JP2019206602A - 摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム100重量部当り、ポリアミン化合物加硫剤0.1〜5重量部、シリカ35〜75重量部、エポキシ系、グリシドキシ系、メタクロキシ系、アミノ系、メルカプト系またはイソシアネート系シランカップリング剤0.1〜10重量部および一般式 R1COO(CnH2nO)mCOR2(ここで、R1およびR2はそれぞれ独立してC1〜C14のアルキル基またはアルケニル基であり、nは2〜4の整数、mは2〜30の整数である)で表されるポリアルキレングリコールの脂肪族カルボン酸ジエステル化合物可塑剤を、可塑剤量をYとしたとき 6X-132≦Y≦31(ただし、Xはポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム中のアクリロニトリル含量であり、6X-132がマイナスの場合は0とする)の範囲でそれぞれ含有してなる摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物に関する。さらに詳しくは、従来の水素化ニトリルゴム材と同等の低温性および耐摩耗性を有しながら、耐圧縮永久歪特性を改善した摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物に関する。
例えば、自動車用クラッチのアクチュエータに使用されるパッキン材料において、耐熱性、耐摩耗性、耐油性(油圧作動の場合)、コスト等の観点から水素化ニトリルゴムが用いられる場合がある。
近年の自動車用部品の共通化の影響もあり、パッキン用材料に求められる使用温度範囲はワイドレンジ化していて、従来の水素化ニトリルゴム材では顧客の要求を満足させることができないケースがみられており、特にシール性に影響を与える高温での耐圧縮永久歪特性の改良が求められている。さらに、水素化ニトリルゴム材と同等の低温性も求められている。
また、着色の自由度の観点から、充填剤としてホワイトカーボンであるシリカを配合するケースも多くあるが、一般にはホワイトカーボンの配合は耐摩耗性を悪化させるため、パッキン材へそのままの形で配合することには困難がある。
特許文献1には、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を5〜60重量%含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム100重量部当り、充填剤を100重量部以上、200重量部未満含有させたニトリルゴム組成物が記載されており、このニトリルゴム組成物は、常態物性、耐圧縮永久歪特性および耐サワーガソリン性にすぐれ、永久伸びの小さいゴム架橋物を与えると記載されている。
ここで、充填剤としては、シリカと非補強性白色充填剤とを併用することが好ましく、その際シリカの配合量を非補強性白色充填剤の配合量よりも少ないものとすることが好ましく、シリカ:非補強性白色充填剤の配合割合は好ましくは1:37〜10:9、より好ましくは1:13〜1:4であるとされている。
実際に、その各実施例では、カルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対して、シリカが20重量部およびクレー80重量部が用いられており、圧縮永久歪値は改善されているが、低温性および耐摩耗性についての言及は全くない。
WO 2016/148055 A1 特開2008−179671号公報 特開2010−106113号公報 WO 2005/103143 A1 WO 2008/038465 A1
本発明の目的は、従来の水素化ニトリルゴム材と同等の低温性および耐摩耗性を有しながら、耐圧縮永久歪特性を改善した摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物を提供することにある。
かかる本発明の目的は、ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム100重量部当り、ポリアミン化合物加硫剤0.1〜5重量部、シリカ35〜75重量部、エポキシ系、グリシドキシ系、メタクロキシ系、アミノ系、メルカプト系またはイソシアネート系シランカップリング剤0.1〜10重量部および一般式
R1COO(CnH2nO)mCOR2
(ここで、R1およびR2はそれぞれ独立してC1〜C14のアルキル基またはアルケニル基であり、nは2〜4の整数、mは2〜30の整数である)で表されるポリアルキレングリコールの脂肪族カルボン酸ジエステル化合物可塑剤を、可塑剤量をYとしたとき
6X-132≦Y≦31
(ただし、Xはポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム中のアクリロニトリル含量であり、6X-132がマイナスの場合は0とする)の範囲でそれぞれ含有してなる摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物によって達成される。
本発明に係る摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物を加硫してなるニトリルゴムは、従来の水素化ニトリルゴム材と同等の低温性および耐摩耗性を有しながら、耐圧縮永久歪特性を改善しているので、自動車用クラッチのアクチュエータパッキン等の摺動シール部材として有効に使用される。
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、ジエン系単量体単位、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位および任意成分としてのそれ以外のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体単位を有し、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位含量が10〜60重量%、好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%、例えば34重量%で、ヨウ素価が120以下であるポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムは、例えば特許文献2〜3に記載されている。
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位は、ニトリル基を有するα,β-エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、例えばアクリロニトリル、そのα-位がクロロ基、ブロモ基であるα-ハロゲノアクリロニトリル、そのα-位がアルキル基であるメタクリロニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルが用いられる。
このα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位は、本発明ではポリアミン加硫性高飽和ニトリルゴム中20〜30重量%、好ましくは20〜25重量%とされる。
ジエン系単量体単位は、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等のC4〜C12の共役または非共役のジエン単量体、好ましくは共役ジエン単量体、より好ましくは1,3-ブタジエンから導かれる。
これらのジエン系単量体単位は、任意成分としてのエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のC2〜C12のα-オレフィン系単量体単位と共に用いることができる。
ジエン系単量体単位またはそれとα-オレフィン系単量体単位とは、ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム中20〜78.8重量%、好ましくは30〜78.7重量%、より好ましくは40〜78.4重量%とされる。これよりも少ない割合でジエン系単量体単位などが用いられると、ゴム加硫物のゴム弾性が低下するおそれがあり、一方多すぎると、耐熱性や化学的安定性が損なわれる可能性がある。
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のC1〜C10、好ましくはC2〜C6のモノアルキルエステル、C5〜C12、好ましくはC6〜C10のモノシクロアルキルエステル、C6〜C12、好ましくはC7〜C10のモノ(アルキル置換シクロアルキル)エステル等が挙げられ、より好ましくはマレイン酸、フマル酸またはシトラコン酸のモノプロピルエステルまたはモノn-ブチルエステルが挙げられ、特に好ましくはマレイン酸モノn-ブチルエステルが用いられる。
これらのα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位は、ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム中0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%とされる。これよりも少ない割合でα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位が用いられると、アミン加硫に必要なカルボキシル基が不足するようになり、加硫物の引張り応力が低下するようになり、一方これよりも多い割合で用いられると、加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物のスコーチ安定性の悪化、加硫物の耐疲労性の低下などを起こすようになる。
本発明においては、好ましくはα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位と共に、さらにそれ以外のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体単位を有するポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムが用いられ、かかる単量体単位としてはC1〜C8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位およびC2〜C8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位および前記のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルに対応するジエステル単量体単位の少なくとも一種を挙げることができる。
これらのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体単位は、ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム中30重量%以下、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは0.1〜10重量%の割合で用いられる。
これらの各単量体単位よりなるポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムとしては、そのヨウ素価が120以下、好ましくは80以下、さらに好ましくは25以下、特に好ましくは15以下のものが用いられる。水添による飽和度の低下を示すヨウ素価が、これ以上のものを用いると、加硫物の耐オゾン性が損なわれるようになる。
以上の各単量体単位、すなわちα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、ジエン系単量体単位、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位およびそれ以外のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体単位を必須の単量体単位として有し、ヨウ素価が120以下であるポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム、さらに他のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体単位を共重合させないものも、実際には市販品をそのまま用いることができる。例えば、前者の4元系共重合体よりなるポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムとしては、日本ゼオン製品Zetpol 3710、Zetpol 3610等が、また後者の3元系共重合体よりなるポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムとしては、同社製品Zetpol 2510等がそのまま用いられる。
これらのポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムは、特許文献4に記載される如きポリアミン化合物加硫剤によって加硫される。多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、そのカーバメート、ベンゾエートまたはシンナムアルデヒド付加物、ジアミノ変性シロキサン等の脂肪族ジアミン、4,4′-メチレンビスシクロヘキシルアミンまたはそのシンナムアルデヒド付加物、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン、4,4′-メチレンジアニリン、p,p′-エチレンジアニリン、m-またはp-フェニレンジアミン、3,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ジアミノジフェニルスルホン、4,4′-(m-またはp-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4′-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェノール、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミンが挙げられ、好ましくは芳香族ジアミン、さらに好ましくはp-位置換芳香族ジアミンが用いられる。これらの多価アミン化合物加硫剤は、4元系または3元系ポリマー100重量部当り約0.1〜5重量部、好ましくは約0.2〜4重量部の割合で用いられ、これよりも少ない割合で用いられると加硫が不十分となり、十分な耐圧縮永久歪特性が得られない。
4元系または3元系ポリマーの耐圧縮永久歪特性を改善するために、ジアミン化合物加硫剤と共に1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7(塩)または1,5-ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン(塩)加硫促進剤を併用する方法、さらにこの加硫系に加えてメルカプトベンツイミダゾール類を併用する方法、芳香族ジアミン化合物加硫剤とグアニジン化合物加硫助剤を併用する方法、さらにこの加硫系にベンゾチアゾリルスルフェンアミド系化合物加硫促進剤を併用する方法なども適宜採用される。
4元系または3元系ポリマーには、耐寒性の観点から、可塑剤として一般式
R1COO(CnH2nO)mCOR2
R1、R2:それぞれ独立してC1〜C14のアルキル基またはアルケニル基
n:2〜4の整数
m:2〜30の整数
で表わされるポリアルキレングリコールの脂肪族カルボン酸ジエステル化合物が添加される。
かかるポリアルキレングリコールの脂肪族カルボン酸ジエステル化合物は、特許文献5に記載されており、次のような化合物が例示されている。化合物名の後には、それに対応する市販品商品名がカッコ書きされている。なお、ポリエチレングリコールはPEGと、ポリプロピレングリコールはPPGと、またポリテトラメチレングリコールはPTMGと、それぞれ略記されている。
PEG(MW200)ジヘプタノエート
PEG(MW300)ジ-2-エチルヘキサノエート(アデカ製品RS700)
PEG(MW600)ジ-2-エチルヘキサノエート(同社製品RS735)
PEG(MW1000)ジデカノエート
PEG(MW300)ジデカノエート
PEG(MW600)ヘプタノエート/ドデカノエート(等量混合物)
PPG(MW400)ジヘプタノエート
PTMG(MW600)ジ-2-エチルヘキサノエート
PEG/PPG等量混合物(MW600)ジヘプタノエート
特許文献5には、ポリアルキレングリコールの脂肪族カルボン酸ジエステル化合物は、これをスルホン酸アミド化合物の金属塩と共に結晶化促進剤としてポリエステル樹脂に配合して用いると記載されている。
ポリアルキレングリコールの脂肪族カルボン酸ジエステル化合物は、4元系または3元系ポリマー 100重量部当り0〜31重量部、好ましくは0〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部の割合で用いられる。これ以上の使用割合では、低温特性は改善されるものの、耐摩耗性(および耐圧縮永久歪特性)を悪化させる。
ここで、ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムのAN含量をXとした場合、可塑剤量Yは、0〜31重量部でかつ後記各実施例と比較例のデーターから、
6X-132≦Y≦31 (ただし、6X-132がマイナスの場合は0とする)
の範囲で設定される。可塑剤量がこれより多い範囲で用いられると摩耗量あるいはそれと圧縮永久歪の値が増加するようになる。
シリカとしては、ハロゲン化けい素または有機けい素化合物の熱分解法やけい砂を加熱還元し、気化したSiOを空気酸化する方法などで製造される乾式法ホワイトカーボン、けい酸ナトリウムの熱分解法などで製造される湿式法ホワイトカーボンなどであって、非晶質シリカを用いることができ、好ましくは粒子径0.01〜0.1μmのものが用いられる。シリカの粒子径がこれより大きいと、耐摩耗性が悪化し、一方シリカの粒子径がこれより小さいと、シリカをゴムに分散させる際に粒子が凝集して大きくなり、やはり耐摩耗性が悪化するようになる。また、その比表面積は約20〜300m2/g、好ましくは約50〜250m2/g程度のものが一般に用いられる。ホワイトカーボンは、その価格、取扱性および耐摩耗性の良さから、一般的に用いられているカーボンブラックと比べて耐摩耗性に劣るものの、接着剤との接着性を向上させ、また高温・高面圧でのゴムのフローを防止する。かかるシリカとしては、市販品、例えば東ソー・シリカ製品Nipsil ERなどがそのまま用いられる。
シリカは、水素化ニトリルゴム100重量部当り、35〜75重量部、好ましくは40〜65重量部の割合で用いられる。シリカがこれより少ない割合で用いられると、摩擦・摩耗時にゴム層の剥離が発生するようになり、一方これより多い割合で用いられると、ゴム硬度が高くなり、またゴム弾性も失われるようになる。
ここでシリカは、その表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向にあり、そのためゴム中へのシリカ粒子の分散を良くするためには、混練時間を長くすることが必要である。また、シリカ表面は、そのシラノール基の特性から親水性であり、一方ゴムは親油性であることから、お互いに反発し、長時間放置したゴムコンパウンドは、溶剤への溶解性が低下し、シリカの凝集を発生させる。その結果、耐摩耗性低下の原因となってしまうことがある。
そのため、かかるシリカの凝集を防止すべく、好ましくはシリカ混練時に特定のシランカップリング剤が配合される。シリカ表面はシランカップリング剤で処理され、その凝集が防止される。一般に、ゴム業界で使用されているシランカップリング剤XSi(OR)3は、シリカなどの無機材と反応するアルコキシ基とゴムなどの有機材と反応する官能基からなり、シリカ表面のシラノール基とシランカップリング剤のアルコキシ基の加水分解で生じたシラノール基との脱水縮合反応、すなわちシリカとシランカップリング剤とのカップリング反応により、シリカ粒子表面のシラノール基を減少させ、ゴム中の分散を改良するとともに、シランカップリング剤の他方の官能基とゴム分子とのゲル化反応により、シランカップリング剤とゴム分子とが化学的結合して補強構造をつくるものとされている。
シランカップリング剤としては、エポキシ系、グリシドキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、メルカプト系、イソシアネート系のもの、例えばβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。ビニル系のシランカップリング剤は、圧縮永久歪値に劣り、摺動シール部材用としては不適である。
これらのシランカップリング剤は、水素化ニトリルゴム100重量部当り0.1〜10.0重量部、好ましくは1.0〜3.0重量部の割合で用いられる。シランカップリング剤がこれより少ない割合で用いられると、シリカの凝集があり、耐摩耗性が損なわれる場合があり、一方これより多い割合で用いられると、ゴムの架橋密度が上がり、シール性の悪化、熱老化後の屈曲により割れが発生し、熱劣化後の耐摩耗性が悪化するようになる。また、機械的強度の低下もみられるようになる。
摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物の調製は、以上の各成分に加え、水素化ニトリルゴムポリマーの場合に普通に採用される他の配合剤、例えばカーボンブラック等のシリカ以外の補強剤または充填剤、潤滑剤、加工助剤等を適宜添加し、密閉式混練機、ロール等を用いて混練することによって行われ、それのポリアミン化合物による加硫は、ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物の加硫条件に従って、約100〜200℃、好ましくは約130〜200℃、さらに好ましくは約150〜200℃で、約30秒間〜5時間、好ましくは約3〜10分間程度のプレス加硫および必要に応じて行われる約150〜200℃、約0.5〜24時間のオーブン加硫(二次加硫)によって行われる。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例1
カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム 100重量部
(日本ゼオン製品Zetpol 3710;AN含量23.6重量%)
シリカ(東ソー・シリカ製品E74P) 50 〃
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 1 〃
(信越化学工業製品KBE-903)
ポリエーテルエステル系可塑剤(アデカ製品RS700) 15 〃
ポリアミン系加硫剤(デュポン製品Diak No.1、 2.7 〃
ヘキサメチレンジアミンカルバメート)
加硫促進剤(Lanxess社製品XLA-60、有効成分 4 〃
1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン)
加工助剤(東邦化学製品フォスファノールRL210) 1 〃
以上の各成分をニーダおよびオープンロールで混練し、混練物を170℃、20分間一次加硫した後、174℃、4時間オーブン加硫(二次加硫)した。
得られた加硫物について、次の各項目の測定および評価を行った。
耐摩耗性:JIS K6264準拠、テーバー摩耗試験
試験温度 室温
砥石 H-18
荷重 9.8N
回転速度 60rpm
試験回数 1000回転(予備ずり1000回転)
(評価) ◎:150mm3未満
○:150mm3以上、200mm3未満
×:200mm3以上
圧縮永久歪:JIS K6262準拠、圧縮永久歪試験
試験片 JIS大型試験片(29mm径×12.5mm)
圧縮率 25%
試験温度 150℃
試験時間 1000時間
(評価) ◎:35%未満
○:35%以上、45%未満
×:45%以上
低温性:JIS K6261準拠、TR試験
(評価) ◎:TR-10値 -35℃未満
○:TR-10値 -35℃以上、-30℃未満
×:TR-10値 -30℃以上
実施例2
実施例1において、ポリエーテルエステル系可塑剤量が30重量部に変更された。
実施例3
実施例1において、シリカ量が65重量部に変更された。
実施例4
実施例1において、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムとして、Zetpol 3710の代りに日本ゼオン製品Zetpol 3610(AN含量20.5重量%)が同量(100重量部)用いられ、ポリエーテルエステル系可塑剤量が10重量部に変更された。
実施例5
実施例4において、ポリエーテルエステル系可塑剤が用いられなかった。
実施例6
実施例5において、シリカ量が40重量部に変更された。
実施例7
実施例1において、γ-アミノプロピルトリエトキシシランの代りに、同量(15重量部)のγ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製品KBE-9007)が用いられた。
実施例8
実施例1において、γ-アミノプロピルトリエトキシシランの代りに、同量(15重量部)のγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製品KBE-403)が用いられた。
実施例9
実施例1において、γ-アミノプロピルトリエトキシシランの代りに、同量(15重量部)のγ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製品KBE-503)が用いられた。
実施例10
実施例1において、γ-アミノプロピルトリエトキシシランの代りに、同量(15重量部)のγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業製品KBM-803)が用いられた。
実施例11
実施例4において、ポリエーテルエステル系可塑剤量が30重量部に、シリカ量が70重量部にそれぞれ変更された。
実施例12
実施例1において、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムとして、Zetpol 3710 80重量部および日本ゼオン製品Zetpol 2510(AN含量35.2重量%)20重量部のブレンド物(AN含量25.92重量%)が用いられ、ポリエーテルエステル系可塑剤量が25重量部に変更された。
比較例1
実施例1において、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムの代りに、カルボキシル基非含有水素化ニトリルゴム(日本ゼオン製品Zetpol 3300、AN含量23.6重量%)が同量(100重量部)用いられ、またポリアミン加硫系の代りにパーオキサイド架橋系(日本油脂製品パーブチルP 4重量部、三菱レイヨン製品アクリルエステルTMP 2重量部)が用いられ、ポリエーテルエステル系可塑剤が用いられなかった。
比較例2
比較例1において、シリカ量が35重量部に変更された。
比較例3
比較例1において、さらにポリエーテルエステル系可塑剤量が35重量部用いられた。
比較例4
実施例1において、ポリエーテルエステル系可塑剤量が35重量部に、シリカ量が70重量部にそれぞれ変更された。
比較例5
実施例4において、ポリエーテルエステル系可塑剤量が35重量部に、シリカ量が70重量部にそれぞれ変更された。
比較例6
実施例1において、ポリエーテルエステル系可塑剤量が5重量部に変更された。
比較例7
実施例12において、ポリエーテルエステル系可塑剤量が15重量部に、シリカ量が40重量部にそれぞれ変更された。
比較例8
実施例1において、γ-アミノプロピルトリエトキシシランの代りに、同量(15重量部)のビニルトリエトキシシラン(信越化学工業製品KBE-1003)が用いられた。
比較例9
実施例1において、シランカップリング剤が用いられなかった。
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。


耐摩耗性 圧縮永久歪 低温性
摩耗量(mm 3 ) 評 価 CS(%) 評 価 TR-10(℃) 評 価
実施例1 133 ◎ 31 ◎ -32 ○
〃 2 198 ○ 41 ○ -36 ◎
〃 3 191 ○ 42 ○ -36 ◎
〃 4 116 ◎ 28 ◎ -36 ◎
〃 5 82 ◎ 22 ◎ -32 ○
〃 6 88 ◎ 22 ◎ -32 ○
〃 7 137 ◎ 31 ◎ -32 ○
〃 8 140 ◎ 32 ◎ -32 ○
〃 9 165 ○ 33 ◎ -33 ○
〃 10 190 ○ 33 ◎ -33 ○
〃 11 198 ○ 41 ○ -41 ◎
〃 12 180 ○ 39 ○ -31 ○
比較例1 86 ◎ 24 ◎ -27 ×
〃 2 88 ◎ 23 ◎ -27 ×
〃 3 238 × 45 × -37 ◎
〃 4 231 × 46 × -37 ◎
〃 5 217 × 44 ○ -42 ◎
〃 6 103 ◎ 26 ◎ -28 ×
〃 7 142 ◎ 32 ◎ -28 ×
〃 8 185 ○ 49 × -37 ◎
〃 9 223 × 46 × -33 ○
この結果から、次のようなことがいえる。
(1) シリカは、35〜75重量部の範囲で用いると、適度な機械的強度、混練加工性、成形加工性を確保しながら、耐摩耗性、圧縮永久歪、低温性を確保する(各実施例)。
(2) ポリアミン加硫系の代りにパーオキサイド架橋系を用いると、低温性が損なわれる(比較例1〜3)。
(3) エステル系可塑剤は、0〜31重量部の範囲で用いられ、これより多い割合で用いられると摩耗量(および圧縮永久歪)が増加し、摺動シール部材用の水素化ニトリルゴム組成物には適さなくなる(比較例4〜5)。
(4) 可塑剤量Yが、水素化ニトリルゴム中のアクリロニトリル含量Xに対して6X-132の値を満足させない範囲で用いられると低温性が劣るようになる(比較例6〜7)。
(5) シランカップリング剤としては、エポキシ系、グリシドキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、メルカプト系、イソシアネート系のものに限定され、ビニル系のものは圧縮永久歪値に劣り、摺動シール部材用としては不適である(比較例8)。

Claims (3)

  1. ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム100重量部当り、ポリアミン化合物加硫剤0.1〜5重量部、シリカ35〜75重量部、エポキシ系、グリシドキシ系、メタクロキシ系、アミノ系、メルカプト系またはイソシアネート系シランカップリング剤0.1〜10重量部および一般式
    R1COO(CnH2nO)mCOR2
    (ここで、R1およびR2はそれぞれ独立してC1〜C14のアルキル基またはアルケニル基であり、nは2〜4の整数、mは2〜30の整数である)で表されるポリアルキレングリコールの脂肪族カルボン酸ジエステル化合物可塑剤を、可塑剤量をYとしたとき
    6X-132≦Y≦31
    (ただし、Xはポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム中のアクリロニトリル含量であり、6X-132がマイナスの場合は0とする)の範囲でそれぞれ含有してなる摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物。
  2. 自動車用クラッチのアクチュエータに使用されるパッキン材料の加硫成形材料として用いられる請求項1記載の摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物。
  3. 請求項2記載の摺動シール部材用ポリアミン加硫性カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム組成物を加硫成形して得られた自動車用クラッチのアクチュエータに使用されるパッキン材料。
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