JP2021123789A - アルミニウム合金鋳塊及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微細な結晶粒を備え、加工時の線状欠陥の発生を抑制することができるアルミニウム合金鋳塊及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金鋳塊は、アルミニウム母相1と、TiB2粒子3が凝集してなり、アルミニウム母相1中に分散しているTiB2凝集体2と、を有している。アルミニウム母相1から露出させた状態におけるTiB2凝集体2の円相当径の平均値が3.0μm以下であり、かつ、円形度の平均値が0.20以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金鋳塊及びその製造方法に関する。
アルミニウム合金を鋳造して鋳塊を作製する際に、鋳塊における結晶粒を微細化させる目的で、アルミニウム合金の溶湯に結晶粒微細化剤が添加されることがある。結晶粒微細化剤としては、アルミニウムからなる基体中にTiB2等のTi−B(チタン−ホウ素)系化合物が分散した、Al−Ti−B系微細化剤が用いられている(特許文献1)。
アルミニウム合金の溶湯中にAl−Ti−B系微細化剤を溶解させると、溶湯中に固体のTi−B系化合物が分散した状態となる。この状態で溶湯を凝固させると、Ti−B系化合物が異質核として機能し、Ti−B系化合物を起点としてアルミニウム母相の結晶粒を成長させることができる。その結果、アルミニウム母相の結晶粒を微細化することができる。
特開2001−191654号公報
しかし、Al−Ti−B系微細化剤によって結晶粒が微細化された従来のアルミニウム合金鋳塊は、圧延や押出等の展伸加工を施した際に線状の欠陥が生じることがあり、最終製品の表面品質の悪化を招くおそれがあった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、微細な結晶粒を備え、展伸加工時の線状欠陥の発生を抑制することができるアルミニウム合金鋳塊及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、アルミニウム母相と、
TiB2粒子が凝集してなり、前記アルミニウム母相中に分散しているTiB2凝集体と、を有し、
前記アルミニウム母相から露出させた状態における前記TiB2凝集体の円相当径の平均値が3.0μm以下であり、かつ、円形度の平均値が0.20以上である、アルミニウム合金鋳塊にある。
本発明の他の態様は、前記の態様のアルミニウム合金鋳塊の製造方法であって、
アルミニウム合金の溶湯中に、アルミニウムからなる基体中に前記TiB2粒子が含まれており、かつ、隣り合う前記TiB2粒子の中心間距離の平均値が0.60μm以上である結晶粒微細化剤を溶解させる溶解工程と、
その後、前記溶湯を鋳造する鋳造工程と、を有する、アルミニウム合金鋳塊の製造方法にある。
本発明のさらに他の態様は、前記の態様のアルミニウム合金鋳塊の製造方法であって、
アルミニウム合金の溶湯中に、アルミニウムからなる基体中にTiB2粒子が凝集してなるTiB2凝集体が含まれている結晶粒微細化剤を溶解させる溶解工程と、
その後、前記溶湯を鋳造する鋳造工程と、を有し、
前記結晶粒微細化剤中のTiB2凝集体は、2000個以上の前記TiB2凝集体の、前記基体から露出させた状態における投影面積を測定した場合に、95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径の平均値が3.0μm以下となる粒度分布を有している、アルミニウム合金鋳塊の製造方法にある。
前記アルミニウム合金鋳塊は、アルミニウム母相中に、TiB2粒子を一次粒子とするTiB2凝集体を有している。また、TiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値がそれぞれ前記特定の範囲である。これは、前記アルミニウム合金鋳塊が、前記特定のTiB2凝集体を含む溶湯を鋳造することによって作製されていることを意味する。
円相当径の平均値及び円形度の平均値がそれぞれ前記特定の範囲内である前記TiB2凝集体は、アルミニウム母相の結晶粒を微細化する能力が高い。そのため、溶湯中に前記TiB2凝集体を形成することにより、アルミニウム母相の結晶粒を十分に微細化することができる。また、前記TiB2凝集体は、比較的粒径が小さいため、アルミニウム合金鋳塊に展伸加工を施す際の線状欠陥の発生を抑制することができる。
それ故、前記の態様によれば、微細な結晶粒を備え、展伸加工時の線状欠陥の発生を抑制することができるアルミニウム合金鋳塊を提供することができる。
また、前記アルミニウム合金鋳塊の製造方法においては、アルミニウム合金の溶湯中に、前記結晶粒微細化剤を溶解させた後、溶湯を凝固させて鋳塊を作製する。前記アルミニウム合金鋳塊の製造方法は、前記溶解工程において前記特定の構成を有する前記結晶粒微細化剤を溶湯中に溶解させることにより、円相当径の平均値及び円形度の平均値がそれぞれ前記特定の範囲であるTiB2凝集体を溶湯中に形成することができる。そして、かかる溶湯を凝固させることにより、最終的に得られるアルミニウム合金鋳塊の結晶粒を容易に微細化するとともに、アルミニウム合金鋳塊を展伸加工する際の線状欠陥の発生を抑制することができる。
また、前記アルミニウム合金の製造方法は、アルミニウム合金の溶湯中に前記結晶粒微細化剤を溶解させるという、従来行われている方法によってアルミニウム合金鋳塊の品質を向上させることができるため、アルミニウム母相の結晶粒を微細化するための特殊な工程や設備を追加する必要がない。従って、前記アルミニウム合金の製造方法によれば、アルミニウム合金鋳塊の製造コストの上昇を回避しつつ、優れた品質を有するアルミニウム合金鋳塊を得ることができる。
図1は、実施例1のアルミニウム合金鋳塊に含まれるTiB2粒子の拡大写真である。 図2は、比較例1のアルミニウム合金鋳塊に含まれるTiB2粒子の拡大写真である。
前記アルミニウム合金鋳塊の化学成分は特に限定されることはなく、どのようなアルミニウム合金であってもよい。なお、前述した「アルミニウム合金」は、純アルミニウムを包含する概念である。例えば、前記アルミニウム合金鋳塊は、A1000系アルミニウムに分類される化学成分を有していてもよいし、A2000系合金、A3000系合金、A4000系合金、A5000系合金、A6000系合金、A7000系合金またはA8000系合金に分類される化学成分を有していてもよい。
鋳造時におけるTiB2粒子の凝集を抑制し、TiB2凝集体の円相当径の平均値を小さくする観点からは、前記アルミニウム合金鋳塊は、Si(ケイ素):0.01質量%以上14.0質量%以下、Fe(鉄):0.01質量%以上2.0質量%以下、Cu(銅):0.01質量%以上7.0質量%以下、Mg(マグネシウム):0.01質量%以上7.0質量%以下、Mn(マンガン):0.01質量%以上2.0質量%以下及びTi(チタン):0.003質量%以上0.3質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素を含み、残部がAl(アルミニウム)及び不可避的不純物からなる化学成分を有していることが好ましい。
アルミニウム合金鋳塊には、アルミニウム母相と、TiB2凝集体とが含まれている。アルミニウム合金鋳塊には、その化学成分に応じて、晶出物が含まれていてもよい。また、アルミニウム合金鋳塊には、凝集していないTiB2粒子が含まれていてもよい。
アルミニウム母相には、アルミニウム原子と、前記アルミニウム合金鋳塊の化学成分に応じた固溶元素とが含まれている。また、アルミニウム母相は、多数の結晶粒から構成されている。アルミニウム母相の結晶粒径は、前記アルミニウム合金鋳塊の化学成分に応じて変化するが、前記特定のTiB2凝集体を含むアルミニウム合金鋳塊においては、通常、アルミニウム母相の平均結晶粒径は、50μm以上5000μm以下の範囲内となる。
アルミニウム母相中には、TiB2粒子を一次粒子とする凝集体である、TiB2凝集体が分散している。TiB2凝集体に含まれる個々のTiB2粒子の粒径は、例えば、0.1μm以上5.0μm以下であってもよい。
前記アルミニウム母相から露出させた状態における前記TiB2凝集体の円相当径の平均値は3.0μm以下である。TiB2凝集体の円相当径の平均値を3.0μm以下とすることにより、前記アルミニウム合金鋳塊に圧延や押出等の展伸加工を施した際の線状欠陥の発生を抑制することができる。
TiB2凝集体の円相当径の平均値が3.0μmよりも大きい場合、アルミニウム合金鋳塊中に粗大なTiB2凝集体が存在している可能性が高くなる。それ故、この場合には、アルミニウム合金鋳塊に展伸加工を施した際に、粗大なTiB2凝集体に由来する線状欠陥が発生しやすくなるおそれがある。
線状欠陥の発生を抑制する観点からは、TiB2凝集体の円相当径の平均値の下限は特に限定されることはないが、前記の態様の製造方法により形成されるTiB2凝集体の円相当径の平均値は、通常、1.0μm以上となる。
前述したTiB2凝集体の円相当径の平均値は、以下の方法により算出される値である。まず、アルミニウム合金鋳塊の内部から試験片を採取する。次いで、ディープエッチングなどの方法により試験片表面のアルミニウム母相を除去する。この試験片の表面を電子顕微鏡等で観察することにより、TiB2凝集体の拡大写真を取得する。得られた拡大写真におけるTiB2凝集体の投影面積に基づいて個々のTiB2凝集体の円相当径を算出する。以上の操作を無作為に選択した複数のTiB2凝集体について行い、これらの円相当径を算術平均することにより、TiB2凝集体の円相当径の平均値を得ることができる。円相当径の平均値を算出する際に用いるTiB2凝集体の数は、例えば、3個以上であればよい。
また、前記アルミニウム母相から露出させた状態における前記TiB2凝集体の円形度の平均値は0.20以上である。TiB2凝集体の円形度は、TiB2凝集体の形状が球に近いかどうかの指標となる値であり、円形度が1に近いほどTiB2凝集体が球に近い形状であることを意味する。
前記アルミニウム合金鋳塊の鋳造過程においては、通常、溶湯中に種々の形状を有するTiB2凝集体が形成される。そして、溶湯中のTiB2凝集体は、円形度が大きく、球に近い形状を有するほど、異質核として機能しやすい性質を有している。従って、TiB2凝集体の円形度の平均値を0.20以上とすることにより、鋳造時に形成されるTiB2凝集体のうち異質核として機能し得るTiB2凝集体の割合を多くすることができる。
TiB2凝集体の円形度の平均値が0.20未満の場合、鋳造時に形成されるTiB2凝集体のうち異質核として機能し得るTiB2凝集体の割合が少なくなりやすい。そのため、この場合には、アルミニウム母相の結晶粒の微細化が不十分となるおそれがある。
TiB2凝集体による結晶粒の微細化の効果を高める観点からは、TiB2凝集体の円形度の平均値の上限は特に限定されることはないが、前記の態様の製造方法により形成されるTiB2凝集体の円形度の平均値は、通常、0.8以下となる。
前述したTiB2凝集体の円形度の平均値は、具体的には、以下の方法により算出される値である。まず、円相当径の算出方法と同様にしてTiB2凝集体の拡大写真を取得する。個々のTiB2凝集体の円形度は、得られた拡大写真におけるTiB2凝集体の面積S[μm2]と、周長L[μm]とを用い、以下の式で表される。
円形度=4πS/L2
以上の操作を無作為に選択した複数のTiB2凝集体について行い、これらの円形度を算術平均することにより、TiB2凝集体の円形度の平均値を得ることができる。円形度の平均値を算出する際に用いるTiB2凝集体の数は、例えば、3個以上であればよい。
また、前記アルミニウム合金鋳塊に含まれるTiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値をそれぞれ前記特定の範囲とすることにより、前述したそれぞれの作用効果に加え、結晶粒を微細化する効果を確保しつつ鋳造過程において添加する結晶粒微細化剤の量を低減することができる。
すなわち、前述したように、前記アルミニウム合金鋳塊の鋳造過程において、溶湯中に形成されるTiB2凝集体の円相当径の平均値を前記特定の範囲とすることにより、粗大なTiB2凝集体を低減し、溶湯中のTiB2凝集体の総数を多くすることができる。また、TiB2凝集体の円形度の平均値を前記特定の範囲とすることにより、溶湯中における、異質核として機能し得るTiB2凝集体の割合を多くすることができる。
従って、前記アルミニウム合金鋳塊の鋳造過程において、TiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値を前記特定の範囲とすることにより、異質核として機能し得るTiB2凝集体の数を多くし、ひいてはアルミニウム母相の結晶粒を微細化する効果を高めることができる。
以上のように、前記アルミニウム合金鋳塊に含まれるTiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値をそれぞれ前記特定の範囲とすることにより、円相当径の低減による効果と、円形度の上昇による効果とを相乗的に作用させることができる。その結果、前記アルミニウム合金鋳塊を作製する際に、結晶粒を微細化する効果を維持しつつ、従来よりも鋳造時に添加する結晶粒微細化剤の量を低減することができる。
例えば、前記アルミニウム合金鋳塊中のTiB2凝集体の含有量は、ホウ素原子として0.0001質量%以上0.0010質量%以下とすることができる。
前記アルミニウム合金鋳塊を製造するにあたっては、アルミニウム合金の溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解させる溶解工程と、その後、前記溶湯を鋳造する鋳造工程と、を備えた方法を採用することができる。
前記製造方法において、溶湯中に添加する結晶粒微細化剤は、アルミニウムからなる基体を有している。基体の形状は特に限定されることはなく、例えば、棒状や板状などの形状を有していてもよい。
また、基体中には、TiB2粒子が含まれている。TiB2粒子は、基体中に分散しており、凝集していない状態で存在していてもよい。また、複数のTiB2粒子が凝集することにより、基体中にTiB2凝集体が形成されていてもよい。より具体的には、基体中の全てのTiB2粒子が凝集していない状態で存在していてもよいし、基体中の全てのTiB2粒子がTiB2凝集体の状態で存在していてもよい。さらに、基体中に、凝集していない状態のTiB2粒子と、TiB2凝集体との両方が存在していてもよい。
基体中のTiB2粒子の少なくとも一部は、溶解工程において結晶粒微細化剤が溶湯中に溶解した後に、溶湯中において凝集し、TiB2凝集体となる。また、基体中のTiB2凝集体は、溶解工程において結晶粒微細化剤が溶湯中に溶解した際に、凝集状態を保ったまま溶湯中に移行する。それ故、TiB2粒子を含む結晶粒微細化剤をアルミニウム溶湯中に溶解させることにより、溶湯中にTiB2凝集体を形成することができる。
前記溶解工程においては、例えば、以下のいずれかの態様の結晶粒微細化剤を溶湯中に溶解させることができる。すなわち、結晶粒微細化剤の第一の態様においては、前記結晶粒微細化剤の任意の断面における、隣り合う前記TiB2粒子の中心間距離の平均値は0.60μm以上である。結晶粒微細化剤中のTiB2粒子の中心間距離を前記特定の範囲とすることにより、溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解した際のTiB2粒子の凝集やTiB2凝集体の成長を抑制することができる。その結果、溶湯中に形成されるTiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値を容易に前記特定の範囲とすることができる。
隣り合うTiB2粒子の中心間距離の平均値が0.60μmよりも短い場合、溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解した際に、TiB2粒子同士が凝集しやすくなる。その結果、溶湯中に粗大なTiB2凝集体が形成されやすくなり、結晶粒を微細化する効果の低下や、展伸加工時における線状欠陥の発生頻度の上昇を招くおそれがある。
なお、前述したTiB2粒子の中心間距離の平均値は、以下の方法により算出される値である。まず、結晶粒微細化剤を切断し、切断面を露出させる。電子顕微鏡などを用いてこの切断面を観察し、切断面の拡大写真を取得する。得られた拡大写真において、拡大写真中に存在する各TiB2粒子の重心を決定する。なお、拡大写真中に存在するTiB2粒子には、分散していない状態で存在しているTiB2粒子と、TiB2凝集体の一部となっているTiB2粒子との両方が含まれる。
次に、拡大写真中に存在するTiB2粒子の中から、中心間距離の計測対象となるTiB2粒子を決定する。そして、計測対象のTiB2粒子と、計測対象のTiB2粒子に最も近いTiB2粒子との重心間の距離を計測し、この値を計測対象のTiB2粒子の中心間距離とする。以上の操作を、拡大写真中に存在するすべてのTiB2粒子について行い、得られた中心間距離の算術平均値をTiB2粒子の中心間距離の平均値とする。
結晶粒微細化剤の第二の態様においては、結晶粒微細化剤中のTiB2凝集体は、2000個以上のTiB2凝集体の、基体から露出させた状態における投影面積を測定した場合に、95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径の平均値が3.0μm以下となる粒度分布を有している。TiB2凝集体を含む結晶粒微細化剤においては、円相当径の大きいTiB2凝集体がアルミニウム溶湯中の異質核として有効に機能する。
しかし、結晶粒微細化剤中のTiB2凝集体の円相当径が過度に大きくなると、結晶粒微細化剤をアルミニウム溶湯中に溶解させた際に、アルミニウム溶湯中に粗大なTiB2凝集体が混入しやすい。その結果、鋳造後のアルミニウム合金鋳塊に展伸加工を施した際に、粗大なTiB2凝集体に由来する線状欠陥が発生しやすくなるおそれがある。
そこで、結晶粒微細化剤中のTiB2凝集体の粒径分布を前記特定の態様とすることにより、結晶粒微細化剤中に粗大なTiB2凝集体が含まれる可能性を低くすることができ、ひいては粗大なTiB2凝集体の溶湯への混入を抑制することができる。その結果、溶湯中に形成されるTiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値を容易に前記特定の範囲とすることができる。
95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径の平均値が3.0μmよりも大きい場合、結晶粒微細化剤中に粗大なTiB2凝集体が含まれる可能性が高くなる。そのため、溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解した際に、粗大なTiB2凝集体が溶湯中に混入しやすくなり、結晶粒を微細化する効果の低下や、展伸加工時における線状欠陥の発生頻度の上昇を招くおそれがある。
なお、前述したTiB2凝集体の円相当径の平均値は、以下の方法により算出される値である。まず、結晶粒微細化剤を切断し、切断面を露出させる。結晶粒微細化剤の切断方向は特に限定されることはない。例えば、結晶粒微細化剤が棒状である場合には、結晶粒微細化剤を、その中心を通り、長手方向に垂直な面で切断すればよい。
次に、結晶粒微細化剤の切断面を研磨した後、基体におけるTiB2凝集体の周辺部分を除去することによりTiB2凝集体を基体から露出させる。基体の除去方法としては、例えば、ディープエッチングなどの方法を用いることができる。
次いで、電子顕微鏡などを用いて基体から露出させたTiB2凝集体を観察し、TiB2凝集体の拡大写真を取得する。この拡大写真におけるTiB2凝集体の面積を各TiB2凝集体の投影面積とする。なお、TiB2凝集体の投影面積の算出及び円相当径の算出には、画像解析装置などを使用することができる。
以上の操作を、結晶粒微細化剤の切断面に存在するTiB2凝集体から無作為に選択した2000個以上のTiB2凝集体について行う。このようにして得られたTiB2凝集体の投影面積に基づいて、投影面積の95パーセンタイルを算出する。なお、パーセンタイルとは、複数の数値を値の小さい数値から値の大きい数値の順に並べた場合に、値の小さい数値から数えた数値の個数が数値の総数に対して所望の百分率となる数値である。このような数値がない場合には、値の小さい数値から数えた数値の個数が数値の総数に対して所望の百分率未満となる値のうち最も大きい値をパーセンタイルとする。より具体的には、投影面積の95パーセンタイルとは、95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の個数が、投影面積を測定したTiB2凝集体の総数の5%となる値である。
以上のようにして投影面積の95パーセンタイルを決定した後、95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径を算出する。なお、円相当径は、TiB2凝集体の投影面積と等しい面積を有する円の直径である。そして、得られたTiB2凝集体の円相当径を算術平均することにより、95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径の平均値を得ることができる。
結晶粒微細化剤中のTiB2粒子の含有量は、例えば、0.5質量%以上3.2質量%以下とすることができる。この場合には、隣り合うTiB2粒子の中心間距離の平均値が長くなりやすくなる。その結果、溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解した際のTiB2粒子の凝集を抑制する効果をより確実に奏することができる。
前記製造方法においては、所望の化学成分を有するアルミニウム合金の溶湯中に、前記結晶粒微細化剤を溶解させる。この際、必要に応じて溶湯を攪拌し、結晶粒微細化剤中のTiB2粒子を溶湯中に均一に分散させてもよい。
前記製造方法においては、溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解させた後、溶湯を鋳造することによりアルミニウム合金鋳塊を作製することができる。鋳造方法は特に限定されることはなく、例えば、半連続鋳造や連続鋳造等の方法を採用することができる。これらの方法により作製したアルミニウム合金鋳塊は、圧延板や押出材などの展伸材の作製に用いることができる。また、前述したアルミニウム合金の溶湯を、金型や砂型に注湯した後冷却することにより、所望の製品形状または製品形状に近い形状を備えた鋳塊を得ることもできる。
前記製造方法においては、溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解させた後、30分以内に溶湯を鋳造することが好ましい。TiB2粒子は、溶湯に比べて比重が大きい。そのため、溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解させた時点からの経過時間が長くなると、TiB2粒子が自重によって沈降し、るつぼの下部においてTiB2粒子の凝集が起こりやすくなる。その結果、粗大なTiB2凝集体が形成されやすくなるおそれがある。溶湯中に結晶粒微細化剤を溶解させた時点から鋳造するまでの時間を30分以内とすることにより、かかる問題をより容易に回避することができる。
なお、前述したアルミニウム合金鋳塊及びその製造方法は、別の観点から見れば、TiB2粒子の分散状態を特定した結晶粒微細化剤の発明として把握することも可能である。
すなわち、結晶粒微細化剤の第一の態様は、
アルミニウムからなる基体と、
前記基体中に存在するTiB2粒子と、を有しており、
任意の断面における隣り合う前記TiB2粒子の中心間距離の平均値が0.60μm以上である。
また、結晶粒微細化剤の第二の態様は、
アルミニウムからなる基体と、
TiB2粒子が凝集してなり、前記基体中に存在するTiB2凝集体と、を有しており、
前記TiB2凝集体は、2000個以上の前記TiB2凝集体の、前記基体から露出させた状態における投影面積を測定した場合に、95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径の平均値が3.0μm以下となる粒度分布を有している。
かかる結晶粒微細化剤は、例えば、以下の製造方法により作製可能と推定される。
すなわち、前記結晶粒微細化剤の製造方法においては、基体となるアルミニウムの溶湯を準備し、
前記溶湯中にTiB2粒子を不活性ガスとともに吹き込むことにより、前記溶湯中に前記TiB2粒子を分散させ、
その後、前記溶湯を凝固させる。以上により、前記結晶粒微細化剤を得ることができる。
溶湯中に吹き込むTiB2粒子としては、粒度分布の幅が狭いTiB2粒子を使用することが好ましく、粒径の標準偏差が0.5μm以下であるTiB2粒子を使用することがより好ましい。また、不活性ガスとしては、例えば窒素ガスやアルゴンガスなどを使用することができる。なお、TiB2粒子の粒径の標準偏差は、体積基準における粒径分布に基づいて算出される値である。TiB2粒子の体積基準における粒径分布の取得には、具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いることができる。
前記アルミニウム合金鋳塊及びその製造方法の実施例を以下に説明する。なお、本発明に係るアルミニウム合金鋳塊及びその製造方法の具体的な態様は、実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲において適宜構成を変更することができる。
(実施例1、2及び比較例1、2)
実施例1、2及び比較例1、2は、純アルミニウムからなるアルミニウム合金鋳塊の例である。これらの例においては、まず、純度99.7質量%のアルミニウム地金を溶解して溶湯を準備する。溶湯の温度を718℃にしたのち、溶湯中に、アルミニウムからなる基体中にTiB2粒子が分散している結晶粒微細化剤を、ホウ素原子として10質量ppmとなるように添加する。
本例で用いる結晶粒微細化剤は、具体的には、Ti:1.0質量%以上5.5質量%以下、B:0.1質量%以上1.5質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するとともに、アルミニウムからなる基体と、基体中に存在しているTiB2粒子とを有している。TiB2粒子の一部は凝集していない状態で存在しており、残部はTiB2凝集体を構成している。
本例の結晶粒微細化剤の任意の断面における、隣り合うTiB2粒子の中心間距離は表1に示す値である。また、結晶粒微細化剤中のTiB2凝集体は、2000個以上のTiB2凝集体の、基体から露出させた状態における投影面積を測定した場合に、95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径の平均値が表1に示す値となる粒度分布を有している。
溶湯中に結晶粒微細化剤を添加した後、溶湯の温度を718℃に保持した状態で黒鉛棒を用いて溶湯を30秒間攪拌し、結晶粒微細化剤を十分に溶解させる。また、結晶粒微細化剤を添加した時点から9分15秒経過した時点で、再び黒鉛棒を用いて溶湯を15秒間攪拌する。
2回目の攪拌が完了した後、AA−TP1規格に準じた鉄製の柄杓を溶湯中に浸漬し、柄杓のカップ部分を溶湯で満たす。そして、結晶粒微細化剤を添加した時点から10分経過した時点で柄杓を溶湯から引き上げ、カップ部分に溶湯を汲み取る。その後、AA−TP1規格に準じた水冷装置を用いて柄杓のカップ部分を冷却し、溶湯を凝固させる。以上により、実施例1、2及び比較例1、2のアルミニウム合金鋳塊が得られる。これらのアルミニウム合金鋳塊は、いずれも円錐台状を呈している。
実施例1、2及び比較例1、2のアルミニウム合金鋳塊における、TiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値の算出方法は、以下のとおりである。表1に、実施例1、2及び比較例1、2のアルミニウム合金鋳塊におけるこれらの値を示す。
・TiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値
アルミニウム合金鋳塊における円形の端面のうち、直径の小さい面(つまり、柄杓の底面に接していた面)からの高さが38mmとなる断面でアルミニウム合金鋳塊を切断し、切断面を露出させる。この切断面を研磨した後、ディープエッチングを施すことにより、アルミニウム母相を除去してTiB2凝集体全体を露出させる。
次いで、電子顕微鏡を用いてTiB2凝集体の拡大写真を取得する。一例として、図1に実施例1のアルミニウム合金鋳塊に含まれるTiB2凝集体の拡大写真を示し、図2に比較例2のアルミニウム合金鋳塊に含まれるTiB2凝集体の拡大写真を示す。図1及び図2に示すように、アルミニウム母相1中のTiB2凝集体2は、多数のTiB2粒子3が凝集した塊状を呈している。
画像解析ソフトを用い、拡大写真におけるTiB2凝集体2の面積を算出し、次いでTiB2凝集体2の面積に基づいて個々のTiB2凝集体の円相当径を算出する。以上の操作を無作為に選択した8個のTiB2凝集体について行い、これらの円相当径を算術平均した値をTiB2凝集体の円相当径の平均値とする。表1に、各アルミニウム合金鋳塊におけるTiB2凝集体の円相当径の平均値を示す。
また、画像解析ソフトを用い、前述した拡大写真におけるTiB2凝集体2の周長、つまり、輪郭の長さを算出する。そして、TiB2凝集体2の面積と周長とから個々のTiB2凝集体の円形度を算出する。以上の操作を無作為に選択した3個以上のTiB2凝集体について行い、これらの円形度を算術平均した値をTiB2凝集体の円形度の平均値とする。表1に、各アルミニウム合金鋳塊におけるTiB2凝集体の円形度の平均値を示す。
(実施例3)
実施例3は、A3000系合金からなるアルミニウム合金鋳塊の例である。実施例3においては、まず、加熱炉を用いてA3000系合金からなる溶湯を準備した後、溶湯中に、ホウ素原子として10質量ppmとなるように結晶粒微細化剤を添加する。本例において用いる結晶粒微細化剤は、Ti:5.0質量%、B:1.0質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有している点、結晶粒微細化剤の任意の断面における、隣り合うTiB2粒子の中心間距離が表1に示す値である点、及び95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径の平均値が表1に示す値となる点以外は、実施例1と同様である。
溶湯中に結晶粒微細化剤を添加した後、黒鉛棒を用いて溶湯を30秒間攪拌する。その後、DC鋳造法によって溶湯を鋳造する。以上により、実施例3のアルミニウム合金鋳塊が得られる。実施例3のアルミニウム合金鋳塊は直方体状を呈している。
(実施例4)
実施例4は、A1000系アルミニウムからなるアルミニウム合金鋳塊の例である。実施例4においては、加熱炉を用いてA1000系アルミニウムからなる溶湯を準備した以外は、実施例3と同様の方法によりアルミニウム合金の溶湯を鋳造する。これにより、実施例4のアルミニウム合金鋳塊が得られる。実施例4のアルミニウム合金鋳塊は、実施例3と同様に直方体状を呈している。
実施例3及び実施例4のアルミニウム合金鋳塊における、TiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値の算出方法は、以下のとおりである。
・TiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値
アルミニウム合金鋳塊を切断し、幅方向及び厚み方向の中央部分から試験片を採取する。この試験片の表面を研磨した後、ディープエッチングを施すことにより、アルミニウム母相を除去してTiB2凝集体全体を露出させる。これ以降は、実施例1等と同様の方法によりTiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値を算出すればよい。表1に、実施例3、4のアルミニウム合金鋳塊におけるこれらの値を示す。
Figure 2021123789
表1に示したように、実施例1−4のアルミニウム合金鋳塊に含まれるTiB2凝集体の円相当径の平均値及び円形度の平均値は、それぞれ前記特定の範囲内にある。それ故、これらのアルミニウム合金鋳塊は、アルミニウム母相の結晶粒が十分に微細化されているとともに、粗大なTiB2凝集体が少なく、圧延等の加工を行う際の線状欠陥の発生を抑制することができる。
比較例1、2のアルミニウム合金鋳塊に含まれるTiB2凝集体の円相当径の平均値は、前記特定の範囲よりも大きい。そのため、これらのアルミニウム合金鋳塊には粗大なTiB2凝集体が含まれやすく、展伸加工時に線状欠陥が発生しやすい。
1 アルミニウム母相
2 TiB2凝集体
3 TiB2粒子

Claims (5)

  1. アルミニウム母相と、
    TiB2粒子が凝集してなり、前記アルミニウム母相中に分散しているTiB2凝集体と、を有し、
    前記アルミニウム母相から露出させた状態における前記TiB2凝集体の円相当径の平均値が3.0μm以下であり、かつ、円形度の平均値が0.20以上である、アルミニウム合金鋳塊。
  2. 前記TiB2凝集体の含有量は、ホウ素原子として0.0001質量%以上0.0010質量%以下である、請求項1に記載のアルミニウム合金鋳塊。
  3. 請求項1または2に記載のアルミニウム合金鋳塊の製造方法であって、
    アルミニウム合金の溶湯中に、アルミニウムからなる基体中にTiB2粒子が含まれており、かつ、任意の断面における隣り合う前記TiB2粒子の中心間距離の平均値が0.60μm以上である結晶粒微細化剤を溶解させる溶解工程と、
    その後、前記溶湯を鋳造する鋳造工程と、を有する、アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載のアルミニウム合金鋳塊の製造方法であって、
    アルミニウム合金の溶湯中に、アルミニウムからなる基体中にTiB2粒子が凝集してなるTiB2凝集体が含まれている結晶粒微細化剤を溶解させる溶解工程と、
    その後、前記溶湯を鋳造する鋳造工程と、を有し、
    前記結晶粒微細化剤中のTiB2凝集体は、2000個以上のTiB2凝集体の、前記基体から露出させた状態における投影面積を測定した場合に、95パーセンタイル以上の投影面積を有するTiB2凝集体の円相当径の平均値が3.0μm以下となる粒度分布を有している、アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  5. 前記溶湯中に前記結晶粒微細化剤を溶解させた後、30分以内に前記溶湯を鋳造する、請求項3または4に記載のアルミニウム合金鋳塊の製造方法。
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