JP2019151902A - 鉄系成形体の熱処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄系成形体を熱処理する際に鉄系成形体の整列状態を安定して維持することができる鉄系成形体の熱処理方法を提供する。
【解決手段】鉄系粉末を含む原料粉末を圧縮成形した鉄系圧粉体又は前記鉄系圧粉体を焼結した鉄系焼結体である鉄系成形体の熱処理方法であって、前記鉄系成形体を磁化する磁化工程と、磁化した前記鉄系成形体を並べ、複数の前記鉄系成形体を所定の状態に整列させる整列工程と、複数の前記鉄系成形体を整列させた状態で熱処理する熱処理工程と、を備える鉄系成形体の熱処理方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、鉄系成形体の熱処理方法に関する。
鉄粉などの鉄系粉末を成形して焼結した鉄系焼結体が、自動車や産業機械などの各種部品に利用されている。一般に、鉄系焼結体は、鉄系粉末を含有する原料粉末を圧縮成形して鉄系圧粉体を作製し、これを焼結することで製造されている。また、焼結後にサイジングや機械加工した後、焼入れなどの熱処理することがある。
従来、鉄系圧粉体を焼結したり、鉄系焼結体を焼入れなどの熱処理する場合、鉄系圧粉体又は鉄系焼結体(以下、まとめて「鉄系成形体」ということがある)を複数並べて整列させ、その状態を維持したまま、一括して熱処理することが知られている。例えば、特許文献1には、成形体の表面(端面)に接着剤を塗布して複数の成形体を積み重ねて成形体同士を接着させた状態で、焼結炉に搬送して焼結することが開示されている。
特開2016−89254号公報
鉄系成形体を熱処理する際、複数の鉄系成形体を整列させた状態で熱処理することが望まれる。特許文献1に開示されているように、複数の成形体を積み重ねた状態で焼結する方法を採用した場合、生産効率の点で有利である。しかしながら、この場合、複数の成形体を積み重ねる段積み時や成形体を積み重ねた状態で熱処理炉内に搬入する際に、振動などにより、積み重ねた成形体の姿勢が変わったり、積み重ねた状態が崩れたりすることがある。このような成形体の姿勢ずれや荷崩れが起きると、焼結時に変形したり、欠けや割れなどの損傷が生じることがある。一般に、熱処理炉内では振動が起こり難く、成形体が炉内に入ってしまえば、振動は少なくなる。
特許文献1では、接着剤により成形体同士を接着して、荷崩れなどが起きないようにすることを提案しているが、接着剤を使用する場合、接着剤を塗布する量や位置を適切に管理する必要がある。例えば、接着剤の塗布量が少な過ぎると、十分な接着力が得られなかったり、接着剤の塗布量が多過ぎる或いは塗布位置がずれると、接着剤がはみ出したり垂れたりすることがある。特に、積み重ねた成形体同士の接触面が小さい場合は、接着剤の塗布量が少なく、接着剤の塗布位置もずれ易いため、接着剤で成形体同士を十分に接着させることが難しく、段積み時や搬送中に積み重ねた状態を維持することが困難になる。
本開示は、鉄系成形体を熱処理する際に鉄系成形体の整列状態を安定して維持することができる鉄系成形体の熱処理方法を提供することを目的の一つとする。
本開示の鉄系成形体の熱処理方法は、
鉄系粉末を含む原料粉末を圧縮成形した鉄系圧粉体又は前記鉄系圧粉体を焼結した鉄系焼結体である鉄系成形体の熱処理方法であって、
前記鉄系成形体を磁化する磁化工程と、
磁化した前記鉄系成形体を並べ、複数の前記鉄系成形体を所定の状態に整列させる整列工程と、
複数の前記鉄系成形体を整列させた状態で熱処理する熱処理工程と、を備える。
上記鉄系成形体の熱処理方法は、鉄系成形体を熱処理する際に鉄系成形体の整列状態を安定して維持することができる。
鉄系成形体の一例を示す概略斜視図である。 実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法における磁化工程の一例を説明する概略図である。 実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法における整列工程において、複数の鉄系圧粉体を積み重ねた状態の一例を示す概略側面図である。 実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法の整列工程において、複数の鉄系焼結体を間隔をあけて整列治具に整列させた状態の一例を示す概略側面図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法は、
鉄系粉末を含む原料粉末を圧縮成形した鉄系圧粉体又は前記鉄系圧粉体を焼結した鉄系焼結体である鉄系成形体の熱処理方法であって、
前記鉄系成形体を磁化する磁化工程と、
磁化した前記鉄系成形体を並べ、複数の前記鉄系成形体を所定の状態に整列させる整列工程と、
複数の前記鉄系成形体を整列させた状態で熱処理する熱処理工程と、を備える。
上記鉄系成形体の熱処理方法によれば、鉄系成形体を磁化して整列させることで、磁化した鉄系成形体の磁力により鉄系成形体の整列状態を安定して維持することができる。そのため、複数の鉄系成形体を整列させた状態で熱処理する際、その整列状態を維持したまま熱処理することが可能である。したがって、上記鉄系成形体の熱処理方法は、鉄系成形体を熱処理する際に鉄系成形体の整列状態を安定して維持することができる。
上記鉄系成形体の熱処理方法では、従来のように接着剤により成形体同士を接着しないため、接着剤の塗布作業を省略できる。
(2)上記鉄系成形体の熱処理方法の一態様として、前記熱処理工程において、前記鉄系成形体をA2点以上の温度に加熱することが挙げられる。
磁化した鉄系成形体をA2点(キューリー点)以上の温度に加熱することで、磁化を失い、熱処理後の磁化による影響を排除できる。一般に、鉄系圧粉体を焼結したり、鉄系焼結体を焼入れする場合の熱処理温度はA2点以上である(鉄のA2点:約770℃)。例えば、鉄系圧粉体の焼結温度は1100℃以上、鉄系焼結体の焼入れ温度は800℃以上である。
(3)上記鉄系成形体の熱処理方法の一態様として、前記磁化工程において、前記鉄系成形体の残留磁束密度が0.3T以上になるように磁化することが挙げられる。
鉄系成形体の残留磁束密度が0.3T以上になるように磁化することで、磁化した鉄系成形体の磁力が強く、鉄系成形体の整列状態をより安定して維持することができる。鉄系成形体の残留磁束密度が0.3T以上の場合、鉄系成形体の形状やサイズ、鉄系成形体同士の対向面積などにもよるが、鉄系成形体間に数十gから最大で1kg弱の磁力を作用させることが可能である。鉄系成形体の残留磁束密度が大きいほど、磁力が強くなる傾向があり、鉄系成形体の整列状態を安定して維持する効果が得られ易い。残留磁束密度の上限は、特に限定されないが、例えば0.8T以下である。鉄系成形体が純鉄のような軟磁性材である場合、磁化しても0.8T超の残留磁束密度とすることは難しい。
(4)上記鉄系成形体の熱処理方法の一態様として、前記磁化工程において、前記鉄系成形体に3978.9A/m以上の磁界を印加することが挙げられる。
鉄系成形体に磁界を印加することで、鉄系成形体を磁化することができる。鉄系成形体に印加する磁界の強さを3978.9A/m(50Oe(1Oe=79.578A/m))以上、更に好ましくは7957.8A/m(100Oe)以上とすることで、鉄系成形体が飽和磁束密度に達して、鉄系成形体を十分に磁化することができる。
(5)上記鉄系成形体の熱処理方法の一態様として、前記鉄系成形体が前記鉄系圧粉体である場合、前記整列工程において、磁化した前記鉄系圧粉体を積み重ねて整列させ、前記熱処理工程において、複数の前記鉄系圧粉体を積み重ねた状態で焼結することが挙げられる。
上記態様では、複数の鉄系圧粉体を積み重ねて整列させ、その状態で焼結する。磁化した鉄系圧粉体を積み重ねることで、積み重ねた鉄系圧粉体同士を磁力により吸着させて、鉄系圧粉体の積み重ねた状態を安定して維持することができる。よって、複数の鉄系圧粉体を積み重ねた状態で焼結する際、その状態を維持したまま焼結することが可能である。
積み重ねた上下の鉄系圧粉体のうち、少なくとも一方が磁化していればよく、磁化した鉄系圧粉体と磁化していない鉄系圧粉体とを交互に積み重ねてもよい。このようにしても、磁化した一方の鉄系圧粉体の磁力により鉄系圧粉体同士を吸着させることができる。積み重ねる鉄系圧粉体を全て磁化した鉄系圧粉体とする場合は、積み重ねたときに鉄系圧粉体の対向する面同士が異極になるように磁化する。この場合、鉄系圧粉体同士が互いに吸引し合うため、一方のみが磁化している場合に比べて、鉄系圧粉体同士の磁気吸着力が強くなる。よって、鉄系圧粉体の積み重ねた状態をより安定して維持することができる。
(6)上記鉄系成形体の熱処理方法の一態様として、前記鉄系成形体が前記鉄系焼結体である場合、前記整列工程において、磁化した前記鉄系焼結体を磁性材からなる整列治具に吸着させて、複数の前記鉄系焼結体を間隔をあけて整列させ、前記熱処理工程において、複数の前記鉄系焼結体を間隔をあけた状態で焼入れすることが挙げられる。
上記態様では、複数の鉄系焼結体を間隔をあけて整列治具に整列させ、その状態で焼入れする。例えば、中心に貫通孔が形成された環状の鉄系焼結体の場合、水平方向に配置した棒状の整列治具に鉄系焼結体の貫通孔を挿通させ、整列治具に複数の鉄系焼結体を吊り下げて整列させることが挙げられる。焼入れする際、隣り合う鉄系焼結体同士が近接していたり、接触していると、鉄系焼結体を均一に冷却できなかったり、接触部分が急冷されずにマルテンサイト変態し難いなど、焼入れが不完全になる虞がある。そのため、焼入れした鉄系焼結体が変形したり、鉄系焼結体の組織が不均一になり易い。磁化した鉄系焼結体を磁性材からなる整列治具に整列させることで、鉄系焼結体を磁力により整列治具に吸着させて、複数の鉄系焼結体を間隔をあけた状態で安定して保持することができる。よって、複数の鉄系焼結体を間隔をあけた状態で焼入れする際、その状態を維持したまま焼入れすることが可能である。ここで、「磁性材」とは、強磁性体の性質を有する材料のことであり、例えば、鉄又は鉄合金(例、鋳鉄)などの鉄系材料が挙げられる。
隣り合う鉄系焼結体の対向する面同士が同極になるように配置すると、鉄系焼結体同士が互いに反発し合うため、近接したり接触したりすることを回避でき、鉄系焼結体同士の間隔をより維持し易い。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<鉄系成形体の熱処理方法>
実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法は、鉄系成形体(鉄系圧粉体又は鉄系焼結体)を熱処理する方法であり、下記の工程を備える。
1.磁化工程:鉄系成形体を磁化する。
2.整列工程:複数の鉄系成形体を所定の状態に整列させる。
3.熱処理工程:複数の鉄系成形体を整列させた状態で熱処理する。
実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法の特徴の1つは、磁化した鉄系成形体を整列させ、複数の鉄系焼結体を整列させた状態で熱処理する点にある。以下、実施形態の鉄系成形体の熱処理方法について詳しく説明する。
(鉄系成形体)
鉄系成形体は、鉄系圧粉体又は鉄系焼結体である。鉄系圧粉体は、鉄系粉末を含む原料粉末を圧縮成形したものである。例えば、型孔が形成されたダイと、ダイの上下に対向配置される上パンチ及び下パンチとを備える金型を用いて、ダイの型孔に原料粉末を充填し、プレス機により上下からパンチで原料粉末を圧縮して成形することが挙げられる。圧縮成形する際の面圧は、例えば600MPa以上、更に1000MPa以上とすることが挙げられる。面圧の上限は、特に限定されないが、例えば1200MPa以下とすることが挙げられる。
鉄系焼結体は、鉄系圧粉体を焼結したものであり、例えば1100℃以上1400℃以下の温度で焼結することが挙げられる。鉄系焼結体には、焼結後にサイジングや機械加工した後、硬さなどの性質を調整するために焼入れなどの熱処理を行うことがある。
原料粉末に用いる鉄系粉末は、鉄系圧粉体(鉄系焼結体)を構成する主たる材料であり、鉄又は鉄を主成分とする鉄合金の粉末である。ここで、「主成分とする」とは、構成成分として、当該元素を50質量%超、好ましくは80質量%以上、更に90質量%以上含有することを意味する。鉄合金としては、Cu,Ni,Sn,Cr,Mo及びCから選択される少なくとも1種の合金化元素を含有することが挙げられる。上記合金化元素のうち、Cu,Ni,Sn,Cr及びMoの含有量は、合計で0.5質量%以上6.0質量%以下、更に1.0質量%以上3.0質量%以下とすることが挙げられる。Cの含有量は、0.2質量%以上2.0質量%以下、更に0.4質量%以上1.0質量%以下とすることが挙げられる。鉄系粉末として純鉄粉を用い、上記合金化元素の粉末(合金化粉末)を添加してもよい。この場合、後工程で鉄系圧粉体を焼結することによって、鉄が合金化元素と反応して合金化される。
合金化元素の含有量は、製品となる鉄系焼結体の用途や仕様に応じて所定の組成になるように適宜設定される。組成の一例としては、Cu:2.0質量%、C:0.8質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物が挙げられる。
鉄系粉末の平均粒子径は、例えば20μm以上、更に50μm以上150μm以下とすることが挙げられる。鉄系粉末の平均粒子径を上記範囲内とすることで、取り扱い易く、圧縮成形し易い。鉄系粉末の平均粒子径は、鉄系粉末を構成する粒子の平均粒径のことであり、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した体積粒度分布における累積体積が50%となる粒径(D50)とする。
鉄系成形体の形状は、例えば、板状、環状、柱状、筒状など、製品の用途に応じた形状である。鉄系成形体の形状の一例を図1に示す。図1に示す鉄系成形体1は、スプロケットに用いられ、中心に貫通孔10が形成された円環状で、外周面にギア歯が形成されている。鉄系成形体の相対密度は、例えば85%以上、更に90%以上とすることが挙げられる。ここでいう「相対密度」は、真密度に対する実際の密度([実測密度/真密度]の百分率)のことを意味する。真密度は、鉄系成形体を構成する鉄系粉末の密度とする。
(磁化工程)
磁化工程は、鉄系成形体を磁化する工程である。鉄系成形体の磁化は、図2に示すように、コイルを備える磁化器2を用いて、鉄系成形体1に磁界を印加することが挙げられる。図2に示す例では、鉄系成形体1の上下方向(厚さ方向)に磁束が貫くように磁界を印加して、鉄系成形体1を磁化している。この場合、鉄系成形体1の上面及び下面の両端面が互いに異極になるように磁化される。
磁化工程では、鉄系成形体の残留磁束密度が0.3T以上、更に0.5T以上になるように磁化することが挙げられる。鉄系成形体の残留磁束密度を0.3T以上とすることで、磁化した鉄系成形体の磁力が強くなる。残留磁束密度の上限は、特に限定されないが、例えば0.8T以下である。
鉄系成形体に印加する磁界は、鉄系成形体が磁化した状態(残留磁束密度を有する状態)にできればよく、例えば3978.9A/m(50Oe)以上、更に7957.8A/m(100Oe)以上とすることが挙げられる。鉄系成形体に3978.9A/m(50Oe)以上の強さの磁界を印加することで、鉄系成形体を十分に磁化することができ、磁化した鉄系成形体の磁力を強めることができる。具体的には、鉄系成形体の残留磁束密度を0.3T以上、更に0.5T以上とすることができる。印加する磁界を強くするほど、鉄系成形体の残留磁束密度が増加するが、ある程度以上の磁界を印加しても、鉄系成形体は軟磁性体であるため、飽和磁束密度に達して、残留磁束密度がそれ以上大きくならない。
(整列工程)
整列工程は、磁化した鉄系成形体を並べ、複数の鉄系成形体を所定の状態に整列させる工程である。鉄系成形体の整列状態としては、後述する次工程の熱処理工程において、鉄系圧粉体を焼結する場合であれば、磁化した鉄系圧粉体を積み重ねて整列させることが挙げられる。また、鉄系焼結体を焼入れする場合であれば、磁化した鉄系焼結体を磁性材からなる整列治具に吸着させて、複数の鉄系焼結体を間隔をあけて整列させることが挙げられる。鉄系成形体を積み重ねて段積みする場合、積み重ねる段数は、鉄系成形体の形状やサイズにもよるが、例えば2段以上10段以下、更に6段以下とすることが挙げられる。
磁化した鉄系圧粉体を積み重ねることで、積み重ねた鉄系圧粉体同士を磁力により吸着させて、鉄系圧粉体の積み重ねた状態を安定して維持することができる。そのため、段積み時や熱処理工程への搬送中に、振動などに起因する鉄系圧粉体の姿勢ずれや荷崩れを抑制できる。複数の鉄系圧粉体を積み重ねて整列させるときは、図3に示すように、鉄系圧粉体1Gを上下方向(厚さ方向)に同じ向き(姿勢)で積み重ねることが挙げられる。この場合、鉄系圧粉体1Gを積み重ねたときに、上下の鉄系圧粉体1Gの対向する端面同士が異極になるように磁化しているため、鉄系圧粉体1G同士が磁力によって互いに吸引し合い、磁気吸着力が強くなる。よって、積み重ねた状態をより安定して維持することができる。
図3に示す例では、積み重ねる鉄系圧粉体1Gを全て磁化したものとしているが、上下の鉄系圧粉体1Gのうち、少なくとも一方が磁化していればよく、磁化した鉄系圧粉体と磁化していない鉄系圧粉体とを交互に積み重ねてもよい。このような場合であっても、磁化した一方の鉄系圧粉体の磁力により鉄系圧粉体同士を吸着させることができる。
複数の鉄系焼結体を間隔をあけて整列させる場合は、磁性材からなる整列治具を用いる。磁化した鉄系焼結体を磁性材からなる整列治具に整列させることで、鉄系焼結体を磁力により整列治具に吸着させて、複数の鉄系焼結体を間隔をあけた状態で安定して保持することができる。そのため、整列治具への整列時や熱処理工程への搬送中に、振動などに起因する鉄系焼結体の位置ずれを抑制できる。複数の鉄系焼結体を間隔をあけて整列治具に整列させるときは、図4に示すように、水平方向に配置した棒状の整列治具3に鉄系焼結体1Sの貫通孔10を挿通させ、整列治具3に複数の鉄系焼結体1Sを吊り下げて整列させることが挙げられる。整列治具3は、例えば鋳鉄で形成されている。
図4に示す例では、鉄系焼結体1Sを同じ向きに揃えて整列治具3に配置しているが、隣り合う鉄系焼結体1Sの対向する端面同士が同極になるように鉄系焼結体1Sの向きを交互に変えて配置してもよい。この場合、鉄系焼結体同士が互いに反発し合うため、近接したり接触したりすることを回避でき、鉄系焼結体同士の間隔をより維持し易くなる。
(熱処理工程)
熱処理工程は、複数の鉄系成形体を整列させた状態で熱処理する工程である。熱処理としては、例えば、鉄系圧粉体を焼結したり、鉄系焼結体を焼入れすることが挙げられる。本実施形態では、鉄系成形体を磁化して整列させており、磁化した鉄系成形体の磁力により鉄系成形体の整列状態を安定して維持することができるため、その整列状態を維持したまま熱処理することが可能である。具体的には、鉄系圧粉体を焼結する場合、複数の鉄系圧粉体を積み重ねた状態(図3参照)で焼結し、鉄系焼結体を焼入れする場合、複数の鉄系焼結体を間隔をあけて整列治具に整列させた状態(図4参照)で焼入れする。
熱処理工程では、鉄系成形体をA2点(キューリー点)以上の温度に加熱することが挙げられる。熱処理温度をA2点以上とすることで、磁化した鉄系成形体の磁化が消失し、熱処理後の磁化による影響を排除できる。鉄系成形体の熱処理温度としては、鉄系圧粉体を焼結する場合であれば、焼結温度は、例えば1100℃以上1400℃以下、更に1200℃以上1300℃以下とすることが挙げられる。また、鉄系焼結体を焼入れする場合であれば、焼入れ温度は、例えば800℃以上1000℃以下、更に840℃以上900℃以下とすることが挙げられる。
{作用効果}
上述した実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法は、鉄系成形体を磁化して整列させることで、磁化した鉄系成形体の磁力により鉄系成形体の整列状態を安定して維持することができる。そのため、複数の鉄系成形体を整列させた状態で熱処理する際、その整列状態を維持したまま熱処理することが可能である。例えば、複数の鉄系圧粉体を積み重ねた状態で焼結する際、その状態を維持したまま焼結することが可能である。或いは、複数の鉄系焼結体を間隔をあけた状態で焼入れする際、その状態を維持したまま焼入れすることが可能である。
特に、鉄系成形体の残留磁束密度が0.3T以上になるように磁化した場合、磁化した鉄系成形体の磁力が強くなるため、鉄系成形体の整列状態をより安定して維持することができる。鉄系成形体の整列状態を安定して維持するのに必要な磁力は、鉄系成形体の形状やサイズ、鉄系成形体同士の対向面積などによって異なるため、鉄系成形体の最適な残留磁束密度は個々に異なる。
[本発明の実施形態の用途]
本発明の実施形態に係る鉄系成形体の熱処理方法は、例えば、鉄系圧粉体の焼結や鉄系焼結体の焼入れに利用可能である。
[試験例1]
鉄系圧粉体を複数用意し、鉄系圧粉体を磁化した場合と磁化していない場合とで、鉄系圧粉体を積み重ねた状態で振動を与えたときの姿勢ずれや荷崩れの発生状況を評価した。
(鉄系圧粉体の用意)
市販の純鉄粉(平均粒子径(D50):130μm)に潤滑剤を添加した原料粉末を圧縮成形して、鉄系圧粉体の試料を作製した。潤滑剤の添加量は原料粉末全体に対して0.5質量%とした。作製した鉄系圧粉体の形状は、内径35mm、外径60mm、厚さ15mmの円環状である。また、鉄系圧粉体の密度(実測密度)は6.98g/cm3で、相対密度は89%であった。
(鉄系圧粉体の磁化)
用意した鉄系圧粉体にコイルを備える磁化器を用いて磁界を印加して、鉄系圧粉体の試料を磁化した。印加する磁界の強さは、1591.6A/m(20Oe)、3978.9A/m(50Oe)、7957.8A/m(100Oe)とし、それぞれの磁界で磁化した各鉄系圧粉体を試料A、B、Cとした。ここでは、鉄系圧粉体の上下方向(厚さ方向)に磁束が貫くように磁界を印加した。また、磁化しなかった鉄系圧粉体を試料Dとした。
(残留磁束密度の測定)
上記の各磁界で磁化したときの鉄系圧粉体の残留磁束密度を測定した。残留磁束密度の測定はJIS C 2552:2014(無方向性電磁鋼帯)に準拠した。なお、ここでは、測定用の試験片として内径20mm、外径30mm、厚さ5mmの円環状の鉄系圧粉体を用い、この試験片を各磁界で磁化したときの残留磁束密度を求めた。残留磁束密度は、試験片にそれぞれの磁界を印加したときのヒステリシスカーブを測定し、磁界を印加した後に磁界がゼロになったときの磁束密度とした。測定用の試験片は、上述した鉄系圧粉体の試料とサイズのみが異なり、材質や密度などは同じである。各磁界で磁化したときの残留磁束密度を表1に示す。
(整列状態の評価)
磁化した鉄系圧粉体(試料A〜C)と磁化していない鉄系圧粉体(試料D)とをそれぞれ、接着剤を塗布せずに、上下方向(厚さ方向)に同じ向きで積み重ねて段積みした。そして、各鉄系圧粉体を6段積み重ねた状態で実際の製造ラインにおける搬送時の振動を与え、鉄系圧粉体の姿勢ずれや荷崩れの有無を評価した。具体的には、積み重ねた各鉄系圧粉体に対し、実際の製造ラインで搬送する試験を繰り返し行って、鉄系圧粉体の姿勢ずれや荷崩れが発生した割合(不具合発生割合)を調べた。その結果を表1に示す。
Figure 2019151902
表1の結果から、鉄系圧粉体を磁化した試料A〜Cでは、磁化していない試料Dに比較して、姿勢ずれや荷崩れといった不具合の発生を低減できており、積み重ねた状態を安定して維持できることが分かる。特に、磁界の強さを3978.9A/m(50Oe)以上とした試料B、Cでは、磁化した鉄系圧粉体の残留磁束密度を0.3T以上とすることができ、不具合の発生を大幅に低減できている。試料A〜Cについて、鉄系圧粉体を積み重ねた状態で焼結したところ、焼結後の状態では磁気を帯びていなかった。
[試験例2]
鉄系焼結体を複数用意し、鉄系焼結体を磁化した場合と磁化していない場合とで、鉄系焼結体を整列治具に吊り下げた状態で振動を与えたときの位置ずれの発生状況を評価した。
(鉄系焼結体の用意)
試験例1で作製した鉄系圧粉体を焼結して、鉄系焼結体の試料を作製した。
(鉄系焼結体の磁化)
用意した鉄系焼結体にコイルを備える磁化器を用いて磁界を印加して、鉄系焼結体の試料を磁化した。印加する磁界の強さは、3978.9A/m(50Oe)とし、磁化した鉄系焼結体を試料Eとした。ここでは、鉄系焼結体の上下方向(厚さ方向)に磁束が貫くように磁界を印加した。また、磁化しなかった鉄系焼結体を試料Fとした。
(残留磁束密度の測定)
上記の磁界で磁化したときの鉄系焼結体の残留磁束密度を測定した。残留磁束密度の測定は、試験例1と同様に、JIS C 2552:2014(無方向性電磁鋼帯)に準拠して行い、ここでは、測定用の試験片として内径20mm、外径30mm、厚さ5mmの円環状の鉄系焼結体を用いた。そして、この試験片に上記の磁界を印加してヒステリシスカーブを測定し、試験片を磁化したときの残留磁束密度を求めた。測定用の試験片は、上述した鉄系焼結体の試料とサイズのみが異なり、材質や密度などは同じである。その結果、3978.9A/mの磁界で磁化したときの鉄系焼結体の試験片の残留磁束密度は0.50Tであった。
(整列状態の評価)
磁化した鉄系焼結体(試料E)と磁化していない鉄系焼結体(試料F)とをそれぞれ、棒状の整列治具に吊り下げて整列させた。具体的には、試料E及びFの鉄系焼結体を15個ずつ用意して、各々の鉄系焼結体の貫通孔に整列治具を挿通させ、整列治具に鉄系焼結体を5mm間隔で吊り下げて整列させた。整列治具は、鋳鉄製で直径10mmの棒状体であり、整列治具の有効長さは30cmである。また、試料Eでは、隣り合う鉄系焼結体の対向する端面同士が同極になるように鉄系焼結体の向きを交互に変えて配置した。そして、整列治具に鉄系焼結体を吊り下げた状態で実際の製造ラインにおける搬送時の振動を与え、鉄系焼結体の位置ずれの有無を評価した。
振動を与えた後、鉄系焼結体同士の接触の有無を調べた。その結果、鉄系焼結体を磁化した試料Eでは、鉄系焼結体同士の接触がなかったのに対し、磁化していない試料Fでは、鉄系焼結体同士の接触が2箇所あった。試料Eについて、鉄系焼結体を整列治具に吊り下げた状態で焼入れしたところ、焼入れ後の状態では磁気を帯びていなかった。
1 鉄系成形体
1G 鉄系圧粉体
1S 鉄系焼結体
10 貫通孔
2 磁化器
3 整列治具

Claims (6)

  1. 鉄系粉末を含む原料粉末を圧縮成形した鉄系圧粉体又は前記鉄系圧粉体を焼結した鉄系焼結体である鉄系成形体の熱処理方法であって、
    前記鉄系成形体を磁化する磁化工程と、
    磁化した前記鉄系成形体を並べ、複数の前記鉄系成形体を所定の状態に整列させる整列工程と、
    複数の前記鉄系成形体を整列させた状態で熱処理する熱処理工程と、を備える鉄系成形体の熱処理方法。
  2. 前記熱処理工程において、前記鉄系成形体をA2点以上の温度に加熱する請求項1に記載の鉄系成形体の熱処理方法。
  3. 前記磁化工程において、前記鉄系成形体の残留磁束密度が0.3T以上になるように磁化する請求項1又は請求項2に記載の鉄系成形体の熱処理方法。
  4. 前記磁化工程において、前記鉄系成形体に3978.9A/m以上の磁界を印加する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鉄系成形体の熱処理方法。
  5. 前記鉄系成形体が前記鉄系圧粉体である場合、
    前記整列工程において、磁化した前記鉄系圧粉体を積み重ねて整列させ、
    前記熱処理工程において、複数の前記鉄系圧粉体を積み重ねた状態で焼結する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鉄系成形体の熱処理方法。
  6. 前記鉄系成形体が前記鉄系焼結体である場合、
    前記整列工程において、磁化した前記鉄系焼結体を磁性材からなる整列治具に吸着させて、複数の前記鉄系焼結体を間隔をあけて整列させ、
    前記熱処理工程において、複数の前記鉄系焼結体を間隔をあけた状態で焼入れする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鉄系成形体の熱処理方法。
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