以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る電力変換器の制御方法、及び、電力変換器の制御装置について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電力変換器、及び、その制御装置を備えるモータシステムの概略構成図である。
電力変換器1は、複数のスイッチング素子により構成されるインバータであり、バッテリ2の正極(P)ラインと負極(N)ラインとの間に接続される。電力変換器1は、バッテリ2から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータ3に供給する。
電力変換器1においては、制御装置10から出力される指令パルスパターンに応じてスイッチング素子が操作される。そして、スイッチング素子のオン/オフの操作に応じて、バッテリ2から出力される直流電力が交流電力に変換され、変換された交流電力がモータ3に供給される。
本実施形態においては、モータ3は、3相で駆動しており、電力変換器1は、3相6アームで駆動できるように、6つのスイッチング素子を備える。なお、このような電力変換器1、及び、モータ3の構成は一例であって、本実施形態の例に限定されるものではない。また、電力変換器1と接続される負荷は、モータ3に限らず、オーディオアンプや無線機のような、交流電力で駆動する他の機器であってもよい。
キャパシタ4は、正極ラインと負極ラインとの間に設けられており、電力変換器1におけるスイッチング素子の操作に起因するリプルを平滑化する。また、キャパシタ4の両端には電圧センサ5が設けられており、電圧センサ5は、正極ラインと負極ラインとの間の電圧差である直流電圧Vdcを検出すると、直流電圧Vdcを制御装置10へ出力する。直流電圧Vdcは、電力変換器1への入力電力であり、制御装置10による電力変換器1の制御に用いられる。
また、電力変換器1とモータ3との間には、電流センサ6が設けられている。電流センサ6は、モータ3に供給されるuvw相の電流測定値iu、iv、iwを測定すると、電流測定値iu、iv、iwを制御装置10へ出力する。
モータ3には、レゾルバ7が設けられており、励磁されたレゾルバ7から出力される磁束信号を用いて、制御装置10が備えるモータ回転角度検出部が、モータ3の回転子位置θe、及び、回転数Nを算出する。
制御装置10は、電力変換器1を含むモータシステム100の全体を制御する。制御装置10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータによって、所定のプログラムを実行可能に構成される。なお、制御装置10は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。
制御装置10は、パルス幅を変化させるPWM制御を行うために、トルク指令値T*やモータ3の回転数Nに基づいて所望のパルス幅となるような指令パルスパターンを生成し、生成した指令パルスパターンを電力変換器1に出力する。このようにして、電力変換器1が備えるスイッチング素子が制御される。
図2は、制御装置10の詳細な構成を示すブロック図である。
制御装置10は、電流指令値演算部11、電流制御部12、変調率変換部13、PWM出力部14、及び、3相/2相変換部15を備える。電流指令値演算部11から3相/2相変換部15までの構成は、制御装置10の内部に論理的に配置されてもよいし、異なるマイクロコンピュータにより構成されてもよい。
電流指令値演算部11は、上位装置からのトルク指令値T*、及び、制御装置10のモータ回転角度検出部からのモータ3の回転数Nを受け付ける。電流指令値演算部11は、これらの入力に基づき、予め記憶しているマップを用いてモータ3に対する電流指令値id *、iq *を算出し、電流指令値id *、iq *を電流制御部12に出力する。
電流制御部12は、電流指令値演算部11から出力される電流指令値id *、iq *、及び、後述の3相/2相変換部15から出力される電流測定値id、iqを受け付ける。電流制御部12は、電流指令値id *、iq *と電流測定値id、iqとの偏差がゼロとなるように、電圧指令値Vd *、Vq *を決定する。決定された電圧指令値Vd *、Vq *は、変調率変換部13へと出力される。
変調率変換部13は、電圧センサ5から出力される直流電圧Vdcと、モータ回転角度検出部から出力される回転子位置θe及び回転数Nと、電流制御部12から出力される電圧指令値Vd *、Vq *とを入力として受け付ける。変調率変換部13は、これらの入力に基づいて、電力変換器1から出力される交流電力の変調率M*を算出する。
PWM出力部14は、モータ回転角度検出部から出力される回転子位置θe及び回転数Nと、変調率変換部13から出力される変調率M*とを、入力として受け付ける。PWM出力部14は、これらの入力に基づいて、あらかじめ記憶しているPWM制御に用いられるパルスパターンの中から、適切なパルスパターンを選択して出力する。また、パルスパターンの選択は、所定の制御周期Tごとに行われる。なお、本実施形態においては、後述の図3に示されるように、PWM出力部14が有するPWMパターン切替出力部142において、パルスパターンの切り替えタイミングが制御される。このように指令パルスパターンが制御されることにより、狭小パルスの発生を抑制することができる。
3相/2相変換部15は、モータ回転角度検出部から出力される回転子位置θeを用いて、電流センサ6により取得されたuvw相の電流測定値iu、iv、iwに対して、相変換処理を行い、電流測定値id、iqを生成する。そして、3相/2相変換部15は、変換処理により得られた電流測定値id、iqを、電流制御部12へと出力する。
図3は、PWM出力部14の詳細な構成のブロック図である。PWM出力部14は、PWM生成部141、及び、PWMパターン切替出力部142を有する。
PWM生成部141は、変調率変換部13から出力される変調率M*と、モータ回転角度検出部から出力される回転数Nとを受け付けると、予め記憶しているテーブルを参照して、変調率M*、及び、回転数Nに応じた最適な制御モード、及び、その制御モードと対応する指令パルスパターンを決定する。なお、制御モード、及び、指令パルスパターンの決定は、所定の制御周期Tごとに行われ、あるタイミングで決定された指令パルスパターンは、制御周期T後から開始する次の制御周期Tにおいて用いられる。
PWM生成部141は、制御モードとして、矩形波制御モード又はPWM制御モードのいずれかを選択する。矩形波制御モードが選択される場合には、PWM生成部141は、ある制御周期Tにおいて、制御周期Tの全期間において1パルスとなる矩形波パルスを、指令パルスパターンとして出力する。PWM制御モードが選択される場合には、PWM生成部141は、変調率M*、及び、回転数Nに応じてPWM制御に用いるパルスパターンを選択して出力する。
矩形波制御モードが選択される場合には、PWMパターン切替出力部142は、PWM生成部141から矩形波パルスを受け付けると、次の制御周期Tにおいて、矩形波パルスを最終指令パルスパターンとして出力する。
一方、PWM制御モードが選択される場合には、PWMパターン切替出力部142は、PWM生成部141から所定の指令パルスパターンを受け付けると、現在出力中の指令パルスパターンと、PWM生成部141から受け付けた次の制御周期Tにおける指令パルスパターンとが同じであるか否かを判定する。
両者の指令パルスパターンが同じである場合には、PWMパターン切替出力部142は、同じ指令パルスパターンの出力を継続する。一方、指令パルスパターンが異なる場合には、後述のように、PWMパターン切替出力部142は、回転数Nと回転子位置θeを用いて、狭小パルスが発生しないように、指令パルスパターンの切り替えタイミングを決定する。そして、PWMパターン切替出力部142は、決定された切り替えタイミングにおいて新しい指令パルスパターンに切り替えられるように、最終指令パルスパターンを出力する。
図4は、PWMパターン切替出力部142の詳細な構成のブロック図である。PWMパターン切替出力部142は、角度推定部1421、及び、最終指令出力部1422を有する。
ここで、PWM制御が行われる場合のパルス幅(パルス幅)が、パルス閾値Tthを下回るような狭小パルスである場合には、狭小パルスの開始タイミングと終了タイミングにおいてなされるスイッチング操作の間隔が短くなり、サージ電圧が発生してしまう。予め準備されたパルスパターンにおいては、パルス幅はパルス閾値Tthを上回るように設定されている。
しかしながら、切り替えタイミングの前後においては、パルス幅はパルス閾値Tthよりも短くなるおそれがある。すなわち、切り替えタイミングの前のパルスパターンの最後の導通状態の変化タイミングから開始され、切り替えタイミングの後のパルスパターンの最初の導通状態の変化タイミングにおいて終了するパルスは、パルス幅がパルス閾値Tthよりも長くなることが補償されていない。そこで、以下の制御を行うことで、切り替えタイミングをまたぐパルスのパルス幅をパルス閾値Tthよりも長くすることができるので、狭小パルスの発生を抑制することができる。
また、本実施形態においてモータ3の制御に用いられるPWM制御は、角度同期PWM制御と称されるものである。角度同期PWM制御における指令パルスパターンにおいては、回転子位置θeと、導通状態(オン/オフ)とが対応付けられている。そのため、指令パルスパターンの切り替えタイミングが変更される場合であっても、最終指令出力部1422からは、回転子位置θeに応じて指令パルスパターンに示された導通状態を示すレベルが出力される。
まず、角度推定部1421は、モータ3の回転子位置θe、及び、回転数Nの入力を受け付けると、これらの入力と、あらかじめ記憶している指令パルスパターンと対応する制御周期T、及び、モータ3の極対数Pとを用いて、次式により、推定電気角θestを算出する。
推定電気角θestは、現在の指令パルスパターンnから次の指令パルスパターンn+1への切り替えタイミングを、モータ3の電気角により示したものである。角度推定部1421は、所定の周期で推定電気角θestの算出を行っており、ある切り替えタイミングにおいて、次の切り替えタイミングを示す推定電気角θestを算出する。
そこで、(1)式に示されるように、現在の回転子位置θeに、制御周期Tと対応する電気角を加算することにより、次の切り替えタイミングとなる推定電気角θestが算出される。なお、(1)式においては、制御周期Tに対して時間から電気角への単位系の変換を行うために、「(N/60)・P・360」が乗ぜられている。
そして、最終指令出力部1422は、次式に従い、角度推定部1421から出力される推定電気角θestを用いて、現在出力中の指令パルスパターンnから、PWM生成部141から出力される指令パルスパターンn+1へと切り替えられる場合において、その切り替えタイミングをまたぐパルスのパルス幅Tpwmを算出する。
ただし、(2)式におけるパラメータは以下のとおりである。
θ1:指令パルスパターンnにおいて、最後に導通状態が変化する電気角
θ2:指令パルスパターンn+1において、最初に導通状態が変化する電気角
電気角θ1は、切り替えタイミングである推定電気角θest以前において、指令パルスパターンnでの最終のスイッチング素子の導通状態が変化するタイミングを示す電気角である。電気角θ2は、推定電気角θest以降において、指令パルスパターンn+1での最初のスイッチング素子の導通状態が変化するタイミングを示す電気角である。
すなわち、(θest−θ1)は、推定電気角θest以前のパルス幅を電気角で示したものであり、(θ2−θest)は、推定電気角θest以降のパルス幅を電気角で示したものである。そのため、両者の和である「(θest−θ1)+(θ2−θest)」に対して、電気角から時間への単位系の変換を行うために、「360・(N/60)・P」を除することで、(2)式に示されるように、切り替えタイミングをまたぐパルスのパルス幅Tpwmを求めることができる。
この例においては、推定電気角θestにおいて、指令パルスパターンnと指令パルスパターンn+1の導通状態は同じであるものとする。そのため、導通状態は、電気角θ1でオンに切り替わり、電気角θ2でオフに切り替わり、その結果、推定電気角θestの前後における電気角θ1と電気角θ2との間が、切り替えタイミングをまたぎオン区間となるパルスとなる。なお、推定電気角θestにおいて、指令パルスパターンnと指令パルスパターンn+1とが異なる例については、第2実施形態において説明する。
そして、最終指令出力部1422は、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上である場合には、その推定電気角θestにおいて、指令パルスパターンの切り替えを行う。一方、角度推定部1421は、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthよりも短い場合には、狭小パルスの発生を抑制するために、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthよりも短くならないように、切り替えタイミングの再設定を行う。この、切り替えタイミングの再設定、及び、最終的な指令パルスパターンの出力制御について、図5を用いて説明する。
図5は、最終指令パルスパターンの決定制御のフローチャートである。制御装置10においては、この決定制御が所定のタイミングで繰り返し行われる。なお、以下においては、説明の明確化のために、図2〜図4に示された制御装置10において所定の機能を実現するブロックが、それぞれの処理を行うものとして説明する。なお、制御装置10が所定の処理を行うことで、所定の機能が実現されてもよい。
まず、ステップS101において、PWM生成部141は、PWM制御を行っているか否かを判定する。PWM生成部141は、PWM制御を行っている場合には(S101:Yes)、次に、ステップS103の処理を行う。PWM生成部141は、矩形波制御を行っており、PWM制御を行っていない場合には(S101:No)、次に、ステップS102の処理を行う。
ステップS102において、PWM生成部141は、選択されている制御モードである矩形波制御におけるパルスパターンを、最終指令パルスパターンとして出力する。なお、矩形波制御が行われる場合には、制御周期Tの全体にわたって1パルスとなるように、PWM生成部141からはオンまたはオフの導通状態が出力される。
ステップS103において、変調率変換部13は、直流電圧Vdcと、モータ回転角度検出部から出力される回転子位置θe及び回転数Nと、電流制御部12から出力される電圧指令値Vd *、Vq *との入力を受け付け、これらの入力に基づいて、変調率M*を算出する。なお、回転数Nは、変調率変換部13が回転子位置θeを時間微分することにより算出してもよい。そして、次に、ステップS104の処理が行われる。
ステップS104において、PWM生成部141は、ステップS102において生成された変調率M*、及び、回転数Nに基づいて、指令パルスパターンを決定する。そして、最終指令出力部1422は、出力中の現在の指令パルスパターンと、決定された次の指令パルスパターンとが同じか否かを判定する。そして、両者が同じであり、変更が不要な場合には(S104:No)、次に、ステップS105の処理が行われる。両者が異なり、出力される指令パルスパターンの変更が必要な場合には(S104:Yes)、次に、ステップS106の処理が行われる。
ステップS105において、最終指令出力部1422は、次の制御周期Tにおいて、指令パルスパターンを変更せずに、現在出力中の指令パルスパターンと同じ指令パルスパターンを出力する。このようにして、最終指令パルスパターンが決定される。
ステップS106においては、角度推定部1421は、回転子位置θe、及び、回転数Nの入力を受け付けると、これらの入力値と、あらかじめ記憶しているパルスパターンと対応する制御周期T、及び、モータ3の極対数Pとを用いて、(1)式により、パルスパターンの切り替えタイミングを電気角により示した推定電気角θestとして算出する。この推定電気角θestは、所定の制御周期Tごとに切り替えられる場合のタイミングを示す。推定電気角θestが算出されると、次に、ステップS107の処理が行われる。
ステップS107において、角度推定部1421は、推定電気角θest以前の指令パルスパターンnにおいて導通状態が切り替わる電気角θ1と、推定電気角θest以降の指令パルスパターンn+1において導通状態が切り替わる電気角θ2と、モータ3の回転数N及び極対数Pとを用いて、推定電気角θestで指令パルスパターンの切り替えが行われる場合におけるパルス幅Tpwmを算出する。パルス幅Tpwmが算出されると、次に、ステップS108の処理が行われる。
ステップS108において、最終指令出力部1422は、ステップS106において算出されたパルス幅Tpwmが、所定のパルス閾値Tth以上であるか否かを判定する。パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上である場合には(S108:Yes)、最終指令出力部1422は、パルス幅Tpwmが十分に長く、狭小パルスが発生しないと判断し、次に、ステップS109の処理を実行する。パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上でなく短い場合には(S108:No)、最終指令出力部1422は、狭小パルスが発生する可能性があると判断し、次に、ステップS110の処理を実行する。
ステップS109において、最終指令出力部1422は、推定電気角θestを指令パルスパターンの切り替えタイミングと定め、推定電気角θest以前においては指令パルスパターンnを出力し、推定電気角θestよりも後においては指令パルスパターンn+1を出力する。このように推定電気角θestにおいてパルスパターンが切り替わるように、最終指令パルスパターンが定められる。
ステップS110において、角度推定部1421は、推定電気角θest以降であって、次に、指令パルスパターンnにおける導通状態と、指令パルスパターンn+1における導通状態とが同じになる電気角を、指令パルスパターンの切り替えタイミングである推定電気角θestとして再設定する。指令パルスパターンnと指令パルスパターンn+1との導通状態とが一致するタイミングにおいては、指令パルスパターンの切り替えを行うことができるため、そのタイミングを推定電気角θestとして再設定する。なお、本再設定処理は、第2実施形態における再設定処理と区別するために、第1再設定処理と称されてもよい。
そして、ステップS110において再設定された推定電気角θestを用いて、再び、ステップS107の処理を実行する。このような推定電気角θestの再設定は、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上となる(S108:Yes)まで、繰り返される。
次に、図6、及び、図7を用いて、本実施形態における指令パルスパターンの出力制御について説明する。これらの図には、それぞれ上から順に、現在出力中の指令パルスパターンn、PWM生成部141により生成される次の制御周期Tにおける指令パルスパターンn+1、及び、最終指令出力部1422から出力される最終指令パルスパターンが示されている。なお、現在の指令パルスパターンnは、切り替えタイミング前が実線で示され、切り替えタイミング後が点線で示されている。また、次の指令パルスパターンn+1は、切り替えタイミング前が点線で示され、切り替えタイミング後が実線で示されている。
図6においては、ステップS106において算出される推定電気角θestが指令パルスパターンの切り替えタイミングとなり、図7においては、ステップS110において再設定される推定電気角θestが指令パルスパターンの切り替えタイミングとなるものとする。
まず、図6の例について説明する。
図6においては、ステップS106において算出される推定電気角θestが示されている。そして、上段において、推定電気角θestより前における指令パルスパターンnでの最後の導通状態が切り替わる電気角θ1が示され、中段において、推定電気角θestより後における指令パルスパターンn+1での最初の導通状態が切り替わる電気角θ2が示されている。
ステップS107の処理によって、これらの電気角θ1、θ2に応じたパルス幅Tpwmが算出される。ここで、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上であるため(S108:Yes)、図下段に示されるように、推定電気角θestにおいて指令パルスパターンの変更が行われる。
次に、図7の例について説明する。
図7においては、上段に、ステップS106において算出される推定電気角θest、及び、ステップS110において再設定される推定電気角θestが示されている。
上段においては、推定電気角θestより前における指令パルスパターンnで最後に導通状態が切り替わる電気角θ1が示される。中段においては、最初に算出される推定電気角θestより後における指令パルスパターンn+1での最初の導通状態が切り替わる電気角θ2と、再設定される推定電気角θestより後における指令パルスパターンn+1で最初に導通状態が切り替わる電気角θ2とが示されている。そして、下段には、最終的に出力される最終指令パルスパターンが示されている。
まず、ステップS107の処理によって、最初に算出される推定電気角θestと対応する電気角θ1、θ2とを用いてパルス幅Tpwmが算出され、このパルス幅Tpwmはパルス閾値Tthより短い(S108:No)。そのため、狭小パルスが発生するおそれがあると判断され、次に、ステップS110の処理が実行される。ステップS110においては、角度推定部1421は、最初に算出される推定電気角θest以降であって、次に、出力中の指令パルスパターンnにおける導通状態(この図においては、オン状態)と、指令パルスパターンn+1において導通状態(オン状態)とが同じになる電気角を、推定電気角θestとして再設定する。
そして、再び、ステップS107の処理によって、再設定される推定電気角θestと対応する電気角θ1、θ2に応じたパルス幅Tpwmが算出される。ここで、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上であるため(S108:Yes)、図下段に示されるように、再算出された推定電気角θestにおいて指令パルスパターンの切り替えが行われる。そのため、指令パルスパターンの切り替えタイミングをまたぐパルスのパルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上となるので、狭小パルスの発生を抑制できる。
なお、図8には、パルス幅Tpwmと、発生するサージ電圧との関係を示すグラフである。このグラフにおいては、パルス幅Tpwmがx軸方向に示されており、発生するサージ電圧がy軸方向に示されている。また、この図によれば、電力変換器1の温度に応じて特性は変化し、電力変換器1が40℃、20℃、0℃、及び、−40℃の場合のそれぞれの特性が、実線、一点鎖線、二点鎖線、及び、破線で示されている。
例えば、パルス閾値Tthとして1.65μsを設定することにより、パルス幅Tpwmが1.65μs以上となり、その結果、これらのいずれの温度の場合においてもサージ電圧が発生しないようにできる。このようにして、電力変換器1の温度に応じたサージ電圧の特性を用いて、予め、ステップS108における判定基準を設定することができる。
第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第1実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、電力変換器1と接続される負荷であるモータ3に対するトルク指令値T*に応じて、指令パルスパターンを切り替えるか否かを判断する切り替え判断ステップ(S104)と、切り替え判断ステップにおいて指令パルスパターンを切り替えると判断される場合に、切り替えタイミングである推定電気角θestをまたぐパルス幅Tpwmを推測するパルス幅推測ステップ(S107)と、パルス幅推測ステップにおいて推測されたパルス幅Tpwmが、パルス閾値Tthを上回るか否かを判定する、判定ステップ(S108)と、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthを上回ると判定される場合には(S108:Yes)、当該推定電気角θestにおいて指令パルスパターンを切り替える切り替えステップ(S109)と、を有する。
このような構成となることで、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthよりも長い場合にのみ、指令パルスパターンの切り替えが行われることになるため、指令パルスパターンの切り替えが行われる過渡条件においても、狭小パルスの発生を防ぐことができる。
さらに、パルス幅推測ステップ(S107)において、切り替えタイミングである推定電気角θestの直前における指令パルスパターンnの操作タイミング(θ1)と、推定電気角θestの直後における指令パルスパターンn+1の操作タイミング(θ2)との間に相当する時間を、パルス幅Tpwmとして推測する。これにより、推定電気角θestと、指令パルスパターンn、及び、指令パルスパターンn+1とを用いて、パルス幅Tpwmが推測される。このように、切り替えタイミングとなる推定電気角θestの再設定のために新たなセンサを追加する必要がないため、処理負荷が大きくなることなく、狭小パルスの発生を防ぐことができる。
第1実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthを上回るように、切り替えタイミングである推定電気角θestを再設定する第1再設定ステップ(S110)を有する。
このような構成となることで、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthよりも短い場合には、切り替えタイミングである推定電気角θestの再設定が行われ、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthを上回る。そのため、指令パルスパターンの切り替えが行われる過渡条件においても、狭小パルスの発生を防ぐことができる。
第1実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、再設定ステップ(S110)において、ステップS106において算出された推定電気角θestの後であって、次に、第1パルスパターンと、第2パルスパターンとにおいて導通状態が同じとなるタイミングを、推定電気角θestとして再設定する。
切り替えタイミングとなる推定電気角θestの後において、指令パルスパターンにおける導通状態が異なるタイミングを推定電気角θestとしてしまうと、推定電気角θestにおいて導通状態の変化が生じてしまい、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthを下回ってしまうことがある。しかしながら、導通状態が同じとなるタイミングを推定電気角θestとして再設定することで、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthを上回るようにできるため、狭小パルスの発生を防ぐことができる。
第1実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、電力変換器1と接続される負荷はモータ3であり、PWM生成部141は、モータ3に対するトルク指令値T*、及び、モータ3の回転数Nに基づいて、パルスパターンを生成する。このような構成となることで、負荷がモータ3である場合においても、狭小パルスの発生を抑制することができる。
第1実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、電力変換器1は、モータ3へと交流電力を出力する。そして、図3に示されるように、PWM生成部141によって行われる判断ステップ(S104)において、直流電力に対する交流電力の変調率M*、及び、モータ3の回転数Nに基づいて、指令パルスパターンを切り替えるか否かが判断される。
さらに、パルス幅推測ステップ(S106)においては、推定電気角θestの直前における第1パルスパターンの導通状態が切り替わるタイミングを示すモータ3の電気角θ1、推定電気角θestの直後における第2パルスパターンの最初に導通状態が切り替わるタイミングを示すモータ3の電気角θ2、及び、モータ3の回転数Nに応じて、パルス幅Tpwmを推測する。
このように制御されることにより、電力変換器1は、交流電力の出力先であるモータ3に関するパラメータに基づいて、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthを上回るように制御することにより、設計精度を高めながら、狭小パルスの発生を防ぐことができる。
第1実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、パルス閾値Tthは、電力変換器1が有するスイッチング素子の温度に応じたサージ電圧特性により定められる。これにより、パルス閾値Tthを事前に求めることができるため、動作環境に応じて、狭小パルスの発生を防ぐことができる。
(第2実施形態)
第1実施形態においては、推定電気角θestを算出する際に、モータ回転角度検出部において算出される回転数Nを用いる例について説明した。第2実施形態においては、モータ3の回転数Nが変化する場合において、指令パルスパターンが切り替わるタイミングにおけるモータ3の回転数Nを推定する例について説明する。
図9は、第2実施形態のPWMパターン切替出力部142の概略構成図である。図3に示される第1実施形態のPWMパターン切替出力部142と比較すると、角度推定部1421の前段に回転数推定部901が設けられている。
回転数推定部901は、切り替えタイミングとなる制御周期T毎に回転数Nを記憶する。なお、以下においては、回転数Nnは、n回目の制御周期Tにおけるモータ3の回転数を示すものとする。
回転数推定部901は、次式を用いて、次の切り替えタイミングにおける回転数Nn+1の推定値である推定回転数Nestを推定する。
ただし、式(3)におけるパラメータは以下のとおりである。
Nn-1:前回(n−1回目)の切り替えタイミングにおける回転数N
Nn:今回(n回目)の切り替えタイミングにおける回転数N
Nest:次回(n+1回目)の切り替えタイミングにおける回転数Nの推定値
式(3)によれば、前回の切り替えタイミングから今回の切り替えタイミングまでにおける回転数Nの変化量が、今回の切り替えタイミングから次回の切り替えタイミングまでにおける回転数Nの変化量と等しいものと仮定して、次回の切り替えタイミングにおける回転数Nの推定値Nn+1が推定される。
図10は、最終指令パルスパターンの決定制御のフローチャートである。図5に示される第1実施形態のフローチャートと比較すると、ステップS106の処理が、ステップS202に変更されるとともに、ステップS201、S203、及び、S204の処理が追加されている。
ステップS201は、出力される指令パルスパターンの変更が必要な場合(S104:Yes)に行われる処理である。この処理においては、回転数推定部901は、(3)式に基づいて、次の変更タイミングにおける推定回転数Nestを算出する。そして、次に、ステップS202の処理が行われる。
ステップS202は、角度推定部1421は、現在の回転数Nと、推定回転数Nestとを比較し、大きい方の回転数を用いて、(1)式により推定電気角θestを算出する。この制御により、回転数Nが急減状態から定常状態に大きく変化した場合においても、より大きな回転数Nが使用されることになるので、パルス幅Tpwmはより短くなる。そのため、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上と判断されにくくなるので、パルス幅Tpwmが狭小パルスとなるおそれを低減することが抑制できる。
なお、ステップS202において、角度推定部1421は、推定回転数Nestを用いて、(1)式により推定電気角θestを算出してもよい。このようにすることで、処理負荷を軽減できる。
ステップS203においては、角度推定部1421は、推定電気角θestにおいて、前の指令パルスパターンでの導通状態と、次の指令パルスパターンでの導通状態とが同じであるか否かを判定する。両者が同じである場合には(S203:Yes)、次に、ステップS107が行われる。一方、両者が異なる場合には(S203:No)、次に、ステップS204が行われる。
ステップS204において、角度推定部1421は、推定電気角θest以降において、現在の指令パルスパターンnの導通状態と、次の指令パルスパターンn+1の導通状態とが一致する電気角を、新たに、推定電気角θestとして再設定する。なお、本再設定処理は、ステップS110における再設定処理(第1再設定処理)と区別するために、第2再設定処理と称されてもよい。
なお、ステップS204に相当する処理を、第1実施形態のように回転数Nの推定処理を含まない制御に含めてもよい。このようにすることで、推定電気角θestにおいて、現在の指令パルスパターンnと、次の指令パルスパターンnとの導通状態は同じにすることができるので、狭小パルスの発生を抑制できる。
次に、図11を用いて、本実施形態における指令パルスパターンの出力制御について説明する。これらの図には、それぞれ上から順に、現在出力中の指令パルスパターンn、PWM生成部141において生成される次の制御周期Tにおける指令パルスパターンn+1、及び、最終指令出力部1422から出力される最終指令パルスパターンが示されている。
図11においては、ステップS204において算出される推定電気角θestが指令パルスパターンの切り替えタイミングとなる。
この図に示されるように、最初にステップS106において算出される推定電気角θestにおいては、指令パルスパターンnの導通状態と、指令パルスパターンn+1の導通状態とは異なる(S203:No)、そのため、推定電気角θestの後であって、指令パルスパターンnの導通状態と、指令パルスパターンn+1の導通状態とが同じとなるタイミングが新たに推定電気角θestとして再設定される(S204)。
この場合において、上段に示されるように、再設定後の推定電気角θestの直前で指令パルスパターンnの導通状態が切り替わるとされる電気角θ1は、再設定後の推定電気角θestと一致する。また、中段において、再設定後の推定電気角θestの直後で指令パルスパターンn+1の導通状態が切り替わる電気角θ2が示されている。
ステップS107の処理によって、これらの電気角θ1、θ2に応じたパルス幅Tpwmが算出される。ここで、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上であるため(S108:Yes)、図下段に示されるように、推定電気角θestにおいて指令パルスパターンの変更が行われる。そのため、指令パルスパターンの切り替えタイミングを跨ぐパルス幅Tpwmが狭小パルスとなることを抑制できる。
第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第2実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、制御周期Tごとの回転数Nの変化に基づいて、切り替えタイミングにおける回転数Nを推定する回転数推定ステップ(S201)を、さらに備える。パルス幅推測ステップ(S106)においては、回転数推定ステップにて推定された推定回転数Nestを用いて、パルス幅Tpwmを推定する。このような構成となることで、モータ3の回転数Nが急激に増加している場合においても、狭小パルスの発生を防ぐことができる。
第2実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、パルス幅推測ステップ(S202)において、回転数推定ステップ(S201)で推定された推定回転数Nest、及び、現在の回転数Nとのうちの大きい方を用いて、パルス幅Tpwmを推測する。このような構成となることで、パルス幅Tpwmがより短く算出されるので、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tth以上と判断されにくくなり、パルス幅Tpwmが狭小パルスとなるおそれを低減することが抑制できる。
第2実施形態の電力変換器1の制御方法によれば、回転数推定ステップ(S201)にて推定された推定回転数Nestを用いて算出される推定電気角θestにおいて、現在の指令パルスパターンと、次の指令パルスパターンが異なる場合には(S203:No)、現在の指令パルスパターンと、次の指令パルスパターンとにおいて導通状態が一致する電気角を、推定電気角θestとする第2再設定ステップ(S204)を有する。このように構成されることで、導通状態が同じとなるタイミングを推定電気角θestとして再設定することで、パルス幅Tpwmがパルス閾値Tthを上回るようになり、狭小パルスの発生を防ぐことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。