以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、NN−BTを基本構成とし、機械的品質係数と圧電性の良好な非鉛圧電材料を提供するものである。なお、本発明の圧電材料は、誘電体としての特性を利用してコンデンサ、メモリ、およびセンサ等のさまざまな用途に利用することができる。
本発明の圧電材料は、以下の特徴を有する。
(特徴1)Na、Ba、Nb、Ti、Zr、Mnを含む。
(特徴2)ペロブスカイト型酸化物よりなる。
(特徴3)Nbに対するTiのモル比を示すtは、0.08≦t≦0.15である。
(特徴4)Nbに対するZrのモル比を示すzは、0.01≦z≦0.04である。
(特徴5)Nbに対するBaのモル比を示すβは、0.08≦β≦0.17である。
(特徴6)Nbに対するNaのモル比を示すαは、0.95≦α≦1.03である。
(特徴7)Nbに対するMnのモル比を示すmは、0.0005≦m≦0.0025である。
(特徴8)より好ましくは、前記圧電材料が、Zrに対してモル比で0.97以上1.03以下のCaを含有する。
これらの各特徴を以下、詳細に説明する。
(特徴1)
本発明の圧電材料は、Na、Ba、Nb、Ti、Zr、Mnを含む。より好ましくは、前記圧電材料はCaも含まれる。
圧電材料が、主成分として、Na、Ba、Nb、Ti、Oを同時に含有することで、圧電材料の圧電定数が大きくなるとともに、デバイスの使用温度範囲(例えば0℃から80℃まで)における各特性の変動を小さくすることができる。加えて圧電材料がCaを含有することで、圧電定数d33が更に大きくなる。
圧電材料が、Na、Ba、Nb、Ti、Oの主成分に加えて、少量のZrと微量のMnを含有することで圧電材料の|d33/d31|値が3以上と大きく得られる。このような構成をとることで誘電正接が、例えば室温で1kHzの交番電圧を印加した際に、0.02(2%)未満となる。更にCaを含有すると、|d33/d31|値が3.5以上と、より大きな値を示す圧電材料が得られる。
さらには圧電定数|d33/d31|が4.0以上であるとd31に起因する不要振動の抑制の観点でより好ましい。
(特徴2)
圧電材料はペロブスカイト型酸化物よりなる。圧電材料がCaを含有した場合も同様である。圧電材料がペロブスカイト型酸化物よりなることで、本発明の圧電材料は、大きな圧電定数を示す。
この結晶構造は、ペロブスカイト型構造が全体の過半数を占める、いわゆる主相であることが望ましく、さらにはペロブスカイト型構造のみからなる単相であることがより望ましい。例えば、タングステンブロンズ型の構造が多く混在すると圧電定数が大幅に低下するおそれがある。
本発明においてペロブスカイト型金属酸化物とは、岩波理化学辞典 第5版(岩波書店1998年2月20日発行)に記載されているような、理想的には立方晶構造であるペロブスカイト型構造(ペロフスカイト構造とも言う)を持つ金属酸化物を指す。ペロブスカイト型構造を持つ金属酸化物は一般にABO3の化学式で表現される。ペロブスカイト型金属酸化物において、元素A、Bは各々イオンの形でAサイト、Bサイトと呼ばれる単位格子の特定の位置を占める。例えば、立方晶系の単位格子であれば、A元素は立方体の頂点、B元素は体心に位置する。O元素は酸素の陰イオンとして立方体の面心位置を占める。立方体のAサイト元素は12配位であり、Bサイト元素は6配位である。A元素、B元素、O元素がそれぞれ単位格子の対称位置から僅かに座標シフトすると、ペロブスカイト型構造の単位格子が歪み、正方晶、菱面体晶、斜方晶といった結晶系となる。
たとえば正方晶の場合、唯一の4回回転軸方向をc軸、それに垂直で互いに垂直な2つの結晶軸をa軸、b軸と定義する。それぞれの軸方向の単位格子の長さをc、a、b(=a)であらわす。
本発明の材料の主成分では、NaとBaがAサイトに位置し、NbとTiとZrがBサイトに位置するが、意図的にNa/Nb比を1より小さく、Ba/Ti比を1より大きくしてもよい。金属酸化物全体のAサイト元素、Bサイト元素、酸素元素の量比が、必ずしも1対1対3にはならない場合でも、ペロブスカイト型構造が9割以上を占める主相としていれば、本発明の範囲に含まれる。より好ましくは、ペロブスカイト型構造の酸化物が実質的にすべてを占める単相である。
前記酸化物がペロブスカイト型構造であることは、例えば、圧電材料に対するX線回折や電子線回折の測定結果から判断することができる。
(特徴3、5、6)
圧電材料の酸素以外の主元素を、Na、Ba、Nb、Ti、Zr、Mnが占める事で、本発明の狙いである|d33/d31|値の向上が得られ、さらに誘電正接の抑制効果が十分に得られる。但し、圧電材料の他の物性を調整する目的で、他の金属元素を、本発明の効果を阻害しない範囲で添加しても構わない。
ここで、本発明の圧電材料を構成する主成分は、反強誘電体材料であるニオブ酸ナトリウムに強誘電体のチタン酸バリウムを加えたものである。このニオブ酸ナトリウムに対するチタン酸バリウムの量を示すtあるいはβが0.15あるいは0.17よりも大きくなるとキュリー温度が大幅に、例えば80℃以下に低下する。一方で、tあるいはβが0.08を下回ると圧電定数および機械強度が低下する。よって、0.08≦t≦0.15かつ0.08≦β≦0.15の範囲にあるとき、高いキュリー温度と良好な圧電性が得られる。さらに、0.09≦t≦0.12かつ0.09≦β≦0.12の範囲にあるとき、概ね190℃以上のキュリー温度と50pm/V以上の圧電定数|d31|が得られ、デバイス作製工程での熱によって圧電性能が低下する可能性が低く、より好ましい。
なお、圧電定数d31はマイナスの値として表記されることが一般的であるが、以下ではその絶対値を表記する。
(特徴4、7、8)
本発明の圧電材料は、Nbに対するZrのモル比を示すzが、0.01≦z≦0.04の範囲でZrを含み、すなわちBサイトを占める元素のうちの4モル%以下をZrが占めることで、室温での誘電率が増加して圧電性能が向上する。Zr量が多くなるとペロブスカイト構造のc/a比が小さくなり、結晶構造の異方性に変化が生じる。
また、本発明の圧電材料の自発分極がピニングされている場合、Zrは自発分極のピニングを低減することができる。ピニングが低減されると、飽和に近い分極−電界のヒステリシス曲線において、残留分極値が低下したり抗電界が低下したりする。ZrがBサイトの4モル%を越えると抵抗率が低下する。
Nbに対する前記Mnのモル比を示すmが、0.0005≦m≦0.0025の範囲で圧電材料がMnを含むことで、抵抗率、圧電定数、電気機械結合係数、機械的品質係数、ヤング率、密度を増加させることができる。特に、前記範囲のMnを本発明の圧電材料に含ませることで、Mnを含まない場合と比較して室温における誘電正接の抑制効果と|d33/d31|値の向上効果が得られる。
前記Mnは圧電材料に含まれており、ペロブスカイト型構造のAサイトまたはBサイト、あるいはNa、Ba、Nb、Ti、Zr、Oよりなるペロブスカイト型構造の結晶粒の粒界に存在する。
MnがAサイトに位置すると、結晶構造の欠陥を補う効果がある。
また、MnがBサイトに位置すると、欠陥双極子を形成し、内部電界が発生する。
Mnはいずれのサイトに位置していても、本発明の効果は得られる。MnはAサイトとBサイトの両方に含まれていてもよい。
Mnの少なくとも一部は、粒界に存在していてもよい。粒界に存在するMnは酸化物として存在していることが好ましい。Mnの一部が粒界に偏って存在することで、ポアが抑制され、機械的品質係数が増加したり、ヤング率が増加したりするなどの効果が期待できる。加えて粒界にMnの一部が存在することで、粒界摩擦の軽減が生じ、材料のハード化が期待される。
試料内でのMnの分布や、結晶中の占有サイトは、電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分光、X線回折、ラマン散乱、透過型電子顕微鏡でも評価することができる。
MnがAサイトにのみ存在する場合、MnイオンはNaイオンやBaイオンよりも小さいので、単位格子の体積が減少する。
ZrがBサイトにのみ存在する場合、ZrイオンはNbイオンやTiイオンよりも大きいので、単位格子の体積が増加する。
CaがAサイトにのみ存在する場合、CaイオンはBaイオンよりも小さいので、単位格子の体積が減少する。
上記の状態が同時に実現する場合、上記の効果が重畳して現れる。
ただし、過剰なCaの添加はキュリー温度と逐次相転移温度を大幅に低下させるおそれがあるため、Zrに対してモル比で0.97以上1.03以下のCaを含有するのが好ましい。
単位格子の体積はX線回折測定における各回折ピークの角度から計算できる。
Zr量が多くなるとペロブスカイト構造のc/a比が小さくなり、結晶構造の異方性に変化が生じる。c/aが小さくなることで|d33/d31|値が小さくなることも考えられるが、本発明の材料ではZrの添加で|d33/d31|値の増大が得られる。これは、c軸に対してねじれ方向への原子の変位のしやすさなどが影響していると考えられる。
ZrおよびMnに加えてCaを同時に添加することで、上記効果が重畳して現れ、より|d33/d31|値の増大が期待できる。
(キュリー温度)
キュリー温度とは、その温度以上で圧電材料の圧電性が消失する温度である。本明細書においては、強誘電相と常誘電相の相転移温度近傍で静電容量が極大となる温度をキュリー温度とする。例えば、電極を付与した圧電材料の温度を変化させながらインピーダンスアナライザ(Keysight Technologies社(旧Agilent Technologies社)製 4194A)で1kHzにおける静電容量を測定して求めることができる。
電極を有さない圧電材料の単体でキュリー温度を評価する場合は、該圧電材料を解砕して粉末化した試料のX線回折像を、例えば室温から300℃の範囲で計測し、強誘電性構造から常誘電性構造への相転移が発生する温度をキュリー温度とみなすことができる。
本発明の圧電材料のキュリー温度は235℃以上400℃以下であることが好ましい。圧電材料のキュリー温度が235℃以上であると、圧電材料を分極処理した後に素子加工する際に、例えば樹脂の熱圧着プロセスのような加熱工程を施しても圧電材料の圧電定数が低下しなくなるため、好ましい。他方、圧電材料のキュリー温度が400℃以下であると、圧電材料への分極処理が容易になる。
(圧電定数)
圧電定数とは、圧電材料に電圧を印加した時の圧電材料の変位(伸張、収縮、ずり)の度合いを示す量である。例えば、圧電定数d31とは、圧電材料の分極方向(通常は分極処理の際に電圧を印加した方向)に電圧を印加した際の分極方向と直交方向の収縮(伸張)変位に対する電圧の比例係数、つまり単位電圧あたりの変位量である。また逆に、材料に応力を印加した際に誘起される電荷量としても定義できる。
圧電材料の圧電定数は、市販のインピーダンスアナライザを用いて得られる共振周波数および反共振周波数の測定結果から、電子情報技術産業協会規格(JEITA EM−4501)に基づいて、計算により求めることができる。本明細では、特に記載のない限り、室温、例えば25℃環境下での圧電定数の計測を意図している。この計測方法を共振−反共振法と呼ぶ。
圧電定数は、共振−反共振法の他に、電圧印加時の変位量計測、または応力印加時の誘起電荷量計測によっても算出可能である。良好な振動特性の観点から好ましくは圧電定数d33が200pm/V以上であるとよい。
(Ti,Nb比)
前記圧電材料に含まれるNbに対するTiのモル比tは、0.08≦t≦0.15であると好ましい。0.08以上であることで、圧電材料の結晶化が促進され、圧電材料を電子機器に搭載するのに求められる機械強度および密度が得られる。他方、tが0.15以下であることで、主成分であるニオブ酸ナトリウムの特性が強調され、190℃以上のキュリー温度と50pm/V以上の圧電定数|d31|が得られる。さらに好ましいtの範囲は、0.09≦t≦0.12である。
(Pb成分,K成分)
前記圧電材料に含まれるPb成分およびK成分が合計で1000ppm未満であると、好ましい。
より好ましくは、前記圧電材料に含まれるPb成分が500ppm未満であり、K成分が500ppm未満である。更により好ましくは、Pb成分およびK成分の合計が500ppm未満である。
本発明の圧電材料に含まれるPb成分の量を抑制すると、圧電材料を水中や土壌中に放置した際に環境中に放出されるPb成分の影響を縮小することができる。
本発明の圧電材料に含まれるK成分の量を抑制すると、圧電材料の耐湿性および高速振動時の効率が高まる。
(誘電正接)
本発明の圧電材料の室温における誘電正接は、0.02以下(2%以下)であることが好ましい。室温での誘電正接が0.02以下であると、本発明の圧電材料を用いた圧電素子や電子機器の消費電力を抑制することができる。より好ましい、室温における誘電正接は0.013以下(1.3%以下)であり、更により好ましくは0.01以下(1%以下)である。
室温における圧電材料の誘電正接は、圧電材料に電極を付与した上で、市販のインピーダンスアナライザを用いて、例えば周波数が1kHzにおいて計測することができる。
(圧電材料の製造方法)
本発明の圧電材料は、その構成成分と組成比、結晶構造に特徴があり、製造方法に特段の制限は無く、一般的な無機酸化物の合成手段で本発明の圧電材料を得ることができる。
以下、望ましい製造方法の一例について説明する。
本発明の圧電材料の形態の一態様である圧電セラミックスを得るためには、焼成前の成形体を作製する。ここで、セラミックスとは、基本成分が金属酸化物であり、熱処理によって焼き固められた結晶粒子の凝集体(バルク体とも言う)、いわゆる多結晶を表す。焼結後に加工されたものもセラミックスに含まれる。前記成形体とは原料粉末を成形した固形物である。
原料粉末は純度の高いものの方が好ましい。
原料粉末に用いることができる金属化合物の粉体としては、Na化合物、Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、Mn化合物、Zr化合物およびこれらの複合化合物をあげることができる。
使用可能なNa化合物としては、炭酸ナトリウム、ニオブ酸ナトリウムなどが挙げられる。
使用可能なBa化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、蓚酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、チタン酸バリウム、Ba−Nb複合仮焼粉などが挙げられる。
使用可能なCa化合物としては、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、蓚酸カルシウム、酢酸カルシウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
使用可能なTi化合物としては、酸化チタン、チタン酸バリウムなどが挙げられる。
使用可能なNb化合物としては、酸化ニオブ、ニオブ酸ナトリウムなどが挙げられる。
使用可能なMn化合物としては、酸化マンガン(IV)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(II)、炭酸マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)などが挙げられる。
使用可能なZr化合物としては、酸化ジルコニウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
本発明の圧電材料を形成するのに、望ましい原料粉末の組み合わせとしては、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)仮焼粉、チタン酸バリウム(BaTiO3)仮焼粉、炭酸バリウムと酸化ニオブを混合して仮焼したBa−Nb複合仮焼粉、酸化マンガン粉(例えばMn3O4、MnO2)、ジルコン酸化合物(たとえばジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3))が挙げられる。この原料粉末の組み合わせであると、比較的低温、例えば1300℃以下で結晶化が進行し、高いキュリー温度という本発明の効果も得られやすい。原料混合粉末は、800℃以上1000℃以下の最高温度で仮焼処理してから成形に用いることが好ましい。
原料混合粉末の成形方法としては、一軸加圧加工、冷間静水圧加工、温間静水圧加工、鋳込成形と押し出し成形を挙げることができる。成形体を作製する際には、造粒粉を用いることが好ましい。造粒粉を用いた成形体を焼結すると、焼結体の結晶粒の大きさの分布が均一になり易いという利点がある。
圧電材料の原料粉を造粒する方法は特に限定されないが、造粒粉の粒径をより均一にできるという観点において、最も好ましい造粒方法はスプレードライ法である。
造粒する際に使用可能なバインダーの例としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂が挙げられる。添加するバインダーの量は、前記圧電材料の原料粉に対して1重量部から10重量部が好ましく、成形体の密度が上がるという観点において2重量部から7重量部がより好ましい。
前記成形体の焼結方法は特に限定されない。
焼結方法の例としては、電気炉による焼結、ガス炉による焼結、通電加熱法、マイクロ波焼結法、ミリ波焼結法、HIP(熱間等方圧プレス)などが挙げられる。電気炉およびガスによる焼結は、連続炉であってもバッチ炉であっても構わない。
前記焼結方法における焼結温度は特に限定されないが、各化合物が反応し、充分に結晶成長する温度であることが好ましい。好ましい焼結温度としては、1100℃以上1400℃以下であり、より好ましくは1150℃以上1300℃以下である。上記温度範囲で焼結した圧電材料は良好な絶縁性と圧電定数を示す。焼結処理により得られる圧電材料の特性を再現よく安定させるためには、焼結温度を上記範囲内で一定にして1時間以上48時間以下、より好ましくは2時間以上24時間以下の焼結処理を行うとよい。また、二段階焼結法などの焼結方法を用いてもよいが、生産性を考慮すると急激な温度変化のない方法が好ましい。
焼結処理により得られた圧電材料は用途に応じて所望の形状に研磨加工される。研磨加工の後には、キュリー温度以上の温度で熱処理することが好ましい。機械的に研磨加工されると、圧電材料の内部には残留応力が発生するが、キュリー温度以上で熱処理することにより、残留応力が緩和し、圧電材料の圧電特性がさらに良好になる。熱処理の具体的な時間は特に限定されないが、例えば、300℃以上500℃以下の温度を1時間以上24時間以下保持するような熱処理が好ましい。
本発明の圧電材料を構成する結晶の平均粒径が0.2μm以上50μm以下であると、圧電性と加工強度の両立の観点で好ましい。平均粒径を前記範囲にすることで、十分な圧電性を確保しつつ、切断加工及び研磨加工時の機械的強度を得ることができる。さらに好ましい平均粒径の範囲は、0.3μm以上20μm以下である。本明細において、平均粒径とは、平均円相当径を意味する。円相当径とは、顕微鏡観察法において一般に言われる「投影面積円相当径」を表し、結晶粒の投影面積と同面積を有する真円の直径を表す。
本発明は圧電材料に係るものであるが、セラミックス以外の粉末、単結晶、膜、スラリーなどのいずれの形態でも構わない。
本発明の圧電材料を基板上に作成された膜として利用する際、前記圧電材料の厚みは200nm以上10μm以下、より好ましくは300nm以上3μm以下であることが望ましい。圧電材料の膜厚を200nm以上10μm以下とすることで圧電素子として十分な電気機械変換機能が得られるからである。
前記膜の積層方法は特に制限されない。例えば、化学溶液堆積法(CSD法)、ゾルゲル法、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)、スパッタリング法、パルスレーザデポジション法(PLD法)、水熱合成法、エアロゾルデポジション法(AD法)などが挙げられる。このうち、もっとも好ましい積層方法は化学溶液堆積法またはスパッタリング法である。化学溶液堆積法またはスパッタリング法は、容易に成膜面積を大面積化できる。本発明の圧電材料に用いる基板は(001)面、(110)面または(111)面で切断・研磨された単結晶基板であることが好ましい。特定の結晶面で切断・研磨された単結晶基板を用いることで、その基板表面に設けられた圧電材料膜も同一方位に強く配向させることができる。
(圧電素子)
次に、本発明の圧電素子について説明する。
図1は本発明の圧電素子の構成の一実施形態を示す概略図である。本発明に係る圧電素子は、第一の電極1、圧電材料部2および第二の電極3を少なくとも有する圧電素子であって、前記圧電材料部2を構成する圧電材料が本発明の圧電材料であることを特徴とする。
本発明に係る圧電材料は、少なくとも第一の電極と第二の電極を有する圧電素子にすることにより、その圧電特性を評価できる。前記第一の電極および第二の電極は、厚み5nmから10μm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。
前記第一の電極および第二の電極は、これらのうちの1種からなるものであっても、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また、第一の電極と第二の電極が、それぞれ異なる材料であっても良い。
前記第一の電極と第二の電極の製造方法は限定されず、金属ペーストの焼き付けにより形成しても良いし、スパッタ、蒸着法などにより形成してもよい。また第一の電極と第二の電極とも所望の形状にパターニングして用いても良い。
(分極)
前記圧電素子は一定方向に分極軸が揃っているものであると、より好ましい。分極軸が一定方向に揃っていることで前記圧電素子の圧電定数は大きくなる。
前記圧電素子の分極方法は特に限定されない。分極処理は大気中で行ってもよいし、シリコーンオイル中で行ってもよい。分極をする際の温度は60℃から150℃の温度が好ましいが、素子を構成する圧電材料の組成によって最適な条件は多少異なる。分極処理をするために印加する電界は800V/mmから3.0kV/mmが好ましい。
(P−Eヒステリシス測定)
本発明の圧電素子の圧電材料層は、強誘電体特性を有するため、分極−電界ヒステリシス特性を備える。分極−電界ヒステリシス特性とは、強誘電体に印加した交流電界と、強誘電体が発生する分極量との関係において履歴効果を有することをいう。この履歴効果により、外部電界が0の時であっても正または負の分極を圧電材料層が有し、この分極値を残留分極±Prという。また、同様に分極量が0となる電界も2つに分かれ、これらの電界の大きさを抗電界±Ecという。
分極−電界ヒステリシス特性は、圧電素子の対向する一対の電極に三角波の電圧を印加しながら計測した電荷量から換算して求めるのが一般的で、市販の装置(例えば、東陽テクニカ社のFCE)により測定できる。
(積層型の圧電素子)
次に、前記圧電素子の一実施形態である積層型の圧電素子について説明する。
本発明に係る積層型の圧電素子は、前記圧電素子において、前記圧電材料部内に少なくとも1つの内部電極を備え、前記圧電材料からなる圧電材料層と層状の前記少なくとも1つの内部電極とが交互に積層された積層構造を有することを特徴とする。
図2は本発明の積層圧電素子の構成の一実施形態を示す断面概略図である。本発明に係る積層圧電素子は、圧電材料層54、504と、内部電極55、505を含む電極層とで構成されており、これらが交互に積層された積層圧電素子であって、前記圧電材料層54、504が上記の圧電材料よりなることを特徴とする。電極層は、内部電極55、505以外に第一の電極51、501や第二の電極53、503といった外部電極を含んでいても良い。
図2(a)は2層の圧電材料層54と1層の内部電極55が交互に積層され、その積層構造体を第一の電極51と第二の電極53で狭持した本発明の積層圧電素子の構成を示している。図2(b)のように圧電材料層と内部電極の数を増やしてもよく、その層数に限定はない。図2(b)の積層圧電素子は、9層の圧電材料層504と8層の内部電極505(505aもしくは505b)が交互に積層されている。その積層構造体は第一の電極501と第二の電極503で圧電材料層を挟持した構成であり、交互に形成された内部電極を短絡するための外部電極506aおよび外部電極506bを有する。
内部電極55、505および外部電極506a、506b、第一の電極51、501および第二の電極53、503の大きさや形状は必ずしも圧電材料層54、504と同一である必要はなく、また複数に分割されていてもよい。
内部電極55、505、外部電極506a、506b、第一の電極51、501および第二の電極53、503は、厚み5nmから10μm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。内部電極55、505および外部電極506a、506bは、これらのうちの1種からなるものであっても2種以上の混合物あるいは合金であってもよく、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また複数の電極が、それぞれ異なる材料であってもよい。
本発明の圧電材料を用いる積層型の圧電素子においては、内部電極55、505はAgとPdを含み、前記Agの含有重量M1と前記Pdの含有重量M2との重量比M1/M2が1.5≦M1/M2≦9.0であることが好ましい。前記重量比M1/M2が1.5未満であると内部電極の耐熱性は高いがPd成分の増加により電極コストが増大するため望ましくない。一方で、前記重量比M1/M2が9.0よりも大きくなると、内部電極の耐熱温度が不足することにより、内部電極が島状に形成されて面内で不均一になるので望ましくない。耐熱性とコストの観点から、より好ましくは、2.0≦M1/M2≦5.0である。
電極材料が安価という観点において、内部電極55、505はNiおよびCuの少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。内部電極55、505にNiおよびCuの少なくともいずれか1種を用いる場合、本発明の積層圧電素子は還元雰囲気で焼成することが好ましい。
図2(b)に示すように、内部電極505を含む複数の電極は、駆動電圧の位相をそろえる目的で互いに短絡させても良い。例えば、内部電極505aと第一の電極501を外部電極506aで短絡させても良い。内部電極505bと第二の電極503を外部電極506bで短絡させても良い。内部電極505aと内部電極505bは交互に配置されていても良い。また電極どうしの短絡の形態は限定されない。積層圧電素子の側面に短絡のための電極や配線を設けてもよいし、圧電材料層504を貫通するスルーホールを設け、その内側に導電材料を設けて電極どうしを短絡させてもよい。
(積層圧電素子の製造方法)
本発明に係る積層型の圧電素子の製造方法は、特に限定されないが、以下にその作製方法を例示する。まず、少なくともMn、Na、Nb、Ba、およびTiを含んだ金属化合物粉体を分散させてスラリーを得る工程(A)と、前記スラリーを基材上に設置し成形体を得る工程(B)を実行する。その後に、前記成形体に電極を形成する工程(C)と前記電極が形成された成形体を焼結して、積層圧電素子を得る工程(D)を実行する。
工程(A)に用いることができる金属酸化物は、前記原料粉末として例示した通りである。特に望ましい原料粉末の組み合わせとしては、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)仮焼粉、チタン酸バリウム(BaTiO3)仮焼粉、炭酸バリウムと酸化ニオブを混合して仮焼したBa−Nb複合仮焼粉、酸化マンガン粉(例えばMn3O4、MnO2)、ジルコン酸化合物(たとえばジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3))が挙げられる。この原料粉末の組み合わせであると、比較的低温、例えば1300℃以下で結晶化が進行し、高いキュリー温度という本発明の効果も得られやすい。前記金属酸化物粉は、800℃以上1000℃以下の最高温度で仮焼処理をしてから、スラリー化すると、より好ましい。
前記工程(A)におけるスラリーの作成方法を例示する。前記金属化合物粉の1.6〜1.7倍の重量の溶媒を加え、混合する。溶媒には、例えば、トルエン、エタノール、または、トルエンとエタノールの混合溶媒、酢酸n−ブチル、水を用いることができる。ボールミルで24時間混合した後に微量のバインダーと可塑剤を加える。
バインダーとしてはPVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂が挙げられる。可塑剤としてはジオクチルセバケート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートが挙げられる。可塑剤にジブチルフタレートを用いる場合、バインダーと等重量を秤量する。そして、再度ボールミルを一晩行う。スラリーの粘度が、300〜500mPa・sとなるように溶媒やバインダーの量を調整する。
前記工程(B)における成形体とは、前記金属化合物粉、バインダーと可塑剤のシート形状の混合物である。前記工程(B)における成形体を得る方法としては、例えば、シート成形がある。シート成形には、例えば、ドクターブレード法を用いることができる。ドクターブレード法とは、ドクターブレードを用いて、前記スラリーを前記基材上に塗布し、乾燥させることで、シート形状の成形体を形成する方法である。
基材としては、例えば、ペットフィルムを用いることができる。ペットフィルムのスラリーを設置する面には例えばフッ素コートすると成形体を剥離するのが容易になるので望ましい。乾燥は自然乾燥でも熱風乾燥でもよい。前記成形体の厚みは特に制限されることはなく、積層圧電素子の厚みに合わせて調整することができる。成形体の厚みは例えばスラリーの粘度を高くすると厚くすることができる。
前記工程(C)における電極すなわち内部電極505および外部電極506a、506bの製造方法は限定されず、金属ペーストの焼き付けにより形成しても良いし、スパッタ、蒸着法、印刷法などにより形成してもよい。駆動電圧を小さくする目的で、圧電材料層504の層厚およびピッチ間隔を小さくすることがある。その際には圧電材料層504の前駆体と内部電極505a、505bを含む積層体を形成した後に、前記積層体を同時に焼成するプロセスが選択される。その場合には、圧電材料層504の焼結に必要な温度により形状変化や導電性劣化を起こさないような内部電極の素材が求められる。Ag、Pd、Au、Cu、NiといったPtと比べて低融点かつ安価である金属又はその合金を内部電極505a、505bおよび外部電極506a、506bに用いることができる。ただし、外部電極506a、506bは、前記積層体の焼成後に設けても良く、その場合はAg、Pd、Cu、Niに加え、Alや炭素系電極材料を使用する事ができる。
前記電極の形成方法としてはスクリーン印刷法が望ましい。スクリーン印刷法とは基材上に設置された成形体上に、スクリーン版を設置した上から、ヘラを用いて、金属ペーストを塗布する方法である。前記スクリーン版には少なくとも一部にスクリーンメッシュが形成されている。よって、前記スクリーンメッシュの形成されている部分の金属ペーストが成形体上に塗布される。前記スクリーン版中のスクリーンメッシュは、パターンが形成されていていることが望ましい。金属ペーストを用いて前記パターンを前記成形体に転写することで、前記成形体上に電極をパターニングすることができる。
前記工程(C)における電極を形成後、前記基材から剥離した後に、前記成形体を一枚または複数枚積み重ね圧着する。圧着方法としては、一軸加圧加工、冷間静水圧加工と温間静水圧加工が挙げられる。温間静水圧加工は等方的に均一に圧力をかけることができるので、望ましい。圧着中にバインダーのガラス転移点温度近傍まで加熱するとより良好に圧着できるので望ましい。前記成形体は所望の厚さになるまで複数枚積みかさねて圧着することができる。例えば、前記成形体を5〜100層積み重ねた後に、50〜80℃で10〜60MPaの圧力を積層方向に10秒から10分かけて熱圧着することで、前記成形体を積層することができる。また、電極にアライメントマークを付けることで、複数枚の成形体をアライメントして精度よく積み重ねることができる。また、位置決め用のスルーホールを成形体に設けることでも精度よく積み重ねることができる。
前記工程(D)における成形体の焼結温度は特に限定されないが、各化合物が反応し、充分に結晶成長する温度であることが好ましい。好ましい焼結温度としては、セラミックスの粒径を0.2μmから50μmの範囲にするという観点で、1100℃以上1400℃以下であり、より好ましくは1150℃以上1300℃以下である。上記温度範囲において焼結した積層型の圧電素子は良好な圧電性能を示す。
ただし、前記工程(C)において電極にNiを主成分とした材料を用いたときは、工程(D)を雰囲気焼成が可能な炉で行うことが好ましい。大気雰囲気中においてバインダーを200℃から600℃の温度で燃焼除去した後に、還元性雰囲気に変えて1200℃から1550℃の温度で焼結する。ここで還元性雰囲気とは、主に水素(H2)と窒素(N2)の混合気体から成る雰囲気のことをいう。水素と窒素の体積割合は、H2:N2=1:99からH2:N2=10:90の範囲が好ましい。また、前記混合気体には酸素が含まれていても良い。その酸素濃度は、10−12Pa以上10−4Pa以下である。より好ましくは10−8Pa以上10−5Pa以下である。酸素濃度はジルコニアの酸素濃度計で測定可能である。Ni電極を用いることにより、本発明の積層圧電素子は安価に製造することが可能となる。還元性雰囲気で焼成した後に、600℃まで降温し、雰囲気を大気雰囲気(酸化性雰囲気)におきかえて、酸化処理を行うことが好ましい。焼成炉から取り出した後に、内部電極の端部が露出する素体の側面に導電性ペーストを塗布して乾燥し、外部電極を形成する。
(電子機器)
本発明に係る電子機器は、前記本発明の圧電素子を備えたことを特徴とする。
(電子機器の例1:液体吐出ヘッド、液体吐出装置)
図3(a)(b)は、本発明の電子機器の一例として、本発明の圧電素子を備えた液体吐出ヘッドと該液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置の構成を模式的に示す概略図である。液体吐出ヘッドは、前記圧電素子または前記積層型の圧電素子を配した振動部を備えた液室と、前記液室と連通する吐出口を少なくとも有する。液体吐出装置は、被転写体の載置部と前記液体吐出ヘッドを備える。但し、各部材の形状や配置は図3(a)(b)の例に限定されない。
図3(a)に示すように、本発明の電子機器である液体吐出ヘッドは、上記本発明の圧電素子101を有する。圧電素子101は、第一の電極1011、圧電材料1012、第二の電極1013を少なくとも有する。圧電材料1012および第二の電極1013は、液体吐出ヘッドの吐出力を高める目的でパターニングされていてもよい。
液体吐出ヘッドは、吐出口105、個別液室103、個別液室103と吐出口105をつなぐ連通孔106、液室隔壁104、共通液室107、振動板102、圧電素子101を有する。一般に、圧電材料1012は個別液室103の形状に沿った形状となる。
本発明の電子機器の一例である液体吐出ヘッドに電気信号を入力し駆動させると、振動板102が圧電素子101の変形によって上下に振動し、個別液室103に格納された液体に圧力が加わる。その結果、吐出口105より液体が吐出される。液体吐出ヘッドは、種々の媒体へ印字を行うプリンタへの組み込みや電子デバイスの製造に用いることができる。
次に前記液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置について説明する。
この液体吐出装置も本発明の電子機器の一例と言える。図3(b)には、インクジェット記録装置としての液体吐出装置を例示した。
図3(b)の液体吐出装置は、外装部896の内部に各機構が組み込まれている。自動給送部897は被転写体としての記録紙を装置本体内へ自動給送する機能を有する。自動給送部897から送られた記録紙は、搬送部899によって所定の記録位置(図番無し)へ導かれ、記録動作の後に、再度搬送部899によって記録位置から排出部898へ導かれる。搬送部899が、被転写体の載置部である。前記液体吐出装置は、加えて、記録位置に搬送された記録紙に記録を行う記録部891と、記録部891に対する回復処理を行う回復部890を有する。記録部891には、前記液体吐出ヘッドを収納し、レール上を往復移送させるキャリッジ892が備えられている。
このような液体吐出装置において、外部コンピュータからの指示に従って、キャリッジ892が前記液体吐出ヘッドを移送し、本発明の圧電素子に対する電圧印加に応じてインクが液体吐出ヘッドの吐出口105より放出されることで、印字が行われる。
上記例は、プリンタとして例示したが、本発明の液体吐出装置は、ファクシミリや複合機、複写機などのインクジェット記録装置等のプリンティング装置の他、産業用液体吐出装置、対象物に対する描画装置として使用することができる。加えてユーザーは用途に応じて所望の被転写体を選択することができる。
(電子機器の例2:振動波モータ、光学機器)
図4(a)〜(e)は、本発明の電子機器の一例として、本発明の圧電素子を備えた振動波モータと該振動波モータを用いた光学機器の構成を模式的に示す概略図である。振動波モータは、前記圧電素子または前記積層圧電素子を配した振動体と、前記振動体と接触する移動体とを少なくとも有する。光学機器は、駆動部に前記振動波モータを備える。但し、各部材の形状や配置は図4(a)〜(e)の例に限定されない。
本発明の圧電素子が単板からなる振動波モータを、図4(a)に示す。振動波モータは、振動体201、振動体201の摺動面に不図示の加圧バネによる加圧力で接触している移動体202(ロータとも言う)、移動体202と一体的に設けられた出力軸203を有する。前記振動体201は、金属の弾性体リング2011、本発明の圧電素子2012、圧電素子2012を弾性体リング2011に接着する有機系接着剤2013(エポキシ系、シアノアクリレート系など)で構成される。
圧電素子に位相がπ/2の奇数倍異なる二相の交番電圧を印加すると、振動体201に屈曲進行波が発生し、振動体201の摺動面上の各点が楕円運動をする。ロータ202は振動体201から摩擦力を受け、屈曲進行波とは逆の方向へ回転する。不図示の被駆動体は、出力軸203と接合されており、ロータ202の回転力で駆動される。
次に、積層構造を有した圧電素子(積層圧電素子)を含む振動波モータを図4(b)に例示する。振動体204は、筒状の金属弾性体2041に挟まれた積層圧電素子2042よりなる。積層圧電素子2042は、前記積層型の素子であり、積層外面に第一の電極と第二の電極、積層内面に内部電極を有する。金属弾性体2041はボルトによって積層圧電素子2042を挟持固定し、振動体204を構成する。
積層圧電素子2042に位相の異なる交番電圧を印加することにより、振動体204は互いに直交する2つの振動を励起する。この二つの振動は合成され、振動体204の先端部を駆動するための円振動を形成する。なお、振動体204の上部にはくびれた周溝が形成され、駆動のための振動の変位を大きくしている。
移動体205(ロータとも言う)は、加圧用のバネ206により振動体204と加圧接触し、駆動のための摩擦力を得る。移動体205はベアリングによって回転可能に支持されている。
次に前記振動波モータを用いた光学機器について説明する。
この光学機器も本発明の電子機器の一例と言える。図4(c)(d)(e)には、一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒としての光学機器を例示した。
カメラとの着脱マウント711には、固定筒712と、直進案内筒713、前群鏡筒714が固定されている。これらは交換レンズ鏡筒の固定部材である。
直進案内筒713には、フォーカスレンズ702用の光軸方向の直進案内溝713aが形成されている。フォーカスレンズ702を保持した後群鏡筒716には、径方向外方に突出するカムローラ717a、717bが軸ビス718により固定されており、このカムローラ717aがこの直進案内溝713aに嵌まっている。
直進案内筒713の内周には、カム環715が回動自在に嵌まっている。直進案内筒713とカム環715とは、カム環715に固定されたローラ719が、直進案内筒713の周溝713bに嵌まることで、光軸方向への相対移動が規制されている。このカム環715には、フォーカスレンズ702用のカム溝715aが形成されていて、カム溝715aには、前述のカムローラ717bが同時に嵌まっている。
固定筒712の外周側にはボールレース727により固定筒712に対して定位置回転可能に保持された回転伝達環720が配置されている。回転伝達環720には、回転伝達環720から放射状に延びた軸720fにコロ722が回転自由に保持されており、このコロ722の径大部722aがマニュアルフォーカス環724のマウント側端面724bと接触している。またコロ722の径小部722bは接合部材729と接触している。コロ722は回転伝達環720の外周に等間隔に6つ配置されており、それぞれのコロが上記の関係で構成されている。
マニュアルフォーカス環724の内径部には低摩擦シート(ワッシャ部材)733が配置され、この低摩擦シートが固定筒712のマウント側端面712aとマニュアルフォーカス環724の前側端面724aとの間に挟持されている。また、低摩擦シート733の外径面はリング状とされマニュアルフォーカス環724の内径724cと径嵌合しており、更にマニュアルフォーカス環724の内径724cは固定筒712の外径部712bと径嵌合している。低摩擦シート733は、マニュアルフォーカス環724が固定筒712に対して光軸周りに相対回転する構成の回転環機構における摩擦を軽減する役割を果たす。
なお、コロ722の径大部722aとマニュアルフォーカス環のマウント側端面724bとは、波ワッシャ726が振動波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、加圧力が付与された状態で接触している。また同じく、波ワッシャ726が振動波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、コロ722の径小部722bと接合部材729の間も適度な加圧力が付与された状態で接触している。波ワッシャ726は、固定筒712に対してバヨネット結合したワッシャ732によりマウント方向への移動を規制されている。波ワッシャ726が発生するバネ力(付勢力)は、振動波モータ725、更にはコロ722に伝わり、マニュアルフォーカス環724が固定筒712のマウント側端面712aを押し付け力ともなる。つまり、マニュアルフォーカス環724は、低摩擦シート733を介して固定筒712のマウント側端面712aに押し付けられた状態で組み込まれている。
従って、不図示の制御部により超音波モータ725が固定筒712に対して回転駆動されると、接合部材729がコロ722の径小部722bと摩擦接触しているため、コロ722が軸720f中心周りに回転する。コロ722が軸720f回りに回転すると、結果として回転伝達環720が光軸周りに回転する。
回転伝達環720には、フォーカスキー728が2つ互いに対向する位置に取り付けられており、フォーカスキー728がカム環715の先端に設けられた切り欠き部715bと嵌合している。従って、回転伝達環720が光軸周りに回転すると、その回転力がフォーカスキー728を介してカム環715に伝達される。カム環が光軸周りに回転させられると、カムローラ717aと直進案内溝713aにより回転規制された後群鏡筒716が、カムローラ717bによってカム環715のカム溝715aに沿って進退する。これにより、フォーカスレンズ702が駆動され、フォーカス動作が行われる。
上記例は、前記振動波モータを用いた光学機器として、一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒について説明したが、コンパクトカメラ、電子スチルカメラ等、カメラの種類を問わず、駆動部に振動波モータを有する光学機器に前記振動波モータを適用することができる。
(電子機器の例3:振動装置、撮像装置)
図5(a)〜(d)は、本発明の電子機器の一例として、本発明の圧電素子を備えた振動装置と該振動装置を用いた撮像装置の構成を模式的に示す概略図である。図5に示した振動装置は、本発明の圧電素子を振動板に配した振動体を少なくとも有しており、振動板の表面に付着した塵埃を除去する機能を有する塵埃除去装置である。撮像装置は、前記塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置の振動板を前記撮像素子ユニットの受光面側に設けている。
但し、各部材の形状や配置は図5(a)〜(d)の例に限定されない。
図5(a)および図5(b)は、塵埃除去装置としての電子機器の一実施態様を示す概略図である。塵埃除去装置310は板状の圧電素子330と振動板320より構成される。圧電素子330は、本発明の積層型の圧電素子であっても良い。振動板320の材質は限定されないが、塵埃除去装置310を光学デバイスに用いる場合には透光性材料や光反射性材料を振動板320として用いることができ、振動板の透光部や光反射部が塵埃除去の対象となる。
圧電素子330は、圧電材料331と第一の電極332と第二の電極333より構成され、第一の電極332と第二の電極333は圧電材料331の板面に対向して配置されている。積層型の圧電素子の場合、圧電材料331は圧電材料層と内部電極の交互構造をとり、内部電極を交互に第一の電極332または第二の電極333と短絡させることにより、圧電材料の層ごとに位相の異なる駆動波形を与える事が出来る。図5(a)においては、第一の電極332が第二の電極333のある側に回りこんでいる。
圧電素子330に外部より交番電圧を印加すると、圧電素子330と振動板320との間に応力が発生し、振動板に面外振動を発生させる。塵埃除去装置310は、この振動板320の面外振動により振動板320の表面に付着した塵埃等の異物を除去する装置である。面外振動とは、振動板を光軸方向つまり振動板の厚さ方向に変位させる弾性振動である。
次に、前記塵埃除去装置を用いた撮像装置について説明する。この撮像装置も本発明の電子機器の一例である。図5(c)(d)には、デジタル一眼レフカメラとしての撮像装置を例示した。
図5(c)は、カメラ本体601を被写体側より見た正面側斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。図5(d)は、塵埃除去装置と撮像ユニット400の周辺構造について説明するためのカメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。
図5(c)に示すカメラ本体601内には、撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス605が設けられており、ミラーボックス605内にメインミラー(クイックリターンミラー)606が配設されている。メインミラー606は、撮影光束をペンタダハミラー(不図示)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子(不図示)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
図5(d)において、カメラ本体の骨格となる本体シャーシ300の被写体側には、被写体側から順にミラーボックス605、シャッタユニット200が配設される。また、本体シャーシ300の撮影者側には、撮像ユニット400が配設される。前記撮像ユニット400は、塵埃除去装置の振動板と撮像素子ユニットで構成される。また、塵埃除去装置の振動板は前記撮像素子ユニットの受光面と同一軸上に順に設けてある。撮像ユニット400は、撮影レンズユニットが取り付けられる基準となるマウント部602(図5(c))の取り付け面に設置され、撮像素子ユニットの撮像面が撮像レンズユニットと所定の距離を空けて、且つ平行になるように調整されている。
ここでは、撮像装置の例としてデジタル一眼レフカメラについて説明したが、例えばミラーボックス605を備えていないミラーレス型のデジタル一眼カメラのような撮影レンズユニット交換式カメラであってもよい。また、撮影レンズユニット交換式のビデオカメラや、複写機、ファクシミリ、スキャナ等の各種の撮像装置もしくは撮像装置を備える電子電気機器のうち、特に光学部品の表面に付着する塵埃の除去が必要な機器にも適用することができる。
ここまで、本発明の電子機器の例として、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、撮像装置の説明をしたが、電子機器の種類はこれらに限定されない。圧電素子から電力を取り出すことで、正圧電効果に起因する電気信号の検知やエネルギーの取り出しを行う電子機器や、圧電素子に電力を入力することで、逆圧電効果による変位を利用する電子機器の全般に、本発明の圧電素子は適用できる。例えば、圧電音響部品や該圧電音響部品を有する音声再生機器、音声録音機器、携帯電話、情報端末等も、本発明の電子機器に含まれる。
以下に実施例を挙げて本発明の圧電材料をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
表1および表2には、本発明の実施例11〜13、21〜23、31〜33と比較例11、21、31の焼結体の組成および焼成温度を示す。表中、t、z、β、α、m、γはそれぞれNbの存在量を1としたときのTiの存在量、Zrの存在量、Baの存在量、Naの存在量、Mnの存在量、Caの存在量を表している。
焼結体の組成は、ICP(誘導結合プラズマ発光分光分析法)で評価したものであり、試料合成の繰り返し誤差および装置の測定誤差を合わせて、5〜10%の測定分布があった。たとえば、実施例11〜33におけるサンプル群の組成パラメータについていうと、t値は0.10から0.155の範囲で分布しており、z値は0.010から0.037の範囲で分布しており、β値は0.10から0.17の範囲で分布しており、α値は0.95から1.03の範囲で分布しており、m値は0.0006から0.0025の範囲で分布していた。表1および表2に示す組成は、これらの平均値である。
実施例11から13および比較例1は一般式(1) Na(α)Ba(β)Nb(1)Ti(t)−Zr(z)−Mn(m)−Ca(γ)において表1のt、z、β、α、mおよびγになるよう原料を秤量した。
実施例21〜23、31〜33および比較例21、31は一般式(2) Na(α)Ba(β)Nb(1)Ti(t)−Zr(z)−Mn(m)において表2のt、z、β、αおよびmになるよう原料を秤量した。ただし、実施例21〜23、31〜33および比較例21、31はNbの存在量を1としたき0.011のZnを表2記載の元素に加えて含む形で準備した。
実施例の原料粉末はボールミルを12時間行って混合した。
実施例11〜13および比較例11の原料には、純度99%以上のニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、純度99%以上のチタン酸バリウム(BaTiO3)、純度99%以上のジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、純度99.9%の酸化マンガン(Mn3O4)の粉末を用いた。
実施例21〜23、31〜33、比較例21および31の原料には、純度99%以上のニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、純度99%以上のチタン酸バリウム(BaTiO3)、純度99%以上のジルコン酸バリウム(BaZrO3)、純度99.9%の酸化マンガン(MnO2)、純度99%以上の酸化亜鉛(ZnO)の粉末を用いた。
混合した粉末を大気中900℃から1100℃で、2〜5時間かけて仮焼した。仮焼粉を粉砕し、仮焼粉の重量に対して3重量%のPVBバインダーを加えて造粒した。造粒粉を金型内に充填し、200MPaの圧力で圧縮することで直径17mm、厚みが約1mmの成形体を作製した。得られた成形体を1100℃から1280℃で空気中、2〜6時間焼成することにより焼結体を得た。但し、この仮焼工程は省略しても本発明の効果を奏する圧電材料を得られる。
アルキメデス法により焼結体の密度を測定し、相対密度を算出したところ、いずれの焼結体も相対密度は94%以上であった。
相対密度は圧電材料の格子定数と前記圧電材料の構成元素の原子量から算出した理論密度に対しての実測した密度の割合である。格子定数は、例えば、X線回折分析により測定することができる。密度は、例えば、公知のアルキメデス法で測定することができる。
焼結体を厚みが約0.5mmになるように研磨した。研磨した焼結体、もしくは研磨した焼結体を粉砕した粉末を用いてX線回折を行い、構成相と格子定数を評価した。X線回折により、試料はほぼペロブスカイト構造単相であることが確認できた。
焼結体内の粒径は、光学顕微鏡もしくは電子顕微鏡で観察して評価した。
焼結体の粒径を電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径は2〜70μmの範囲であった。
なお、電極とセラミックスの間には、密着層として30nmのチタンを成膜した。この電極付きのセラミックスを切断加工し、10mm×2.5mm×0.5mmtの短冊状圧電素子を作製した。
抵抗率の評価には半導体パラメータアナライザを用いた。試料に数十ボルトから100ボルトの直流電圧を印加し、電圧印加開始から30秒後の抵抗を測定した。抵抗率は、測定された抵抗と試料寸法から算出した。
電界−分極ヒステリシス測定は室温における対象素子の実用的な電界における強誘電性の有無を判断するために実施した。一定の温度領域で強誘電性を示す材料は、同じ温度領域で圧電性を有し、メモリ材料としても使用可能である。具体的には、本発明の圧電素子に対し、交流電界(三角波)を印加したときの分極量を測定した。交流電界の周波数は10から100Hzとした。電界の強度は最大で約±50kV/cmとした。
圧電特性の評価に先だって分極処理を行った。具体的には、110〜150℃に保持されたオイルバス中で、試料に1.5〜5kV/mmの電圧を30分間印加し、電圧を印加したまま室温まで冷却した。
短冊状圧電素子の圧電定数(d31)、機械的品質係数(Qm)、誘電正接(tanδ)を共振反共振法で測定した。圧電定数(d33)は、同試料を用いてベルリンコート法を原理とするd33メータによって評価した。比誘電率の測定にはインピーダンスアナライザを用いた。本明細書中の比誘電率は、測定周波数1kHzでの値であり、印加した交流電界の大きさは500mVとした。測定は分極処理後に行った。比誘電率の温度依存性を評価する際、室温から比誘電率の測定を開始し、試料を室温から一旦−100℃まで冷却し、その後350℃まで昇温させた時の比誘電率の変化を記録し、比誘電率の極大部からキュリー温度および逐次相転移温度を算出した。
表2、表3、表4に代表的試料の特性を示す。
(実施例11〜13および比較例11の圧電材料および圧電素子)
実施例11〜13は、Nbに対するZr量を表すzが0.029、Mn量を表すmが0.0007〜0.0011の試料である。表3および図6(a)に示すように、Mnの添加に伴い|d33/d31|が大きくなった。さらに表5に示されるようにキュリー温度の上昇が得られた。また、表4および図6(b)に示すように、Mnを添加しない比較例11に比べて実施例11〜13では抵抗率の増大と誘電正接の低下という良好な結果が得られた。一方で、Mnを0.005mol%を超えて添加すると、ペロブスカイト型金属酸化物が形成されず、抵抗率も著しく低くなり圧電特性の測定に至らない。
(実施例21〜23および比較例21の圧電材料および圧電素子)
実施例21〜23は、前記一般式(2)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物中のNbに対するMn量を表すmが0.0023、Zr量を表すzが0.011〜0.034の試料を1150℃で焼成したものである。実施例21〜23の試料の抵抗率は表4に示すように高い値であり、誘電正接(tanδ)も表3に示されるとおり0.02以下の低い値が得られた。図7は本発明の実施例21〜23、31〜33および比較例21、31の圧電素子における|d33/d31|値のZr量との関係を示す図である。Zrの添加によって比誘電率の上昇がみられた。さらにZrを添加しない比較例21に比べて実施例21〜23ではZrの添加に伴い|d33/d31|が大きくなった。また、表3に示されるようにZrの添加に伴い機械的品質係数(Qm)が増加した。一方、Zrの添加量にしたがってキュリー温度(Tc)は降下している。Zr量を表すzが0.04を超えるとキュリー温度が著しく低下し、抵抗率も著しく低くなるため圧電素子に用いる材料として好ましくない。
(実施例31〜33および比較例31の圧電材料および圧電素子)
実施例31〜33は、前記一般式(2)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物よりなる圧電材料において、圧電材料におけるNbに対するMn量を表すmが0.0023、Zr量を表すzが0.011〜0.034の試料を1100℃で焼成したものである。実施例31〜33の試料の抵抗率は表4に示すように高い値であり、誘電正接(tanδ)も0.02以下の低い値が得られた。Zrの添加によって比誘電率の上昇がみられた。さらにZrを添加しない比較例31に比べて実施例31〜33ではZrの添加に伴い|d33/d31|が大きくなった。また、Zrの添加に伴い機械的品質係数(Qm)が増加した。一方、Zrの添加量にしたがってキュリー温度(Tc)は降下している。Zr量を表すzが0.04を超えるとキュリー温度が著しく低下し、抵抗率も著しく低くなるため圧電素子材料として好ましくない。
実施例31〜33の試料を研磨してX線回折測定を行い、Zr量が多くなるとa軸長さが長くなり、ペロブスカイト構造のc/a比が小さくなる傾向が観測された。
室温の比誘電率が1300以下であると低消費電力の観点でより好ましい。
(実施例21〜23および比較例21の圧電材料のヒステリシス曲線)
実施例21〜23および比較例21の圧電材料の電界−分極ヒステリシス測定結果を図8に示す。Zrの添加に伴い、Zrの量が増えるにつれてヒステリシスカーブが縮小した。すなわち自発分極のピニング低減に起因すると思われる、残留分極値(印加電界がゼロのときの分極の値Pr)の低下と抗電界(分極の符号が反転する際の印加電界Ec)の低下がみられた。
(実施例41)
以下の要領で積層型の本発明の圧電素子を作成した。
実施例12におけるスプレードライ造粒前の900℃仮焼粉にPVBバインダーを加えて混合した後、ドクターブレード法によりシート形成して厚み50μmのグリーンシートを得た。
上記グリーンシートに内部電極用の導電ペーストを印刷した。導電ペーストには、Ag70%−Pd30%合金(Ag/Pd=2.33)ペーストを用いた。導電ペーストを塗布したグリーンシートを9枚積層して、その積層体を1200℃で5時間焼成して焼結体を得た。前記焼結体を10mm×2.5mmの大きさに切断した後にその側面を研磨し、内部電極を交互に短絡させる一対の外部電極(第一の電極と第二の電極)をAuスパッタにより形成し、図2(b)のような積層圧電素子を作製した。
得られた積層圧電素子の断面を観察したところ、Ag−Pdよりなる内部電極と圧電材料層とが交互に形成されていた。
積層圧電素子に分極処理を施した。具体的には、試料をオイルバス中で150℃に加熱し、第一の電極と第二の電極間に2kV/mmの電圧を30分間印加し、電圧を印加したままで室温まで冷却した。
得られた積層圧電素子の圧電特性を評価したところ、十分な絶縁性を有しており、実施例12の圧電材料と同等の圧電定数、キュリー温度、誘電正接を得ることができた。
(実施例42)
実施例12および実施例41の圧電素子を用いて、図3(a)に示される液体吐出ヘッドを作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が確認された。
この液体吐出ヘッドを用いて、図3(b)に示される液体吐出装置を作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が記録媒体上に確認された。
(実施例43)
実施例12および実施例41の圧電素子を用いて、図4(a)または図4(b)に示される超音波モータを作製した。交流電圧の印加に応じたモータの回転が確認された。
この超音波モータを用いて、図4(c)(d)(e)に示される光学機器を作製した。交流電圧の印加に応じたオートフォーカス動作が確認された。
(実施例44)
実施例12および実施例41の圧電素子を用いて、図5(a)(b)に示される塵埃除去装置を作製した。プラスチック製ビーズを散布し、交流電圧を印加したところ、良好な塵埃除去率が確認された。
この塵埃除去装置を用いて、図5(c)(d)(e)に示される撮像装置を作製した。この撮像装置を通電動作させたところ、撮像ユニットの表面の塵を良好に除去し、塵欠陥の無い画像が得られた。