪拌下pH6〜9の範囲に維持しつつ、塩基度が50未満のPAC溶液とアルカリ溶液を同時に注下してアルミナゲルを生成し、得られたアルミナゲルを塩基度が50未満の塩基性塩化アルミニウム溶液に添加して塩基度60〜80のPAC溶液を製造する方法が開示されている。特許文献2には、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルミン酸ナトリウム溶液とをpHが4〜11の範囲になるように混合し、アルミナゲル含有液を調製した上で、塩基度25〜65の塩基性塩化アルミニウム溶液と混合して、例えば塩基度45〜83.5のPAC溶液を製造する方法が開示されている。
一方、特許文献3及び4には、それぞれ上述の(3)、(2)の方法で得られた低塩基度のPAC溶液に対して、アルカリを添加することで塩基度をそれぞれ60〜75、60〜70に向上させる方法が開示されている。
特開平7−172824号公報 特開2014−024694号公報 特開昭51−106339号公報 特開昭53−1699号公報
特許文献1及び特許文献2の方法は、アルミナゲルとPAC溶液を別々に製造し、後段で両者を混合・溶解することを特徴とする。アルミナゲルをPAC溶液中に溶解する工程では、低温ではアルミナゲルの溶解速度が遅く、高温では溶解と同時にゲル化が進行してしまう。そのため、PAC溶液の粘度の上昇を抑えながら塩基度の向上を行うためには、アルミナゲルの添加速度、溶解する際の撹拌温度や撹拌速度などの製造条件を厳しく管理する必要があった。
また、特許文献1及び特許文献2の方法は、アルミナゲルとPAC溶液を別々に製造、後段で両者を混合・溶解するため、アルミナゲルとPAC溶液を個別の設備で製造する必要があり、設備点数が増加し、コストが高くなるなど生産効率が悪いという問題もあった。
一方、特許文献3、4に記載の、低塩基度のPAC溶液に対して、アルカリを添加する方法では、塩基度の向上に伴い、アルカリの添加時やPAC溶液の保管中にPAC溶液が粘度の増加を生じてゲル化するなど、PAC溶液の保存安定性が悪化してしまうという問題があった。
本発明は、上記問題と実情に鑑み、高い凝集性能と高い保存安定性を持つ塩基性塩化アルミニウム溶液を低コストで生産可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、塩基度の低いPAC溶液に、アルカリを加えて塩基度を高くする際に、塩化物イオン源も加えて、塩化物イオン濃度を高めることで、得られたPAC溶液が、高い凝集性能及び高い保存安定性を有することを見出した。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するために、[Al2(OH)nCl(6−n)]m(0<n<6、m≦10)で表される塩基性塩化アルミニウムを含み、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液(原料溶液または低塩基度PAC溶液)に対して、塩化物イオン源及びアルカリを加える塩素添加工程を含む、塩基度が63以上75以下であり、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下である塩基性塩化アルミニウム溶液(目的溶液または高塩基度PAC溶液)の製造方法を提供する。
また、本発明は、[Al2(OH)nCl(6−n)]m(0<n<6、m≦10)で表される塩基性塩化アルミニウムを含み、前記塩基性塩化アルミニウムの塩基度が63以上75以下であり、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下である塩基性塩化アルミニウム溶液を提供する。
本発明により、高い凝集性能と高い保存安定性を持つ塩基性塩化アルミニウム溶液を低コストで生産可能な製造方法を提供することができる。
PACの構造式を示す図。
以下、本発明の実施態様について以下に説明する。なお、本発明の範囲は、これらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し、実施することができる。
本発明では、[Al2(OH)nCl(6−n)]m(0<n<6、m≦10)で表される塩基性塩化アルミニウム(PAC)を含み、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液(原料溶液または低塩基度PAC溶液)に対して、塩化物イオン源及びアルカリを加える塩素添加工程を含む、塩基性塩化アルミニウム溶液(目的溶液または高塩基度PAC溶液)の製造方法が提供される。この方法で得られた塩基性塩化アルミニウム溶液は、塩基度が63以上75以下であり、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下である。なお、PAC溶液は、含有するPACを酸化アルミニウムに換算した場合の酸化アルミニウムの濃度が10〜11質量%の範囲にあり、酸化アルミニウムの濃度はJWWA K 154に示されている方法で測定可能である。
PACの塩基度は、JWWA(公益社団法人日本水道協会) K 154によって示されている方法で測定可能である。つまり、PACの塩基度は、上記のPACの化学式における(n/6)×100(%)で表され、塩基度100はn=6であり、PACがClを含有しないので水酸化アルミニウムであることを意味し、塩基度0はn=0であり、PACがOHを含有しないので塩化アルミニウムであることを意味する。凝集性及び粘度の観点から、PACの塩基度は63以上75以下であることが好ましく、65以上73以下であることが特に好ましい。PACの塩基度が低いと、原水中に含まれる濁質が多い場合に濁質除去のために必要なPACの量が増大し、塩基度が高すぎる際には、PACは粘度が増大したり、ゲル化したりしやすくなる。
PAC溶液の粘度は、室温(20〜25℃)での絶対粘度のことを指す。本明細書において、粘度の値は、JIS Z 8803:2011に規定される振動粘度計による粘度測定方法で測定した値を用いる。PAC溶液の粘度は、使用時のポンプや攪拌器への負荷を考慮すると、200mPa・s以下であり、100mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがさらに好ましい。PAC溶液の粘度に下限は特にないが、純水の粘度が1〜2mPa・sであることから、本発明の方法で得られたPAC溶液の粘度は、通常は5mPa・s以上である。本発明の方法で得られたPAC溶液は、製造後半年が経過しても、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下の範囲にある。
重合度と粘度の間に正の相関関係があるとされている有機ポリマーに対して、無機ポリマーでは単量体と重合体を直接観察できる例はほとんどなく、重合度と粘度に関する研究例はあまりなかった。PACの場合には、重合の進行に伴ってゲル化することが知られていることから、粘度と重合度の間に正の相関関係があると考えられる。つまり、PACの初期重合度が高いものほど、粘度が高い傾向にあり、粘度の大小をもって重合度の大小を比較できると考えられる。
PACには、濁質の電荷を中和することにより、濁質同士の凝集を促進し、濁質を除去する効果があるとされているが、近年の報告では、原水中でPACが重合しながら濁質を取り込み、フロックを形成することによる濁質除去効果が、電荷中和の効果に比べて大きいことが報告されている。通常、PAC溶液は浄水場において、予備希釈を行った上で原水と混合される。重合度の高いPACを使用した場合、その活性の高さから、予備混合の段階から、一部でPAC自身の重合が生じているものと考えられる。その結果、原水中でそれ以上の重合が十分に起きないため、濁質を取り込む能力や、フロックを形成する能力が劣ると考えられ、結果的に濁質除去効果に劣ってしまう。すなわち、塩基度が同じでも、より粘度が低いPAC溶液のほうが、濁質除去効果が高くなる傾向にある。
また、本発明の方法で得られた塩基性塩化アルミニウム溶液(目的溶液または高塩基度PAC溶液)は、Cl/Al2O3の重量割合が0.75以上であることが好ましく、0.85以上であることがさらに好ましく、0.90以上であることが特に好ましい。Cl/Al2O3の重量割合が小さく、塩化物イオン濃度がAl2O3濃度に対して低い場合には、高塩基度化した際にゲル化が進行してしまう。一方、Cl/Al2O3の重量割合が大きく、塩化物イオン濃度が高すぎる場合、PAC溶液の性能には大きな影響はないものの、装置や配管の腐食等への影響が顕著となるためCl/Al2O3の重量割合は1.25以下であることが望ましい。ここでいうAl2O3濃度とは、JWWAの基準値として用いられる値であり、PAC溶液中に含まれるアルミニウムイオン濃度をAl2O3に換算した濃度である。
また、市販されている塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸イオン濃度については、JWWAの規格により3.5質量%以下と定められている。硫酸イオンは、アルミニウムイオン同士の架橋構造を形成することにより、凝集性能の向上に寄与するとされている。しかしながら、高塩基度PACの場合においてはPAC自体の凝集性能が高く、硫酸イオン濃度が高すぎる場合には、一部で凝集が促進してしまい、十分に濁質除去効果を発揮することなくポリ塩化アルミニウムのみの凝集体を形成してしまうことがある。そのため、本発明の方法で得られた塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸イオン濃度は3.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下であることがさらに好ましい。また、硫酸イオン濃度が低すぎる場合には、凝集が生じにくくなるため、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。
日本水道協会の水道用PACの塩基度の規格(JWWA K 154:2016)は45〜75であり、本発明における塩基度が63未満のPAC溶液としては、市販品の塩基度が45以上60以下のPAC溶液を使用できる。塩基度が63未満のPACの製造方法は特に限定されず、例えば、水中で水酸化アルミニウムと硫酸を反応させた後、塩化カルシウム及びカルシウム化合物を混合し、硫酸イオンを石膏として除去して得ることができる。カルシウム化合物としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを使用できる。また、水酸化アルミニウムと塩酸(塩化水素の水溶液)とを混合し、オートクレーブを用いて、100℃超かつ1気圧超の高温高圧雰囲気下で合成したPAC溶液を用いることもできる。
なお、塩基度63未満のPAC溶液(原料溶液または低塩基度PAC溶液)として、塩基度が低いPAC溶液(例えば、塩基度50未満のPAC溶液)に対して、炭酸ナトリウム等のアルカリが添加されたり、アルミナゲルと混合されたりして、塩基度が高められたが、塩基度が63未満であるPAC溶液を用いてもよい。
また、原料である塩基度が63未満のPAC溶液(低塩基度PAC溶液)の粘度は、1mPa・s以上50mPa・s以下が好ましく、2mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましく、2mPa・s以上10mPa・s以下が特に好ましい。また、塩基度が63未満のPAC溶液のCl/Al2O3は、0.25以上0.90以下が好ましく、0.50以上0.87以下がより好ましい。
本発明において、塩素添加工程において添加する塩化物イオン源としては、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどが使用可能だが、その入手のし易さ及び溶解度の高さから塩化ナトリウムが好ましい。塩化物イオン源の添加量は、添加する対象である塩基度が63未満のPAC溶液に含まれる塩化物イオンの量と、塩基性塩化アルミニウム溶液の目的とするCl/Al2O3の重量割合に合わせて適宜調整することができるが、添加する塩化物イオン源に含まれる塩素原子の、塩基度が63未満のPAC溶液中のAl原子に対する比である、[Cl]/[Al]mol比は、0.01以上が好ましく、0.05以上が特に好ましい。一方、添加量が多すぎる場合には、凝集性能が低下する原因となるため、[Cl]/[Al]mol比は、1以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。
本発明において、塩素添加工程において添加するアルカリは、アルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物塩、アルカリ土類金属の炭酸塩又は水酸化物塩などが好ましい。アルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができ、アルカリ土類金属の炭酸塩又は水酸化物塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどを挙げることができる。
特に、本発明者らは、PACとアルカリとが、穏やかに反応することが、PAC溶液のゲル化を防ぎながらPACの塩基度を高くできることに重要であることを見出した。溶解度の高い水酸化ナトリウムを濃厚液でPAC溶液に添加する場合には、PACとの反応が激烈であり、局所的に脱水縮合が発生して水酸化アルミニウムが析出してしまう場合があるのに対し、溶解度の劣る炭酸ナトリウムを添加する場合には、発生する炭酸によって攪拌が進行し、比較的穏やかな条件で高塩基度化することが可能である。
一方で、炭酸ナトリウムを用いた比較的穏やかな反応であったとしても、局所的に発生する水酸化物イオンにより局所的にポリ塩化アルミニウムがゲル化したり、水酸化アルミニウムが析出したりする。これらのゲルや析出物は、炭酸ナトリウムの一部を取り込んで凝結し、不溶解成分となっており、塩基度を高めた後のPAC溶液中に残渣として残存する。この残渣中にはAlイオンが取り込まれているため、残渣を除去する工程で、原料である塩基度が63未満のPAC溶液に含まれるアルミニウムのうち、得られた塩基度が63以上75以下のPAC溶液に含まれるアルミニウムの割合を示すAl収率が低下してしまう。
そのため、アルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物塩よりも溶解度の低い、アルカリ土類金属の炭酸塩又は水酸化物塩をアルカリに用いることで、高塩基度化の反応が穏やかに進行し、残渣の発生する量を抑えることができる。特に、比較的安価に入手できる炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムをアルカリとして用いることが好ましい。さらに、PAC中に硫酸イオンを含み、アルカリとして炭酸カルシウムや水酸化カルシウムを使用する場合、PAC間で重合してさらに大きなポリマーとなることを促進するといわれているPAC中の硫酸イオンがカルシウムイオンと結合して石膏として沈殿する。この反応機構も、PAC間の重合の抑制に寄与しているものと考えられる。
また、アルカリとして、複数の塩を併用してもよい。例えば、炭酸カルシウムや水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムのように溶解度の低いアルカリと、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの溶解度の高いアルカリを併用することが考えられる。併用する際、複数の塩は同時に添加されてもよいし、別々に逐次に添加されてもよい。
アルカリの添加量は、添加する対象である塩基度が63未満のPAC溶液の塩基度と、PAC溶液の目的とする塩基度に合わせて適宜調整することができるが、添加するアルカリに含まれる水酸基の、塩基度が63未満のPAC溶液中のAl原子に対する比である、[OH]/[Al]mol比は、0.1以上が好ましく、0.4以上が特に好ましい。一方、添加量が多すぎる場合には、ゲル化してしまうため、[OH]/[Al]mol比は、1.05以下であることが好ましく、1以下であることが特に好ましい。なお、アルカリが炭酸塩の場合はCO3 2−イオンが2当量のOH−イオンに対応するとして、水酸基の量を計算できる。
なお、塩素添加工程において、塩化物イオン源とアルカリは、同時に添加されてもよいし、別々に逐次に添加されてもよい。
本発明において、前記塩素添加工程の後に、塩基性塩化アルミニウム溶液に酸を加える酸添加工程を行ってもよい。この酸添加工程において添加する酸は、塩酸、硫酸、硝酸等が使用可能である。但し、硫酸添加は硫酸イオンの増加を招き、図らずもPAC溶液の粘度が増大する場合がある。また、硝酸添加は、JWWAの規格で規定されている硝酸態窒素(nitrate nitrogen)濃度1.0mg/L以下を満足しなくなる可能性がある。そのため、塩酸を使用することが好ましい。なお、添加する酸に含まれる水素原子の、塩基度が63未満のPAC溶液中のAl原子に対する比である[H]/[Al]mol比は、0.001以上が好ましく、0.01以上が特に好ましい。一方、添加する酸の添加量が多すぎる場合には、得られるPAC溶液の塩基度が低下する原因となるため、1以下であることが好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。
本発明の製造方法に用いる反応槽は、塩素や酸による腐食が生じることから、金属等をガラスライニング、または、ゴムライニングして用いることが望ましい。処理条件としては、加熱または冷却してもよく、加圧して実施してもかまわないが、反応速度は工業的に見て十分に速いため、常温常圧で実施すればよい。反応時間は、十分な反応が進行するためには1時間以上であることが望ましく、製造効率の観点から、24時間以内であることが望ましい。塩素添加工程及び酸添加工程において、反応槽内は撹拌されることが好ましい。
本発明では、一つの反応槽で、塩基度が高く安定性の高いPAC溶液を製造することができるため、アルミナゲルとPAC溶液を別々に製造し、後段で両者を混合・溶解する方法に比べて、製造コストを下げることができる。
PAC溶液は、図1に示すような無機ポリマーであるPACの水溶液である。PAC溶液へのアルカリの添加は、無機ポリマーの配位子であるH2O基からプロトンを奪い、OH基へと変換することにより、PACの活性を上昇させる。このOH基がポリマー間の重合反応を生じ、架橋構造を形成することにより、PAC溶液の粘性が増大し、一定の限度を超えた場合にはゲル化が進行する。このとき、塩化物イオンが系内に多く存在すると、重合反応を抑制することにより架橋構造の形成を阻害し、PAC溶液の粘性の増加を抑制することができる。PAC溶液への酸の添加も同様の効果を有していると考えられる。つまり、PAC溶液への酸の添加により生じたプロトンが活性の高いOH基と優先的に結合するために、PAC溶液の活性を低下させるとともに安定化させると考えられる。
以下、実施例及び比較例により、本発明のPAC溶液を詳細に説明する。しかし、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<低塩基度PAC溶液の作成>
水酸化アルミニウムを硫酸中に溶解後、塩化カルシウム及び炭酸カルシウムを混合し、硫酸イオンを石膏として除去して塩基度50、Cl/Al2O3=0.74、粘度5.95mPa・sのPAC水溶液100gを得た。
<実施例1>
前述の低塩基度PAC溶液100gに、炭酸ナトリウム8.2gと塩化ナトリウム4.0gを添加したのち、36%塩酸水溶液2.0g(塩化水素の量としては0.72g)を添加した。その後、得られた反応液を濾過することにより不溶解成分を除去し、塩基度を高めたPAC溶液を得た。
<実施例2〜6>
表1に記載のように、アルカリとして用いた塩基の添加量、塩化ナトリウムの添加量、酸の添加量を変更する以外は、実施例1と同様にして、高塩基度のPAC溶液を得た。実施例5は酸を添加しなかった。
<比較例1>
低塩基度のPAC溶液について、各種評価を行った。
<比較例2>
前述の低塩基度のPAC溶液の作成方法において、PAC合成時の炭酸カルシウム添加量を1.5倍にすることにより、塩基度63のPAC溶液100gを得た。すでに一部がゲル化しており、粘度測定及びジャーテストを実施できなかった。
<比較例3〜4>
表1に記載のように、アルカリとして用いた塩基の添加量、塩化ナトリウムの添加量、酸の添加量を変更する以外は、実施例1と同様にして、高塩基度のPAC溶液を得た。なお、比較例3では、半年後のPAC溶液の一部がゲル化しており、粘度測定が実施できなかった。また、比較例4では、製造直後から一部がゲル化しており、粘度測定及びジャーテストを実施できなかった。
[Cl/Al2O3の重量割合の測定]
Cl濃度は、PAC溶液の希釈液を作製し、炭酸カルシウム及びクロム酸カリウム溶液を添加し、0.1MのAgNO3を用いた逆滴定により測定した。また、Al2O3濃度は、JWWA K 154:2016の基準に従って測定した。測定したCl濃度をAl2O3濃度で除してCl/Al2O3の重量割合を求めた。
[塩基度の測定]
塩基度はJWWA K 154:2016の基準に従って測定した。
[粘度]
粘度は、JIS Z 8803:2011に記載の振動粘度計による粘度測定方法に準拠した振動式粘度計VISCOMATE VM 100A(セコニック社製)を用いて室温(25℃)にて測定した。なお、粘度が非常に高く、固体として取り扱えるような場合には、ゲル化したと判断した。
[凝集試験(ジャーテスト)]
ジャーテストもJWWA K 154:2016の基準に従って実施し、凝集試験後の上澄み水の濁度を測定した。
実施例1〜6、比較例1〜4で得られたPAC溶液の評価結果を表1に示す。なお、粘度については、PAC溶液の製造直後以外に、室温(20〜25℃)で半年間保管した後にも評価を行った。また、実施例1〜6において、低塩基度のPAC溶液及び高塩基度のPAC溶液のいずれも、酸化アルミニウムの濃度が10〜11質量%の範囲にあった。
Figure 2019031431
表1の結果から、実施例1〜6に記載のPAC溶液(高塩基度PAC溶液)は、比較例1の塩基度50のPAC溶液に比べて、塩基度が高く、粘度の増加を抑制できたため、凝集試験の結果、低い濁度にまで濁質を除去することができ、凝集性能に優れることを示した。また、実施例1〜6に記載のPAC溶液は、半年保管後でも粘度が15.3〜102.1mPa・sであり、最大でも200mPa・s以下であり、室温(20〜25℃)で半年間保管した後の粘度の増加は2倍以下に抑制されていた。
また、比較例2では、水酸化アルミニウムからPAC溶液を合成する際に炭酸カルシウムを多く加えることで、塩基度63の高い塩基度を持つPACを得ることができたが、粘度が高く、ゲル化してしまった。また、比較例3では、塩基度50のPACにアルカリのみを加えて塩基度を高くしたが、塩化物イオン源が添加されていないため、粘度214mPa・sの高粘度のPAC溶液が得られ、半年後はゲル化してしまった。さらに、比較例4では、塩基度50のPAC溶液にアルカリを多量に加えて、塩基度75を超えるPAC溶液を得た場合、製造時にゲル化してしまった。すなわち、比較例2〜3のように塩化物イオン源を添加しないで、初期の仕込み組成の変更やアルカリ添加によって、高塩基度化を図った場合や、比較例4のように塩化物イオン源を添加しても過度の多量のアルカリにより高塩基度化を図った場合、ゲル化が生じてしまいPAC溶液として使用できなくなった。
なお、比較例3では、粘度が高く、既に重合が進んでおり、原水中で自身が重合しながら濁質を取り込む能力が劣ると考えられ、塩基度が同等の実施例1に比べると凝集性能が低く、塩基度の高さほどには凝集能力が高くない結果となった。すなわち、塩基度が高く、粘度が低い実施例1〜6のPAC溶液が、凝集能力に最も優れる結果となった。
<実施例7>
前述の低塩基度PAC溶液100gに、水酸化カルシウム5.5gと塩化ナトリウム3.8gを添加した。その後、得られた反応液を濾過することにより不溶解成分を除去し、塩基度を高めたPAC溶液を得た。
[収率の評価]
塩基度を高めたPAC溶液について、以下の式に基づいて、アルミニウム重量を基準とした場合の反応後の収率を求めた。収率は97%であった。
[アルミニウム収率(%)]=[反応後のAl2O3換算重量]/[反応前のAl2O3換算重量]×100
[硫酸イオン濃度の測定]
硫酸イオン濃度はJWWA K 154の基準に従って測定した。その結果、高塩基度化の処理をした後のPACの硫酸イオン濃度は2.2重量%であった。
<実施例8〜14>
表2に記載のように、アルカリとして用いた塩基の種類、塩基の添加量、塩化ナトリウムの添加量、酸の添加量を変更する以外は、実施例7と同様にして、高塩基度のPAC溶液を得た。なお、酸はアルカリと塩化ナトリウムの添加後に添加し、酸として36%塩酸水溶液を使用した。実施例9、13は、酸を添加しなかった。
実施例7〜14で得られたPAC溶液の評価結果を表2に示す。
Figure 2019031431
表2の結果から、本発明のPACは、比較例1の塩基度の低いPACに比べて凝集性能に優れ、かつ粘度の増加が抑制できていることがわかる。
実施例7では、水酸化カルシウムを用いて高塩基度化を行った結果、高収率が得られるだけでなく、濁質の除去に対しても効果的に働くことがわかる。
実施例8では、塩化ナトリウムの添加量を実施例1に比べて増やし、塩酸を添加したところ、収率が低下することなく低粘度化が可能であった。
実施例9では、塩化ナトリウムの添加量を実施例1に比べて多くし、塩酸については添加しなかった。その結果、塩酸添加ほどではないものの、低粘度化が可能であった。また収率も高い値が得られた。
実施例10では、塩化ナトリウムの添加量を実施例1と同等程度とし、塩酸を添加したところ、低粘度化が可能であった。また収率も高い値が得られた。
実施例11では、水酸化カルシウムに代えて、炭酸カルシウムで高塩基度化を行ったところ、問題なく高塩基度化でき、また収率も高い値が得られた。
実施例12では、水酸化カルシウムに代えて、炭酸マグネシウムで高塩基度化を行ったところ、問題なく高塩基度化でき、収率も高い値が得られた。
一方、実施例13、14のように炭酸ナトリウムを用いて高塩基度化した場合、酸の添加の如何に関わらず、収率が実施例7から12に比べて低い結果となった。

Claims (14)

  1. [Al2(OH)nCl(6−n)]m(0<n<6、m≦10)で表される塩基性塩化アルミニウムを含み、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液に対して、塩化物イオン源及びアルカリを加える塩素添加工程を含む、塩基度が63以上75以下であり、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下である塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  2. 前記塩化物イオン源が、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム及び塩化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  3. 前記アルカリが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  4. 前記アルカリが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  5. 前記塩素添加工程の後に、
    塩基性塩化アルミニウム溶液に、塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの酸を加える酸添加工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  6. 水中で水酸化アルミニウムと硫酸を反応させる工程と、
    さらに、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムからなる群から選ばれるカルシウム化合物と、塩化カルシウムとを加える工程と、
    沈殿した硫酸カルシウムを除去し、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液を得る工程と、
    前記塩基性塩化アルミニウム溶液に対して、塩化物イオン源及びアルカリを加える塩素添加工程とを含む、
    塩基度が63以上75以下であり、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下である塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  7. 100℃超かつ1気圧超の高温高圧雰囲気下で、水酸化アルミニウムと塩酸を反応させ、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液を得る工程と、
    前記塩基性塩化アルミニウム溶液に対して、塩化物イオン源及びアルカリを加える塩素添加工程とを含む、
    塩基度が63以上75以下であり、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下である塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  8. 製造された塩基性塩化アルミニウム溶液のCl/Al2O3の重量割合が、0.75以上1.25以下である請求項1〜7に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  9. [Al2(OH)nCl(6−n)]m(0<n<6、m≦10)で表される塩基性塩化アルミニウムを含み、塩基度が63未満で、粘度が1mPa・s以上50mPa・s以下で、Cl/Al2O3の重量割合が0.50以上0.87未満の塩基性塩化アルミニウム溶液に対して、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる一つを含むアルカリ及び塩化ナトリウムを加える塩素添加工程と、
    更に、塩酸を添加する酸添加工程とを含む、
    塩基度が63以上75以下で、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下で、Cl/Al2O3の重量割合が、0.90以上1.25以下である塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  10. 前記塩素添加工程において、添加するアルカリに含まれる水酸基の、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液中のAl原子に対する比である、[OH]/[Al]mol比は、0.1以上1.05以下であり、
    前記塩素添加工程において、添加する塩化物イオン源に含まれる塩素原子の、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液中のAl原子に対する比である、[Cl]/[Al]mol比は、0.01以上1以下であり、
    前記酸添加工程において、添加する酸に含まれる水素原子の、塩基度が63未満の塩基性塩化アルミニウム溶液中のAl原子に対する比である[H]/[Al]mol比は、0.001以上1以下である
    ことを特徴とする請求項9に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  11. 製造された塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸イオン濃度が3.0質量%以下である請求項1〜10に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法。
  12. [Al2(OH)nCl(6−n)]m(0<n<6、m≦10)で表される塩基性塩化アルミニウムを含み、
    前記塩基性塩化アルミニウムの塩基度が63以上75以下であり、粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下であることを特徴とする、塩基性塩化アルミニウム溶液。
  13. 前記塩基性塩化アルミニウムのCl/Al2O3の重量割合が、0.75以上1.25以下である請求項12に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液。
  14. 請求項12又は13に記載の塩基性塩化アルミニウム溶液からなる水処理用凝集剤。
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