本発明に係る細胞吸引システムは、1つの細胞または当該細胞の一部(細胞内物質)を吸引するものである。以下では、本発明に係る細胞吸引システムの一例として、試料中の1つの細胞を吸引する実施形態について記載する。
(細胞吸引システムの実施例の構成)
図1に示す細胞吸引システム1は、試料201を収納する容器(試料保持器)2を備える。試料201は、吸引対象である細胞と当該細胞を培養するための培養液とを含む。試料保持器2は、試料201が零れ落ちないよう、試料201(細胞)を載せている底面と、当該底面を囲む側面とを有する箱型に形成され、底面が水平になるように設置される。
細胞吸引システム1は、細胞を内部に取り込み可能な容器(吸引チップ)3と、吸引チップ3が装着される吸引器4と、吸引器4が取り付けられる搬送部5とを備える。尚、細胞吸引システム1は、複数の吸引チップ3を個々に保持可能な吸引チップ保持器300(図2参照)を備える。
図2に示すように、吸引チップ3は、吸引器4に装着される側の端部である基端部301と、基端部301と接続される筒状の胴部302と、胴部302と接続される錐状の底部303と、底部303の先端から突出する針状部304とを備える。
基端部301は、吸引器4の吸引部401が嵌められる嵌合穴(嵌合部)305を備え、嵌合穴305は、胴部302の内部空間を介して底部303の内部空間と連通する。吸引チップ3は、底部303と針状部304とに内包され、かつ、底部303の一部と針状部304とを貫通して設けられる細管穴(取込穴)306を備える。したがって、嵌合穴305は細管穴306と連通する。針状部304の長さは1mm前後である。細管穴306の長手方向の長さは2mm以下(例えば1mm〜2mm)である。尚、細胞吸引システム1に備えられる吸引チップは、上記構成を備えたものに限定されず、後に応用例として詳述する構成を備えたものであってもよい。
吸引チップ3は、金型を用いて樹脂(例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの熱可塑性樹脂)で一体成型される。吸引チップ3の成型に用いられる金型は、基端部301と胴部302と底部303と針状部304との外側形状を形成する外型と、嵌合穴305と胴部302の内部空間と底部303の内部空間とを形成する内型と、外型または内型に接続されて細管穴306を形成する細長い棒状のコア型とを備える(不図示)。尚、吸引チップ3は、基端部301と胴部302と底部303と針状部304との各構成の厚さが均一になるように成型されることが好ましい。また、樹脂は熱硬化性樹脂であってもよい。
このような金型に樹脂を流し込んで成型する方法、つまり射出成型において、直径を異にするコア型を用いることで所望の内径の細管穴306を備えた吸引チップ3を成型することができる。細管穴306は、針状部304の先端面の開口から細胞を取り込み可能な内径(1μmから数100μm程度)を有する。例えば、細管穴306の内径は、1〜数10μmであってもよく、また、10μm〜数100μmであってもよい。本発明に係る吸引チップは、被吸引対象物の大きさに対応して当該被吸引対象物の大きさよりも小さい内径で細管穴306が形成されることにより、種々の大きさの細胞または細胞内物質をその内部空間に適切に取り込み可能なものである。
図1に示すように、細胞吸引システム1は、吸引器4と送受信可能に接続される信号処理部6を備え、信号処理部6によって、吸引器4の動作を制御する。吸引器4は、圧力の変化などを利用して吸引チップ3内に細胞を吸引するものであり、信号処理部6によって、試料保持器2にある細胞を吸引チップ3へ吸引する動作、吸引した細胞を吸引チップ3から吐出する動作などが制御される。
搬送部5は、信号処理部6と送受信可能に接続され、細胞吸引システム1は、信号処理部6によって搬送部5の動作を制御する。搬送部5は、図示しないモータ等を用いて吸引器4を異なる3軸方向に移動可能なものであり、信号処理部6によって、吸引チップ保持器300に収納される吸引チップ3を吸引器4に装着する動作、吸引チップ3が装着された吸引器4で細胞を吸引可能な位置へ移動する動作などが制御される。したがって、信号処理部6は、搬送部5を介して吸引チップ3を異なる3軸方向に移動可能である。
また、細胞吸引システム1は、被吸引対象物である細胞を吸引するために、試料201の中の被吸引対象物である細胞の位置を検出する構成(試料位置検出機構)と、吸引チップ3の先端の位置(チップ先端位置)を検出する構成(チップ先端位置検出機構)とを備える。以下では、それらの各構成について順に説明する。
まず、細胞吸引システム1において、試料位置検出機構は、試料保持器2内の細胞が発する蛍光を撮像して当該細胞の位置を検出するものであり、細胞が蛍光を発するための光(励起光)を出力する光源装置7を備える。光源装置7は、試料保持器2の下方(吸引チップ3と吸引器4と搬送部5とが設置される側と反対の側)に設置され、波長を異にする3つの光源(内部光源701、702、703)と、内部光源701〜703に対応する3つのミラー711、712、713とを備える。
第1のミラー711は、第1の内部光源701から出射される励起光L1を反射して励起光L1以外の光を透過可能なダイクロイックミラーである。第2のミラー712は、第2の内部光源702から出射される励起光L2を反射して励起光L2以外の光を透過可能なダイクロイックミラーである。第3のミラー713は、第3の内部光源703から出射される励起光L3を反射可能なものである。ミラー711〜713は、各反射面で反射される励起光L1〜L3の光路が重なるように設置される。ミラー711〜713は、各反射面で反射される励起光L1〜L3が試料201に投光されるように設置される。
光源装置7は、信号処理部6と送受信可能に接続されており、光源装置7から出力される励起光L1〜L3は信号処理部6によって制御される。具体的には、細胞が蛍光を発するのに適した波長の励起光を出射可能な内部光源が選択され、選択された例えば内部光源701から出射される光が励起光L1としてミラー711を介して試料保持器2の底面の側から試料201に投光される。
細胞吸引システム1は、試料保持器2から光源装置7までの光路上に顕微鏡8を備える。顕微鏡8は、試料保持器2に近い方から順に、対物レンズ801と結像レンズ802とを備える。対物レンズ801と結像レンズ802とは、各レンズの光軸が互いに一致し、その光軸が励起光L1〜L3の光路に沿って配置される。対物レンズ801は、その光軸方向に移動可能に設けられる。また、顕微鏡8は、信号処理部6と送受信可能に接続されており、対物レンズ801の移動(光軸方向の位置)が信号処理部6によって独立に制御される。つまり、対物レンズ801による集光点が、信号処理部6によって適切な位置に調節される。信号処理部6による調節によって、例えば、対物レンズ801は試料201近傍で励起光L1〜L3を集光する。尚、結像レンズ802は後述するピンホール901近傍で蛍光を集光するように、共焦点スキャナ9に対して所定の位置に設置される。
細胞吸引システム1は、被吸引対象物である細胞の2次元画像を得るための、ニポウディスク方式の共焦点スキャナ9を備える。共焦点スキャナ9は、光源装置7から顕微鏡8までの光路上に、円盤形状のピンホールディスク901と、円盤形状の集光ディスク902とを備える。ピンホールディスク901には、螺旋状に複数のピンホールが配置されていて、集光ディスク902には、ピンホールディスク901におけるピンホールと同じパターンで複数のマイクロレンズが備えられている。ピンホールディスク901と集光ディスク902とは、各ディスクの中心(中心軸)が同軸上で連結され、複数のマイクロレンズの各光軸は、対応する各ピンホールを通り、対物レンズ801および結像レンズ802の光軸に対して平行である。ピンホールディスク901および集光ディスク902は、その中心軸を回転軸としてモータ(不図示)によって回転され、回転される2つのディスク(複数のマイクロレンズおよび複数のピンホール)を通る励起光L1〜L3は、投光対象(細胞)に対して広範囲(複数箇所)に投光される。
また、共焦点スキャナ9は、集光ディスク902からピンホールディスク901までの光路上にダイクロイックミラー903を備える。ダイクロイックミラー903は、励起光L1〜L3を透過して細胞が発する蛍光を反射可能なものである。さらに、共焦点スキャナ9は、ダイクロイックミラー903で反射された蛍光の光路上に、試料201を撮像するカメラ904を備える。カメラ904は、ダイクロイックミラー903で反射された蛍光が入射可能に設置される。
また、共焦点スキャナ9は、ダイクロイックミラー903からカメラ904までの光路上に、リレーレンズ905と、回転可能に設置されるフィルタホイール907と、リレーレンズ906を備える。フィルタホイール907は、機能を異にする4つのフィルタ917、927、937、947を備える。フィルタ917、927、937、947は、フィルタホイール907の回転によって光路上に位置され得るものであり、リレーレンズ905を透過した光がフィルタ917またはフィルタ927へ入射される。尚、フィルタ917とフィルタ927と937と947とは、すべてが互いに異なる波長範囲の光を透過可能なものである。フィルタ917は、ダイクロイックミラー903で反射された励起光L1による蛍光以外の光を反射または吸収して当該蛍光を透過可能なものである。フィルタ927は、ダイクロイックミラー903で反射された励起光L2による蛍光以外の光を反射または吸収して当該蛍光を透過可能なものである。フィルタ937は、ダイクロイックミラー903で反射された励起光L3による蛍光以外の光を反射または吸収して当該蛍光を透過可能なものである。フィルタ947については後述する。
リレーレンズ905は、ダイクロイックミラー903とフィルタホイール907との間において、その光軸が光路に沿い、その焦点がピンホールディスク901に一致するように配置される。リレーレンズ906は、フィルタホイール907とカメラ904との間において、その光軸がリレーレンズ905の光軸と一致し、その焦点がカメラ904の撮像面に一致するように配置される。リレーレンズ906は、フィルタホイール907に備えられたいずれかのフィルタ(フィルタ917〜947)を透過した光をカメラ904に集光する。
上述した構成を備えた共焦点スキャナ9は、信号処理部6と送受信可能に接続されている。よって、共焦点スキャナ9においては、信号処理部6によって、ピンホールディスク901および集光ディスク902の回転動作、フィルタホイール907の回転動作、カメラ904の撮像動作等がそれぞれ独立して制御されている。フィルタホイール907が、回転されることによって、ダイクロイックミラー903で反射された蛍光の光路上に位置するフィルタ(フィルタ917〜947)が選択される。カメラ904で撮像された鉛直方向からの吸引対象物(細胞)の画像は、カメラ904に内蔵された記録部に記録される。そして、その画像は、信号処理部6に転送されて解析される。尚、画像が記録されるのは、カメラ904内部の記録部に限らず、外部の記録部であってもよい。
以上のように、細胞吸引システム1は、試料位置検出機構を備えることにより、蛍光をカメラ904で撮像して細胞の画像を取得し、その画像の解析結果から細胞の位置を検出することができる。本実施形態において、試料位置検出機構は、信号処理部6と、光源装置7と、顕微鏡8と、共焦点スキャナ9とを含んで構成される。
次に、細胞吸引システム1において、チップ先端位置検出機構は、所定の光(検出光)を吸引チップ3の先端に投光し、吸引チップ3の先端で反射された検出光(検出反射光)の強度からチップ先端位置を検出するものである。チップ先端位置検出機構は、吸引チップ3の先端の位置情報を取得するチップ先端検出ユニット10を備える。チップ先端検出ユニット10は、光源装置7から共焦点スキャナ9までの光路上に設けられる。
チップ先端検出ユニット10は、検出光を出射する光源(チップ先端検出光源)101
と、検出光を平行光にするコリメートレンズ102と、検出光と検出反射光とを反射して励起光L1〜L3を透過する機能を有するダイクロイックミラー103と、検出光を透過して検出反射光を反射可能なハーフミラー104を備える。ダイクロイックミラー103は、対物レンズ801および結像レンズ802の光軸の延長線上に設置される。
チップ先端検出光源101は、チップ先端検出光源101から出射される検出光が、コリメートレンズ102に入射されて平行光となった後にハーフミラー104を透過し、ダイクロイックミラー103で反射された後に共焦点スキャナ9内の集光ディスク902(マイクロレンズ)と前記機能の他に検出光と検出反射光を透過する機能を有するダイクロイックミラー903とピンホールディスク901(ピンホール)とを順に通り、対物レンズ801および結像レンズ802の光軸に沿うように設置される。
また、チップ先端検出ユニット10は、ハーフミラー104で反射された検出反射光の強度を測定する受光センサ105を備える。受光センサ105は、ハーフミラー104で反射された検出反射光が入射可能に設置される。
上述した構成を備えたチップ先端検出ユニット10は、信号処理部6と送受信可能に接続されている。よって、チップ先端検出ユニット10においては、信号処理部6によって、受光センサ105の測定動作等がそれぞれ独立して制御されている。信号処理部6は、受光センサ105による測定結果から鉛直方向のチップ先端位置(チップ先端のz位置)を検出する。
また、チップ先端検出ユニット10は、例えば、チップ先端検出光源101からコリメートレンズ102までの光路上に、ズームレンズまたは絞り機構を備えて、コリメートレンズ102に入射される検出光の光束径を調節可能にしてもよい(不図示)。コリメートレンズ102に入射される検出光の光束径を拡径することで、試料201の単位面積あたりに投光する光の強度を低減することができる。一方、コリメートレンズ102に入射される検出光の光束径を縮径することで、吸引チップ3の先端に投光される単位面積当たりの検出光の強度が増し、検出反射光の強度が増加して、ノイズ(外部からの迷光など)に対する検出反射光の強度比が大きくなる。
本実施形態では、ダイクロイックミラー903は、前述した機能の他に、検出反射光を反射する機能を備える。つまり、ダイクロイックミラー903は、検出反射光を反射光と透過光とに分岐可能なものである。フィルタ927は、ダイクロイックミラー903で反射された検出反射光以外の光を反射または吸収して当該検出反射光を透過可能なものである。細胞吸引システム1において、フィルタホイール907の回転でフィルタ927を光路上に位置することによって、カメラ904を用いて鉛直方向から吸引チップ3の先端を撮像することもできる。撮像された画像は信号処理部6によって解析され、その結果から水平方向の吸引チップ3の先端位置(チップ先端のx、y位置)が検出される。
以上のように、細胞吸引システム1は、チップ先端位置検出機構を備えることにより、チップ先端位置のx、y、z位置を検出することができる。本実施形態において、チップ先端位置検出機構によってチップ先端のz位置を検出せずに、カメラで撮像することでチップ先端のz位置を検出してもよい。この場合、吸引チップ3の先端とその周囲の像を示す画像のコントラストの変化に基づいてチップ先端のz位置を検出する。チップ先端位置検出機構は、吸引チップ3と、吸引器4と、搬送部5と、信号処理部6と、顕微鏡8と、共焦点スキャナ9と、チップ先端検出ユニット10とを含んで構成される。
(細胞吸引システムの実施例の作用と動作)
上記構成における細胞吸引システム1の作用と動作について以下で説明する(図1参照)。
細胞吸引システム1は、チップ先端位置と細胞の位置を検出する。吸引チップ3の先端の位置情報と細胞の位置情報を基に、搬送部5は吸引器4と共に吸引チップ3を移動させ、試料保持器2にある例えば1つの細胞を吸引チップ3に吸引する。以下ではその具体的な動作について説明する。
まず、細胞吸引システム1は、吸引チップ3を吸引器4に装着する。具体的には、信号処理部6が、搬送部5を動作制御して吸引器4を吸引チップ保持器300の穴上に移動した後、吸引チップ保持器300に収納された吸引チップ3に近づけるように下げる。吸引器4が下げられることにより、吸引部401は嵌合穴304に押し当てられ、基端部301と吸引チップ保持器300とが接する面(フランジ面)307で試料保持器300からの反力を受けて吸引チップ3が吸引部401に嵌められる。
その後、信号処理部6は、搬送部5を動作制御して、吸引チップ3を対物レンズ801および結像レンズ802の光軸の延長線上近傍に移動する。
次に、細胞吸引システム1は、チップ先端位置を検出する。具体的には、信号処理部6が、チップ先端位置検出機構を動作制御して、チップ先端検出光源101から検出光を出射させて吸引チップ3の先端での反射光(検出反射光)を受光センサ105で受けることで、まずはチップ先端のz位置を検出する。チップ先端検出光源101から出射された検出光は、コリメートレンズ102で平行光とされ、ハーフミラー104に入射する。ハーフミラー104は、検出光を透過して検出反射光を反射する機能を有しているので、検出光は平行光のままハーフミラー104を透過してダイクロイックミラー103に入射される。
ダイクロイックミラー103は、検出光を反射する機能を有しているので、ハーフミラー104を透過した平行光の検出光はダイクロイックミラー103で反射されて共焦点スキャナ9内の集光ディスク902(マイクロレンズ)、ダイクロイックミラー903、ピンホールディスク901(ピンホール)を順に透過する。
集光ディスク902およびピンホールディスク901は、信号処理部6によって常時回転されているので、対物レンズ801によって吸引チップ3の近傍に集光される検出光は、複数の光束となって吸引チップ3に投光される。よって、結像レンズ802および対物レンズ801の光軸に重なる検出光の光路に対して、吸引チップ3の先端が水平方向にずれた位置に位置していたとしても、これら複数の光束うち少なくとも1つの光束が吸引チップ3の先端に投光されて検出反射光を得ることができる。つまり、吸引チップ3の近傍に集光される検出光の各光束は、吸引チップ3の先端近傍の複数箇所で集光されるため、従来技術と比較して吸引チップ3の先端位置を検出可能な範囲が拡大される。
吸引チップ3の先端で反射された検出光(検出反射光)は、対物レンズ801および結像レンズ802と、ピンホールディスク901(ピンホール)とを通り、ダイクロイックミラー903に入射される。ダイクロイックミラー903は、検出反射光を反射光と透過光とに分岐する機能を有しているので、検出反射光はダイクロイックミラー903で反射光と透過光とに分岐される。
ダイクロイックミラー903を透過した検出反射光は、集光ディスク902を通り、ダイクロイックミラー103およびハーフミラー104でそれぞれ反射されて受光センサ105に入射される。受光センサ105は、入射された検出反射光の強度を測定する。信号処理部6は、搬送部5によって吸引チップ3を鉛直方向に移動させながら、検出反射光の強度を測定し、測定された検出光の強度が最大であった時の吸引チップ3の位置をチップ先端のz位置とする。
一方、ダイクロイックミラー903で反射された検出反射光は、リレーレンズ905に入射される。リレーレンズ905によって平行光となった検出反射光は、フィルタホイール907に入射される。この時、フィルタホイール907は、信号処理部6によって、光路上にフィルタ947が位置するように回転された状態であり、検出反射光はフィルタ947に入射される。そして、フィルタ947によって所定の波長範囲の光、すなわち検出反射光のみがリレーレンズ906に入射される。リレーレンズ906によって集光された検出反射光は、カメラ904に入射される。カメラ904は、受光した検出反射光によって吸引チップ3の先端を撮像し、その画像はカメラ904の記録部に記録されると共に信号処理部6に送られる。信号処理部6は、当該画像を解析してチップ先端のx、y位置を検出する。
以上の手順によって、チップ先端位置が検出される。尚、上述したカメラを用いて、上述した手順と同様に、吸引チップ3の先端とその周囲の像を示す画像のコントラストの変化に基づいてチップ先端のz位置を検出してもよい。
次に、細胞吸引システム1は、細胞の位置を検出する。具体的には、信号処理部6が試料位置検出機構を操作制御して、光源装置7から出力する光、すなわち、内部光源701〜703の何れかを選択する。ここで選択される光は、細胞が蛍光を発するのに適した波長の光であり、例えば、内部光源701を選択する。選択された内部光源701から出射された励起光L1は、ミラー711で反射されて光源装置7から出力される。
光源装置7から出力された励起光L1は、ダイクロイックミラー103に入射する。ダイクロイックミラー103は励起光L1を透過する機能を有しているので、励起光L1はダイクロイックミラー103を透過して、共焦点スキャナ9内の集光ディスク902(マイクロレンズ)、ダイクロイックミラー903、ピンホールディスク901(ピンホール)を順に透過する。
集光ディスク902およびピンホールディスク901は、信号処理部6によって常時回転されている。マイクロレンズとピンホールとを通った励起光L1は、結像レンズ802、対物レンズ801の順に入射されて細胞に投光される。対物レンズ801によって試料201の近傍に集光される励起光L1は、集光ディスク902およびピンホールディスク901の回転によって、複数の光束となって試料201に投光される。
励起光L1によって細胞が発する蛍光は、対物レンズ801および結像レンズ802と、ピンホールディスク901(ピンホール)とを通り、ダイクロイックミラー903に入射される。ダイクロイックミラー903は、蛍光を反射する機能を有しているので、蛍光はダイクロイックミラー903で反射される。
ダイクロイックミラー903で反射された励起光L1による蛍光は、リレーレンズ905に入射される。リレーレンズ905によって平行光となった蛍光は、フィルタホイール907に入射される。この時、フィルタホイール907は、信号処理部6によって、光路上にフィルタ917が位置するように回転された状態であり、蛍光はフィルタ917に入射される。そして、フィルタ917によって所定の波長範囲の光、すなわち蛍光はのみがリレーレンズ906に入射される。リレーレンズ906によって集光された蛍光は、カメラ904に入射される。カメラ904は、受光した蛍光によって細胞を撮像し、その画像はカメラ904の記録部に記録されると共に信号処理部6に送られる。信号処理部6は、当該画像を解析して細胞の位置を検出する。試料201の近傍に集光される励起光L1の光束は、試料201の複数箇所で集光されるため、画像解析に必要とされる十分な明るさの画像を取得することができる。
以上の手順によって、細胞の位置が検出される。尚、信号処理部6が内部光源702または内部光源703を選択した場合でも、同様の方法で細胞の位置が検出される。
細胞吸引システム1において信号処理部6は、細胞の位置情報を基に吸引対象物(細胞)を特定し、吸引チップ3の先端位置情報を基に搬送部5を制御して吸引チップ3の先端を吸引対象物の位置上に移動させる。吸引器4は、信号処理部6によって試料保持器2にある細胞を吸引チップ3に吸引する。
本実施形態に係る細胞吸引システム1によれば、吸引チップ3は、被吸引対象物の大きさに対応して当該被吸引対象物の大きさよりも小さい内径で細管穴306が形成されることにより、種々の大きさの細胞または細胞内物質をその内部空間に取り込み可能なものである。また、吸引チップ3は、金型を用いて樹脂で一体成型されたものであり、直径を異にするコア型を用いることで所望の内径の細管穴306を備えた吸引チップ3を成型することができる。
(本発明の実施形態の応用例)
上記構成の変形例を以下に示す。
本発明に係る細胞吸引システムは、上述した実施形態に記載された細胞吸引システム1のように、吸引チップ3を備えたものに限定されず、例えば、吸引チップ3に代えて以下の3a〜3dを備えるものであってもよい。
図3に示す吸引チップ3aは、図2に示す吸引チップ3と比較して、底部が錐状に代えて平板状であることを除いて吸引チップ3と同様の構成を有する。吸引チップ3aは、基端部301aと、胴部302aと、針状部304aと、嵌合穴305aと、細管穴306aとを備える。吸引チップ3aは、底部303aと針状部304aとに内包され、かつ、底部303aの一部と針状部304aとを貫通して設けられる細管穴(取込穴)306aを備える。したがって、嵌合穴305aは細管穴306aと連通する。
図4に示す吸引チップ3bは、図2に示す吸引チップ3と比較して、針状部を備えていないことを除いて吸引チップ3と同様の構成を有する。吸引チップ3bは、基端部301bと、胴部302bと、底部303bと嵌合穴305bと、細管穴306bとを備える。吸引チップ3bは、針状部を備えていないので、細管穴306bは、底部303bのみに内包され、かつ、底部303bを貫通して設けられる細管穴(取込穴)306bを備える。したがって、嵌合穴305bは細管穴306bと連通する。底部303bの先端は、細管穴306bの長さが、図2に示す細管穴306と略同一の長さ(細胞を取り込みに適した長さ)になるように、図2に示す底部303より厚く成型されている。
図5に示す吸引チップ3cは、図2に示す吸引チップ3と比較して、基端部が胴部を介さずに直接底部と接続していることを除いて吸引チップ3と同様の構成を有する。吸引チップ3cは、基端部301cと、底部303cと、針状部304cと、嵌合穴305cと、細管穴306cと、細管穴306cとを備える。吸引チップ3cは、底部303cと針状部304cとに内包され、かつ、底部303cの一部と針状部304cとを貫通して設けられる細管穴(取込穴)306cを備える。したがって、嵌合穴305cは細管穴306cと連通する。また、吸引チップ3cは、胴部を備えていないので、基端部301cと、テーパ部303cとが直接的に接続される。
図6に示す吸引チップ3dは、図2に示す吸引チップ3と比較して、針状部を備えておらず、かつ、基端部が胴部を介さずに直接底部と接続していることを除いて吸引チップ3と同様の構成を有する。吸引チップ3dは、基端部301dと、底部302dと、嵌合穴305dと、細管穴306dとを備える。吸引チップ3dは、針状部を備えていないので、底部303dに内包され、かつ、底部303dの一部を貫通して設けられる細管穴(取込穴)306dを備える。したがって、嵌合穴305dは細管穴306dと連通する。また、吸引チップ3dは、胴部を備えていないので、基端部301dと、テーパ部303dとが直接的に接続される。底部303dの先端は、細管穴306dの長さが、図2に示す細管穴306と略同一の長さ(細胞を取り込みに適した長さ)になるように、図2に示す底部303より厚く成型されている。
本発明に係る細胞吸引システムは、上述した実施形態に記載された細胞吸引システム1のように、光源装置7を備えたものに限定されない。
本発明に係る細胞吸引システムにおいて、光源装置は、試料に投光する適切な光を出力することができるものであればよく、光源装置に備えられる内部光源の数量等は、特に限定されない。このとき、光源装置は、内部光源の配列等に応じて適切な性質を持つ1以上のミラーを備えてもよい。
例えば、本発明に係る細胞吸引システムは、光源装置7に代えて以下の7eなどの構成を備えるものであってもよい。図7で示すように、3つの内部光源(701e、702e、703e)に対して2つのダイクロイックミラー(711e、712e)だけを備える光源装置7eであってもよい。内部光源701e、702eとダイクロイックミラー711e、712eとは、本実施形態と同様に設置され、内部光源703eは、ダイクロイックミラー711e、712aにおける各反射面の略中心を結ぶ直線上であって、対物レンズ801および結像レンズ802の光軸の延長線上に設置される。
また、本発明に係る細胞吸引システムにおいて、光源装置は、例えば、内部光源に代えて、または、加えて、出射する光の波長が可変の波長可変光源を備えてもよい。波長可変光源のみを備える場合、光源装置は、ミラーを備えなくともよい。
本発明に係る細胞吸引システムは、上述した実施形態に記載された細胞吸引システム1のように、1つの回転可能なフィルタホイール907にフィルタ917およびフィルタ927が備えられるものに限定されない。例えば、フィルタホイール907に代えて以下の構成を備えるものであってもよい。
本発明に係る細胞吸引システムにおいて、カメラの手前に備えられるフィルタは、カメラに入射する光の波長を選択的に限定することができれば、その構成および機構等は特に限定されない。例えば、本発明に係る細胞吸引システムにおいては、別々のフィルタホイールに機能を異にするフィルタがそれぞれ備えられてもよく、また、独立して摺動可能なスライダ等に機能を異にするフィルタがそれぞれ備えられてもよい。尚、フィルタホイールに備えられるフィルタの種類は、光源装置から出力される波長の光の種類に対応して備えられる。
本発明に係る細胞吸引システムは、上述した実施形態に記載された細胞吸引システム1のように、チップ先端検出光源101がチップ先端検出ユニット10内に備えられたものに限定されず、吸引チップの先端に投光可能な位置に備えられていればチップ先端検出ユニットの外に備えられていてもよい。例えば、光源装置内にチップ先端検出光源が備えられる、すなわち、光源装置が、励起光だけでなく検出光を出力させるものであってもよい。尚、このような光源装置において、チップ先端検出光源は、そこから出射される検出光がマイクロレンズとピンホールとを通過後に、吸引チップの先端に投光されるように設置される。
本発明に係る細胞吸引システムは、上述した実施形態に記載された細胞吸引システム1のように、受光センサ105がチップ先端検出ユニット10内に備えられたものに限定されず、受光センサが吸引チップの先端で反射された光の強度を測定することができればチップ先端検出ユニットの外に備えられていてもよい。例えば、図8で示すように、共焦点スキャナ9f内に受光センサ909fが設置されてもよい。この時、共焦点スキャナ9fは、ダイクロイックミラー903fからリレーレンズ905fまでの光路上に、ダイクロイックミラー908fを備える。ダイクロイックミラー908fは、ダイクロイックミラー903fで反射された光LR1を反射光LR2と透過光LR3とに分岐可能なものである。受光センサ909fは、ダイクロイックミラー908fでの反射光LR2が入射可能に設置される。
本発明に係る細胞吸引システムは、上述したいずれの変形例で構成されるものであっても、実施例と同様に、吸引チップが、被吸引対象物の大きさに対応して当該被吸引対象物の大きさよりも小さい内径で細管穴が形成されることにより、種々の大きさの細胞または細胞内物質をその内部空間に取り込み可能なものである。また、本発明に係る細胞吸引システムは、実施例で示した1つの細胞でなくても、細胞内物質を吸引可能なものである。