以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態にかかる粉末材料の製造方法について、詳細に説明する。本製造方法は、金属よりなる原料粒子Mから、所定の構造を有する複合粒子Pを含有する粉末材料を製造するものである。
本製造方法によって製造される粉末材料は、図3(b)に示すように、金属粒子P1の表面に、その金属粒子P1より粒径の小さい微粒子P2が付着した複合粒子Pを含んでいる。そのような粉末材料は、積層造形法において、エネルギー線の照射によって三次元造形物を製造するための原料等として、好適に用いることができる。
[粉末材料の製造方法]
本発明の一実施形態にかかる粉末材料の製造方法においては、原料準備工程、プラズマ処理工程、解粒工程を、この順に実施する。以下、各工程について順に説明する。
(1)原料準備工程
原料準備工程においては、粉末材料を製造するための原料粒子Mを準備する。原料粒子Mは、金属よりなっている。原料粒子Mは、ミクロンオーダーの粒径を有していることが好ましい。
原料粒子Mを構成する金属材料は、合金組成をほぼ保ったまま、製造される粉末材料、さらには三次元造形物等、その粉末材料を用いて製造される製品を構成する金属材料となるため、粉末材料を用いて製造される製品に所望される合金組成を有する金属粒子として、原料粒子Mを準備すればよい。合金組成は特に限定されるものではないが、原料粒子Mを構成する合金の好適な例として、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金を例示することができる。これらの合金を原料とする三次元造形物を積層造形法によって製造する需要が大きいからである。また、原料粒子Mを構成する合金は、アルミニウム、マグネシウム、銅、スズ等の昇華しやすい金属元素(添加金属元素)を含有していることが好ましい。これらの元素は、昇華を起こしやすい金属であり、続くプラズマ処理工程において、昇華によって、微粒子P2を金属粒子P1の表面に形成しやすいからである。原料粒子Mの好適な組成の例として、Ti−6Al−4V合金に代表される、Ti−Al系合金を挙げることができる。
原料粒子Mは、実質的に、表面に微粒子を有さない。微粒子を有するものであってもよいが、その場合にも、微粒子の量は、プラズマ処理工程を経て得られる金属粒子P1に付着した微粒子P2の量に比べて、無視できる程度に抑えられる。また、原料粒子Mは、金属酸化物等の金属化合物や、有機成分を、組成の一部として含んでいてもよいが、それらの成分の含有が、続く製造工程や、得られる複合粒子Pの特性に影響を与えないように、原料残渣や雰囲気中の成分、製造工程等に由来して、不可避的に含有される成分を除いて、原料粒子Mは、金属のみよりなることが好ましい。
原料粒子Mを製造する方法は、特に限定されないが、アトマイズ法を用いることが好ましい。アトマイズ法は、合金溶湯を微小な液滴とした状態で凝固させることで、金属粒子を得るものである。合金溶湯を真空中に噴射し、噴射された合金溶湯に不活性ガスを吹き付けることによって、微小な液滴を生成するガスアトマイズ法や、高速回転するディスクに液滴を滴下して、遠心力によって微小な液滴を生成するディスクアトマイズ法を適用することができる。アトマイズ法においては、ミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子を効率的に得ることができる。アトマイズ法は、種々の合金組成に対して適用することができる。また、ミクロンオーダーの粒径を有し、ある程度円形度の高い金属粒子を得やすいので、本実施形態にかかる製造方法において、原料粒子Mの製造に用いるのに適している。特に、ガスアトマイズ法は、金属粒子の製造効率や簡便性等の観点で好適である。
アトマイズ法等によって製造された原料粒子Mに対して、適宜分級等を行い、粒度分布を調整しておいてもよい。続くプラズマ処理工程および解粒工程を経て得られる複合粒子Pは、原料粒子Mと同程度の平均粒径を有するものとなるので、積層造形等、粉末材料の用途に応じて、複合粒子Pにおいて所望される平均粒径に基づいて、原料粒子Mの粒度分布を調整しておけばよい。原料粒子Mの分級は、例えば、後の解粒工程に用いるのと同様の気流分級機を用いて行うことができる。
(2)プラズマ処理工程
次のプラズマ処理工程においては、原料準備工程で準備した原料粒子Mに、熱プラズマ処理を行う。
図1に示すように、熱プラズマ処理は、プラズマ処理装置10によって行うことができる。プラズマ処理装置10においては、プラズマ用ガスGに高周波誘導コイル11から高周波を印加することで、プラズマアークPLを発生させる。プラズマアークPLの出力を大きくすることで、熱プラズマを発生させることができ、その中を通過する物質を瞬時に高温まで加熱することができる。
プラズマ処理工程においては、プラズマ処理装置10にて発生させたプラズマアークPLの中に、原料粒子Mを通過させる。原料粒子Mは、プラズマアークPLによって、瞬時に高温まで加熱され、金属粒子間の凝集が解消されるとともに、金属粒子P1の表面において、溶融または昇華を起こす。そして、プラズマアークPLを抜けた位置で急冷を受け、図3(a)に示すように、金属粒子の表面に微粒子P2を有するプラズマ処理粒子P’となる。
アトマイズ法によって得られた原料粒子Mは、凝集を起こしている場合も多い。しかし、熱プラズマ処理等によって原料粒子Mを加熱することで、その凝集が解消される。これにより、得られる金属粒子P1は、原料粒子Mよりも円形度が向上したものとなる。
原料粒子Mがさらに加熱されると、原料粒子Mの少なくとも表面近傍の組織が、溶融または昇華する。溶融または昇華を起こすことで、原料粒子Mが当初有していた粒子形状および表面構造は、一旦解消される。その原料粒子Mが急冷されると、溶融または昇華した材料が再凝固するが、その際に、表面自由エネルギーの効果により、比表面積の低減と表面の平滑化が起こる。これにより、原料粒子Mよりも円形度を高められた金属粒子P1が生成する。
さらに、原料粒子Mの表面近傍の組織が溶融または昇華し、原料粒子Mの表面で急冷凝固される際に、再凝固によって得られる金属粒子P1の表面に、その溶融または昇華した材料を原料として、微粒子P2が生成される。微粒子P2は、金属粒子P1を構成する金属元素のうち、少なくとも一部の金属元素を含有し、金属粒子P1よりも小さな粒径を有する粒子として形成される。生成した微粒子P2は、金属粒子P1の表面に付着したものとなる。
特に、原料粒子Mの成分組成の中に、Al,Mg,Cu,Sn等、他の成分金属元素よりも昇華しやすい金属元素が含まれる場合には、その昇華しやすい金属、またはもとの原料粒子Mの成分組成よりもその昇華しやすい金属の濃度が高くなった合金が、優先的に、原料粒子Mから昇華する。そして、円形度を高められた金属粒子P1の表面で再凝固する際に、他の成分金属との再凝固に関する挙動の差によって、金属粒子P1の表面に微粒子P2を形成しやすい。この場合には、製造される複合粒子Pにおいて、その昇華しやすい元素が、金属粒子P1にも、生成する微粒子P2にも含有されることになる。上で原料粒子Mを構成する金属種の例として列挙したチタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金としては、Al,Mg,Cu,Sn等の昇華しやすい金属元素を含有するものが、公知である。
プラズマ処理工程によって、原料粒子Mを構成する金属材料が表面から昇華して形成される微粒子P2において、金属元素がとる状態は、特に限定されるものではなく、金属状態にあっても、少なくとも一部が金属化合物の状態にあってもよい。プラズマアークPL中では、生成した金属微粒子が、即座に酸化され、微粒子P2の少なくとも表面部分は、金属酸化物となりやすい。
プラズマ処理工程を経て得られるプラズマ処理粒子P’においては、上記のように、微粒子P2が金属粒子P1の表面に付着して生成し、後に詳しく説明するように、金属粒子P1間に働く引力相互作用を低減し、粉末材料の流動性を向上させる役割を果たすが、プラズマ処理工程においては、そのような役割を果たすのに十分な量を超えて、過剰量の微粒子(過剰微粒子)P3が生成する場合がある。それら過剰微粒子P3も、金属粒子P1の表面に付着した微粒子(付着微粒子)P2と同様に、原料粒子Mを構成する金属元素の少なくとも一部が、プラズマアークPL中で昇華し、再凝固して生成される微粒子であり、金属粒子P1よりも小さな粒径を有し、少なくとも一部が金属酸化物の状態にある。
金属粒子P1の表面の付着微粒子P2と、過剰微粒子P3との間に、成分組成や形状、大きさ、金属粒子P1との相互作用等の各種特性において、明確な差が存在しない場合もある。しかし、付着微粒子P2が、金属粒子P1の表面に、強固に付着した状態で生成するのに対し、過剰微粒子P3は、付着微粒子P2に比べて、金属粒子P1に対する付着力の弱い、煤塵状微粒子として生成することも多い。この場合に、過剰微粒子P3は、後の実施例に示されるように、金属粒子P1の表面に強固に付着した付着微粒子P2の外側に堆積するようにして、金属粒子P1に弱く結合された状態で生成しやすい。また、過剰粒子P3の一部が、金属粒子P1の表面に付着または堆積することなく、金属粒子P1に微粒子P2が付着した複合粒子Pと混ざり合う形で、プラズマ処理粒子P’に含有される場合もある。
以上のように、原料粒子Mに対して熱プラズマ処理を行うことで、円形度の高い金属粒子P1と、金属粒子P1よりも小さい粒径を有する微粒子P2,P3とが生成し、プラズマ処理粒子P’が得られる。プラズマ処理粒子P’は、プラズマアークPLによる加熱で生成した微粒子の少なくとも一部が、付着微粒子P2として、金属粒子P1の表面に強固に付着しているとともに、過剰に生成した微粒子である過剰微粒子P3も含有するものとなる。
(3)解粒工程
プラズマ処理工程で得られたプラズマ処理粒子P’は、次に解粒工程に供される。解粒工程においては、気流によるせん断を利用して、過剰微粒子P3の分離・除去を行う。
解粒工程は、気流によるせん断を利用して、過剰微粒子P3を、金属粒子P1の表面から、解粒によって分離し、除去することができれば、具体的な方法は、特に限定されるものではない。しかし、図2に示すように、気流分級機20を用いて、解粒工程を実施することが好ましい。
気流分級機20は、本来、気流を用いて、粉末材料の分級、つまり粒径の選別を行うのに用いられる装置であるが、運転条件の選択等により、粒子の集合体のせん断、つまり集合構造の解消を行うことができる。気流分級機20としては、特開2003−145052号公報に開示されるもののように、強制渦式気流分級機を用いることが好ましい。
この種の気流分級装置には、高速回転する分級ロータ24と、分散羽根22が設けられており、分級ロータ24を回転させると、ケーシング21と分散羽根22の間の空隙23に、せん断流れが発生する。そのせん断流れの中に、供給口21aから、粉末材料を投入すると、粉末材料が、その空隙23を通過する間に、せん断力による解粒を受ける。解粒後の粒子は、分級ロータ24による遠心力と、分級羽根55からの気流による抗力を受ける。この際、粒子に、粒径に応じた遠心力および抗力が働くことにより、粗粉と微粉が分離される。遠心力が大きく働く大径の粒子(粗粉)は、粗粉領域26に移動する一方、抗力が大きく働く小径の粒子(微粉)は、微粉領域27に移動する。
本実施形態にかかる製造方法の解粒工程においては、上記のプラズマ処理工程を経て、プラズマ処理装置10から放出されたプラズマ処理粒子P’を含む粉体を、空気とともに、気流分級機20に投入する。気流分級機20に供給口21aから投入されたプラズマ処理粒子P’は、分散羽根22とケーシング21の間の空隙23を通過する間に、気流によるせん断力を受けて、解粒を起こす。その結果、過剰微粒子P3が、金属粒子P1の表面から解粒分離され、微粉領域27に移動する。一方、付着微粒子P2は、図3(b)のように、金属粒子P1の表面に付着した状態を維持し、金属粒子P1とともに、複合粒子Pを構成した状態を維持する。その複合粒子Pは、粗粉領域26に移動する。このようにして、過剰粒子P3を、金属粒子P1の表面から分離・除去して、複合粒子Pを、粗粉領域から分取することができる。
上記のように、過剰微粒子P3は、煤塵状微粒子等の状態をとり、付着微粒子P2と比較して、金属粒子P1に対する付着力が弱くなっている場合が多いが、そのような場合には、付着微粒子P2は、金属粒子P1の表面に付着した状態に維持しながら、過剰微粒子P3を、金属粒子P1の表面から分離して除去しやすい。金属粒子P1との相互作用において、付着微粒子P2と過剰微粒子P3の間に大きな差が存在しない場合でも、分級ロータ24の回転速度等、気流分級機20の運転条件を調整することで、製造される粉末材料の流動性の向上に必要な量の微粒子を、付着微粒子P2として金属粒子P1の表面に残しながら、残りの微粒子を、過剰微粒子P3として、金属粒子P1の表面から除去することができる。金属粒子P1は、粉砕や変形等、気流による影響をほぼ受けず、プラズマ処理粒子P’でとっていた構造を、実質的に維持する。
解粒工程は、本来の用途として、粒子の粒径の選別が想定されている気流分級機20を用いて行って実施されるため、気流によるせん断を利用した過剰微粒子P3の分離・除去と同時に、付着微粒子P2が金属粒子P1に付着した複合粒子Pの分級、つまり粒度分布の調整も、同時に行うことができる。具体的には、分級ロータ24の回転速度等、気流分級機20の運転条件を選択することで、プラズマ処理粉末P’から過剰微粒子P3を解粒分離して、複合粒子Pを生成させるとともに、生成した複合粒子Pのうち、所望の粒径を有するものを選別して粗粉領域26に導き、分取することができる。
以上のように、解粒工程においては、気流によるせん断を利用して、プラズマ処理粒子P’を構成する金属粒子P1の表面から、微粒子の一部に相当する過剰微粒子P3を分離して除去し、金属粒子P1の表面に残りの微粒子である付着微粒子P2が付着した複合粒子Pを、分取することができる。また、同時に、複合粒子Pの分級も行うことができる。
以上に説明した形態では、解粒工程は、気流分級機20を用いて行っているが、気流分級機20の代わりに、あるいは気流分級機20と合わせて、気流分散装置を用いる形態としてもよい。気流分散装置は、リングノズル等を用いて、高速気流を発生させ、粉体に衝突させるものである。粉体は、気流による加速を受け、粒子間衝突、装置壁面との衝突、またせん断力の印加により、粒子間の凝集状態を解消され、分散される。このような気流分散装置を用いても、プラズマ処理粒子P’において、過剰微粒子P3を金属粒子P1の表面から分離・除去することができる。
解粒工程を、気流分散装置のみを用いて行ってもよいが、気流分級機20の前段に気流分散装置を配置して行うことが好ましい。つまり、プラズマ処理粒子P’を、まず気流分散装置に通し、気流分散装置から放出された粉体を、気流分級機20に導入すればよい。気流分散装置によって、プラズマ処理粒子P’を構成する金属粒子P1の表面から、過剰微粒子P3が解粒分離される。そして、分離された過剰微粒子P3を複合粒子Pとともに含む粉体が、気流分散装置から放出される。この気流分散装置から放出された粉体を気流分級機20に導入することで、過剰微粒子P3の金属粒子P1表面からの解粒分離をさらに進めるとともに、過剰微粒子P3を除去された複合粒子Pを、過剰微粒子P3と空間的に隔離し、複合粒子Pを分取することができる。また、複合粒子Pに対して分級を行うことができる。気流分級機20の前段に気流分散装置を設ける場合に、気流分散装置から処理済の粉末材料が放出される放出口と、気流分級機20に粉末材料を投入する供給口21aとを、直接接続しておくとよい。すると、気流分散装置から、気流とともに放出される粉体が、直接、つまり外部の環境に接触することなく、気流分級機20に導入されるようになり、気流分散装置による処理と、気流分級機20による処理を、連続して行うことができる。
[製造される粉末材料]
本実施形態にかかる製造方法によって製造される粉末材料は、図3(b)に示すように、球形に近い形状を有する金属粒子P1の表面に、微粒子P2が付着した複合粒子Pを含んでいる。粉末材料は、過剰微粒子P3を、解粒工程で除去しきれなかった不可避的成分を除いて、含有していない。
複合粒子Pを構成する金属粒子P1は、原料粒子Mの一次粒径とほぼ同じ粒径を有し、原料粒子Mとほぼ同じ成分組成を有している。金属粒子P1の粒径は、複合粒子P全体としての粒径と実質的に等しく、積層造形の原料としての好適性の観点から、平均粒径で、10μm以上であることが好ましい。また、500μm以下、特に100μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径とは、質量基準分布における篩下積算分率が50%となる粒子径(d50)を指す。
金属粒子P1は、プラズマ処理工程による表面部の溶融と再凝固を経て、原料粒子Mよりも円形度が高く、対称性の高い形状と平滑な表面を有している。金属粒子P1が高い円形度を有していることで、その形状の効果により、粉末材料における内部摩擦角(φ)が小さくなる。すると、粉末材料の集合体の崩れやすさが向上し、粉末材料の流動性が高くなる。また、粉末床等として、金属粒子P1を敷き詰めた際に、粉末材料を密に充填することが可能となり、充填性が向上する。好ましくは、複合粒子Pとしての円形度が、平均粒径において、0.90以上、さらには0.95以上であることが好ましい。
ミクロンオーダーの粒径を有する原料粒子Mを用いてプラズマ処理工程を実施した場合に、ミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子P1の表面に、付着微粒子P2として、ナノ粒子が形成されやすい。具体的には、付着微粒子P2として、1nm以上、また、200nm以下の平均粒径を有するものが形成されやすい。
上記のように、付着微粒子P2を構成する金属元素は、原料粒子M、また熱プラズマ処理を経た金属粒子P1を構成する金属元素の、少なくとも1種よりなっている。付着微粒子P2に含有される金属元素が、金属粒子P1に含有される金属元素の少なくとも一部と同じであることで、三次元造形物等、粉末材料を用いて製造される製品において、金属粒子P1を構成する以外の金属元素が含有されないことになる。付着微粒子P2の形状は特に限定されないが、原料粒子Mの構成材料の溶融または昇華と再凝固を経て形成されるため、不規則形状をとりやすい。
金属粒子P1の表面に付着微粒子P2が存在していることにより、付着微粒子P2が金属粒子P1の間に介在され、金属粒子P1の間に、微粒子P2の粒径以上の距離が保たれることになる。ファンデルワールス力、静電引力等、金属粒子P1間に働く引力は、金属粒子P1間の距離が大きくなると、小さくなる。つまり、付着微粒子P2の存在によって、金属粒子P1間の距離を確保することにより、金属粒子P1の相互間における引力が低減される。これにより、金属粒子P1間に働くせん断付着力(τs)を低減し、その結果として、粉末材料の流動性を高めることができる。
このように、本実施形態にかかる製造方法において、原料粒子Mを熱プラズマ処理によって加熱して、円形度の向上した金属粒子P1の表面に微粒子P2が付着した複合粒子Pとすることで、円形度の向上と微粒子P2の付着の両方の効果により、もとの原料粒子Mと比べて、金属粒子P1の間に働くせん断付着力(τs)が低減される。また、内部摩擦角(φ)も小さくなる。それらの結果、粉末材料の流動性が向上する。また、粉末材料の充填性も向上する。例えば、プラズマ処理工程を経て得られる複合粒子P(解粒工程実施後)において、原料粒子Mと比較して、せん断付着力を嵩密度で規格化した値である嵩密度規格化せん断付着力(τs/ρ)を、60%以下、さらには55%以下に低減することができる。また、内部摩擦角(φ)を、tanφで、原料粒子Mの90%以下に低減することができる。
粉末材料の流動性と充填性が向上されることで、粉末材料を、積層造形の原料として、好適に用いることが可能となる。例えば、積層造形法のうち、SLM法やEBM法等の粉末積層溶融法を実施する場合には、ホッパーから粉末材料を供給し、基材の上に敷き詰めて、粉末床を形成する。この際、粉末材料が高い流動性を有することにより、ホッパーから安定して粉末材料を流出させることができる。また、リコーター等を用いて、粉末材料を敷き詰めて、粉末床とする際に、粉末材料が高い流動性と充填性を有していることにより、粉末材料の敷き詰めを、高密度に、また均質に行いやすくなる。粉末床の充填密度が高められることで、得られる三次元造形物の均質性も向上される。LMD法をはじめとする粉末堆積法による積層造形においても、流動性に優れた粉末材料を用いることで、ノズルに粉末材料を安定して供給することができる。また、ノズルから造形を行う箇所に向かって、気流とともに粉末材料を噴射する際に、ノズルの閉塞を抑制し、造形を安定して進めることができる。
さらに、本実施形態にかかる製造方法によって得られる粉末材料においては、気流によるせん断を利用した解粒工程を経ることで、プラズマ処理工程で発生した過剰微粒子P3が、複合粒子Pから解粒分離され、除去されている。金属よりなる原料粒子Mを熱プラズマ処理した際には、不可避的に、煤塵状微粒子等の過剰微粒子P3が発生するが、解粒工程を経ることで、金属粒子P1に微粒子P2が付着した複合粒子Pの構造を維持しながら、それら過剰微粒子P3の分離・除去を行うことができる。
上記のように、微粒子P2が金属粒子P1の間に介在されることで、金属粒子P1間の引力が低減され、粉末材料の流動性が向上するが、微粒子が過剰に含有されても、流動性向上の効果は飽和する。むしろ、酸化物等の金属化合物を含む微粒子が過剰に存在することで、積層造形等によって粉末材料から製造される金属製品の品質に、不純物の生成等を通して、影響を与える可能性がある。しかし、本製造方法によって得られる粉末材料においては、過剰微粒子P3が分離・除去されており、煤塵状微粒子等の過剰微粒子P3を、不可避的成分を除いて含有しないことで、粉末材料における酸化物等の金属化合物の含有量が抑えられ、金属化合物の過剰な含有による製品の品質への影響を、低減することができる。
例えば、プラズマ処理工程の後、解粒工程を経て得られる複合粒子Pにおいて、解粒工程を経る前の過剰微粒子P3を含んだプラズマ処理粒子P’と比較して、粉末材料中の酸素濃度(酸素値)を、90%以下に低減することができる。過剰微粒子P3の除去は、粉末材料の比表面積によっても評価することができ、過剰微粒子P3を含んだプラズマ処理粒子P’に対して、解粒工程を実施することで、比表面積を、70%以下に低減することができる。
本製造方法においては、解粒工程を、気流によるせん断を用いて実施しているため、製造される粉末材料において、過剰微粒子P3の分離・除去が十分に達成される一方、付着微粒子P2が円形度の高い金属粒子P1の表面に付着した複合粒子Pの構造は、解粒工程を経ても、ほぼ影響を受けずに保持される。過剰微粒子P3の分離・除去は、例えば、ジェットミルや回転体等、機械的手段を用いても行える可能性があるが、そのような場合には、金属粒子P1の表面に残存させるべき付着微粒子P2まで除去してしまう可能性や、さらには、金属粒子P1にまで破砕や変形等の影響を与える可能性があり、複合粒子Pの構造を維持することが困難である。気流によるせん断であれば、激しい力学的な刺激を複合粒子Pに印加することはないため、それらの事態を避け、円形度の高い金属粒子P1の表面に微粒子P2が付着した複合粒子Pを与えるものとなる。また、複合粒子Pからの過剰微粒子P3の分離は、超音波振動等、湿式法でも行うことが可能であるが、その場合には、媒質を用いる必要があり、複合粒子Pから分離された過剰微粒子P3を含む媒質を、濾過等によって除去しなければ、複合粒子Pを粉末状で得ることができない。しかし、過剰微粒子P3の分離を、気流によるせん断によって行うことで、過剰微粒子P3の分離・除去のために、液体の媒質等、プラズマ処理粒子P’とともに気流分級機20に導入する気体以外の物質を用いる必要がなく、過剰微粒子P3の分離の後に、ろ過や精製等の工程を実施しなくても、複合粒子Pを高純度で含んだ粉末材料を得ることができる。
解粒工程に由来して、複合粒子Pの構造の変化、また他の物質の混在等が起こらないことで、プラズマ処理工程を経て向上された複合粒子Pの流動性および充填性が、解粒工程を経ても、高度に維持されることになる。つまり、プラズマ処理工程において、金属粒子P1の円形度の向上と付着微粒子P2の生成が起こることで、粉末材料のせん断付着力(τs)および内部摩擦角(φ)が小さくなるが、解粒工程を経ても、せん断付着力(τs)および内部摩擦角(φ)は、プラズマ処理工程を経て原料粒子Mよりも低減された状態を、維持する。さらには、嵩密度規格化せん断付着力(τs/ρ)の値が、解粒工程を経ることで、プラズマ処理工程のみを経た場合と比較して、さらに小さくなる場合もある。これは、プラズマ処理工程で生じた微粒子のうち、せん断付着力の向上に実質的に寄与せず、むしろ高い付着力を示すものが、除去されるためであると考えられる。
以上のように、本実施形態にかかる製造方法によって製造される粉末材料は、プラズマ処理工程を経て円形度を高められた金属粒子P1と、その金属粒子P1に付着した微粒子P2とからなる複合粒子Pを含むことにより、流動性と充填性に優れる。さらに、解粒工程を経ることにより、そのような複合粒子Pの構造を維持しながら、プラズマ処理工程で生じた過剰量の微粒子P3が分離・除去されているため、酸素含有量の増大が抑制されている。そのため、製造した粉末材料を、積層造形法による三次元造形物の製造に、好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。ここでは、上記で説明した各製造工程を経ることで、粉末材料の状態や特性がどのように変化するかを調べた。
(試料の作製)
Ti−6Al−4V合金(6質量%のAlと4質量%のVを含有し、残部がTiと不可避的不純物よりなる合金)よりなる金属粒子を、ガスアトマイズ法にて作製した。そして、15/45μmにて分級を行った。得られた金属粉末を、試料#1とした。
試料#1の金属粉末に対して、プラズマ処理装置を用いて、熱プラズマ処理を行い、得られたプラズマ処理粒子を、試料#2とした。さらに、試料#2に対して、気流分級機を用いて、解粒処理を実施し、解粒と分級を行った。微粒子が金属粒子に付着した複合粒子を分取して、試料#3とした。
(粉末材料の評価)
まず、各試料における金属粒子の状態を確認するために、試料#1〜#3に対して、粒度分布を評価した。この際、粒子画像分析装置を用いて、粒子形状の評価を行った。粒子形状に基づいて、粒度分布を評価するとともに、粒子の円形度を計測した。さらに、各試料について、粒子の状態を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察した。
さらに、試料#1〜#3に対して、特性および化学状態の評価を行った。各評価は、気温24℃、相対湿度RH23%の条件で行った。各試料の特性として、まず、嵩密度規格化せん断付着力(τs/ρ)と内部摩擦角(φ)を評価した。計測に際しては、JIS Z 8835に準拠し、回転セル型のせん断試験装置を用いて、粉末材料に圧力(σ)を印加した際に発生するせん断応力(τ)を計測した。そして、σを横軸に、τを縦軸にプロットした際の縦軸切片として、せん断付着力(τs)を求めた。また、嵩密度(ρ)は、JIS Z 2504に準拠し、金属粉末用嵩比重測定器を用いて、計測した。さらに、内部摩擦角(φ)は、せん断付着力(τs)の計測に利用した、σを横軸に、τを縦軸にとったプロットを用い、近似直線の傾きをtanφとして算出した。
化学状態の評価としては、酸素値を計測した。この際、ガス分析法により、各試料における酸素濃度(試料の全質量に占める酸素原子の質量の割合)を計測し、酸素値とした。さらに、各試料に対して、比表面積を計測した。比表面積の計測は、吸着ガスとしてKrを用い、BET吸着法によって行った。
(評価結果)
(1)粒度分布および円形度
図4に、原料粒子よりなる試料#1、原料粒子に対して熱プラズマ処理を施した試料#2、さらに気流分級機を用いた解粒処理を行った試料#3について、粒度分布、および粒径ごとの円形度の評価結果を示す。また、下の表1に、粒度分布にかかるパラメータと、平均粒径に対応する粒径20μm±2μmにおける円形度の値をまとめる。さらに、図5に、図4に示した円形度を得る際に用いた粒子画像の例として、粒径20μm±2μmにおける粒子画像の代表例を、各試料について示す。
図4の粒度分布および表1の粒径値によると、原料粒子に相当する試料#1と、熱プラズマ処理を施した試料#2で、粒度分布は、中央値や幅において、類似したものとなっている。一方で、円形度は、熱プラズマ処理を経て、向上が見られている。特に、粒径が大きい領域で、円形度の向上が顕著である。図5の粒子画像を見ても、試料#1では、左から3番目の像のように、同程度の径を有する2つの粒子が相互に付着したものや、左から6番目の像のように、直径10μmオーダーの大径の粒子に、直径数μm程度の小径の粒子が付着したもの等、いびつな形状を有する粒子が比較的多く見られる。これに対し、試料#2では、粒子形状のいびつさが軽減されている。これらの結果から、熱プラズマ処理により、金属粒子の円形度が向上していることが確認される。
さらに、試料#2と、解粒処理を経た試料#3を比較すると、図4の粒度分布において、試料#3の方で、小径側の分布が減少し、分布がやや大径側にシフトしているのが分かる。分布幅も小さくなっている。表1の粒径値も、試料#3において、d10値が増大しており、図4で見られた傾向に合致するものとなっている。円形度は、わずかな向上を示している。これらの結果は、プラズマ処理工程を経た試料#2の金属粉末中には、余剰な微粒子として形成された微粉が多く含まれていたのに対し、気流分級機を用いた解粒処理を経ることで、試料#3では、それらの微粉が除去されたことによるものと解釈される。
(2)金属粒子の構造
図6〜8に、それぞれ試料#1〜#3の粒子に対するSEM観察の結果を示す。観察倍率は、図6および図7(a)、図8(a)で5,000倍である。また、図7および図8の(b)で10,000倍、(c)で100,000倍である。
まず、図6の試料#1と図7の試料#2のSEM像を比較すると、試料#1では、粒子がややいびつな形状をとっているのに対し、試料#2では、粒子の全体形状が、球形に近づいている。これは、上記の円形度評価において得られた結果とも合致している。そして、試料#2では、粒子の表面に、多数のナノオーダーの凸構造が分布しており、熱プラズマ処理を経て、金属粒子の表面で、微粒子の生成が起こったことが確認される。
さらに、図7の試料#2と図8の試料#3のSEM像を比較すると、試料#3において、試料#2よりも、金属粒子の表面における微粒子の密度が減少しているのが分かる。特に、(c)の高倍率像を比較すると、試料#2では、金属粒子の表面に微粒子が付着した外側に、さらに別の微粒子が積み上がっているような構造が多く形成されているのに対し、試料#3では、そのように、微粒子が積み上がった構造がほぼ解消されており、残っている大半の微粒子が、金属粒子の表面に直接付着した状態となっている。このことから、気流分級機を用いた解粒工程を経ることで、熱プラズマ処理によって生じた微粒子の一部が、金属粒子の表面から除去されていることが確認される。特に、金属粒子の表面に強固に付着していない微粒子が、優先的に除去されていると言える。
(3)粉末材料の特性と化学状態
図9に、試料#1〜#3について、嵩密度規格化せん断付着力(τs/ρ)の計測結果を示す。単位は、(m/s)2である。これによると、試料#1から試料#2へと、熱プラズマ処理を経て、嵩密度規格化せん断付着力の値が、53%程度にまで小さくなっている。これは、熱プラズマ処理を経て、微粒子が金属粒子の表面に生成することによって、金属粒子間の引力が低減されたことに対応付けられる。
試料#2から試料#3へと、解粒工程を経ても、嵩密度規格化せん断付着力の値は上昇していない。このことは、気流分級機を用いた解粒工程を経ても、微粒子が金属粒子の表面に付着した複合粒子の構造が維持されていることを示唆している。むしろ、試料#3において、試料#2を基準として、5%程度ではあるが、嵩密度規格化せん断付着力がさらに減少している。これは、気流分級機を用いた解粒工程によって、付着力の高い微粉末が除去されたことによるものと推測される。
さらに、図10に、試料#1〜#3について、内部摩擦角(φ)の計測結果を示す。これによると、試料#1から試料#2へと、熱プラズマ処理を経て、内部摩擦角が、tanφで86%程度にまで小さくなっている。これは、熱プラズマ処理によって金属粒子の円形度が向上したことの結果であると解釈される。
試料#2から試料#3へと、解粒工程を経ても、内部摩擦角の値は上昇していない。このことは、気流分級機を用いた解粒工程を経ても、金属粒子が、破砕や変形等の変化を起こしていないことを示唆している。
図11に、試料#1〜#3について、酸素値の計測結果を示す。これによると、試料#1から試料#2へと、熱プラズマ処理を経た際に、粉末の酸素値が大きく上昇している。これは、熱プラズマ処理によって、金属酸化物よりなる微粒子が、多量に生成したことを意味している。
試料#2から試料#3へと、気流分級機を用いた解粒工程を経ると、酸素値は、約87%に減少している。これは、熱プラズマ処理によって生じた酸化物を含む微粒子の一部が、解粒工程において除去されたことに対応するものであり、上記のSEM観察の結果とも合致している。
さらに、図12に、試料#1〜#3について、比表面積の計測結果を示す。これによると、試料#1から試料#2へと、熱プラズマ処理を経た際に、粒子の比表面積が大きく上昇している。図4の粒度分布によると、粒径がほぼ変化していないにもかかわらず、粒子の比表面積が増大していることになり、これは、熱プラズマ処理によって、金属粒子の表面に、多量の微粒子が生成し、粒子表面に微細な凹凸形状が形成されたことに起因すると解釈される。
試料#2から試料#3へと、気流分級機を用いた解粒工程を経ると、比表面積は、65%以下に減少している。これは、熱プラズマ処理によって生じた微粒子の一部が、解粒工程において除去され、粒子表面の凹凸が低減されたものと解釈される。この結果は、上記のSEM観察結果、および酸素値の計測結果とも合致するものである。比表面積を指標とすることで、酸素値を指標とする場合よりもさらに明確に、過剰な微粒子が除去されたことを、確認することができる。
以上の試験結果を総合して、金属よりなる原料粒子に熱プラズマ処理を施すことで、円形度の向上した金属粒子の表面に微粒子が付着した複合粒子が形成されることが確認された。この際、過剰量の微粒子が生成するが、気流分級機を用いた解粒処理を施すことで、過剰に生成した微粒子を、金属粒子の表面から分離し、除去することができる。この際、円形度の高い金属粒子の表面に、微粒子が付着した複合粒子の構造は、維持される。金属粒子の円形度の向上、およびその表面への微粒子の付着により、金属粒子のせん断付着力および内部摩擦角が低減され、製造される粉末材料において、高い流動性と充填性が得られる。さらに、酸素値および比表面積の低減として確認される過剰な微粒子の除去によって、製造される粉末材料において、酸化物含有の影響を低減することができる。
以上、本発明の実施形態および実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態および実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。