JP2022013153A - 光学フィルタ、光学素子、光学系および光学機器 - Google Patents

光学フィルタ、光学素子、光学系および光学機器 Download PDF

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Abstract

Figure 2022013153000001
【課題】フレアやゴーストを抑制でき、良好な色づき補正が可能な光学フィルタを提供する。
【解決手段】光学フィルタ10は、第1の側から第2の側へ順に配置された、第1の反射防止膜02と、入射した光の一部を吸収する吸収膜03とを有する。波長400nm以上700nm以下の光が第1の側から入射したときの光学フィルタの反射率をRa(%)、第2の側から入射したときの光学フィルタの反射率をRs(%)とし、Ra>Rsなる条件を満足する連続した波長帯域の長さをλrange(nm)とするとき、50≦λrange≦200なる条件を満足し、波長450nmの光に対する光学フィルタの透過率をT450(%)、波長650nmの光に対する光学フィルタの透過率をT650(%)とするとき、2≦|T450-T650|≦10なる条件を満足する。
【選択図】図1

Description

本発明は、光が入射する方向によって反射率が異なる光学フィルタに関する。
光学系において、レンズ等の光学素子が特定の波長の光を吸収することにより、透過した光が色づいてカラーバランスが変化する場合がある。特に、高分散ガラスを用いた光学系では透過光が黄色に色づく。
透過率が相対的に高い波長帯域の光は、その波長帯域の透過率を低減させる光学素子を光学系に設けることで、透過光の波長依存性が低くなり、カラーバランスを調整することができる。特許文献1には、透過光が黄色に色づくことを補正するために、長波長側の反射率を短波長側の反射率より大きくした光学素子が開示されている。また特許文献2には、長波長側の光を吸収することで、色づきを補正する光学素子が開示されている。
特開2005-062525号公報 特開2018-091918号公報
しかしながら、特許文献1に開示された光学素子は長波長側の反射率を大きくすることで透過光の色づきを補正するため、この光学素子を光学系に使用すると、フレアやゴーストを生じさせるおそれがある。また特許文献2に開示された光学素子は、吸収材料の消衰係数の波長依存性が、そのまま光学素子の色づき補正の特性になるため、必要な透過率を得るには吸収材料の消衰係数の波長依存性を調整する必要がある。しかし、適切な消衰係数を実現する材料が存在しなかったり、そのような材料が存在しても成膜条件をより厳しく管理する必要があるために作製が困難であったりする。
本発明は、フレアやゴーストを抑制でき、良好な色づき補正が可能な光学フィルタおよびそれを有する光学素子等を提供する。
本発明の一側面としての光学フィルタは、第1の側から第2の側へ順に配置された、第1の反射防止膜と、入射した光の一部を吸収する吸収膜とを有する。波長400nm以上700nm以下の光が第1の側から入射したときの光学フィルタの反射率をRa(%)、第2の側から入射したときの光学フィルタの反射率をRs(%)とし、Ra>Rsなる条件を満足する連続した波長帯域の長さをλrange(nm)とするとき、50≦λrange≦200なる条件を満足し、波長450nmの光に対する光学フィルタの透過率をT450(%)、波長650nmの光に対する光学フィルタの透過率をT650(%)とするとき、2≦|T450-T650|≦10なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記光学フィルタを有する光学素子、光学系および光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
本発明によれば、作製が容易で、フレアやゴーストを抑制でき、良好な色づき補正が可能な光学フィルタを提供することができる。
本発明の実施例である光学フィルタを有する光学素子の断面。 実施例の光学素子を用いた光学系の断面図。 本発明の実施例1、2および比較例1~3の光学フィルタに用いられる吸収層の屈折率と消衰係数を示す図。 (a)実施例1の光学フィルタにおける物体側と撮像素子側の反射率および(b)透過率を示す図。 実施例1、2および比較例1~3におけるCIELAB表色系の色座標を示す図。 (a)実施例2の光学フィルタにおける物体側と撮像素子側の反射率および(b)透過率を示す図。 実施例3の光学フィルタに用いられる吸収層の屈折率と消衰係数を示す図。 (a)実施例3の光学フィルタにおける物体側と撮像素子側の反射率および(b)透過率を示す図。 本発明の実施例4である光学フィルタを有する光学系の断面図。 実施例4の光学系(光学フィルタなし)の透過率を示す図。 実施例4の光学フィルタに用いられる吸収層の屈折率と消衰係数を示す図。 (a)実施例4の光学フィルタにおける物体側と撮像素子側の反射率および(b)透過率を示す図。 実施例4における光学系(光学フィルタあり/なし)のCIELAB表色系の色座標を示す図。 (a)比較例1の光学フィルタにおける物体側と撮像素子側の反射率および(b)透過率を示す図。 (a)比較例2の光学フィルタにおける物体側と撮像素子側の反射率および(b)透過率を示す図。 (a)比較例3の光学フィルタにおける物体側と撮像素子側の反射率および(b)透過率を示す図。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施例である光学フィルタを備えた光学素子100の断面を示している。光学素子100は、第1の透光性部材01と、光学フィルタ10と、第2の透光性部材05とを有する。光学フィルタ10は、第1の透光性部材01側(第1の側)から第2の透光性部材05側(第2の側)に順に、第1の反射防止膜02と、吸収膜03と、第2の反射防止膜04とを有する。第2の反射防止膜04は、第2の透光性部材05と接している。
第1の反射防止膜02と第2の反射防止膜04はそれぞれ、1以上の層(膜)により構成される薄膜として形成されている。各反射防止膜の層数を、波長帯域特性を拡大し、入射角度依存性を低減し、偏光依存性を低減するために増やしてもよい。
吸収膜03は、光を吸収する材料により形成されている。光学フィルタ10に入射した光は、吸収膜03の消衰係数と膜厚に応じて一部が吸収される。また、光学フィルタ10は、吸収膜03を用いることにより、光が第1の透光性部材01側から入射する場合と第2の透光性部材05側から入射する場合とで互いに異なる反射率特性を有する。
光学フィルタ10を有する光学素子100は、例えば撮像光学系内に、第1の透光性部材01側が像側(撮像素子側)となり、第2の透光性部材05側が物体側となるように配置される。この場合、物体側から光学素子100に入射した光が物体側に反射すると、その反射光は、光学フィルタ10よりも物体側に光を反射する部材がなければ像側に向かわないため、フレアやゴーストの原因にならない。
一方、像側から入射した光が像側に反射すると、その反射光は撮像面に達してゴーストやフレアの原因となる。つまり、光学素子100における物体側の反射率は大きくてもよいが、像側の反射率は小さい方が撮像光学系として好ましい。
実施例の光学フィルタ10は、吸収膜03による吸収特性と物体側から入射する光に対する反射特性がともに適切であることで、光学フィルタ10を有する光学系を透過する光の色づきを低減(補正)する。しかも、光学フィルタ10は、これに像側から入射する光に対しては低い反射率を有するため、ゴーストやフレアの発生を抑制することができる。
図2は、レンズとしての光学素子100と他のレンズ群101を有する撮像光学系200を通して物体(被写体)103を撮像する光学機器としての撮像装置300の構成を示している。撮像装置300は、物体103の光学像を形成する撮像光学系200と、光学像を撮像(光電変換)する撮像素子102とを有する。光学素子100は、撮像光学系200のうち持っても物体側に配置されている。光学フィルタ10は、光学素子100の物端側の面R1上および像側の面R2上のいずれに配置されてもよい。ただし、光学フィルタ10がいずれに配置される場合も、上述したように像側の反射率を物体側よりも低くする。
光学フィルタ10は、波長が400nm以上700nm以下の光が物体側から入射したときの反射率をRa(%)、像側から入射したときの光学フィルタの反射率をRs(%)とするとき、
Ra>Rs (1)
なる条件を満足する連続した波長帯域の長さλrange(nm)が、
50≦λrange≦200 (2)
なる条件を満足することが望ましい。すなわち、波長400nmから700nmのうち50nmから200nmの長さの連続した波長帯域λrangeでRa>Rsとなることが望ましい。この光学フィルタ10において、ゴーストやフレアの原因になる像側の反射率を、ゴーストやフレアの原因にならない物体側の反射率より低くした膜構成とすることで、ゴーストやフレアの発生を抑制することができる。
なお、条件式(2)の数値範囲を以下のように変更すると、より望ましい。
80≦λrange≦200 (2a)
また、条件式(2)の数値範囲を以下のように変更すると、さらに望ましい。
100≦λrange≦200 (2b)
また、光学フィルタ10は、波長450nmの光に対する該光学フィルタ10の透過率をT450(%)、波長650nmの光に対する透過率をT650(%)とするとき、
2≦|T450-T650|≦10 (3)
なる条件を満足することが望ましい。式(3)を満足することで、光学フィルタ10の長波長側の透過率T650を短波長側の透過率T450よりも低くなる場合がある。これにより、光学フィルタ10を光学系に適用した際に、光学系における透過率が相対的に高い波長領域の光が光学フィルタ10により吸収されて、カラーバランスを調整することができる。なお、光学フィルタ10の長波長側の透過率T650が短波長側の透過率T450よりも高くなってもよい。
なお、条件式(3)の数値範囲を以下のように変更すると、より望ましい。
2≦|T450-T650|≦8.5 (3a)
また、条件式(3)の数値範囲を以下のように変更すると、さらに望ましい。
2≦|T450-T650|≦7 (3b)
また、波長450nmの光と波長650nmの光が物体側から入射したときの光学フィルタ10の反射率をそれぞれRa650(%)、Ra450(%)とし、吸収膜03における波長450nmの光と波長650nmの光に対する消衰係数をそれぞれκ450、κ650とするとき、
(Ra650-Ra450)/(κ650/650-κ450/450 )>0 (4)
なる条件を満足することが望ましい。光学フィルタ10は、その吸収と反射の両方により色づきを補正する。式(4)は、物体側から入射した光の反射率が相対的に高い波長帯域と、吸収膜03により吸収される光が相対的に多い波長帯域とが一致していることを意味している。
さらに、吸収膜03のd線(波長587.56nm)に対する消衰係数をκとし、吸収
膜03の膜厚をd(nm)とするとき、
1≦κ・d≦9 (5)
なる条件を満足することが望ましい。波長λ(nm)の光が、消衰係数κ(λ)、膜厚dの吸収膜に入射した場合の透過率T(λ)は、光の吸収のみを考慮すると、以下の式(6)で与えられる。
T(λ)=exp(-4πκ(λ)・d/λ) (6)
式(6)から、κ・dが大きくなると光学フィルタ10の透過率が小さくなることが分かる。透過率が小さくなると、光学素子100を使用した光学系が暗くなり、この光学系は撮像光学系としては不適切となる。一方、κ・dを小さくするには、消衰係数κもしくは膜厚dを小さくすればよいが、吸収膜03をκもしくはdをより小さく作製することは難しい。
なお、条件式(5)の数値範囲を以下のように変更すると、より望ましい。
1.5≦κ・d≦7 (5a)
また、条件式(5)の数値範囲を以下のように変更すると、さらに望ましい。
2≦κ・d≦5 (5b)
また、
0.01≦κ≦1.00 (7)
なる条件を満足することが望ましい。吸収膜03を蒸着やスパッタ等のドライ成膜で作製する場合、消衰係数κは、導入する酸素の量に依存する。酸素の量が多すぎると、吸収が0になる。このため、消衰係数が0.01未満の吸収膜を成膜する場合は、導入する酸素量を高い精度で制御する必要があり、再現性良く成膜することが困難になる。また、消衰係数が1.00より大きいと、必要な特性を実現するための膜厚が非常に薄くなるため、膜厚の制御が困難になる。
なお、条件式(7)の数値範囲を以下のように変更すると、より望ましい。
0.05≦κ≦0.60 (7a)
また、条件式(7)の数値範囲を以下のように変更すると、さらに望ましい。
0.10≦κ≦0.30 (7b)
吸収膜03を形成する材料の例としては、チタン酸化物、ニオブ酸化物およびタンタル酸化物等の金属酸化物が挙げられる。例えば、チタン酸化物には、チタン原子数と酸素原子の比率によりTiO、Ti2O、Ti、Ti、TiO等がある。TiOは、可視光をほとんど吸収しないが、チタン原子における酸素原子の比をTiOよりも減らしたTiO、TiO、Ti、Ti等は可視光を吸収する。これらのチタン酸化物における光の吸収は長波長帯域において大きくなる傾向がある。一方、ニオブ酸化物やタンタル酸化物においても、金属原子における酸素の比を減らすと可視光を吸収する。これらの金属酸化物における光の吸収は、短波長帯域において大きくなる傾向がある。
金属原子における酸素原子の比は、成膜時の酸素ガスの導入量と基板の加熱温度により調整することができる。酸素ガスの導入量が多いほど、また基板の加熱温度が高いほど、消衰係数は小さくなる。
第1の透光性部材01および第2の透光性部材05の材料は、どちらか一方は空気であり、他方はガラスやプラスチック等の透光性部材であることが望ましい。図2は、各透光性部材の形状として曲面(球面)形状を示したが、平面形状であってもよいし、曲面は球面でも非球面でもよい。
各反射防止膜を形成する方法としても、蒸着やスパッタ等のドライ成膜が望ましいが、その他に、めっき法やスピンコート等のウェットプロセス法を用いてもよい。
以下、具体的な実施例(実験結果)について説明する。
表1は、実施例1の光学フィルタの膜構成を示す。実施例1の光学フィルタでは、第1の透光性部材(透明材料)01に硝材S-BSL7(OHARA社製)を用い、第2の透光性部材(透明材料)05として空気を用いた。第1の反射防止膜(反射防止層)02は、誘電体材料である中間屈折率膜M1と高屈折率膜H1を第1の透光性部材01側からM1,H1、M1の順で積層して構成され、第2の反射防止膜(反射防止層)04は中間屈折率膜M1と高屈折率膜H1と低屈折率膜L1を吸収層03側からこの順で積層して構成されたものである。M1、H1およびL1は、波長400nmから700nmの光に対する屈折率nM1、nH1およびnL1がnL1<nM1<nH1の関係にあり、いずれも光を実質的に吸収しない材料により形成されたものである。
本実施例では、図2に示すように、光学フィルタを有する光学素子100を撮像光学系における最も物体側に配置して使用する。さらに、光学フィルタを、光学素子100の物体側の面R1上に配置した。つまり、物体側に空気を、像側に基板としての硝材S-BSL7を配置した。
また本実施例では、吸収膜(吸収層)03に、Tiを主成分とする蒸着材料OS-50(キヤノンオプトロン株式会社製)を蒸着することにより成膜したチタン酸化物を使用した。酸素ガス流量は30sccm、基板加熱温度は200℃とした。図3は、吸収膜03の波長400nmから700nmの光に対する屈折率(実線)と消衰係数(破線)を示す。図3および表1から分かるように、吸収膜03は式(5)、(7)を満足する。
ガラス材料は、可視光をわずかに吸収する。ガラス材料には、その分散が大きくなるほど短波長側の光の吸収が大きくなる傾向がある。このため、高分散ガラスを用いた光学系では、これを透過する光が黄色く色づく。本実施例の光学フィルタは、この黄色い色づきを補正するために使用される。
図4(a)の実線は、本実施例の光学フィルタにおける空気側(物体側)から入射した波長400nmから700nmの光に対する反射率を示し、破線は基板側(撮像素子側)から入射した上記光に対する反射率を示す。図4(a)から分かるように、本実施例の光学フィルタは、式(1)、(2)を満足する。
また、図4(b)は、本実施例の光学フィルタの波長400nmから700nmの光に対する透過率を示す。図4(b)から分かるように、波長650nmの光に対する透過率と波長450nmの光に対する透過率との差は3.1%であり、式(3)を満足する。さらに、図3に示した消衰係数と図4(b)とから分かるように、式(4)も満足する。
撮像素子側の反射率は400nmから700nmの波長範囲で1%以下の低反射率であり、物体側の反射率は長波長側で2%以上ある。本実施例の光学フィルタの物体側には、撮像素子側からの光を反射する部材が存在しないため、物体側の反射率が高くても、ゴーストやフレアの原因にはならない。
光学系を透過した光の色味を数値的に表すため、CIELAB表色系を用いる。CIELAB表色系は、国際照明委員会(CIE)により定められた、色を定量的に記述する手法である。色の値の同じ変化が、人間が見たときに感じられる変化と等しくなるように変換される。CIELAB表色系では、明度L*、色相a*、彩度b*の3座標で表すが、特に色相a*と彩度b*は色座標(a*、b*)と表し、色の方向を意味している。+aは赤方向、-aは緑方向、+bは黄色方向、-bは青方向を示す。色座標(a*、b*)の計算には、標準の光であるD65を用いた。
図5は、本実施例の光学フィルタを透過した光(以下、透過光という)のCIELAB表色系の色座標(a*、b*)を示す。本実施例における透過光の色座標は、(a*、b*)=(-0.1、-1.3)であり、これを黒丸●で示す。本実施例の光学フィルタは、透過光を黄色の反対色である青色の方向に1.3だけ補正するように構成されている。よって、この光学フィルタを光学系に適用することで、光学系を透過した光が黄色に色づくことを抑制することができる。
Figure 2022013153000002
表2は、実施例2の光学フィルタの膜構成を示す。本実施例の光学フィルタの材料は実施例1の光学フィルタと全て同じである。本実施例では、光学フィルタを、図2に示す光学素子100の像側の面R2上に設けた。つまり、物体側に基板としての硝材S-BSL7を配置し、像側に空気を配置した。
図6(a)の実線は、本実施例の光学フィルタにおける空気側(撮像素子側)から入射した波長400nmから700nmの光に対する反射率を示し、破線は基板側(物体側)から入射した上記光に対する反射率を示す。図6(a)から分かるように、本実施例の光学フィルタは、式(1)、(2)を満足する。
また、図6(b)は、本実施例の光学フィルタの波長400nmから700nmの光に対する透過率を示す。図6(b)から分かるように、波長650nmの光に対する透過率と波長450nmの光に対する透過率との差は2.6%であり、式(3)を満足する。さらに、図3に示した消衰係数と図6(b)とから分かるように、式(4)も満足する。
本実施例でも、撮像素子側の反射率は400nmから700nmの波長範囲で1%以下の低反射率であり、物体側の反射率は像側の反射率よりも大きい。本実施例の光学フィルタの物体側には、光学素子100の物体側の面R1が存在する。しかし、撮像光学系において最も物体側に配置される光学素子(レンズ)の像側の面R2の開角は大きい場合が多い。このため、像側の面R2で物体側に反射した光が、物体側の面R1で再度反射して撮像素子102に到達することはほとんどなく、ゴーストやフレアの原因にもほとんどならない。
図5には、本実施例の光学フィルタの透過光の色座標(a*、b*)を黒三角▲で示す。本実施例における透過光の色座標は、(a*、b*)=(-0.1、-0.8)であった。本実施例の光学フィルタは、透過光を青方向に0.8補正できるため、この光学フィルタを光学系に適用することで、光学系を透過した光が黄色に色づくことを抑制することができる。
なお、本実施例の光学フィルタは基板側を物体側に配置し、空気側を撮像素子側に配置したが、実施例1のように基板側を撮像素子側に配置した方がより性能が高い光学フィルタが得られる。
Figure 2022013153000003
表3は、実施例3の光学フィルタの膜構成を示す。本実施例の光学フィルタでは、第1の透光性部材(透明部材)01は硝材S-BSL7(OHARA社製)を用い、第2の透光性部材(透明部材)05として空気を用いた。第1の反射防止膜(反射防止層)02および第2の反射防止膜(反射防止層)04はそれぞれ、実施例1と同様に構成した。
本実施例では、図2に示すように、光学フィルタを有する光学素子100を撮像光学系における最も物体側に配置し、光学フィルタを光学素子100の物体側の面R1上に配置した。つまり、物体側に空気を、像側に基板としての硝材S-BSL7を配置した。
また本実施例では、吸収膜(吸収層)03に、Nbを用いた。酸素ガス流量は30sccm、基板加熱温度は200℃とした。図7は、吸収膜03の波長400nmから700nmの光に対する屈折率(実線)と消衰係数(破線)を示す。図7および表3から分かるように、吸収膜03は式(5)、(7)を満足する。
なお、Nbと同等の消衰係数を有する膜であれば、材料はNb以外であってもよい。
本実施例の光学フィルタは、光学系の透過光の青い色づきを補正するために使用される。
図8(a)の実線は、本実施例の光学フィルタにおける空気側(物体側)から入射した波長400nmから700nmの光に対する反射率を示し、破線は基板側(撮像素子側)から入射した上記光に対する反射率を示す。図8(a)から分かるように、本実施例の光学フィルタは、式(1)、(2)を満足する。
また、図8(b)は、本実施例の光学フィルタの波長400nmから700nmの光に対する透過率を示す。図8(b)から分かるように、波長650nmの光に対する透過率と波長450nmの光に対する透過率との差は4.9%であり、式(3)を満足する。さらに、図7に示した消衰係数と図8(b)とから分かるように、式(4)も満足する。
図5には、本実施例の光学フィルタの透過光の色座標(a*、b*)を黒四角■で示す。本実施例における透過光の色座標は、(a*、b*)=(0.8、1.7)であった。本実施例の光学フィルタは、透過光を黄色方向に1.7補正する。すなわち、この光学フィルタを光学系に適用することで、光学系を透過した光が青色に色づくことを抑制することができる。
Figure 2022013153000004
図9は、実施例4の光学フィルタを用いた光学系400の断面を示す。図9において、左側が物体側であり、右側が撮像素子側である。光学系400は、デジタルスチルカメラ等の撮像装置に用いられる撮像光学系である。
図9において、401は撮像面であり、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子または銀塩フィルムが配置される。402は絞りである。G401からG411はレンズである。
この光学系400では、光学性能を向上するために、多数のレンズを使用している。多数のレンズを使用すると、短波長側の光がガラスにより吸収され、光学系400を透過する透過光の黄色い色付きが発生する傾向がある。
図10は、光学系400において、ガラスによる吸収のみを考慮した場合の透過率の波長特性を示す。図10では、各ガラスの表面での反射とガラス以外の媒質による光の吸収がないものとしている。図10から分かるように、ガラスによる吸収のみを考慮した場合の透過率は短波長側において小さくなっており、透過光が黄色く色づく。そこで、光学系400に実施例1、2の光学フィルタを有する光学素子をレンズとして用いることで、透過光の色づきを補正する。
表4は、実施例4の光学フィルタの膜構成を示す。本実施例の光学フィルタでは、第1の透光性部材(透明材料)01に硝材S-LAL14(OHARA社製)を用い、第2の透光性部材(透明材料)05として空気を用いた。第1の反射防止膜(反射防止層)02および第2の反射防止膜(反射防止層)04は、実施例1と同様に、吸収のない誘電体材料であるM1、H1およびL1を用いて構成した。実施例4の光学フィルタを有する光学素子は、図10に示した最も物体側のレンズG401であり、光学フィルタはレンズG401の物体側の面R1上に配置した。
吸収膜(吸収層)03には、実施例1と同様に、蒸着材料OS-50を蒸着することにより成膜したチタン酸化物を使用した。実施例1よりも吸収の量を多くするため、酸素ガス流量は25sccm、基板加熱温度は200℃とした。図11は、吸収膜03の波長400nmから700nmの光に対する屈折率(実線)と消衰係数(破線)を示す。図11および表4から分かるように、吸収膜03は式(5)、(7)を満足する。
図12(a)の実線は、本実施例の光学フィルタにおける空気側(物体側)から入射した波長400nmから700nmの光に対する反射率を示し、破線は基板側(撮像面側)から入射した上記光に対する反射率を示す。図12(a)から分かるように、本実施例の光学フィルタは、式(1)、(2)を満足する。
また、図12(b)は、本実施例の光学フィルタの波長400nmから700nmの光に対する透過率を示す。図12(b)から分かるように、波長650nmの光に対する透過率と波長450nmの光に対する透過率との差は5.2%であり、式(3)を満足する。さらに、図11に示した消衰係数と図12(b)とから分かるように、式(4)も満足する。
図13は、CIELAB表色系の色座標(a*、b*)を示す。白丸〇は、光学系400においてガラスによる吸収のみを考慮した場合の色座標であり、(a*、b*)=(-0.7、1.9)である。このことから、短波長側が吸収され、透過光が黄色く色づいていることがわかる。一方、黒丸●は、実施例4の光学フィルムの透過率から導きかれた色座標であり、(a*、b*)=(-0.4、-1.9)である。このことから、長波長側の光を吸収および反射させることで、透過光が青く色づくように調整されていることが分かる。
実施例4の光学フィルタを光学系400のレンズG401に設け、光学系400の色味を調整した結果としての色座標をバツ印×で示し、(a*、b*)=(-1.1、0)である。このことから分かるように、実施例4の光学フィルタにより、黄色みを帯びていた透過光の色づきが補正できた。
以下に、図9に示した光学系400の数値実施例を示す。面データにおいて、rは各光学面の曲率半径、d(mm)は第i面と第(i+1)面との間の軸上間隔(光軸上の距離)を表す。iは光入射側(物体側)から数えた面の順番を示す。ndは各光学部材のd線(589.294nm)に対する屈折率であり、νdは各光学部材の材料のd線を基準としたアッベ数である。アッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、νd=(Nd-1)/(NF-NC)で表される。
なお、本発明の実施例としての光学系は、図9に示した光学系400のような撮像光学系に限らず、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡等の観察用光学機器の光学系であってもよいし、プロジェクタ等の投射用光学機器の投射光学系であってもよい。
(数値実施例)
単位mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 60.187 2.8 1.6968 55.53
2 30.193 6.186
3 59.602 2.3 1.6935 50.8
4 91.983 6.55
5 194.761 4.528 1.6779 55.33
6 -97.779 3.676
7 80.907 2.8 1.8515 40.78
8 666.22 1.7 1.496999 81.61
9 23.755 11.635
10 31.225 7.371 1.804 46.58
11 -57.233 0.15
12 -409.276 1.886 1.72 50.23
13 39.492 5.035
14 (絞り) 8.181
15 -16.104 1.5 1.804 46.58
16 2532.956 3.473 1.834807 42.72
17 -34.039 0.15
18 -190.746 7.008 1.618 63.33
19 -23.481 0.15
20 -74.015 5.104 1.772499 49.6
21 -29.342

各種データ
焦点距離 24.4
Fナンバー 1.45
半画角(°) 41.4
Figure 2022013153000005
以上説明したように、各実施例によれば、フレアやゴーストを抑制でき、良好な色づき補正が可能な光学フィルタを実現することができる。
(比較例1)
表1は、比較例1の光学フィルタの膜構成を示している。本比較例の光学フィルタの材料は実施例1の光学フィルタとすべて同じであるが、本比較例は吸収層の吸収のみで色補正フィルタを作成した例を示している。
図14(a)の実線は、本比較例の光学フィルタにおける空気側(物体側)から入射した波長400nmから700nmの光に対する反射率を示し、破線は基板側(撮像素子側)から入射した上記光に対する反射率を示す。本比較例の物体側および撮像素子側の反射率は、400から700nmにおいて1%以下と非常に低い。図14(b)は、本比較例の光学フィルタの波長400nmから700nmの光に対する透過率を示す。本比較例の波長650nmの光に対する透過率と波長450nmの光に対する透過率との差は1.2%であり、式(2)を満足しない。
図5は、本比較例の光学フィルタを用いた透過光のCIELAB表色系の色座標(a*、b*)を白丸〇で示す。本比較例の色座標は(a*、b*)=(-0.1、-0.4)である。このことから分かるように、本比較例の光学フィルタは、透過光の色づきを青色方向に補正することができるが、補正量が実施例1の3分の1以下と非常に小さい。つまり、実施例1と同材料の吸収材料の吸収のみでも色補正が可能であるものの、補正量は非常に小さい。
(比較例2)
表1は、比較例2の光学フィルタの膜構成を示している。本比較例の光学フィルタの材料は実施例1の光学フィルタとすべて同じであるが、本比較例でも比較例1と同様に吸収層の吸収のみで色補正フィルタを作成した。本比較例は、式(1)~(3)を満足するが、式(5)を満足しない例である。
図15(a)の実線は、本比較例の光学フィルタにおける空気側(物体側)から入射した波長400nmから700nmの光に対する反射率を示し、破線は基板側(撮像素子側)から入射した上記光に対する反射率を示す。本比較例の物体側および撮像素子側の反射率は、400から700nmにおいて1%以下と非常に低い。図15(a)から分かるように、本比較例2の光学フィルタは、式(1)、(2)を満足する。
図15(b)は、本比較例の光学フィルタの波長400nmから700nmの光に対する透過率を示す。本比較例の波長650nmの光に対する透過率と波長450nmの光に対する透過率との差は3.7%であり、式(3)を満足する。ただし、上述したように、本比較例は式(5)を満足しない。
図5には、本比較例の光学フィルタを用いた透過光のCIELAB表色系の色座標(a*、b*)を白菱形◇で示す。本比較例の色座標は(a*、b*)=(-0.6、-1.4)であり、透過光を実施例1と同等レベルまで青色方向に補正することができる。ただし、図15(b)に示すように、透過率が波長400~700nmの範囲で80%以下である。つまり、本比較例の光学フィルタを使用すると、実施例1の光学フィルタを使用する場合と比較して透過率が低下する。よって、本比較例の光学フィルタよりも実施例1の光学フィルタを採用することが望ましい。
(比較例3)
表1は、比較例3の光学フィルタの膜構成を示している。本比較例の光学フィルタは、吸収層を用いず、反射率のみを利用した色味補正フィルタである。また本比較例の光学フィルタは、第1の反射防止膜(反射防止層)をL1のみにより構成し、第2の反射防止膜(反射防止層)をそれぞれ1層のH1とM1により構成した。本比較例は、式(1)~(3)を満足するが、吸収層を持たない例である。
図16(a)の実線は、本比較例の光学フィルタにおける空気側(物体側)から入射した波長400nmから700nmの光に対する反射率を示す。本比較例の光学フィルタは、誘電体多層膜であるため、光の入射方向によらず反射率は同じである。図16(a)から分かるように、本比較例の光学フィルタは、式(1)、(2)を満足する。
図16(b)は、本比較例の光学フィルタの波長400nmから700nmの光に対する透過率を示す。本比較例の波長650nmの光に対する透過率と波長450nmの光に対する透過率との差は4.1%であり、式(3)を満足する。ただし、上述したように本比較例の光学フィルタは吸収層を持たない。
図5は、本比較例の光学フィルタを用いた透過光のCIELAB表色系の色座標(a*、b*)をバツ印×で示す。本比較例の色座標は(a*、b*)=(-0.5、-1.4)であり、透過光を実施例1と同等レベルまで青色方向に補正することができる。しかし、図16(a)に示すように、光の入射方向にかかわりなく、反射率が長波長ほど大きくなり、波長650nm以上では3.5%以上になる。このため、撮像面側から入射した光がゴーストやフレアの原因になることおそれがある。よって、本比較例の光学フィルタを色補正フィルタとしては不適である。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
01 第1の透光性部材
02 第1の反射防止膜
03 吸収層
04 第2の反射防止膜
05 第2の透光性部材
10 光学フィルタ

Claims (11)

  1. 第1の側から第2の側へ順に配置された、第1の反射防止膜と、入射した光の一部を吸収する吸収膜とを有する光学フィルタであって、
    波長400nm以上700nm以下の光が前記第1の側から入射したときの前記光学フィルタの反射率をRa(%)、前記第2の側から入射したときの前記光学フィルタの反射率をRs(%)とし、
    Ra>Rs
    なる条件を満足する連続した波長帯域の長さをλrange(nm)とするとき、
    50≦λrange≦200
    なる条件を満足し、
    波長450nmの光に対する前記光学フィルタの透過率をT450(%)、波長650nmの光に対する前記光学フィルタの透過率をT650(%)とするとき、
    2≦|T450-T650|≦10
    なる条件を満足することを特徴とする光学フィルタ。
  2. 波長450nmの光と波長650nmの光が前記第1の側から入射したときの前記光学フィルタの反射率をそれぞれRa650(%)、Ra450(%)とし、前記吸収膜における前記波長450nmの光と波長650nmの光に対する消衰係数をそれぞれκ450、κ650とするとき、
    (Ra650-Ra450)/(κ650/650-κ450/450 )>0
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
  3. 前記吸収膜の膜厚をd(nm)とし、d線に対する前記吸収膜の消衰係数をκとするとき、
    1≦κ・d≦9
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルタ。
  4. d線に対する前記吸収膜の消衰係数をκとするとき、
    0.01≦κ≦1.00
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  5. 前記吸収膜は、チタン酸化物、ニオブ酸化物およびタンタル酸化物のうちいずれかにより形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  6. 前記吸収膜よりも前記第2の側に第2の反射防止膜が配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の光学フィルタと、
    基板とを有することを特徴とする光学素子。
  8. 請求項7に記載の光学素子を有し、物体の像を形成することを特徴とする光学系。
  9. 前記第2の側が物体側であり、前記第1の側が像側となるように前記光学フィルタが配置されていることを特徴とする請求項8に記載の光学系。
  10. 前記光学素子が最も物体側に配置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の光学系
  11. 請求項8から10のいずれか一項に記載の光学系と、
    該光学系により形成された像を受光する撮像素子とを有することを特徴とする光学機器。
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