以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
以下では、図1から図3までを用いて、本発明の第一実施形態に係るワッシャ1の構成について説明する。
ワッシャ1は、他の部材と摺動可能に接する部材(摺動部材)である。ワッシャ1は、正面視円環状に形成される。ワッシャ1は、適宜の部材(例えば、軸部材を支持するハウジング等)に設けられる。ワッシャ1は、他の部材と摺動可能に接することで、荷重(例えば、前記軸部材からの軸方向の荷重)を受けることができる。ワッシャ1は、複数(本実施形態においては、4つ)のワッシャ片10により構成される。ワッシャ1は、4つのワッシャ片10がそれぞれ接続され、全体として円環状に形成される。本実施形態において、4つのワッシャ片10は、互いに同一形状に形成される。
なお、以下では説明の便宜上、ワッシャ1の周方向を単に「周方向」(円弧方向)、ワッシャ1の径方向を単に「径方向」とそれぞれ称する。また、4つのワッシャ片10のうち、図1における右上部に配置されたワッシャ片10を「第一ワッシャ片11」、右下部に配置されたワッシャ片10を「第二ワッシャ片12」、左下部に配置されたワッシャ片10を「第三ワッシャ片13」、左上部に配置されたワッシャ片10を「第四ワッシャ片14」とそれぞれ称する。
また、これらのワッシャ片10は、上述の如く互いに同一形状に形成されるため、以下では、主として第一ワッシャ片11について詳細に説明し、その他のワッシャ片10の詳細な説明は適宜省略するものとする。
第一ワッシャ片11は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。第一ワッシャ片11は、適宜の金属材料によって形成される。図3(b)に示すように、本実施形態に係る第一ワッシャ片11は、2種類の材料(金属材料)が積層されて形成された、いわゆるバイメタルによって形成されている。具体的には、第一ワッシャ片11は、裏金Y1と、当該裏金Y1の一方の板面(後面)を被覆するように積層されたライニングY2と、を具備する。裏金Y1の材料としては、例えば鉄系材料を用いることができる。またライニングY2の材料としては、例えばアルミ系合金材料を用いることができる。
また、第一ワッシャ片11は、主として本体部20、第一嵌合部30及び第二嵌合部40を具備する。
図1から図3までに示す本体部20は、第一ワッシャ片11の主たる部分(両端部を除く部分)を形成する部分である。本体部20は、正面視において、中心角が約90度の円弧状に形成される。なお以下では、本体部20の、周方向における上側の端部を「上側端部」、周方向における下側の端部を「下側端部」とそれぞれ称する。
図1から図3までに示す第一嵌合部30は、本体部20の上側端部から周方向(円弧方向)に凸となる部分である。第一嵌合部30は、第一ワッシャ片11の周方向左隣の第四ワッシャ片14の第二嵌合部40と嵌合される。第一嵌合部30は、本体部20の上側端部から周方向外側に延びるように形成される。第一嵌合部30は、主として第一基端部31及び第一先端部32を具備する。
図2及び図3に示す第一基端部31は、周方向に延びるように形成された第一嵌合部30のうち、本体部20側(右側)に配置された部分である。第一基端部31は、正面視で僅かに丸みを帯びた略矩形状に形成される。第一基端部31は、本体部20の上側端部の径方向中央部から周方向外側へ突出するように形成される。
図2及び図3に示す第一先端部32は、周方向に延びるように形成された第一嵌合部30のうち、第四ワッシャ片14側(左側)に配置された部分である。第一先端部32は、正面視略真円状に形成される。第一先端部32は、第一基端部31を介して本体部20の上側端部から周方向外側に離間した位置に配置される。第一先端部32の径方向外側端部は、第一基端部31の径方向外側端部よりも外側に位置するように形成される。また、第一先端部32の径方向内側端部は、第一基端部31の径方向内側端部よりも内側に位置するように形成される。こうして、第一先端部32は、全体として第一基端部31よりも径方向に幅広く形成される。
このように構成された第一基端部31及び第一先端部32により、第一嵌合部30は、全体として正面視において丸みを帯びた形状(角が無い形状)に形成される。すなわち、後述するように、第一嵌合部30は、素材Mからプレス加工により打ち抜き易い形状に形成される。
第一先端部32には、油溜まり部35、かしめ部36及び溶接部37が形成される。
図2及び図3に示す油溜まり部35は、第一先端部32の前側面が後方(板厚方向)へ凹んだ部分である。油溜まり部35は、ワッシャ1が前記軸部材と摺動される際、摺動面に供給する潤滑油を溜めておくことができる。油溜まり部35は、第一先端部32と略同一形状(正面視真円状)であって、当該第一先端部32よりも一回り小さく形成される。正面視において油溜まり部35の中心点は、第一先端部32の中心点と重複するように形成される。
図2及び図3に示すかしめ部36は、第一先端部32において、第四ワッシャ片14の第二嵌合部40の側面に押し込まれた部分(具体的には、第一先端部32の側面)である。かしめ部36により、互いに嵌合された状態の第一嵌合部30と(第四ワッシャ片14の)第二嵌合部40とが固定され、ひいては第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14とが固定される。
なお、かしめ部36の構成についての詳細な説明は後述する。
図3に示す溶接部37は、第一先端部32において、第四ワッシャ片14の第二嵌合部40と溶接された部分である。より具体的には、溶接部37は、第一ワッシャ片11の第一嵌合部30(かしめ部36)と、当該かしめ部36と当接する第四ワッシャ片14の第二嵌合部40とが、溶接された部分である。溶接部37は、正面視(図3(a)参照)において、第一先端部32の側面全体に亘って形成されている。
溶接部37は、第一ワッシャ片11(及び第四ワッシャ片14)の一方の板面(前面)から、当該第一ワッシャ片11(及び第四ワッシャ片14)の厚さ方向(前後方向)中途部までに亘って形成されている。より具体的には、溶接部37は、裏金Y1の表面(前面)から、当該裏金Y1の厚さ方向中途部までに亘って形成されている。すなわち、溶接部37は、裏金Y1にのみ形成されており、ライニングY2には形成されていない(ライニングY2まで到達していない)。
なお、第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14とを溶接する(溶接部37を形成する)ことで、正面視(図3(a))において、当該第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14との境界はなくなるが、説明の便宜上、図3(a)では当該両部材の境界を図示している。
図1から図3までに示す第二嵌合部40は、本体部20の下側端部から周方向(円弧方向)に凹となる部分(切り欠いた部分)である。なお、説明の便宜上、図3においては、第一ワッシャ片11の第二嵌合部40ではなく、第四ワッシャ片14の第二嵌合部40を図示している。第二嵌合部40は、第一嵌合部30と正面視で略同一の外形を有する。第二嵌合部40は、第一ワッシャ片11の周方向下隣の第二ワッシャ片12の第一嵌合部30と嵌合される。第二嵌合部40は、本体部20の下側端部から周方向内側に延びるように形成される。第二嵌合部40は、主として第二基端部41及び第二先端部42を具備する。
図2及び図3に示す第二基端部41は、周方向に延びるように形成された第二嵌合部40のうち、第二ワッシャ片12側(下側)に配置された部分である。第二基端部41は、正面視で僅かに丸みを帯びた略矩形状に形成される。第二基端部41は、本体部20の下側端部の径方向中央部から周方向内側へ凹む(切り欠いた)ように形成される。
図2及び図3に示す第二先端部42は、周方向に延びるように形成された第二嵌合部40のうち、本体部20側(上側)に配置された部分である。第二先端部42は、正面視略真円状に形成される。第二先端部42は、第二基端部41を介して本体部20の下側端部から周方向内側に離間した位置に配置される。第二先端部42の径方向外側端部は、第二基端部41の径方向外側端部よりも外側に位置するように形成される。また、第二先端部42の径方向内側端部は、第二基端部41の径方向内側端部よりも内側に位置するように形成される。こうして、第二先端部42は、全体として第二基端部41よりも径方向に幅広く形成される。
上述の如き構成により、第一嵌合部30及び第二嵌合部40は、互いにジグソーパズル状に形成される。具体的には、図3(a)に示すように、第二嵌合部40の第二基端部41の内側に、第一嵌合部30の第一基端部31がほとんど隙間なく配置される。また、第二嵌合部40の第二先端部42の内側に、第一嵌合部30の第一先端部32がほとんど隙間なく配置される。こうして、第一嵌合部30及び第二嵌合部40は、互いにかみ合った状態で嵌合される。換言すると、第一嵌合部30及び第二嵌合部40は、当該第二嵌合部40の内側に第一嵌合部30が配置されると、(仮にかしめ部36や溶接部37が無くとも)周方向への互いの近接離間が規制された状態で嵌合される。
なお、上記においては、4つのワッシャ片10のうち、第一ワッシャ片11について説明したが、他の3つのワッシャ片10(第二ワッシャ片12、第三ワッシャ片13及び第四ワッシャ片14)も同様に構成される。そして、4つのワッシャ片10は、それぞれ周方向に隣り合うワッシャ片10と第一嵌合部30及び第二嵌合部40により互いに固定され、1つのワッシャ1として構成される。
以下では、図4から図9までを用いて、上述の如く構成されるワッシャ1の製造方法について説明する。
図4に示すように、ワッシャ1の製造方法は、主として準備工程S1、抜き取り工程S2、嵌合工程S3、かしめ工程S4及び溶接工程S5を具備する。
準備工程S1は、素材Mを準備する工程である。図5に示すように、素材Mは、矩形板状の部材である。素材Mは、適宜の材料(本実施形態においては、裏金Y1とライニングY2(図3(b)参照)を具備するバイメタル)により形成される。素材Mは、長手方向を上下方向に向けた状態で配置される。
準備工程S1が行われた後、抜き取り工程S2が行われる。
抜き取り工程S2は、準備工程S1において準備された素材Mから、ワッシャ片10を抜き取る工程である。抜き取り工程S2では、ワッシャ片10の形状に形成された所定の金型を用いて、素材Mのうち、ワッシャ片10の形状に対応した部分が抜き取られる(プレス加工により打ち抜かれる)。これによって、図5(a)に示すように、素材Mから1つのワッシャ片10を得ることができる。また、抜き取り工程S2においては、図5(b)に示すように、素材Mの長手方向に沿うように、複数のワッシャ片10が打ち抜かれる。これによって、素材Mから複数のワッシャ片10を得ることができる。
抜き取り工程S2が行われた後、嵌合工程S3が行われる。
嵌合工程S3は、抜き取り工程S2において抜き取られた複数のワッシャ片10をそれぞれ嵌合させる工程である。なお、本実施形態においては、1つのワッシャ1を形成するために、上述の如く4つのワッシャ片10がそれぞれ嵌合される。
具体的には、一つのワッシャ片10の第一嵌合部30に、周方向一側(正面視で反時計回り方向)に隣り合うワッシャ片10の第二嵌合部40が嵌合される。また、前記一つのワッシャ片10の第二嵌合部40に、周方向他側(正面視で時計回り方向)に隣り合うワッシャ片10の第一嵌合部30が嵌合される。こうして、4つのワッシャ片10がそれぞれ嵌合されると、円環状の部材が形成される。
なお、第一嵌合部30と第二嵌合部40とが嵌合される場合、まず図6(a)に示すように、当該第一嵌合部30と第二嵌合部40とが前後方向に互いに対向するように配置される。その後、図6(a)及び(b)に示すように、第一嵌合部30及び第二嵌合部40が互いに近接する方向に移動し、当該第二嵌合部40の内側に当該第一嵌合部30が入り込む。こうして、第一嵌合部30と第二嵌合部40とが、互いに嵌合される。
嵌合工程S3が行われた後、かしめ工程S4が行われる。
かしめ工程S4は、第一嵌合部30(より詳細には、第一嵌合部30の第一先端部32の側面)に、かしめ部36を形成する工程である。かしめ工程S4では、図7及び図8に示すように、かしめ装置50を用いて、プレス加工が行われる。なお、図7及び図8は、かしめ工程でかしめ部36が形成される様子を示した模式図である。図7及び図8において、ワッシャ片10は、板面を上下方向へ向けて配置されるものとする。
かしめ装置50は、図7及び図8に示すように、一対の金型である上型51及び下型52を具備する。上型51と下型52との間には、ワッシャ片10(互いに嵌合された第一嵌合部30及び第二嵌合部40)が配置される。上型51には、ポンチ53が設けられる。ポンチ53は、昇降可能に構成され、第一嵌合部30の第一先端部32を上方から下方へと押圧するものである。ポンチ53は、軸心方向を上下方向へ向けた略円柱状に形成される。ポンチ53の下側面(押圧面)は、第一嵌合部30の第一先端部32と略同一形状(真円状)であって、当該第一先端部32よりも一回り小さく形成される。
かしめ工程S4では、まず図7(a)に示すように、ポンチ53の下方に(第二嵌合部40と嵌合された状態の)第一嵌合部30の第一先端部32が配置される。第一嵌合部30の第一先端部32は、当該第一先端部32の中心点がポンチ53の下側面の中心点と上下方向に重複するように配置される。次に、図7(b)に示すように、ポンチ53が下降される。
こうして、ポンチ53が下降されると、当該ポンチ53の下側面が第一先端部32の上側面(すなわち、裏金Y1側の面)と当接すると共に、当該上側面を下方へ向けて押し込む。第一先端部32の上側面が押し込まれると、図7(b)及び図9に示すように、第一先端部32はポンチ53から押し込まれた分だけ、外方へ向けて押し拡げられる。こうして、第一先端部32が外方へ向けて押し拡げられると、第一先端部32の側面が第二先端部42の側面に押し込まれ、当該第一先端部32と第二先端部42とが互いに固定される。このように、ポンチ53により第一先端部32が押し拡げられることにより、第一先端部32の側面にかしめ部36が形成される。
なお、第一先端部32にポンチ53が押し込まれると、裏金Y1とライニングY2の境界部分(側面視(図7、図8及び図10)における直線状の境界部分)も変形するが、図7、図8及び図10においては簡略化のため、当該境界部分の変形は図示していない。
かしめ部36が形成された後(ポンチ53の下降が終了した後)、図8に示すように、ポンチ53が上昇される。ポンチ53が上昇すると、第一先端部32の上側面には下方へ凹んだ凹部(すなわち、油溜まり部35)が形成される。このように、かしめ装置50においては、ポンチ53の昇降という一つの動作を行うことにより、第一先端部32にかしめ部36及び油溜まり部35を同時に形成することができる。
以下では、図3、図7から図9までを用いて、上述の如き方法により形成されたかしめ部36の構成(特徴)について詳細に説明する。
上述の如く、かしめ部36は、第一先端部32の側面に形成されるため、ワッシャ1の摺動面(ワッシャ1の後側面(ライニングY2側の面))上に飛び出したりしていない。これにより、ワッシャ1は、前記軸部材を円滑に摺動させることができる。
なお、かしめ工程S4において、かしめ部36は、上述の如くかしめ装置50を用いて形成される。ここで、かしめ装置50においては、第一先端部32にポンチ53が押圧される際、ワッシャ片10は上型51と下型52との間に配置される。すなわち、かしめ部36を形成するために第一先端部32が押し拡げられた場合であっても、当該第一先端部32の一部分が、図7及び図8に示す当該第一先端部32の上側面より上方へ飛び出たり、下側面よりも下方へ飛び出たりするのが抑制されている。このように、かしめ部36が形成された場合、かしめ工程S4が終了した後、ワッシャ1の摺動面に対する研磨加工等の手間を極力省略することができる。
なお、図9は、かしめ工程S4で第一先端部32にポンチ53が押圧される様子を示した模式図である。図9において、第一先端部32に記載した斜線部分は、ポンチ53の下側面、すなわちポンチ53において第一先端部32の上側面と当接している部分を示している。ここで、ポンチ53の下側面(押圧面)は、上述の如く、第一嵌合部30の第一先端部32と略同一形状(真円状)であって、当該第一先端部32よりも一回り小さく形成される。また、ポンチ53が第一先端部32を押圧する際、当該第一先端部32の中心点がポンチ53の下側面の中心点と上下方向に重複するように配置される。
このような構成によって、第一先端部32にポンチ53が押圧された場合、図9に示すように、当該第一先端部32は、第二先端部42側へ向けて四方に満遍なく(バランスよく)押し拡げられる。こうして、第一先端部32においては、かしめ部36が四方へ向けてバランスよく第二先端部42を押し込まれて形成されるため、当該第一先端部32と第二先端部42とを(ひいては、第一嵌合部30と第二嵌合部40とを)強固に固定することができる。
なお、また、本体部20の上側端部は径方向中央部が周方向内側に凹んでいるため、径方向外側及び内側に比較的広がり易い構成となっているが、本実施形態においては、上述の如く、第二先端部42が、第二基端部41を介して本体部20の下側端部から周方向内側に離間した位置に配置される。このような構成により、当該第二先端部42と嵌合された第一先端部32にポンチ53が押圧された際に、本体部20の上側端部が径方向外側及び内側に広がるのを防止することができる。
また、第一先端部32にポンチ53が押圧された場合、図9に示すように、当該第一先端部32は、第二先端部42側へ向けて四方に満遍なく(バランスよく)押し拡げられることにより、かしめ部36は、第一先端部32の側面全体に亘って形成される(図3(a)等参照)。こうして、かしめ部36は、第一先端部32の側面全体を覆った円筒状となるように形成される。これにより、第一先端部32においては、例えば第一先端部32の側面の一部だけに形成されたような場合と比べて、当該第一先端部32と第二先端部42とを(ひいては、第一嵌合部30と第二嵌合部40とを)強固に固定することができる。
溶接工程S5は、第一嵌合部30(より詳細には、第一嵌合部30の第一先端部32)を溶接する(溶接部37を形成する)工程である。溶接工程S5では、図10に示すように、溶接装置60を用いて、溶接が行われる。なお、図10は、溶接工程S5で溶接が行われる様子を示した模式図である。図10において、ワッシャ片10は、板面を上下方向へ向けて配置されるものとする。
溶接装置60は、レーザーLのエネルギーを利用して溶接を行うもの(レーザー溶接装置)である。溶接装置60は、図10に示すように、溶接の対象物に対してレーザーLを照射するレーザーヘッド61を具備する。レーザーヘッド61は、ワッシャ片10の上方に配置される。
溶接工程S5では、まずレーザーヘッド61が、ワッシャ片10の溶接箇所(すなわち、かしめ部36)に対して上方から対向するように、当該レーザーヘッド61の位置が調整される。
次に、レーザーヘッド61から下方に向かってレーザーLが照射され、かしめ部36が溶接される。具体的には、かしめ部36における第一先端部32と第二先端部42とが溶融され、一体化される。当該一体化された部分が、溶接部37となる。
この際、溶接装置60の出力が適宜調節され、ワッシャ片10の上側面から厚さ方向(上下方向)中途部までに亘って溶接部37が形成される。より具体的には、溶接部37がライニングY2にまで達しないように、溶接装置60の出力が調節される。これによって、溶接部37は、裏金Y1にのみ形成されることになる。
また図11に示すように、溶接工程S5では、レーザーヘッド61を水平方向に適宜移動させることで、かしめ部36全域(平面視における第一先端部32の略全周)に亘って溶接部37が形成される。
以下では、図10及び図11を用いて、上述の如き方法により形成された溶接部37の構成(特徴)について詳細に説明する。
上述の如く、溶接部37は、かしめ部36を溶接することで形成される。すなわち、溶接部37は、第一先端部32が第二先端部42に押し込まれて密着した部分を溶接することで形成される。このように、第一先端部32と第二先端部42が密着した部分を溶接することで、両部材が密着していない場合(両部材間にクリアランスがある場合)に比べて、材料の溶け込み量を増加させることができる。これによって、溶接部37において高い強度を得ることができる。
また溶接部37は、図10に示すようにワッシャ片10の上側面から厚さ方向中途部までに亘るように形成される。すなわち、溶接部37は、ワッシャ片10の下側面(ライニングY2の表面)までは到達していない。これによって、主な摺動面となるライニングY2の表面に凹凸や変質が生じるのを抑制することができる。
特に、本実施形態に係る溶接部37は、図10に示すように裏金Y1にのみ(ライニングY2まで到達しないように)形成される。これによって、裏金Y1と共にライニングY2が溶融されるのを防止し、ひいては当該裏金Y1とライニングY2による合金が形成されるのを防止することができる。このように合金が形成されるのを防止することで、当該合金の形成に起因する溶接部37の強度の低下を抑制することができる。
また溶接部37は、図11に示すように、第一先端部32の全周に亘って形成される。すなわち、溶接部37は、第一先端部32が第二嵌合部40と対向する部分の全域に亘るように形成される。当該溶接部37によって、ワッシャ片10を厚さ方向に貫通する隙間(第一先端部32の周囲の隙間)を塞ぐことができる。これによって、ワッシャ1の使用時に、当該隙間に潤滑油が引き込まれることによって負圧が発生するのを抑制することができ、ひいては摺動性能の低下を抑制することができる。
以上のように、本発明の第一実施形態に係るワッシャ1(摺動部材)は、
凸状に形成された第一嵌合部30(第一の嵌合部)を有する第一ワッシャ片11(第一の部材)と、
凹状に形成され、前記第一嵌合部30と嵌合される第二嵌合部40(第二の嵌合部)を有する第四ワッシャ片14(第二の部材)と、
を具備し、
前記第一嵌合部30及び前記第二嵌合部40が互いに嵌合された状態で、
前記第一嵌合部30及び前記第二嵌合部40のうち、一方の嵌合部が他方の嵌合部に対して押し込まれたかしめ部36(当接部)と、
前記第一嵌合部30と前記第二嵌合部40が溶接された溶接部37と、
が形成されているものである。
このような構成により、複数の部材を接合して形成されるワッシャ1において、部材同士の接合強度の向上を図ることができる。すなわち、第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14を嵌合させた上で、かしめ部36及び溶接部37により接合することで、両部材を強固に固定することができる。例えば本実施形態のような構成の場合、溶接を行わない場合に比べて約14倍の強度(せん断強度)が得られることが実験により分かっている。
また、前記第一ワッシャ片11及び前記第四ワッシャ片14は、
板状に形成され、
前記溶接部37は、
前記第一ワッシャ片11及び前記第四ワッシャ片14の一方の板面(上側面)から、当該第一ワッシャ片11及び当該第四ワッシャ片14の厚さ方向中途部までに亘って形成されているものである。
このような構成により、前記第一ワッシャ片11及び前記第四ワッシャ片14の他方の板面(下側面)に、溶接の影響が及ぶのを抑制することができる。すなわち、当該下側面に凹凸や変質等が生じるのを抑制することができる。
また、前記第一ワッシャ片11及び前記第四ワッシャ片14は、
裏金Y1(第一の層)と、
前記裏金Y1とは異なる材料により形成されて、前記裏金Y1に対して積層されたライニングY2(第二の層)と、
を具備し、
前記溶接部37は、
前記裏金Y1にのみ形成されているものである。
このような構成により、部材同士の接合強度の低下を抑制することができる。すなわち、裏金Y1とライニングY2との合金が形成されるのを防止することができ、ひいては溶接部37の強度の低下を抑制することができる。
また、前記第一嵌合部30は、
前記第一ワッシャ片11の一端部から第一基端部31(基端部)を介して配置された第一先端部32(先端部)を有し、
前記溶接部37は、
前記第一先端部32が前記第二嵌合部40と対向する部分の全域に亘るように形成されている(図11参照)ものである。
このような構成により、摺動性能の低下を抑制することができる。すなわち、第一先端部32が第二嵌合部40と対向する部分の隙間を塞ぐことで、当該隙間に起因する負圧の発生を抑制することができ、ひいては摺動性能の低下を抑制することができる。
また、前記第一嵌合部30は、
前記かしめ部36を形成するためのプレス加工によって形成された凹状の油溜まり部35を具備するものである。
このような構成により、油溜まり部35に潤滑油を留めておくことができる。これによって、ワッシャ1の摺動性能の向上を図ることができる。また、プレス加工により、かしめ部36及び油溜まり部35を同時に形成することができるため、当該かしめ部36及び油溜まり部35を簡易に形成することができる。
また、以上のように、本発明の一実施形態に係るワッシャ1の製造方法においては、
素材Mを準備する準備工程S1と、
前記素材Mから、凸状に形成された第一嵌合部30(第一の嵌合部)を有する第一ワッシャ片11(第一の部材)と、凹状に形成された第二嵌合部40(第二の嵌合部)を有する第四ワッシャ片14(第二の部材)と、を抜き取る抜き取り工程S2と、
前記第一ワッシャ片11の前記第一嵌合部30と前記第四ワッシャ片14の前記第二嵌合部40とを嵌合させる嵌合工程S3と、
前記第一嵌合部30を、他方の嵌合部に押し込んでかしめ部36を形成するかしめ工程S4と、
前記かしめ部36の少なくとも一部を溶接して溶接部37を形成する溶接工程S5と、
を具備するものである。
このような構成により、複数の部材を接合して形成されるワッシャ1において、部材同士の接合強度の向上を図ることができる。すなわち、第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14を嵌合させた上で、かしめ部36及び溶接部37により接合することで、両部材を強固に固定することができる。特に、本実施形態のように、第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14が密着したかしめ部36を溶接することで、材料の溶け込み量を増加させ、高い強度を得ることができる。
また、ワッシャ1の製造方法においては、
前記第一ワッシャ片11及び前記第四ワッシャ片14は、
板状に形成され、
前記溶接工程S5において、
前記溶接部37を、前記第一ワッシャ片11及び前記第四ワッシャ片14の一方の板面から、当該第一ワッシャ片11及び当該第四ワッシャ片14の厚さ方向中途部までに亘って形成するものである。
このような構成により、前記第一ワッシャ片11及び前記第四ワッシャ片14の他方の板面に、溶接の影響が及ぶのを抑制することができる。
また、ワッシャ1の製造方法においては、
前記第一ワッシャ片11及び前記第四ワッシャ片14は、
裏金Y1(第一の層)と、
前記裏金Y1とは異なる材料により形成されて、前記裏金Y1に対して積層されたライニングY2(第二の層)と、
を具備し、
前記溶接工程S5において、
前記溶接部37を、前記裏金Y1にのみ形成するものである。
このような構成により、部材同士の接合強度の低下を抑制することができる。
また、ワッシャ1の製造方法においては、
前記かしめ工程S4において、
前記第一嵌合部30がプレスされることにより、前記かしめ部36と共に凹状の油溜まり部35を形成するものである。
このような構成により、油溜まり部35に潤滑油を留めておくことができる。これによって、ワッシャ1の摺動性能の向上を図ることができる。また、プレス加工により、かしめ部36及び油溜まり部35を同時に形成することができるため、当該かしめ部36及び油溜まり部35を簡易に形成することができる。
なお、ワッシャ1は、摺動部材の実施の一形態である。
また、第一ワッシャ片11は、第一の部材の実施の一形態である。
また、第四ワッシャ片14は、第二の部材の実施の一形態である。
また、第一嵌合部30は、第一の嵌合部の実施の一形態である。
また、第二嵌合部40は、第二の嵌合部の実施の一形態である。
また、かしめ部36は、当接部の実施の一形態である。
また、裏金Y1は、第一の層の実施の一形態である。
また、ライニングY2は、第二の層の実施の一形態である。
また、第一基端部31は、基端部の実施の一形態である。
また、第一先端部32は、先端部の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本発明は、本実施形態のようなワッシャ1に限らず、その他種々の摺動部材に適用することができる。
また、ワッシャ1はスラスト方向の荷重を受ける用途(スラストワッシャ)に限らず、任意の用途に使用することができる。
また、本発明は、本実施形態のようなワッシャ1の形状(円環状)のものに限らず、種々の形状とすることができる。例えば、半円状(中心角が180度の円弧状)に形成されるものや、その他の円弧状(例えば、中心角が90度の円弧状、中心角が60度の円弧状等)に形成されるものであっても良い。また、本発明は、円筒状の軸受等に適用することも可能である。
また、ワッシャ片10は中心角が90度の円弧状のものに限らず、半円状(中心角が180度の円弧状)に形成されるものや、その他の円弧状(例えば、中心角が60度の円弧状等)に形成されるものであっても良い。
また、かしめ部36は、第一嵌合部30の第一先端部32の側面に形成されるものに限定されず、第二嵌合部40の第二先端部42の側面に形成されるものであってもよい。また、かしめ部36は、第一嵌合部30の第一先端部32の側面及び第二嵌合部40の第二先端部42の側面の両方に形成されるものであってもよい。また、かしめ部36と共に形成される油溜まり部35も同様に、第一嵌合部30及び第二嵌合部40のどちらに形成されてもよい。
また、本実施形態において、かしめ部36は、ポンチ53により第一先端部32が押し拡げられることにより形成されたものであったが、これに限定するものではない。すなわち、かしめ部36は、第一嵌合部30の側面が第二嵌合部40の側面に押し込まれた状態に形成することができる種々の方法を採用して形成することができる。
また、素材Mからワッシャ片10を抜き取る方法は、プレス加工に限定するものではなく、例えばレーザ切断装置を用いるものであってもよい。このように、レーザ切断装置を用いることにより、第一嵌合部30及び第二嵌合部40の形状の設計自由度を向上させることができる。
また、本実施形態において例示したワッシャ1の材料(裏金Y1とライニングY2)は特に限定するものではなく、種々の材料を適宜選択することが可能である。
また、本実施形態においては、裏金Y1とライニングY2を有するバイメタルを用いてワッシャ1を形成する例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、バイメタルを用いる必要はない。例えば、本発明に係る摺動部材は、単一の材料からなる素材を用いて形成することも可能である。
また、本実施形態においては、溶接部37を裏金Y1にのみ形成する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、反対側(ライニングY2側)からレーザーを照射し、当該ライニングY2にのみ溶接部37を形成することも可能である。また、強度が落ちる可能性はあるものの、裏金Y1とライニングY2に亘るように溶接部37を形成することも可能である。但し、材料によっては、溶接によるスズ汗の発生(発汗)のおそれもあるため、発汗の可能性のない材料に対して溶接を行うことが望ましい。
また、本実施形態においては、溶接部37を第一先端部32の全域(全周)に亘るように形成するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、要求される性能(強度)に応じて任意の位置に溶接部37を形成することが可能である。但し、強度向上の観点から、かしめ部36(2つの部材が密着している部分)を溶接することが好ましい。
また、本実施形態においては、油溜まり部35及び溶接部37を、ワッシャ1における同じ側面(上側面)に形成した例を示した(図10参照)が、本発明はこれに限るものではない。すなわち、油溜まり部35と溶接部37は、互いに異なる側面に形成されてもよい。
また、本実施形態においては、溶接工程S5においてレーザーを用いて溶接を行うものとしたが、溶接の方法は特に限定するものではない。例えば、レーザー溶接の方法としては、種々の方法(YAGレーザー、ファイバーレーザー等)を用いることが可能である。また、レーザー溶接に限らず、その他種々の溶接方法を用いることも可能である。
以下では、図12及び図13を用いて、別実施形態に係るワッシャの構成について説明する。なお、図12及び図13においては、溶接部37の図示を省略している。
図12(a)は、第二実施形態に係るワッシャ2の構成の一部を示した正面図である。図12(a)に示すように、ワッシャ2においては、第一嵌合部30のうち、第一基端部31が略矩形状に形成されると共に、第一先端部32が略四角形状に形成される。また、第二嵌合部40のうち、第二基端部41が略矩形状に形成されると共に、第二先端部42が略四角形状に形成される。このように、第一嵌合部及び第二嵌合部は、丸みを帯びた形状に限定されず、角を有する形状であってもよい。
図12(b)は、第三実施形態に係るワッシャ3の構成の一部を示した正面図である。図12(b)に示すように、ワッシャ3においては、ワッシャ片10のそれぞれの端部に第一嵌合部30及び第二嵌合部40の両方が形成される。このような構成により、複数のワッシャ片10同士をより強固に固定することができる。
図13は、第四実施形態に係るワッシャ4の構成を示した正面図である。図13に示すように、ワッシャ4においては、4つのワッシャ片10のうち、第一ワッシャ片11及び第三ワッシャ片13だけに第二嵌合部40が形成される。また、4つのワッシャ片10のうち、第二ワッシャ片12及び第四ワッシャ片14だけに第一嵌合部30が形成される。このように、ワッシャ4においては、2種類のワッシャ片10を用いて、当該1つのワッシャを形成することができる。