JP2020159366A - オイル供給構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】筒状体の内側に配設された対象物に対し、十分なオイル供給量を確保する。【解決手段】オイル供給構造20は、オイルを貯留する貯留部18を有するケーシング15と、ケーシング15に対して回転可能に支持され、貯留部18に貯留されているオイル内に部分的に浸漬される筒状体24と、筒状体24の内側に配設され、オイルの供給対象である対象物と、筒状体24の周面部24Fに貫設された第一開口40と、筒状体24が所定の回転方向Rに回転しているときに、第一開口40にオイルを導く第一誘導構造50と、を備える。【選択図】図3
Description
本発明は、対象物にオイルを供給するための構造であって、例えば車両に搭載された歯車装置に好適なオイル供給構造に関する。
従来、車両の駆動源(エンジンやモータ)からの動力を伝達する動力伝達機構として、多数の歯車からなる歯車装置を備え、駆動源からの動力を前後輪や左右輪に分配したり、回転速度を変速させたりする装置が存在する。例えば、遊星歯車機構を内蔵し、左右輪の駆動トルクの配分を変更できるデフ装置(ディファレンシャル装置)が知られる。このような装置では、作動に伴い発熱する部品があれば適宜冷却が必要であり、また、歯車やシャフトといった回転要素を支持する軸受が滑らかに動作するように潤滑が必要とされる。このため、こういった装置には、冷却及び潤滑用のオイルを供給するための構造が設けられる。
例えば、下記特許文献1には、多数の歯車を収容したケーシングの下部にオイルを貯留する貯留部が設けられるとともに、貯留部内のオイルに歯車の一部分が浸漬されており、歯車の回転によりオイルをかき上げる構造が開示されている。この構造は、歯車の回転に伴う遠心力でオイルを飛ばすことで、ケーシング内壁に設けたオイル経路にオイルを供給して、オイル経路を介して軸受等の対象物にオイルを供給するものである。なお、特許文献1では、オイルを供給するための構造が、遊星歯車式の差動装置を備えた車両用発進アシスト装置に適用されている。
ところで、上記の特許文献1のように、ケーシング内に遊星歯車機構を含む歯車装置が収容された構成では、各回転要素(歯車,シャフト)やこれを支持する軸受に対して十分なオイルを供給することが難しい場合がある。例えば、遊星歯車機構に着目すると、リングギヤは円筒形状の筒状体(いわゆるアニュラス)の内面側にピニオンギヤと噛合する歯を有し、筒状体の内側にキャリアやサンギヤ等が配設されるが、筒状体の軸方向寸法が大きい場合には、リングギヤの回転に伴う遠心力でオイルを飛ばしても、筒状体の内側にはオイルが導かれない。
このため、筒状体の内側にオイルを供給すべき対象物(例えばサンギヤやキャリアを支持する軸受)が配設される構成に、上記の特許文献1に記載されたオイル供給用の構造を適用しても、オイルの供給量が十分に確保されないおそれがある。なお、このような課題は、筒状体がリングギヤである場合に限らず、筒状体の内側にオイルを供給すべき対象物が配設される構成において、同様に生じうる。
本件のオイル供給構造は、このような課題に鑑み案出されたもので、筒状体の内側に配設された対象物に対し、十分なオイル供給量を確保することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
(1)ここで開示するオイル供給構造は、オイルを貯留する貯留部を有するケーシングと、前記ケーシングに対して回転可能に支持され、前記貯留部に貯留されているオイル内に部分的に浸漬される筒状体と、前記筒状体の内側に配設され、前記オイルの供給対象である対象物と、前記筒状体の周面部に貫設された第一開口と、前記筒状体が所定の回転方向に回転しているときに、前記第一開口に前記オイルを導く第一誘導構造と、を備えることを特徴とする。
(2)前記第一誘導構造は、前記筒状体の外周面であって前記第一開口よりも前記回転方向の後側に突設され、前記貯留部から前記オイルを掬い上げて前記第一開口に導くブレード部であることが好ましい。
(3)あるいは、前記第一誘導構造は、前記貯留部内であって前記筒状体と上下方向に重なる位置に配置され、前記貯留部の底面と前記筒状体の外周面との間の隙間を狭めて前記筒状体の回転に伴う前記オイルの流れを妨げる隆起部であることが好ましい。
(4)この場合、前記第一開口は、前記筒状体の外周面側の縁部が前記筒状体の内周面側の縁部よりも前記回転方向の前側に位置していることが好ましい。
(4)この場合、前記第一開口は、前記筒状体の外周面側の縁部が前記筒状体の内周面側の縁部よりも前記回転方向の前側に位置していることが好ましい。
(5)前記筒状体には、前記周面部に対して交差する方向に延在する端面部が設けられることが好ましい。この場合、前記オイル供給構造は、前記端面部に貫設された第二開口と、前記筒状体が前記回転方向に回転しているときに、前記第二開口に前記オイルを導く第二誘導構造と、を備えることが好ましい。
(6)前記対象物は車両に搭載された歯車装置であり、前記筒状体は、前記歯車装置に含まれる内歯車と一体のアニュラス部であることが好ましい。
(6)前記対象物は車両に搭載された歯車装置であり、前記筒状体は、前記歯車装置に含まれる内歯車と一体のアニュラス部であることが好ましい。
開示のオイル供給構造によれば、筒状体の周面部に設けた第一開口から筒状体の内側にオイルを供給できるため、筒状体の内側にオイルの供給対象である対象物(例えば歯車装置)が配設された構造において、この対象物にオイルが供給されやすくなる。このため、筒状体の内側に配設された対象物に対し、十分なオイル供給量を確保することができ、対象物の潤滑性能や冷却性能を向上できる。
図面を参照して、実施形態としてのオイル供給構造について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
[1.第一実施形態の構成]
本実施形態のオイル供給構造20(以下「供給構造20」という)を図1に示す。この供給構造20は、例えば車両の左右輪駆動装置10(単に「駆動装置10」という)に搭載される。以下の説明では、供給構造20を含む駆動装置10が車両に搭載された状態を基準に、重力の作用方向を下方とし、この反対方向を上方として上下方向を定める。また、車両の進行方向を前方とし、左右方向を定める。
本実施形態のオイル供給構造20(以下「供給構造20」という)を図1に示す。この供給構造20は、例えば車両の左右輪駆動装置10(単に「駆動装置10」という)に搭載される。以下の説明では、供給構造20を含む駆動装置10が車両に搭載された状態を基準に、重力の作用方向を下方とし、この反対方向を上方として上下方向を定める。また、車両の進行方向を前方とし、左右方向を定める。
図1では、駆動装置10のうち、供給構造20に関連する要部(供給構造20の周辺)を拡大して示している。この駆動装置10は、例えばAYC(アクティブヨーコントロール)機能を持った車両用のディファレンシャル装置であり、左右輪の間に介装される。AYC機能とは、左右駆動輪における駆動力(駆動トルク)の分担割合を主体的に制御することでヨーモーメントの大きさを調節し、これを以て車両のヨー方向の姿勢を安定させる機能である。
図1に示すように、駆動装置10には、歯車装置3が内蔵される。歯車装置3は、車両の左右輪に駆動トルクを伝達するための左右の出力軸13の間に介装されており、左右輪を駆動する二つのモータ(図示せず)のトルク差を増幅して左右輪の各々に伝達する機能を持つ。歯車装置3は、例えば、サンギヤ3S1及びリングギヤ3R(内歯車)が入力要素であり、サンギヤ3S2及びキャリア3Cが出力要素であるダブルピニオン遊星歯車である。各出力軸13は、互いに同軸に配置された回転中心C1を持つ中空円筒状に形成され、出力要素であるサンギヤ3S2及びキャリア3Cのそれぞれに連結される。かかる歯車装置3において、歯車装置3内の各種軸受33,34,35,36は、滑らかに動作するために潤滑が必要である。
図1に示す供給構造20は、歯車装置3に対して潤滑用のオイルを供給するために設けられている。なお、このオイルは軸受33等の潤滑機能だけでなく、モータの冷却機能も併せ持つ。
本実施形態の供給構造20は、オイルを貯留する貯留部18を有するケーシング15と、ケーシング15に対して回転可能に支持されるアニュラス部24(筒状体)と、アニュラス部24の周面部24Fに貫設された第一開口40と、第一開口40にオイルを導くための第一誘導構造とを備える。
アニュラス部24は、出力軸13の軸方向と一致する中心軸を持つ筒状体からなり、貯留部18に貯留されているオイルに部分的に浸漬される。アニュラス部24は、歯車装置3に含まれるリングギヤ3Rと一体で設けられる。なお、本実施形態のリングギヤ3Rは、アニュラス部24の周面部24Fにおける一端側(左側)の内周面に形成されている。ここでいう周面部24Fとは、筒状体としてのアニュラス部24の本体をなす部位であり、一定の厚み(軸方向寸法)を有する略円筒形状の部位である。アニュラス部24の内側の空間には、歯車装置3が配設される。すなわち、オイルを供給する対象である歯車装置3(対象物)は、アニュラス部24の内部空間に位置する。なお、本実施形態のアニュラス部24の周面部24Fには、リングギヤ3Rに動力を伝達する出力歯車26が一体で設けられる。
本実施形態のアニュラス部24には、周面部24Fに対して交差する方向に延在する端面部24Eが設けられる。本実施形態の端面部24Eは、周面部24Fの他端側(右側)において周面部24Fと直交する略円形状の平面部として設けられる。上記の出力歯車26は、この端面部24Eの径方向外側端部に形成される。なお、本実施形態のアニュラス部24には、端面部24Eから周面部24Fとは反対側(右側)に向かって延びる円筒部24Cが設けられる。円筒部24Cは、出力軸13の外周面の一部に摺動可能に外嵌される部分であり、ケーシング15に固定された軸受25により軸支される。これにより、アニュラス部24がケーシング15に対して回転中心C1を中心にして回転可能に支持される。
ケーシング15は、左右のモータや歯車装置3等を収容するものである。ケーシング15は一体ものであってもよいし、複数のパーツが組み合わされて構成されたものであってもよい。歯車装置3は、ケーシング15内の下部に配置される。
貯留部18は、ケーシング15の下部に設けられ、重力によって落下してきたオイルを貯留する容器形状の部位である。図1に示す貯留部18は、ケーシング15の底面部分の一部を下方に凹設して形成される。アニュラス部24は、その一部(周面部24Fの下部)が、貯留部18内の空間に入り込むように配置される。したがって、アニュラス部24の一部(周面部24Fの下部)は、貯留部18に貯留されたオイル内に浸漬され得る。
貯留部18には吸引口19が設けられ、吸引口19にはオイル通路(図示略)が接続される。貯留部18内のオイルは、この吸引口19から外部へ吸引され、オイル通路上に介装されたオイルポンプ及びオイルクーラ(何れも図示略)を介して駆動装置10の上部に設けられた注入口(図示略)から注入される。注入されたオイルは駆動装置10内の各部を冷却及び潤滑しつつ重力によって落下して、再び貯留部18に貯留される。
なお、貯留部18に貯留されるオイルの油面(液面)の高さ位置は、オイルの流れが停止したときに最も高くなり、オイルの循環中に最も低くなる。以下、油面の高さが最も高い位置を「最高油面H1」と呼び、油面の高さが最も低い位置を「最低油面H2」と呼ぶ。本実施形態の駆動装置10では、図1中に破線で示すように、最高油面H1が出力軸13の回転中心C1以上に設定される。また、図1中に点線で示すように、最低油面H2が少なくとも吸引口19よりも上方であって、アニュラス部24が部分的に浸かる位置に設定される。
第一開口40は、アニュラス部24の周面部24Fを貫通する孔であり、アニュラス部24の外周側から内部へオイルを導くための通路として機能する。第一開口40は、周面部24Fの周方向に複数並設される。本実施形態では、図3に示すように、八個の第一開口40が、同一の軸方向位置において周方向に等間隔で(すなわち45度の位相ずれで)配列される。図2に示すように、各第一開口40は、径方向外側からみて、軸方向に長い長方形状に形成されている。また、図3に示すように、第一開口40の周方向両側の端面は、径方向及び軸方向に一致する平面として設けられる。すなわち、軸方向から見て、第一開口40の周方向両側の端面は、回転中心C1と第一開口40の径方向外側の縁部とを結んだ仮想的な直線(図3中の一点鎖線L)と一致する。
なお、図2は、供給構造20を示す模式的な斜視図であり、図3は図2のA−A矢視断面図である。図2及び図3では、アニュラス部24に一体で設けられるリングギヤ3R及び出力歯車26を省略している。また、図3では、アニュラス部24の内側に配設される歯車装置3を省略している。
第一誘導構造は、アニュラス部24が所定の回転方向Rに回転しているときに、貯留部18内のオイルを第一開口40に導き、アニュラス部24の内側に配設された対象物(ここでは歯車装置3)に対してオイルを供給する機能を持つ。図1〜図3に示すように、本実施形態の第一誘導構造は、第一開口40ごとに配置されたブレード部50として設けられる。本実施形態では、第一開口40ごとに配置された八個のブレード部50を例示している。
各ブレード部50は、アニュラス部24の回転に伴い、貯留部18のオイル内からオイル外へ出るタイミングでオイルを掬い上げるとともに、第一開口40の上方に位置したタイミングで、掬い上げたオイルをその第一開口40に導く。つまり、各ブレード部50は、オイルを掬い上げたのちそのオイルを落とすことができる形状に形成される。なお、回転方向Rは、例えば、車両の前進時におけるアニュラス部24の回転方向に設定される。
図2及び図3に示すように、ブレード部50は、アニュラス部24の周面部24Fの外周面24aであって第一開口40の回転方向Rの後側に突設される。本実施形態のブレード部50には、オイルを掬う面として機能する掬い面部51及び二つの側面部54が設けられる。掬い面部51は、径方向外側から見て、周方向に長い矩形状をなし、周方向の一端部(回転方向Rの後側の端部)が外周面24aに固定される。一方、掬い面部51の周方向の他端(回転方向Rの前側の先端51a)は、径方向外側から見て、第一開口40と重なるように配置される。
ブレード部50の掬い面部51は、回転方向Rの後方から前方に向かって、先端51aが外周面24aから離隔するように傾斜面として設けられる。二つの側面部54は、掬い面部51の軸方向両端部のそれぞれと外周面24aとを繋ぐように外周面24aから突設される。すなわち、本実施形態のブレード部50は、回転方向Rの前側から見たときにコの字型となっている。このコの字型の端面52は開口であり、掬い面部51と両側面部54と外周面24aとの間に形成される空間53を外部に開放する。
なお、両側面部54は必須ではなく、省略してもよい。ただし、上記のように側面部54が設けられることで空間53の両側面を液密に閉じることが可能であり、これによって、より確実にオイルを掬い上げ、且つ、掬い上げたオイルを空間53内に保持できる。また、ブレード部50は、その周方向寸法D1が軸方向寸法D2よりも大きいことが好ましい。周方向寸法D1が大きいほど空間53が回転方向Rに広くなるため、より多くのオイルを掬い上げ、且つ、掬い上げたオイルを空間53内に保持できる。
また、端面52の高さ寸法D3は小さいことが好ましい。掬い面部51の傾斜度を鋭角に設定することで、アニュラス部24の回転時にアニュラス部24等がオイルから受ける抵抗(負荷)の増大が抑制される。また、掬い面部51は、外周面24aに沿う曲面状に形成されることが好ましい。これにより、アニュラス部24が回転方向Rとは逆方向に回転する時(本実施形態では車両の後進時)に、アニュラス部24の回転が円滑化される。
本実施形態の供給構造20は、上記の第一誘導構造(ブレード部50)とは別の、第二の誘導構造を備える。第二誘導構造は、アニュラス部24が所定の回転方向Rに回転しているときに、貯留部18内のオイルを、アニュラス部24の端面部24E側から対象物(ここでは歯車装置3)に導く機能を持つ。すなわち、アニュラス部24の端面部24Eには、アニュラス部24の内部へオイルを導くための通路として機能する第二開口60が貫設されており、第二誘導構造は、アニュラス部24の回転時に第二開口60にオイルを導く。以下、この第二誘導構造について説明する。
図2に示すように、本実施形態の第二誘導構造は、アニュラス部24の端面部24Eに、回転中心C1から放射状に延設された複数の羽根部61と、全ての羽根部61を径方向中心側で連結する円環部62とからなるファン構造として設けられる。円環部62は円筒部24Cと一体回転する。各羽根部61には、アニュラス部24が回転方向Rに回転しているときに、アニュラス部24の外側から内側へ向かうオイルの流れF1が生じるように、角度が付けられている。これにより、第二誘導構造(ファン構造)は、アニュラス部24が回転方向Rに回転しているときに、軸方向にオイルの流れF1を生じさせる軸流ファンとして機能する。
第二開口60は、端面部24Eの広範囲に亘って貫設された円形状の貫通孔であり、この第二開口60内に上記の羽根部61及び円環部62が位置する。これにより、隣接する二つの羽根部61の間には、空間(第二開口60の一部)が設けられる。アニュラス部24の外側に存在するオイルは、第二誘導構造によって生じた流れF1に乗って、第二開口60を通じてアニュラス部24の内側に流入する。
[2.第一実施形態の作用]
第一実施形態の供給構造20は、第一開口40と、ブレード部50として設けられた第一誘導構造とを有している。このため、図3に示すように、アニュラス部24が回転方向Rに回転しているとき、各ブレード部50は、貯留部18に貯留されたオイル内を通過して、貯留部18のオイル内からオイル外へ出るタイミングでオイルを掬い上げる。ここで、最低油面H2は、アニュラス部24が部分的に浸かる位置に設定されているので、油面の高さが最も低くなるオイルの循環中(例えば車両の運転中)においても確実に、各ブレード部50はオイルを掬い上げることができる。
第一実施形態の供給構造20は、第一開口40と、ブレード部50として設けられた第一誘導構造とを有している。このため、図3に示すように、アニュラス部24が回転方向Rに回転しているとき、各ブレード部50は、貯留部18に貯留されたオイル内を通過して、貯留部18のオイル内からオイル外へ出るタイミングでオイルを掬い上げる。ここで、最低油面H2は、アニュラス部24が部分的に浸かる位置に設定されているので、油面の高さが最も低くなるオイルの循環中(例えば車両の運転中)においても確実に、各ブレード部50はオイルを掬い上げることができる。
ブレード部50がオイル外へ出てから上昇する過程では、掬い上げられたオイル55はブレード部50の空間53内に保持されている。そして、ブレード部50は、地点B1に達したタイミングで、第一開口40の上方に位置する。したがって、このタイミングで、空間53内のオイルは、重力によって、ブレード部50の下方に位置する第一開口40に導かれ、第一開口40からアニュラス部24の内側の空間に落下する。重力によって落下するオイルは、アニュラス部24の内側に配設された歯車装置3の各種軸受33,34,35,36等の潤滑箇所に供給された後に、再び貯留部18に貯留される。
また、第一実施形態の供給構造20は、図2に示すように、第二開口60と第二誘導構造(本実施形態ではファン構造)とを有している。アニュラス部24が回転方向Rに回転すると、羽根部61及び円環部62もアニュラス部24と一体で回転する。これにより、貯留部18に貯留されたオイルに、軸方向からアニュラス部24の内側に向かう方向の流れF1が生じ、この流れF1に乗ってオイルが第二開口60を通じてアニュラス部24の内側に供給される。ここで、最高油面H1が出力軸13の回転中心C1以上に設定されているため、第二誘導構造によるオイル供給機能はオイルの流れが停止したとき(例えば車両の進行停止中)に特に有効に作用する。
[3.第二実施形態の構成]
次に、第二実施形態のオイル供給構造70(以下「供給構造70」という)について、図4及び図5を用いて説明する。なお、図4及び図5はそれぞれ、図2及び図3に対応する図である。本実施形態の供給構造70は、上記の供給構造20に対し、第一開口及び第一誘導構造が異なる点を除いて同様に構成されている。以下、図1〜図3を参照して説明した第一実施形態と共通の構成要素については、第一実施形態と共通の符号を付与して、その説明を適宜省略する。
次に、第二実施形態のオイル供給構造70(以下「供給構造70」という)について、図4及び図5を用いて説明する。なお、図4及び図5はそれぞれ、図2及び図3に対応する図である。本実施形態の供給構造70は、上記の供給構造20に対し、第一開口及び第一誘導構造が異なる点を除いて同様に構成されている。以下、図1〜図3を参照して説明した第一実施形態と共通の構成要素については、第一実施形態と共通の符号を付与して、その説明を適宜省略する。
第二実施形態の供給構造70は、アニュラス部24の周面部24Fに貫設された第一開口80と、第一開口80にオイルを導くための第一誘導構造とを備えている。図4及び図5に示すように、第二実施形態の第一誘導構造は、貯留部18内であってアニュラス部24と上下方向に重なる位置に配置された隆起部90として設けられる。
隆起部90は、貯留部18の底面18aとアニュラス部24の外周面24aとの間の間隔を狭めてアニュラス部24の回転に伴うオイルの流れF2を妨げる機能を持つ。周面部24Fに接するオイルは、アニュラス部24が回転するときの慣性力によって回転方向Rと同じ方向へ動くため、貯留部18内のオイルには、上記の流れF2が生じる。
本実施形態の隆起部90は、軸方向から見て回転中心C1の真下よりも回転方向Rの前側に位置し、貯留部18の底面18aから上方へ立設されるとともに軸方向に延びる面状部位として形成されている。このため、隆起部90の位置での貯留部18の底面18aとアニュラス部24の外周面24aとの間隔G2は、隆起部90の位置よりも回転方向Rの後側での間隔G1に比べて、急激に狭くなっている。
図4及び図5に示す隆起部90は、軸方向から見て貯留部18の底面18aから略垂直に立ち上がる面状部位で形成されているが、隆起部90の形状はこれに限られない。例えば、軸方向から見て底面18aに対して回転方向Rの前側に向かって傾斜する後傾姿勢の平面状又は曲面状の隆起部であってもよいし、反対に、底面18aに対して回転方向Rの後側に向かって傾斜する前傾姿勢の平面状又は曲面状の隆起部であってもよい。
また、図4及び図5に示す隆起部90は、貯留部18の底面部分が底上げされた形状に(すなわち隆起部90が壁面状部位として)形成されているが、隆起部90の構成はこれに限られない。例えば、貯留部18の底面部分は平面状に形成され、底面18aに上記の間隔を狭める隆起物や壁部が隆起部として設けられていてもよい。
隆起部90は、図5中に二本の二点鎖線で示す領域S、すなわちアニュラス部24と上下方向に重なる位置に配置されていればよい。例えば、隆起部90が、回転中心C1の直下に配置されてもよいし、回転中心C1の直下よりも回転方向Rの後側に配置されてもよい。ただし、上記のように隆起部90が回転中心C1の直下よりも回転方向Rの前側に設けられることで、オイルの流れF2が速くなったところでその流れF2を妨げることが可能なため、より効率的にオイルを第一開口80に導くことができる。
第一開口80は、第一実施形態の第一開口40と同様の機能を持つ。すなわち、第一開口80はアニュラス部24の周面部24Fを貫通する孔であり、アニュラス部24の外周側から内部へオイルを導くための通路として機能する。第一開口80の配置及び個数は、上記の第一開口40と同様である。また、径方向外側から見た第一開口80の形状も上記の第一開口40と同様である。ただし、本実施形態の第一開口80は、図5に示すように、軸方向から見たときの形状が上記の第一開口40と異なる。
具体的には、図4及び図5に示す各第一開口80では、アニュラス部24の外周面24a側の縁部80aが内周面24b側の縁部80bよりも回転方向Rの前方に位置している。すなわち、軸方向から見て、第一開口80の周方向両側の端面は、回転中心C1と第一開口80の径方向外側の縁部80aとを結んだ仮想的な直線(図5中の一点鎖線L)に対して、傾斜している。
[4.第二実施形態の作用]
第二実施形態の供給構造70は、第一開口80と、隆起部90として設けられた第一誘導構造とを有しており、隆起部90の位置での貯留部18の底面18aとアニュラス部24の外周面24aとの間隔G2が、隆起部90の位置よりも回転方向Rの後側での間隔G1に比べて、急激に狭くなっている。このため、アニュラス部24が回転方向Rに回転しているときに、アニュラス部24の慣性力により貯留部18内のオイルは白抜き矢印F2の方向へ流れようとするものの、この流れF2は隆起部90により妨げられる。
第二実施形態の供給構造70は、第一開口80と、隆起部90として設けられた第一誘導構造とを有しており、隆起部90の位置での貯留部18の底面18aとアニュラス部24の外周面24aとの間隔G2が、隆起部90の位置よりも回転方向Rの後側での間隔G1に比べて、急激に狭くなっている。このため、アニュラス部24が回転方向Rに回転しているときに、アニュラス部24の慣性力により貯留部18内のオイルは白抜き矢印F2の方向へ流れようとするものの、この流れF2は隆起部90により妨げられる。
隆起部90により流れF2が妨げられたオイルは、アニュラス部24の回転に伴い第一開口80が隆起部90に近づいたタイミングで、白抜き矢印F3で示すように、第一開口80に導かれる。ここで、最低油面H2は、アニュラス部24が部分的に浸かる位置に設定されているので、油面の高さが最も低くなるオイルの循環中(例えば車両の運転中)においても確実に、隆起部90によって流れF2が妨げられたオイルが第一開口80に導かれる。また、各第一開口80において外周面24a側の縁部80aが内周面24b側の縁部80bよりも回転方向Rの前方に位置しているため、隆起部90により流れF2が妨げられたオイルが第一開口80からアニュラス部24の内側へ導かれやすくなっている。
第一開口80からアニュラス部24の内側に供給されたオイルは、アニュラス部24の回転に伴う慣性力や遠心力によってかき回され、一部のオイルはアニュラス部24の内周面24bに沿って油面よりも上方に導かれたのち重力により落下する。このようなオイルの動きによって、アニュラス部24の内側に配設された歯車装置3の各種軸受33,34,35,36等の潤滑箇所に適宜オイルが供給された後に、再び貯留部18に貯留される。
なお、第二実施形態の供給構造70においても、第一実施形態と同様、第二開口60と第二誘導構造(ファン構造)とを有しているので、貯留部18に貯留されたオイルが流れF1に乗って第二開口60からもアニュラス部24の内側に供給される。すなわち、本実施形態の供給構造70においても、径方向と軸方向との二方向からアニュラス部24の内側へオイルが供給される。
[5.効果]
(1)上述した供給構造20,70では、第一誘導構造50,90によりアニュラス部24の周面部24Fに設けた第一開口40,80にオイルを導くことで、第一開口40,80からアニュラス部24の内側にオイルを供給できる。したがって、アニュラス部24の内側にオイルの供給対象物(例えば歯車装置3)が配設された構造において、その対象物にオイルが供給されやすくなる。このため、アニュラス部24の内側に配設された対象物に対し、十分なオイル供給量を確保することができ、対象物の潤滑性能や冷却性能を向上できる。
(1)上述した供給構造20,70では、第一誘導構造50,90によりアニュラス部24の周面部24Fに設けた第一開口40,80にオイルを導くことで、第一開口40,80からアニュラス部24の内側にオイルを供給できる。したがって、アニュラス部24の内側にオイルの供給対象物(例えば歯車装置3)が配設された構造において、その対象物にオイルが供給されやすくなる。このため、アニュラス部24の内側に配設された対象物に対し、十分なオイル供給量を確保することができ、対象物の潤滑性能や冷却性能を向上できる。
(2)上述した第一実施形態の供給構造20では、アニュラス部24の外周面24aにおいて第一開口40の回転方向Rの後側にブレード部50が突設されている。このブレード部50により貯留部18からオイルを掬い上げ、そのオイルを、重力を利用して第一開口40からアニュラス部24の内側に供給できる。したがって、アニュラス部24の内側に配設された対象物に対しより効率的にオイルを供給できるため、十分なオイル供給量を確保することができる。
(3)一方、上述した第二実施形態の供給構造70では、貯留部18内であってアニュラス部24と上下方向に重なる位置に、貯留部18の底面18aとアニュラス部24の外周面24aとの間の隙間を狭める隆起部90が設けられている。この隆起部90により、アニュラス部24の回転に伴うオイルの流れF2が妨げられるため、行き場を失ったオイルが第一開口80からアニュラス部24の内側に供給されやすくなる。これにより、アニュラス部24の内側に配設された対象物に対し、十分なオイル供給量を確保することができる。なお、貯留部18側に第一誘導構造としての隆起部90を設けることで、アニュラス部24の形状を簡素化できるとともに、アニュラス部24の回転時における抵抗の増大を防止できる。
(4)さらに、上述した第二実施形態の供給構造70において、第一開口80は、アニュラス部24の外周面24a側の縁部80aが内周面24b側の縁部80bよりも回転方向Rの前方に位置している。このため、隆起部90で流れF2が妨げられたオイルがより一層、第一開口80からアニュラス部24の内側に供給されやすくなる。これにより、アニュラス部24の内側に配設された対象物に対し、十分なオイル供給量を確保することができる。
(5)また、上述した供給構造20,70のアニュラス部24には、端面部24Eに第二開口60が貫設されるとともに、第二開口60にオイルを導く第二誘導構造(羽根部61及び円環部62からなるファン構造)が設けられている。このため、アニュラス部24の内側に配設された対象物に対して、端面部24Eからもオイルを供給できる。これにより、アニュラス部24の内側に配設された対象物に対し、十分なオイル供給量を確保することができ、対象物の潤滑性能や冷却性能をより一層向上できる。
(6)また、上述した供給構造20,70では、車両に搭載された歯車装置3をオイルの供給対象となる対象物としており、アニュラス部24が歯車装置3に含まれるリングギヤ(内歯車)3Rと一体で設けられている。言い換えると、遊星歯車機構の一要素であるリングギヤ3Rが筒状体である場合に、上述した供給構造20,70を適用することで、この内側に配設されるサンギヤ3S1,3S2,キャリア3Cやこれらを支持する軸受33〜36に対し、十分なオイル供給量を確保することができる。したがって、歯車装置3の潤滑性能を向上でき、駆動装置10の性能向上を図ることができる。
[6.その他]
上述した供給構造20,70の構造は一例であって、上述したものに限られない。
第一実施形態のブレード部50の掬い面部51は、図2及び図3に示す傾斜面状に限られず、例えば径方向外側から見てL字形状など、回転中心C1から延びる放射線方向(径方向)の成分と回転方向の成分とを有する形状であれば、どのような形状であってもよい。
上述した供給構造20,70の構造は一例であって、上述したものに限られない。
第一実施形態のブレード部50の掬い面部51は、図2及び図3に示す傾斜面状に限られず、例えば径方向外側から見てL字形状など、回転中心C1から延びる放射線方向(径方向)の成分と回転方向の成分とを有する形状であれば、どのような形状であってもよい。
また、各実施形態においてアニュラス部24の周面部24Fに設ける第一開口40,80の個数や形状は図示の例に限定されるものではなく、オイル供給性能とアニュラス部24として機能するために必要な強度の確保とのバランスで適宜に設定されてよい。
また、各実施形態の供給構造20,70には、第一開口40,80及び第一誘導構造50,90により径方向からオイルを導く構成と、第二開口60及び第二誘導構造により軸方向からオイルを導く構成との二種類が設けられているが、少なくとも一方の構成が設けられていればよい。
また、オイルの供給対象として歯車装置3の構成は各実施形態に例示されたダブルピニオン遊星歯車に限られず、様々な構成の遊星歯車機構や遊星歯車機構以外の機構を採用可能である。また、オイルの供給対象としての歯車装置3は、トルク差を増幅して左右輪の各々に伝達する機能を持つものに限られず、トルク差を増幅する機能を持たず、左右輪のトルクを振り分けて伝達する差動装置であってもよい。
また、上述した供給構造20,70は、車両の駆動装置10の歯車装置3に対するオイルの供給のみならず、筒状体の内側に配設された対象物に対してオイルを供給する構造であれば、どのような装置にも適用可能である。例えばアウターローター型モータに対してオイル供給構造20を適用してもよい。この場合、オイル供給構造20は、アウターローター内に収納されたステータ等の冷却対象に冷却用のオイルを供給する機能を果たす。なお、車両以外の物体にオイル供給構造を設ける場合であっても、重力の方向を下方と定めればよい。
3 歯車装置(対象物)
15 ケーシング
18 貯留部
20,70 供給構造(オイル供給構造)
24 アニュラス部(筒状体)
24a 外周面
24F 周面部
3R リングギヤ(内歯車)
40,80 第一開口
50 ブレード部(第一誘導構造)
60 第二開口
61 羽根部(第二誘導構造)
62 円環部
90 隆起部(第一誘導構造)
15 ケーシング
18 貯留部
20,70 供給構造(オイル供給構造)
24 アニュラス部(筒状体)
24a 外周面
24F 周面部
3R リングギヤ(内歯車)
40,80 第一開口
50 ブレード部(第一誘導構造)
60 第二開口
61 羽根部(第二誘導構造)
62 円環部
90 隆起部(第一誘導構造)
Claims (6)
- オイルを貯留する貯留部を有するケーシングと、
前記ケーシングに対して回転可能に支持され、前記貯留部に貯留されているオイル内に部分的に浸漬される筒状体と、
前記筒状体の内側に配設され、前記オイルの供給対象である対象物と、
前記筒状体の周面部に貫設された第一開口と、
前記筒状体が所定の回転方向に回転しているときに、前記第一開口に前記オイルを導く第一誘導構造と、を備える
ことを特徴とする、オイル供給構造。 - 前記第一誘導構造は、前記筒状体の外周面であって前記第一開口よりも前記回転方向の後側に突設され、前記貯留部から前記オイルを掬い上げて前記第一開口に導くブレード部である
ことを特徴とする、請求項1に記載のオイル供給構造。 - 前記第一誘導構造は、前記貯留部内であって前記筒状体と上下方向に重なる位置に配置され、前記貯留部の底面と前記筒状体の外周面との間の間隔を狭めて前記筒状体の回転に伴う前記オイルの流れを妨げる隆起部である
ことを特徴とする、請求項1に記載のオイル供給構造。 - 前記第一開口は、前記筒状体の外周面側の縁部が前記筒状体の内周面側の縁部よりも前記回転方向の前側に位置している
ことを特徴とする、請求項3に記載のオイル供給構造。 - 前記筒状体には、前記周面部に対して交差する方向に延在する端面部が設けられ、
前記端面部に貫設された第二開口と、
前記筒状体が前記回転方向に回転しているときに、前記第二開口に前記オイルを導く第二誘導構造と、を備える
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオイル供給構造。 - 前記対象物は、車両に搭載された歯車装置であり、
前記筒状体は、前記歯車装置に含まれる内歯車と一体のアニュラス部である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオイル供給構造。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2019056320A JP2020159366A (ja) | 2019-03-25 | 2019-03-25 | オイル供給構造 |
Applications Claiming Priority (1)
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| JP2019056320A JP2020159366A (ja) | 2019-03-25 | 2019-03-25 | オイル供給構造 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2020159366A true JP2020159366A (ja) | 2020-10-01 |
Family
ID=72642518
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2019056320A Pending JP2020159366A (ja) | 2019-03-25 | 2019-03-25 | オイル供給構造 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2020159366A (ja) |
-
2019
- 2019-03-25 JP JP2019056320A patent/JP2020159366A/ja active Pending
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