JP2022010761A - 電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法 - Google Patents

電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022010761000001
【課題】電気トリーの進展の程度を考慮したエポキシモールド電力機器の絶縁劣化の判定方法を提供する。
【解決手段】電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法は、エポキシモールド電力機器から生じる部分放電に係る電気信号を検知して、印加電圧位相角φと放電電荷量qとの関係であるφ-q分布を得る工程と、前記工程で得られたφ-q分布の結果から放電電荷量qに係る分散値Varを算出する工程と、分散値Varが所定の閾値を超えている場合にはエポキシモールド電力機器内に電気トリーが進展していると判定する工程とを有する。
【選択図】図10B

Description

変圧器や高圧盤などの受変電設備においては、寿命を予知したり、事故を未然に防止することが大切である。このため、受変電設備で起こる設備の劣化や事故につながる前兆的現象に注目し、事前に対策を行う予測保全がこれまでに提案されている。受変電設備で起こるこのような前兆の一つとして、受変電設備内の絶縁機能が低下した場合に発生する部分放電がある。
電力機器の絶縁体中にボイド等の欠陥が存在すると、部分放電が発生する。詳細には、欠陥における部分的な絶縁破壊に由来して、欠陥に印加される電圧が臨界電圧すなわち火花電圧を超えると、部分放電が発生する。この部分放電が繰り返されると最終的には絶縁体全体として絶縁破壊に至り、停電を初めとする送配電に支障を来す事態が発生するおそれがある。一方、この部分放電の検出のために送配電を停止するのは、極めて煩雑である。
そこで、送配電を停止することなく、すなわち活線状態で絶縁体の部分放電を検出するために、部分放電時に発生する超音波を検出することにより部分放電を検出する方法が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
特開2004-335953号公報
ところで、変圧器などの電力機器においては、絶縁材料として絶縁油が利用されるものの他、エポキシ樹脂などの固体絶縁材料が利用されるものが存在する。このような固体絶縁材料を有する電力機器の場合、部分放電が生じている状態が継続すると、絶縁材料が樹枝状に侵食されて電気トリーが生じる。この結果、絶縁耐力が低下し、最終的に全路破壊に至る。
ひとたび電力機器に電気トリーが発生すると、この電気トリーが消滅することはなく、時間を掛けながら進展する。電気トリーが充分進展すると、電力機器は近い将来において全路破壊が生じる可能性がある。通電状態の下で電力機器に全路破壊が生じると、地絡に伴う停電事故が生じるため、全路破壊は回避すべき事象である。
一方で、電力機器に電気トリーが生じている場合であっても、その進展の程度によっては、電力機器の交換作業が緊急を要するものであるものと、そこまで緊急を要しないものが存在する。電力機器の交換作業は、停電作業を伴うものである上、作業には不可避的にコストが発生する。更に、電力機器の数は膨大であるため、全ての電力機器に対して交換作業を行うのはおよそ現実的ではない。このため、交換の必要性が極めて高い電力機器を優先的に交換するのが好ましい。しかし、現時点において、これらの電力機器に関して、交換の必要性の高低についての順位付けを行う方法は知られていない。
本発明は、上記の課題に鑑み、電気トリーの進展の程度を考慮したエポキシモールド電力機器の絶縁劣化の判定方法を提供することを目的とする。
本発明は、エポキシモールド電力機器の電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法であって、
エポキシモールド電力機器から生じる部分放電に係る電気信号を検知して、印加電圧位相角φと放電電荷量qとの関係であるφ-q分布を得る工程(a)と、
前記工程(a)で得られた前記φ-q分布の結果から、前記放電電荷量qに係る分散値Varを算出する工程(b)と、
前記分散値Varが、少なくとも所定の閾値を超えている場合には、前記エポキシモールド電力機器内に電気トリーが進展していると判定する工程(c)とを有することを特徴とする。
本発明者の鋭意研究によれば、エポキシモールド電力機器内で電気トリーが進展する程度に部分放電が進行すると、φ-q分布から得られる放電電荷量qの分散値が極めて上昇することを見出した。すなわち、上記方法によれば、φ-q分布から得られる放電電荷量qの分散値Varの値が、所定の閾値を上回っていることを確認することで、エポキシモールド電力機器の絶縁劣化の程度が充分に進展している可能性が高いと判断できる。
エポキシモールド電力機器の絶縁部は、通常閉塞されているため、かかる絶縁部に発生している電気トリーの進展の程度は、通常、目視によって判断することができない。このため、仮に部分放電が生じていることまでは検知できたとしても、当該エポキシモールド電力機器が、優先的に交換作業が必要である程度にまで劣化しているのか、交換作業の優先度を低下させてもよい程度の劣化具合なのかを、知ることができない。
これに対し、上記の方法によれば、分散値Varが前記閾値を超える程度の値であることをもって、電気トリーの進展が検知できるため、エポキシモールド電力機器の劣化がある程度進行していることを認識できる。よって、この方法を用いることで、各現場のエポキシモールド電力機器の交換作業計画に役立てることができる。
また、上記の方法は、部分放電に係る電気信号を検知して、かかる電気信号に基づいてφ-q分布を計測し、この結果から演算によって分散値を求めることで実行できる。このため、判定作業の際に停電を伴うことなく、また簡易な設備を現場に持参するのみで実行できる。
具体的な一例として、前記工程(a)は、前記エポキシモールド電力機器の近傍にアンテナを設置する工程と、前記アンテナで電波信号を受信する工程とを含み、受信した前記電波信号の強度に基づいて前記φ―q分布を得る工程とすることができる。
また、別の一例として、前記工程(a)は、前記エポキシモールド電力機器の接地線を流れる電流を電流センサで計測する工程を含み、計測された電流の強度に基づいて前記φ―q分布を得る工程とすることができる。電流センサとしては、例えば高周波CTを利用できる。
前記所定の閾値としては、例えば150以上、250以下の所定値とすることができる。一例として、前記所定の閾値としては、200とすることができる。
本発明者の鋭意研究により、分散値Varが200を超えると、電気トリーのトリー長が1.5mm程度進展していることが推定できる。利用される電力の値によって変化するが、エポキシモールド電力機器に絶縁部材として用いられるエポキシモールド樹脂の厚みは、概ね5mm~15mm程度である。所定の閾値を上記の値とすることで、電気トリーのトリー長がエポキシモールド樹脂の厚みの10%~30%程度以上に達していることが検知できるため、機器交換の必要性が高いことを事前に検知でき、全路破壊が生じる危険性を未然に防ぐことができる。
なお、各現場に設置されたエポキシモールド電力機器に対して部分放電が生じているか否かの検知を行うことができる場合には、部分放電が生じている電力機器に対してのみ、上記方法を実行するものとしても構わない。
本発明によれば、交換の必要性が特に高いエポキシモールド電力機器を認定することができる。
エポキシモールド電力機器の電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法の一実施形態を模式的に示す図面である。 図1の態様を更に模式的に示すブロック図である。 エポキシモールド電力機器の電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法の一実施形態を模式的に示す図面である。 図3の態様を更に模式的に示すブロック図である。 実験系の構成を模式的に示す図面である。 部分放電を発生させるためのテストピースの構成を示す模式的な図面である。 マクロスコープによるテストピースの撮影画像である。 図6Aの撮像時点において、部分放電アナライザで検知された電流信号に基づくφ-q分布を示すグラフである。 マクロスコープによるテストピースの撮影画像である。 図7Aの撮像時点において、部分放電アナライザで検知された電流信号に基づくφ-q分布を示すグラフである。 マクロスコープによるテストピースの撮影画像である。 図8Aの撮像時点において、部分放電アナライザで検知された電流信号に基づくφ-q分布を示すグラフである。 φ-q分布の結果から得られた放電電荷量qに係る分散値Varと、電気トリー長との関係を示すグラフである。 実器5bで計測された電流信号に基づくφ-q分布を示すグラフである。 実器5cで計測された電流信号に基づくφ-q分布を示すグラフである。
本発明のエポキシモールド電力機器の電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法(以下、適宜「本判定方法」と略記する。)の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、各図において図面の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致しない。
図1は、本判定方法の実施形態の一例模式的に示す図面である。図1では、劣化診断の対象となるエポキシモールド電力機器が、キュービクル3内の変圧器5である場合が一例として示されている。
なお、エポキシモールド電力機器とは、絶縁体材料にエポキシモールド樹脂を含む絶縁性材料で構成された絶縁体を含む電力機器を指す。このような電力機器の一例としては、変圧器、開閉器、遮断器、ブッシングなどが挙げられる。
図1に示す実施形態では、本判定方法を実行する際に、アンテナ11、放電計測器12、及びコンピュータ13が利用される。図1では、アンテナ11は、キュービクル3内の変圧器5の近傍に設置される場合が図示されている。アンテナ11と放電計測器12とは、ケーブル10によって接続されている。キュービクル3の開閉扉4を閉じた状態でも、開閉扉4の隙間を通じてケーブル10をキュービクル3の外側に這わせることができる。なお、開閉扉4に隙間が全く存在しない場合には、開閉扉4を完全に閉鎖せずに、ケーブル10を通すことができる程度に隙間を開けておけばよい。
図2は、図1の構成を更に模式的に図示したブロック図である。放電計測器12は、波形分析部12a、位相分析部12b、及び表示部12cを有する。コンピュータ13は、演算処理部13a、情報出力部13b及び表示部13cを有する。
波形分析部12aは、アンテナ11で受信された電波信号から、所定の周波数帯の信号を抽出し、その強度を検出する演算手段である。エポキシモールド電力機器である変圧器5が部分放電を生じている場合には、数MHz帯~数十MHz帯(例えば、4MHz~40MHz)の電波信号を発することが知られている。このため、波形分析部12aは、アンテナ11で受信された電波信号に含まれる、上記周波数帯の信号の強度を検知する機能を有している。
受信した電波信号から、当該電波信号に含まれる上記周波数帯の信号の強度を検知する方法については、公知の技術が利用できる。例えば、信号をスペクトル分析することで、上記周波数帯の信号の強度を抽出しても構わないし、上記周波数帯以外の信号を遮蔽するフィルタを介することで、上記周波数帯の信号のみを抽出した上でその強度を検知するものとしても構わない。
位相分析部12bは、アンテナ11で受信された電波信号の電圧波形を分析する演算手段である。具体的には、電波信号が示す電圧値の時間的な変化を認識し、位相分析を行う。詳細には、位相分析部12bは、波形分析部12aで分析された電波信号に含まれる上記数十MHz帯の信号の位相角φ毎の強度を検知する。
表示部12cは、波形分析部12aによる分析結果や、位相分析部12bによる分析結果を視認させるためのモニタである。ただし、放電計測器12が表示部12cを備えるか否かは任意である。
演算処理部13aは、位相分析部12bにおいて分析された、位相角φ毎の電波信号の強度に基づき、位相角φに応じた放電電荷量qを導出してφ-q分布(「q-φ分布」とも称される。)を算定する。更に、このφ-q分布の結果に基づき、放電電荷量qに係る分散値Varを算出する。
更に、演算処理部13aは、算出した分散値Varを所定の閾値と比較し、その比較結果に基づいて、測定対象機器(図1の例であればキュービクル3内の変圧器5)の劣化の程度を示す情報を作成する。情報出力部13b及び表示部13cは、演算処理部13aによる演算結果を出力するための手段である。例えば、情報出力部13bは、有線又は無線によって他のコンピュータ、スマートフォン、プリンタに対して、演算結果に関する情報を出力する。また、表示部13cは、モニタで構成され、演算結果に関する情報を表示する。なお、放電計測器12が表示部12cを備えている場合には、この情報が表示部12cに出力されるものとしても構わない。
ここでいう演算結果としては、少なくとも測定対象機器(図1の例であればキュービクル3内の変圧器5)の劣化の程度を示す情報が含まれる。その他の情報としては、放電電荷量qに係る分散値Varが含まれても構わないし、φ-q分布に関する情報が含まれていても構わない。更には、分散値Varの値から推定された測定対象機器内で進行している電気トリーのトリー長の値が含まれていても構わない。
なお、放電計測器12が、演算処理部13aに相当する機能を有している場合には、本判定方法の実施に際してコンピュータ13を用いなくても構わない。
以下、本判定方法を実行する際の手順の一例について説明する。
(ステップS1)
アンテナ11を、診断対象となるエポキシモールド電力機器(ここでは変圧器5)の近傍に配置する。変圧器5が劣化して部分放電が生じている場合、変圧器5から所定の電波信号が発信されるため、この電波信号を受信可能な位置にアンテナ11が配置される。具体的には、アンテナ11の配置位置は、変圧器5の外表面から3m以内の領域であるのが好ましく、2m以内の領域であるのがより好ましい。このとき、アンテナ11を磁石などによって固定するものとしても構わない。
なお、図1に示すように、対象となる電力機器(変圧器5)が、キュービクル3のような筐体内に配置されている場合には、アンテナ11を筐体内に配置した上で、開閉扉4を閉じるのが好ましい。これにより、キュービクル3の外部に存在する環境電波の、アンテナ11による受信感度が低下するため、外乱による誤診断が抑制される。
(ステップS2)
アンテナ11と放電計測器12をケーブル10で接続し、アンテナ11によって受信した電波信号を放電計測器12に出力する。放電計測器12は、コンピュータ13との間で情報の入出力が可能なように接続される。放電計測器12とコンピュータ13とは有線接続でも無線接続でも構わない。
(ステップS3)
放電計測器12に設けられた波形分析部12aが、アンテナ11によって受信した電波信号のうち、数十MHz帯の信号を抽出する。その後、放電計測器12に設けられた位相分析部12bが、抽出された信号の位相角φ毎の強度を分析する。
(ステップS4)
コンピュータ13に設けられた演算処理部13aが、位相分析部12bによって分析された、位相角φ毎の信号強度に基づき、位相角φに応じた放電電荷量qを導出してφ-q分布を算定する。以上のステップS1~S4が工程(a)に対応する。
(ステップS5)
コンピュータ13に設けられた演算処理部13aが、φ-q分布の結果に基づいて、放電電荷量qに係る分散値Varを算出する。このステップS5が工程(b)に対応する。
(ステップS6)
コンピュータ13に設けられた演算処理部13aが、分散値Varの値と閾値Thとを比較する。演算処理部13aは、分散値Varが閾値Thを超えている場合には測定対象機器に電気トリーが進展しており劣化が進行していると判定する。このステップS6が工程(c)に対応する。
なお、図3に示すように、アンテナ11に替えて電流センサ11aを用い、接地線10aを流れる接地電流を測定するものとしても構わない。電流センサ11aとしては、高周波CTを利用することができる。この場合、図4に示すように、電流センサ11aで検出された接地電流に関する情報が、放電計測器12に出力される。放電計測器12に設けられた波形分析部12aが、電流センサ11aが検出した電流信のうち、数十MHz帯の信号を抽出する。以下は、上述した実施形態と共通である。
[検証]
以下、放電電荷量qに係る分散値Varによって、測定対象機器内に発生している電気トリーのトリー長が推定できる点につき、実験結果に基づいて説明する。
(検証1)
図5Aは、実験系の構成を示す模式的な図面である。試験空間30内に載置された試験台31上に、板状のテストピース33を収容した容器32を設置した。なお、テストピース33において沿面放電が生じないよう、容器32内に絶縁油を充填した状態でテストピース33が容器32内に収容された。
容器32は、透明なアクリル製である。容器32の外側に設置されたマクロスコープ38(ライカ社製Z16APO、ズームレンジ0.57倍~9.2倍)によって容器32内のテストピース33が観察・撮影された。なお、テストピース33は、絶縁シート41上に設置された。
試験空間30には電源Vccが接続された変圧器37が設置された。テストピース33には、変圧器37を介して60Hzで14~17kVの高電圧が印加された。テストピース33には接地線33aが接続されており、この接地線33aを流れる電流が高周波CT39(PRODYN社製I-125-1 HF、120kHz~600MHz)によって検知された。
高周波CT39によって検知された電流信号は、部分放電アナライザ34(総研電気社製DAC-PD-9、40kHz~40MHz)によって検知される。部分放電アナライザ34によって検知された電流信号は、テストピース33と同一ノードに接続されたカップリングコンデンサ35及び、このカップリングコンデンサ35に接続された位相同期器36によって、位相が検出される。すなわち、部分放電アナライザ34、カップリングコンデンサ35及び位相同期器36によって、放電計測器12が模擬されている。
図5Bは、部分放電を発生させるためのテストピース33の構成を示す模式的な図面である。エポキシ樹脂(ビスフェノールA型、充填剤無し)の小片51に針電極53を介して14~17kVの交流電圧が印加されたものが、テストピース33として利用された。なお、針電極53の先端には0.5mm程度の空隙(ボイド)が設けられ、小片51の接地側には導電性ペースト54を介してアルミニウム電極が配置され、テストピース33に対して平面方向に均一に電圧が印加されるように構成されている。テストピース33は、縦×横×奥行きが、30mm×20mm×5mmの寸法のものが用いられた。また、針電極53の先端からテストピース33の接地側の面(底面)までの距離は約3mmとされた。
図6A~図8Bは、上述した実験系を用いて行われた実験結果を示す写真及びグラフである。テストピース33に対して高電圧を印加し続けて意図的に部分放電を発生させ、テストピース33の経時的な変化の様子をマクロスコープ38によって撮影した。図6A、図7A、及び図8Aは、いずれもマクロスコープ38による撮影画像である。図6A、図7A、図8Aの順に時間が経過しており、この順に部分放電が進行している状況が模擬されている。詳細には、図6Aの状態が、実験開始直後の状態に対応し、図7Aの状態が、実験開始から15分経過後の状態に対応し、図8Aの状態が、実験開始から70分経過後の状態に対応する。
なお、この実験系では、テストピース33内において部分放電が高速で進展するように設定されているが、実際の対象機器(変圧器5)では、極めてゆっくりと部分放電が進展する。実際の変圧器5において、図6A、図7A、図8Aに示すように電気トリーが進展するには、数年~数十年の時間を要するのが一般的である。
図6B、図7B、及び図8Bは、それぞれ、図6A、図7A、及び図8Aの写真が撮像された時点において、部分放電アナライザ34で検知された電流信号に基づくφ-q分布を示すグラフである。
図6A、図7A、及び図8Aによれば、部分放電の発生が継続するに伴い、電気トリーが成長していることが確認される。図6Aの状態(以下、「状態M1」という。)では電気トリーがまだ発生していない。図7Aの状態(以下、「状態M2」という。)では、電気トリーが少し確認される(図中のTr2)。図8Aの状態(以下、「状態M3」という。)では、電気トリーの成長がかなり進展していることが確認される(図中のTr3)。
そして、図6B、図7B及び図8Bによれば、電気トリーの成長に伴い、位相角φに応じた放電電荷量qの値にバラツキが発生していることが分かる。
下記表1は、φ-q分布の結果から放電電荷量qに係る分散値Varを算出し、トリー長との対応関係を表にしたものである。図9は、表1をグラフ化したものである。なお、表1及び図9内に記載された符号M1,M2,M3は、それぞれ、上述した状態M1、状態M2、状態M3に対応する。
Figure 2022010761000002
表1及び図9によれば、電気トリーのトリー長が成長するに伴い、放電電荷量qに係る分散値Varの値が大きくなっていることが分かる。特に、図6A、図7A、及び図8Aの撮像画像に鑑みると、分散値Varが200を超えると部分放電が進展して電気トリーが成長し始めていることが分かる。上述したように、針電極53の先端からテストピース33の底面までの距離(電圧印加方向に係る厚み)が約3mmとされているため、分散値Varが200を超えると、トリー長がほぼ厚みの約50%程度に達すると推定される。
また、分散値Varが1000に達すると、電気トリーのトリー長がテストピース33の厚みの80%を超える長さに達する程度に電気トリーが進展しており、全路破壊に近い状態であることが分かる。
テストピース33に電気トリーが発生すると、電気トリーの先端部から部分放電が生じやすくなる。一方で、電気トリーの先端以外の根元箇所や途中の箇所からも部分放電が生じる。この結果、高電圧側と接地側との間の距離に変化が生じ、放電の強度にバラツキが生じるものと推察される。この結果、φ-q分布にバラツキが生じ、分散値が高まりを示す。
更に、電気トリーが進展すると、φ-q分布上に顕著な外れ値が確認される(図8B内の符号A1領域)。これは、絶縁破壊に至る手前の段階で微細な電気トリーが接地側に到達したことで、極めて大きな放電が生じたことによるものと考えられる。なお、電気トリーの一部の先端が接地側に到達しても、直ちに絶縁破壊には至らない。つまり、図8Bの状態では、絶縁破壊に達する手前の段階で踏みとどまっている状態であると考えられる。
このように、電気トリーがかなり進展すると、極めて大きな放電が生じることから、分散値Varの値が顕著に大きくなることが分かる。
分散値Varは、あくまで位相角φに応じた放電電荷量qの分布状態である「φ-q分布」における、放電電荷量qのバラツキの程度を示す値である。現場の変圧器5に対して印加される電圧の高低や、現場の変圧器5に内蔵されているエポキシモールド樹脂の(電圧印加方向に係る)厚みによって、位相角φに応じた放電電荷量qそのものの大きさは変化するが、バラツキの傾向には殆ど影響を及ぼさない。つまり、分散値Varの大きさによって、現場の変圧器5に実際に発生している電気トリーの成長の程度を把握することが可能である。
(検証2)
実際の現場に設置された変圧器5(実器)に対して、上述した本判定方法を用いて劣化の程度を検証した。検証は、異なる3箇所の現場に設置された変圧器5に対して行われた。以下では便宜上、それぞれの変圧器5を「実器5a」、「実器5b」、「実器5c」と称する。いずれの場合も、接地線10aを流れる接地電流を高周波CTによって測定した結果に基づきφ-q分布を計測し、この計測結果から分散値Varを算定した。なお、アンテナ11によって計測された電波信号に基づいてφ-q分布を計測しても構わないことは上述した通りである。
実器5aは、高周波CTによって放電に伴う接地電流が計測できなかった。このため、φ-q分布上には放電電荷量qの値が表示されず、分散値Var=0であった。この実器5aは、そもそも部分放電が発生していなかったものと推定される。
図10Aは、実器5bにおいて計測されたφ-q分布を示す結果である。図10Aで得られた実測値より算定した分散値Var=12であった。この結果と上記表1から、実器5b内で発生している電気トリー長は0.5mm未満であると推定される。実器5bの設計図面から、内蔵されたエポキシモールド樹脂の厚みは10mm程度であることが判明しているため、この実器5bは、劣化がそこまで進展しておらず、交換作業の優先度は低いことが分かる。
図10Bは、実器5cにおいて計測されたφ-q分布を示す結果である。図10Bで得られた実測値より算定した分散値Var=229であった。この結果と上記表1から、実器5b内で発生している電気トリー長は1.5mm程度であると推定される。実器5cの設計図面から、内蔵されたエポキシモールド樹脂の厚みは10mm程度であることが判明しているため、この実器5cは、厚みに対して10%以上、20%以下の長さの電気トリーが進展していることが分かる。この結果から、実器5bと比べて交換作業の優先度が高いことが分かる。
変圧器5に設けられたエポキシモールド樹脂の厚みは、変圧器5の電圧階級によって設定されるが、一般的には厚くても60mm以下であり、多くは5mm~15mm程度である。樹脂厚みに対して10%以上の電気トリーが進展している場合には、近い将来、全路破壊の危険性を有している。よって、φ-q分布上における放電電荷量qの分散値Varの値に応じて、機器の交換の必要性の高低が検知できる。
なお、分散値Varと比較される閾値Thの値は、現場に設置された変圧器5に設けられたエポキシモールド樹脂の厚みに応じて、適宜調整できるものとしても構わない。また、演算処理部13aは、分散値Varと閾値Thとの差分値の大きさに応じて、変圧器5の交換の必要性の程度を数値化し、情報出力部13bを介して表示部13c等に出力するものとしても構わない。
3 :キュービクル
4 :開閉扉
5 :変圧器
10 :ケーブル
10a :接地線
11 :アンテナ
11a :電流センサ
12 :放電計測器
12a :波形分析部
12b :位相分析部
12c :表示部
13 :コンピュータ
13a :演算処理部
13b :情報出力部
13c :表示部
30 :試験空間
31 :試験台
32 :容器
33 :テストピース
33a :接地線
34 :部分放電アナライザ
35 :カップリングコンデンサ
36 :位相同期器
37 :変圧器
38 :マクロスコープ
41 :絶縁シート
51 :小片
53 :針電極
54 :導電性ペースト

Claims (4)

  1. エポキシモールド電力機器から生じる部分放電に係る電気信号を検知して、印加電圧位相角φと放電電荷量qとの関係であるφ-q分布を得る工程(a)と、
    前記工程(a)で得られた前記φ-q分布の結果から、前記放電電荷量qに係る分散値Varを算出する工程(b)と、
    前記分散値Varが、所定の閾値を超えている場合には、前記エポキシモールド電力機器内に電気トリーが進展していると判定する工程(c)とを有することを特徴とする、電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法。
  2. 前記所定の閾値が200であることを特徴とする、請求項1に記載の、電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法。
  3. 前記工程(a)は、前記エポキシモールド電力機器の近傍にアンテナを設置する工程と、前記アンテナで電波信号を受信する工程とを含み、受信した前記電波信号の強度に基づいて前記φ―q分布を得る工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法。
  4. 前記工程(a)は、前記エポキシモールド電力機器の接地線を流れる電流を電流センサで計測する工程を含み、計測された電流の強度に基づいて前記φ―q分布を得る工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気トリー進展に伴う絶縁劣化の判定方法。
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