JP2020171246A - 予測プログラム、予測方法および予測装置 - Google Patents

予測プログラム、予測方法および予測装置 Download PDF

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Abstract

【課題】発酵状態の推移を精度よく予測することを可能とする予測プログラム、予測方法および予測装置の提供。【解決手段】コンピュータに、微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データと、製造工程に関する過去の事例データとを取得し、取得した前記計測データと、取得した前記事例データに含まれる、過去の製造工程における前記所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する、処理を実行させることを特徴とする予測プログラム。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、予測プログラム、予測方法および予測装置に関する。
日本酒の醸造などのように微生物の発酵を利用した発酵製品の製造工程では、発酵状態に応じた製造計画を誤ると、製品品質の低下や歩留まりが低くなる。このため、例えば、日本酒の製造工程では、醸造中の温度、アルコール度数、ボーメ度、日本酒度、アミノ酸量などの計測データに基づいて将来の発酵状態を予測する。そして、予測した状態に対応する醸造計画を作成して、歩留まりの改善を行っている。このような製造工程における状態予測については、センサで計測された製造プロセスにおける時々刻々の計測値をもとに将来時刻におけるプロセスの予測値を出力する製造プロセスの操業状態の予測方法が知られている。
特開2008−146322号公報
しかしながら、上記の従来技術では、例えば日本酒の製造工程における仕込み初期の段階において時々刻々の計測値が十分ではなく、将来にわたる発酵状態の推移を精度よく予測することが困難な場合があるという問題がある。日本酒の醸造においては、仕込み初期の段階からの醸造計画が、製品品質や歩留まりに大きく影響することがある。したがって、仕込み初期の段階において、将来の発酵状態の予測精度が悪くなる場合、品質・歩留まりのよい適切な醸造計画を作成することは、例えば経験の浅い製造者にとって大変難しい作業となる。
1つの側面では、発酵状態の推移を精度よく予測することを可能とする予測プログラム、予測方法および予測装置を提供することを目的とする。
第1の案では、予測プログラムは、コンピュータに、取得する処理と、予測する処理とを実行させる。取得する処理は、微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データと、製造工程に関する過去の事例データとを取得する。予測する処理は、取得した計測データと、取得した事例データに含まれる、過去の製造工程における所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する。
本発明の1実施態様によれば、発酵状態の推移を精度よく予測することができる。
図1は、実施形態にかかる予測の概要を説明する説明図である。 図2は、実施形態にかかる予測装置の機能構成例を示すブロック図である。 図3は、実施形態にかかる予測装置の動作例を示すフローチャートである。 図4は、実施形態にかかる予測装置の動作の概要を説明する説明図である。 図5Aは、制御履歴を用いない予測計算の一例を説明する説明図である。 図5Bは、制御履歴を用いる予測計算の一例を説明する説明図である。 図6は、従来の類似例検索と、実施形態にかかる予測装置による類似例検索とを説明する説明図である。 図7は、従来の類似例検索と、実施形態にかかる予測装置による類似例検索との比較例を説明する説明図である。 図8は、デンプンとグルコースの時間変化例に関するグラフである。 図9は、予測情報を用いる期間を説明する説明図である。 図10は、実施形態にかかる予測装置のハードウエア構成例を示すブロック図である。
以下、図面を参照して、実施形態にかかる予測プログラム、予測方法および予測装置を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する予測プログラム、予測方法および予測装置は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
[概要]
図1は、実施形態にかかる予測の概要を説明する説明図である。図1に示すように、本実施形態にかかる予測では、微生物の発酵を利用した発酵製品の製造工程において計測時点(計測日T1)までの計測データ(グラフG1)を用いる。
なお、本実施形態では、微生物の発酵を利用した製造工程として日本酒の醸造工程を例示する。日本酒の醸造工程においてセンサ等で計測される物理量としては、温度、アルコール度数、ボーメ度、単位体積あたりのデンプン、麹菌、グルコース、酵母の量などがある。そして、計測日T1までの計測データには、上記の各物理量が含まれている。例えば、図1におけるグラフG1は、醸造開始から3日目の計測日T1までに計測されたアルコール、温度およびボーメのグラフである。
微生物の発酵を利用した製造工程における計測データの予測では、計測日T1以後の将来の計測データについて、微生物の発酵を利用した製造工程における各物理量を数理モデル化し、数理モデルに含まれる個々の変数(各物理量)の時間発展を計算して得る。例えば、日本酒の製造工程における各物理量は、次の式(1)〜(6)に示す連立微分方程式のように数理モデル化できる。
Figure 2020171246
式(1)〜(6)において、Sは、単位体積あたりのデンプン量を示す。Mは、単位体積あたりの麹菌の量を示す。Gは、単位体積あたりのグルコースの量を示す。Fは、単位体積あたりの酵母の量を示す。Aは、アルコール度数を示す。Tは酒樽内の温度、T<SUB>room</SUB>は酒樽がおいてある部屋の温度を示す。
式(1)は、デンプン量(S)の時間変化を表す数理モデルであり、デンプン(S)と麹菌(M)が存在する場合にデンプンが分解されることを示している。aは、デンプンの減少量に関する係数である。
式(2)は、麹菌の量(M)の時間変化を表す数理モデルであり、麹菌がデンプンを分解して増殖し、ある一定数は死滅することを示している。b(T)は、麹菌の増加量に関する温度の関数である。c(T)は、麹菌の減少量に関する温度の関数である。
式(3)は、グルコースの量(G)の時間変化を表す数理モデルであり、麹菌がグルコースを生成して清酒酵母が分解し減少することを示している。このグルコースは、日本酒の醸造工程における中間生成物の一例である。vは、グルコースの増加量に関する係数である。wは、グルコースの減少量に関する係数である。
式(4)は、酵母の量(F)の時間変化を表す数理モデルであり、酵母がグルコースを分解して増殖し、ある一定数は死滅することを示している。x(T)は、酵母の増加量に関する温度の関数である。y(T)は、酵母の減少量に関する温度の関数である。
式(5)は、アルコールの度数の時間変化を表す数理モデルであり、中間生成物のグルコースより清酒酵母がアルコールを生成することを示している。zは、アルコールの増加量に関する係数である。
式(6)は、酒樽内の温度の時間変化を表す数理モデルであり、菌類の活動により熱が発生し、ニュートンの冷却法則で外部との熱交換が行われることを示している。t<SUB>1</SUB>は、麹菌が発生する熱に関する係数である。t<SUB>2</SUB>は、酵母が発生する熱に関する係数である。t<SUB>3</SUB>は、室温との熱交換に関する係数である。
計測データの予測では、計測日T1までの計測データにおける各物理量を上記の式(1)〜(6)の個々の変数に適用し、計測日T1以後の時間発展を計算する。
ここで、本実施形態では、計測日T1以後の時間発展を計算する際の、一部の物理量については、過去に発酵製品を製造した事例(過去事例)における制御の履歴を適用する。例えば、過去事例における制御の履歴としては、温度制御における設定温度の履歴、製造工程で注入した加水量(加水履歴)などがある。本実施形態では、設定温度の履歴、加水履歴などの制御の履歴を、計測日T1以後の物理量に適用したうえで、各物理量の時間発展を計算する。なお、設定温度および加水履歴の適用は一例であり、過去の事例における制御の履歴より適用する物理量については、特に温度・加水量に限定しない。
図1におけるグラフG2は、過去事例として醸造開始以後に記録されている計測データおよび制御の履歴を示す。グラフG2における、アルコールおよびボーメは過去事例において計測された計測データである。また、グラフG2における温度は設定温度、加水履歴は加水量の履歴であり、それぞれ制御の履歴を示す。本実施形態では、グラフG2において、計測日T1に対応する時点(醸造開始から3日目)以後の制御の履歴(例えば、設定温度、加水履歴)を適用し、各物理量の時間発展を計算する。
例えば、式(6)に示す温度の時間変化については、温度制御における設定温度の履歴をもとに温度の時間変化=設定温度の履歴とし、制御の履歴を適用する。また、式(1)〜(6)における単位体積あたりのデンプン量、グルコース量、アルコール量については、加水履歴をもとに、加水量に応じた稀釈が行われたものとする。
このように、本実施形態では、計測データと、制御の履歴とに基づき、グラフG3に示すように、計測日T1から先の製造工程における将来の計測データを予測する。したがって、本実施形態では、計測日T1までの計測データだけでなく、過去の事例における制御の履歴も用いた予測を行うので、将来の計測データが示す発酵状態の推移を精度よく予測することが可能となる。
[予測装置の機能構成]
図2は、実施形態にかかる予測装置の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、予測装置1は、入力部11、出力部12、記憶部13および制御部14を有する。
入力部11は、キーボードやマウスなどの入力装置からの操作入力や他の装置との通信による入力を受け付ける処理部である。例えば、入力部11は、各種設定に関する設定情報の入力を受け付け、受け付けた設定情報を記憶部13に格納する。例えば、入力部11は、数理モデルに関連する係数などの設定を数理モデル情報131として記憶部13に格納する。また、入力部11は、醸造開始から計測した計測データの入力を受け付け、受け付けた計測データを時刻情報とともに計測データDB132に格納する。また、入力部11は、過去の事例ごとの事例データの入力を受け付け、受け付けた事例データを識別情報(例えば酒樽の識別番号など)とともに過去事例DB133に格納する。
出力部12は、制御部14における処理の結果を表示装置または印字装置などに出力する処理部である。
記憶部13は、プログラムやデータを記憶する記憶装置の一例であり、例えばメモリやハードディスクなどである。例えば、記憶部13は、数理モデル情報131、計測データDB132および過去事例DB133を記憶する。
数理モデル情報131は、製造工程における各物理量の数理モデルに関する数式、初期値、係数値などの設定情報である。
計測データDB132は、醸造工程において計測された計測値を記憶するデータベースである。例えば、計測データDB132は、計測されたグルコースの量、アルコール度数、温度などの計測データを計測時刻を示す時刻情報と対応付けて記憶する。なお、計測データDB132は、複数の酒樽から取得した計測データについて、酒樽の識別番号と対応付けて酒樽ごとに記憶してもよい。
また、計測データDB132には、計測データとともに、設定温度、加水量などの制御情報を時刻情報と対応付けて記憶してもよい。このように、計測データおよび制御情報を時刻情報と対応付けて計測データDB132に記憶しておくことで、計測データDB132のデータをそのまま過去事例の事例データとして扱うこともできる。
過去事例DB133は、醸造工程における過去の事例ごとの事例データを記憶するデータベースである。例えば、過去事例DB133は、酒樽の識別番号などで識別される事例ごとに、醸造開始からの時刻情報と対応付けられた計測データおよび制御情報を含む事例データを記憶する。
制御部14は、予測装置1全体の処理を司る処理部であり、例えばプロセッサなどである。この制御部14は、取得部141、予測部142、検索部143および提示部144を有する。なお、取得部141、予測部142、検索部143および提示部144は、プロセッサなどが実行するプロセスの一例である。
取得部141は、醸造工程における計測日T1までの計測データ、過去の事例データなどを取得する取得する処理部である。取得部141は、取得した計測データおよび事例データを予測部142へ出力する。
例えば、取得部141は、計測データDB132を参照し、醸造工程において計測日T1まで計測された計測データを取得し、取得した計測データを予測部142へ出力する。また、取得部141は、過去事例DB133を参照して過去の事例データを取得し、取得した事例データを予測部142へ出力する。
予測部142は、取得部141が取得した計測日T1までの計測データと、過去の事例データに含まれる制御の履歴とに基づき、計測日T1から先の製造工程における将来の計測データを予測する処理部である。
例えば、予測部142は、計測日T1までの計測データにおける各物理量を数理モデル情報131に基づく数理モデル(式(1)〜(6))に適用し、各物理量の時間発展を計算(予測計算)する。このとき、予測部142は、計測日T1以後の時間発展を計算する際の、一部の物理量については、過去の事例データに含まれる制御の履歴(例えば設定温度、加水履歴)を適用する。
予測部142は、数理モデルによる時間発展により得られた各物理量を予測した計測データとして検索部143に出力する。また、予測部142は、予測した計測データを出力部12を介してそのまま出力してもよい。
検索部143は、予測部142が予測した計測データをもとに、過去事例DB133に格納された過去事例ごとの事例データの中から予測した計測データと類似する事例データを検索する処理部である。具体的には、検索部143は、過去事例ごとに、予測した計測データにおける計測時刻ごとの計測値と、事例データに含まれる時刻ごとの計測値との誤差計算を行う。次いで、検索部143は、誤差が最小のものから順に過去事例を並べた検索結果を提示部144に出力する。
提示部144は、検索部143が検索した検索結果を出力部12を介して提示する処理部である。具体的には、提示部144は、検索部143の検索結果を出力部12を介して表示装置への表示または印字装置への印字などを行い、ユーザへの提示を行う。
[動作]
図3は、実施形態にかかる予測装置1の動作例を示すフローチャートである。図4は、実施形態にかかる予測装置1の動作の概要を説明する説明図である。
図3に示すように、処理が開始されると、取得部141は、計測データDB132より計測データを取得する(S1)。例えば、図4に示すように、取得部141は、計測日T1(醸造開始から3日目)までのアルコール度数、温度、ボーメ等の計測データを計測データDB132より取得する。
次いで、取得部141は、過去事例DB133より過去事例(本実施形態ではN個)の制御情報を取得する(S2)。例えば、図4に示すように、取得部141は、過去事例DB133に格納された、過去事例(N個)ごとの事例データ(アルコール度数、ボーメ等の計測データおよび設定温度、加水履歴等の制御情報)を読み出す。次いで、取得部141は、読み出した事例データに含まれる制御情報を取得する。
次いで、予測部142は、計測日T1までの計測データと、過去事例の制御情報とに基づき、過去事例(N個)の制御情報を含めた予測計算を行う(S3)。これにより、図4に示すように、S3では、過去事例における制御込みで、計測日T1から先の製造工程における将来の計測データを予測する。なお、予測部142は、過去事例(N個)の制御情報を個々に含めた予測計算を行ってもよいし、過去事例(N個)の制御情報の平均値を含めた予測計算を行ってもよい。
図5Aは、制御履歴を用いない予測計算の一例を説明する説明図である。図5Bは、制御履歴を用いる予測計算の一例を説明する説明図である。
図5Aに示すように、制御履歴を用いない予測計算では、計測日T1以後の計測データについては、加水などの手を加えずに発酵が進んだ場合のアルコール度数、温度等の予測が得られる事となる。これに対し、図5Bに示すように、制御履歴を用いる予測計算では、過去事例における制御履歴に則して加水や温度を変化させ、発酵が進んだ場合のアルコール度数等の予測が得られる事となる。
次いで、検索部143は、予測部142が予測した計測データをもとに過去事例DB133の事例データと誤差計算を行い、過去事例(N個)に対する類似度の計算を行う(S4)。例えば、図4に示すように、S4において検索部143は、予測した計測データと、過去事例それぞれとの誤差計算を行う。次いで、検索部143は、誤差が最小のものを順(類似度順)に選択し、類似例として提示部144へ出力する。次いで、提示部144は、類似度順に選択した過去事例を類似例として出力し、ユーザへの提示を行う(S5)。
図6は、従来の類似例検索と、実施形態にかかる予測装置1による類似例検索とを説明する説明図である。図7は、従来の類似例検索と、実施形態にかかる予測装置1による類似例検索との比較例を説明する説明図である。
図6に示すように、従来の類似例検索では、十分な計測データが集まっていない、または、将来の制御の情報などを用いて予測しないため、計測日T1以後の状態推移の予測精度が悪くなることがある。このように予測精度が悪い予測値をもとに検索を行うと、適切な類似例検索は困難なものとなる。
これに対し、予測装置1では、過去の事例データに含まれる計測日T1以後の制御履歴も予測に用いるので、計測日T1以後の将来的な時間発展(発酵状態の推移)を過去の製造工程に則して精度よく予測することができる。このため、予測装置1では、精度のよい予測値に基づく適切な類似例検索を実施することができる。
具体的には、図7に示すように、計測終了後の3日目段階における1番目〜5番目までの類似例の答え(正解)は、125番、47番、93番、124番、92番(番号は過去の酒樽の番号)であるものとする。従来の類似例検索では、1番目〜5番目までの類似例について、133番、125番、131番、124番、105番と予測しており、正解との誤差が大きい。これに対し、予測装置1による類似例検索では、1番目〜5番目までの類似例について、125番、124番、92番、127番、93番と予測しており、正解との誤差が従来より小さくなっている。
なお、検索部143は、S4において、予測部142が予測した計測データ(予測情報)の全てを用いて検索を行うのではなく、計測日T1以後の所定の期間内のデータを用いて検索を行ってもよい。具体的には、検索部143は、過去事例ごとに、計測値の誤差計算を行う期間を、計測日T1以後の所定の期間(例えば予め設定された日数)内に限定してもよい。
予測部142による予測は、一般的に、予測期間が先になるほど誤差が大きくなる。したがって、検索部143は、予測した計測データにおける計測日T1以後の所定の期間内のデータと類似する事例データを検索することで、予測の誤差が検索に及ぼす影響を小さくすることができる。
なお、検索部143が検索に用いる期間については、ユーザが任意に設定してもよい。また、検索部143は、予測部142が予測した計測データにおいて、所定の物理量が所定の条件を満たす期間を検索に用いる期間としてもよい。
例えば、検索部143は、予測部142が予測した計測データにおいて、単位体積あたりのデンプン量(S)またはグルコース量(G)などの醸造を進める上で主要な物理量が所定の閾値以上である期間を検索に用いる期間としてもよい。
図8は、デンプンのグルコースの時間変化例に関するグラフである。具体的には、グラフG4はデンプン(S)の時間変化を示すグラフであり、グラフG5はグルコース(G)の時間変化を示すグラフである。
図8のグラフG4に示すように、醸造工程において、デンプン(S)は、麹菌(M)により分解されて減少する。また、図8のグラフG5に示すように、中間生成物であるグルコース(G)は、デンプンの分解により増加するとともに、清酒酵母により分解されて減少する。このグラフG4、G5に示す、デンプン量やグルコース量の推移が、最終的に生成される日本酒の酒質に大きな影響を及ぼす場合がある。
したがって、検索部143は、予測部142が予測した計測データにおいて、予測したデンプン量、グルコース量が所定の閾値を下回る時点T2、T3までの期間を検索に用いる期間とする。
図9は、予測情報を用いる期間を説明する説明図である。なお、図9では、予測したデンプン量をもとに検索に用いる期間を決める事例を説明するが、グルコース量などの他の物理量についても同様であることは言うまでもないことである。
図9に示すように、S11、S12において予測部142が予測した、計測日T1以後のデンプン量をもとに、検索部143は、デンプン量が所定の閾値を下回る時点T2を求める(S13)。次いで、検索部143は、予測した計測データにおける、計測日T1以後から時点T2までの期間R1内のデータを用いて過去事例との検索を行う(S14)。
これにより、予測装置1では、醸造を進める上で主要な物理量(例えばデンプン量)が所定の条件を満たす期間の計測データと類似する事例データを検索することができる。
[効果]
以上のように、予測装置1は、取得部141と、予測部142とを有する。取得部141は、計測データDB132を参照し、微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データを取得する。また、取得部141は、過去事例DB133を参照し、製造工程に関する過去の事例データを取得する。予測部142は、取得した計測データと、取得した事例データに含まれる、過去の製造工程における所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する。
このように、予測装置1は、所定の時点までの計測データだけでなく、過去の事例データに含まれる制御の履歴も用いた予測を行うので、将来の計測データが示す発酵状態の推移を精度よく予測することが可能となる。
例えば、製造工程における仕込み初期の時点においては、十分な計測データが集まっておらず、計測データだけでは仕込み初期以後の発酵状態の推移を精度よく予測することが困難な場合がある。また、発酵物に対する温度、水分(加水)の制御工程によって、その後の推移が大きく異なる場合もある。しかし、温度、加水等の制御は、通常、製造工程において発酵がある程度(1週間程度)進行した後に行われるため、仕込み初期の期間の計測データからは制御工程の影響を考慮した発酵状態の推移予測は困難である。これに対し、予測装置1では、過去の事例データに含まれる仕込み初期以後の制御の履歴も予測に用いるので、仕込み初期以後の将来的な時間発展(発酵状態の推移)を過去の製造工程に則して精度よく予測することができる。また、発酵状態の推移を精度よく予測することで、例えば経験の浅い製造者であっても、品質・歩留まりのよい適切な醸造計画を容易に作成することが可能となる。
また、予測部142は、製造工程に関連する各物理量を示す数理モデル(例えば数(1)〜(6))をもとに、各物理量を時間発展させて将来の計測データに対応する物理量を予測する。具体的には、予測部142は、計測データに対応する所定の時点までの物理量(例えば単位体積あたりのデンプン量(S)、麹菌の量(M)、グルコース量(G)、酵母の量(F)、アルコール量(A)など)を数理モデルに適用する。また、予測部142は、制御の履歴に対応する所定の時点から先の物理量(例えば温度制御における設定温度など)を数理モデルに適用する。そして、予測部142は、適用した各物理量を数理モデルに基づいて時間発展させて将来の計測データに対応する物理量を予測する。これにより、予測装置1は、計測データおよび過去の事例データに含まれる制御の履歴をもとに、将来の計測データに対応する各物理量(例えば単位体積あたりのデンプン量(S)、麹菌の量(M)、グルコース量(G)、酵母の量(F)、アルコール量(A)など)を精度よく予測することができる。
また、予測装置1は、過去事例DB133を参照し、過去の事例ごとの事例データの中から、予測した将来の計測データと類似する事例データを検索する検索部143と、検索した事例データを提示する提示部144とをさらに有する。これにより、ユーザは、予測結果に類似する事例データを容易に確認することができる。このように、予測装置1は、予測結果に類似する事例データを参考にした醸造計画の作成を支援することができる。
また、検索部143は、予測した将来の計測データに含まれる、所定の時点から先の製造工程における所定の期間内の計測データと類似する事例データを過去事例DB133より検索する。例えば、所定の時点から先の製造工程における将来の計測データについては、予測期間が先になるほど誤差が大きくなる。したがって、予測装置1では、所定の期間内の計測データと類似する事例データを検索することで、予測の誤差が検索に及ぼす影響を小さくすることができる。
また、検索部143は、将来の計測データに含まれる複数の物理量の中の、所定の物理量が所定の条件を満たす期間を検索に用いる期間とする。例えば、検索部143は、予測した将来の計測データにおいて、単位体積あたりのデンプン量(S)またはグルコース量(G)などの醸造を進める上で主要な物理量が所定の閾値以上である期間を検索に用いる期間とする。これにより、予測装置1では、醸造を進める上で主要な物理量が所定の条件を満たす期間の計測データと類似する事例データを検索することができ、類似する事例データを参考にした醸造計画の作成を支援することができる。
また、検索に用いる期間の条件とする物理量については、単位体積あたりのグルコース量(G)など、製造工程において生成される中間生成物の量であってもよい。例えば、日本酒の醸造工程においては、グルコース量(G)などの中間生成物の生成工程が最終的に生成される日本酒の酒質に大きな影響を及ぼすことがある。したがって、予測装置1では、中間生成物であるグルコース量(G)が所定の条件を満たす期間の計測データと類似する事例データを検索することで、酒質のよい醸造計画の作成を支援することができる。
[その他]
上記の実施形態では、日本酒の醸造工程を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、ワイン、ビール、シードルなどの醸造酒に対しても同様に処理することができる。また、チーズやヨーグルトなど、醸造酒以外の製造工程に適用してもよいことは言うまでもないことである。
また、上記の実施形態で説明した各パラメータは一例であり、実施形態として記載したものに限定されず、醸造酒を製造する他のパラメータを含む数理モデルを生成することもできる。
また、上記の実施形態で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、任意に変更することができる。また、上記の実施形態で説明した具体例、分布、数値などは、あくまで一例であり、任意に変更することができる。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
[ハードウエア]
図10は、実施形態にかかる予測装置1のハードウエア構成例を示すブロック図である。図10に示すように、予測装置1は、プロセッサ101、メモリ102、入力装置103、表示装置104、通信装置105およびHDD(Hard Disk Drive)106を有する、いわゆるコンピュータの一例である。また、図10に示した各部は、バス等で相互に接続される。
プロセッサ101は、プログラム106aをHDD106等から読み出してメモリ102に展開することで、予測装置1の各機能を実行するプロセスを動作させる。すなわち、このプロセスは、予測装置1が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ101は、取得部141、予測部142、検索部143および提示部144等と同様の機能を実現するためのプログラム106aをHDD106等から読み出す。そして、プロセッサ101は、取得部141、予測部142、検索部143および提示部144等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
入力装置103は、例えばマウスやキーボードなどであり、ユーザから操作情報等の各種情報の入力を受け付ける。表示装置104は、例えば液晶ディスプレイ装置などであり、ユーザに対して表示画面等の各種画面を表示する。通信装置105は、ネットワークインタフェースカードなどであり、他の装置との通信を行う。HDD106は、プログラム106aの他、数理モデル情報131、計測データDB132および過去事例DB133に関する各種情報を記憶する。
このように予測装置1は、プログラム106aを読み出して実行することで予測方法を実行する情報処理装置として動作する。すなわち、プログラム106aは、予測プログラムの一例である。また、予測装置1は、媒体読取装置によって記録媒体からプログラム106aを読み出し、読み出されたプログラム106aを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、プログラム106aは、予測装置1単体によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、同様に適用することができる。
また、プログラム106aは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、プログラム106aは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO(Magneto−Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)コンピュータに、
微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データと、前記製造工程に関する過去の事例データとを取得し、
取得した前記計測データと、取得した前記事例データに含まれる、過去の製造工程における前記所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、前記所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する、
処理を実行させることを特徴とする予測プログラム。
(付記2)前記予測する処理は、前記製造工程に関連する各物理量を示す数理モデルをもとに、取得した前記計測データに対応する前記所定の時点までの物理量と、前記制御の履歴に対応する前記所定の時点から先の物理量とを適用し、前記各物理量を時間発展させて前記将来の計測データに対応する物理量を予測する、
ことを特徴とする付記1に記載の予測プログラム。
(付記3)過去の事例ごとの前記事例データの中から、予測した前記将来の計測データと類似する事例データを検索し、
検索した前記事例データを提示する処理をさらにコンピュータに実行させる、
ことを特徴とする付記1または2に記載の予測プログラム。
(付記4)前記検索する処理は、前記所定の時点までの計測データ、および、予測した前記将来の計測データである予測データのうち、前記所定の時点から先の製造工程における所定の期間までの予測データと類似する事例データを検索する、
ことを特徴とする付記3に記載の予測プログラム。
(付記5)前記検索する処理は、前記予測データに含まれる複数の物理量の中の、所定の物理量が所定の条件を満たす期間を検索に用いる前記所定の期間とする、
ことを特徴とする付記4に記載の予測プログラム。
(付記6)前記所定の物理量は、前記製造工程において生成される中間生成物の量である、
ことを特徴とする付記5に記載の予測プログラム。
(付記7)コンピュータが、
微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データと、前記製造工程に関する過去の事例データとを取得し、
取得した前記計測データと、取得した前記事例データに含まれる、過去の製造工程における前記所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、前記所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する、
処理を実行することを特徴とする予測方法。
(付記8)前記予測する処理は、前記製造工程に関連する各物理量を示す数理モデルをもとに、取得した前記計測データに対応する前記所定の時点までの物理量と、前記制御の履歴に対応する前記所定の時点から先の物理量とを適用し、前記各物理量を時間発展させて前記将来の計測データに対応する物理量を予測する、
ことを特徴とする付記7に記載の予測方法。
(付記9)過去の事例ごとの前記事例データの中から、予測した前記将来の計測データと類似する事例データを検索し、
検索した前記事例データを提示する処理をさらにコンピュータが実行する、
ことを特徴とする付記7または8に記載の予測方法。
(付記10)前記検索する処理は、前記所定の時点までの計測データ、および、予測した前記将来の計測データである予測データのうち、前記所定の時点から先の製造工程における所定の期間までの予測データと類似する事例データを検索する、
ことを特徴とする付記9に記載の予測方法。
(付記11)前記検索する処理は、前記予測データに含まれる複数の物理量の中の、所定の物理量が所定の条件を満たす期間を検索に用いる前記所定の期間とする、
ことを特徴とする付記10に記載の予測方法。
(付記12)前記所定の物理量は、前記製造工程において生成される中間生成物の量である、
ことを特徴とする付記11に記載の予測方法。
(付記13)微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データと、前記製造工程に関する過去の事例データとを取得する取得部と、
取得した前記計測データと、取得した前記事例データに含まれる、過去の製造工程における前記所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、前記所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する予測部と、
を有することを特徴とする予測装置。
(付記14)前記予測部は、前記製造工程に関連する各物理量を示す数理モデルをもとに、取得した前記計測データに対応する前記所定の時点までの物理量と、前記制御の履歴に対応する前記所定の時点から先の物理量とを適用し、前記各物理量を時間発展させて前記将来の計測データに対応する物理量を予測する、
ことを特徴とする付記13に記載の予測装置。
(付記15)過去の事例ごとの前記事例データの中から、予測した前記将来の計測データと類似する事例データを検索する検索部と、
検索した前記事例データを提示する提示部と、をさらに有する、
ことを特徴とする付記13または14に記載の予測装置。
(付記16)前記検索部は、前記所定の時点までの計測データ、および、予測した前記将来の計測データである予測データのうち、前記所定の時点から先の製造工程における所定の期間までの予測データと類似する事例データを検索する、
ことを特徴とする付記15に記載の予測装置。
(付記17)前記検索部は、前記予測データに含まれる複数の物理量の中の、所定の物理量が所定の条件を満たす期間を検索に用いる前記所定の期間とする、
ことを特徴とする付記16に記載の予測装置。
(付記18)前記所定の物理量は、前記製造工程において生成される中間生成物の量である、
ことを特徴とする付記17に記載の予測装置。
1…予測装置
11…入力部
12…出力部
13…記憶部
14…制御部
101…プロセッサ
102…メモリ
103…入力装置
104…表示装置
105…通信装置
106…HDD
106a…プログラム
131…数理モデル情報
132…計測データDB
133…過去事例DB
141…取得部
142…予測部
143…検索部
144…提示部
G1〜G5…グラフ
R1…期間
T1…計測日
T2…時点

Claims (8)

  1. コンピュータに、
    微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データと、前記製造工程に関する過去の事例データとを取得し、
    取得した前記計測データと、取得した前記事例データに含まれる、過去の製造工程における前記所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、前記所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する、
    処理を実行させることを特徴とする予測プログラム。
  2. 前記予測する処理は、前記製造工程に関連する各物理量を示す数理モデルをもとに、取得した前記計測データに対応する前記所定の時点までの物理量と、前記制御の履歴に対応する前記所定の時点から先の物理量とを適用し、前記各物理量を時間発展させて前記将来の計測データに対応する物理量を予測する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の予測プログラム。
  3. 過去の事例ごとの前記事例データの中から、予測した前記将来の計測データと類似する事例データを検索し、
    検索した前記事例データを提示する処理をさらにコンピュータに実行させる、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の予測プログラム。
  4. 前記検索する処理は、前記所定の時点までの計測データ、および、予測した前記将来の計測データである予測データのうち、前記所定の時点から先の製造工程における所定の期間までの予測データと類似する事例データを検索する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の予測プログラム。
  5. 前記検索する処理は、前記予測データに含まれる複数の物理量の中の、所定の物理量が所定の条件を満たす期間を検索に用いる前記所定の期間とする、
    ことを特徴とする請求項4に記載の予測プログラム。
  6. 前記所定の物理量は、前記製造工程において生成される中間生成物の量である、
    ことを特徴とする請求項5に記載の予測プログラム。
  7. コンピュータが、
    微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データと、前記製造工程に関する過去の事例データとを取得し、
    取得した前記計測データと、取得した前記事例データに含まれる、過去の製造工程における前記所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、前記所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する、
    処理を実行することを特徴とする予測方法。
  8. 微生物の発酵に関連した工程を含む製造工程における所定の時点までの計測データと、前記製造工程に関する過去の事例データとを取得する取得部と、
    取得した前記計測データと、取得した前記事例データに含まれる、過去の製造工程における前記所定の時点に対応する時点から先の製造工程における制御の履歴とに基づき、前記所定の時点から先の製造工程における将来の計測データを予測する予測部と、
    を有することを特徴とする予測装置。
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菊地 亮太: "第5回設計に活かすデータ同化研究会 データ同化と機械学習を用いた実践事例の紹介 〜日本酒醸造AIの実証試", [ONLINE], JPN6022046355, 7 March 2019 (2019-03-07), pages 1 - 12, ISSN: 0004970336 *

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