JP2021123771A - 耐熱合金部材およびその製造方法ならびに高温装置およびその製造方法 - Google Patents

耐熱合金部材およびその製造方法ならびに高温装置およびその製造方法 Download PDF

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敏夫 成田
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Taido Kato
泰道 加藤
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Takuro Narita
拓郎 成田
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Motohiro Otsuka
元博 大塚
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真由美 荒
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Abstract

【課題】Alを含有しないか低Al濃度の耐熱合金基材を用いた場合においても、高温酸化性雰囲気において加熱・冷却サイクルが付加された環境下で使用された場合に、拡散バリア機能および遮熱層のトップ層の耐剥離性に加えて優れた耐高温酸化性を得ることができ、さらには耐熱合金基材の機械的強度の向上を図ることができ、耐熱合金基材の有する高温特性を長期に亘って維持することができ、さらにはトップ層を必要最小限の領域に設けることで足りる耐熱合金部材およびその製造方法を提供する。【解決手段】耐熱合金部材は、耐熱合金基材と、その表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたRe系、W系またはCr系の多目的合金層と、その上の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたAl含有合金からなるボンド層と、その上の遮熱を行うべき領域のみに設けられた遮熱性セラミックスからなるトップ層とを有する。【選択図】図1

Description

この発明は、耐熱合金部材およびその製造方法ならびに高温装置およびその製造方法に関し、特に、高温酸化性雰囲気において加熱・冷却が繰り返される環境下で使用される、焼却炉、ボイラー、ガスタービン、ジェットエンジン、排ガス系部材、等に適用して好適なものである。
各種燃焼機器、タービン、ジェットエンジン、等に使用される耐熱合金基材には遮熱コ−ティング皮膜 (Thermal Barrier Coating:TBC)が施工されている。代表的なTBCとして、耐熱合金基材の表面全体に、ボンド層として例えばMCrAlY(M=Co,Ni)が、トップ層としてセラミックス遮熱層(例えば、イットリア(Y2 3 )安定化ジルコニア(ZrO2 )(Yttria Stabilized Zirconia: YSZ))が、溶射、電子ビーム蒸着、等で施工される。トップ層とボンド層との界面にはAl2 3 主体の熱酸化物(Thermally Grown Oxides:TGO)を形成して、耐熱合金基材の酸化を抑制する。なお、トップ層とボンド層とを含めて、遮熱層(TBC)と呼ばれることもある。
しかしながら、耐熱合金基材では、使用中に基材の元素がボンド層側に、ボンド層のAlが基材側にそれぞれ拡散するため、ボンド層のAl濃度は低下し、非保護的TGOを形成・成長することによって早期にトップ層(YSZ)の剥離が発生することから、その解決が求められている。
従来、発電用ガスタービン翼において、上述の元素の相互拡散を抑制するために、C、B、Hf、Cr、Mo、W、Re、Ta、NbおよびCoに加えてAlを重量で4.9%以上5.2%以下含有し、残部がNiであるNi基単結晶超合金からなる翼基材の表面全体にRe等を含有する拡散バリア層を形成した後、その表面全体にボンド層およびトップ層を順次積層する技術が提案されている(特許文献1〜3参照。)。拡散バリア層の詳細については特許文献4〜7に記載されている。
特許第5905336号明細書 特許第5905354号明細書 特許第5905355号明細書 特許第3857689号明細書 特許第3857690号明細書 特許第3910588号明細書 特許第4753720号明細書
特許文献1〜3に記載された発電用ガスタービン翼においては、使用中に基材の元素がボンド層側に、ボンド層のAlが基材側にそれぞれ拡散するのを拡散バリア層により防止することができ、非保護的TGOの形成・成長を抑制することができることによりトップ層(YSZ)の剥離を防止することができることに加えて、翼基材がAlを重量で4.9%以上5.2%以下含有するNi基単結晶超合金からなるため、高温酸化中に翼基材の表面に保護的Al2 3 が形成され、耐酸化性を確保することもできる。しかしながら、耐熱合金基材としてAlを含有しないものやAlを含有しても低Al濃度のものを用いる場合には、この技術をそのまま適用しても耐酸化性の確保とトップ層(YSZ)の剥離防止とを同時に達成することはできない。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、Alを含有しないか低Al濃度の耐熱合金基材を用いた場合においても、高温酸化性雰囲気において加熱・冷却サイクルが付加された環境下で使用された場合に、拡散バリア機能および遮熱層のトップ層の耐剥離性に加えて優れた耐高温酸化性を得ることができ、さらには耐熱合金基材の機械的強度の向上を図ることができ、耐熱合金基材の有する高温特性を長期に亘って維持することができ、さらにはトップ層を必要最小限の領域に設けることで足りる耐熱合金部材およびその製造方法ならびにそのような耐熱合金部材を含む高温装置およびその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために、この発明は、
耐熱合金基材と、
上記耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたRe系、W系またはCr系の多目的合金層と、
上記多目的合金層上の上記遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたAl含有合金からなるボンド層と、
上記ボンド層上の上記遮熱を行うべき領域のみに設けられた遮熱性セラミックスからなるトップ層と、
を有する耐熱合金部材である。
この発明において、Re系、W系またはCr系の多目的合金層(Multi-Purpose Layer;MPL)は、拡散バリア能に加えて、耐酸化性、耐熱合金基材の機械的特性の改善、トップ層の耐剥離性の向上など多機能性を有し、多目的に使用できる合金層を意味する。Re系、W系またはCr系の多目的合金層はそれぞれRe、W、Crを含有する。
例えば、多目的合金層がRe系またはW系である場合、この多目的合金層、ボンド層およびトップ層は耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域のみに設けられる。典型的な一つの例では、Re系またはW系の多目的合金層、ボンド層およびトップ層は耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域のみに設けられ、遮熱を行うべき領域以外の部分の耐熱合金基材の表面を覆うようにAl含有合金皮膜が設けられる。この場合、高温での酸化中にはこのAl含有合金皮膜の酸化により保護的Al2 3 皮膜が形成され、耐熱合金基材の高温耐酸化性を確保することができる。Al含有合金皮膜は、一般的にはAl濃度は50原子%(at%)以下、30%原子以上のNi基合金であり、Al濃度は好適には40原子%以下である。Al含有合金皮膜は、典型的にはβ−NiAlからなるが、これに限定されるものではない。多目的合金層は、Re系の多目的合金層およびW系の多目的合金層から選ばれた互いに異なる2層が積層されたものからなるものであってもよい。他の例では、耐熱合金基材の表面全体を覆うようにCr系の多目的合金層および当該多目的合金層上のAl含有合金皮膜が設けられ、ボンド層およびトップ層はこのAl含有合金皮膜上の遮熱を行うべき領域のみに設けられる。あるいは、多目的合金層、ボンド層およびトップ層は耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域のみに設けられ、遮熱を行うべき領域以外の部分の耐熱合金基材の表面を覆うように多目的合金層および当該多目的合金層上のAl含有合金皮膜が設けられる。あるいは、耐熱合金基材の表面全体を覆うようにCr系の多目的合金層および当該多目的合金層上の、ボンド層を兼用するAl含有合金皮膜が設けられ、トップ層はこのAl含有合金皮膜上の遮熱を行うべき領域のみに設けられる。
耐熱合金基材は、必要に応じて選択され、特に限定されない場合もあるし、限定される場合もある。特に限定されない場合、耐熱合金基材は、例えば、Fe基合金、Co基合金、Cr含有量が20原子%以下のNi基合金、などの従来公知の合金からなる。Cr系の多目的合金層を用いる場合には、耐熱合金基材は、好適には、Cr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなる。この場合、より好適には、Ni基合金はCrを18.7原子%以上含有し、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で5.7原子%以上19.2原子%以下含有し、FeおよびNbを総和で13.1原子%以下含有する。また、Re系の多目的合金層を用いる場合には、耐熱合金基材はNi基単結晶超合金からなる場合もある。耐熱合金基材の形状は特に限定されず、用途等に応じて選ばれるが、例えば、平板状、棒状(角棒、丸棒、等)、管状、箱状、等である。
ボンド層を構成するAl含有合金は、典型的にはMCrAlY(M=Co,Ni)であるが、これに限定されるものではなく、例えば、β−NiAl、γ’−Ni3 Al、γ−Ni(Al,Cr)などであってもよい。
トップ層を構成する遮熱性セラミックスは、例えば、ジルコニウムとイットリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックス(典型的にはYSZ)、アルミニウムとイットリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックス、アルミニウムとランタンと酸素とを含有する酸化物セラミックス、アルミニウムとサマリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックス、セリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックスおよびトリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックスからなる群より選ばれた少なくとも一種からなる。
耐熱合金部材は、特に限定されないが、具体的には、例えば、ガスタービンの部材、ジェットエンジンの部材、排ガス系部材、等が挙げられる。
また、この発明は、
耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域にRe系、W系またはCr系の多目的合金層を形成する工程と、
上記多目的合金層上の上記遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域にAl含有合金からなるボンド層を形成する工程と、
上記ボンド層上の上記遮熱を行うべき領域のみに遮熱性セラミックスからなるトップ層を形成する工程と、
を有する耐熱合金部材の製造方法である。
この発明においては、例えば、耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域のみに多目的合金層を形成した後、多目的合金層上にボンド層およびトップ層を順次形成する。ボンド層およびトップ層の形成は、溶射や電子ビーム蒸着等を用いることができる。あるいは、耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域のみに多目的合金層を形成し、Al拡散処理を施すことにより遮熱を行うべき領域以外の部分の耐熱合金基材の表面を覆うようにAl含有合金皮膜を形成した後、多目的合金層上にボンド層およびトップ層を順次形成する。ここで、耐熱合金基材がCr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなる場合には、ボンド層およびトップ層を順次形成した後、高温で酸化を行うことにより耐熱合金基材とAl含有合金皮膜との反応により耐熱合金基材とAl含有合金皮膜との間にCr系の多目的合金層を形成する。あるいは、耐熱合金基材はCr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなり、Al拡散処理を施すことにより耐熱合金基材の表面全体にAl含有合金皮膜を形成し、遮熱を行うべき領域のみにボンド層およびトップ層を順次形成した後、高温での加熱処理を行う。高温に加熱することにより耐熱合金基材とAl含有合金皮膜との反応により耐熱合金基材とAl含有合金皮膜との間にCr系の多目的合金層を形成する。さらには、耐熱合金基材はCr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなり、Al拡散処理を施すことにより耐熱合金基材の表面全体にボンド層を兼用するAl含有合金皮膜を形成し、Al含有合金皮膜上の遮熱を行うべき領域のみにトップ層を形成した後、高温での加熱処理を行う。高温に加熱することにより耐熱合金基材とAl含有合金皮膜との反応により耐熱合金基材とAl含有合金皮膜との間にCr系の多目的合金層を形成する。ボンド層およびトップ層の形成には、例えば、溶射法、電子ビーム蒸着法、等を用いることができる。
この発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、上記の耐熱合金部材の発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
耐熱合金基材と、
上記耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたRe系、W系またはCr系の多目的合金層と、
上記多目的合金層上の上記遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたAl含有合金からなるボンド層と、
上記ボンド層上の上記遮熱を行うべき領域のみに設けられた遮熱性セラミックスからなるトップ層と、を有する耐熱合金部材
を有する高温装置である。
高温装置は、上記の耐熱合金部材を一部または全部に含む各種のものであってよいが、具体的には、例えば、ガスタービン、ジェットエンジン、排ガス装置、等である。
また、この発明は、
耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域にRe系、W系またはCr系の多目的合金層を形成する工程と、
上記多目的合金層上の上記遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域にAl含有合金からなるボンド層を形成する工程と、
上記ボンド層上の上記遮熱を行うべき領域のみに遮熱性セラミックスからなるトップ層を形成する工程と、を実行することにより耐熱合金部材を製造する工程を有する高温装置の製造方法である。
上記の高温装置の発明および高温装置の製造方法の発明においては、上記以外のことは、特にその性質に反しない限り、上記の耐熱合金部材の発明および耐熱合金部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
この発明によれば、Alを含有しないか低Al濃度の耐熱合金基材を用いた場合においても、高温酸化性雰囲気において加熱・冷却サイクルが付加された環境下で使用された場合に、拡散バリア機能および遮熱層のトップ層の耐剥離性に加えて優れた耐高温酸化性を得ることができ、さらには耐熱合金基材の機械的強度の向上を図ることができ、耐熱合金基材の有する高温特性を長期に亘って維持することができ、さらにはトップ層を必要最小限の領域に設けることで足りる。
この発明の第1の実施の形態による耐熱合金部材を示す断面図である。 この発明の第2の実施の形態による耐熱合金部材を示す断面図である。 この発明の第3の実施の形態による耐熱合金部材を示す断面図である。 この発明の第4の実施の形態による耐熱合金部材を示す断面図である。 この発明の第5の実施の形態による耐熱合金部材を示す断面図である。 この発明の第6の実施の形態による耐熱合金部材を示す断面図である。 この発明の第7の実施の形態による耐熱合金部材を示す断面図である。 高温サイクル酸化試験に用いる試験片を示す斜視図である。 クリープ試験に用いる試験片を示す断面図である。 高温サイクル酸化試験に用いる試験片を示す斜視図である。 実施例1の試験片の構造を示す断面図である。 実施例1の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 実施例2の試験片の構造を示す断面図である。 実施例2の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 実施例3の試験片の構造を示す断面図である。 実施例3の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 実施例4の試験片の構造を示す断面図である。 実施例5の試験片の構造を示す断面図である。 実施例6の試験片の構造を示す断面図である。 実施例7の試験片の構造を示す断面図である。 実施例8の試験片の構造を示す断面図である。 実施例8の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 実施例9の試験片の構造を示す断面図である。 実施例10の試験片の構造を示す断面図である。 実施例11の試験片の構造を示す断面図である。 実施例12の試験片の構造を示す断面図である。 実施例12の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 比較例2の試験片の構造を示す断面図である。 比較例2の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 加熱・冷却サイクル酸化を行った実施例1〜5、8〜10および比較例1の試験片の酸化量のサイクル数依存性を示す略線図である。 比較例1の耐熱合金部材のトップ層のYSZ層が剥離に至る過程を示す図面代用写真である。 実施例1の耐熱合金部材のトップ層のYSZ層が剥離に至る過程を示す図面代用写真である。 実施例1〜5および比較例1の試験片のボンド層のAl濃度のサイクル数依存性を示す略線図である。 表1に示す各種Ni基合金のAl拡散後の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 4サイクル酸化後の表1に示す各種Ni基合金の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 100サイクル酸化後の表1に示す各種Ni基合金の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 100サイクル酸化後の表1に示す各種Ni基合金の試験片の断面組織を示す図面代用写真である。 各種多目的合金層を形成したNi基合金のクリープ曲線を示す略線図である。 各種多目的合金層を形成したNi基合金の表面と断面組織を観察した結果を示す略線図である。 図39に示した断面組織においてRe系多目的合金層/β−NiAl皮膜の拡大組織と各元素の濃度分布を示す図面代用写真である。 Re系多目的合金層を形成したSUS310基材のクリープ挙動を示す図面代用写真および略線図である。 Re系多目的合金層を形成したSUS310基材のクリープ曲線を示す略線図である。 Re系多目的合金層を形成したSUS310基材のクリープ曲線を示す略線図である。
以下、発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という。)について説明する。
〈第1の実施の形態〉
[耐熱合金部材]
図1は第1の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図1に示すように、この耐熱合金部材においては、耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域のみにRe系多目的合金層201、ボンド層300およびトップ層400が順次積層されており、その他の領域は耐熱合金基材100の表面が露出している。Re系多目的合金層201はReを含有する合金層からなり、典型的には上部がNi−Cr合金層201aからなる。Reを含有する合金層については特許文献4などに記載されているものが用いられる。ボンド層300はMCrAlY(M=Ni,Co)、β−NiAl、γ’−Ni3 Al、γ−Ni(Al,Cr)などのAl含有合金からなる。トップ層400はYSZなどの遮熱性セラミックスからなる。この耐熱合金部材においては、使用開始前または使用開始後の状態で、ボンド層300とトップ層400との間にTGO−Al2 3 層が形成される。このTGO−Al2 3 層の厚さは例えば数μm程度である。
耐熱合金基材100は必要に応じて選ばれ、例えば、既に挙げたものの中から選ばれるが、具体的には、例えば、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金、取り分けこれらの中でもCr含有量が20原子%以上のものなどからなるもの、さらには、Cr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなるもの、Ni基単結晶超合金からなるものなどである。
ボンド層300の厚さは、例えば50μm以上150μm以下である。トップ層400の厚さは、例えば、200μm以上500μm以下である。
[耐熱合金部材の製造方法]
この耐熱合金部材の製造方法について説明する。
耐熱合金基材100がNi基合金、Fe基合金、Co基合金などからなる場合を考える。まず、耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域以外の部分を絶縁テープで被覆したり、絶縁塗膜を形成したりすることによりマスキングした後、その特定の領域のみにめっきによりRe含有層を形成する。具体的には、例えば、Niめっき→Re−(30〜40)原子%Niめっき→Niめっき→Crめっきの順またはNiめっき→Re−(30〜40)原子%Niめっき→Ni(Co)めっき→Crめっきの順に行う。次に、真空中または不活性ガス雰囲気、好適にはAr+3vol%H2 雰囲気中において例えば900℃以上1100℃以下の温度で1〜10時間、熱処理を行う。これによって、耐熱合金基材100とRe含有層との反応によりRe系多目的合金層201が形成される。このとき、Re系多目的合金層201の上部にはNi−Cr層201aが形成される。次に、溶射、電子ビーム蒸着などによりRe系多目的合金層201の上にボンド層300およびトップ層400を順次形成する。ボンド層300とトップ層400との間のTGO−Al2 3 層は、一般的には耐熱合金部材を高温酸化性雰囲気で使用する際に形成されるが、予め形成しておく場合は、例えば、ボンド層30を形成した後、低酸素分圧雰囲気で酸化処理する。
以上により、目的とする耐熱合金部材が製造される。
以上のように、この第1の実施の形態によれば、耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域にのみRe系多目的合金層201を介してボンド層300およびトップ層40が設けられていることにより、この耐熱合金部材を高温酸化性雰囲気において加熱・冷却が繰り返される環境下で使用した場合、Re系多目的合金層201によりボンド層300のAlの耐熱合金基材100への拡散および耐熱合金基材100の元素のボンド層300への拡散を防止することができ、ボンド層300のAl濃度を十分に高く、例えば13原子%以上に維持することができ、ボンド層300とトップ層400との間に長期間に亘ってTGO−Al2 3 層を維持することができ、それによって優れた耐高温腐食性を得ることができるだけでなく、TGO−Al2 3 層以外の非保護的酸化物の形成を抑えることができることによりトップ層400の剥離を効果的に防止することができ、それによって優れた耐剥離性を得ることができ、さらには耐熱合金基材100の機械的強度の向上を図ることができる。この耐熱合金部材は、例えば、近年、高出力化を狙って動作温度が上昇する傾向にあるガスタービン、ジェットエンジン、排ガス系部材、等の高温用部材としての要求特性を十分に満足するものである。
〈第2の実施の形態〉
[耐熱合金部材]
図2は第2の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図2に示すように、この耐熱合金部材においては、耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域のみにRe系多目的合金層201、ボンド層300およびトップ層400が順次積層されている。Re系多目的合金層201は第1の実施の形態と同様である。耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域以外の部分はAl含有合金皮膜150で被覆されている。Al含有合金皮膜150は典型的にはβ−NiAlまたはFe−Alからなる。耐熱合金基材100、ボンド層300およびトップ層400は第1の実施の形態と同様である。
[耐熱合金部材の製造方法]
この耐熱合金部材の製造方法について説明する。
耐熱合金基材100がNi基合金、Fe基合金、Co基合金などからなる場合を考える。まず、第1の実施の形態と同様にして耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域にRe系多目的合金層201を形成する。次に、Al拡散処理を行うことによりRe系多目的合金層201以外の部分の耐熱合金基材100の表面にAl含有合金皮膜150を形成する。Al拡散処理は、耐熱合金基材100を、例えば(Al+NH4 Cl+Al2 3 )に埋設させ、Ar雰囲気中において700〜800℃の温度で30分〜1.5時間加熱することにより行う。あるいは、耐熱合金基材100を、(FeAl+NH4 Cl+Al2 3 )または(Al+Ni+NH4 Cl+Al2 3 )に埋設させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中において900〜1100℃の温度で1〜10時間加熱することにより行う。次に、溶射、電子ビーム蒸着等によりRe系多目的合金層201上にボンド層300およびトップ層400を順次形成する。ボンド層300とトップ層400との間のTGO−Al2 3 層は、一般的には耐熱合金部材を高温酸化性雰囲気で使用する際に形成されるが、予め形成しておく場合は、例えば、ボンド層300を形成した後、低酸素分圧雰囲気で酸化処理する。
以上により、目的とする耐熱合金部材が製造される。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、Re系多目的合金層201以外の部分の耐熱合金基材100の表面がAl含有合金皮膜150で被覆されていることにより高温酸化時に保護的Al2 3 皮膜が形成されて保護されるため優れた高温耐酸化性を確保することができるという利点を得ることができる。
〈第3の実施の形態〉
[耐熱合金部材]
図3は第3の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図3に示すように、この耐熱合金部材においては、耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域のみにW系多目的合金層202、ボンド層300およびトップ層400が順次積層されている。W系多目的合金層202はWを含有する合金層からなり、典型的には上部がNi(Cr,Si)層202aからなる。耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域以外の部分はAl含有合金皮膜150で被覆されている。Al含有合金皮膜150は典型的にはβ−AlNiまたはFe−Alからなる。耐熱合金基材100、ボンド層300およびトップ層400は第1の実施の形態と同様である。
[耐熱合金部材の製造方法]
この耐熱合金部材の製造方法について説明する。
耐熱合金基材100がNi基合金、Fe基合金、Co基合金などからなる場合を考える。まず、耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域にスラリー塗布によりW含有層を形成する。具体的には、例えば、(25〜50重量%)W粉末と(15〜25重量%)Cr粉末と(15〜30重量%)Mo粉末と残部Ni基自溶合金(公称組成(重量%);Ni−15Cr−3Si−2B−5Fe)とをスラリー液に溶解したスラリーを用いる。次に、真空中または不活性ガス雰囲気(例えば、Ar+3vol%H2 )中において例えば1100℃以上1200℃以下の温度で1〜10時間熱処理を行う。これによって、耐熱合金基材100とW含有層との反応によりW系多目的合金層202が形成される。このとき、W系多目的合金層202の上部にはNi(Cr,Si)層202aが形成される。次に、Al拡散処理を行うことによりW系多目的合金層202以外の部分の耐熱合金基材100の表面にAl含有合金皮膜150を形成する。Al拡散処理は、耐熱合金基材10を例えば(Al+NH4 Cl+Al2 3 )に埋没させ、Ar雰囲気中において700〜800℃の温度で1〜1.5時間加熱することにより行う。あるいは、(FeAl+NH4 Cl+Al2 3 )または(Al+Ni+NH4 Cl+Al2 3 )に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中において900〜1100℃の温度で1〜10時間加熱することにより行う。次に、溶射、電子ビーム蒸着等によりW系多目的合金層202上にボンド層300およびトップ層400を順次形成する。ボンド層300とトップ層400との間のTGO−Al2 3 層は、一般的には耐熱合金部材を高温酸化性雰囲気で使用する際に形成されるが、予め形成しておく場合は、例えば、ボンド層300を形成した後、低酸素分圧雰囲気で酸化処理する。
以上により、目的とする耐熱合金部材が製造される。
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、W系多目的合金層202以外の部分の耐熱合金基材100の表面がAl含有合金皮膜150で被覆されていることにより高温酸化時に保護的Al2 3 皮膜が形成されて保護されるため優れた高温耐酸化性を確保することができるという利点を得ることができる。
〈第4の実施の形態〉
[耐熱合金部材]
図4は第4の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図4に示すように、この耐熱合金部材においては、耐熱合金基材105の表面の遮熱を行うべき特定の領域のみに、Re系多目的合金層201、ボンド層300およびトップ層400が順次積層されている。耐熱合金基材100は、Cr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなる。耐熱合金基材100の表面の遮熱を行うべき特定の領域以外の部分はCr系多目的合金層203およびその上のAl含有合金皮膜150で覆われている。Cr系多目的合金層203はα−Crを含有する合金層からなり、典型的には耐熱合金基材100の構成元素、例えばMo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を含有する。Al含有合金皮膜150は典型的にはβ−AlNiからなる。ボンド層300およびトップ層400は第1の実施の形態と同様である。
[耐熱合金部材の製造方法]
この耐熱合金部材の製造方法について説明する。
図4に示すように、まず、耐熱合金基材105の表面の遮熱を行うべき特定の領域に第1の実施の形態と同様にしてRe系多目的合金層201を形成する。次に、Al拡散処理を行うことによりRe系多目的合金層201以外の部分の耐熱合金基材105の表面にAl含有合金皮膜150を形成する。このとき、耐熱合金基材105とAl含有合金皮膜150との間にCr系多目的合金層203が形成される。次に、溶射、電子ビーム蒸着等によりRe系多目的合金層201上にボンド層300およびトップ層400を順次形成する。ボンド層300とトップ層400との間のTGO−Al2 3 層は、一般的には耐熱合金部材を高温酸化性雰囲気で使用する際に形成されるが、予め形成しておく場合は、例えば、ボンド層300を形成した後、低酸素分圧雰囲気で酸化処理する。
以上により、目的とする耐熱合金部材が製造される。
この第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈第5の実施の形態〉
[耐熱合金部材]
図5は第5の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図5に示すように、この耐熱合金部材においては、耐熱合金基材105の表面の遮熱を行うべき特定の領域のみに、W系多目的合金層202、ボンド層300およびトップ層400が順次積層されている。耐熱合金基材105は、Cr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなる。耐熱合金基材105の表面の遮熱を行うべき特定の領域以外の部分はCr系多目的合金層203およびその上のAl含有合金皮膜150で覆われている。Cr系多目的合金層203は第4の実施の形態と同様である。Al含有合金皮膜150は典型的にはβ−NiAlからなる。ボンド層300およびトップ層400は第1の実施の形態と同様である。
[耐熱合金部材の製造方法]
この耐熱合金部材の製造方法について説明する。
まず、耐熱合金基材105の表面の遮熱を行うべき特定の領域に第2の実施の形態と同様にしてW系多目的合金層202を形成する。次に、第3の実施の形態と同様に、Al拡散処理を行うことによりW系多目的合金層202以外の部分の耐熱合金基材105の表面にCr系多目的合金層203およびAl含有合金皮膜150を形成する。次に、溶射、電子ビーム蒸着などによりW系拡散バリア層202上にボンド層300およびトップ層400を順次形成する。ボンド層300とトップ層400との間のTGO−Al2 3 層は、一般的には耐熱合金部材を高温酸化性雰囲気で使用する際に形成されるが、予め形成しておく場合は、例えば、ボンド層300を形成した後、低酸素分圧雰囲気で酸化処理する。
以上により、目的とする耐熱合金部材が製造される。
この第5の実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈第6の実施の形態〉
[耐熱合金部材]
図6は第6の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図6に示すように、この耐熱合金部材においては、耐熱合金基材105の表面の全体にCr系多目的合金層203およびその上のAl含有合金皮膜150が設けられている。耐熱合金基材105は、Cr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなる。Al含有合金皮膜150は典型的にはβ−NiAlからなる。Cr系多目的合金層203は第4の実施の形態と同様である。耐熱合金基材105の遮熱を行うべき特定の領域のみのAl含有合金皮膜150上にボンド層300およびトップ層400が順次積層されている。この遮熱を行うべき特定の領域の部分のAl含有合金皮膜150はボンド層300の一部を構成する。トップ層400は第1の実施の形態と同様である。
[耐熱合金部材の製造方法]
この耐熱合金部材の製造方法について説明する。
まず、第4の実施の形態と同様に、Al拡散処理を行うことにより耐熱合金基材105の表面全体にCr系多目的合金層203およびAl含有合金皮膜150を形成する。次に、溶射、電子ビーム蒸着などによりAl含有合金皮膜150上にボンド層300およびトップ層400を順次形成する。ボンド層300とトップ層400との間のTGO−Al2 3 層は、一般的には耐熱合金部材を高温酸化性雰囲気で使用する際に形成されるが、予め形成しておく場合は、例えば、ボンド層300を形成した後、低酸素分圧雰囲気で酸化処理する。
以上により、目的とする耐熱合金部材が製造される。
この第6の実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈第7の実施の形態〉
図7は第7の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図7に示すように、この耐熱合金部材においては、耐熱合金基材105の表面の全体にCr系多目的合金層203およびその上のAl含有合金皮膜150が設けられている。耐熱合金基材105は、Cr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなる。Al含有合金皮膜150は典型的にはβ−NiAlからなる。Cr系多目的合金層203は第6の実施の形態と同様である。耐熱合金基材105の遮熱を行うべき特定の領域のみのAl含有合金皮膜150上にトップ層400が積層されている。この遮熱を行うべき特定の領域の部分のAl含有合金皮膜150はボンド層300を兼用する。トップ層400は第1の実施の形態と同様である。
[耐熱合金部材の製造方法]
この耐熱合金部材の製造方法について説明する。
まず、第6の実施の形態と同様に、Al拡散処理を行うことにより耐熱合金基材105の表面全体にCr系多目的合金層203およびAl含有合金皮膜150を形成する。次に、溶射、電子ビーム蒸着などによりAl含有合金皮膜150上にトップ層400を形成する。ボンド層300を兼用するAl含有合金皮膜150とトップ層400との間のTGO−Al2 3 層は、一般的には耐熱合金部材を高温酸化性雰囲気で使用する際に形成されるが、予め形成しておく場合は、例えば、Al含有合金皮膜150を形成した後、低酸素分圧雰囲気で酸化処理する。
以上により、目的とする耐熱合金部材が製造される。
この第7の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
実施例について説明する。
耐熱合金基材100として下記の(1)〜(3)を用いた。
(1)表1(株式会社オーサカステンレスのカタログより抜粋)に示すNi基耐熱合金からなる基材
Figure 2021123771
表1中、Alloy 201 はNi(工業用)に相当する。その他の合金はNi基合金と言える。
(2)SUS310基材(組成(重量%)はCr:25,Ni:20,Fe:残部)
(3)Ni基単結晶超合金(組成(重量%)はAl:4.9〜5.3,Co:0.8〜1.2,Cr:6.9〜7.3,Mo:0.7〜1.0,W:7.0〜9.0,Re:1.2〜1.6,Ta:8.5〜9.5,Nb:0.6〜1.0,Ni:残部)
遮熱コーティング皮膜のボンド層300としてはCoNiCrAlY(公称組成(wt%); Ni−25Cr−10Al−0.5Y)からなるものを用いた。CoNiCrAlY層はHVOF(High Velocity Oxy-Fuel)の溶射プロセス(高速フレーム溶射法)で製膜した。CoNiCrAlY層の厚さは100μmとした。トップ層400としてはYSZ(公称組成(mol%); 8Y2 3 −92ZrO2 )からなるものを用いた。YSZ層は大気プラズマ(APS)溶射プロセスで製膜した。YSZ層の厚さは300μmとした。
耐熱合金基材100として(1)、耐熱合金基材100として(2)を用いた場合のサイクル酸化試験用の試験片およびクリープ試験用の試験片の形状およびサイズをそれぞれ図8および図9に示す。図8に示すように、試験片は直径20mm、高さ10mmの円柱状の基材の上端面に多目的合金層、ボンド層およびトップ層(多目的合金層をMPL、ボンド層およびトップ層をTBCと表示している)を形成したものであり、基材の円周面はそのままの場合とAl含有合金皮膜が形成されている場合とがある。耐熱合金基材100として(3)を用いた場合のサイクル酸化試験用の試験片を図10に示す。図10に示すように、試験片は直径25.4mm、高さ3mmの円柱状の基材の上端面に多目的合金層、ボンド層およびトップ層を形成したものであり、基材の円周面はそのままである。これらの試験片では、便宜上、基材の上端面を遮熱を行うべき特定の領域としている。
(実施例1)
実施例1は第6の実施の形態に対応するものである。
耐熱合金基材105として表1に示すNi基合金基材を用いた。このNi基合金基材の表面(上面、下面、円周面)の全体にAl拡散処理を施した。すなわち、Ni基合金基材をAl:Ni:NH4 Cl:Al2 3 =3:2.5:2:60(重量比)の混合粉末に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1000℃で4時間加熱することによりAl拡散処理を施した。次に、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1000℃で4時間加熱することにより熱処理を行った。その結果、図11に示すように、耐熱合金基材105の表面にCr系多目的合金層203およびAl含有合金皮膜150(β−NiAl膜)が形成された。
次に、図11に示すように、試験片の上端面にHVOF溶射によりボンド層300としてCoNiCrAlY層を形成した後、その上にAPS溶射でトップ層400としてYSZ層を形成し、このYSZ層の形成時にCoNiCrAlY層とYSZ層との間にTGO−Al2 3 層を形成した。こうして、試験片を作製した。
試験片の基材105/Cr系多目的合金層203/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散分光装置)で行った。図12に断面SEM写真を示す。
(実施例2)
実施例2は第7の実施の形態に対応するものである。
まず、実施例1と同様にして、図13に示すように、耐熱合金基材105の表面全体にCr系多目的合金層203およびAl含有合金皮膜150(β−NiAl膜)を形成した。
次に、試験片の上端面にAPS溶射でトップ層400としてYSZ層を形成し、このYSZ層の形成時にβ−NiAl膜とYSZ層との間にTGO−Al2 3 層を形成し、試験片を作製した。
試験片の基材105/Cr系多目的合金層203/Al含有合金皮膜150(β−NiAl膜)/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。図14に断面SEM写真を示す。
(実施例3)
実施例3は第1の実施の形態に対応するものである。
耐熱合金基材100としてSUS310基材を用いた。まず、試験片の表面を平滑研磨し、脱脂を行った。次に、試験片の下端面および円周面を絶縁テープで被覆し、マスキングを行った。次に、(Niストライクめっき 1μm)→(Niワットめっき 1μm)→(Re−Ni合金めっき 8μm)→(Niワットめっき 15μm)→(Crめっき 7μm)を順に行い、合計の厚さ32μmのめっき層を形成した。次に、真空中において1000℃で5時間熱処理を行った。その結果、図15に示すように、試験片の上端面にRe系多目的合金層201が形成された。Re系多目的合金層201の上部にはNi−Cr層201aが形成された。
次に、実施例1と同様にして、Re系多目的合金層201上にボンド層300としてCoNiCrAlY層を形成した後、その上にAPS溶射でトップ層400としてYSZ層を形成し、このYSZ層の形成時にCoNiCrAlY層とYSZ層との間にTGO−Al2 3 層を形成し、試験片を作製した。
試験片の基材100/Re系多目的合金層201/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。図16に断面SEM写真を示す。
(実施例4)
実施例4は第2の実施の形態に対応するものである。
実施例3と同様の処理を経て試験片の上端面にRe系多目的合金層201を形成した後、Al拡散処理を施すことにより試験片の下端面および円周面にAl含有合金皮膜150を形成した。Re系多目的合金層の上部にはNi−Cr層が形成された。
次に、実施例1と同様にして、Re系多目的合金層201上にボンド層300としてCoNiCrAlY層を形成した後、その上にAPS溶射でトップ層400としてYSZ層を形成し、このYSZ層の形成時にCoNiCrAlY層とYSZ層との間にTGO−Al2 3 層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図17に示す。
試験片の基材100/Re系多目的合金層201/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行ったところ、実施例3と同様であった。
(実施例5)
実施例5は第2の実施の形態においてRe系多目的合金層201とボンド層300との間にCr系多目的合金層203が設けられたものに対応する。
実施例3と同様の処理を経て試験片の上端面にRe系多目的合金層201を形成した後、実施例1と同様にしてCr系多目的合金層203を形成した。次に、実施例4と同様にAl拡散処理を施すことにより試験片の下端面および円周面にAl含有合金皮膜150を形成した。
次に、実施例1と同様にして、Cr系多目的合金層203上にボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図18に示す。
試験片の基材100/Re系多目的合金層201/Cr系多目的合金層203/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行ったところ、実施例3と同様であった。
(実施例6)
実施例6は第4の実施の形態に対応するものである。
耐熱合金基材105として表1に示すNi基合金基材を用いた。まず、試験片の表面を平滑研磨し、脱脂を行った。次に、試験片の上端面を絶縁テープで被覆し、マスキングを行った。次に、実施例1と同様にして試験片の下端面および円周面にCr系多目的合金層203およびAl含有合金皮膜150を形成した。次に、試験片の下端面および円周面を絶縁テープで被覆し、マスキングを行った。次に、実施例4と同様にして試験片の上端面にRe系多目的合金層201を形成した。次に、Re系多目的合金層201の円周面にAl含有合金皮膜150を形成した。
次に、実施例1と同様にして、Re系多目的合金層201上にボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図19に示す。
(実施例7)
実施例7は第4の実施の形態においてRe系多目的合金層201とボンド層300との間にCr系多目的合金層203が設けられたものに対応する。
耐熱合金基材105として表1に示すNi基合金基材を用いた。まず、試験片の表面を平滑研磨し、脱脂を行った。次に、実施例3と同様の処理を経て試験片の上端面にRe系多目的合金層201を形成した後、実施例1と同様なAl拡散処理を施すことにより試験片の上端面、下端面および円周面にCr系多目的合金層203およびAl含有合金皮膜150を形成した。
次に、実施例1と同様にして、試験片の上端面のCr系多目的合金層203上にボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図20に示す。
(実施例8)
実施例8は第1の実施の形態においてRe系多目的合金層201の代わりにW系多目的合金層202を用いたものに対応する。
耐熱合金基材100としてSUS310基材を用いた。Ni基自溶合金(公称組成(wt%); Ni−15Cr−3Si−2B−5Fe)に25重量%W粉末、25重量%Cr粉末および25重量%Mo粉末を添加したスラリーを作製し、耐熱合金基材100の表面に塗布した後、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1150℃で6時間熱処理を施した。その結果、耐熱合金基材100の表面にW系多目的合金層202が形成された。
次に、実施例1と同様にして、試験片の上端面のW系多目的合金層202上にボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図21に示す。
試験片の基材100/W系多目的合金層202/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。図22に断面SEM写真を示す。
(実施例9)
実施例9は第3の実施の形態に対応するものである。
耐熱合金基材100としてSUS310基材を用いた。実施例8と同様にして耐熱合金基材100の表面にW系多目的合金層202を形成した後、試験片の下端面および円周面にAl含有合金皮膜150を形成した。
次に、実施例1と同様にして、試験片の上端面のW系多目的合金層202上にボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図23に示す。
試験片の基材100/Re系多目的合金層201/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行ったところ、実施例8と同様であった。
(実施例10)
実施例10は第5の実施の形態においてW系多目的合金層202とボンド層300との間にCr系多目的合金層203が設けられたものに対応する。
耐熱合金基材105として表1に示すNi基合金基材を用いた。実施例8と同様にして試験片の上端面にW系多目的合金層202を形成した後、試験片の表面全体に実施例7と同様にしてCr系多目的合金層203を形成し、試験片の下端面および円周面にAl含有合金皮膜150を形成した。
次に、実施例1と同様にして、Cr系多目的合金層203上にボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図24に示す。
試験片の基材105/W系多目的合金層202/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行ったところ、実施例8と同様であった。
(実施例11)
実施例11は第1の実施の形態に対応するものである。
耐熱合金基材109としてNi基単結晶超合金基材を用いた。実施例4と同様にして試験片の上端面にRe系多目的合金層201を形成した。
次に、実施例1と同様にして、Re系多目的合金層201上にボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図25に示す。
(比較例1)
耐熱合金基材100としてSUS310基材を用いた。耐熱合金基材100上に直接、ボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図26に示す。
試験片の基材100/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。図27に断面SEM写真を示す。
(比較例2)
耐熱合金基材109としてNi基単結晶超合金基材を用いた。耐熱合金基材109上に直接、ボンド層300としてCoNiCrAlY層、トップ層400としてYSZ層を形成し、試験片を作製した。こうして作製された試験片を図28に示す。
試験片の基材109/ボンド層300/トップ層400施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。図29に断面SEM写真を示す。
[高温酸化試験]
高温酸化試験は、加熱・冷却繰り返しの条件下で、大気中で行った。具体的には、水平移動式試料台(アルミナ棒) に試験片を載せ、1100℃に制御した電気炉内に挿入し、45分経過後、大気中で15分間冷却した後、再び電気炉に挿入する、いわゆるサイクル酸化試験である。
実施例1〜5、8〜10および比較例1の試験片の酸化量のサイクル数依存性とトップ層のYSZの剥離が起こるサイクル数(剥離サイクル数)とをまとめて図30に示す。
所定のサイクル数経過後、試験片の重量変化を室温で測定したが、MPL/TBC施工面とその他の面では酸化挙動は異なる。本件では、酸化量は試験片全体の面積で除した値として測定し、その結果、得られた酸化量はその他の面(TBC未施工面) の結果を強く反映したものとなっている。
図30には、比較のため、合金基材Alloy-X の酸化量のサイクル数依存性を示す。酸化量は200サイクル前後から減少に転じ、その後サイクル数に比例して減少する。
比較例1では、酸化量は200サイクル前後から減少に転じ、合金基材Alloy-X の酸化量のサイクル数依存性と類似している。遮熱層YSZは600〜700サイクル数で剥離した。
実施例3、8では、酸化量は比較例1と類似のサイクル数依存性に従って減少し、遮熱層YSZは1600〜1800サイクルで剥離した。
これらの結果から、従来の基材/TBC(比較例1)に比較して、Re系多目的合金層を用いる実施例3〜7およびW系多目的合金層を用いる実施例8〜10では、YSZの耐剥離性は2倍以上に増大していることがわかる。
実施例3、8では、MPL/TBCが未施工の部分ではAlloy-X の酸化が進行し、サイクル数に比例して、酸化量の減少が観察される。これは、本実験の酸化条件(1100℃;45分⇔室温;15分、大気中) 下では、合金Alloy-X に形成したCr2 3 の酸化蒸発(CrO3 (g))と酸化物皮膜の剥離が重畳することによる。
実施例1、2、4、5、9、10では、基材Alloy-X にAl含有合金皮膜150を形成した後、その特定の領域にMPL/DBCを形成した。サイクル酸化では、TBCを施工していない基材表面には保護皮膜としてAl2 3 が形成されていることから、サイクル数による酸化量の低下は僅少である。そして、遮熱層YSZの剥離は1600〜1800サイクルであり、実施例3、8で観察された剥離数とほほ同じである。
以上の結果から、本発明で提案した基材/MPL/TBCでは、Re系多目的合金層201、W系多目的合金層202およびCr系多目的合金層203のいずれにおいても、トップ層400の耐剥離性は改善され、耐熱合金基材100または耐熱合金基材105の表面に形成したAl含有合金皮膜150による保護的酸化物皮膜の形成により、耐高温酸化性もまた同時に向上させることができる、ことが明らかになった。
[YSZ層の亀裂・剥離のその場観察]
電気炉から取り出して冷却する際の試験片の表面を写真撮影によって、観察した。その結果、YSZ層の破壊は、試験片の周辺角部から層間剥離として開始し、中心部に向かって進展している様子が観察される(層間剥離した個所は、より早期に暗黒化することで判別できる。
比較例1の結果を図31に示す。図31に示すように、写真で暗く見える部分は、冷却の過程でYSZ層が層間剥離し、ボンド層300との間に溝が形成されたためであり、200サイクル数を超えると、剥離は試験片の周辺から発生し、サイクル数とともに中心に向かって進展している様子が見られる。比較例1では、593サイクル後の冷却の過程でYSZ層は全面剥離した。
実施例1の結果を図32に示す。図32に示すように、基材/Cr系MPL(Al拡散)/TBCでは、サイクル数が1000サイクルを超えると、YSZ層の部分剥離は周辺より始まり、サイクル数とともに中心に向かって進展している。1850サイクル終了後、室温に保持中にYSZ層は全面剥離した。
同様の結果は実施例2〜5、8〜10においても観察された。
すなわち、耐熱合金基材100または耐熱合金基材105とTBCとの間にRe系多目的合金層201、W系多目的合金層202またはCr系多目的合金層203を挿入することによって、YSZ層の剥離が抑制されていることがわかる。
基材/TBC(比較例1)と基材/MPL/TBC(実施例3、4、8、9)を所定のサイクル終了後に切断し、断面の組織観察と各元素の濃度分布を測定した。図33はボンド層300のAl濃度(原子%)のサイクル数依存性を示す。図33より、比較例1の基材/TBCでは、ボンド層300のAl濃度は初期の約18原子%から200サイクル後には数原子%に低下し、その後徐々に1原子%以下に減少して、約600サイクルでYSZ層は剥離した。一方、基材/MPL/TBCでは、Al濃度は徐々に低下し、1600〜1800サイクル前後で1原子%以下に低下し、YSZ層は剥離した。
ボンド層300のAl濃度が数原子%(図33の破線) 以下になると、熱酸化物TGOはAl2 3 のほかにCr2 3 、NiAl2 4 の酸化物が観察されるようになり、これら酸化物は周辺から形成し、ボンド層300の中心側に進展して、TGO全体に形成されたとき、YSZ層は全面に亘って剥離する。
基材/MPL/TBCでは、MPL層によってボンド層300のAl濃度が高く、Al2 3 主体のTGOが形成・維持され、1000サイクル前後から、Cr2 3 、NiAl2 4 等が周辺に形成されるようになり、YSZ層の剥離は周辺から始まり、中心側へと伝播し、1850サイクルで全面剥離した。
表1に記載のNi基合金について、Alloy-X と同様に、Al拡散処理によるCr系多目的合金層203の形成について検討した。続いて、4サイクルと100サイクルの酸化試験を行い、試験片の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とを行った。得られた結果を以下に示す。
各試験片のAl拡散処理後の断面組織をまとめて、図34に示す。図34より、Al拡散処理後では、いずれの合金においても、Cr系多目的合金層203に相当する層の形成は認められない。
上記のAl拡散処理したNi基合金を4サイクル酸化した後の断面の組織をまとめて図35に示す。組織写真は合金に含まれる元素(Cr+Mo+Nb+W)の総和(原子%)順に示している。
上記のAl拡散処理したNi基合金を100サイクル酸化した後の断面の組織をまとめて図36に示す。組織写真は合金に含まれる元素(Cr+Mo+Nb+W)の総和(原子%)順に示している。
上記のNi基耐熱合金で、Al拡散処理後、続いて、大気中で4サイクルと100サイクル酸化後の各元素の濃度分析を行った。Cr系多目的合金層203の内層を構成する元素と濃度をまとめて表2に示す。
Figure 2021123771
以上の組織観察の結果と各元素の濃度分布の分析結果から、Cr系多目的合金層203の形成について、合金中の各元素の濃度と以下のような関係が求められる。
以下に、Cr+Mo+Nb+Wの元素の濃度の総和とCr系多目的合金層との関係について、表3に示す。以下のように要約される。
Figure 2021123771
(1)Al拡散処理後では、Cr系多目的合金層の形成は、明瞭には観察されない。
(2)4サイクル酸化後では、Cr系多目的合金層は以下の合金で明瞭に観察される。
Alloy-22, Alloy-625, Alloy-C276,
Alloy-X, Alloy-718, Alloy-825, Alloy-20
Cr+Mo+Nb+Wの濃度の総和は23.4原子%以上。
(Alloy B2 はMoが多く、Cr含有量が少ない)
(3)4サイクル酸化後では、Cr系多目的合金層の形成は以下の合金では確認できない。
Alloy-601, Alloy-800HT
Cr+Mo+Nb+Wの濃度の総和は24.5原子%以下。
(4)100サイクル酸化後では、Cr系多目的合金層の連続層を形成している合金は下記の通りである。
Alloy-22, Alloy-625, Alloy-C276
これらはCr+Mo+Nb+Wの濃度の総和が30.5原子%以上である。
Cr系多目的合金層が不連続に形成されている合金は下記の通りである。
Alloy-X, Alloy-718, Alloy825, Alloy-20
これらはCr+Mo+Nb+Wの濃度の総和が23.4原子%以上30.1原子%以下である。
Cr系多目的合金層が形成されていない合金は下記の通りである。
Alloy601, Alloy800HT
これらはCr+Mo+Nb+Wの濃度の総和が24.5原子%以下である。
以上の結果から、Cr系多目的合金層の形成には、合金基材中のCr,Mo,Nb,Wが効果的である。しかし、Alloy-B2の結果にみられるように、多量のMoはCr系多目的合金層を脆性にすることから、また、耐酸化性の視点から、CrとMoとの複合添加が有効である。
耐熱合金基材105に含まれるFe(+Nb)の効果(100サイクル後) を図37に示す。図37より、Fe(+Nb)の濃度が高いほど、Cr系多目的合金層203の形成は認められない。従って、Cr系多目的合金層203の形成と維持に対しては、Fe(+Nb)の濃度は29.9原子%以下が望ましい。
Ni基合金からなる耐熱合金基材105上に形成したRe系多目的合金層201の元素と濃度(原子%)を表4および表5に示す。
Figure 2021123771
Figure 2021123771
表4、5に示す結果は、以下のように要約される。
Re系多目的合金層201は、Al拡散処理後、4サイクル、25サイクル酸化、100サイクル酸化後において、全ての合金で観察される。Re系多目的合金層201はに含まれるReとCrとNbとMoの濃度の総和は、51.8原子%〜73.5原子%である。しかし、100サイクル後では、Alloy B2とAlloy201ではRe系多目的合金層201が消失している。これは、Alloy201は工業純度のNiであり、Alloy B2のCr濃度は0.2原子%と極めて低いことによる。
[クリープ強度]
三種類の多目的合金層(Re系、W系,Cr系) を形成したNi基合金(Alloy-X )のクリープ挙動を970℃; 大気中、応力20〜50MPaで調査した。その結果のラーソン・ミラー・パラメータ(Larson Miller Parameter)プロットを図38に示す。ラーソン・ミラー・パラメータはP=T(C+ logtr )で定義される。ただし、Tは絶対温度、tr は破断時間(h)、Cは材料定数である。
図38より、Cr系多目的合金層203を形成したAlloy-X の破断時間は基材合金と同等であり、Re系多目的合金層201とW系多目的合金層202を施工したAlloy-X の破断時間は長時間側に位置している。すなわち、三種類の多目的合金層(Re系、W系,Cr系) を形成したAlloy-X では、強度低下は見られず、逆に、Re系多目的合金層201とW系多目的合金層202では高強度化に寄与していることが明らかとなった。
Re系多目的合金層201を形成したNi基耐熱合金(Alloy-X )のクリープ曲線(970℃; 大気中、応力22.5MPa、27.5MPa、40MPa)を図39に示す。図39より、応力27.5MPaで比較すると、Alloy-X の破断時間が220時間であるのに対して、基材/Re系多目的合金層201では380時間となっている。定常クリープ速度は、基材(Alloy-X )に比較して、基材/Re系多目的合金層201では低下していることが明らかとなった。
図39に示したクリープ試験において、応力22.5MPaでのクリープ試験を歪3.5%、190時間で中断し、試験片の表面と断面組織を観察した結果を図40に示す。図40より、試験片の表面にはθAl2 3 が形成され、縦クラック(応力軸に垂直)と部分的剥離が観察される。試験片の断面観察から、Re系多目的合金層201/β−NiAl皮膜が連続的に残存し、亀裂や剥離などは観察されない。すなわち、基材と一緒にRe系多目的合金層201/β−NiAl皮膜はクリープ変形していることが分かる。
図41は、図40に示した断面組織において、Re系多目的合金層201/β−NiAl皮膜の拡大組織と各元素の濃度分布を示す。図41より、Re系多目的合金層201の組成(原子%)は25原子%Re−35原子%Cr−16原子%Ni−10原子%Fe−10原子%Moである。試験片の表面に形成されたθAl2 3 の一部が剥離しているが、Re系多目的合金層201とβ−NiAl皮膜には、亀裂などの欠陥は見られない。β−NiAl皮膜のAlは基材側への拡散浸透は見られず、クリープ変形にもかかわらず、Re系多目的合金層201はAlの拡散バリアとして機能している。
Re系多目的合金層201を形成したSUS310基材のクリープ挙動を900℃; 大気中、応力22.5MPaで調査した結果を図42に示す。図42には、比較のために、SUS310基材のクリープ挙動を調査した結果も示す。図42より、例えば、クリープ時間200時間での歪(%)を比較すると、SUS310基材は21%であるのに対して、10μmと20μmの厚さのRe系多目的合金層201を形成したSUS310基材では11%と8.5%である。Re系多目的合金層201を形成することによって、SUS310基材の耐クリープ特性は改善されていることが分かる。
図43は図42に示したクリープ試験の破断後の試験片の断面組織を示す。図43より、SUS310基材では多数の微細な粒界割れが見られるのに対して、基材/Re系多目的合金層201では、粒界破壊の頻度は少ない。
合金基材(Alloy-X )にCr(Mo)系多目的合金層203とRe系多目的合金層201を形成し、それらの耐疲労特性を表6に示した条件で調査した。
表6 疲労試験条件
試験波形 三角波
試験規格 ASTM E606/E606M−12
温度 760℃
歪範囲 0.4%
歪速度 0.4%/sec
その結果、疲労破断サイクル数は、合金基材に対する相対値として、基材/Cr系多目的合金層203では1.16〜1.24、基材/Re系多目的合金層201では2.59〜2.75であった。
以上の結果から、耐疲労特性は、基材/Cr系多目的合金層203では基材とほぼ同等であり、基材/Re系多目的合金層201では2倍以上に改善されていることが分かる。
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
100、105、109…耐熱合金基材、150…Al含有合金皮膜、201…Re系多目的合金層、202…W系多目的合金層、203…Cr系多目的合金層、300…ボンド層、400…トップ層

Claims (21)

  1. 耐熱合金基材と、
    上記耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたRe系、W系またはCr系の多目的合金層と、
    上記多目的合金層上の上記遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたAl含有合金からなるボンド層と、
    上記ボンド層上の上記遮熱を行うべき領域のみに設けられた遮熱性セラミックスからなるトップ層と、
    を有する耐熱合金部材。
  2. Re系またはW系の上記多目的合金層、上記ボンド層および上記トップ層は上記耐熱合金基材の表面の上記遮熱を行うべき領域のみに設けられている請求項1記載の耐熱合金部材。
  3. 上記多目的合金層、上記ボンド層および上記トップ層は上記耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域のみに設けられ、上記遮熱を行うべき領域以外の部分の上記耐熱合金基材の表面を覆うようにAl含有合金皮膜が設けられている請求項1記載の耐熱合金部材。
  4. 上記多目的合金層は、Re系の多目的合金層、W系の多目的合金層およびCr系の多目的合金層から選ばれた互いに異なる2層が積層されたものからなる請求項1記載の耐熱合金部材。
  5. 上記耐熱合金基材の表面全体を覆うようにCr系の上記多目的合金層および当該多目的合金層上のAl含有合金皮膜が設けられ、上記ボンド層および上記トップ層は上記Al含有合金皮膜上の上記遮熱を行うべき領域のみに設けられている請求項1記載の耐熱合金部材。
  6. 上記多目的合金層、上記ボンド層および上記トップ層は上記耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域のみに設けられ、上記遮熱を行うべき領域以外の部分の上記耐熱合金基材の表面を覆うように上記多目的合金層および当該多目的合金層上のAl含有合金皮膜が設けられている請求項3記載の耐熱合金部材。
  7. 上記耐熱合金基材の表面全体を覆うようにCr系の上記多目的合金層および当該多目的合金層上の、上記ボンド層を兼用するAl含有合金皮膜が設けられ、上記トップ層は上記Al含有合金皮膜上の上記遮熱を行うべき領域のみに設けられている請求項3記載の耐熱合金部材。
  8. 上記耐熱合金基材はCr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなり、上記多目的合金層はCr系である請求項1記載の耐熱合金部材。
  9. 上記Ni基合金はCrを18.7原子%以上含有し、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で5.7原子%以上19.2原子%以下含有し、FeおよびNbを総和で13.1原子%以下含有する請求項8記載の耐熱合金部材。
  10. 上記耐熱合金基材はNi基単結晶超合金からなり、上記多目的合金層はRe系である請求項1記載の耐熱合金部材。
  11. 上記ボンド層を構成する上記Al含有合金はMCrAlY(M=Co,Ni)、β−NiAl、γ’−Ni3 Alまたはγ−Ni(Al,Cr)からなる請求項1〜10のいずれか一項記載の耐熱合金部材。
  12. 上記トップ層を構成する上記遮熱性セラミックスは、ジルコニウムとイットリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックス、アルミニウムとイットリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックス、アルミニウムとランタンと酸素とを含有する酸化物セラミックス、アルミニウムとサマリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックス、セリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックスおよびトリウムと酸素とを含有する酸化物セラミックスからなる群より選ばれた少なくとも一種からなる請求項1〜11のいずれか一項記載の耐熱合金部材。
  13. 上記Al含有合金皮膜はβ−NiAlからなる請求項3、5、6または7記載の耐熱合金部材。
  14. 耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域にRe系、W系またはCr系の多目的合金層を形成する工程と、
    上記多目的合金層上の上記遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域にAl含有合金からなるボンド層を形成する工程と、
    上記ボンド層上の上記遮熱を行うべき領域のみに遮熱性セラミックスからなるトップ層を形成する工程と、
    を有する耐熱合金部材の製造方法。
  15. 上記耐熱合金基材の表面の上記遮熱を行うべき領域のみに上記多目的合金層を形成した後、上記多目的合金層上に上記ボンド層および上記トップ層を順次形成する請求項14記載の耐熱合金部材の製造方法。
  16. 上記耐熱合金基材の表面の上記遮熱を行うべき領域のみに上記多目的合金層を形成し、Al拡散処理を施すことにより上記遮熱を行うべき領域以外の部分の上記耐熱合金基材の表面を覆うようにAl含有合金皮膜を形成した後、上記多目的合金層上に上記ボンド層および上記トップ層を順次形成する請求項14記載の耐熱合金部材の製造方法。
  17. 上記耐熱合金基材はCr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなり、上記ボンド層および上記トップ層を順次形成した後、高温で酸化を行うことにより上記耐熱合金基材と上記Al含有合金皮膜との反応により上記耐熱合金基材と上記Al含有合金皮膜との間にCr系の上記多目的合金層を形成する請求項16記載の耐熱合金部材の製造方法。
  18. 上記耐熱合金基材はCr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなり、Al拡散処理を施すことにより上記耐熱合金基材の表面全体にAl含有合金皮膜を形成し、上記遮熱を行うべき領域のみに上記ボンド層および上記トップ層を順次形成した後、高温で酸化を行うことにより上記耐熱合金基材と上記Al含有合金皮膜との反応により上記耐熱合金基材と上記Al含有合金皮膜との間にCr系の上記多目的合金層を形成する請求項16記載の耐熱合金部材の製造方法。
  19. 上記耐熱合金基材はCr、Mo、NbおよびWからなる群より選ばれた一種または二種以上の金属を総和で24.5原子%以上含有するNi基合金からなり、Al拡散処理を施すことにより上記耐熱合金基材の表面全体に上記ボンド層を兼用するAl含有合金皮膜を形成し、上記Al含有合金皮膜上の上記遮熱を行うべき領域のみに上記トップ層を形成した後、高温で酸化を行うことにより上記耐熱合金基材と上記Al含有合金皮膜との反応により上記耐熱合金基材と上記Al含有合金皮膜との間にCr系の上記多目的合金層を形成する請求項16記載の耐熱合金部材の製造方法。
  20. 耐熱合金基材と、
    上記耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたRe系、W系またはCr系の多目的合金層と、
    上記多目的合金層上の上記遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域に設けられたAl含有合金からなるボンド層と、
    上記ボンド層上の上記遮熱を行うべき領域のみに設けられた遮熱性セラミックスからなるトップ層と、を有する耐熱合金部材
    を有する高温装置。
  21. 耐熱合金基材の表面の遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域にRe系、W系またはCr系の多目的合金層を形成する工程と、
    上記多目的合金層上の上記遮熱を行うべき領域を少なくとも含む領域にAl含有合金からなるボンド層を形成する工程と、
    上記ボンド層上の上記遮熱を行うべき領域のみに遮熱性セラミックスからなるトップ層を形成する工程と、を実行することにより耐熱合金部材を製造する工程を有する高温装置の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114606458A (zh) * 2022-02-09 2022-06-10 国营芜湖机械厂 一种新型活塞杆再制造修复方法

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