JP2020152702A - 核酸吸着材 - Google Patents

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Abstract

【課題】タンパク質、核酸などを含む溶液中の核酸を選択的に吸着することができる核酸吸着材を提供する。【解決手段】窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーを備える、核酸吸着材。窒素原子を含むカチオン性基としては、アミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、4級アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基、4級イミダゾリウム基、ピリジル基、4級ピリジニウム基などが挙げられる。【選択図】図4

Description

本発明は、核酸吸着材、及びこの核酸吸着材を用いた核酸吸着方法に関する。
細胞培養や微生物培養により酵素、抗体、サイトカインなどの有用物質を生産する際、目的の有用物質を含む培養液中には、細胞や微生物、目的物質の他に、核酸や、培養液成分である糖、塩のような低分子化合物が含まれる。従って、目的物質以外の夾雑成分を除去して製品とする必要がある。
特に、核酸は培養液の粘度を上昇させるため、有用物質の分離及び精製の効率を低下させる原因となる。目的物質は、糖タンパク質を含むタンパク質である場合が多いため、タンパク質を除去せずに、核酸を選択的に除去する技術が求められている。
例えば、特許文献1は、タンパク質溶液から核酸又はエンドトキシンを除去するために低分子キトサンを用いることを開示している。
また、特許文献2は、タンパク質溶液から核酸又はエンドトキシンを除去するためにN-アルキル化したキトサンからなる二分子膜を固定化した担体を用いることを開示している。
特開昭63-56300号 特開2015-23820号
本発明は、タンパク質、核酸などを含む溶液中の核酸を選択的に吸着することができる核酸吸着材、及びタンパク質、核酸などを含む溶液中の核酸を選択的に吸着できる核酸吸着方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、核酸を強く吸着し、また処理対象液の液性を調整することにより、タンパク質を吸着せずに核酸を選択的に吸着できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の〔1〕〜〔11〕を提供する。
〔1〕 窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーを備える、核酸吸着材。
〔2〕 窒素原子を含むカチオン性基が、多価アミンに由来する官能基、及び/又は第4級アンモニウム基である、〔1〕に記載の核酸吸着材。
〔3〕 窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーの陰イオン交換容量が0.01〜5meq/dry−gとなるように、セルロースナノファイバーが窒素原子を含むカチオン性基を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の核酸吸着材。
〔4〕 セルロースナノファイバーが、1nm〜1000nmの平均繊維径を有する、〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の核酸吸着材。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の核酸吸着材が充填された核酸吸着用カラム。
〔6〕 セルロースナノファイバーに窒素原子を含むカチオン性基を導入する工程を含む、〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の核酸吸着材を製造する方法。
〔7〕 〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の核酸吸着材と核酸を含有する液体とを接触させる工程を含む、核酸が除去された液体の製造方法。
〔8〕 〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の核酸吸着材と、目的物質及び核酸を含有する液体とを接触させる工程を含む、核酸が除去された目的物質を含有する液体の製造方法。
〔9〕 目的物質がタンパク質である、〔8〕に記載の方法。
〔10〕 目的物質が細胞生産物又は微生物生産物である、〔8〕又は〔9〕に記載の方法。
〔11〕 〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の核酸吸着材と核酸を含有する液体とを接触させる工程と、核酸吸着材に吸着した核酸を核酸吸着材から離脱させる工程を含む核酸精製方法。
本発明の核酸吸着材は、DNAなどの核酸を強く吸着する。窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーを備える本発明の核酸吸着材は、同様の官能基を有するセルロース粒子に比べて、格段に核酸吸着容量が高い。
また、処理対象である核酸含有液の液性を調整することにより、タンパク質を吸着せずに核酸を選択的に吸着することができる。微生物培養や細胞培養により酵素、抗体、サイトカインなどの有用物質を生産する際の有用物質は、糖タンパク質を含むタンパク質である場合が多い。従って、タンパク質を吸着せずに核酸を選択的に吸着する本発明の核酸吸着材を用いれば、有用物質の回収率を低下させずに核酸を吸着除去することができる。
また、核酸は酸性を示すことから、酸性タンパク質との分離が特に難しいが、本発明の核酸吸着材は、酸性タンパク質を吸着しない条件で核酸を強く吸着することができる。
また、遺伝子治療薬や研究ツールなどとして有用な核酸は、簡単に大量精製する技術が求められている。即ち、タンパク質などの生体由来成分から核酸を分離精製する技術が求められている。この点、本発明の核酸吸着材は、タンパク質を吸着せずに核酸を特異的に吸着でき、さらに核酸を吸着した核酸吸着材に所定の液性を有する溶出液を接触させることにより、吸着した核酸を高い溶出率で溶出させ回収することができる。従って、核酸精製にも有用である。
また、本発明の核酸吸着材は、幅広いpH範囲で核酸を吸着することができるため、広範囲の核酸含有液を処理対象にすることができる。
また、セルロースは医薬品や食品の賦形剤などとして汎用されており、また、セルロースナノファイバーは化粧品成分として用いられていることから分かるように、セルロースナノファイバーは安全性が確立されている。従って、本発明の核酸吸着材は、安全性が高く、医薬品などの生産工程で好適に使用できる。
エチレンジアミン固定化セルロースナノファイバーのプラスミド吸着容量を示す図である。 エチレンジアミン固定化セルロースナノファイバーのプラスミド吸着能に及ぼすpHの影響を示す図である。 エチレンジアミン固定化セルロースナノファイバーのDNA吸着能に及ぼすイオン強度の影響を示す図である。 エチレンジアミン固定化セルロースナノファイバー及びポリアリルアミン固定化セルロースナノファイバーが、タンパク質とDNAを含む処理対象液中のDNAを選択的に吸着し、さらに溶出液中にDNAを溶出したことを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)核酸吸着材
本発明の核酸吸着材は、窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーを備える核酸吸着材である。
セルロースナノファイバー
「セルロースナノファイバー」とは、ナノメートルオーダーの平均繊維径を有する繊維状のセルロースをいう。
平均繊維径は、1nm〜1000nm程度であればよい。また、3nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、又は30nm以上で、1000nm以下、500nm以下、300nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、又は50nm以下とすることができ、また、これらの組み合わせとすることができる。例えば、3nm〜500nm、5nm〜300nm、又は10nm〜200nmの範囲が挙げられる。
また、セルロースナノファイバーは、繊維径について高い均一性を有することが好ましい。セルロースナノファイバーの繊維径分布の標準偏差は、100nm以下、70nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、又は20nm以下が好ましい。
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、5μm以上、10μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、500μm以上、又は1000μm以上とすることができ、100000μm以下、10000μm以下、3000μm以下、2500μm以下、2000μm以下、1500μm以下、又は1200μm以下とすることができ、また、これらの組み合わせとすることができる。例えば、10μm〜3000μm、100μm〜2500μm、200μm〜2000μm、300μm〜1500μm、又は500μm〜1200μmが挙げられる。
セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、例えば、100以上、500以上、1000以上、2000以上、3000以上、5000以上、10000以上、又は20000以上で、100000以下、80000以下、50000以下、40000以下、又は35000以下とすることができ、また、それらの組み合わせとすることができる。例えば、2000〜100000、3000〜80000、5000〜50000、10000〜40000、又は20000〜35000が挙げられる。
「平均アスペクト比」とは、平均繊維径に対する平均繊維長の比(平均繊維長/平均繊維径)をいう。
平均繊維径、繊維径分布の標準偏差、平均繊維長、及び平均アスペクト比は、電子顕微鏡を用いて少なくとも20本のランダムに選択されたセルロースナノファイバーの寸法を測定した結果から算出した値である。
平均繊維径、繊維径分布の標準偏差、平均繊維長、及び平均アスペクト比は、セルロースナノファイバーに窒素原子を含むカチオン性基を導入する前のセルロースナノファイバーの平均繊維径、繊維径分布の標準偏差、平均繊維長、及び平均アスペクト比を意味する。窒素原子を含むカチオン性基を導入した後のセルロースナノファイバーの平均繊維径、繊維径分布の標準偏差、平均繊維長、及び平均アスペクト比は、窒素原子を含むカチオン性基導入前のセルロースナノファイバーと同程度であるが、セルロースナノファイバーに窒素原子を含むカチオン性基を導入することにより、セルロースナノファイバーが膨潤し得るため、例えば、窒素原子を含むカチオン性基導入後のセルロースナノファイバーの平均繊維径は、セルロースナノファイバーの平均繊維径よりも大きくなり得る。
セルロースナノファイバーを製造するための原料繊維の由来は特に制限されない。原料繊維としては、高等植物由来のセルロース繊維、動物由来のセルロース繊維、藻類由来のセルロース繊維、細菌由来のセルロース繊維、化学的に合成されたセルロース繊維、及びそれらの誘導体などが挙げられる。高等植物由来のセルロース繊維としては、針葉樹や広葉樹由来の木材パルプ等の木材繊維;コットンリンター、ボンバックス綿、カポック等の種子毛繊維;麻、コウゾ、ミツマタ等の靭皮繊維;マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻等の葉脈繊維;竹繊維;サトウキビ繊維などが挙げられる。動物由来のセルロース繊維としては、ホヤセルロースなどが挙げられる。藻類由来のセルロース繊維としては、バロニアセルロースなどが挙げられる。細菌由来のセルロース繊維としては、酢酸菌により製造されるセルロースなどが挙げられる。化学的に合成されたセルロース繊維としては、メチルセルロースやエチルセルロースのようなアルキルセルロースなどが挙げられる。
誘導体としては、官能基が導入されたセルロース繊維が挙げられる。即ち、本発明において、「セルロース」という用語は、そのような官能基を有するものを包含する。導入し得る官能基については後述する。
原料繊維からセルロースナノファイバーを製造する方法としては、原料繊維をリファイナー、ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー等の破砕装置を用いてミクロフィブリル化することによりセルロースナノファイバーを製造する方法(特開2011-026760)、原料繊維と機能性粒子とを混合し、加圧条件化で混練することによりセルロースナノファイバーを製造する方法(特開2007-262594)、原料繊維を湿式で離解した後、予備的に解繊し、蒸煮処理し、破砕装置を用いてミクロフィブリル化することによりセルロースナノファイバーを製造する方法であって、酵素を併用する方法(特開2008-075214)、原料繊維を湿式で離解した後、予備的に解繊し、超音波処理によりミクロフィブリル化することによりセルロースナノファイバーを製造する方法であって、酵素を併用する方法(特開2008-169497)が挙げられる。
また、セルロースナノファイバーは、例えば、セルロースのイオン液体溶液やセルロースの有機溶媒溶液から紡糸することによっても製造できる(特開2015-004151)。
セルロースナノファイバーの市販品としては、ダイセルファインケム株式会社製のセリッシュ(登録商標)やKelco社製のCellulon(登録商標)が挙げられる。セリッシュとしては、ろか名人、PC110T、PC110A、PC110B、PC110S、KY100S、KY100Gが挙げられる。
窒素原子を含むカチオン性基
窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、本来的に窒素原子を含むカチオン性基を有するものであってもよく、窒素原子を含むカチオン性基をセルロースナノファイバーに導入したものであっても良い。
窒素原子を含むカチオン性基としては、例えば、アミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、4級アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基、4級イミダゾリウム基、ピリジル基、4級ピリジニウム基などが挙げられる。アミノ基は、アンモニアから水素原子1つを除去した官能基(−NH)、第1級アミンから水素原子1つを除去した官能基(−NHR)、第2級アミンから水素原子1つを除去した官能基(−NRR´)の何れであってもよい。
窒素原子を含むカチオン性基は非環状であってもよく、環状であってもよい。
窒素原子を含むカチオン性基は、例えば、セルロースの水酸基に導入することができる。窒素原子を含むカチオン性基を導入する方法としては、セルロースの水酸基を活性化剤で活性化し、次いで、窒素原子を含むカチオン性化合物と反応させる方法が挙げられる。窒素原子を含むカチオン性基がそれ自体反応性基を有する場合は、活性化剤での前処理は必ずしも要さない。
活性化剤としては、例えば、クロロメチルオキシラン(エピクロロヒドリン)、メタクリル酸グリジシル、アクリル酸グリシジル、ジグリシジルエーテル、エピブロモヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテルのようなエポキシ基供与体、p−トルエンスルホン酸クロリド、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム、クロロアセチルクロリド、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどが挙げられる。
活性化剤としては、エポキシ基供与体が好ましく、クロロメチルオキシラン(エピクロロヒドリン)がより好ましい。
活性化剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
窒素原子を含むカチオン性基の供与体である、窒素原子を含むカチオン性化合物としては、アンモニア、アミジン、1価アミン、多価アミン、第4級アンモニウム塩、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩などが挙げられる。
1価アミンとしては、脂肪族アミン類、特にアルキルアミン(メチルアミン、エチルアミンのような第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミンのような第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンのような第3級アミン);芳香族アミン類(アニリン、トルイジンのような第1級アミンなど);複素環式アミン類(ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、イミダゾールのような第2級アミン;ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン(コリジン)、2,6−ルチジン、キノリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンのような第3級アミンなど);アルカノールアミン又はアミノアルコール(モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタンのような第1級アミン;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンのような第2級アミン;トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−ジメチルアミノエタノール、N−ジエチルアミノエタノールのような第3級アミン)などが挙げられる。
多価アミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン;4,4′−ジアミノ−3,3′ジメチルジシクロヘキシルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンのような脂環族ジアミン;フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、キシリレンジアミンのような芳香族ジアミン;ピペラジンのような複素環式ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンペンタミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、グアニジンのような3価以上の脂肪族アミン;メラミンのような3価以上の芳香族アミンなどが挙げられる。
また、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、アミノ酸(中でも、リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、トリプトファンのような塩基性アミノ酸)、アミノ酸の重合体(中でも、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリトリプトファンのような塩基性アミノ酸の重合体)、ポリクレアチニンなどのアミノ基を有するポリマーも挙げられる。ポリマーは、直鎖状、分岐状の何れであってもよい。ポリマーの数平均分子量は、例えば、50以上、100以上、又は150以上であってよく、1,000,000以下、100,000以下、10,000以下、5,000以下、2,000以下、又は1,000以下であってよい。ポリマーの数平均分子量としては、例えば、50〜1,000,000、50〜100,000、50〜10,000、50〜5,000、50〜2,000、50〜1,000、100〜1,000,000、100〜100,000、100〜10,000、100〜5,000、100〜2,000、100〜1,000、150〜1,000,000、150〜100,000、150〜10,000、150〜5,000、150〜2,000、150〜1,000が挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、グリシジルトリメチルアンモニウム塩(塩酸塩、臭化水素酸塩など)などが挙げられる。また、例えば、上記例示した第3級アミンのアルキル化により第4級化した四級アミンも使用できる。
第4級イミダゾリウム塩としては、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム塩、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム塩、1−メチル−ベンゾイミダゾリウム塩(塩酸塩、臭化水素酸塩など)などが挙げられる。
第4級ピリジニウム塩としては、ブチルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩(塩酸塩、臭化水素酸塩など)などが挙げられる。
窒素原子を含むカチオン性化合物としては、多価アミン、1価アミン、第4級アンモニウム塩が好ましく、多価アミン、第4級アンモニウム塩がより好ましく、エチレンジアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンがさらにより好ましい。
窒素原子を含むカチオン性化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
2種以上のカチオン性化合物を使用する場合、各カチオン性化合物を導入したセルロースナノファイバーを混合して使用してもよく、或いは、2種以上のカチオン性化合物を導入したセルロースナノファイバーを使用してもよい。
また、セルロースナノファイバーを窒素原子を含むカチオン性化合物と反応させた後に、さらに修飾を施すことによってカチオン性を高めることができる。カチオン性を高めるためにアミノ基を第4級化させる化合物としては、例えば、クロロメチルオキシラン(エピクロロヒドリン)、ヨードメタン、ヨードエタンなどが挙げられる。カチオン性を高めるために窒素原子を含むカチオン性基を追加して導入する方法としては、導入したカチオン性基を活性化剤で活性化し、次いで、既に導入したカチオン性基と同じ又はこれとは異なる、窒素原子を含むカチオン性化合物と反応させる方法が挙げられる。活性化剤、窒素原子を含むカチオン性化合物としては上記例示したものを使用できる。
カチオン性を高めるために反応させる化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
セルロースナノファイバー又は活性化セルロースナノファイバーと窒素原子を含むカチオン性化合物との反応は、例えば、約10〜100℃で、約0.1〜24時間行えばよい。
溶媒としては、通常、水を用いればよいが、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2−メトキシエタノール)のようなアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒も用いることができる。溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
上記のようにして得られる、窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、窒素原子を含むカチオン性化合物がセルロースナノファイバーに結合したもの、又は窒素原子を含むカチオン性化合物が橋架け剤を介してセルロースナノファイバーに結合したものであってよい。
窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーの特性
窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーにおける、窒素原子を含むカチオン性基の含有量は、窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーの陰イオン交換容量(Anion Exchange Capacity;AEC)が、例えば0.01meq/dry・g以上、好ましくは0.1meq/dry・g以上、より好ましくは0.4meq/dry・g以上、さらに好ましくは0.9meq/dry・g以上となる量であればよい。この範囲であれば、核酸を十分に吸着することができる。
また、窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーの陰イオン交換容量(AEC)が、例えば5meq/dry・g以下、好ましくは3meq/dry・g以下、より好ましくは1.2 meq/dry・g以下となる量であればよい。この範囲であれば、処理対象試料中に酸性物質(例えば、酸性タンパク質)などのマイナスチャージを有する物質が存在する場合にそのマイナスチャージを有する物質の非特定的吸着を抑えつつ、核酸を効率よく吸着することができる。
窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、本発明の効果を妨げない範囲で、窒素原子を含むカチオン性基以外のカチオン性基を有することができる。窒素原子を含むカチオン性基以外のカチオン性基の含有量は、陰イオン交換容量(AEC)として、5meq/dry・g以下とすればよい。窒素原子を含むカチオン性基以外の陰イオン交換基は含まないことができる。この範囲であれば、処理対象試料中に酸性物質(例えば、酸性タンパク質)などのマイナスチャージを有する物質が存在する場合にそのマイナスチャージを有する物質の非特定的吸着を抑えつつ、核酸を効率よく吸着することができる。
また、窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、本発明の効果を妨げない範囲で、カチオン性基以外の官能基を有することができる。カチオン性基以外の官能基としては、アルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、硫酸基、ホルミル基、アセチル基、水素、ハロゲン原子などが挙げられる。
本発明において、イオン交換容量は、pH滴定法で測定した値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定した値である。
本発明の窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーのカラム法による核酸吸着容量は、1mLカラム当り1mg以上、3mg以上、10mg以上、40mg以上、又は50mg以上であり得る。また、カラム法による核酸吸着容量の上限値は1mLカラム当り300mg程度であり得る。
核酸吸着材
本発明の対象となる核酸の種類は限定されず、DNA、RNAが挙げられる。また、プラスミドのように環状核酸であってもよく、直鎖状核酸であってもよい。また、1本鎖、2本鎖、多重鎖の何れの核酸も対象にすることができる。さらに、リン酸化、アデニル化、アジド化、コレステロール化、ヘキシニル化、ビオチン化、チオール化、フルオロ化、ヘキサンジオール化、蛍光色素の結合などの化学修飾を施した核酸も対象にすることができる。核酸のサイズも限定されず、数塩基又は数塩基対程度のオリゴヌクレオチドから、10,000塩基又は10,000塩基対程度のポリヌクレオチドまで対象にすることができる。
本発明の核酸吸着材は、核酸を吸着して除去する際は核酸除去材として用いることができ、核酸を吸着して精製する際は核酸精製材として用いることもできる。
窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、単独で、或いは他の構成要素と組み合わせて、核酸吸着材として利用できる。即ち、本発明の核酸吸着材は、アミノ基を有するセルロースナノファイバーからなるものであってもよく、さらに他の構成要素を備えるものであってもよい。他の構成要素は、所望の核酸吸着能が得られる限り、特に制限されない。
窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、未加工の状態では、通常、繊維状であるが、膜状、柱状などの任意の形態に加工して用いることができる。成形は、例えば、製紙プロセスによって行うことができる。
また、本発明の核酸吸着材は、カラムに充填して用いることができる。本発明の核酸吸着材が充填されたカラムは、核酸吸着用、核酸除去用、又は核酸精製用のカラムとして用いることができる。
本発明の核酸吸着材は、必要に応じて、核酸フリー化して利用することができる。核酸フリー化は常法により行うことができる。例えば、洗浄液を用いて本発明の核酸吸着材を1回または複数回洗浄することにより行うことができる。洗浄液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム エタノール溶液、イオン強度2以上の緩衝液などが挙げられる。洗浄後、遠心や濾過等の固液分離手段により、本発明の核酸吸着材と洗浄液とを分離すればよい。
(2)核酸吸着方法
本発明の核酸吸着材と、核酸吸着対象材料とを接触させることにより、核酸吸着対象材料中の核酸が核酸吸着材に吸着する。
核酸吸着対象材料は、液体状の材料であればよい。液体状は流動状を含む。また、加熱又は加温により液体状とした材料であってもよい。核酸吸着対象材料は、核酸だけを含むものであってよく、核酸以外に1種以上の成分を含むものであってもよい。また、核酸やその他の成分が水やその他の溶媒に溶解又は懸濁したものであってもよい。
核酸吸着対象材料としては、例えば、細胞培養液、微生物培養液、それらからタンパク質や核酸などを精製する途中の画分液などが挙げられる。
本発明の核酸吸着材と接触させる際の核酸吸着対象材料のpHは、窒素原子を含むカチオン性基の種類や、核酸吸着対象材料のpH安定性などにより異なるが、例えば、2〜10、特に、3以上、4以上、5以上、又は6以上とすることができ、また、9以下、8以下、又は7以下とすることができる。
また、本発明の核酸吸着材と接触させる際の核酸吸着対象材料のイオン強度は、窒素原子を含むカチオン性基の種類や、核酸吸着対象材料のイオン強度安定性などにより異なるが、0.05以上、又は0.1以上とすることができる。イオン強度が低すぎると、核酸選択性が低下し、例えば、タンパク質も吸着し易くなるが、この範囲であれば良好な核酸選択性が得られる。また、核酸吸着対象材料のイオン強度は、1以下、又は0.4以下とすることができる。イオン強度が高すぎると、アミノ基と反応するイオンの濃度も高くなり、核酸吸着能が低下する場合があるが、この範囲であれば高い核酸吸着能が得られる。
本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料との接触は、例えば、バッチ法により行うことができる。「バッチ法」は、適当な容器内で本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを混合することにより、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを接触させる手法である。バッチ法は、静置して実施してもよく、撹拌や振盪して実施してもよい。接触時間は、核酸吸着対象材料の種類などにより異なるが、例えば、約5分間〜120時間、約30分間〜24時間、約1〜12時間、又は約2〜4時間とすることができる。また、接触時の温度は、核酸吸着対象材料の種類などにより異なるが、例えば、約5〜80℃、約15〜65℃、又は約25〜50℃とすることができる。
また、本発明の核酸吸着材と核酸吸着去対象材料との接触は、例えば、流動的分離法により行うことができる。「流動的分離法」とは、本発明の核酸吸着材に核酸吸着対象材料を通液することにより、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを接触させる手法である。具体的には、例えば、本発明の核酸吸着材をカラムに充填し、このカラムに核酸含有液を通液することにより、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを接触させることができる。また、例えば、本発明の核酸吸着材がフィルター状に成形されている場合は、このフィルターに核酸吸着対象材料を通液することにより、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを接触させることができる。膜としては、メンブランフィルター、中空糸膜、チューブラー膜などの形態が挙げられる。また、本発明の核酸吸着材が柱状などに成形されている場合は、この柱状物などに核酸吸着対象材料を通液することにより、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを接触させることができる。柱状物は、例えば、微小な孔を有する連続した多孔体としてモノリスクロマトグラフィーに供することができる。また、ろ紙上に本発明の核酸吸着材を載せ、そこに核酸吸着対象材料を通液することにより、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを接触させることができる。
本発明の核酸吸着材に核酸を吸着させた後に混合物から本発明の核酸吸着材を、ろ過又は遠心分離などにより分離することができる。
本発明の核酸吸着材と、核酸吸着対象材料とを接触させることにより、核酸吸着対象材料中の核酸が核酸吸着材に吸着し、核酸が除去された材料が得られる。このように、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを接触させる工程を含む核酸吸着方法は、核酸除去方法とすることができる。核酸除去方法は、さらに、核酸が除去された材料と核酸を吸着した核酸吸着材を分離する工程、例えば、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料との混合物から、核酸が除去された材料を回収する工程を含むことができる。核酸除去方法は、換言すれば、核酸が除去された材料の製造方法である。
この核酸除去方法により、処理後の核酸除去対象材料中の核酸濃度又は含有量を、処理前と比較して、例えば、50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、2%以下、又は1%以下に低下させることができる。
核酸が除去されたこと及びその程度は、処理後の核酸対象材料中の核酸を、例えば、必要に応じてPCRなどの核酸増幅法で増幅した後、蛍光インターカレーター、蛍光プローブ、又は電気泳動により検出することで確認できる。
また、本発明の核酸吸着材と核酸吸着対象材料とを接触させる工程と、核酸吸着材に吸着した核酸を核酸吸着材から離脱させる工程を含む方法は、核酸精製方法とすることができる。
核酸を変性させずに核酸吸着材から離脱させるには、核酸を吸着した核酸吸着材を、イオン強度1〜2程度及び/又はpH 9程度の緩衝液と接触させたり、このような緩衝液を通液すればよい。
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)核酸吸着材の製造
エチレンジアミン(EDA)固定化セルロースナノファイバー
500mLセパラブルフラスコに、20 wet−gの湿潤状態のセルロースナノファイバー(セリッシュろか名人;ダイセルファインケム株式会社製)と、5%(w/w) 水酸化ナトリウム水溶液(5gの水酸化ナトリウム(特級;ナカライテスク製)を95mL水に溶解したもの)を入れ、30℃水浴中で1時間撹拌した。次いで、セパラブルフラスコに160mLのクロロメチルオキシラン(特級;和光純薬工業株式会社製)を加え、さらに30℃水浴中で2時間撹拌した。撹拌速度は一定とした。反応物を濾布(東レシルク, メッシュサイズ 20μm, 東レ株式会社製)上で吸引ろ過し、固形分(ろ過残渣)としてエポキシ活性化セルロースナノファイバーを得た。得られたエポキシ活性化セルロースナノファイバーと、30%(v/v) エチレンジアミン(EDA)水溶液(30mL EDA(和光純薬工業株式会社製)と70mL水の混合液)をセパラブルフラスコに入れ、45℃の水浴中で4時間攪拌した。反応物を東レシルク上で超純水を用いて洗浄液のpHが中性付近になるまで十分に洗浄し、固形分(ろ過残渣)としてEDA固定化セルロースナノファイバーを得た(EDA-CNF-1)。
また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を10%(w/w)にした他は、EDA-CNF-1の製造と同様にしてEDA-CNF-2を製造した。
反応容器にイオン交換水(DW)約4kg、48w/w%水酸化ナトリウム水溶液約2kgを仕込んだ。セリッシュろ過名人(ダイセルファインケム株式会社製)1kgを追加し、室温で1時間撹拌した。クロロメチルオキシランを約2kg追加し室温で、終夜撹拌した。固形分を濾取し、DWで十分に洗浄した後、反応容器に戻した。DW 約4kgを仕込んだ後、エチレンジアミン約0.5 kgを加え終夜撹拌した。固形分を濾取し、DWで十分に洗浄し、EDA固定化セルロースナノファイバーを得た(EDA−CNF−3)。
ポリアリルアミン(PAA)固定化セルロースナノファイバー
30%EDA水溶液に代えて30%(w/w)ポリアリルアミン水溶液(平均分子量1,600);ニットーボーメディカル株式会社製)を100mL添加した他は、EDA-CNF-1の製造と同様にしてポリアリルアミン(PAA)固定化セルロースナノファイバー(PAA-CNF)を製造した。
ポリエチレンイミン(PEI)固定化セルロース粒子
500ml四ツ口フラスコに、15gのセルロース粒子(CellufineGH−25;JNC株式会社製)と、20%(w/w)水酸化カリウム水溶液(42.4gの水酸化カリウム(一級;和光純薬工業株式会社製)を169.6mlの水に溶解させたもの)を入れ、30℃水浴中で1時間撹拌した。次いで、四ツ口フラスコに113mlのクロロメチルオキシラン(特級;和光純薬工業株式会社製)を加え、40℃水浴中で2時間撹拌した。反応物をろ布(TF−301B;通気度 10.2cc/cm/sec;東レ株式会社製)上で吸引濾過し、固形分(ろ過残渣)としてエポキシ活性化セルロース粒子(Ep−MCC)を得た。
得られたEp−MCCを500ml四ツ口フラスコに入れ、132.4mlの水に分散させた。その後、50%(w/w)ポリエチレンイミン水溶液(25.4mlポリエチレンイミン(平均分子量1800;和光純薬工業株式会社製)と25.4ml水の混合液)を滴下し、50℃の水浴中で2時間撹拌した。反応物をろ布上で吸引濾過し、超純水を用いて洗浄した。得られた固形分(ろ過残渣)を500ml四ツ口フラスコに入れ、水200ml中で室温で1時間撹拌した。ろ布上で吸引濾過して超純水及びメタノールで洗浄を行い、ポリエチレンイミン固定化セルロース粒子(PEI-ビーズ)を得た。
ポリアリルアミン(PAA)固定化セルロース粒子
PEI固定化セルロース粒子の製造と同様にして、Ep−MCCを得た。得られたEp−MCCを500ml四ツ口フラスコに入れ、100 mlの水に分散させた。その後、30%(w/w)ポリアリルアミン水溶液(50ml(平均分子量1,600);ニットーボーメディカル社))を滴下し、その後は、PEI固定化セルロース粒子の製造と同様にし、ポリアリルアミン固定化セルロース粒子(PAA-ビーズ)を得た。
(2)各種の核酸吸着材のDNA吸着容量の評価
EDA-CNF-1、EDA-CNF-2、PAA-CNF、PAA-ビーズ、及びPEI-ビーズを、それぞれ、カラム(0.9cmφ×3.0cm内径、容量1.9mL)に充填し、50μg/mL DNA水溶液(サケ精巣由来、分子量3×10)の50〜2000mLを、流速0.1mL/分で通液しながら、5mLずつ分取して回収した。分取した溶出液に含まれるDNA濃度をDAPIを用いた蛍光測定により定量し、DNA吸着容量は以下の式により算出した。

DNA吸着容量
=カラムに通液したDNAの総量(50(μg/mL)×通液量(mL))−カラムから溶出したDNAの総量(分取した各溶出液のDNA量(溶出液のDNA濃度(μg/mL)×5mL)の合計)
各吸着材の陰イオン交換容量(AEC)とDNA吸着容量(mg/mL カラム)を表1に示す。
アミノ化セルロースナノファイバーは、陰イオン交換容量(AEC)、即ちアミノ基の導入量がアミノ化セルロース粒子と同程度であるにも拘らず、アミノ化セルロース粒子に比べて、核酸吸着容量が桁違いに高いことが分かる。
(陰イオン交換容量の測定方法)
陰イオン交換容量(Anion Exchange Capacity;AEC)は、塩酸を用いた逆滴定法により測定した。手順を以下に示す。
アミノ化セルロースナノファイバー、及びアミノ化セルロース粒子を、それぞれ24時間以上室温で減圧乾燥し、約0.5gをスクリュー管に精密秤量した。ファクター既知の0.1mol/l塩酸20mlを加え、ローラー上で2時間撹拌した。ろ紙を用いて濾過し、ろ液を10ml別のスクリュー管に取った。ファクター既知の0.05mol/l水酸化ナトリウム水溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定を行った。

以下の式によりAECを算出した。
AEC(mEq/dry・g)
=(0.1×fHCl×20−0.05×fNaOH×V×20/10)÷W
HCl : 使用した塩酸のファクター
NaOH : 使用した水酸化ナトリウムのファクター
V : 滴定量(ml)
W : 粒子の乾燥重量(dry・g)
(3)プラスミド吸着容量の評価
9,000塩基対のサイズのプラスミド(終濃度:0.01〜100,000ppb)とEDA固定化セルロースナノファイバー(EDA-CNF-3)(終濃度:1%)を試験管中で混合し、25℃300rpmの条件で1.5時間振盪した。その後、混合物をろ紙(ADVANTEC Φ90mm No.131)でろ過して、EDA固定化セルロースナノファイバーを除去した。
ろ液に含まれるプラスミドをPCRで検出した。PCRは、TAKARA LA Taq及び2×GCバッファー(I)を用いたPCR反応液10μLにより行った。PCRプライマーとしては、
フォワードプライマー:(5’−CTCTCGCCGTCGGCGTGCAGTTGCTTCCTC−3’)(配列番号1)
リバースプライマー :(5’−CATGGACGCCCTCCAGGGCACCCGGAAGAC−3’)(配列番号2)
を用いた。PCRの反応条件は、94℃5分、(94℃30秒、55℃30秒、72℃2分)を30サイクル、72℃5分とした。
PCR反応液を1%アガロース電気泳動に供し、色素(Midori Green Direct)により可視化した。結果を図1に示す。図1において、Mは分子量マーカーを示す。
プラスミド濃度100,000ppb(100ppm)以下の場合に、EDA固定化セルロースナノファイバーを使用しないコントロールに比べて、EDA固定化セルロースナノファイバーへのプラスミド吸着量が多かった。また、EDA固定化セルロースナノファイバーは、濃度10,000ppb(10ppm)以下のプラスミドを完全に吸着した。混合液中のEDA固定化セルロースナノファイバー濃度は1%であるから、EDA固定化セルロースナノファイバー1重量部に対して1/1,000重量部までのプラスミドを吸着できることが分かる。
(4)プラスミド吸着能に及ぼすpHの影響の評価
9,000塩基対のサイズのプラスミド(終濃度:10,000ppb)とEDA固定化セルロースナノファイバー(EDA-CNF-3)(終濃度:1%)を試験管中で混合し、25℃300rpmの条件で1.5時間振盪した。その後、混合物をろ紙(ADVANTEC Φ90mm No.131)でろ過して、EDA固定化セルロースナノファイバーを除去した。混合液として、pHを2.0〜11.0に変化させたものを調製した。
ろ液に含まれる核酸をPCRで検出した。PCRの条件は「(3)DNA吸着容量の評価」の項目に記載した方法と同じである。結果を図2に示す。図2において、Mは分子量マーカーを示す。
pH3.0〜9.0の場合に、EDA固定化セルロースナノファイバーを使用しないコントロールに比べて、EDA固定化セルロースナノファイバーへのプラスミド吸着量が多かった。特に、pH4.0〜9.0の場合に、EDA固定化セルロースナノファイバーはプラスミドを強く吸着した。窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーによる核酸吸着の最適なpHは4.0〜9.0であることが分かる。
(5)DNA吸着能に及ぼすイオン強度の影響の評価
BSA(Bovine serum albumin;ウシ血清アルブミン)とDNA(サケ精巣由来、分子量3×10)との混合液(BSA 1mg/ml、DNA 50μg/mL)4mLとEDA固定化セルロースナノファイバー(EDA-CNF-2)0.2 wet-gを混合し、25℃の下、200rpmで2時間撹拌した。混合液のイオン強度は、リン酸緩衝液濃度を調整することで、0.05又は0.2とした。また、混合液のpHを5〜9に変化させたものを調製した。混合物をろ紙(ADVANTEC Φ90mm No.131)でろ過して、EDA固定化セルロースナノファイバーを除去した。
ろ液に含まれるDNAをDAPIを用いた蛍光測定により定量し、EDA固定化セルロースナノファイバーを用いない場合のDNA量を基準値として、EDA固定化セルロースナノファイバーへの吸着率(%)を算出した。
また、ろ液に含まれるBSAをBCAキットを用いたUV−Vis測定により定量し、EDA固定化セルロースナノファイバーを用いない場合のBSA量を基準値として、EDA固定化セルロースナノファイバーへの吸着率(%)を算出した。
結果を図3に示す。
イオン強度0.2の場合、pH5〜9の全範囲で、EDA固定化セルロースナノファイバーはDNAを完全に吸着し、BSAを全く吸着しなかった。
一方、イオン強度0.05の場合、EDA固定化セルロースナノファイバーは、pH5〜9の全範囲でDNAを完全に吸着したが、pH6〜7外の範囲でBSAも吸着した。EDA固定化セルロースナノファイバーは、pH6〜7の範囲で核酸を選択的に吸着した。
BSAは酸性タンパク質(pI=4.7)であり、酸性を示す核酸との分離が特に難しいタンパク質である。窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、イオン強度を調整することで、酸性タンパク質の共存下でも、核酸を選択的に吸着できることが分かる。
(6)DNAの吸着・溶出条件の検討
EDA固定化セルロースナノファイバー(EDA-CNF-2)をカラム(0.9cmφ×3.0cm内径、容量1.9mL)に充填し、BSAとDNA(サケ精巣由来、分子量3×10)との混合液 60mL(BSA 1000μg/mL、DNA50μg/mL)をアプライした。BSAとDNAの混合液は、PBSを用いてpH=7.0、イオン強度0.2に調製した。
まず、PBSを用いてpH=7.0、イオン強度0.2に調製した溶出液を通液した。次いで、トリスバッファーを用いてpH=9、イオン強度0.2から2へのグラジエントを設けた溶出液を通液した。流速は0.1mL/分とした。溶離液中のDNAは、DAPIを用いた励起波長340nm、蛍光は波長430nmでの蛍光測定により検出し、BSAは、BCA(ビシンコニン酸)を用いた560nmでのUV-Visにより検出した。
結果を図4(A)に示す。
DNAとBSAの混液をアプライした後、ほとんどBSAは吸着せず、pH=7.0、イオン強度0.2の溶出液の通液により、BSAの99%以上が溶出した。この間、プラスミドは99%以上が吸着したままであった。また、pH=9、イオン強度0.2から2へのグラジエントを設けた溶出液の通液によりプラスミドの80%以上が溶出した。
また、PAA固定化セルロースナノファイバー(PAA-CNF)をカラム(0.9cmφ×3.0cm内径、容量1.9mL)に充填し、BSAとDNAの混合液(BSA 1000μg/mL、DNA50μg/mL)をアプライした。BSAとDNAの混合液は、PBSを用いてpH=7.0、イオン強度0.4に調製した。
まず、PBSを用いてpH=7.0、イオン強度0.4に調製した溶出液を通液した。次いで、トリスバッファーを用いてpH=9、イオン強度0.2から2へのグラジエントを設けた溶出液を通液した。流速は0.1mL/分とした。
結果を図4(B)に示す。DNAとBSAの混液をアプライした後、BSAはほとんど吸着せず、pH=7.0、イオン強度0.4の溶出液の通液により、BSAの97%が溶出した。この間、DNAは99%以上が吸着したままであった。また、pH=9、イオン強度0.2から2へのグラジエントを設けた溶出液の通液によりDNAの26%が溶出した。
窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーは、pHやイオン強度を選択することで、核酸を強く吸着し、またタンパク質と精度良く分離できることが分かる。
本発明の核酸吸着材は、核酸を強く吸着し、またタンパク質を吸着せずに核酸を選択的に吸着することができる。従って、微生物培養や細胞培養により酵素、抗体、サイトカインなどの有用物質を生産する際、有用物質を吸着せずに、培養液中の核酸を吸着し除去することができる。また、遺伝子治療薬や研究ツールとしての核酸などの製造において、核酸を吸着して精製することができる。

Claims (11)

  1. 窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーを備える、核酸吸着材。
  2. 窒素原子を含むカチオン性基が、多価アミンに由来する官能基、及び/又は第4級アンモニウム基である、請求項1に記載の核酸吸着材。
  3. 窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースナノファイバーの陰イオン交換容量が0.01〜5meq/dry−gとなるように、セルロースナノファイバーが窒素原子を含むカチオン性基を有する、請求項1又は2に記載の核酸吸着材。
  4. セルロースナノファイバーが、1nm〜1000nmの平均繊維径を有する、請求項1〜3の何れかに記載の核酸吸着材。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の核酸吸着材が充填された核酸吸着用カラム。
  6. セルロースナノファイバーに窒素原子を含むカチオン性基を導入する工程を含む、請求項1〜4の何れかに記載の核酸吸着材を製造する方法。
  7. 請求項1〜4の何れかに記載の核酸吸着材と核酸を含有する液体とを接触させる工程を含む、核酸が除去された液体の製造方法。
  8. 請求項1〜4の何れかに記載の核酸吸着材と、目的物質及び核酸を含有する液体とを接触させる工程を含む、核酸が除去された目的物質を含有する液体の製造方法。
  9. 目的物質がタンパク質である、請求項8に記載の方法。
  10. 目的物質が細胞生産物又は微生物生産物である、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 請求項1〜4の何れかに記載の核酸吸着材と核酸を含有する液体とを接触させる工程と、核酸吸着材に吸着した核酸を核酸吸着材から離脱させる工程を含む核酸精製方法。
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