JP2020008044A - 静圧形の非接触形メカニカルシール - Google Patents

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Abstract

【課題】静止密封環を保持する弾性シールリング部材の被密封ガスとの接触による劣化を防止して、良好なメカニカルシール機能を発揮させるようにする。【解決手段】弾性シールリング部材を介して静止密封環を保持するシールケース3のアダプタリング33aと回転密封環8aとの対向周面部間に、両密封環6a,8aの密封端面106a,108aの外周側領域であるシールガス流出領域26aと回転密封環8aの背面側領域である機内ガス領域Aとを連通する環状の通路であって、断面形状における通路幅tが1.5mm以下であるシールガス通路路27aを形成して、密封端面106a,108a間からシールガス流出領域26aに流出したシールガス10aがシールガス通路27aから機内ガス領域Aへと流入し続けるようにすることにより、機内ガス領域Aの被密封ガスのシールガス流出領域26aへの侵入を防止する。【選択図】図2

Description

本発明は、ガスを扱う各種産業用コンプレッサ、ブロワ等の回転機器に軸封手段として装備される静圧形の非接触形メカニカルシールに関するものである。
従来の静圧形の非接触形メカニカルシールとしては、特許文献1に開示される如く、シールケースの内周部に第1及び第2弾性シールリング部材を介して軸線方向移動可能に保持された静止密封環と、静止密封環の機内ガス領域側に配して、シールケースを洞貫する回転軸に固定された回転密封環と、シールケースと静止密封環との対向周面部間に形成された環状の空間であって、前記第1及び第2弾性シールリング部材でシールされた接続空間と、シールケースに形成されて、機内ガス領域の圧力より高圧のシールガスを接続空間に供給するケース側シールガス供給路と、静止密封環に形成されて、シールガスを接続空間から両密封環の対向端面である密封端面間に供給する密封環側シールガス供給路とを具備して、両密封環の密封端面を当該密封端面間が非接触に保持された状態に相対回転させることにより、機内ガス領域を遮蔽シールするように構成されたもの(以下「従来メカニカルシール」という)が周知である。
而して、かかる従来メカニカルシールにあっては、両密封環の密封端面間に供給されたシールガスが当該密封端面間からその外周側領域である機内ガス領域とその内周側領域である機外大気領域とに流出することによって、機内ガス領域のガス(被密封ガス)が機外大気領域に漏洩することがなく、機内ガス領域を確実に遮蔽することができる。したがって、従来メカニカルシールは、被密封ガスが機外大気領域に漏洩することが好ましくないガスである場合にも、軸封手段として好適に使用することができる。
特開平4−25672号公報
しかし、従来メカニカルシールにあっては、第1及び第2弾性シールリング部材としてゴム製のOリング等が使用されているため、被密封ガスが当該弾性シールリング部材の構成材の耐寒温度範囲を下回るような低温ガス、当該構成材の耐熱温度範囲を上回るような高温ガス又は当該構成材を腐食させる虞れのある腐食性ガスである場合には、シールケースと静止密封環との対向周面間に装填される第1及び第2弾性シールリング部材のうち、機内ガス領域側(回転密封環側)に配置された第1弾性シールリング部材が劣化して、そのシール機能が低下したり、静止密封環の追従性が低下、不良となって、良好なメカニカルシール機能を発揮できないといった問題があった。
すなわち、静止密封環はシールケースに対して軸線方向に相対運動するものであるから、構造上、第1弾性シールリング部材の機内ガス領域方向への軸線移動を阻止しているシールケース部分と静止密封環との対向周面間には微小隙間が存在し、この微小隙間により第1弾性シールリング部材の装填空間と両密封環の外周領域であって密封端面間からシールガスが流出するシールガス流出領域とが連通されることになる。一方、シールガス流出領域においては、両密封環の密封端面間からシールガスが流出しているが、被密封ガスが充満しており、被密封ガス雰囲気に支配されている。
このため、機外大気領域側に配置されている第2弾性シールリング部材については、これに接触するシールガスが一般に常温の窒素ガス等の不活性ガスであることから、シールガスとの接触により劣化される虞れはないが、機内ガス領域側に配置されている第1弾性シールリング部材については、シールガス流出領域から前記微小隙間を介して第1弾性シールリング部材の設置空間へと被密封ガスが流入するため、接続空間を通過するシールガスのみならず機内ガス領域の被密封ガスが接触することになる。
したがって、被密封ガスが第1弾性シールリング部材を劣化させるような上記した低温ガス、高温ガス又は腐食性ガスである場合には、被密封ガスとの接触により第1弾性シールリング部材が劣化することなる。しかも、この劣化は第1弾性シールリング部材が静止密封環との接触部において静止密封環の追従運動により相対運動することによって助長されることになる。その結果、第1弾性シールリング部材のシール機能及び静止密封環の保持機能が低下、喪失して、接続空間からのシールガス漏れによるシールガスの密封端面間への適正な供給が妨げられたり、静止密封環の追従性が妨げられて、良好なメカニカルシール機能を発揮することができない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、被密封ガスが前記第1弾性シールリング部材を劣化させる虞れのある性状のガス(低温ガス、高温ガス、腐食性ガス)である場合にも、被密封ガスの接触による当該第1弾性シールリング部材の劣化を確実に防止して、良好なメカニカルシール機能を発揮しうる静圧形の非接触形メカニカルシールを提供することを目的とするものである。
本発明は、シールケースの内周部に第1及び第2弾性シールリング部材を介して軸線方向移動可能に保持された静止密封環と、静止密封環の被密封ガス領域側に配して、シールケースを洞貫する回転軸に固定された回転密封環と、シールケースと静止密封環との対向周面部間に形成された環状の空間であって、前記第1及び第2環状シールリング部材でシールされた接続空間と、シールケースに形成されて、被密封ガス領域の圧力より高圧のシールガスを接続空間に供給するケース側シールガス供給路と、静止密封環に形成されて、シールガスを接続空間から両密封環の対向端面である密封端面間に供給する密封環側シールガス供給路と、を具備して、両密封環の密封端面間をこれに供給されたシールガスにより非接触状態に保持するように構成された静圧形の非接触形メカニカルシールであって、シールガスとして前記弾性シールリング部材を劣化させない性状のガスが使用されており、シールケースと回転密封環との対向周面部間に、両密封環の密封端面の外周領域であるシールガス流出領域と回転密封環の背面側の被密封ガス領域とを連通する環状の通路であって、回転軸の軸線を通過する断面形状における通路幅が1.5mm以下であるシールガス通路を形成してあることを特徴とする静圧形の非接触形メカニカルシール。
本発明の静圧形の非接触形メカニカルシールの好ましい実施の形態にあって、前記シールケースは、ケース本体とその内周部に固定されて静止密封環を保持するアダプタリングとを具備する金属製のものであり、前記ケース側シールガス供給路が、ケース本体に形成された1本の本体側通路と、アダプタリングにその周方向に等間隔を隔てて形成されて、本体側通路と前記接続空間とを連通する複数本のアダプタ側通路とからなることが好ましい。この場合において、前記シールガス通路が、前記アダプタリングと回転密封環との対向周面部間に形成されていることが好ましい。
また、本発明の静圧形の非接触形メカニカルシールの好ましい実施の形態にあって、前記被密封ガス領域の被密封ガスが低温ガスである場合においては、前記シールガスが被密封ガスと同質で当該被密封ガスより高温のガスであることが好ましい。また、前記被密封ガス領域の被密封ガスが高温ガスである場合においては、前記シールガスが被密封ガスと同質で当該被密封ガスより低温のガスであることが好ましい。被密封ガスと同質のシールガスとしては、被密封ガス領域の被密封ガスの一部を取り出して加圧したものを使用することが好ましい。また、前記各環状シールリング部材は、環状の本体部と本体部から軸線方向に突出してシールケースと静止密封環との対向周面に弾性的に押圧接触する筒状の内外周リップ部とからなる、断面コの字形状、U字形状又はV字形状をなすポリテトラフルオロエチレン製のもの又はポリテトラフルオロエチレンを主成分とする複合弾性材製のものであることが好ましい。
本発明の静圧形の非接触形メカニカルシールにあっては、シールガス流出領域と回転密封環の背面領域である被密封ガス領域とが、通路幅が1.5mm以下の狭いシールガス通路のみを介して連通されているから、両密封環の密封端面間からシールガス流出領域に流出したシールガスが、シールガス通路を高速流動して被密封ガス領域に流入し続ける。このため、被密封ガス領域の被密封ガスがシールガス通路内を逆流して、シールガス流出領域に侵入することがない。その結果、ケース側シールガス供給路と密封環側シールガス供給路とを接続する接続空間に装填された第1及び第2弾性シールリング部材のうち、被密封ガス領域側の第1弾性シールリング部材には、第2弾性シールリング部材と同様に当該弾性部材を劣化させない性状のシールガスのみが接触することなり、被密封ガスが当該弾性シールリング部材を劣化させる虞れのある低温ガス、高温ガス又は腐食性ガスである場合にも、シールガスとして弾性シールリング部材を劣化させる虞れのないガスを使用することにより、第2弾性シールリング部材は勿論、第1弾性シールリング部材も劣化することがなく、第1及び第2弾性シールリング部材による上記接続空間のシール機能及び静止密封環の追従性を確保する保持機能が低下、喪失することがない。したがって、本発明の静圧形の非接触形メカニカルシールによれば、被密封ガス領域の被密封ガスが上記した弾性シールリング部材を劣化させる虞れのあるガスである場合にも、メカニカルシール機能を良好に発揮させることができ、被密封ガス領域を確実に遮蔽することができる。
図1は本発明に係る静圧形の非接触形メカニカルシールの一例を示す断面図である。 図2は図1の要部を拡大して示す詳細図である。 図3は図2と異なる図1の要部を拡大して示す詳細図である。 図4は当該非接触形メカニカルシールの構成部材である弾性シールリング部材の断面図である。 図5は本発明に係る静圧形の非接触形メカニカルシールの変形例を示す図1相当の断面図である。 図6は本発明に係る静圧形の非接触形メカニカルシールの他の変形例を示す図1相当の断面図である。 図7は前記弾性シールリング部材の変形例を示す図4相当の断面図である。
以下、本発明に係る静圧形の非接触形メカニカルシールの構成を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明に係る静圧形の非接触形メカニカルシールを備えた軸封装置の一例を示す断面図であり、図2は図1の要部を拡大して示す詳細図であり、図3は図2と異なる図1の要部を拡大して示す詳細図であり、図4は当該非接触形メカニカルシールの構成部材である弾性シールリング部材を取り出して示す断面図である。
図1に示す軸封装置M1は、極低温ガスを扱う回転機器(例えば、LNG(液化天然ガス)、液化水素又は液化エチレン等の液化ガスの貯蔵タンクからタンク内圧力を所定圧に保持するために当該貯蔵タンク内で発生する極低温ガスであるボイルオフガスを排出するブロワや排出された当該ボイルオフガスを液化、再利用するために加圧するコンプレッサ等)において当該回転機器の軸封部ケーシング2と当該回転機器の回転軸7との間に装備されたもので、当該回転機器の内部領域である機内ガス領域Aと当該回転機器の外部領域である機外大気領域Bとの間を、機内ガス領域A側の一次シール1aと機外大気領域B側の二次シール1bとで遮蔽シールするように構成されたものであり、各シール1a,1bが本発明の静圧形の非接触形メカニカルシールで構成されている。なお、以下の説明において、前後とは図1〜図3における左右を意味し、軸線とは回転軸7の中心線をいい、軸線方向とは当該軸線に平行する方向をいうものとする。
すなわち、一次シールである本発明の静圧形の非接触形メカニカルシール(以下「第1非接触形メカニカルシール」という)1a及び二次シールである本発明の静圧形の非接触形メカニカルシール(以下「第2非接触形メカニカルシール」という)1bは、図1に示す如く、タンデム配置された同一構造をなすもので、各々、軸封部ケーシング2に取り付けられた筒状のシールケース3と、シールケース3の内周部に機内ガス領域A側(後側)の第1弾性シールリング部材4a,4b及び機外大気領域B側(前側)の第2弾性シールリング部材5a,5bを介して軸線方向移動可能に保持された静止密封環6a,6bと、静止密封環6a,6bの機内ガス領域A側(後側)に配置されて、シールケース3を洞貫する回転軸7に固定された回転密封環8a,8bと、シールケース3と静止密封環6a,6bとの対向周面間に形成された環状の空間であって、第1弾性シールリング部材4a,4bと第2弾性シールリング部材5a,5bとでシールされた接続空間9a,9bと、シールケース3に形成されて、シールガス10a,10bを接続空間9a,9bに供給するケース側シールガス供給路11a,11bと、静止密封環6a,6bに形成されて、シールガス10a,10bを接続空間9a,9bから両密封環6a,6bの対向端面である静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bと回転密封環8a,8bの密封端面108a,108bとの間に供給する密封環側シールガス供給路12a,12bと、シールケース3と静止密封環6a,6bとの間に装填されて、静止密封環6a,6bを回転密封環8a,8bへと押圧附勢するスプリング部材13a,13bとを具備する。
シールケース3は、図1に示す如く、軸封部ケーシング2に取り付けられた筒状のケース本体30,31,32と、その内周部に第3弾性シールリング部材14a,14b及び第4弾性シールリング部材15a,15bを介して取り付けられた第1及び第2アダプタリング33a,33bと、ケース本体30,31の内周部及び各アダプタリング33a,33bの機外大気領域B側(前側)の端部に取り付けられた第1及び第2リテーナリング34a,34bとからなる金属製(SUS316等)の筒状構造体である。
シールケース3のケース本体は、軸線方向に3個の部分30,31,32に分割されており、軸封部ケーシング2に取り付けられた第1ケース本体30とこれに取り付けられた第2ケース本体31とこれに取り付けられた第3ケース本体32とからなる。
各アダプタリング33a,33bは、図1に示す如く、シールケース3のケース本体30,31の内周部に第3弾性シールリング部材14a,14b及び第4弾性シールリング部材15a,15bを介在させた状態で嵌合、固定された本体部分133a,133bと、本体部分133a,133bから機内ガス領域A方向(後方)に連なって、第1弾性シールリング部材14a,14bの機内ガス領域A方向(後方)への軸線方向移動を阻止すべく当該弾性シールリング部材14a,14bを受け止める第1シールリング部材受け止め部233a,233bと、第1シールリング部材受け止め部233a,233bから機内ガス領域A方向(後方)に連なって、回転密封環8a,8bの背面(回転密封環8a,8bにおける密封端面108a,108bと反対側の端面(後端面))に対応する位置まで延びる第1延長部分333a,333bと、前記本体部分133a,133bから機外大気領域B方向(前方)に連なって、静止密封環6a,6bの背面(静止密封環6a,6bにおける密封端面106a,106bと反対側の端面(前端面))に対応する位置まで延びる第2延長部分433a,433bとからなる環状体である。
各アダプタリング33a,33bの第1シールリング部材受け止め部233a,233bは、図2又は図3に示す如く、その内周面が静止密封環6a,6bの外周面における密封端面106a,106bの近傍部分に近接するもので、第1弾性シールリング部材14a,14bの機内ガス領域A方向(後方)への軸線方向移動を確実に阻止すべく当該第1弾性シールリング部材14a,14bの基部17を略全面的に係止すると共に、静止密封環6a,6bに干渉することなく当該密封環6a,6bの軸線方向移動を許容すべく当該密封環6a,6bの外周面との間に環状の微小隙間25a,25bを形成している。
各リテーナリング34a,34bは、図1に示す如く、内径を静止密封環6a,6bの内径に略一致させたもので、径方向中央部位に、アダプタリング33a,33bの第2延長部分433a,433bと静止密封環6a,6bとの対向周面間に突入する環状の第2シールリング部材受け止め部134a,134bが形成されている。
各静止密封環6a,6aはカーボン、セラミックス等で構成された環状体であり、その先端面(機内ガス領域A側の端面(後端面))は軸線に直交する平滑平面である密封端面106a,106bに構成されている。各静止密封環6a,6bは、図1に示す如く、回転軸7に同心状に挿通された状態で、アダプタリング33a,33bの本体部分133a,133bの内周部に第1弾性シールリング部材4a,4b及び第2弾性シールリング部材5a,5bを介して軸線方向移動可能に嵌合、保持されている。なお、各静止密封環6a,6bは、図示していないが、当該静止密封環6a,6aに形成した係合孔にシールケース3のリテーナリング34a,34bに取り付けたドライブピンを係合させることにより、所定範囲での軸線方向移動を許容する状態でシールケース3に対する相対回転を阻止されている。
各回転密封環8a,8bは、図1に示す如く、先端面(機外大気領域B側の端面(前端面))における静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bと内外径を同一とする部分を軸線に直交する平滑平面である密封端面108a,108bに構成した環状体であって、密封端面108a,108bを静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bに直対向させた状態で、回転軸7に第5弾性シールリング部材16a,16bを介して固定されている。各回転密封環8a,8bは、金属、セラミックス、超硬合金等で構成されており、この例では、ステンレス鋼(SUS316等)等の金属で構成してある。なお、各回転密封環8a,8bの密封端面108a,108bには、図1に示す如く、炭化ケイ素等のセラミックスによる被覆膜208a,208bが形成されている。
各ケース側シールガス供給路11a,11bは、図1に示す如く、シールケース3のケース本体30,31とアダプタリング33a,33bの本体部分133a,133bとの対向周面間に形成された環状の空間であって、当該対向周面間に装填された第3弾性シールリング部材14a,14b及び第4弾性シールリング部材15a,15bによりシールされたヘッダ空間111a,111bと、シールケース3のケース本体30,31に形成されてヘッダ空間111a,111bに連通する1本の本体側通路211a,211bと、アダプタリング33a,33bの本体部分133a,133bに形成されてヘッダ空間111a,111bと前記接続空間9a,9bとを連通する複数本のアダプタ側通路311a,311bとからなる。これらのアダプタ側通路311a,311bは、同一形状をなすもので、アダプタリング33a,33bの周方向に等間隔を隔てた複数箇所においてアダプタリング33a,33bの本体部分133a,133bを径方向に直線状に貫通するものである。
各密封環側シールガス供給路12a,12bは、図1に示す如く、静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bに形成された静圧発生溝112a,112bと、静止密封環6a,6bを貫通して接続空間9a,9bと静圧発生溝112a,112bとを連通する連通路212a,212bとからなる。各静圧発生溝112a,112bは、静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bと同心の環状をなして断続又は連続する浅い凹溝であり、この例では、特許文献1の第4図に開示されたものと同様に、当該密封端面106a,106bと同心環状をなして並列する複数の円弧状凹溝(1個のみ図示)で構成されている。各連通路212a,212bは、接続空間9a,9bに連通する1本の上流側通路と、これにオリフィス312a,312bを介して接続されており、静圧発生溝112a,112bを構成する上記各円弧状凹溝に連通する複数本の下流側通路とからなる。
したがって、各非接触形メカニカルシール1a,1bにあっては、ケース側シールガス供給路11a,11bの本体側通路211a,211bに供給されたシールガス10a,10bが、ヘッダ空間111a,111bを経て複数本のアダプタ側通路311a,311bから接続空間9a,9bに供給され、接続空間9a,9bから密封環側シールガス供給路12a,12bの連通路212a,212b及びオリフィス312a,312bを経て静圧発生溝112a,112bに供給される。すなわち、シールガス10a,10bが、ケース側シールガス供給路11a,11b、接続空間9a,9b及び密封環側シールガス供給路12a,12bから静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bと回転密封環8a,8bの密封端面108a,108bとの間に供給されるようになっている。
各スプリング部材13a,13bは、周方向に等間隔を隔てて並列配置した複数個(1個のみ図示)のコイルスプリングからなり、静止密封環6a,6bとシールケース3のリテーナリング34a,34bとの間に装填されて、静止密封環6a,6bを回転密封環8a,8bへと押圧、附勢する。
各弾性シールリング部材4a,4b,5a,5b,14a,14b,15a,15b,16a,16bは同一形状且つ同一材質のもので、図4(A)に示す如く、環状の基部17と、この基部17から軸線方向に突出する筒状の内外周リップ部18,19とからなる断面略コ字状の弾性材製の環状体であり、内外周リップ部18,19間に形成される環状溝20にバネ部材21が装填されていて、同図(B)に示す如く、二つの被シール部材D,Eの対向周面d,eに内外周リップ部18,19が径方向に圧縮されて弾性的に強く接触する状態で装填することにより当該対向周面d,e間をシールする。例えば、図2又は図3に示す如く、内周リップ部18の先端内周部を一方の被シール部材である静止密封環6a,6bの外周面に弾性的に接触させると共に外周リップ部19の先端外周部を他方の被シール部材であるアダプタリング33a,33bの本体部分133a,133bの内周面に弾性的に接触させることにより、静止密封環6a,6bとアダプタリング33a,33bとの対向周面間(接続空間9a,9b)をシールする。バネ部材21は、図4(A)に示す如く、コ字状に折曲した金属製の板バネを環状にして前記内外周リップ部18,19間の環状溝20に装填させたものであり、内外周リップ部18,19をその径方向間隔が広がる方向に附勢する。
各弾性シールリング部材4a,4b,5a,5b,14a,14b,15a,15b,16a,16b(基部17及び内外周リップ部18,19)はプラスチック、ゴム等の弾性材で一体成形されるが、その構成材たる弾性材の選定はシール条件(シールガス10a,10bの性状)に応じて行われる。この例では、耐寒性、耐熱性、耐食性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はこれを主成分とする複合弾性材(PTFEに例えばガラス繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、ポリイミド樹脂等の充填材を一種以上配合してなる複合弾性材)を使用している。
第1弾性シールリング部材4a,4bと第2弾性シール部材5a,5bとは、図1に示す如く、第1弾性シールリング部材4a,4bの環状溝20,20の開口部と第2弾性シール部材5a,5bの環状溝20,20の開口部とが対向する状態で且つ第1弾性シールリング部材4a,4bの基部17,17がアダプタリング33a,33bの第1シールリング部材受け止め部233a,233bで受け止められると共に第2弾性シールリング部材5a,5bの基部17,17がリテーナリング34a,34bの第2シールリング部材受け止め部134a,134bで受け止められた状態で、シールケース3のアダプタリング33a,33bの本体部分133a,133bと静止密封環6a,6bとの対向周面間に装填されて、接続空間9a,9bをシールすると共に静止密封環6a,6bをシールケース3の内周部(アダプタリング33a,33bの内周部)にシール状態で軸線方向移動可能に保持させている。また、第3弾性シールリング部材14a,14bと第4弾性シールリング部材15a,15bとは、図1に示す如く、第3弾性シールリング部材14a,14bの環状溝20,20の開口部と第4弾性シール部材15a,15bの環状溝20,20の開口部とが対向する状態で、シールケース3のケース本体30,31とアダプタリング33a,33bの本体部分133a,133bとの対向周面間に装填されて、ケース側シールガス供給路11a,11bのヘッダ空間111a,111bをシールする。また、第5弾性シールリング部材16a,16bは、環状溝20の開口部を機内ガス領域A側(後側)に向けた状態で、回転密封環8a,8bにおける密封端面108a,108b側部分(前側部分)の内周面と回転軸7の外周面との間に装填されて、回転密封環8a,8bと回転軸7との間をシールする。
而して、第1非接触形メカニカルシール1aは、被密封ガス領域である機内ガス領域Aと両メカニカルシール1a,1b間に形成された非密封ガス領域である中間領域Cとを区画するもので、機内ガス領域A(及び中間領域C)より高圧のシールガス(以下「第1シールガス」という)10aをケース側シールガス供給路11a、接続空間9a及び密封環側シールガス供給路12aから密封端面106a,108a間に供給することによって当該密封端面106a,108a間を開く方向に作用する開力を発生させ、この開力とスプリング部材13aの附勢力によって当該密封端面106a,108aを閉じる方向に作用する閉力とをバランスさせることにより、密封端面106a,108aを非接触状態に保持させつつ両領域A,C間を区画、シールするように構成されている。静圧発生溝112aに流入した第1シールガス10aは、密封端面106a,108a間からその外周側及び内周側へと分流して、当該外周側に分流した第1シールガス10aは当該密封端面106a,108a間からその外周側領域であるシールガス流出領域26aに流出し、当該内周側に分流した第1シールガス10aは当該密封端面106a,108a間から中間領域Cに流出する。
また、第2非接触形メカニカルシール1bは、被密封ガス領域である前記中間領域Cと非密封ガス領域である機外大気領域Bとを区画、シールするもので、中間領域C(及び機外大気領域B)より高圧のシールガス(以下「第2シールガス」という)10bをケース側シールガス供給路11b、接続空間9b及び密封環側シールガス供給路12bから密封端面106b,108b間に供給することによって当該密封端面106b,108b間を開く方向に作用する開力を発生させ、この開力とスプリング部材13bの附勢力によって当該密封端面106b,108bを閉じる方向に作用する閉力とをバランスさせることにより、密封端面106b,108bを非接触状態に保持させつつ両領域B,C間を区画、シールするように構成されている。静圧発生溝112bに流入した第2シールガス10bは、密封端面106b,108b間からその外周側及び内周側へと分流して、当該外周側に分流した第2シールガス10bは当該密封端面106b,108b間からその外周側領域であるシールガス流出領域26bに流出し、当該内周側に分流した第2シールガス10bは当該密封端面106ab,108b間から機外大気領域Bに流出する。第1シールガス10aと第2シールガス10bとは中間領域Cに流出することから、中間領域Cにおいては両シールガス10a,10bが混合されるが、この混合ガス10cは、図1に示す如く、シールケース3の第2本体ケース31に形成されたドレン路22から軸封装置M1外に排出される。
各シールガス流出領域26a,26bは、図2及び図3に示す如く、アダプタリング33a,33bのシールリング部材受け止め部233aと静止密封環6a,6bとの対向周面間に形成された前記微小隙間25a,25bに連なってアダプタリング33a,33bの第1延長部分333a,333bと静止密封環6a,6bとの間に形成される小さな環状の空間である。但し、各シールガス流出領域26a,26bにおける軸線を通過する断面形状における径方向幅は、前記微小隙間25a,25bや後述するシールガス通路27a,27bの通路幅tよりも大きい。
而して、この例では、機内ガス領域Aのガス(被密封ガス)は、液化天然ガス(LNG)等の液化ガスの貯蔵タンクから排出された当該液化ガスのボイルオフガス等の極低温ガスとされている。前記弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aの構成材(PTFE又はこれを主成分とする複合弾性材)は耐寒性(耐低温性)に優れたものであるが、上記極低温ガスである被密封ガスは、当該弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aの耐寒温度範囲を下回る低温のものであり、当該弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aに接触することによりこれらを劣化させる虞れのあるものである。
また、第1非接触形メカニカルシール1Aの密封端面106a,108a間に供給される第1シールガス10aとしては、弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aの耐寒性、耐熱性、耐食性に応じて当該弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aを劣化させない性状のガス(当該弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aを劣化させる虞れのない温度のガス又は腐食性の低い若しくは腐食性を有しないガス)が使用される。この例では、第1シールガス10aとして、被密封ガスと同質で且つ極低温ガスである被密封ガスより高温のガス(弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aの劣化させる虞れのない温度且つ腐食性を有しないガス)が使用されている。この例では、図1に示す如く、機内ガス領域Aから軸封装置M1外に導いた配管23をケース側シールガス供給路11aの本体側通路211aに接続して、機内ガス領域Aの被密封ガスの一部10を当該配管23に取り出し、これを当該配管23に設けたコンプレッサ24により機内ガス領域Aの圧力より高圧に昇圧した上で、第1シールガス10aとしてケース側シールガス供給路11aに供給するようにしている。機内ガス領域Aから配管23に取り出された被密封ガスの一部10を使用する第1シールガス10aは低温ガスではあるが、弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aを劣化させない程度の温度に昇温されたものである。すなわち、機内ガス領域Aから配管23に取り出された被密封ガスの一部10は、コンプレッサ24の作用を受けることにより及び外気に接触する配管23内を通過することにより、被密封ガスより高温(弾性シールリング部材4a,5a,14a,15a,16aの構成材であるPTFE又はこれを主成分とする複合弾性材の耐寒温度範囲内の温度であって当該弾性シールリング部材を劣化させる虞れのない温度)に昇温された上で、第1シールガス10aとしてケース側シールガス供給路11aに供給される。
また、第2シールガス10bとしては、第1シールガス10aと同様に、弾性シールリング部材4b,5b,14b,15b,16bの耐寒性、耐熱性、耐食性に応じて当該弾性シールリング部材4b,5b,14b,15b,16bを劣化させない性状のガスが使用される。この例では、第2シールガス10bとして、一般的な静圧形の非接触形メカニカルシールで使用されるシールガスと同様に、機外大気領域Bに放出しても無害であり且つ中間領域Cにおいて第1シールガス10aに不活性で安全に混合できる常温又はこれに近い温度の窒素ガス等の不活性ガスを使用している。
なお、第1非接触形メカニカルシール1aの密封端面106a,108aから中間領域Cに流出した低温の第1シールガス10aは、常温又はこれに近い温度の第2シールガス10bと混合することによって希釈され、ある程度昇温された混合ガス10cとして軸封装置M1外に安全に排出されることになる。また、シールガス10a,10bのケース側シールガス供給路11a,11bへの供給は当該回転機器の運転中(回転軸7の駆動中)において行われ、運転停止後には停止される。当該回転機器の運転は、シールガス10a,10bの供給が開始された後であって、静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bと回転密封環8a,8bの密封端面108a,108bとが適正な非接触状態に保持された後において開始され、シールガス10a,10bの供給停止は、当該回転機器の運転停止後であって回転軸7が完全に停止した後に行なわれる。
而して、各非接触形メカニカルシール1a,1bにあっては、図2及び図3に示す如く、回転密封環8a,8bとシールケース3のアダプタリング33aの第1延長部分333a,333bとの対向周面間(回転密封環8a,8bの外周面とアダプタリング33aの第1延長部分333a,333bの内周面との間)に、静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bと回転密封環8a,8bの密封端面108a,108bとの間からシールガス10a,10bが流出するシールガス流出領域26a,26bと回転密封環8a,8bの背面側領域(後端面側領域)である被密封ガス領域(第1非接触形メカニカルシール1aにおいては機内ガス領域Aであり、第2非接触形メカニカルシール1bにおいては中間領域Cである)とを連通する環状の通路であって、軸線を通過する断面形状における通路幅tが1.5mm以下であるシールガス通路27a,27bが形成されている。但し、通路幅tは、可能な限り狭いほうがよく、0.5mm以下であることが望ましい。なお、通路幅tが1.5mm以下であるとは、回転密封環8a,8bとシールケース3(アダプタリング33aの第1延長部分333a,333b)との対向周面が同心状態にない場合(回転軸7がシールケース3に対して偏心しているような場合)においては、当該対向周面における180°を隔てた2カ所の隙間(当該対向周面間の隙間)の合計が3mm以下になることを意味する。
この例では、各シールガス通路27a,27bの断面形状が、図2及び図3に示す如く、回転軸7の軸線に沿って前記シールガス流出領域26a,26bから直線状に延びる流入通路部分127a,127bと、回転軸7の径方向(回転密封環8a,8bの径方向)において当該軸線に対する距離が流入通路部分127a,127bより大きくなる位置に位置して当該軸線に沿って被密封ガス領域A,Cへと直線状に延びる流出通路部分227a,227bと、流入通路部分127a,127bと流出通路部分227a,227bとを接続する接続通路部分327a,327bとからなる折れ線形状をなしている。
各接続通路部分327a,327bは、図2及び図3に示す如く、回転軸7の径方向において直線状に延びる2つ以上(この例では2つ)の径方向通路部(第1径方向通路部427a,427b及び第2径方向通路部527a,527b)と、径方向通路部間(第1径方向通路部427a,427bと第2径方向通路部527a,527bとの間)を接続して前記軸線に沿って直線状に延びる1つ以上(この例では1つ)の連絡通路部627a,627bとからなる。連絡通路部627a,627aの一端部は第1径方向通路部427a,427aを介して流入通路部分127a,127bに接続されており、連絡通路部627a,627aの他端部は第2径方向通路部527a,527bを介して流出通路部分227a,227bに接続されている。
以上のように構成された各非接触形メカニカルシール1a,1bにあって、静止密封環6a,6bの密封端面106a,106bと回転密封環8a,8bの密封端面108a,108bとの間から小容積のシールガス流出領域26aに流出したシールガス10a,10bは、流入通路部分127a,127bからシールガス通路27a,27bに流入し、シールガス通路27a,27bを流動して流出通路部分227a,227bから回転密封環8a,8bの背面領域である被密封ガス領域(第1非接触形メカニカルシール1aにおいては機内ガス領域Aであり、第2非接触形メカニカルシール1bにおいては中間領域Cである)に流出する。
このとき、シールガス通路27a,27bが通路幅tを1.5mm以下とする流路断面積の小さいものであるから、シールガス通路27a,27bにおけるシールガス10a,10bの流速は大きくなる。さらに、流入通路部分127a,127bと流出通路部分227a,227bとを接続する接続通路部分327a,327bの第1径方向通路部427a,427b及び第2径方向通路部527a,527bにおいては、これらを流動するシールガス10a,10bに回転密封環8a,8bの回転による遠心力が作用することから、接続通路部分327a,327bの連絡通路部627a,627bに向って第1径方向通路部427a,427aを流動するシールガス10a,10bの流速及び流出通路部分227a,227bに向かって第2径方向通路部527a,527aを流動するシールガス10a,10bの流速が大きくなる。すなわち、シールガス通路27a,27bを流動するシールガス10a,10bの流速は、接続通路部分227a,227bを流動する間において遠心力の作用に更に大きくなる。
このため、第1非接触形メカニカルシール1aにおいては、両密封環6a,8aの密封端面106a,108a間からシールガス流出領域26aに流出した第1シールガス10aは、シールガス流出領域26aからシールガス通路27aを通過して機内ガス領域Aへと流出し続けることになり、機内ガス領域Aの被密封ガスがシールガス通路27aからシールガス流出領域26aに侵入することがない。なお、上記した如く、シールガス通路27aの通路幅tを0.5mm以下に構成しておくと、被密封ガスのシールガス通路27aへの侵入(シールガス通路27aにおける逆流)をより確実に阻止することができる。また、接続通路部分227aを第1径方向通路部427aと第2径方向通路部527aとを連絡通路部627aで接続した折れ線形状に構成しておくと、シールガス通路27aの全長を長くすることができ、被密封ガスのシールガス通路27aへの侵入(シールガス通路27aにおける逆流)をより確実に阻止することができる。
その結果、シールガス流出領域26aに微小隙間25aを介して連通している第1弾性シールリング部材4aの設置空間には、第1シールガス10aが侵入しても、機内ガス領域Aの被密封ガスが侵入することはない。すなわち、第1弾性シールリング部材4aには、これを劣化させる虞れのある極低温の被密封ガスが接触することがなく、第1シールガス10aのみが接触することになる。つまり、第1弾性シールリング部材4aには、接続空間9aを通過する第1シールガス10a及びシールガス流出領域26aから微小隙間25aに侵入した第1シールガス10aが接触するにすぎない。
したがって、第1シールガス10aが、機内ガス領域Aの被密封ガスより高温で、第1弾性シールリング部材4aを劣化させる虞れのない性状のガス(第1弾性シールリング部材4aを劣化させる虞れのない温度のガス)であることから、機内ガス領域Aの被密封ガスが第1弾性シールリング部材4aを劣化させるような極低温ガスであっても、また第1弾性シールリング部材4aが静止密封環6aとの接触部(シール部)で相対運動するものであっても、当該第1弾性シールリング部材4aが劣化することがなく、そのシール機能が低下、喪失する虞れはない。
また、第1弾性シールリング部材4aと共に接続空間9aをシールする第2弾性シールリング部材5a及びヘッダ空間111aをシールする第3及び第4弾性シールリング部材14a,15aについては第1シールガス10aが接触するが、第1弾性シールリング部材4aと同様、第1シールガス10aとの接触により劣化する虞れはない。また、第3弾性シールリング部材14aについては第1ケース本体30とアダプタリング33aとの接触部から、また第5弾性シールリング部材16aについては回転軸7と回転密封環8との接触部から、機内ガス領域Aの被密封ガスが侵入して接触する虞れがある。しかし、第1ケース本体30とアダプタリング33aとは、また回転軸7と回転密封環8とは、相対運動しないものであるから、当該接触部においては、アダプタリング33aの第1シールリング部材受け止め部233aと静止密封環6との対向周面間のように微小隙間233aを設けておく必要がない。したがって、両シールケース部分30,33ab間及び回転軸7と回転密封環8との間は隙間のない密着状態とされているため、機内ガス領域Aの被密封ガスが侵入することが極めて少なく、極低温の被密封ガスが第3及び第5弾性シールリング部材14a,16aに接触して劣化させる虞れは殆どない。
また、第1非接触形メカニカルシール1aにおいては、第1シールガス10aとして機内ガス領域Aの被密封ガスの一部10を使用しているから、つまり第1シールガス10aとして被密封ガスと同質のガスを使用しているから、両密封環6a,8aの密封端面106a,108a間から流出した第1シールガス10aがシールガス流出領域26aからシールガス通路27aを経て機内ガス領域Aに流入しても、機内ガス領域Aの被密封ガスの純度が低下することがなく、被密封ガスを高品質の状態で軸封することができる。したがって、第1非接触形メカニカルシール1a又は両非接触形メカニカルシール1a,1bで構成された軸封装置M1を使用すれば、LNG等の液化ガスの貯蔵タンクから排出されたボイルオフガスを廃棄することなく、その品質を低下させることなく液化、再利用する(当該貯蔵タンクに戻す)ことが可能となり、資源の有効利用を図ることができる。
ところで、第1シールガス10aは、極低温の被密封ガスより高温であるとはいえ、常温より遥かに低温のガスであるから、シールケース3に1本のケース側シールガス供給路11aを形成した場合には、ケース側シールガス供給路11aが形成された部分に歪が生じて、ケース側シールガス供給路11aが形成されてない部分との間に大きな変形差が生じてシールケース3が周方向において不均一に歪むことになり、シールケース3による静止密封環6aの保持を適正に行い得ず、静止密封環6aの追従性に悪影響を及ぼす虞れがある。しかし、第1非接触形メカニカルシール1aにおいては、シールケース3に形成されるケース側シールガス供給路11aの下流側部分を、静止密封環6aを第1及び第2弾性シールリング部材4a,5aを介して保持する第1アダプタリング33aにその周方向に等間隔を隔てた複数本のアダプタ側通路311aで構成したから、第1シールガス10aがこれら複数本のアダプタ側通路311aを通過することによって、第1アダプタリング33aに生じる歪が周方向において均等に生じて、第1アダプタリング33aが不均一に大きく変形(歪)することがない。したがって、第1アダプタリング33aによる第1及び第2弾性シールリング部材4a,5aを介しての静止密封環6aの保持を適正に行うことができ、静止密封環6aの追従性に良好に担保することができ、良好なメカニカルシール機能を発揮することができる。
以上のように、第1非接触形メカニカルシール1aによれば、機内ガス領域Aの被密封ガスがLNG等の液化ガスの蒸発ガス(ボイルオフガス)のような極低温ガスである場合にも、機内ガス領域Aにおける被被密封ガスの品質が第1シールガス10aの混入により低下することがなく、良好なメカニカルシール機能を発揮させることができる。
また、第2非接触形メカニカルシール1bにあっても、第1非接触形メカニカルシール1aと同様に、第2シールガス10bがシールガス流出領域26bからシールガス通路27bを経て被密封ガス領域である中間領域Cに流出し続けて、シールガス流出領域26bに第1非接触形メカニカルシール1aの密封端面106a,108aから中間領域Cに流出した低温の第1シールガス10aが侵入することがない。したがって、第1弾性シールリング部材4bの装填空間が微小隙間25bを介してシールガス流出領域26bに連通していても、第1弾性シールリング部材4bには常温又はこれに近い温度の第2シールガス10bが接触するにすぎず、第1弾性シールリング部材4bが劣化することがない。なお、第1非接触形メカニカルシール1aにおけると同様に、シールガス通路27bの通路幅tを0.5mm以下に構成しておくと、また接続通路部分227bを第1径方向通路部427bと第2径方向通路部527bとを連絡通路部627bで接続した折れ線形状に構成しておくと、被密封ガス(中間領域Cに流出した低温の第1シールガス10a)のシールガス通路27bへの侵入(シールガス通路27bにおける逆流)をより確実に阻止することができる。
したがって、第2非接触形メカニカルシール1bにあっては、接続空間9bをシールする第1及び第2弾性シールリング部材4b,5bの何れもが常温又はこれに近い温度の第2シールガスが接触するのみであるから、これらの弾性シールリング部材4b,5bとして、耐寒性に優れた上記したようなPTFE又はこれを主成分とする複合弾性材で構成したものを使用する場合は勿論、一般的なゴム材等で構成したもの(例えば、一般的なゴム製Oリング)を使用した場合にも、第1及び第2弾性シールリング部材4b,5bが劣化してそのシール機能が低下、喪失するような問題は生じない。
ところで、本発明に係る非接触形メカニカルシールは、上記した実施の形態に拘わらず、本発明の基本原理を逸脱しない範囲で適宜に変更、改良することができる。
例えば、シールガス通路27a,27bは、軸線に直交する断面形状における通路幅tが1.5mm以下(望ましくは0.5mm以下)となる環状の通路であって、被密封ガス領域(機内ガス領域A又は中間領域C)からシールガス流出領域26a,26bへの被密封ガスの侵入を阻止できるものであればよく、その形状(断面形状)は任意であり、次のように構成しておくことも可能である。
すなわち、図2及び図3に示すシールガス通路27a,27bにおいては、接続通路部分327a,327bを2つの径方向通路部(第1径方向通路部427a,427b及び第2径方向通路部527a,527b)とこれらの径方向通路部間を接続する1つの連絡通路部627a,627bとで構成したが、3つ以上の径方向通路部と2つ以上の連絡通路部とで構成することも可能である。
また、シールガス通路27a,27bは、図5に示す如く、接続通路部分327a,327bを、回転軸7の径方向において直線状に延びて、流入通路部分127a,127bと流出通路部分227a,227bとを接続するものに構成しておくことができる。すなわち、流入通路部分127a,127bと流出通路部分227a,227bとを1つの径方向通路部で接続するものとしておくことができる。
また、シールガス通路27a,27bは、図6に示す如く、その断面形状が回転軸7の軸線に沿ってシールガス流出領域26a,26bから被密封ガス領域A,Cへと延びる直線形状をなすもの、つまり流入通路部分127a,127bと流出通路部分227a,227bとを直結したものとすることもできる。
また、図5に示す軸封装置M2及び図6に示す軸封装置M3は、シールガス通路27a,27bの断面形状が異なる点を除いて、図1に示す軸封装置M1と同一構造のものであるが、これらの軸封装置M1,M2,M3は、機内ガス領域Aの被密封ガスがPTFE又はこれを主成分とする複合弾性材で構成される弾性シールリング部材(主として第1弾性シールリング部材4a)を劣化させる虞れのある上記低温ガスである場合は勿論、当該弾性シールリング部材を劣化させる虞れのある高温ガス(弾性シールリング部材の耐熱温度範囲を逸脱するような極めて高温のガス)である場合にも、好適に使用することができる。
すなわち、軸封装置M1,M2,M3にあっては、機内ガス領域Aの被密封ガスの一部10を配管23に取り出して、コンプレッサ24により機内ガス領域Aの圧力より高圧に昇圧させた上で、第1シールガス10aとしてケース側シールガス供給路11aに供給させることにより、機内ガス領域Aの被密封ガスである高温ガスを、第1シールガス10aの混入により品質が低下することなく、良好に遮蔽することができる。この場合にあっても、機内ガス領域Aから配管23に取り出された被密封ガスの一部10は、コンプレッサ24の作用を受けることにより及び外気に接触する配管23内を通過することにより、被密封ガスより低温(上記の耐寒温度範囲内の温度)に減温された上で、第1シールガス10aとしてケース側シールガス供給路11aに供給されることになり、第1シールガス10aがシールガス流出領域26aから微小隙間25を経て第1弾性シールリング部材4aに接触しても、第1弾性シールリング部材4aが劣化する虞れはない。
また、上記軸封装置M1,M2,M3においては、機内ガス領域Aの被密封ガスが第1シールガス10aの混入による品質低下を許容できるものである場合には、第1シールガス10aとして、第2シールガス10bと同様に、常温又はこれに近い温度の不活性ガス(窒素ガス等)を使用することができる。このような第1シールガス10aを使用する場合には、被密封ガスが上記した低温ガスや高温ガスであるとき又は腐食性の高いガスであるときにも、弾性シールリング部材4a,5aの劣化を防止して、良好なシール機能を発揮させることができる。この場合、弾性シールリング部材4a,5aとしては、第2非接触形メカニカルシール1bの弾性シールリング部材4b,5bと同様に、PTFE等の耐寒性、耐熱性、耐食性に優れた材料で構成したものの他、一般的な弾性材で構成したもの(例えば、一般的なゴム製Oリング)を使用することが可能である。すなわち、接続空間9a,9bのシール機能と静止密封環6a,6bの追従性確保機能を担保して良好なメカニカルシール機能を発揮させる上で需要な役割を果たす第1弾性シールリング部材4a,5b及び第2弾性シールリング部材4b,5bにはシールガス10a,10bのみが接触するため、被密封ガスが極めて低温のガスや高温のガス又は腐食性の強いガスである場合にも、シールガス10a,10bを適宜に選定することにより、当該弾性シールリング部材4a,4b,5a,5bとして、被密封ガスに対しては到底使用することができない弾性材製のものを任意に使用することができ、必要以上に耐寒性、耐熱性、耐腐食性の高い高価な弾性シールリング部材を使用せずともよい。
また、本発明の静圧形の非接触形メカニカルシールは、上記した軸封装置M1,M2,M3のように、機内ガス領域A側の一次シール1a及び/又は機外大気領域B側の二次シール1bとして使用される他、一つの静圧形の非接触形メカニカルシールで構成される軸封装置(シングルシール)にも好適に使用することができる。すなわち、被密封ガス領域である機内ガス領域と非密封ガス領域である機外大気領域との間を、上記した一次シール1a又は二次シール1bと同様構造をなす一つの静圧形の非接触形メカニカルシールにより区画、シールするように構成することができる。この場合、シールガスとしては、前記第2シールガス10bと同様、機内ガス領域の被密封ガスと不活性であり機外大気領域に流出しても支障のない常温又はこれに近い温度の窒素ガス等の不活性ガスを使用する。また、前記第1弾性シールリング部材4a,4b及び第2弾性シールリング部材5a,5bに相当する弾性シールリング部材には、上記した常温又はこれに近い温度のシールガス(窒素ガス等の不活性ガス)が接触するのみであるから、上記した場合と同様に、当該弾性シールリング部材として、PTFE等の耐寒性、耐熱性、耐食性に優れた材料で構成したものは勿論、一般的な弾性材で構成したもの(例えば、一般的なゴム製Oリング)を使用することが可能である。
また、弾性シールリング部材4a,4b,5a,5b等の形状,構成は、シール条件等に応じて適宜に変更,改良することができ、断面形状を上記したコの字状とする他、V字状、U字状、C字状のものに構成することができる。例えば、図7に示す如く、内外周リップ部18,19を湾曲状とする断面C字状に構成し、環状溝20に装填させるバネ部材21としてコイルスプリングを使用した構成となすことができる。
また、回転密封環8a,8bは、密封端面108a,108bが形成される本体部分と外周部分(シールケース3との対向周面間にシールガス通路27a,27bを形成する外周部分)とを異種材料で構成しておくことも可能である。例えば、回転密封環8a,8bを、本体部分を炭化珪素等のセラミックスや超硬合金で構成し、外周部分をチタンで構成して本体部分に焼嵌めさせてなるものとしておくことができる。
また、アダプタリング33a,33bは、シールガス10a,10bが金属製のシールケース3に熱歪を生じさせるような低温又は高温のガスでない場合には設けておく必要がなく、かかる場合には、静止密封環6a,6bをアダプタリング33a,33bを有しないシールケース3に第1弾性シールリング部材4a,4b及び第2弾性シールリング部材5a,5bを介して直接に保持させると共に、当該シールケース3に接続空間9a,9bに連通する1本のケース側シールガス供給路11a,11bを形成しておくことができる。
1a 静圧形の非接触形メカニカルシール
1b 静圧形の非接触形メカニカルシール
3 シールケース
4a 第1弾性シールリング部材
4b 第1弾性シールリング部材
5a 第2弾性シールリング部材
5b 第2弾性シールリング部材
6a 静止密封環
6b 静止密封環
7 回転軸
8a 回転密封環
8b 回転密封環
9a 接続空間
9b 接続空間
10 被密封ガスの一部
10a シールガス
10b シールガス
11a ケース側シールガス供給路
11b ケース側シールガス供給路
12a 密封環側シールガス供給路
12b 密封環側シールガス供給路
17 弾性シールリング部材の基部
18 弾性シールリング部材の内周リップ部
19 弾性シールリング部材の外周リップ部
20 弾性シールリング部材の環状溝
26a シールガス流出領域
26b シールガス流出領域
27a シールガス通路
27b シールガス通路
106a 密封端面
106b 密封端面
108a 密封端面
108b 密封端面
127a 流入通路部分
127b 流入通路部分
227a 流出通路部分
227b 流出通路部分
327a 接続通路部分
327b 接続通路部分
427a 径方向通路部
427b 径方向通路部
527a 径方向通路部
527b 径方向通路部
627a 連絡通路部
627b 連絡通路部
A 機内ガス領域(被密封ガス領域)
t 通路幅


Claims (8)

  1. シールケースの内周部に第1及び第2弾性シールリング部材を介して軸線方向移動可能に保持された静止密封環と、静止密封環の被密封ガス領域側に配して、シールケースを洞貫する回転軸に固定された回転密封環と、シールケースと静止密封環との対向周面部間に形成された環状の空間であって、前記第1及び第2環状シールリング部材でシールされた接続空間と、シールケースに形成されて、被密封ガス領域の圧力より高圧のシールガスを接続空間に供給するケース側シールガス供給路と、静止密封環に形成されて、シールガスを接続空間から両密封環の対向端面である密封端面間に供給する密封環側シールガス供給路と、を具備して、両密封環の密封端面間をこれに供給されたシールガスにより非接触状態に保持するように構成された静圧形の非接触形メカニカルシールであって、
    シールガスとして前記弾性シールリング部材を劣化させない性状のガスが使用されており、
    シールケースと回転密封環との対向周面部間に、両密封環の密封端面の外周領域であるシールガス流出領域と回転密封環の背面側の被密封ガス領域とを連通する環状の通路であって、回転軸の軸線を通過する断面形状における通路幅が1.5mm以下であるシールガス通路を形成してあることを特徴とする静圧形の非接触形メカニカルシール。
  2. 前記シールケースが、ケース本体とその内周部に固定されて静止密封環を保持するアダプタリングとを具備する金属製のものであり、前記ケース側シールガス供給路が、ケース本体に形成された1本の本体側通路と、アダプタリングにその周方向に等間隔を隔てて形成されて、本体側通路と前記接続空間とを連通する複数本のアダプタ側通路とからなることを特徴とする、請求項1に記載する静圧形の非接触形メカニカルシール。
  3. 前記シールガス通路が、前記アダプタリングと回転密封環との対向周面部間に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載する静圧形の非接触形メカニカルシール。
  4. 前記被密封ガス領域の被密封ガスが前記弾性シールリング部材を劣化させる虞れのある低温ガスであり、前記シールガスが被密封ガスと同質で且つ当該被密封ガスより高温のガスであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載する静圧形の非接触形メカニカルシール。
  5. 前記被密封ガスが液化ガスの貯蔵タンクから排出された当該液化ガスのボイルオフガスであることを特徴とする、請求項4に記載する静圧形の非接触形メカニカルシール。
  6. 前記被密封ガス領域の被密封ガスが前記弾性シールリング部材を劣化させる虞れのある高温ガスであり、前記シールガスが被密封ガスと同質で且つ当該被密封ガスより低温のガスであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載する静圧形の非接触形メカニカルシール。
  7. 前記シールガスが、被密封ガス領域の被密封ガスの一部を取り出して加圧したものであることを特徴とする、請求項4〜6の何れかに記載する静圧形の非接触形メカニカルシール。
  8. 前記各環状シールリング部材は、環状の本体部と本体部から軸線方向に突出してシールケースと静止密封環との対向周面に弾性的に押圧接触する筒状の内外周リップ部とからなる、断面コの字形状、U字形状又はV字形状をなすポリテトラフルオロエチレン製のもの又はポリテトラフルオロエチレンを主成分とする複合弾性材製のものであることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載する静圧形の非接触形メカニカルシール。
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