JP2019085432A - 潤滑油用摩擦調整剤および潤滑油組成物 - Google Patents

潤滑油用摩擦調整剤および潤滑油組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】摩擦低減作用を向上させた潤滑油用摩擦調整剤および潤滑油組成物を提供する。【解決手段】潤滑油組成物において、基油に配合される潤滑油用摩擦調整剤は、直鎖状の飽和炭化水素からなる第1の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にアミノ基が結合している第1の化合物と直鎖状の飽和炭化水素からなる第2の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にメルカプト基が結合している第2の化合物とが塩を形成している塩化合物を含有する。第1の直鎖部分における炭素原子数は、12以上であることが好ましく、14以上18以下であることがより好ましい。第2の直鎖部分における炭素原子数は、14以上であることが好ましく、14以上22以下であることがより好ましい。また、第1の直鎖部分における炭素原子数が18であり、かつ、第2の直鎖部分における炭素原子数が18であることがさらに好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑油用摩擦調整剤および潤滑油組成物に関する。
自動車においては、エンジンやトランスミッションなどに潤滑油が供給されている。こうした潤滑油は、基油に対して各種の添加剤が配合されることにより製造される。例えば特許文献1には、添加剤として、摺動部分における摩擦抵抗を低減する摩擦低減作用を向上させる摩擦調整(FM:Friction Modifier)剤が開示されている。
特開2015−36412号公報
貨物自動車などの大型自動車においては、一般的な乗用車に比べて、エンジンの出力が高いために摺動部分に生じる摩擦抵抗も大きい。そのため、上述した摩擦調整剤には、燃料消費量を低減させるためにも摩擦低減作用のさらなる向上が求められている。なお、こうした要望は、大型自動車に限らず潤滑油が使用される自動車に共通するものである。
本発明は、摩擦低減作用を向上させた潤滑油用摩擦調整剤および潤滑油組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決する潤滑油用摩擦調整剤は、直鎖状の飽和炭化水素からなる第1の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にアミノ基が結合している第1の化合物と直鎖状の飽和炭化水素からなる第2の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にメルカプト基が結合している第2の化合物とが塩を形成している塩化合物を含有する。
上記課題を解決する潤滑油組成物は、基油と摩擦調整剤とを含む潤滑油組成物であって、前記摩擦調整剤が、直鎖状の飽和炭化水素からなる第1の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にアミノ基が結合している第1の化合物と直鎖状の飽和炭化水素からなる第2の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にメルカプト基が結合している第2の化合物とが塩を形成している塩化合物を含有する潤滑油用摩擦調整剤である。
上記構成の潤滑油用摩擦調整剤および潤滑油組成物によれば、摩擦低減作用を向上させることができる。
上記潤滑油用摩擦調整剤において、前記第1の直鎖部分における炭素原子数が12以上18以下であることが好ましい。上記構成によれば、摩擦低減作用の向上を効果的に得ることができる。
上記潤滑油用摩擦調整剤において、前記第2の直鎖部分における炭素原子数が14以上22以下であることが好ましい。上記構成によれば、潤滑油用摩擦調整剤による摩擦低減作用を効果的に得ることができる。
上記潤滑油用摩擦調整剤において、前記第1の直鎖部分の炭素原子数が18であり、かつ、前記第2の直鎖部分の炭素原子数が18であることが好ましい。上記構成によれば、潤滑油用摩擦調整剤による摩擦低減作用をさらに効果的に得ることができる。
(a)は摩擦試験の概略構成を示す斜視図、(b)は摩擦試験の概略構成を示す側面図。
以下、潤滑油用摩擦調整剤および潤滑油組成物の一実施形態について説明する。
(潤滑用摩擦調整剤)
潤滑油用摩擦調整剤は、直鎖状の飽和炭化水素からなる第1の直鎖部分(n−アルキル部分)における一方の末端に位置する炭素原子にアミノ基が結合している第1の化合物(第一級アミン)と、直鎖状の飽和炭化水素からなる第2の直鎖部分(n−アルキル部分)における一方の末端に位置する炭素原子にメルカプト基が結合している第2の化合物(チオール)とが塩を形成している塩化合物を含有する。第1の直鎖部分における炭素原子数は、12以上であり、好ましくは12以上18以下である。第2の直鎖部分における炭素原子数は、14以上であり、好ましくは14以上18以下である。第1の直鎖部分における炭素原子数が12以上であることにより、摺動部分に吸着した上記塩化合物が摩擦低減作用を発揮しやすくなる。また、第2の直鎖部分における炭素原子数が14以上であることにより、摺動部分に吸着した上記塩化合物が摩擦低減作用を発揮しやすくなる。また、第1および第2の直鎖部分における炭素原子数が18以下であることにより潤滑油組成物の基油に対する混合性が担保されやすくなる。なお、こうした塩化合物は、下記の化学式(1)で示される。化学式(1)において、「R」は第1の直鎖部分、「R」は第2の直鎖部分を示している。
(潤滑用摩擦調整剤の製造方法)
上述した潤滑油用摩擦調整剤の製造方法の一例について説明する。潤滑油用摩擦調整剤は、反応溶媒中に同じモル数の第1の化合物および第2の化合物を溶解させたのち、0℃から反応溶媒の還流温度までの範囲の温度で30分〜2時間程度保持し、その後、反応溶媒を除去することにより製造される。反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類に加えて、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類が使用可能である。なお、こうして製造された潤滑油用摩擦調整剤をフーリエ変換赤外分光分析に供し、一級アミノ基の示すピーク(3250cm−1および3180cm−1)が消失していることにより塩の形成が確認できる。
(潤滑油組成物)
潤滑油組成物は、基油に対して上述した潤滑油用摩擦調整剤を配合することにより製造される。基油としては、石油系潤滑油基油が使用可能である。石油系潤滑油基油は、原油を常圧下において蒸留した残油における減圧蒸留留分を溶剤精製法や水素化処理法、硫酸洗浄法などにより精製することにより製造される。こうした基油の組成としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系が挙げられるが、パラフィン系が好ましい。
この他、基油としては、合成油が使用可能である。合成油としては、例えば、α−オレフィンオリゴマーやアルキルベンゼンなどの炭化水素系の合成油、ジエステルやポリオールエステルなどのエステル系の合成油、フェニルエーテルなどのエーテル系の合成油の他、フッ素化合物を含む合成油やシリコーン油などが挙げられる。
また、基油としては、上述した複数の石油系潤滑油基油が選択的に混合されたものであってもよいし、上述した複数の合成油が選択的に混合されたものであってもよい。また、基油としては、1以上の石油系潤滑油基油と1以上の合成油とが選択的に混合されたものであってもよい。
潤滑油組成物において、上述した塩化合物の濃度は、2500ppm以上であることが好ましく、5000ppm以上10000ppm以下であることがより好ましい。こうした構成によれば、潤滑油用摩擦調整剤による摩擦低減作用を得つつ、潤滑油用摩擦調整剤の製造コストを抑えることが可能である。なお、潤滑油組成物には、上述した潤滑油用摩擦調整剤の他、粘度指数向上剤や消泡剤、酸化防止剤、流動点降下剤など、他の潤滑油添加剤を配合することも可能である。
次に、上述した潤滑油組成物の実施例について説明する。
(摩擦試験)
本発明者は、潤滑油組成物の基油に対して、各種の添加剤を配合することにより複数の試験油を生成し、これらの試験油を潤滑油組成物として使用した場合の摩擦係数を測定する摩擦試験を行った。
(摩擦試験の概要)
図1(a)および図1(b)に示すように、摩擦係数を測定する摩擦試験では、下部試験片11と上部試験片12とを用いた。下部試験片11は、直方体形状を有する金属であり、具体的にはSUJ2(JISG4805:高炭素クロム軸受鋼鋼材)である。上部試験片12は、円柱形状を有する金属であり、具体的にはSUJ2(JISG4805:高炭素クロム軸受鋼鋼材)である。そして、下部試験片11の上面11aに対して上部試験片12の周面12aを垂直な荷重Fで押し付けた状態を維持したまま、接触部分に試験油を供給しながら振幅A、往復速度Vfで往復動させた。この試験は、Bruker社製のUMT−Tribolabを用いて行い、測定値の平均値を摩擦係数μとして算出した。試験油の評価は、添加剤を添加していない基油の摩擦係数μに対して下記荷重条件の荷重F=100N,200N,300N,400Nにおいて10%以上の低減率が認められた試験油を○、20%以上の低減率が認められた試験油を◎とした。また、1以上の荷重条件において低減率が10%未満であった試験油を×とした。具体的な試験の条件は、下記の通りである。
・下部試験片11
上面11aの算術平均粗さRa:0.02
・上部試験片12
直径D:10mm
長さL:12.75mm
周面12aの算術平均粗さRa:0.02
・振幅A:1.5mm
・往復速度Vf:50Hz
・試験温度T:100℃
・荷重条件:荷重F=50Nで30秒間ならし運転を行ったのち、荷重F=100Nで5分間、荷重F=200Nで5分間、荷重F=300Nで5分間、荷重F=400Nで5分間、最後に荷重F=100Nで5分間運転した。
(摩擦試験1)
摩擦試験1においては、基油として、米国石油協会(API:American Petroleum Institute)における基油分類によりグループ2に分類されるコスモニュートラル100(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製)を使用した。また、潤滑油用摩擦調整剤には、飽和炭化水素における炭素原子数が18のステアリルアミンと飽和炭化水素における炭素原子数が18のオクタデカンチオールとを同じモル数だけエタノールに溶解させたものを60℃で30分保持したのち、エタノールを乾燥除去して製造したものを使用した。なお、こうして製造された潤滑油用摩擦調整剤をフーリエ変換赤外分光分析に供し、一級アミノ基の示すピーク(3250cm−1および3180cm−1)が消失していることを確認した。
比較例1の試験油は、基油そのものである。比較例2の試験油は、基油に対してステアリルアミンを7500ppmの濃度で配合したものである。比較例3の試験油は、基油に対してオクタデカンチオールを7500ppmの濃度で配合したものである。実施例1の試験油は、基油に対して上記潤滑油用摩擦調整剤を7500ppmの濃度で配合したものである。参考例1の試験油は、基油に対してステアリルアミンおよびオクタデカンチオールの各々を事前に混合することなく3750ppmの濃度で個別に配合したものである。表1に摩擦試験1の結果の一例を示す。表1において、μは測定値の平均値である摩擦係数を示し、σは測定値の標準偏差を示している。
表1に示すように、比較例2の摩擦係数μは、基油そのものである比較例1の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において10%以上であるとともに荷重条件の荷重F=200Nにおいて20%以上であることが認められた。比較例3の摩擦係数μは、比較例1の摩擦係数μに対して荷重条件の荷重F=300N,400Nにおいて10%以上の低減率を得ることができたものの、荷重条件の荷重F=100N,200Nにおいて10%以上の低減率を得ることができなかった。実施例1の摩擦係数μは、比較例1の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において20%以上であることが認められた。すなわち、ステアリルアミンとオクタデカンチオールとが塩を形成している塩化合物を含有する潤滑油用摩擦調整剤は、これらステアリルアミンおよびオクタデカンチオールのいずれか一方を同じ濃度で含有する添加剤よりも、潤滑油組成物における摩擦係数μを低減することが認められた。また、参考例1の試験油においても、比較例1の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において20%以上であることが認められた。
(摩擦試験2)
摩擦試験2においては、基油として、「日野自動車株式会社製 ブルーリボン e−PRO extra ecogreen」を使用した。また、潤滑油用摩擦調整剤には、摩擦試験1と同じく、飽和炭化水素における炭素原子数が18のステアリルアミンと飽和炭化水素における炭素原子数が18のオクタデカンチオールとを同じモル数だけエタノールに溶解させたものを60℃で30分保持したのち、エタノールを乾燥除去して製造したものを使用した。
比較例4の試験油は、基油そのものである。比較例5の試験油は、基油に対してステアリルアミンを7500ppmの濃度で配合したものである。比較例6の試験油は、基油に対してオクタデカンチオールを7500ppmの濃度で配合したものである。実施例2の試験油は、基油に対して上記潤滑油用摩擦調整剤を7500ppmの濃度で配合したものである。参考例2の試験油は、基油に対してステアリルアミンおよびオクタデカンチオールの各々を事前に混合することなく3750ppmの濃度で個別に配合したものである。
表2に摩擦試験2の結果の一例を示す。表2において、μは測定値の平均値である摩擦係数を示し、σは測定値の標準偏差を示している。
表2に示すように、比較例5の摩擦係数μは、比較例4の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において20%以上であることが認められたものの、後述する性状試験においてpHおよび塩基価が好適範囲から外れてしまうことが認められた。比較例6の摩擦係数μは、比較例4の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において10%未満であることが認められた。実施例2の摩擦係数μは、比較例4の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において20%以上であることが認められた。すなわち、ステアリルアミンとオクタデカンチオールとによる塩化合物を含有する潤滑油用摩擦調整剤は、これらステアリルアミンおよびオクタデカンチオールのいずれか一方を同じ濃度で含有する添加剤よりも潤滑油組成物における摩擦係数μを低減することが他の基油においても認められた。また、参考例2の試験油においても、比較例1の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において20%以上であることが認められた。
(摩擦試験3)
摩擦試験3においては、基油として、「コスモ石油ルブリカンツ株式会社製 コスモニュートラル100」を使用した。また、潤滑油用摩擦調整剤は、同じモル数の第1の化合物と第2の化合物とをエタノールに溶解させたものを60℃に30分保持したのち、エタノールを乾燥除去して製造したものを使用し、基油に対して7500ppmの濃度で配合した。表3,4,5,6,7に摩擦試験3の結果の一例を示す。表3〜7において、μは測定値の平均値である摩擦係数を示し、σは測定値の標準偏差を示している。また、基油の摩擦係数μに対する低減率が10%以上である場合を○、基油の摩擦係数μに対する低減率が20%以上である場合を◎としている。なお、各潤滑油用摩擦調整剤については、フーリエ変換赤外分光分析に供して一級アミノ基の示すピーク(3250cm−1および3180cm−1)が消失していることを確認した。
表3〜7にて、第1の化合物であるアミンについて、C10は炭素原子数が10であるデシルアミンであり、C12は炭素原子数が12であるラウリルアミンである。また、C14は炭素原子数が14であるミリスチルアミンであり、C16は炭素原子数が16であるパルミチルアミンであり、C18炭素原子数が18であるステアリルアミンである。
表3〜7において、第2の化合物であるチオールについて、C10は炭素原子数が10であるデカンチオールであり、C14は炭素原子数が14であるテトラデカンチオールである。また、C18は炭素原子数が18であるオクタデカンチオールであり、C22は炭素原子数が22であるドコサンチオールである。なお、基油に関する試験結果は、表3〜6においてはチオール無しかつアミン無しに該当する欄に記載しており、表7においては比較例1で示している。
表3〜6に示すように、基油に対してアミンのみを混合した試験油に関しては、アミンの炭素原子数が12以上であることにより基油に対する摩擦係数μの低減率が全ての荷重条件において10%以上であることが認められた。基油に対してチオールのみを混合した試験油に関しては、チオールの炭素原子数が10以上22以下であることにより基油に対する摩擦係数μの低減率が、炭素原子数18を除き全ての荷重条件において10%以下であることが認められた。
アミンとチオールの塩化合物に関しては、アミンの炭素原子数が12以上18以下で、かつチオールの炭素原子数が10以上22以下である試験油について、アミンの炭素原子数が12であり、かつチオールの炭素原子数が10である場合を除き、基油に対する摩擦係数μの低減率が全ての荷重条件において10%以上であることが認められた。また、アミンとチオールの塩化合物に関しては、アミンの炭素原子数が12以上18以下で、かつチオールの炭素原子数が14以上22以下である試験油について、アミン単体での同一炭素原子数における摩擦係数低減率を上回ることが認められた。また、アミンの炭素原子数が12であり、かつチオールの炭素原子数が10である試験油についても、基油に対する摩擦係数μの低減率が比較的高い荷重条件(荷重F=200N〜)において低減率が10%以上であることが認められた。さらに、アミンの炭素原子数が18であり、かつチオールの炭素原子数が14以上22以下であることにより基油に対する摩擦係数μの低減率が全ての荷重条件において20%以上であることが認められた。
貨物自動車などの大型自動車においては、一般的な乗用車に比べてエンジンの出力が大きく摺動部分に生じる摩擦抵抗も大きいため、比較的高い荷重条件(荷重F=200N〜)において低減率が高いことが好ましい。こうしたことから、潤滑油用摩擦調整剤における塩化合物は、表7に示す実施例3,4,5,6,7のように、アミンの炭素原子数が12以上18以下であることが好ましく、また、チオールの炭素原子数が14以上22以下であることが好ましい。さらには、実施例5,6,7のように、アミンの炭素原子数が18であり、かつ、チオールの炭素原子数が14以上22以下であることがより好ましく、さらに好ましくは実施例6のようにアミンの炭素原子数が18であり、かつ、チオールの炭素原子数が18である。なお、表7における実施例の欄の括弧内においては、左側がアミンの炭素原子数を示し、右側がチオールの炭素原子数を示している。また、実施例6の試験油は、実施例1と同じ試験油である。
(摩擦試験4)
摩擦試験4において、基油として「コスモ石油ルブリカンツ株式会社製 コスモニュートラル100」を用いた。また、潤滑油用摩擦調整剤は、摩擦試験1と同じく、飽和炭化水素における炭素原子数が18のステアリルアミンと飽和炭化水素における炭素原子数が18のオクタデカンチオールとを同じモル数だけエタノールに溶解させたものを60℃で30分保持したのち、エタノールを乾燥除去して製造したものを使用した。実施例8の試験油は、基油に対して上記潤滑油用摩擦調整剤を2500ppmの濃度で配合したものである。実施例9の試験油は、基油に対して上記潤滑油用摩擦調整剤を5000ppmの濃度で配合したものである。実施例10の試験油は、基油に対して上記潤滑油用摩擦調整剤を7500ppmの濃度で配合したものである。実施例11の試験油は、基油に対して上記潤滑油用摩擦調整剤を10000ppmの濃度で配合したものである。表8に摩擦試験4の結果の一例を示す。なお、実施例10の試験油は、実施例1の試験油と同じ試験油である。
表8に示すように、実施例8の各摩擦係数μは、比較例1の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において10%以上であり、また、比較例1の摩擦係数μに対する低減率が300N、400Nの荷重条件において20%以上であることが認められた。さらに、実施例9,10,11の各摩擦係数μは、比較例1の摩擦係数μに対する低減率が全ての荷重条件において20%以上であることが認められた。すなわち、潤滑油組成物における摩擦調整剤の濃度は、2500ppm以上であることが好ましく、さらに好ましくは5000ppm以上10000ppm以下であることが認められた。なお、こうした好適な濃度範囲については、基油が「日野自動車株式会社製 ブルーリボン e−PRO extra ecogreen」である場合についても同様に認められた。
(性状試験)
本発明者は、潤滑油組成物の基油に対して各種の添加剤を配合することにより複数の試験油を生成し、これら試験油のpH、酸価、および、塩基価を測定する性状試験を行った。なお、性状試験における潤滑油用摩擦調整剤には、摩擦試験1と同じく、同じモル数のステアリルアミンとオクタデカンチオールとをエタノールに溶解させたものを60℃に30分保持したのち、エタノールを乾燥除去して製造したものを使用した。
(性状試験の概要)
性状試験において、酸価および塩基価は、JISK2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の7.および8.に準拠した方法にて、自動滴定装置 COM−1750(平沼産業株式会社製)を用いて測定した。酸価は、試料1gに含まれる全酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数で示される。塩基価は、試料1gに含まれる塩基性成分を中和するのに要する塩酸または過塩素酸と当量の水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数で示される。
性状試験において記載されるpHは、JISK2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の7.7.1「試験の準備」における、滴定開始前のpH計が指示する値を意味する。
(性状試験1)
性状試験1では、潤滑油組成物の基油として、「日野自動車株式会社製 ブルーリボン e−PRO extra ecogreen」を使用して各種の試験油を生成した。
比較例Aの試験油は、基油そのものである。比較例Bの試験油は、基油に対してステアリルアミンを20000ppmの濃度で配合したものである。比較例Cの試験油は、基油に対してオクタデカンチオールを20000ppmの濃度で配合したものである。実施例Aの試験油は、基油に対して上記潤滑用摩擦調整剤を40000ppmの濃度で配合したものである。参考例Aの試験油は、基油に対してステアリルアミンおよびオクタデカンチオールの各々を20000ppmの濃度で配合したものである。
表9に性状試験1の結果の一例を示す。なお、pHに関しては、例えばエンジンブロックなどに用いられる材質の1つであるアルミニウムに対する腐食性の観点から好適範囲が7〜8.5である。また、他の潤滑油添加剤の作用を保持する観点から、摩擦調整剤を添加する前と添加した後で、酸価と塩基価の変動が±1mgKOH/g以内、pHの変動が±1以内であることが望ましい。
表9に示すように、比較例Bの試験油は、比較例Aの試験油に対して酸価が同等でありかつ塩基価およびpHが高く、また、そのpHおよび塩基価が好適範囲よりも高いことが認められた。比較例Cの試験油は、比較例Aの試験油に対して酸価および塩基価が同等でありかつpHが低く、また、そのpHが好適範囲よりも低いことが認められた。実施例Aの試験油は、比較例Aの試験油に対して酸価がやや高いものの、pH、酸価、および、塩基価の全てが好適範囲に含まれることが認められた。参考例Aの試験油は、比較例Aの試験油に対して酸価がやや低くかつ塩基価およびpHが高く、また、その塩基価が好適範囲よりも高いことが認められた。すなわち、ステアリルアミンとオクタデカンチオールとが塩を形成している塩化合物を含有する潤滑油摩擦調整剤は、潤滑油組成物のpH、酸価、および、塩基価の全てを好適範囲に維持しつつ摩擦係数μを低減することが認められた。
(性状試験2)
性状試験2では、潤滑油組成物の基油として、「昭和シェル石油株式会社製 shell Rimula R6 LME−J」を使用して各種の試験油を生成した。
比較例Eの試験油は、基油そのものである。比較例Fの試験油は、基油に対してステアリルアミンを20000ppmの濃度で配合したものである。比較例Gの試験油は、基油に対してオクタデカンチオールを20000ppmの濃度で配合したものである。実施例Bの試験油は、基油に対して上記潤滑油用摩擦調整剤を40000ppmの濃度で配合したものである。参考例Bの試験油は、基油に対してステアリルアミンおよびオクタデカンチオールの各々を20000ppmの濃度で配合したものである。表10に性状試験2の結果の一例を示す。
表10に示すように、比較例Fの試験油は、比較例Eの試験油に対して酸価が同等でありかつ塩基価およびpHが高く、また、その塩基価およびpHが好適範囲よりも高いことが認められた。比較例Gの試験油は、比較例Eの試験油に対して酸価が同等であり、かつ、塩基価がやや高く、かつ、pHがやや高いものの、これらpH、酸価、および、塩基価の全てが好適範囲に含まれることが認められた。実施例Bの試験油は、比較例Eの試験油に対してpH、酸価、および、塩基価がやや高いものの、これらpH、酸価、および、塩基価の全てが好適範囲に含まれることが認められた。参考例Bの試験油は、比較例Eの試験油に対して酸価がやや低くかつ塩基価およびpHが高く、また、その塩基価が好適範囲よりも高いことが認められた。すなわち、ステアリルアミンとオクタデカンチオールとが塩を形成している塩化合物を含有する潤滑油摩擦調整剤は、潤滑油組成物のpH、酸価、および、塩基価の全てを好適範囲に維持しつつ摩擦係数μを低減することが他の基油においても認められた。
上記実施形態の潤滑油用摩擦調整剤および潤滑油組成物によれば以下の作用効果が得られる。
(1)上述した潤滑油用摩擦調整剤は、第1の直鎖部分(n−アルキル部分)における一方の末端に位置する炭素原子にアミノ基が結合している第1の化合物(第1級アミン)と、第2の直鎖部分(n−アルキル部分)における一方の末端に位置する炭素原子にメルカプト基が結合している第2の化合物(チオール)とが塩を形成している塩化合物を含有する。こうした潤滑油用摩擦調整剤によれば、基油に配合されることで潤滑油組成物におけるpH、酸価、および、塩基価を好適範囲に保持しつつ摩擦低減作用を向上させることが可能である。
(2)上述した潤滑油用摩擦調整剤は、第1の直鎖部分における炭素原子数が12以上18以下であることにより、摩擦低減作用を効果的に得ることができる。また、潤滑油用摩擦調整剤を製造するうえで第1の化合物の入手性も確保されやすくなる。
(3)上述した潤滑油用摩擦調整剤は、第2の直鎖部分における炭素原子数が14以上22以下であることにより、摩擦低減作用を効果的に得ることができる。また、潤滑油用摩擦調整剤を製造するうえで第2の化合物の入手性も確保されやすくなる。
(4)上述した潤滑油用摩擦調整剤は、第1の直鎖部分および第2の直鎖部分の各々における炭素原子数が18であることで、潤滑油組成物におけるpH、酸価、および、塩基価を好適範囲に保持しつつ摩擦低減作用をさらに効果的に得ることができる。
(5)上述した潤滑油用摩擦調整剤は、塩化合物を構成する第1の化合物と第2の化合物とを各別に基油に添加する場合よりもpHおよび塩基価の上昇を抑えたうえで高い摩擦低減作用を得ることができる。
(6)貨物自動車などの大型自動車においては、一般的な乗用車に比べてエンジンの出力が大きく摺動部分に生じる摩擦抵抗も大きいため、荷重Fが大きいときに摩擦低減作用を効果的に得られることが好ましい。これらのことから、潤滑油組成物における潤滑油用摩擦調整剤の濃度は、2500ppm以上であることが好ましく、さらに好ましくは5000ppm以上10000ppm以下である。これにより、摩擦低減作用を効果的に得ることが可能である。また、こうした濃度範囲で潤滑油用摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物によれば、性状試験1,2の実施例A,Bよりも、基油に対するpH、酸価、および、塩基価の変化をさらに抑えたうえで高い摩擦低減作用を得ることができる。
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・摩擦係数μを測定する試験は、Bruker社製のUMT−Tribolabではなく、OPTIMOL社製のSRV試験機においても同様の条件で行うことができる。
・潤滑油用摩擦調整剤において、第1の直鎖部分および第2の直鎖部分の各々は、場合によって任意の水素原子が例えばアルカニル基やアルケニル基、アルキニル基に置換されていてもよい。また、第1および第2の直鎖部分の各々は、場合によって不飽和な部分があってもよい。
・潤滑油組成物は、大型自動車に限らず一般的な乗用車に適用されてもよい。
11…下部試験片、11a…上面、12…上部試験片、12a…周面。

Claims (5)

  1. 直鎖状の飽和炭化水素からなる第1の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にアミノ基が結合している第1の化合物と直鎖状の飽和炭化水素からなる第2の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にメルカプト基が結合している第2の化合物とが塩を形成している塩化合物を含有する
    潤滑油用摩擦調整剤。
  2. 前記第1の直鎖部分における炭素原子数が12以上18以下である
    請求項1に記載の潤滑油用摩擦調整剤。
  3. 前記第2の直鎖部分における炭素原子数が14以上22以下である
    請求項1または2に記載の潤滑油用摩擦調整剤。
  4. 前記第1の直鎖部分の炭素原子数が18であり、かつ、前記第2の直鎖部分の炭素原子数が18である
    請求項3に記載の潤滑油用摩擦調整剤。
  5. 基油と摩擦調整剤とを含む潤滑油組成物であって、
    前記摩擦調整剤が、
    直鎖状の飽和炭化水素からなる第1の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にアミノ基が結合している第1の化合物と直鎖状の飽和炭化水素からなる第2の直鎖部分における一方の末端に位置する炭素原子にメルカプト基が結合している第2の化合物とが塩を形成している塩化合物を含有する潤滑油用摩擦調整剤である
    潤滑油組成物。
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