JP2022008038A - コーティング材及びコーティング方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ポリシラザンとアルキルシリケート縮合物とを両者の合計として50~80質量%の濃度で、不活性溶剤により溶解されたコーティング剤をベース剤として、該ベース剤に抗ウイルス剤を0.1~20質量%の割合で添加してなることを特徴としている。
この特徴によれば、ポリシラザン及びアルキルシリケート縮合物により生成されるガラスコーティング被膜を母材として、当該被膜の表層に露出部を大きく確保した状態で抗ウイルス剤が安定状態で定着するため、このコーティング材によって被覆した被覆対象物の高い抗ウイルス効果を長期にわたり持続させることができる。
この特徴によれば、ガラスコーティング被膜を薄膜に形成しやすいので、当該被膜の表層に抗ウイルス剤を露出させやすい。
この特徴によれば、無機ポリシラザンをベース剤とし、当該ベース剤との親和性が比較的低い有機抗ウイルス剤を用いることで、表面張力によりベース剤が抗ウイルス剤の表面に対して付着し難くなり、ガラスコーティング被膜の表層に抗ウイルス剤の露出部をより大きく確保することができる。
この特徴によれば、被覆対象物の抗菌効果と抗ウイルス効果をいずれも高めることができる。
ポリシラザンとアルキルシリケート縮合物とを両者の合計として50~80質量%の濃度で、不活性溶剤により溶解されたコーティング剤をベース剤として、該ベース剤に抗ウイルス剤を0.1~20質量%の割合で添加してなるコーティング材を、被覆対象物の表面に被覆する被覆工程を有することを特徴としている。
この特徴によれば、被覆対象物の表面に、ポリシラザン及びアルキルシリケート縮合物によるガラスコーティング被膜を生成するとともに、ガラスコーティング被膜を母材としてその表層に露出部を大きく確保した状態で抗ウイルス剤が安定状態で定着するため、この被覆対象物の高い抗ウイルス効果を長期にわたり得ることができる。
この特徴によれば、コーティング膜の表層面に、抗ウイルス剤を表出させることで、この抗ウイルス剤が各種のウイルスにダイレクトに作用して、高い抗ウイルス効果を長期に持続させることができる。更にコーティング膜を薄層に生成することで、被覆対象物の表面の挙動に対する追従性を確保できる。
この特徴によれば、コーティング材に含まれる成分と被覆対象物表面の水分との化学反応で生じるガスの排出によって生成されるコーティング膜の表層面の凹部に、抗ウイルス剤を表出させることで、この抗ウイルス剤が各種のウイルスにダイレクトに作用して、高い抗ウイルス効果を長期に持続させることができる。
この特徴によれば、コーティング膜の表層面に、抗ウイルス剤を確実に表出させることができる。
この特徴によれば、除菌工程により清浄された被覆対象物の表面に良質で持続性の高いコーティング被膜を生成することができる。
この特徴によれば、被覆対象物の表面に水分を付着させることで、この水分とコーティング材に含まれる成分との化学反応を促進させ、被覆対象物の表面に迅速かつ強固にコーティング被膜を生成することができる。
本発明のコーティング材としてのコーティング液110は、ベース剤110Aと、このベース剤110Aに添加された添加剤110Bとから主として構成されている。先ずベース剤110Aは、原料として少なくとも無機若しくは有機ポリシラザンと、アルキルシリケート縮合物とを含有しており、本実施例1においては、これら無機若しくは有機ポリシラザン及びアルキルシリケート縮合物が不活性溶剤によって希釈されている。
また、本実施例1のコーティング液110は、例えばガラス製又は樹脂製等の容器に封入された所定量の液体として運用されるものであり、当該液体を図示しない布材等に湿らせ、被覆対象となる各種の物品等の表面に塗布することで、コーティング被膜を形成する。なお、コーティング材の運用については、これに限らず、例えば予めコーティング液に含浸した不織布等を袋体に密封し、使用に際し当該袋体を開封するようにしてもよいし、あるいはコーティング液を被覆対象物の表面に霧吹き状に吹き付けて被覆しても構わない。
コーティング液110は、被覆対象となる物品101の表面102に塗布又は散布されることにより、水分と化学反応して単層又は複数層の薄膜のコーティング膜115,135,145を形成する。なお、コーティング膜115,135,145の膜厚として好ましくは10μm以下、より好適には5nm~5μmの被膜として成層したものである。
被覆対象物としては、樹脂材や金属材、木材、ゴム材、皮革等の素材から構成される各種の物品が適用可能であり、若しくは什器等の固定設置物であってもよく、例えば携帯端末やリモコンの操作部表面、机・テーブルの天板や引き出し、食器類、バッグや財布などの携行品、建設・仮設資材など、複数の人が接触する機会の多い物品が被覆対象物として好適である。特に近年では、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を最大限に考慮し、不特定多数の人々が接触する頻度の高い物品、例えば役所等の公共機関・オフィス・商業施設・病院・学校・老人ホーム等に配設された什器、ドアノブや手すり等、または、公共交通機関である電車・バスのつり革や手すり等の物品が被覆対象物としてより好適である。
次に、本発明に係るコーティング膜115,135,145が形成されるメカニズムについて説明する。なお、ここではコーティング液110を構成するベース剤110Aの原料として無機ポリシラザンが使用される場合を例に挙げて説明する。また、図1は、コーティング膜115が形成されるメカニズムを示すものであるが、本実施例1の別の実施形態であるコーティング膜135,145(図4,5参照)が形成されるメカニズムも図1と略同一であるため、別の実施形態については図示によるメカニズムの説明を省略する。
図1に示されるように、物品101の表面102に被覆されたコーティング膜115,135,145の表面は、副生成物であるガスの気泡が揮発した箇所の跡に、コーティング膜115,135,145の表層面114a上にナノレベルで凹凸形状を成す凹凸部116が形成される。より詳しくは、上記した化学反応により水素やアンモニア等の気泡が多数生成され、これらの気泡がコーティング膜115,135,145の平滑な表層面114aから気中に向け放出される際に、気泡に接するコーティング膜115,135,145の表層面114aに生じる表面張力の影響、及び化学反応に伴うこの表層面114aの初期硬化のタイミングの影響が相俟って、当該平滑面にナノレベルの凹部116b及び凸部116aからなる凹凸部116を生成するものと想定される。なお、図1~3では凹凸部116の凹凸寸法を実寸よりもデフォルメして示し、図4,5では凹凸部116を省略している。
新型コロナウイルス(COVID -19)に対するコーティング膜の抗ウイルス効果の評価方法として、ISO21702:2019に基づき、5cm角のポリ塩化ビニル(PVC)の試験片(コーティング膜なし,コーティング膜あり)の表面に対し、新型コロナウイルスのウイルス液0.4mlをそれぞれ滴下し、この試験片の表面を4cm角のフィルムで被覆し、25℃で24時間静置し、試験片上のウイルスを洗い出して回収した後、プラーク測定法によりウイルス感染価(残存ウイルス率)の測定を行った。また、それぞれ3つのサンプルに対して測定を行い、下記計算式により、抗ウイルス活性値を算出した。
R=Ut-At
R :抗ウイルス活性値
Ut:無加工品(コーティング膜なし)の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm2)の常用対数の平均
At:抗ウイルス加工品(コーティング膜あり)の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm2)の常用対数の平均
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性試験(1)の結果を図6に示す。図6に示されるように、新型コロナウイルスについて、試験前と比較してコーティング膜が被膜されない試験片(コーティング膜なし)のウイルス減少率は81.5%であるのに対し、本発明に係るコーティング膜が被膜された試験片(コーティング膜あり)のウイルス減少率は94.45%と高い値を示し、すなわち本発明のコーティング膜によって新型コロナウイルスの残存ウイルス率が有意に減少することが確認された。また、本発明に係るコーティング膜の抗ウイルス活性値Rは0.52、すなわちコーティング膜なしと比較して69.8%のウイルス減少率であることが確認された。これは図2,3に示されるように、コーティング膜115の表層面114a上に露出した状態で固定された有機抗ウイルス剤の有効成分を含有する粒子121,122が、新型コロナウイルスに直接接触して作用し、当該ウイルスのエンベロープ(外殻)を破壊することにより死滅させるため、表層面114a上を清浄に維持しているものと推察される。
そこで、輸送時の取り扱いによる影響を排除するために、日本国内の試験機関において、新型コロナウイルス(COVID -19)に対するコーティング膜の抗ウイルス効果の評価方法を行った。尚、抗ウイルス効果の評価方法として、ISO21702:2019に基づき、上記海外の試験機関における新型コロナウイルスを対象とした抗ウイルス性試験(1)と略同様の方法により新型コロナウイルスのウイルス感染価(残存ウイルス率)の測定を行うとともに、抗ウイルス活性値を算出した。
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性試験(2)の結果を図7に示す。図7に示されるように、新型コロナウイルスについて、試験前と比較してコーティング膜が被膜されない試験片(コーティング膜なし)のウイルス減少率は74.3%であるのに対し、本発明に係るコーティング膜が被膜された試験片(コーティング膜あり)のウイルス減少率は99.98%と高い値を示し、すなわち本発明のコーティング膜によって新型コロナウイルスの残存ウイルス率が有意に減少することが確認された。また、本発明に係るコーティング膜の抗ウイルス活性値Rは3.0、すなわちコーティング膜なしと比較して99.9%のウイルス減少率であり、新型コロナウイルスに対する優れた抗ウイルス効果を発揮することが確認された。これは図2,3に示されるように、コーティング膜115の表層面114a上に露出した状態で固定された有機抗ウイルス剤の有効成分を含有する粒子121,122が、新型コロナウイルスに直接接触して作用し、当該ウイルスのエンベロープ(外殻)を破壊することにより死滅させるため、表層面114a上を清浄に維持しているものと推察される。
A型インフルエンザウイルス(H3N2)に対するコーティング膜の抗ウイルス効果の評価方法として、ISO21702:2019に基づき、上記新型コロナウイルスを対象とした試験と同様の方法によりA型インフルエンザウイルスのウイルス感染価(残存ウイルス率)の測定を行うとともに、抗ウイルス活性値を算出した。なお、本試験においては、経時的なウイルス感染価(残存ウイルス率)の測定も行った。
A型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス性試験の結果を図8,9に示す。図8に示されるように、A型インフルエンザウイルスについて、試験前と比較してコーティング膜が被膜されない試験片(コーティング膜なし)のウイルス減少率は97.6%であるのに対し、本発明に係るコーティング膜が被膜された試験片(コーティング膜あり)のウイルス減少率は99.998%と高い値を示し、すなわち本発明のコーティング膜によってA型インフルエンザウイルスの残存ウイルス率が有意に減少することが確認された。また、本発明に係るコーティング膜の抗ウイルス活性値Rは2.5、すなわちコーティング膜なしと比較して99.93%のウイルス減少率であり、優れた抗ウイルス効果を発揮することが確認された。これは図2,3に示されるように、コーティング膜115の表層面114a上に露出した状態で固定された有機抗ウイルス剤の有効成分を含有する粒子121,122が、A型インフルエンザウイルスに直接接触して作用し、当該ウイルスのエンベロープ(外殻)を破壊することにより死滅させるため、表層面114a上を清浄に維持しているものと推察される。
コーティング膜の抗菌効果の評価方法として、JIS Z 2801抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果に基づき、5cm角の試験片(コーティング膜なし,コーティング膜あり)の表面に対し、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)と大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)の菌液0.4mlをそれぞれ滴下し、当該試験片の表面を4cm角のフィルムで被覆し、35℃±1℃、相対湿度90%以上で24時間静置し、試験片上の菌を洗い出して回収した後、生菌数の測定を行った。また、それぞれ3つのサンプルに対して測定を行い、抗菌活性値を上記した抗ウイルス活性値と同様の計算方法により算出した。
黄色ぶどう球菌に対する抗菌性試験の結果を図10に示す。図10に示されるように、黄色ぶどう球菌について、試験前と比較してコーティング膜が被膜されない試験片(コーティング膜なし)の生菌減少率は45.0%であるのに対し、本発明に係るコーティング膜が被膜された試験片(コーティング膜あり)の生菌減少率は99.99%以上であり、すなわち黄色ぶどう球菌の生菌数率が有意に減少することが確認された。また、本発明に係るコーティング膜の抗菌活性値Rは4.4、すなわちコーティング膜なしと比較して99.99%の生菌減少率、すなわち24時間後の生菌数率は略0(ゼロ)であり、優れた抗菌性を発揮することが確認された。これは図2,3に示されるように、コーティング膜115の表層面114a上に露出した状態で固定された有機抗ウイルス剤の有効成分を含有する粒子121,122が、黄色ぶどう球菌に直接接触して作用し、当該菌の細胞膜を破壊することにより死滅させるため、表層面114a上を清浄に維持しているものと推察される。
コーティング膜の防カビ効果の評価方法Aとして、JIS Z 2911:2018に基づき、無機塩寒天培地上に試験片(コーティング膜なし,コーティング膜あり)をそれぞれ貼付し、5菌株(Aspergillus niger NBRC 105649,Penicillium pinophilum NBRC 100533,Paecilomyces variotii NBRC 107725,Trichoderma virens NBRC 6355,Chaetomium globosum NBRC 6347)の混合胞子懸濁液を噴霧し、29±1℃、相対湿度95%以上で28日間培養し、試料片上のカビの生育を目視にて観察し、カビの生育及びカビ抵抗性表示について評価を行った結果を表1に示す。なお、カビの生育については、カビの生育を認めない(-)、顕微鏡下でカビの生育を認めた(±)、カビの生育が著しい(+)として評価を行った。また、カビ抵抗性表示については、肉眼及び顕微鏡下でカビの生育は認められない(0)、カビの生育は肉眼では認められないが、顕微鏡下では認められる(1)、カビの生育は試料面積の25%以内(2)、カビの生育は試料面積の25~50%(3)、カビの生育は試料面積の50~100%以内(4)、菌糸の発育は激しく、試料全体を覆っている(5)として評価を行った。
表1~3に示されるように、防カビ試験の結果、コーティング膜が被膜されない試験片(コーティング膜なし)と比較して、本発明に係るコーティング膜が被膜された試験片(コーティング膜あり)は、カビの生育を抑制するとともに、カビ抵抗性に優れることが確認された。また、本発明に係るコーティング膜は耐光性にも優れることが確認された。これは図2,3に示されるように、コーティング膜115の表層面114a上に露出した状態で固定された有機抗ウイルス剤の有効成分を含有する粒子121,122が、カビの増殖を抑制しているものと推察される。
また、コーティング膜の防カビ効果の評価方法Bとして、JIS Z 2911:2018に基づき、グルコース/無機塩寒天培地上に試験片(コーティング膜なし,コーティング膜あり)をそれぞれ貼付し、上記方法Aと同一種の5菌株の混合胞子懸濁液を噴霧し、29±1℃、相対湿度95%以上で28日間培養し、試料片上のカビの生育を目視にて観察し、カビ抵抗性表示について評価を行った結果を表4に示す。また、それぞれ5つのサンプルに対して評価を行い、カビの抵抗性表示については、上記方法Aと同様指標にて評価を行った。
表4~6に示されるように、防カビ試験の結果、コーティング膜が被膜されない試験片(コーティング膜なし)と比較して、本発明に係るコーティング膜が被膜された試験片(コーティング膜あり)は、カビ抵抗性に優れることが確認された。これは図2,3に示されるように、コーティング膜115の表層面114a上に露出した状態で固定された有機抗ウイルス剤の有効成分を含有する粒子121,122が、カビの増殖を抑制しているものと推察される。
以上説明したように、本発明のコーティング液10(コーティング材)は、ポリシラザンとアルキルシリケート縮合物とを両者の合計として50~80質量%の濃度で、不活性溶剤により溶解されたコーティング剤をベース剤として、該ベース剤に抗ウイルス剤を0.1~20質量%の割合で添加してなることで、ポリシラザン及びアルキルシリケート縮合物により生成されるガラスコーティング被膜を母材として、当該被膜の表層に露出部を大きく確保した状態で抗ウイルス剤が安定状態で定着するため、このコーティング材によって被覆した被覆対象物の高い抗ウイルス効果を長期にわたり持続させることができる。なお、例えば樹脂製品に抗ウイルス剤を練り込んだ場合、抗ウイルス剤の大半が内部に埋設されてしまい表面に抗ウイルス剤を露出させることが難しく添加される抗ウイルス剤にロスが多いが、本発明に係るコーティング材により形成されるガラスコーティング被膜の表層には、抗ウイルス剤が露出部を大きく確保した状態で安定して定着するため、抗ウイルス剤の添加量を抑えつつ、高い抗ウイルス効果を発揮することができる。
本発明のコーティング材としてのコーティング液10は、ベース剤10Aとこのベース剤10Aに添加された添加剤10Bとから主として構成されている。先ずベース剤10Aは、原料として少なくとも無機ポリシラザンと、アルキルシリケート縮合物とを含有しており、本実施例2においては、これら無機ポリシラザン及びアルキルシリケート縮合物が不活性溶剤によって希釈されている。
また本実施例2のコーティング液10は、例えばガラス製又は樹脂製等の容器に封入された所定量の液体として運用されるものであり、当該液体を図示しない布材等に湿らせ、被覆対象となる各種の物品等の表面に塗布することで、コーティング被膜を形成する。なお、コーティング材の運用については、これに限らず、例えば予めコーティング液に含浸した不織布等を袋体に密封し、使用に際し当該袋体を開封するようにしてもよいし、あるいはコーティング液を被覆対象物の表面に霧吹き状に吹き付けて被覆しても構わない。
コーティング液10は、被覆対象となる物品1の表面2に塗布又は散布されることにより、水分と化学反応して単層又は複数層のコーティング膜15,35を形成する。なお、図13に示されるコーティング膜15は、マイクロレベルに成層される。また図14に示されるコーティング膜35は、ナノレベルの薄層に成層されるものであり、その膜厚として好ましくは1nm~500nmの被覆膜、より好適には5nm~200nmの被覆膜として成層したものである。
被覆対象物としては、樹脂材や金属材、木材、ゴム材、皮革等の素材から構成される各種の物品が適用可能であり、若しくは什器等の固定設置物であってもよく、例えば携帯端末やリモコンの操作部表面、机・テーブルの天板や引き出し、食器類、バッグや財布などの携行品、ドアノブや手すり、電車・バスのつり革、建設・仮設資材など、複数の人が接触する機会の多い物品が被覆対象物として好適である。
次に、本発明に係るコーティング膜15,35が形成されるメカニズムについて説明する。図12(a)に示されるように、被覆対象として例えば金属材からなる物品1の表面2には多くの場合、結露や空気中の湿気により例え僅かでも複数の水分6,6,‥(水滴)が付着している。この物品1の表面2にコーティング液10を薄膜状に塗布又は散布して被覆すると、コーティング液10に含まれるベース剤10Aを構成する無機ポリシラザンであるペルヒドロポリシラザンが、空気中の水分(H2O)と化学反応することで、物品1の表面2に無機構造を有する被覆層が生成される。なお、上記した化学反応で微量の気体(NH3,H2)が副次的に生成されるが、これらの気体は当然のことながら物品1の表面2に残らず大気中に揮発する。
図13に示されるように、物品1の表面2に被覆されたコーティング膜15の表面は、副生成物であるガスの気泡が揮発した箇所の跡に、コーティング膜15の表層面14a上にナノレベルで凹凸形状を成す凹凸部16が形成される。より詳しくは、上記した化学反応により水素やアンモニア等の気泡が多数生成され、これらの気泡がコーティング膜15の平滑な表層面14aから気中に向け放出される際に、気泡に接するコーティング膜15の表層面14aに生じる表面張力の影響、及び化学反応に伴うこの表層面14aの初期硬化のタイミングの影響が相俟って、当該平滑面にナノレベルの凹部16b及び凸部16aからなる凹凸部16を生成するものと想定される。なお、図12及び図13では凹凸部16の凹凸寸法を実寸よりもデフォルメして示し、図14では凹凸部16を省略している。
コーティング膜の抗菌・抗ウイルス効果の評価方法として、コーティング膜15,35を被膜した表面2に対し、経時的にATP(アデノシン三リン酸)拭取り検査を行い、ATPの数値に基づく評価を行った。ここでATPとは、地球上のあらゆる生物のエネルギー源として存在する化学物質であり、ATPが存在するということは、そこに菌・ウイルス自体若しくは菌・ウイルスの痕跡が存在している証拠と確認することができる。すなわちATPふき取り検査での数値が大きいほど、当該表面の汚染度が大きい(感染リスクが高い)と評価され、またATPふき取り検査での数値が小さいほど、当該表面の汚染度が小さい(感染リスクが低い)と評価される。
ATP拭取り検査結果を図16に示す。本発明に係るコーティング材が被覆された供試材(A)は、経時的にATPの増加がほぼ確認されず、他の供試材と比較して最も高い抗菌・抗ウイルス効果が持続していることが確認された。これは図13、14に示されるように、コーティング被膜15,35の表層面14a上に露出した状態で固定された無機の抗菌剤21、無機の抗ウイルス剤22及び有機の抗菌・抗ウイルス剤23が、外気中を飛沫や塵芥とともに飛来し表層面14aに付着しようとする菌やウイルスに直接に接触し、その定着を阻むように作用するため、表層面14a上を清浄に維持しているものと推察される。
以上説明したように、本発明のコーティング液10(コーティング材)は、無機ポリシラザンとアルキルシリケート縮合物とを両者の合計として50~80質量%の濃度で、不活性溶剤により溶解されたコーティング剤をベース剤10Aとして、該ベース剤10Aに無機抗菌剤21を0.1~5質量%、無機抗ウイルス剤22を0.1~20質量%の割合で添加してなることで、無機ポリシラザン及びアルキルシリケート縮合物により生成されるガラスコーティング被膜を母材として、このコーティング膜15,35の表層面14aに無機抗菌剤21及び無機抗ウイルス剤22が安定状態で定着するため、このコーティング液10によって被覆した物品1(被覆対象物)の抗菌効果と抗ウイルス効果を長期にわたり両立させることができる。
2 表面
3 凹凸部
6 水分
10 コーティング液(コーティング材)
10A ベース剤
10B 添加剤
11,12 被覆層
14a 表層面
14b 背層面
15,35 コーティング膜
16 凹凸部
16a 凸部
16b 凹部
17 アンカー部
21 無機の抗菌剤
22 無機の抗ウイルス剤
23 有機の抗菌・抗ウイルス剤
101 物品(被覆対象物)
102 表面
103 凹凸部
106 水分
110 コーティング液(コーティング材)
110A ベース剤
110B 添加剤
111,112 被覆層
114a 表層面
114b 背層面
115,135,145 コーティング膜
116 凹凸部
116a 凸部
116b 凹部
116c 離間部
116d アンカー部
116e 溝部
117 アンカー部
121,122 粒子(抗ウイルス剤)
S 隙間
Claims (10)
- ポリシラザンとアルキルシリケート縮合物とを両者の合計として50~80質量%の濃度で、不活性溶剤により溶解されたコーティング剤をベース剤として、該ベース剤に抗ウイルス剤を0.1~20質量%の割合で添加してなることを特徴とするコーティング材。
- 前記ポリシラザンは無機ポリシラザンであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング材。
- 前記抗ウイルス剤は有機抗ウイルス剤であることを特徴とする請求項2に記載のコーティング材。
- 更に抗菌剤を0.1~10質量%の割合で添加してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のコーティング材。
- ポリシラザンとアルキルシリケート縮合物とを両者の合計として50~80質量%の濃度で、不活性溶剤により溶解されたコーティング剤をベース剤として、該ベース剤に抗ウイルス剤を0.1~20質量%の割合で添加してなるコーティング材を、被覆対象物の表面に被覆する被覆工程を有することを特徴とするコーティング方法。
- 前記被覆工程は、前記被覆対象物の表面にSiO2を主成分とした母材となるコーティング膜を薄層に生成するとともに、前記コーティング膜の表層面に、前記抗ウイルス剤を表出させる工程であることを特徴とする請求項5に記載のコーティング方法。
- 前記被覆工程は、水分が付着した前記被覆対象物の表面に前記コーティング材を被覆し、該コーティング材に含まれる成分と前記被覆対象物の表面に付着した水分とを化学反応させることで、前記被覆対象物の表面にSiO2を主成分とした母材となるコーティング膜を生成するとともに、前記化学反応によって形成される前記コーティング膜の表層面の凹部に、前記抗ウイルス剤を表出させる工程であることを特徴とする請求項5に記載のコーティング方法。
- 前記被覆工程は、最大直径1μmの粒子からなる前記抗ウイルス剤が添加された前記コーティング材を、前記被覆対象物の表面に膜厚500nm以下に被覆する工程であることを特徴とする請求項6または7に記載のコーティング方法。
- 前記被覆工程よりも前に、前記被覆対象物の表面を除菌する除菌工程を有することを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載のコーティング方法。
- 前記被覆工程よりも前に、前記被覆対象物の表面に水分を付着させる前処理工程を有することを特徴とする請求項5ないし9のいずれかに記載のコーティング方法。
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