JP2019157155A - 表面処理アルミニウム材およびその製造方法 - Google Patents

表面処理アルミニウム材およびその製造方法 Download PDF

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Yosuke Ota
陽介 太田
小島 徹也
Tetsuya Kojima
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Abstract

【課題】TiおよびZrの少なくとも1種を含有する皮膜が均一に形成された表面処理Al材およびその製造方法の提供。【解決手段】表面処理Al材(表面処理材1)は、Mgを含有するAl材2と、当該Al材2の表面に形成されたTiおよびZrの少なくとも1種を含有する皮膜(Ti/Zr皮膜3)と、を備え、最表面のMgの元素濃度を[Mg]とし、最表面のAlの元素濃度を[Al]とした場合の[Mg]/[Al]比が0.3未満である。本製造方法は、Mgを含有するAl材2の表面を酸洗浄する酸洗浄工程S5と、前記酸洗浄を行ったAl材2の表面をTiおよびZrの少なくとも1種を含有する処理液で処理する表面処理工程S7と、を含み、前記酸洗浄工程S5は、前記表面処理工程S7後における最表面のMgの元素濃度を[Mg]とし、最表面のAlの元素濃度を[Al]とした場合の[Mg]/[Al]比が0.3未満となる条件で行う。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車、船舶、航空機などの輸送用機器、特に自動車用パネルに好適に使用される表面処理アルミニウム材および当該表面処理アルミニウム材を製造するための製造方法に関する。
自動車産業では、近年、CO排出規制などの地球環境問題から、部材の軽量化による燃費の向上が求められている。アルミニウム材は、比重が鉄材料の約1/3と軽いため、今まで鉄材が使用されていた部分に軽量化が求められて置き換わる素材として注目されている。アルミニウム材としては、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金がその特性に応じて使用されている。このようなアルミニウム材はアルミニウム材同士の接合において、ろう付けなどの溶接法や、かしめ、リベットなどによる機械的接合法のほか、接着による接合法も多用されている。また、アルミニウム材は鉄材と併用される場合がある。アルミニウム材と鉄材とを併用する場合、電食を抑制したり、被接合材の厚さや、接合箇所などに依らず、容易に接合したりすることが可能であるため、特に、接着による接合法が多用されている。
しかし、接着剤によって接合された接合部は、水分、酸素、塩化物イオンなどの侵入により劣化し、接着強度が低下するため、十分な接着耐久性が要求される。従来、アルミニウム材の接着耐久性を向上させる技術としては、チタンおよびジルコニウムを含有する処理液によりアルミニウム材の表面に皮膜を形成させる表面処理方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、金属材料の接着剤塗布前処理方法が提案されている。そして、特許文献1の接着剤塗布前処理方法は、アルミニウム系基材からなる被処理物をジルコニウムフッ素錯体および/またはチタンフッ素錯体を含有する化成処理液により処理する工程(I)と、シランカップリング剤の加水分解重縮合物を含有する表面処理液を塗布する工程(II)とからなる。
特開2006−152267号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明には、ジルコニウムフッ素錯体および/またはチタンフッ素錯体を含有する化成処理液で処理して得られた化成処理皮膜の性能がかならずしも安定しておらず、試験条件によっては所期の接着耐久性が得られないという問題があった。接着耐久性は、素材表面の水和を抑制することにより向上することが広く知られており、前記問題のようになるのは水和抑制効果が得られていないことと対応する。本発明者らが前記問題について調査を進めた結果、前記問題は、前記化成処理皮膜がアルミニウム系基材上に均一に形成されていないということと対応することが判明した。前記化成処理皮膜がアルミニウム系基材上に均一に形成されないと、化成処理皮膜が形成されていない箇所に水中や空気中の水分が吸着し、アルミニウム系基材の酸化皮膜を水和して水酸化アルミニウムに変化させる。これが素材の中まで浸透するとその部分が剥離等し易くなるため、接着耐久性等の性能が低下する。
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、チタンおよびジルコニウムの少なくとも1種を含有する皮膜が均一に形成された表面処理アルミニウム材およびその製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決した本発明に係る表面処理アルミニウム材は、Mgを含有するAl材と、当該Al材の表面に形成されたTiおよびZrの少なくとも1種を含有する皮膜と、を備え、最表面のMgの元素濃度を[Mg]とし、最表面のAlの元素濃度を[Al]とした場合の[Mg]/[Al]比が0.3未満である。
また、本発明に係る表面処理アルミニウム材の製造方法は、Mgを含有するAl材の表面を酸洗浄する酸洗浄工程と、前記酸洗浄を行ったAl材の表面をTiおよびZrの少なくとも1種を含有する処理液で処理する表面処理工程と、を含み、前記酸洗浄工程は、前記表面処理工程後における最表面のMgの元素濃度を[Mg]とし、最表面のAlの元素濃度を[Al]とした場合の[Mg]/[Al]比が0.3未満となる条件で行う。
本発明に係る表面処理アルミニウム材は、チタンおよびジルコニウムの少なくとも1種を含有する皮膜を均一に形成できる。
また、本発明に係る表面処理アルミニウム材の製造方法は、チタンおよびジルコニウムの少なくとも1種を含有する皮膜が均一に形成された表面処理アルミニウム材を製造できる。
本発明の一実施形態に係る表面処理材の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る表面処理材の製造方法の内容を説明するフローチャートである。 実施例1に係る表面処理材をSEMで撮像したSEM像である。 図3Aの一部を拡大したSEM像である。 図3Bの一部を拡大したSEM像である。 図3Cの一部を拡大したSEM像である。 実施例2に係る表面処理材をSEMで撮像したSEM像である。 図4Aの一部を拡大したSEM像である。 図4Bの一部を拡大したSEM像である。 図4Cの一部を拡大したSEM像である。 比較例1に係る表面処理材をSEMで撮像したSEM像である。 図5Aの一部を拡大したSEM像である。 図5Bの一部を拡大したSEM像である。 図5Cの一部を拡大したSEM像である。 実施例1に係る表面処理材のSEM像である。 図6AのSEM像と同じ箇所におけるOの分布状況を示す分析図(O map)である。 図6AのSEM像と同じ箇所におけるFの分布状況を示す分析図(F map)である。 図6AのSEM像と同じ箇所におけるMgの分布状況を示す分析図(Mg map)である。 図6AのSEM像と同じ箇所におけるAlの分布状況を示す分析図(Al map)である。 図6AのSEM像と同じ箇所におけるZrの分布状況を示す分析図(Zr map)である。 実施例2に係る表面処理材のSEM像である。 図7AのSEM像と同じ箇所におけるOの分布状況を示す分析図(O map)である。 図7AのSEM像と同じ箇所におけるFの分布状況を示す分析図(F map)である。 図7AのSEM像と同じ箇所におけるMgの分布状況を示す分析図(Mg map)である。 図7AのSEM像と同じ箇所におけるAlの分布状況を示す分析図(Al map)である。 図7AのSEM像と同じ箇所におけるZrの分布状況を示す分析図(Zr map)である。 比較例1に係る表面処理材のSEM像である。 図8AのSEM像と同じ箇所におけるOの分布状況を示す分析図(O map)である。 図8AのSEM像と同じ箇所におけるFの分布状況を示す分析図(F map)である。 図8AのSEM像と同じ箇所におけるMgの分布状況を示す分析図(Mg map)である。 図8AのSEM像と同じ箇所におけるAlの分布状況を示す分析図(Al map)である。 図8AのSEM像と同じ箇所におけるZrの分布状況を示す分析図(Zr map)である。
以下、適宜図面を参照して本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材(本明細書において単に「表面処理材」ということがある)およびその製造方法について詳細に説明する。
はじめに、本発明の一実施形態に係る表面処理材について説明し、次いで、本発明の一実施形態に係る表面処理材の製造方法について説明する。
[表面処理材]
参照する図面において、図1は、本発明の一実施形態に係る表面処理材の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る表面処理材1は、マグネシウム(Mg)を含有するアルミニウム(Al)材2と、このAl材2の表面に形成されたチタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の少なくとも1種を含有する皮膜(以下、「Ti/Zr皮膜」と記載することがある)3と、を備えている。ここで、Al材2の表面とは、Al材2の少なくとも一面を意味し、いわゆる片面、両面または複数の面が含まれる。
そして、本実施形態に係る表面処理材1は、前記Ti/Zr皮膜3が形成された最表面について、Mgの元素濃度を[Mg]とし、Alの元素濃度を[Al]とした場合の[Mg]/[Al]比を0.3未満としている。ここで、「最表面」とは、グロー放電発光分析装置(GD−OES)による分析でアルゴンスパッタを行う際に一番最初に検出される状態と対応しており、例えば、表面からの深さ0.3nm以内をいう。
(Al材)
Al材2は、Mgを含有するものであれば、純Al材およびAl合金材のいずれも用いることができる。なお、純Al材とは、例えば、JIS H 4000:2014やJIS H 4040:2015規定の1000系の材料であって、Mgが0.10質量%以下で含有され得るものであり、Alの含有量が99.00質量%以上であるものをいう。また、Al合金材とは、Alを主成分とし、任意の金属元素と不可避的不純物とを含有するものをいう。本実施形態においては、好適に用いられるAl合金材として、例えば、JIS H 4000:2014やJIS H 4040:2015規定の5000系、6000系および7000系の材料が挙げられるが、Mgを含有していればよく、これらに限定されない。なお、Al合金材のMgの含有量としては、例えば、0.01質量%以上5.0質量%以下の範囲が挙げられるが、これに限定されない。また、本実施形態においては、Al材2として、例えば、Al−Si−Mg系(AC4A、AC4C、AC4CH)、Al−Si−Cu−Mg系(AC4D)、Al−Cu−Ni−Mg系(AC5A)、Al−Mg系(AC7A)、Al−Si−Cu−Mg−Ni系(AC9A、AC9B)などの鋳造用Al合金で製造されたものも好適に用いることができる。さらに、本実施形態においては、Al材2として、例えば、Al−Si−Mg系(ADC3)、Al−Mg系(ADC5、ADC6)、Al−Si−Cu−Mg系(ADC14)などのダイカスト用合金で製造されたものも好適に用いることができる。
本実施形態におけるAl材2の化学成分の調整は、例えば、Al合金を溶解する際に添加する元素の添加量を適宜調節することによって行うことができる。また、不可避的不純物の含有量の調整(規制)は、例えば、三層電解法により精錬した地金を使用したり、偏析法を利用してこれらを排除したりすることによって行うことができる。なお、不可避的不純物とは、Al材2を製造等する場合に不可避的に混入する不純物をいう。不可避的不純物としては、例えば、Ni、Bi、Pb、Vなどが挙げられる。これらはそれぞれ0.05質量%以下であれば本発明の効果は損なわれない。
本実施形態においては、Al材2の形状等に制限はない。Al材2は、例えば、板材、棒材、条材、線材、押し出し加工材、ニアネットシェイプ加工による成形材などのほか、任意の形状に機械加工を行った成形材などを用いることができる。Al材2が板材の場合、その厚さは例えば0.7〜3.0mmとすることができる。なお、本実施形態におけるAl材2は、焼鈍や任意の調質が行われたもの、つまり、熱処理が行われたものを好適に用いることができる。熱処理が行われることによって、Al材2の引張強さ、耐力、伸びなどの性質を向上させることができる。なお、大気中などの酸化性雰囲気で焼鈍や調質などの熱処理が行われると、Al材2の表面層近傍の母相に含まれるMgが優先的に酸化されるため、表面層近傍の母相中のMg濃度が低下する。表面層近傍の母相中のMg濃度が低下すると、濃度差を小さくするため、母相中でMg濃度が低下した表面層近傍に向かって深部からMgが拡散してきて濃化する。このような作用により、Mgを含有するAl材2を熱処理すると、表面処理材1の表面に酸化マグネシウム(MgO)を多く含む酸化皮膜(Mg酸化皮膜)がAl酸化皮膜とともに生成される。Mg酸化皮膜とAl酸化皮膜は後記する酸洗浄工程S5(図2参照)で除去されるが、これらの除去が十分でないとAl材2の表面が十分清浄であるとはいえず、Mg酸化皮膜が表面に不均一に散在することになる。こうした表面の不均一性により、後工程である表面処理工程S7において、処理液と素材表面との反応性にムラが発生する。その結果、Mg酸化皮膜が残存する部位にはTi/Zr皮膜3が形成され難く、不均一な皮膜となることを低加速電圧かつ高解像度のSEMにより新たに見出した。この状態ではTi/Zr皮膜量3が蛍光X線の測定で一定以上確保できていたとしても、Mg酸化皮膜上にはTi/Zr皮膜3が形成されていないため、表面処理材1の表面に露出するMg量が多くなり、最表面の[Mg]/[Al]比が高くなる。このようになると、前述したように、化成処理皮膜であるTi/Zr皮膜3が形成されていない箇所に水中や空気中の水分が吸着し、Al材2の酸化皮膜を水和して水酸化Alに変化させるので、表面処理材1は十分な接着耐久性を得ることができなくなる。これとは対照的に、Mg酸化皮膜が残存しておらず、Ti/Zr皮膜3が均一に形成されていると、表面処理材1の表面に露出するMg量が少なくなる。そのため、最表面の[Mg]/[Al]比が低くなる。この場合、表面処理材1は均一にTi/Zr皮膜3が形成されるので、十分な接着耐久性を得ることができる。すなわち、表面処理材1の表面における[Mg]/[Al]比は、Ti/Zr皮膜3が均一に形成されているか否かの指標となるものである。
(Ti/Zr皮膜)
Ti/Zr皮膜3は、前記したように、Al材2の表面に形成されたTiおよびZrの少なくとも1種を含有する皮膜である。当該Ti/Zr皮膜3が均一に形成されることによって、優れた接着耐久性を得ることができる。なお、Ti/Zr皮膜3は、TiおよびZrの両方を用いた皮膜であることが好ましい。TiおよびZrの両方を用いたTi/Zr皮膜3とすると、接着耐久性に優れるだけでなく、いずれか一方のみを用いた皮膜よりも成形性や溶接性などに優れたものとなる。
また、本実施形態におけるTi/Zr皮膜3は、前記したように、最表面の[Mg]/[Al]比を0.3未満としている。このようにすると、Ti/Zr皮膜3によって被覆されていない箇所(Ti/Zr皮膜3からAl材2が露出している箇所)を低減できる。つまり、Ti/Zr皮膜3が不均一に形成され、MgOを多く含む酸化皮膜が生成されたAl材2の表面がTi/Zr皮膜3から露出している比率を低減できる。そのため、表面処理材1は、Al材2の酸化皮膜に水中や空気中の水分が吸着し難くなるため、酸化皮膜が水和され難くなる。従って、表面処理材1は接着耐久性を優れたものとすることができる。
一方、表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比が0.3以上であるということは、すなわち、Ti/Zr皮膜3が不均一に形成されており、Al材2の露出が多いことを意味している。そのため、Ti/Zr皮膜3が形成されていない箇所(Al材2が露出している箇所)に水中や空気中の水分が吸着し、Al材2の酸化皮膜を水和して水酸化Alに変化させる。これが素材の中まで浸透するとその部分が剥離等し易くなるため、Al材2の接着耐久性が低下する。
接着耐久性をより優れたものとするため、表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比は、0.25以下であるのが好ましく、0.2以下であるのがより好ましく、0.15以下であるのがさらに好ましく、0.1以下であるのがよりさらに好ましく、0.05以下であるのが最も好ましい。なお、表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比はその値が低いほどAl材2にTi/Zr皮膜3が均一に形成されているということができる。従って、表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比は低ければ低いほど好ましく、下限は特に限定はない。なお、表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比の下限を設けるとすれば、例えば、0.01や前記した0.05などが挙げられる。
本実施形態におけるTi/Zr皮膜3は、Al材2の表面を均一に形成されていればよく、形成量については特に限定はないが、例えば、Ti換算およびZr換算で、1mg/m以上とすることが好ましく、2mg/m以上とすることがより好ましい。なお、Ti/Zr皮膜3の形成量をこのようにすると、十分な接着耐久性だけでなく、表面処理材1の耐食性を向上させることができる。また、表面処理材1に対して抵抗スポット溶接を行うことがあるが、抵抗スポット溶接用の電極の劣化を抑制する観点からは、Ti換算およびZr換算で、10mg/m以下とすることが好ましく、8mg/m以下とすることがより好ましく、6mg/m以下とすることが更に好ましい。なお、Ti/Zr皮膜3がTiとZrの両方を含有する場合の形成量は前記換算量の合計量とすることができる。
Ti/Zr皮膜3は、後述するようにAl材2の表面に好ましくは後述する処理液を接触させて形成されるため、TiおよびZrのほかに、Alおよび処理液などに由来する不純物が含まれている。このAlにはアルミニウム酸化物やアルミニウムフッ化物などを由来とするものも含まれている。
表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比は、例えば、後述する酸洗浄工程S5の洗浄条件で調節することができる。
また、表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比は、例えば、市販のアセトンで表面処理材1の表面を洗浄した後、HORIBA社製マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置JY−5000RF(GD−OES)を用い、最表面のMgの原子%濃度と最表面のAlの原子%濃度とを測定し、測定したMgの原子%濃度をAlの原子%濃度で除することによって求めることができる。
[表面処理材の製造方法]
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る表面処理材の製造方法について説明する。なお、図2は、本発明の一実施形態に係る表面処理材の製造方法の内容を説明するフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態に係る表面処理材の製造方法(以下、「本製造方法」ということがある)は、酸洗浄工程S5と、表面処理工程S7とを含んでいる。本製造方法はこれらの工程を行うことで好適に表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比を3.0未満とすることができる。
また、図2に示すように、本製造方法は、例えば、酸洗浄工程S5の前に、Al材製造工程S1と、熱処理工程S2と、アルカリ洗浄工程S3と、第1水洗工程S4とを含ませることができる。
また、本製造方法は、例えば、酸洗浄工程S5と表面処理工程S7との間に、第2水洗工程S6を含ませることができる。
さらに、本製造方法は、例えば、表面処理工程S7の後に、第1乾燥工程S8と、第3水洗工程S9と、第2乾燥工程S10とを含ませることができる。
なお、本製造方法は、前記した全ての工程を前記した順序で行うことが好ましい。つまり、本製造方法は、Al材製造工程S1、熱処理工程S2、アルカリ洗浄工程S3、第1水洗工程S4、酸洗浄工程S5、第2水洗工程S6、表面処理工程S7、第1乾燥工程S8、第3水洗工程S9、第2乾燥工程S10の順に行うことが好ましい。このようにすると、表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比を3.0未満よりさらに低くすることができる。
以下、本製造方法の好ましい態様について図2を参照して順に説明する。
(Al材製造工程)
Al材製造工程S1は、Mgを含有する純AlまたはAl合金の溶湯から鋳塊、ビレットなどを経て板材、棒材、条材、線材、押し出し加工材などの任意の形状のAl材2を製造する工程である。また、Al材製造工程S1では、Mgを含有する純AlまたはAl合金の溶湯からニアネットシェイプ加工や鋳造、ダイカストなどにより任意の形状のAl材2を製造することもできる。さらに、板材などに対して機械加工を行って任意の形状に成形した成形材(Al材2)を製造することもできる。Al材製造工程S1は、Alを用いた材料を製造する従来公知の装置および条件で行うことができる。
(熱処理工程)
熱処理工程S2は、製造したAl材2に対して、任意の条件で熱処理を行う工程である。熱処理工程S2を行うことにより、Al材2の引張強さ、耐力、伸びなどの性質を向上させることができるが、前記したように、Al材2の表面層近傍にMgが拡散してきて濃化する。熱処理工程S2は、電気炉やガス炉などのAl材2に対して熱を加えることのできる従来公知の装置および条件で行うことができる。なお、熱処理工程S2を行わなくてもよい場合は、この工程を省略することが可能である。
(アルカリ洗浄工程)
アルカリ洗浄工程S3は、Al材2の表面をアルカリで洗浄することによって、Al材2の表面に残存する油分を除去する工程である。ここで、油分は、Al材2を製造する際に、Al材2の表面に付着した潤滑油等である。また、アルカリ洗浄工程S3を行う装置やアルカリ洗浄条件については、Al材2の搬入経路に沿って設けられる従来公知の装置および条件で行うことができる。なお、Al材2の表面に残存する油分の付着量が無視できる場合には、アルカリ洗浄工程S3を省略することが可能である。
(第1水洗工程)
第1水洗工程S4は、Al材2の表面を水洗することによって、Al材2の表面に残存するアルカリを除去する工程である。第1水洗工程S4は、従来公知の装置および条件で行うことができる。なお、前記アルカリ洗浄工程S3を省略した際には、第1水洗工程S4を省略することができる。
(酸洗浄工程)
酸洗浄工程S5は、Al材2の表面を酸で洗浄する工程であり、この工程を行うことによって、Al材2の表面に残存するMg酸化皮膜およびAl酸化皮膜を除去する。すなわち、本実施形態では、酸洗浄工程S5を行うことによってAl材2の表面を清浄にし、後記する表面処理工程S7で処理液が均一に付着できるようにする。酸洗浄工程S5は、従来公知の装置で行うことができるが、酸洗浄条件は、後記する表面処理工程S7後の表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比が0.3未満となるように設定する。つまり、酸洗浄条件は、表面処理工程S7後の表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比に応じて適宜設定する。前記[Mg]/[Al]比が3.0以上となる場合は、酸洗浄条件を強くして前記[Mg]/[Al]比が3.0未満となるように調整する。酸洗浄条件を強くする手法としては、例えば、酸洗浄時間を長くしたり、温度を高くしたり、酸洗浄に用いる溶液のpHをより低くしたり、酸洗浄に用いる溶液の濃度を高くしたりすることが挙げられる。これらの手法はいずれか1つを採用することができ、また、2つ以上を同時に採用することもできる。酸洗浄条件は、当業者であれば表面処理工程S7後の表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比と、これらの手法とに基づいて容易に設定することができる。
(第2水洗工程)
第2水洗工程S6は、Al材2の表面を水洗することによって、Al材2の表面に残存する酸を除去する工程である。第2水洗工程S6は、従来公知の装置および条件で行うことができる。
(表面処理工程)
表面処理工程S7は、酸洗浄を行ったAl材2の表面をTiおよびZrの少なくとも1種を含有する処理液で処理する工程である。当該処理液としては、例えば、フッ化チタン化合物および/またはフッ化ジルコニウム化合物を含有するものを好適に用いることができる。表面処理工程S7は、塗布、浸漬、噴霧などの任意の方法でAl材2と処理液とを接触させてTi/Zr皮膜3を形成する。
ここで、フッ化チタン化合物としては、例えば、KTiF、(NHTiFなどのフルオロチタネート、HTiFなどのフルオロチタネート酸、TiF(フッ化チタン)などが挙げられる。
フッ化ジルコニウム化合物としては、例えば、KZrF、(NHZrFなどのフルオロジルコネート、HZrFなどのフルオロジルコネート酸、ZrF(フッ化ジルコニウム)などが挙げられる。
なお、表面処理工程S7では、表面処理工程S7後の表面処理材1の最表面の[Mg]/[Al]比が3.0未満となるように前記処理液による処理を行う。前記[Mg]/[Al]比が3.0以上となる場合、処理液中のTiやZrの濃度を高くしたり、Al材2と処理液との接触時間を長くしたりすることによって、前記[Mg]/[Al]比を3.0未満にすることが可能である。なお、処理液中のTiやZrの濃度は従来公知の条件で適宜設定することができる。
(第1乾燥工程)
第1乾燥工程S8は、表面処理工程S7においてAl材2の表面に形成したTi/Zr皮膜3を乾燥する工程である。
第1乾燥工程S8における乾燥処理は、Ti/Zr皮膜3に対して乾燥処理を施すことができればよく、Al材2を加熱する処理(処理温度:例えば、50〜150℃、処理時間:例えば、10〜60秒)であってもよいし、Ti/Zr皮膜3に対して熱風や乾燥空気を吹き付ける処理であってもよい。
(第3水洗工程)
第3水洗工程S9は、Al材2の表面に形成されたTi/Zr皮膜3を水洗することによって、Ti/Zr皮膜3の表面に残存する処理液を除去する工程である。第3水洗工程S9は、シャワーや浸漬槽などの従来公知の水洗装置および水洗条件で行うことができる。
(第2乾燥工程)
第2乾燥工程S10は、水洗されたTi/Zr皮膜3を乾燥する工程である。第2乾燥工程S10は、従来公知の乾燥装置や乾燥条件で行うことができる。
以上に説明した本実施形態に係る表面処理材1およびその製造方法によれば、Ti/Zr皮膜3が形成された表面における前記[Mg]/[Al]比が0.3未満となる。つまり、本実施形態に係る表面処理材1によれば、Al材2の表面にTi/Zr皮膜3を均一に形成することができ、Al材2の酸化皮膜が水和され難い。そのため、本実施形態によれば、表面処理材1の接着耐久性が優れたものとなる。また、本実施形態に係る表面処理材1の製造方法は、そのような表面処理材1を製造することができる。
また、本実施形態に係る表面処理材1は、接着耐久性に優れているので、自動車、船舶、航空機などの輸送用機器、特に自動車用パネルに好適に使用することができる。
次に、本発明の効果を確認した確認実験について説明する。
まず、JIS規定の5182合金を用いて、厚さ1.0mmのAl板を製造した。このAl板に対して大気中で焼鈍を行い、常法によりアルカリ脱脂と、水洗と、酸洗浄とを順次行った後、水洗した。なお、酸洗浄は次の条件で行った。
(酸洗浄の条件)
実施例1:15%硝酸(60℃)で3秒洗浄した。
実施例2:15%硝酸(60℃)で1秒洗浄した。
比較例1:酸洗浄を行わなかった。
水洗したAl板に温度50℃の処理液を噴霧した。次いで、処理液の噴霧を停止して板表面に形成されたTi/Zr皮膜を乾燥させた後、水洗および乾燥を行い、実施例1、2および比較例1に係る表面処理材を製造した。
なお、処理液としては、フッ化チタン化合物としてフルオロチタネート酸、フッ化ジルコニウム化合物としてフルオロジルコネート酸を含有するpH3の水溶液を使用した。
製造した実施例1、2および比較例1に係る表面処理材について、Ti/Zr皮膜を形成した表面に対して、最表面のMgの元素濃度(原子%濃度)および最表面のAlの元素濃度(原子%濃度)の測定を行った。これらの元素濃度の測定は次のようにして行った。
はじめに、市販のアセトンで表面処理材の表面を洗浄した。次いで、HORIBA社製マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置JY−5000RF(GD−OES)を用いて最表面のMgの原子%濃度と最表面のAlの原子%濃度とを測定し、測定したMgの原子%濃度をAlの原子%濃度で除することによって求めた。
最表面のMgの元素濃度を[Mg]とし、最表面のAlの元素濃度を[Al]とした場合の[Mg]/[Al]比は、実施例1が0.05であり、実施例2が0.10であり、比較例1が0.30であった。
また、エネルギー分散型X線分析装置を取り付けた走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)を用いて、実施例1、2および比較例1に係る表面処理材のTi/Zr皮膜の観察および元素分析を行った。なお、SEMは、日立ハイテクノロジーズ社製電界放射型操作電子顕微鏡(FE−SEM)S−4800を用い、EDXは、Bruker AXS社製QUANTAX Flat QUAD System Xflash 5060FQを用いた。図3A〜図5DのSEM像は加速電圧3.0kVで撮像し、図6A、図7A、図8AのSEM像は加速電圧6.0kVで撮像した。また、後述する図6以降のEDXマッピングは加速電圧6.0kVで行った。
なお、図3A〜図3Dは、実施例1に係る表面処理材をSEMで撮像したSEM像である。図3Bは図3Aの一部を拡大したSEM像であり、図3Cは図3Bの一部を拡大したSEM像であり、図3Dは図3Cの一部を拡大したSEM像である。
図4A〜図4Dは、実施例2に係る表面処理材をSEMで撮像したSEM像である。図4Bは図4Aの一部を拡大したSEM像であり、図4Cは図4Bの一部を拡大したSEM像であり、図4Dは図4Cの一部を拡大したSEM像である。
図5A〜図5Dは、比較例1に係る表面処理材をSEMで撮像したSEM像である。図5Bは図5Aの一部を拡大したSEM像であり、図5Cは図5Bの一部を拡大したSEM像であり、図5Dは図5Cの一部を拡大したSEM像である。
図3A〜図5Dの各SEM像の右下にそれぞれ目盛りと寸法を示している。
図3A〜図5Dにおいて、色の濃い部分がAl板の表面に形成されたTi/Zr皮膜である。
図3A〜図3Dから明らかなように、実施例1のTi/Zr皮膜は、当該皮膜を形成する前の酸洗浄の条件が好ましかったので、Al板の表面のMg酸化皮膜が十分に除去されていた(前記したように、[Mg]/[Al]比が0.05であった)。そのため、実施例1は、Ti/Zr皮膜が均一に形成(分布)されていた。
また、図4A〜図4Dから明らかなように、実施例2のTi/Zr皮膜も当該皮膜を形成する前の酸洗浄の条件が好ましかったので、Al板の表面のMg酸化皮膜が比較的良好に除去されていた(前記したように、[Mg]/[Al]比が0.10であった)。そのため、実施例2もTi/Zr皮膜が均一に形成(分布)されていた。
これに対し、図5A〜図5Dから明らかなように、比較例1のTi/Zr皮膜は、当該皮膜を形成する前の酸洗浄の条件が好ましくなかったので、Al板の表面のMg酸化皮膜が十分に除去されていなかった(前記したように、[Mg]/[Al]比が0.30であった)。そのため、比較例1は、Ti/Zr皮膜が均一に形成(分布)されていなかった。
また、SEM−EDXによる実施例1、2および比較例1に係る表面処理材のTi/Zr皮膜の元素分析の結果を図6A〜図8Fに示す。なお、図6A〜図8Fは、表面処理材に形成されているTi/Zr皮膜に対して垂直方向から分析したものである(つまり、Ti/Zr皮膜の平面を分析したものである)。図6A〜図8F中、右下のスケールバーはいずれも600nmを示している。
図6Aは、実施例1に係る表面処理材のSEM像であり、図6B〜図6Fは、図6AのSEM像と同じ箇所におけるO、F、Mg、Al、Zrの分布状況をそれぞれ示している。
図7Aは、実施例2に係る表面処理材のSEM像であり、図7B〜図7Fは、図7AのSEM像と同じ箇所におけるO、F、Mg、Al、Zrの分布状況をそれぞれ示している。
図8Aは、比較例1に係る表面処理材のSEM像であり、図8B〜図8Fは、図8AのSEM像と同じ箇所におけるO、F、Mg、Al、Zrの分布状況をそれぞれ示している。
図6B〜図6F、図7B〜図7F、図8B〜図8F中の白色から灰色の箇所は、O、F、Mg、Al、Zrがそれぞれ分布していることを示しており、黒色の箇所はこれらが存在していないことを示している。
なお、Tiについても分析を試みたが、良い検出条件を見出すことができず、いずれも検出することができなかった。Tiは、Ti/Zr皮膜の形成条件を鑑みるに、Zrと同様に分布していると推察される。
図6B〜図6Fおよび図7B〜図7Fに示すように、実施例1、2に係る表面処理材は、所々各元素が集まって濃く検出され、点在する箇所はあるものの、偏在はしていなかった。この分析結果からも実施例1、2に係る表面処理材においてTi/Zr皮膜が均一に形成されていることが確認できる。
これに対し、図8B〜図8Fに示すように、比較例1に係る表面処理材は、O、Mg、Al、Zrが偏在していた。この分析結果からも比較例1に係る表面処理材においてTi/Zr皮膜が均一に形成されていないことが確認できる。
ここで、太田陽介、小島徹也、「アルミニウム合金の自動車用表面処理技術」、神戸製鋼技報、Vol.66、No.2、第82〜85頁(Mar.2017)に、Al材上にTi/Zr皮膜を形成すると優れた接着耐久性が得られる旨説明されている。前述したように、実施例1、2に係る表面処理材は、最表面の[Mg]/[Al]比が0.30未満であり、Ti/Zr皮膜が均一に形成されているので、前記論文の内容から、実施例1、2に係る表面処理材は、接着耐久性に優れていると結論付けることができる。
また、実施例1、2に係る表面処理材は、JIS規定の5182合金のAl板を用いて良好な結果が得られたことから、5000系のみならず、6000系のAl合金材も同等の効果が得られると推察される。延いては、この結果から、例えば、7000系のAl合金材や1000系の純Al材、Mgを含有する鋳造用Al合金で製造されたAl材、Mgを含有するダイカスト用合金で製造されたAl材など、Mgを含有するAl材であればどのようなAl材でも所定の効果が得られると推察される。
また、実施例1、2に係る表面処理材は、Ti/Zr皮膜の処理液を噴霧して処理することによって、つまり、反応型で行うことによって良好な結果を得ることができた。このことから、当該処理液を塗布して処理した場合、つまり、塗布型で行った場合も同様の効果を得ることができると推察される。
以上、本発明に係る表面処理アルミニウム材およびその製造方法について、実施形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
1 表面処理材(表面処理アルミニウム材)
2 Al材
3 Ti/Zr皮膜(皮膜)
S1 Al材製造工程
S2 熱処理工程
S3 アルカリ洗浄工程
S4 第1水洗工程
S5 酸洗浄工程
S6 第2水洗工程
S7 表面処理工程
S8 第1乾燥工程
S9 第3水洗工程
S10 第2乾燥工程

Claims (2)

  1. Mgを含有するAl材と、当該Al材の表面に形成されたTiおよびZrの少なくとも1種を含有する皮膜と、を備え、
    最表面のMgの元素濃度を[Mg]とし、最表面のAlの元素濃度を[Al]とした場合の[Mg]/[Al]比が0.3未満である
    ことを特徴とする表面処理アルミニウム材。
  2. Mgを含有するAl材の表面を酸洗浄する酸洗浄工程と、
    前記酸洗浄を行ったAl材の表面をTiおよびZrの少なくとも1種を含有する処理液で処理する表面処理工程と、を含み、
    前記酸洗浄工程は、前記表面処理工程後における最表面のMgの元素濃度を[Mg]とし、最表面のAlの元素濃度を[Al]とした場合の[Mg]/[Al]比が0.3未満となる条件で行う
    ことを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法。
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