以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図2は、第1実施形態に係る溶接システムA1を説明するための図である。図1は、溶接システムA1の全体構成を示す概要図である。図2は、溶接システムA1の機能構成を示すブロック図である。
図1に示すように、溶接システムA1は、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、溶接トーチ3、パワーケーブル41,42、電力伝送線5、ガスボンベ6、ガス配管7、通信線8、およびトーチケーブル39を備えている。溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、パワーケーブル41、電力伝送線5および通信線8によって接続されている。また、ワイヤ送給装置2と溶接トーチ3とは、トーチケーブル39によって接続されている。トーチケーブル39は、ケーブル内部にパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線および通信線が配置されている。トーチケーブル39の長さは、例えば、十数m程度である。トーチケーブル39に配置されたライナは、溶接ワイヤBの送給経路の一部であり、トーチケーブル39が長いので、送給経路も長くなっている。トーチケーブル39の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線および通信線は、それぞれ、ワイヤ送給装置2の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線5および通信線8に接続される。
溶接電源装置1の一方の出力端子は、パワーケーブル41を介して、溶接トーチ3に接続されている。ワイヤ送給装置2は、溶接ワイヤBを溶接トーチ3に送り出して、溶接ワイヤBの先端を溶接トーチ3の先端から突出させる。溶接トーチ3の先端に配置されている図示しないコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41と溶接ワイヤBとは電気的に接続されている。溶接電源装置1の他方の出力端子は、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ3の先端から突出する溶接ワイヤBの先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムA1は、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。
また、本実施形態では、図2に示すように、溶接トーチ3は、溶接ワイヤBを送給する構成である送給部31を備えている。つまり、溶接ワイヤBの送給経路には、溶接ワイヤBを送給するための構成として、送給部21(ワイヤ送給装置2)と送給部31(溶接トーチ3)の2つが配置されている。送給部21(ワイヤ送給装置2)は、溶接ワイヤBを送給方向(溶接ワイヤBが進行する方向)に送り出す(プッシュ側送給部)。また、送給部31(溶接トーチ3)は、送給部21(ワイヤ送給装置2)より送給方向側に配置され、溶接ワイヤBを送給方向に牽引する(プル側送給部)。つまり、送給部21(ワイヤ送給装置2)と送給部31(溶接トーチ3)とは、プッシュプル方式のワイヤ送給システムを構成する。なお、溶接トーチ3が送給部31を備えていると考えることもできるし、ワイヤ送給システムの一部の構成である送給部31が、溶接トーチ3に配置されていると考えることもできる。
溶接電源装置1からワイヤ送給装置2へは、送給モータ211などを駆動させるための電力(例えばDC24V)が、電力伝送線5を介して供給される。また、溶接電源装置1から供給される電力は、ワイヤ送給装置2から、トーチケーブル39内部に設けられている電力伝送線(図示なし)を介して、溶接トーチ3にも供給される。なお、溶接トーチ3が溶接電源装置1から直接電力を供給されてもよい。また、ワイヤ送給装置2および溶接トーチ3は、溶接電源装置1以外から電力を供給されてもよい。
溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、通信線8を介して通信を行う。また、ワイヤ送給装置2と溶接トーチ3とは、トーチケーブル39内部に設けられている通信線(図示なし)を介して通信を行う。溶接トーチ3と溶接電源装置1とは、ワイヤ送給装置2を仲介することで、通信を行う。なお、溶接トーチ3と溶接電源装置1とが直接通信を行ってもよい。また、通信方法は限定されず、電力伝送線やパワーケーブル41,42を用いた電力線搬送通信であってもよいし、無線通信であってもよい。また、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2および溶接トーチ3間の情報の伝達は、制御線を介して、電圧や電流のレベルやパルスによって行ってもよい。
溶接システムA1は、溶接時にシールドガスを用いる。ガスボンベ6のシールドガスは、ワイヤ送給装置2を通るように設けられているガス配管7によって、溶接トーチ3の先端に供給される。なお、溶接システムA1は、溶接トーチ3に冷却水を循環させてもよい。
溶接電源装置1は、アーク溶接のための電力を溶接トーチ3に供給するものである。溶接電源装置1は、電力系統Pから入力される三相交流電力をアーク溶接に適した電力に変換して出力する。また、溶接電源装置1は、電力系統Pから入力される三相交流電力を、ワイヤ送給装置2の送給モータ311などを駆動するための直流電力に変換して、電力伝送線5を介してワイヤ送給装置2に出力する。
溶接電源装置1は、図2に示すように、制御部11を備えている。制御部11は、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されており、溶接電源装置1を制御する。制御部11は、設定された溶接条件に応じて電力を出力するように、図示しないインバータ回路を制御する。また、制御部11は、ワイヤ送給装置2の制御部22および溶接トーチ3の制御部32を介して、送給部21および送給部31を制御することで、溶接時およびインチング時の溶接ワイヤBの送給を制御する。具体的には、制御部11は、ワイヤ送給装置2の制御部22に、溶接ワイヤBの送給速度を指令する速度指令S1を送信する。また、制御部11は、溶接トーチ3の制御部32に、溶接ワイヤBの送給速度を指令する速度指令S2を送信する。制御部22は、受信した速度指令S1に基づいて、送給部21を制御する。また、制御部32は、受信した速度指令S2に基づいて、送給部31を制御する。制御部11は、送給部31による送給速度が、送給部21による送給速度より数%大きくなるように、速度指令S1,S2を送信する。送給部31(プル側送給部)による送給速度が送給部21(プッシュ側送給部)による送給速度より大きくなるので、溶接ワイヤBに張力がかかる。これにより、溶接ワイヤBの送給抵抗が抑制され、溶接ワイヤBの座屈が防止される。制御部11が行う、溶接ワイヤBのインチングのための制御についての詳細は後述する。
ワイヤ送給装置2は、溶接ワイヤBを溶接トーチ3に送り出すものである。ワイヤ送給装置2は、図2に示すように、送給部21および制御部22を備えている。
送給部21は、制御部22より入力される駆動信号によって駆動され、溶接ワイヤBを送り出す構成である。送給部21は、送給モータ211、送給ロール212および加圧ロール213を備えている。
送給モータ211は、溶接ワイヤBを送給するための駆動力を発生させるものである。送給モータ211は、制御部22(後述する駆動部221)より入力される駆動信号によって駆動される。送給モータ211は、例えばブラシレスモータであり、駆動信号が調整されることで回転速度が制御される。制御部22(後述する駆動部221)は、例えばパルス幅変調などにより駆動信号のパルス幅を調整することで、送給モータ211の回転速度を制御する。
送給ロール212は、送給モータ211の回転軸に取り付けられており、送給モータ211で発生するトルクが伝達されて回転する。なお、送給ロール212は、送給モータ211の回転軸に直接取り付けられているものに限定されない。1個以上のギヤにより、送給モータ211のトルクを送給ロール212に伝達させ、送給ロール212を回転させる構成であってもよい。溶接ワイヤBは送給ロール212に接触しており、送給モータ211のトルクが溶接ワイヤBを送り出す接線力に変換される。したがって、送給モータ211が駆動することで、溶接ワイヤBが送り出される。
加圧ロール213は、溶接ワイヤBを挟んで、送給ロール212に対向するように配置されており、溶接ワイヤBを送給ロール212側に加圧する。これにより、溶接ワイヤBは、送給ロール212の回転に応じて送給される。
制御部22は、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されており、ワイヤ送給装置2を制御する。制御部22は、溶接電源装置1の制御部11からの指令に基づいて、送給部21を駆動させることで溶接ワイヤBの送給を行い、また、図示しないガス電磁弁を開放させることで、溶接トーチ3にシールドガスを供給する。図2に示すように、制御部22は、駆動部221を備えている。
駆動部221は、送給部21の駆動を制御して、溶接ワイヤBの送給を制御する。駆動部221は、溶接電源装置1の制御部11より受信した速度指令S1に基づいて、駆動信号を送給部21の送給モータ211に出力する。送給モータ211には図示しないエンコーダが取り付けられており、制御部22は、当該エンコーダより入力されるパルス信号から送給モータ211の回転速度を検出する。なお、エンコーダは光学式のエンコーダであってもよいし、磁気式のエンコーダであってもよい。駆動部221は、検出された送給モータ211の回転速度が速度指令S1に応じた回転速度に一致するように駆動信号を調整して、フィードバック制御を行う。なお、回転速度の検出方法は限定されない。
なお、ワイヤ送給装置2は、インレットライナ、インレットガイドおよびアウトレットガイドなどの筒状のガイド部材を備えているが、図示を省略している。インレットライナおよびインレットガイドは、溶接ワイヤBが巻回されたワイヤリール23から送給ロール212まで溶接ワイヤBを導く。アウトレットガイドは、送給ロール212によって送り出される溶接ワイヤBをワイヤ送給装置2の送出口まで導く。ワイヤ送給装置2から送り出された溶接ワイヤBは、トーチケーブル39および溶接トーチ3の内部に設けられているライナの内部を通って、溶接トーチ3の先端に導かれる。インレットライナ、インレットガイドおよびアウトレットガイドなどのガイド部材と、トーチケーブル39および溶接トーチ3の内部に設けられているライナとが、溶接ワイヤBの送給経路を構成する。
溶接トーチ3は、溶接電源装置1から供給される溶接電力により、被加工物Wの溶接を行う。また、溶接トーチ3は、溶接ワイヤBを送給する構成を備えており、溶接ワイヤBを牽引して張力をかけることで、溶接ワイヤBの送給抵抗を減少させる。溶接トーチ3は、図2に示すように、送給部31、制御部32、操作部33、および表示部34を備えている。
送給部31は、制御部32より入力される駆動信号によって駆動され、溶接ワイヤBを牽引する構成である。送給部31は、送給モータ311、送給ロール312および加圧ロール313を備えている。
送給モータ311は、溶接ワイヤBを送給するための駆動力を発生させるものである。送給モータ311は、制御部32(後述する駆動部321)より入力される駆動信号によって駆動される。送給モータ311は、例えばブラシレスモータであり、駆動信号が調整されることで回転速度が制御される。制御部32(後述する駆動部321)は、例えばパルス幅変調などにより駆動信号のパルス幅を調整することで、送給モータ311の回転速度を制御する。
送給ロール312は、送給モータ311の回転軸に取り付けられており、送給モータ311で発生するトルクが伝達されて回転する。なお、送給モータ311のトルクを送給ロール312に伝達させる方法は限定されない。溶接ワイヤBは送給ロール312に接触しており、送給ロール312のトルクが溶接ワイヤBを牽引する接線力に変換される。したがって、送給モータ311が駆動することで、溶接ワイヤBが牽引される。
加圧ロール313は、溶接ワイヤBを挟んで、送給ロール312に対向するように配置されており、溶接ワイヤBを送給ロール312側に加圧する。これにより、溶接ワイヤBは、送給ロール312の回転に応じて送給される。
制御部32は、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されており、溶接トーチ3を制御する。制御部32は、操作部33より入力される操作信号に応じて、所定の処理を行う。また、制御部32は、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2との通信や、図示しない記憶部の情報の書き込みおよび読出し、操作部33からの操作信号の受付および対応する処理、表示部34での表示などを制御する。また、制御部32は、溶接電源装置1の制御部11からの指令に基づいて、送給部31を駆動させることで溶接ワイヤBの送給行う。図2に示すように、制御部32は、駆動部321、電流センサ322、および到達検出部323を備えている。
駆動部321は、送給部31の駆動を制御して、溶接ワイヤBの送給を制御する。駆動部321は、溶接電源装置1の制御部11より受信した速度指令S2に基づいて、駆動信号を送給部31の送給モータ311に出力する。送給モータ311には図示しないエンコーダが取り付けられており、制御部32は、当該エンコーダより入力されるパルス信号から送給モータ311の回転速度を検出する。なお、エンコーダは光学式のエンコーダであってもよいし、磁気式のエンコーダであってもよい。駆動部321は、検出された送給モータ311の回転速度が速度指令S2に応じた回転速度に一致するように駆動信号を調整して、フィードバック制御を行う。なお、回転速度の検出方法は限定されない。
電流センサ322は、駆動部321から送給モータ311に出力される駆動信号の電流値を検出するセンサである。制御部32は、電流センサ322が検出した電流検出値I2に基づいて、過電流から送給モータ311などを保護するための過電流保護機能を備えている。また、電流センサ322が検出した電流検出値I2は、到達検出部323にも出力される。
到達検出部323は、電流センサ322より入力される電流検出値I2に基づいて、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出する。溶接ワイヤBは、まず、ワイヤ送給装置2の送給部21によって送給され、溶接ワイヤBが溶接トーチ3の送給部31に到達した後は、送給部21および送給部31によって送給される。送給部31の送給モータ311は、溶接ワイヤBが送給部31に到達するまでは無負荷状態であるが、溶接ワイヤBが送給部31(厳密には送給ロール312)に到達した後は負荷がかかる。したがって、溶接ワイヤBが送給部31に到達する前後で、駆動部321から送給モータ311に出力される駆動信号の電流値は変化する。到達検出部323は、電流センサ322より入力される電流検出値I2に基づいて、送給モータ311に出力される駆動信号の電流値の変化から、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出する。具体的には、到達検出部323は、電流センサ322より入力される電流検出値I2と電流閾値I2thとを比較し、電流検出値I2が電流閾値I2th以上になった場合に、溶接ワイヤBが送給部31に到達したと判断する。電流閾値I2thは、送給モータ311が無負荷状態のとき(溶接ワイヤBが送給部31に到達する前)の電流検出値I2Lと、送給モータ311に負荷がかかっているとき(送給部31が溶接ワイヤBを送給しているとき)の電流検出値I2Hとの間の値として設定される。
本実施形態では、無負荷状態のときの電流検出値I2Lが0.3A程度であり、負荷がかかっているときの電流検出値I2Hが0.6A程度であるので、電流閾値I2thを0.45Aに設定している。なお、電流閾値I2thは限定されない。電流閾値I2thが電流検出値I2Lに近いほど溶接ワイヤBの到達を早く検出できるが、到達を誤検出する可能性が高くなる。一方、電流閾値I2thが電流検出値I2Hに近いほど到達の誤検出を抑制できるが、到達を検出するタイミングが遅くなる。電流閾値I2thは、電流検出値I2Lと電流検出値I2Hとの間で、適宜設定すればよい。
到達検出部323は、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出すると、到達検出信号を生成する。到達検出信号は、溶接電源装置1に送信される。
表示部34は、各種表示を行うものであり、例えば液晶表示装置であるディスプレイ(図示なし)を備えている。表示部34は、制御部32によって制御され、各種情報の表示を行う。表示部34が、本発明の「報知部」に相当する。
操作部33は、複数の操作手段を備えており、作業者による各操作手段の操作を操作信号として制御部32に出力する。操作手段としては、図示しないトーチスイッチ、インチングボタンおよび操作ボタンがある。なお、操作部33は、他の操作手段を備えていてもよい。
トーチスイッチは、溶接の開始/停止操作を受け付けるための操作手段である。トーチスイッチのオン操作(押下)により、操作信号が制御部32に出力される。当該操作信号を入力された制御部32は、溶接開始を指示する信号を生成して、溶接電源装置1に送信する。当該信号を受信した溶接電源装置1は、溶接ワイヤBの送給を開始し、また、溶接電力の出力を開始する。また、オン操作が解除されることにより、操作信号が制御部32に出力される。当該操作信号を入力された制御部32は、溶接終了を指示する信号を生成して、溶接電源装置1に送信する。当該信号を受信した溶接電源装置1は、溶接ワイヤBの送給を停止し、また、溶接電力の出力を停止する。これにより、トーチスイッチを押下している間だけ溶接が行われる。なお、トーチスイッチのオンオフ操作の伝達は、制御線を介した電気信号のレベルの変化で行われてもよい。
インチングボタンは、インチング操作の開始/停止操作を受け付けるための操作手段である。インチングボタンのオン操作(押下)により、操作信号が制御部32に出力される。当該操作信号を入力された制御部32は、インチング開始を指示する信号を生成して、溶接電源装置1に送信する。当該信号を受信した溶接電源装置1は、溶接ワイヤBの送給を開始する。また、オン操作が解除されることにより、操作信号が制御部32に出力される。当該操作信号を入力された制御部32は、インチング終了を指示する信号を生成して、溶接電源装置1に送信する。当該信号を受信した溶接電源装置1は、溶接ワイヤBの送給を停止する。これにより、インチングボタンを押下している間だけ溶接ワイヤBが送給される。なお、インチングボタンの操作方法は限定されない。インチングボタンの押下のたびに、溶接ワイヤBの送給と送給停止とが切り替わるように設定されてもよい。なお、インチングボタンのオンオフ操作の伝達は、制御線を介した電気信号のレベルの変化で行われてもよい。また、インチングボタンは、溶接電源装置1またはワイヤ送給装置2に設けられていてもよい。本実施形態では、溶接ワイヤBの送給停止が指示されなくても、溶接ワイヤBが溶接トーチ3の送給部31に到達した場合、溶接ワイヤBの送給が停止される。インチングについての詳細は後述する。
操作ボタンは、画面の切り替えや各種設定値を変更する操作を行うための操作手段である。操作ボタンは、例えば、上ボタン、下ボタン、左ボタン、および右ボタンを備えている。各ボタンが押下されると、対応する操作信号が制御部32に出力され、制御部32は対応する処理を行う。例えば、左ボタンまたは右ボタンが押下されると、モードが切り替って、ディスプレイに表示される画面が切り替わり、上ボタンまたは下ボタンが押下されると、ディスプレイに表示されている設定値が変更される。本実施形態では、左ボタンまたは右ボタンの操作により、「インチングモード」に切り換えられたときに、インチングボタンの操作が受け付け可能になる。なお、インチングの操作は、操作ボタン(例えば左ボタンまたは右ボタン)の操作で行うように設定されてもよい。この場合、インチングボタンを設ける必要がない。
本実施形態においては、送給部21が本発明の「第1送給部」に相当し、送給部31が本発明の「第2送給部」に相当する。また、制御部11、制御部22および制御部32が、本発明の「制御部」に相当する。
次に、インチングについて説明する。
インチングは、例えば新しいワイヤリール23をワイヤ送給装置2に取り付けた後の準備作業として行われる。作業者は、手作業により、ワイヤリール23から引き出した溶接ワイヤBの先端を、ワイヤ送給装置2のインレットライナおよびインレットガイドに挿通させて、送給ロール212まで導く。
そして、作業者は、溶接トーチ3のインチングボタンを押下する。インチングボタンの押下に応じて、溶接電源装置1は溶接ワイヤBの送給を開始する。具体的には、溶接電源装置1(制御部11)は、ワイヤ送給装置2の制御部22に速度指令S1を送信し、溶接トーチ3の制御部32に速度指令S2を送信する。制御部22(駆動部221)は、受信した速度指令S1に基づいて、送給モータ211の回転速度を制御する。これにより、溶接ワイヤBは、速度指令S1に応じた速度で送給される。また、制御部32(駆動部321)は、受信した速度指令S2に基づいて、送給モータ311の回転速度を制御する。
溶接電源装置1(制御部11)は、速度指令S1を「0」から徐々に増加させて、設定された速度指令S1Hにする。また、速度指令S2を「0」から徐々に増加させて、設定された速度指令S2Hにする。速度指令S1,S2を徐々に増加させているのは、急激に増加させることにより発生する駆動信号の電流値のオーバーシュートを抑制するためである。オーバーシュートが問題にならない場合は、速度指令S1(S2)を「0」からS1H(S2H)に切り換えてもよい。
作業者は、インチングを停止させる場合、溶接トーチ3のインチングボタンの押下を解除する。インチングボタンの解除に応じて、溶接電源装置1は溶接ワイヤBの送給を停止する。具体的には、溶接電源装置1(制御部11)は、ワイヤ送給装置2の制御部22に送信する速度指令S1、および、溶接トーチ3の制御部32に送信する速度指令S2を徐々に減少させて「0」にする。これにより、溶接ワイヤBの送給は停止される。なお、速度指令S1(S2)をS1H(S2H)から「0」に切り換えてもよい。
本実施形態では、作業者が溶接ワイヤBの送給停止を指示しなくても、溶接ワイヤBが溶接トーチ3の送給部31に到達した場合、溶接ワイヤBの送給が停止される。この送給の自動停止について、図3を参照して、以下に説明する。
図3は、溶接ワイヤBの送給の自動停止について説明するためのタイミングチャートである。図3(a)は、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に送信される速度指令S1の時間変化を示しており、図3(b)は、溶接電源装置1から溶接トーチ3に送信される速度指令S2の時間変化を示している。図3(c)は、電流センサ322が検出した電流検出値I2の時間変化を示している。図3(d)は、到達検出部323が送信する到達検出信号を示している。図3(e)は、溶接ワイヤBにかかる張力の時間変化を示している。図3(f)は、溶接ワイヤBの送給量の時間変化を示している。
時刻t0でインチングが開始されると、速度指令S1,S2が徐々に増加する。そして、速度指令S1は設定された速度指令S1Hになり、速度指令S2は設定された速度指令S2Hになる(図3(a),(b)参照)。送給開始時は、駆動部321が送給モータ311に出力する駆動信号の電流値にオーバーシュートが発生して、電流検出値I2が電流閾値I2th以上になる(図3(c)参照)。したがって、送給開始から所定時間T1が経過するまで(時刻t0から所定時刻t4までの間)は、到達検出部323は検出を行わない。そして、溶接ワイヤBは一定速度で送給されて、送給量が増加する(図3(f)参照)。このとき、溶接ワイヤBはまだ送給部31(送給ロール312)に達していないので、送給モータ311は空転しており、無負荷状態である。したがって、電流検出値I2は、無負荷状態のときの電流検出値I2Lになっている(図3(c)参照)。
そして、時刻t1で溶接ワイヤBの送給量がL1になったとき(図3(f)参照)に、溶接ワイヤBの先端が送給部31(送給ロール312)に到達すると、送給経路内で若干たわんでいた溶接ワイヤBに徐々に張力がかかるようになる(図3(e)参照)。これに応じて送給モータ311に負荷がかかるので、電流検出値I2が増加する(図3(c)参照)。
時刻t2で電流検出値I2が電流閾値I2th以上になると(図3(c)参照)、到達検出部323は、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出して、到達検出信号を溶接電源装置1に送信する(図3(d)参照)。到達検出信号を受信した溶接電源装置1は、速度指令S1,S2を減少させて「0」にする(図3(a),(b)参照)。これにより、送給モータ211および送給モータ311は停止し、溶接ワイヤBの送給は停止される(図3(f)参照)。このとき、溶接ワイヤBにかかる張力は減少して「0」になり(図3(e)参照)、これに応じて電流検出値I2は減少して「0」になる(図3(c)参照)。なお、溶接ワイヤBの先端が送給ロール312に到達したとき(時刻t1)から、到達検出部323が到達を検出したとき(時刻t2)までは、溶接ワイヤBの送給は継続する。しかし、この時間(t2−t1)は、全体の送給時間と比べて十分小さく、この時間で送給される溶接ワイヤBの送給量はごくわずか(例えば数cm程度)である。
溶接ワイヤBの送給が自動停止した場合、溶接トーチ3の制御部32は、表示部34のディスプレイ上に、自動停止したことを表示させる。作業者は、当該表示を見ることにより、自動停止したことを知ることができる。なお、自動停止を作業者に知らせる方法は限定されない。図示しないスピーカからの音声によって知らせてもよいし、図示しないランプを点灯させることで知らせてもよい。また、溶接トーチ3を振動させることで知らせてもよい。なお、制御部32は、到達検出部323が出力する到達検出信号によって自動停止を検出してもよいし、溶接電源装置1からの通信信号(速度指令S2または自動停止を知らせる信号)で自動停止を検出してもよい。
自動停止の後、作業者は、インチングボタンの操作により、送給部31から溶接トーチ3の先端まで、溶接ワイヤBの送給を行う。このとき、溶接電源装置1の制御部11は、速度指令S1を速度指令S1Hより送給速度が遅くなる速度指令S1Lとし、速度指令S2を速度指令S2Hより送給速度が遅くなる速度指令S2Lとする。本実施形態では、速度指令S1Hを溶接ワイヤBが1分あたり15〜20m程度送給される速度に設定し、速度指令S1Lを溶接ワイヤBが1分あたり数m程度送給される速度に設定し、速度指令S2H(S2L)を、速度指令S1H(S1L)より数%大きい速度に設定している。なお、速度指令S1H,S1L,S2H,S2Lは限定されない。送給部31から溶接トーチ3の先端までの距離は短い(例えば数十cm程度)ので、送給速度が遅くなっても必要な時間の増加は少ない。一方、送給速度が遅くなることで、操作者は、適切なタイミングで送給を停止させやすい。なお、制御部11が速度指令S1、S2の変更を自動的に行うのではなく、操作者が溶接トーチ3の操作部33の操作によって、速度指令S1、S2の変更を行ってもよい。また、速度指令S1(S2)を速度指令S1H(S2)のままとしてもよい。
図4は、溶接システムA1におけるインチング処理を説明するためのフローチャートである。図4(a)は、溶接電源装置1の制御部11が行うインチング制御処理を示しており、図4(b)は、溶接トーチ3の制御部32が行う到達検出処理を示している。
図4(a)に示すインチング制御処理は、溶接電源装置1が起動したときに開始される。なお、当該処理は、溶接トーチ3で「インチングモード」に切り替えられたときにだけ実行されてもよい。まず、制御部11は、インチング開始が指示されたか否かを判別する(S1)。具体的には、制御部11は、溶接トーチ3の制御部32からインチング開始を指示する信号を受信したか否かを判別する。インチング開始が指示されない場合(S1:NO)、ステップS1に戻って、当該判別を繰り返す。すなわち、制御部11は、インチング開始が指示されるまで待機する。インチング開始が指示されると(S1:YES)、制御部11は、溶接ワイヤBの送給開始を指示する(S2)。具体的には、制御部11は、速度指令S1を「0」からS1Hまで増加させながら、ワイヤ送給装置2に送信する。また、速度指令S2を「0」からS2Hまで増加させながら、溶接トーチ3に送信する。
次に、制御部11は、インチング終了が指示されたか否かを判別する(S3)。具体的には、制御部11は、溶接トーチ3の制御部32からインチング終了を指示する信号を受信したか否かを判別する。インチング終了が指示されない場合(S3:NO)、制御部11は、溶接トーチ3の制御部32から到達検出信号を受信したか否かを判別する(S4)。到達検出信号を受信しない場合(S4:NO)、ステップS3に戻って、ステップS3およびステップS4の判別を繰り返す。すなわち、制御部11は、インチング終了が指示されるか、到達検出信号を受信するまで待機する。インチング終了が指示されるか(S3:YES)、または、到達検出信号を受信すると(S4:YES)、制御部11は、溶接ワイヤBの送給停止を指示する(S5)。具体的には、制御部11は、速度指令S1をS1Hから「0」まで減少させながら、ワイヤ送給装置2に送信する。また、速度指令S2をS2Hから「0」まで減少させながら、溶接トーチ3に送信する。そして、処理はステップS1に戻って、制御部11は、インチング開始が指示されるまで待機する。
図4(b)に示す到達検出処理は、溶接トーチ3が起動したときに開始される。なお、当該制御処理は、「インチングモード」に切り替えられたときにだけ実行されてもよい。まず、制御部32は、制御部11から速度指令S1を受信したか否かを判別する(S11)。受信しない場合(S11:NO)、ステップS11に戻って、当該判別を繰り返す。すなわち、制御部32は、速度指令S1を受信するまで待機する。速度指令S1を受信すると(S11:YES)、制御部32は、所定時間T1が経過するのを待つ(S12)。送給開始時に発生する駆動信号の電流値のオーバーシュートによって到達検出部323が溶接ワイヤBの到達を誤検出してしまうので、オーバーシュートが収束するまで、到達検出部323による検出を行わないようにしている。この間に、制御部32は、制御部11から受信する速度指令S1に応じて、送給モータ311の回転速度を増加させる。
所定時間T1経過後(S12:YES)、制御部32は、送給モータ311に入力される駆動信号の電流値を検出する(S13)。具体的には、制御部32は、電流センサ322が検出した電流検出値I2を取得して、到達検出部323に入力する。次に、到達検出部323は、電流検出値I2を電流閾値I2thと比較する(S14)。電流検出値I2が電流閾値I2th未満の場合(S14:NO)、処理はS13に戻る。一方、電流検出値I2が電流閾値I2th以上の場合(S14:YES)、到達検出部323は、到達検出信号を生成する。制御部32は、到達検出信号を溶接電源装置1に送信する(S15)。次に、制御部32は、所定時間T2が経過するのを待つ(S16)。この間に、制御部32は、制御部11から受信する速度指令S1に応じて、送給モータ311の回転速度を減少させて、送給モータ311を停止させる。そして、処理はS11に戻って、制御部32は速度指令S1の受信を待つ。
なお、図4の各フローチャートに示す処理は一例であって、制御部11が行うインチング制御処理、および、制御部32が行う到達検出処理は上述したものに限定されない。
次に、溶接システムA1の作用効果について説明する。
本実施形態によると、到達検出部323は、電流センサ322より入力される電流検出値I2が電流閾値I2th以上になった場合に、溶接ワイヤBが送給部31に到達したと判断して、到達検出信号を溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1の制御部11は、到達検出信号を受信すると、速度指令S1,S2を減少させて「0」にする。これにより、送給モータ211および送給モータ311は停止し、溶接ワイヤBの送給は停止される。したがって、作業者は、長い時間インチングボタンを押し続けて待ったり、溶接トーチの先端から出過ぎてしまった余分な溶接ワイヤBを切断するなどの煩わしさから開放される。また、送給モータを備えた従来の溶接トーチにおいても、過電流保護のための電流センサ322が備えられている。到達検出部323は、当該電流センサ322が検出した電流検出値I2に基づいて判断するので、溶接システムA1は、溶接ワイヤBを検出するための新たな検出機構を備える必要がない。したがって、各装置の構造が複雑化することを抑制でき、また、製造コストの増加を抑制できる。
また、本実施形態によると、溶接ワイヤBの送給が自動停止した場合、溶接トーチ3の制御部32は、表示部34のディスプレイ上に、自動停止したことを表示させる。これにより、作業者は、当該表示を見ることで、自動停止したことを知ることができる。
また、本実施形態によると、溶接トーチ3が送給部31を備えている。送給部31から溶接トーチ3の先端までの距離は短いので、自動停止により送給部31まで送給された溶接ワイヤBを手動操作で溶接トーチ3の先端まで送給するための時間を短くすることができる。
なお、本実施形態においては、到達検出部323が電流検出値I2を電流閾値I2thと比較することで、溶接ワイヤBの到達を判断する場合について説明したが、これに限られない。例えば、電流センサ322が出力する電流検出値I1の微分値を算出する算出部を設け、到達検出部323は、算出部が算出した微分値を閾値と比較することで溶接ワイヤBの到達を判断してもよい。この場合、電流検出値I2を電流閾値I2thと比較する場合と比べて、溶接ワイヤBの到達を早く検出できるが、到達を誤検出する可能性が高くなる。到達検出部323は、電流検出値I2に基づいて溶接ワイヤBの到達を判断すればよく、判断の手法は、電流検出値I2の変化の波形に応じて適宜設定すればよい。
本実施形態においては、電流閾値I2thを固定値とした場合について説明したが、これに限られない。速度指令S2Hが大きいほど、送給モータ311が無負荷状態のときの電流検出値I2Lも大きくなる。したがって、電流閾値I2thを固定値とした場合、速度指令S2Hが大きいと、電流閾値I2thと電流検出値I2Lとの差が小さくなる。そうすると、到達検出部323が、溶接ワイヤBの到達を誤検出する可能性が高くなる。これを防ぐために、到達検出部323は、速度指令S2Hに応じて電流閾値I2thを変化させてもよい。速度指令S2Hが大きいほど電流閾値I2thを大きくすることで、電流閾値I2thと電流検出値I2Lとの差が小さくなることを抑制でき、到達検出部323は、誤検出の可能性を低下できる。本実施形態においては、速度指令S2Hが本発明の「溶接ワイヤの送給速度の指令値」に相当する。なお、到達検出部323は、速度指令S1Hや、送給モータ311または送給モータ211の実際の回転速度などに応じて電流閾値I2thを変化させてもよい。
本実施形態においては、到達検出部323が電流検出値I2に基づいて溶接ワイヤBの到達を判断する場合について説明したが、これに限られない。例えば、制御部32が、駆動部321から送給モータ311に出力される電力を検出するセンサを備えている場合、到達検出部323は、当該センサが検出した電力検出値に基づいて、溶接ワイヤBの到達を判断してもよい。また、制御部32が、駆動部321から送給モータ311に出力される電圧を検出するセンサを備えている場合、到達検出部323は、当該センサが検出した電圧検出値に基づいて、溶接ワイヤBの到達を判断してもよい。また、到達検出部323は、送給モータ311の回転速度に基づいて、溶接ワイヤBの到達を判断してもよい。上述したように、送給モータ311の回転速度は、送給モータ311に取り付けられたエンコーダの出力から検出される。送給モータ311を無負荷状態のときに定電流制御(定トルク制御)で駆動させると、ワイヤ到達時に負荷が上昇することで、送給モータ311の回転速度は低下する。したがって、送給モータ311の回転速度に基づいてワイヤ到達を検出できる。なお、送給モータ211,311に出力される電流の設定値は、無負荷時の送給ロール312の接線速度が送給ロール212の接線速度よりも高くなる適切な電流値に設定される。また、ワイヤ到達後は、溶接ワイヤBの座屈を防止するための対策が必要になる。この対策としては、例えば、定電流制御から速度制御に切り替える方法や、速度指令S1を低下させる方法などが考えられるが、限定されない。
本実施形態においては、電流センサ322が駆動部321から送給モータ311に出力される駆動信号の電流値を検出する場合について説明したが、これに限られない。例えば、電流センサ322は、溶接トーチ3が備える図示しない電源から駆動部321に供給される電流の電流値を検出してもよい。また、電流センサ322は、溶接電源装置1またはワイヤ送給装置2から溶接トーチ3の電源に供給される電流の電流値を検出してもよい。送給モータ311に出力される駆動信号の電流値が変化すると、これらの電流も同様に変化するので、電流センサ322が検出した電流値に基づいて溶接ワイヤBの到達を検出できる。これらの場合も、電流センサ322は、送給モータ311に供給される電流を検出していると言える。
本実施形態においては、制御部22が駆動部221を備え、制御部32が駆動部321、電流センサ322および到達検出部323を備える場合について説明したが、これに限られない。制御部11が、駆動部221、駆動部321、電流センサ322および到達検出部323を備えてもよい。つまり、溶接電源装置1が、送給モータ211および送給モータ311に供給する駆動信号を調整することで、送給モータ211および送給モータ311の回転速度を制御する構成でもよい。この場合、電流センサ322による駆動信号の電流値の検出、および、到達検出部323による判断を、溶接電源装置1の内部で行うことができる。当該変形例の場合、制御部11が、本発明の「制御部」に相当する。
本実施形態においては、駆動部221が送給モータ211の回転速度を制御する場合について説明したが、これに限られない。駆動部221は、送給モータ211のトルクを制御してもよい。
本実施形態においては、送給部21が送給ロール212の回転により溶接ワイヤBを送り出す場合について説明したが、これに限られない。送給部21はその他の方法で溶接ワイヤBを送り出してもよい。
本実施形態においては、溶接ワイヤBの到達が検出されたときに、溶接ワイヤBの送給が停止される場合(自動停止)について説明したが、これに限られない。溶接ワイヤBの送給を停止させずに、溶接ワイヤBが溶接トーチ3(送給部31)に到達したことを、作業者に報知してもよい。報知方法は、表示部34のディスプレイ上への表示でもよいし、スピーカからの音声でもよいし、ランプの点灯でもよいし、溶接トーチ3の振動でもよい。作業者は、これらの報知により、溶接ワイヤBが溶接トーチ3に到達したことを認識し、溶接ワイヤBの送給を停止させることができる。
〔変形例〕
図5および図6は、第1実施形態に係る溶接システムA1の変形例を説明するための図である。図5は、当該変形例に係るインチング処理を説明するためのフローチャートである。図6は、当該変形例に係るタイミングチャートである。当該変形例は、溶接ワイヤBが送給部31に到達したときに溶接ワイヤBの送給を停止するのではなく、溶接ワイヤBをさらに溶接トーチ3の先端まで送給してから停止するものである。
図5は、変形例に係る制御部11が行うインチング制御処理を示している。なお、変形例に係る制御部32が行う到達検出処理は、図4(b)に示すフローチャートと同様なので、記載および説明を省略する。
図5に示すインチング制御処理のフローチャートは、ステップS1〜S5については、図4(a)に示すフローチャートと同様である。図5に示すフローチャートは、ステップS4において、制御部11が到達検出信号を受信した場合に(S4:YES)、ステップS5に進む前に、ステップS6およびステップS7の処理が追加されている点で、図4(a)に示すフローチャートと異なる。
制御部11が到達検出信号を受信した場合(S4:YES)、制御部11は、溶接ワイヤBの送給速度の減速を指示する(S6)。具体的には、制御部11は、速度指令S1をS1HからS1Lまで減少させながら、ワイヤ送給装置2に送信する。また、速度指令S2をS2HからS2Lまで減少させながら、溶接トーチ3に送信する。次に、制御部11は、所定時間T3が経過するのを待ってから(S7)、溶接ワイヤBの送給停止を指示する(S5)。所定時間T3は、速度指令S1Lに応じた速度で溶接ワイヤBが送給されて、溶接ワイヤBの先端が溶接トーチ3の先端に到達する時間に基づいて設定されている。所定時間T3の設定は、溶接ワイヤBの先端が送給ロール312に到達したときから、到達検出部323によって到達が検出されるまでの送給量、ステップS6の減速途中の送給量、および、ステップS5の送給停止における減速時の送給量も考慮される。所定時間T3が、本発明の「低速度送給時間」に相当する。また、制御部32が行う到達検出処理における所定時間T2(図4(b)のステップS16参照)には、所定時間T3が加算される。なお、図5のフローチャートに示す処理は一例であって、制御部11が行うインチング制御処理は上述したものに限定されない。
図6は、変形例に係る送給の自動停止について説明するためのタイミングチャートである。図6に示すタイミングチャートは、時刻t0〜時刻t2では、図3に示すタイミングチャートと同様なので、説明を省略する。
時刻t2で電流検出値I2が電流閾値I2th以上になると(図6(c)参照)、到達検出部323は、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出して、到達検出信号を溶接電源装置1に送信する(図6(d)参照)。到達検出信号を受信した溶接電源装置1は、速度指令S1をS1Hから減少させてS1Lにし(図6(a)参照)、速度指令S2をS2Hから減少させてS2Lにする(図6(b)参照)。これにより、送給モータ211および送給モータ311は減速し、溶接ワイヤBの送給速度は低下する(図6(f)参照)。溶接ワイヤBにかかる張力は所定値まで増加して、その後所定値を継続する(図6(e)参照)。これに応じて電流検出値I2も電流検出値I2Hまで増加して、その後、電流検出値I2Hを継続する(図6(c)参照)。
時刻t2から所定時間T3が経過して、時刻t3になると、溶接電源装置1は、速度指令S1,S2を減少させて「0」にする(図6(a),(b)参照)。これにより、送給モータ211および送給モータ311は停止し、溶接ワイヤBの送給は停止される(図6(f)参照)。このとき、溶接ワイヤBにかかる張力は減少して「0」になり(図6(e)参照)、これに応じて電流検出値I2は減少して「0」になる(図6(c)参照)。
本変形例の場合も、溶接ワイヤBの送給が自動停止したときに、溶接トーチ3の制御部32は、表示部34のディスプレイ上に、自動停止したことを表示させる。作業者は、当該表示を見ることにより、自動停止したことを知ることができる。なお、溶接ワイヤBが送給部31に達したとき(時刻t2)にも、溶接トーチ3の制御部32は、表示部34のディスプレイ上に、その旨を表示させてもよい。この場合、作業者は、当該表示を見ることにより、もうすぐ自動停止することを事前に知ることができる。
なお、時刻t2で溶接ワイヤBが送給部31に到達した後も、溶接電源装置1は、速度指令S1(S2)をS1H(S2H)から変更しないようにしてもよい。
本変形例によると、溶接ワイヤBを溶接トーチ3の先端まで送給してから、送給が自動停止する。したがって、作業者は、自動停止の後、さらにインチングを行う必要がない。また、本変形例においても、溶接ワイヤBを検出するための新たな検出機構を備える必要がない。
〔第2実施形態〕
図7は、第2実施形態に係る溶接システムA2を説明するための図であり、溶接システムA2の機能構成を示すブロック図である。同図において、溶接システムA1(図2参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、図7においては、溶接トーチ3の記載を省略している。
本実施形態にかかる溶接システムA2は、溶接ワイヤBを送給する構成における異常を検出する点で溶接システムA1と異なる。
本実施形態にかかる制御部22は、速度検出部222および送給量算出部223を備えている。
速度検出部222は、溶接ワイヤBの送給速度を検出する。速度検出部222は、例えば、送給モータ211に取り付けられたエンコーダを備えている。当該エンコーダは、送給モータ211の回転速度に応じたパルス信号を生成する。速度検出部222は、エンコーダが生成したパルス信号に基づいて、送給モータ211の回転速度を検出する。そして、当該回転速度から、溶接ワイヤBの送給速度を算出する。速度検出部222は、算出した送給速度を、送給量算出部223に出力する。なお、第1実施形態に係るワイヤ送給装置2も、記載を省略しているが、速度検出部222を備えている。
送給量算出部223は、速度検出部222より送給速度を入力され、インチング開始からの溶接ワイヤBの送給量を算出する。送給量算出部223は、速度検出部222より入力される送給速度を積分することで、インチング開始からの溶接ワイヤBの送給量を算出する。なお、送給量の算出方法は限定されない。制御部22は、送給量算出部223が算出したインチング開始からの送給量を、溶接電源装置1に送信する。なお、速度検出部222が送給モータ211の回転速度を送給量算出部223に出力し、送給量算出部223が回転速度から溶接ワイヤBの送給速度を算出してもよい。
本実施形態にかかる制御部11は、異常検出部111をさらに備えている。
異常検出部111は、ワイヤ送給装置2の制御部22より受信した、インチング開始からの送給量と、溶接トーチ3の制御部32より受信した到達検出信号とに基づいて、溶接ワイヤBを送給する構成における異常を検出する。異常がない場合、インチング開始からの送給量が、送給部21(送給ロール212)から送給部31(送給ロール312)までの送給経路の長さL1になったときに、到達検出信号が受信されるはずである。したがって、インチング開始からの送給量がL1を超えても到達検出信号が受信されない場合や、インチング開始からの送給量がL1に達する前に到達検出信号が受信された場合は、異常があると判断できる。
異常検出部111は、インチング開始からの送給量が第1所定値(L1+α)以上になっても、到達検出信号が受信されない場合に異常があると判断する。この場合、溶接ワイヤBがライナ内で座屈している、送給部21または駆動部221の異常、電流センサ322の異常などが考えられる。α(>0)は、異常の誤検出を防止するための調整値である。また、異常検出部111は、インチング開始からの送給量が第2所定値(L1−β)以下のときに、到達検出信号が受信された場合に異常があると判断する。この場合、送給部31または駆動部321の異常、電流センサ322の異常などが考えられる。β(>0)は、異常の誤検出を防止するための調整値である。
制御部11は、異常検出部111が異常を検出した場合、溶接ワイヤBの送給を停止させ、異常が発生したことを報知する。具体的には、制御部11は、速度指令S1(S2)をS1H(S2H)から「0」に切り換えることで、溶接ワイヤBの送給を停止させる。また、制御部11は、異常が発生したことを示す異常信号を、溶接トーチ3の制御部32に送信する。異常信号には異常の種別を示す情報が含まれている。異常信号を受信した制御部32は、表示部34のディスプレイ上に、異常が発生したこと、および、異常の種別に応じた記載を表示させる。なお、異常の報知方法は限定されない。また、溶接電源装置1またはワイヤ送給装置2が異常を報知してもよい。
本実施形態によると、溶接ワイヤBを送給する構成における異常を検出できる。そして、異常を検出した場合に、溶接ワイヤBの送給を停止させることで、故障や事故を防ぐことができる。また、異常を検出した場合に、異常の発生を作業者に知らせることができる。また、本実施形態においても、溶接ワイヤBを検出するための新たな検出機構を備える必要がない。
〔第3実施形態〕
図8および図9は、第3実施形態に係る溶接システムA3を説明するための図である。図8は、溶接システムA3の機能構成を示すブロック図である。図9は、溶接ワイヤBの送給の自動停止について説明するためのタイミングチャートである。これらの図において、溶接システムA1(図2および図3参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
本実施形態にかかる溶接システムA3は、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを、ワイヤ送給装置2で検出する点で溶接システムA1と異なる。
本実施形態にかかる制御部32は、到達検出部323を備えていない。なお、電流センサ322については、本実施形態での溶接ワイヤBの到達の検出に関係ないので、記載を省略している。一方、本実施形態にかかる制御部22は、電流センサ224および到達検出部225を備えている。
電流センサ224は、駆動部221から送給モータ211に出力される駆動信号の電流値を検出するセンサである。制御部22は、電流センサ224が検出した電流検出値I1に基づいて、過電流から送給モータ211などを保護するための過電流保護機能を備えている。また、電流センサ224が検出した電流検出値I1は、到達検出部225にも出力される。
到達検出部225は、電流センサ224より入力される電流検出値I1に基づいて、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出する。溶接ワイヤBは、まず、ワイヤ送給装置2の送給部21によって送給され、溶接ワイヤBが溶接トーチ3の送給部31に到達した後は、送給部21および送給部31によって送給される。送給部21の送給モータ211は、溶接ワイヤBが送給部31に到達するまでは大きな負荷がかかっているが、溶接ワイヤBが送給部31(厳密には送給ロール312)に到達した後は負荷が軽減される。したがって、溶接ワイヤBが送給部31に到達する前後で、駆動部221から送給モータ211に出力される駆動信号の電流値は変化する。到達検出部225は、電流センサ224より入力される電流検出値I1に基づいて、送給モータ211に出力される駆動信号の電流値の変化から、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出する。
図9(c)は、電流センサ224が検出した電流検出値I1の時間変化を示している。時刻t4から時刻t1までは、時間が経過するにつれて、溶接ワイヤBの送給量が増加する。これに応じて溶接ワイヤBの送給抵抗が少しずつ増加するので、送給モータ211にかかる負荷も少しずつ増加する。これに応じて、電流検出値I1も少しずつ増加する。そして、時刻t1で溶接ワイヤBが送給部31に到達すると、送給モータ211にかかる負荷が軽減される。これにより、電流検出値I1が減少する。図9(d)は、電流検出値I1を微分した電流微分値の時間変化を示している。図9(d)に示すように、電流微分値は、時刻t4から時刻t1までは正の値である。そして、時刻t1で電流検出値I1が減少することにより、電流微分値は負の値になる。到達検出部225は、この変化に基づいて、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出する。
具体的には、到達検出部225は、電流センサ224より入力される電流検出値I1を微分して、電流微分値を算出する。そして、到達検出部225は、算出した電流微分値と微分閾値とを比較し、電流微分値が微分閾値以下になった場合に、溶接ワイヤBが送給部31に到達したと判断する。本実施形態では、微分閾値は、「0」に設定されている。なお、微分閾値は限定されない。また、到達検出部225は、その他の方法で、溶接ワイヤBが送給部31に到達したことを検出してもよい。
本実施形態によると、到達検出部225は、電流センサ224より入力される電流検出値I1を微分した電流微分値が微分閾値以下になった場合に、溶接ワイヤBが送給部31に到達したと判断して、到達検出信号を溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1の制御部11は、到達検出信号を受信すると、溶接ワイヤBの送給を停止させる。したがって、作業者は、長い時間インチングボタンを押し続けて待ったり、溶接トーチの先端から出過ぎてしまった余分な溶接ワイヤBを切断するなどの煩わしさから開放される。また、従来のワイヤ送給装置においても、過電流保護のための電流センサ224が備えられている。到達検出部225は、当該電流センサ224が検出した電流検出値I1に基づいて判断するので、溶接システムA3は、溶接ワイヤBを検出するための新たな検出機構を備える必要がない。したがって、各装置の構造が複雑化することを抑制でき、また、製造コストの増加を抑制できる。
なお、第3実施形態において、溶接トーチ3の制御部32が到達検出部323を備えるようにしてもよい。この構成の場合、到達検出部225と到達検出部323とで、それぞれ溶接ワイヤBの到達を検出できる。到達検出部225と到達検出部323とが両方とも到達を検出した場合に送給を停止させてもよいし、到達検出部225または到達検出部323のどちらかが到達を検出した場合に送給を停止させてもよい。
〔第4実施形態〕
図10および図11は、第4実施形態に係る溶接システムA4を説明するための図である図10は、溶接システムA4の全体構成を示す概要図である。図11は、溶接システムA4の機能構成を示すブロック図である。これらの図において、溶接システムA1(図1および図2参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、図11においては、溶接トーチ3’の内部構成の記載を省略している。
本実施形態にかかる溶接システムA4は、溶接トーチ3’がプル側の送給装置として機能せず、代わりにプル側の送給装置となるプルフィーダ9をさらに備えている点で溶接システムA1と異なる。
溶接トーチ3’は、第1実施形態に係る溶接トーチ3(図2参照)において、送給部31、駆動部321、電流センサ322、および到達検出部323を備えていないものである。つまり、溶接トーチ3’は溶接ワイヤBを送給する機能を有しておらず、その他の機能については溶接トーチ3と同様である。
プルフィーダ9は、溶接ワイヤBを送給するものであり、溶接ワイヤBを牽引して張力をかけることで、溶接ワイヤBの送給抵抗を減少させる。プルフィーダ9は、図10に示すように、ワイヤ送給装置2と溶接トーチ3’との間の溶接ワイヤBの送給経路上で、溶接トーチ3’寄りに配置されている。具体的には、プルフィーダ9は、トーチケーブル39によって、ワイヤ送給装置2に接続されている。また、プルフィーダ9は、トーチケーブル39と同様の構成であるトーチケーブル39’によって、溶接トーチ3’に接続されている。トーチケーブル39の長さが例えば十数m程度であるのに対して、トーチケーブル39’の長さがは例えば数m程度である。プルフィーダ9とワイヤ送給装置2とは、トーチケーブル39内部に設けられている通信線(図示なし)を介して通信を行う。また、プルフィーダ9と溶接トーチ3’とは、トーチケーブル39’内部に設けられている通信線(図示なし)を介して通信を行う。プルフィーダ9と溶接電源装置1とは、ワイヤ送給装置2を仲介することで、通信を行う。なお、プルフィーダ9と溶接電源装置1とが直接通信を行ってもよい。また、通信方法は限定されない。図11に示すように、プルフィーダ9は、送給部91および制御部92を備えている。
送給部91は、制御部92より入力される駆動信号によって駆動され、溶接ワイヤBを牽引する構成である。送給部91は、送給モータ911、送給ロール912および加圧ロール913を備えている。
送給モータ911は、溶接ワイヤBを送給するための駆動力を発生させるものである。送給モータ911は、制御部92(後述する駆動部921)より入力される駆動信号によって駆動される。送給モータ911は、例えばブラシレスモータであり、駆動信号が調整されることで回転速度が制御される。制御部92(後述する駆動部921)は、例えばパルス幅変調などにより駆動信号のパルス幅を調整することで、送給モータ911の回転速度を制御する。
送給ロール912は、送給モータ911の回転軸に取り付けられており、送給モータ911で発生するトルクが伝達されて回転する。なお、送給モータ911のトルクを送給ロール912に伝達させる方法は限定されない。溶接ワイヤBは送給ロール912に接触しており、送給ロール912のトルクが溶接ワイヤBを牽引する接線力に変換される。したがって、送給モータ911が駆動することで、溶接ワイヤBが牽引される。
加圧ロール913は、溶接ワイヤBを挟んで、送給ロール912に対向するように配置されており、溶接ワイヤBを送給ロール912側に加圧する。これにより、溶接ワイヤBは、送給ロール912の回転に応じて送給される。
制御部92は、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されており、プルフィーダ9を制御する。制御部92は、溶接電源装置1の制御部11からの指令に基づいて、送給部91を駆動させることで溶接ワイヤBの送給を行う。制御部92は、駆動部921、電流センサ922、および到達検出部923を備えている。
駆動部921は、送給部91の駆動を制御して、溶接ワイヤBの送給を制御する。駆動部921は、溶接電源装置1の制御部11より受信した速度指令S2に基づいて、駆動信号を送給部91の送給モータ911に出力する。送給モータ911には図示しないエンコーダが取り付けられており、制御部92は、当該エンコーダより入力されるパルス信号から送給モータ911の回転速度を検出する。なお、エンコーダは光学式のエンコーダであってもよいし、磁気式のエンコーダであってもよい。駆動部921は、検出された送給モータ911の回転速度が速度指令S2に応じた回転速度に一致するように駆動信号を調整して、フィードバック制御を行う。なお、回転速度の検出方法は限定されない。
電流センサ922は、駆動部921から送給モータ911に出力される駆動信号の電流値を検出するセンサである。制御部92は、電流センサ922が検出した電流検出値I2に基づいて、過電流から送給モータ911などを保護するための過電流保護機能を備えている。また、電流センサ922が検出した電流検出値I2は、到達検出部923にも出力される。
到達検出部923は、電流センサ922より入力される電流検出値I2に基づいて、溶接ワイヤBが送給部91に到達したことを検出する。溶接ワイヤBは、まず、ワイヤ送給装置2の送給部21によって送給され、溶接ワイヤBがプルフィーダ9の送給部91に到達した後は、送給部21および送給部91によって送給される。送給部91の送給モータ911は、溶接ワイヤBが送給部91に到達するまでは無負荷状態であるが、溶接ワイヤBが送給部91(厳密には送給ロール912)に到達した後は負荷がかかる。したがって、溶接ワイヤBが送給部91に到達する前後で、駆動部921から送給モータ911に出力される駆動信号の電流値は変化する。到達検出部923は、電流センサ922より入力される電流検出値I2に基づいて、送給モータ911に出力される駆動信号の電流値の変化から、溶接ワイヤBが送給部91に到達したことを検出する。具体的な検出方法は、第1実施形態に係る到達検出部323と同様である。到達検出部923は、溶接ワイヤBが送給部91に到達したことを検出すると、到達検出信号を生成する。到達検出信号は、溶接電源装置1に送信される。
本実施形態においては、送給部21が本発明の「第1送給部」に相当し、送給部91が本発明の「第2送給部」に相当する。また、制御部11、制御部22および制御部92が、本発明の「制御部」に相当する。
本実施形態によると、到達検出部923は、電流センサ922より入力される電流検出値I2が電流閾値I2th以上になった場合に、溶接ワイヤBが送給部91に到達したと判断して、到達検出信号を溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1の制御部11は、到達検出信号を受信すると、溶接ワイヤBの送給を停止させる。したがって、作業者は、長い時間インチングボタンを押し続けて待ったり、溶接トーチの先端から出過ぎてしまった余分な溶接ワイヤBを切断するなどの煩わしさから開放される。また、従来のプルフィーダにおいても、過電流保護のための電流センサ922が備えられている。到達検出部923は、当該電流センサ922が検出した電流検出値I2に基づいて判断するので、溶接システムA4は、溶接ワイヤBを検出するための新たな検出機構を備える必要がない。したがって、各装置の構造が複雑化することを抑制でき、また、製造コストの増加を抑制できる。
さらに、本実施形態によると、溶接トーチ3’は溶接ワイヤBを送給する構成を備える必要がないので、小型軽量化が可能である。
なお、第4実施形態において、溶接トーチ3’が、送給部31、駆動部321、電流センサ322、および到達検出部323を備える(つまり、溶接トーチ3)ようにしてもよい。この構成の場合、溶接ワイヤBが溶接トーチ3の送給部31に到達して自動停止する前に、溶接ワイヤBがプルフィーダ9の送給部91に到達したときに、間もなく自動停止することを事前に報知することができる。また、溶接ワイヤBがプルフィーダ9の送給部91に到達したとき、および、溶接トーチ3の送給部31に到達したときの2回、自動停止させてもよい。
上記第1〜4実施形態においては、溶接システムA1〜A4において溶接ワイヤBを送給する場合について説明したが、これに限られない。本発明は、溶接ワイヤB以外のワイヤを送給するワイヤ送給システムにおいても適用可能である。例えば、溶射システムにおいて溶射ワイヤを送給するワイヤ送給システムや、ブレージングシステムにおいてブレージングワイヤを送給するワイヤ送給システムにおいても、本発明を適用できる。
本発明に係るワイヤ送給システムおよび溶接システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るワイヤ送給システムおよび溶接システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。