[ポリフェノール鉄錯体カプセル]
以下、第一の実施形態のポリフェノール鉄錯体カプセルについて詳しく説明する。第一の実施形態に係るポリフェノール鉄錯体カプセルは、ポリフェノール鉄錯体がアルギン酸ゲルに封入されてなるものである。
「ポリフェノール鉄錯体」とは、前述の特許文献1~7に記載される、ポリフェノール類又はその供給原料と、鉄供給原料と、を水存在下にて混合することによって得られた反応生成物であって、二価鉄イオン(Fe2+)がポリフェノール類と錯体構造を形成してなるものである。
「ポリフェノール類」とは、複数のヒドロキシ基を有するフェノール性分子の総称である。ほとんどの植物に含有される化合物であり、フラボノイドやフェノール酸など様々な種類が知られている。
具体的な化合物の例としては、カテキン(エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなど)、タンニン酸、タンニン、クロロゲン酸、カフェイン酸、ネオクロロゲン酸、シアニジン、プロアントシアニジン、テアルビジン、ルチン、フラボノイド(ケルシトリン、アントシアニン、フラバノン、フラバノール、フラボノール、イソフラボンなど)、フラボン、カルコン類(ナリンゲニンカルコンなど)、キサントフィル、カルノシン酸、エリオシトリン、ノビレチン、タンジェレチン、マグノロール、ホノキオール、エラグ酸、リグナン、クルクミン、クマリン、カテコール、プロシアニジン、テアフラビン、ロズマリン酸、キサントン、ケルセチン、レスベラトロール、没食子酸、フロロタンニン、などが挙げられる。また、分子内にこれらの化合物を1以上有する化合物(例えば、これらの化合物を含む形で結合し高分子化した複合体)も挙げることができる。
第一の実施形態における「ポリフェノール類」は、上記のうち1種のみであってもよく、2種以上からなる組成物であってもよい。
また、ある植物体から抽出したポリフェノール組成物については、その植物体の名称を付したポリフェノールとして呼ぶこともある。例えば、ブドウから抽出したポリフェノール類はブドウポリフェノールと呼ばれる。
「ポリフェノール類の供給原料」としては、ポリフェノール類を含有する植物体(以下、「ポリフェノール含有植物体」と呼ぶ。)又はその加工品を用いることができる。ここで、「植物体」としては、植物体の果実、種子、茎、葉、外皮、芽、花、根、及び地下茎から選ばれる1以上を挙げることができる。
「ポリフェノール含有植物体」としては、例えば、ハーブ類(ラベンダー、ミント、コリアンダー、クミン、セージ、レモングラス、ヨモギ、コンフリー、シソ、レモンバーム、オレガノ、キャットニップ、コモンタイム、ディル、ダークオパール、バジル、ヒソップ、ペパーミント、ラムズイヤーなど)、ドクダミ、マリゴールド、ブドウ、コーヒー(コーヒーノキ)、茶(チャノキ)、カカオ、アカシア、スギ、マツ、サトウキビ、マンゴー、バナナ、パパイア、アボカド、リンゴ、サクランボ(桜桃)、グァバ、オリーブ、イモ類(サツマイモ、紫イモ(紫色素を多く含有するサツマイモ)、ジャガイモ、ヤマイモ、タロイモ(サトイモ、エビイモなど)、コンニャクイモなど)、柿(カキノキ)、クワ、ブルーベリー、ポプラ、イチョウ、キク、ヒマワリ、竹、柑橘類(レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、ネーブル、ゆず、きんかん、かぼす、夏みかん、はっさく、いよかん、ライム、温州ミカン、シークヮーサー、マンダリンなど)、イチゴ、ブラックベリー、クランベリー、ラズベリー、ビルベリー、ハックルベリー、ウメ、桃、スモモ、ナシ、西洋ナシ、ビワ、キウイフルーツ、マンゴスチン、シシトウ、プルーン、メロン、ドラゴンフルーツ、クコ、カシス、カシュー、ガマズミ、ザクロ、アサイー、アロニア、ナス、トマト、大豆、黒大豆、小豆、サヤインゲン、落花生、黒胡麻、蕎麦、ダッタンソバ、ゴマ、紫キャベツ、ウルシ、ヌルデ、シュンギク、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、ミツバ、オクラ、蕗、タマネギ、モロヘイヤ、シュンギク、ニンニク、紫タマネギ、アスパラガス、パセリ、ユーカリ、ウド、ギムネマ・シルベスタ、センナ、タンポポ、スギナ、シダ(ワラビ、ゼンマイなど)、ナラ、クヌギ、カエデ、セコイヤ、メタセコイヤ、ヒノキ、アカメガシワ、タカノツメ、アマチャ、アケビ、ヤマウコギ、リョウブ、タムシバ、コブシ、サルナシ、シロモジ、クロモジ、コシアブラ、クサギ、ホオノキ、マタタビ、バナバ、ルイボス、ラフマ、クズ、メグスリノキ、ウリン、メルバオ、アオギリ、スオウ、ブラジルボク、メリンジョ、サクラ、モクレン、イェルバ・マテ、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ハマザクロ、ニッパヤシ、ヒルギダマシ、ヒルギモドキ、サキシマスオウノキ、ゴボウ、ウコン、レンコン、海藻(海苔、ワカメ、昆布、アオサ、アラメ、サガラメなど)などを挙げることができる。
中でも、ブドウ、コーヒー(コーヒーノキ)、茶(チャノキ)、カカオ、アカシア、スギ、マツ、ゆず、レモン、ハーブ類(ラベンダー、ミント、コリアンダー、クミン、セージ、シソ、レモングラス、ヨモギ、コンフリー、レモンバーム、オレガノ、キャットニップ、コモンタイム、ディル、ダークオパール、バジル、ヒソップ、ペパーミント、ラムズイヤーなど)、ドクダミ、マリゴールド、サトウキビ、マンゴー、バナナ、パパイア、アボカド、リンゴ、サクランボ(桜桃)、グァバ、オリーブ、イモ類(サツマイモ、紫イモ(紫色素を多く含有するサツマイモ)、ジャガイモ、ヤマイモ、タロイモ(サトイモ、エビイモなど)、コンニャクイモなど)、柿(カキノキ)、クワ、ブルーベリー、ポプラ、イチョウ、キク、ヒマワリ、竹が好適に用いられる。
ポリフェノール含有植物体の「加工品」としては、ポリフェノール含有植物体の乾燥物、搾汁液、抽出物、抽出液などを挙げることができる。また、搾汁液や抽出液を、さらに乾燥物としたものであってもよい。
「乾燥物」としては、破砕、粉砕、粉末化などの処理を行ったものが望ましい。また、鉄との反応効率の観点を考慮すると、粒子径の小さい粉末にしたものが好適である。
「抽出物」及び「抽出液」の抽出溶媒としては、水、熱水、アルコール(特にエタノール)、含水アルコール(特に含水エタノール)が好適である。
ポリフェノール類の供給原料としては、ポリフェノール含有植物体又はその加工品を水もしくは熱水で抽出し、その後に残った残渣についても、好適に用いることができる。このような抽出残渣としては、例えばコーヒー粕、茶殻などを挙げることができる。
「コーヒー粕」とは、コーヒー豆の焙煎粉砕物を水又は熱水で抽出した後の残渣を指す。コーヒー粕は、ポリフェノール類を非常に多く含んでいるうえに、廃棄物であるため原料コストが低く抑えられるので、ポリフェノール類の供給原料として好適である。また、コーヒー豆の焙煎粉砕物を水又は熱水で抽出した成分(いわゆる淹れたコーヒーの成分)や、コーヒー豆、その焙煎物、粉砕物なども、ポリフェノール類を多く含んでいるため、好適に用いることができる。
「茶殻」とは、茶葉又はその粉砕物を水又は熱水で抽出した後の残渣を指す。茶殻は、ポリフェノール類を非常に多く含んでいるうえに、廃棄物であるため原料コストが低く抑えられるので、ポリフェノール類の供給原料として好適である。
茶殻の原料である「茶葉」としては、チャノキの茎葉を摘んだものであれば如何なるものも用いることができる。具体的には、緑茶(煎茶、番茶、茎茶、ほうじ茶など)、青茶(ウーロン茶など)、紅茶、黒茶(プーアル茶など)などを挙げることができる。中でも、緑茶、紅茶、ウーロン茶が好適である。
また、茶葉又はその粉砕物を水又は熱水で抽出した成分(いわゆる淹れた茶の成分)や、茶葉、その加工品、粉砕物なども、ポリフェノール類を多く含んでいるため、ポリフェノール類の供給原料として好適に用いることができる。
第一の実施形態においては、ポリフェノール含有植物体又はその加工品を、還元状態で熱分解することによって得られる乾留液(植物乾留液)についても、ポリフェノール類の供給原料として好適に用いることができる。
この植物乾留液には、ポリフェノール類が多く含まれることに加えて、フェノール類、有機酸、カルボニル類、アルコール類、アミン類、塩基性成分、その他中性成分などの多くの還元性有機物の分子が含まれると推測される。ここで「還元性有機物」とは、還元力が強く、三価鉄を二価鉄に還元する作用を有する有機物を指す。
植物乾留液は粘りけのある液体で、外見は赤褐色~暗褐色を呈する。原料とする植物体によって木酢液、竹酢液、籾酢液などの種類があり、いずれも好適に用いることができる。これらの植物乾留液は原液のまま用いることもできるが、濃縮液、希釈液、これらの乾燥物として用いることも可能である。
上記のポリフェノール類の供給原料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
「鉄供給原料」としては、二価鉄の供給原料、三価鉄の供給原料、又は金属鉄の供給原料のいずれをも用いることができる。また、複数のものを混合して用いることもできる。
ここで、「二価鉄の供給原料」としては、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(II)、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)ナトリウム、グルコン酸鉄(II)など水溶性の二価鉄化合物;炭酸鉄(II)、フマル酸鉄(II)などの水不溶性の二価鉄化合物を挙げることができる。
「三価鉄の供給原料」としては、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、EDTA鉄(III)などの水溶性の三価鉄化合物;酸化鉄(III)、硝酸鉄(III)、水酸化鉄(III)、ピロリン酸鉄(III)などの水不溶性の三価鉄化合物を挙げることができる。
また、これらの三価鉄化合物を多く含む天然原料として、赤玉土、鹿沼土、ローム(アロフェン質の鉄分を多く含む土壌)、ラテライト(酸化鉄(III)を多く含む土壌)、ゲータイト(非結晶質の鉱物を含む土壌)などの土壌;黄鉄鉱、白鉄鉱、菱鉄鉱、磁鉄鉱、針鉄鉱など天然の鉄鉱石;前記鉄鉱石が砂塵化した砂鉄;ヘム鉄、貝殻などの生体由来の物質;なども三価鉄の供給原料として用いることができる。
また、「金属鉄の供給原料」としては、製錬鉄や合金などの鉄材を挙げることができる。その他、錆びも鉄供給原料として用いることができる。
なお、上記の鉄供給原料は、水不溶性のものであっても、ポリフェノール類のキレート能によって水溶化するため、鉄供給原料として直接用いることが可能である。
上記の鉄供給原料のうち、ポリフェノール鉄錯体を効率よく製造するためには、水溶性の二価鉄又は三価鉄の化合物を用いることが好適である。特には安価な塩化鉄、硫酸鉄などを用いることが好適である。また、原料コスト及び安定供給の観点からは、天然物である土壌(特に赤玉土、鹿沼土、ロームなど)、金属鉄を鉄供給原料として用いることが好適である。
第一の実施形態において、ポリフェノール鉄錯体は、ポリフェノール類又はその供給原料と、鉄供給原料と、を水の存在下で混合することによって得られる。
これら原料の混合比率としては、前記ポリフェノール類、又は、ポリフェノール類の供給原料、の乾燥重量100重量部に対して、前記鉄供給原料を鉄元素の重量換算で0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは4重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上となるように混合すればよい。鉄元素の割合が少なすぎる場合(鉄元素に対して前記ポリフェノール類の混合割合が多すぎる場合)には、過剰に存在するポリフェノール類がラジカル消去物質(スカベンジャー)として機能するため、フェントン反応や光触媒反応を阻害する可能性がある。
また、鉄供給原料の混合比率の上限としては、前記ポリフェノール類、又は、ポリフェノール類の供給原料、の乾燥重量100重量部に対して、前記鉄供給原料を鉄元素の重量換算で100重量部以下、好ましくは80重量部以下、より好ましくは60重量部以下となる比率を挙げることができる。鉄元素の割合が多すぎる場合(鉄元素に対して前記ポリフェノール類の混合割合が少なすぎる場合)には、鉄イオンを二価の状態で維持できなくなりフェントン反応や光触媒反応の効率が低下し、好ましくない。
なお、前記ポリフェノール類の供給原料として、前記ポリフェノール含有植物体の抽出物又は抽出液を用いる場合には、抽出原料として用いた当該ポリフェノール含有植物体の乾燥重量を「前記ポリフェノール類の供給原料の乾燥重量」とみなして、前記混合比率を算出すればよい。例えば、前記ポリフェノール類の供給原料として乾燥茶葉を用い、この茶葉を熱水抽出して得られた抽出液と、鉄供給原料と、を反応させたとする。この場合、当該乾燥茶葉の重量を「前記ポリフェノール類の供給原料の乾燥重量」として用いて、鉄供給原料との混合比率を算出する。
同様に、前記ポリフェノール類の供給原料として、前記ポリフェノール含有植物体の加工品を用いる場合には、加工原料として用いた当該ポリフェノール含有植物体の乾燥重量を「前記ポリフェノール類の供給原料の乾燥重量」とみなして、上記混合比率を算出すればよい。
上記原料の混合操作は、水存在下において行われる。ここで水存在下とは、前記ポリフェノール類と鉄が、水を媒質として反応できる条件であればよい。当該反応とは、具体的には、当該ポリフェノール類が鉄イオンを還元状態(二価鉄イオンであるFe2+の状態)にして、錯体を形成する反応であると推測される。
水の量としては、少なくとも前記原料の混合や撹拌が可能な液量であれば良く、原料(ポリフェノール類と鉄)の混合物が湿潤する程度の量であってもよい。
なお、ポリフェノール類の供給原料として、植物体搾汁や植物乾留液などを液体のままを用いる場合は、新たに媒質を添加することなく、直接鉄供給原料と混合して反応させることができる。
混合操作としては、スターラー等で単純な撹拌混合を行えばよいが、ミキサー、大型撹拌槽、ボルテックス、シェーカーなどによっても行うことができる。
混合時の水の温度としては、水が液体状態である温度(例えば1気圧であれば1~100℃)であればよい。加熱を要さない室温程度(例えば10~35℃)を採用することが可能であるが、加熱する場合、40℃以上、好ましくは50℃以上での加熱を行うことにより、ポリフェノール鉄錯体の生成が促進され好適である。
混合時の水の温度の上限としては200℃(加圧加熱の場合)を挙げることができるが、製造コストの観点から、常圧条件における通常加熱での沸点である100℃以下、好ましくは90℃以下、さらに好ましくは70℃以下で行うことが望ましい。なお、100℃以上の反応条件においては、ポリフェノール類の熱分解を抑制するために密閉容器内で行う方が好適である。
混合時間としては、ポリフェノール類と鉄が十分に接触するまで、おおよそ10秒以上行えばよいが、均一性を向上させるためには、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、さらに好ましくは5分以上の混合処理を行うことが望ましい。
また、混合時間の上限としては、微生物の繁殖による有機物の腐敗を防止するため、10日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは5日以内、さらに好ましくは3日以内、特に好ましくは1日以内で行うことが望ましい。ただし滅菌処理を伴う場合は特に上限はない。
上記混合処理を経て得られる反応生成物(ポリフェノール類と鉄との反応物)は、優れた二価鉄イオン供給活性、フェントン反応触媒活性及び光触媒活性を有する。当該反応生成物では、ポリフェノール類が鉄を二価鉄イオン(Fe2+)の状態にして、錯体(すなわち、ポリフェノール鉄錯体)を形成しているものと推測される。
上記混合処理により得られる反応生成物は、反応後に得られた上清や含水状態の沈殿物をそのまま、本実施の形態におけるポリフェノール鉄錯体として用いることができる。また、当該上清又は沈殿物をそれぞれ分離回収した物や、それを乾燥処理(自然乾燥、焙煎、熱風乾燥など)して得られた乾燥物や、当該乾燥物をさらに水に溶いた懸濁物やその上清等についても、本実施の形態におけるポリフェノール鉄錯体として用いることが可能である。
第一の実施形態に係るポリフェノール鉄錯体カプセルは、上記ポリフェノール鉄錯体を含有する、アルギン酸ゲルからなるカプセルである。ここで、「アルギン酸ゲル」とは、アルギン酸分子が多価カチオンによりイオン架橋されることによって形成されるゲルである。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、前記ポリフェノール鉄錯体を含む内層が前記アルギン酸ゲルの外層で覆われているコアシェル型のカプセル、又は、前記アルギン酸ゲルの粒子内部にポリフェノール鉄錯体が分散されているマトリックス型のカプセル、のいずれであってもよい。
また、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの形状は、球形であっても非球形であってもよい。また、前記内層を1つのみ有する単核構造でもよいし、内層を2つ以上有する多核構造であってもよい。上記のいずれの形態であっても、ポリフェノール鉄錯体を安定化し、徐放化できるという効果は変わらない。
アルギン酸はD-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)とで構成されるヘテロ多糖類である。アルギン酸のゲル化は、グルロン酸部分が架橋されることによって生じるため、MとGの構成比、即ちM/G比によって、得られるポリフェノール鉄錯体カプセルの物性が変化する。例えば、M/G比が大きい、すなわちマンヌロン酸含有量の大きいアルギン酸を用いると、柔らかく崩壊しやすいカプセルとなり、M/G比が小さい、すなわちグルロン酸含有量の大きいアルギン酸を用いると、固く崩壊し難いカプセルとなる。
したがって、前記アルギン酸のM/G比は、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの用途や使用環境に応じて、当該カプセルが所望の物性となるように適宜設定すればよい。具体的には、前記アルギン酸のM/G比は通常0.05~5.0程度とすることができる。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの大きさは、用途や使用環境などに応じて適宜設定すればよく、例えば球形のカプセルであれば直径1nm~1mの範囲とすることができる。例えば魚介類の水槽で使用する場合、対象とする魚介類による誤飲を防止できるように考慮して大きさを設定すればよい。具体的には、家庭の水槽で飼育される小型の観賞魚を対象とする場合は、球形のカプセルであれば当該カプセルの直径は2~10mm程度とすることができる。また、中型の魚を対象とする場合は直径10~100mm程度、大型の魚を対象とする場合は10~100cm程度とすることができる。
また、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、例えば魚介類の水槽内の景観を壊さないように、水草や海藻、貝殻、サンゴ、小石などを模した形状のカプセルとしてもよい。その場合、実際の水草や海藻、貝殻、サンゴ、小石などの大きさに応じて、カプセルの大きさも適宜設定すればよい。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルにおける前記アルギン酸ゲルの含有量は、通常0.001~99重量%であり、好ましくは0.1~10重量%である。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルにおける前記ポリフェノール鉄錯体の含有量は、特に限定されない。例えば、0.0001~99重量%、好ましくは0.01~10重量%とすることができる。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、上記効果を妨げない限りにおいて、前記ポリフェノール鉄錯体以外の他の成分を含有していてもよい。当該「他の成分」としては、例えば、魚介類などの動植物、藻類、微生物といった有用生物の成長や増殖に必要な栄養素などが挙げられる。
具体的には、ビタミンB群、ビタミンCなどの水溶性ビタミン又はその誘導体;銅、亜鉛、コバルト、マンガン、モリブデン、ホウ素、鉄などの微量要素又はその化合物;などからなる群より選ばれた1以上のものが挙げられる。なお、前記微量要素はカプセル中で過剰量の前記ポリフェノール類と反応して錯体を形成し得ることから、ポリフェノール錯体の状態で含有されていてもよい。
前記ビタミンB群としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ビタミンB6、ビオチン(ビタミンB7)、葉酸(ビタミンB9)、ビタミンB12又はこれらの誘導体などを挙げることができる。
前記微量要素の化合物としては、硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化コバルト、塩化マンガン、硫酸マンガン、モリブデン酸ナトリウム、ホウ酸、塩化鉄、硫酸鉄などを挙げることができる。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルにおける上記「他の成分」の合計含有量や各成分の含有量は、当該カプセルの用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、合計含有量は通常99重量%以下、好ましくは0.0001~95重量%、より好ましくは0.5~75重量%、さらに好ましくは5~60重量%とすることができる。
具体例として、魚介類の飼育又は病気治療の目的で前記ポリフェノール鉄錯体カプセルに含有される、前記ビタミンB群及び前記微量要素の組成の一例を以下に示す。なお、下記の組成を濃縮又は希釈して前記ポリフェノール鉄錯体カプセルに含有させることもできる。
チアミン 0.02%~0.1%
ビオチン 0.0001%~0.01%
ビタミンB12 0.0001%~0.001%
銅 0.24%~0.5%
亜鉛 0.54%~0.9%
コバルト 0.1%~0.5%
マンガン 4.4%~10%
モリブデン 0.04%~2.0%
ホウ素 0.05%~10%
※上記百分率はすべて重量比を示す。
具体例として、植物栽培の目的で前記ポリフェノール鉄錯体カプセルに含有される、前記微量要素の組成の一例を以下に示す。なお、下記の組成を濃縮又は希釈して前記ポリフェノール鉄錯体カプセルに含有させることもできる。
銅 0.24%~0.5%
亜鉛 0.54%~0.9%
コバルト 0.1%~0.5%
マンガン 4.4%~10%
モリブデン 0.04%~2.0%
ホウ素 0.05%~10%
※上記百分率はすべて重量比を示す。
上記したポリフェノール鉄錯体カプセルは、例えば下記のようにして製造することができる。
(1)まず、前述の方法により、前記ポリフェノール類又はその供給原料と、前記鉄供給原料と、を水存在下にて混合することによって、前記ポリフェノール鉄錯体を調製する。
(2)次に、得られた前記ポリフェノール鉄錯体と、アルギン酸塩と、を混合してアルギン酸水溶液(液1)を調製する(図1参照)。
ここで、「アルギン酸塩」としては、アルギン酸の可溶性塩であればよく、具体的には、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムなどを挙げることができる。
アルギン酸のM/G比は、ポリフェノール鉄錯体カプセルの用途や使用環境に応じて、当該カプセルが所望の物性となるように適宜設定すればよい。具体的には、上記アルギン酸のM/G比は通常0.05~5.0程度とすることができる。
前記アルギン酸水溶液における前記アルギン酸塩の含有量は、通常0.001~99重量%であり、好ましくは0.1~10重量%である。
前記アルギン酸水溶液における前記ポリフェノール鉄錯体の含有量は、特に限定されない。例えば、0.0001~99重量%、好ましくは0.01~10重量%とすることができる。
前記アルギン酸水溶液には、上記効果を妨げない限りにおいて、ポリフェノール鉄錯体以外の他の成分を含有していてもよい。当該「他の成分」としては、上述の通りであり、例えば、ビタミンB群、ビタミンCなどの水溶性ビタミン又はその誘導体;銅、亜鉛、コバルト、マンガン、モリブデン、ホウ素、鉄などの微量要素又はその化合物;などからなる群より選ばれた1以上のものが挙げられる。
前記アルギン酸水溶液における上記「他の成分」の合計含有量や各成分の含有量は、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、合計含有量は通常99重量%以下、好ましくは0.0001~95重量%、より好ましくは0.5~75重量%、さらに好ましくは5~60重量%とすることができる。
具体例として、魚介類の飼育又は病気治療の目的で用いられる前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを製造する場合の、前記アルギン酸水溶液における前記ビタミンB群及び前記微量要素の組成の一例を以下に示す。なお、下記の組成を濃縮又は希釈して配合することもできる。
チアミン 0.02%~0.1%
ビオチン 0.0001%~0.01%
ビタミンB12 0.0001%~0.001%
銅 0.24%~0.5%
亜鉛 0.54%~0.9%
コバルト 0.1%~0.5%
マンガン 4.4%~10%
モリブデン 0.04%~2.0%
ホウ素 0.05%~10%
※上記百分率はすべて重量比を示す。
具体例として、植物栽培の目的で用いられる前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを製造する場合の、前記アルギン酸水溶液における前記微量要素の組成の一例を以下に示す。なお、下記の組成を濃縮又は希釈して配合することもできる。
銅 0.24%~0.5%
亜鉛 0.54%~0.9%
コバルト 0.1%~0.5%
マンガン 4.4%~10%
モリブデン 0.04%~2.0%
ホウ素 0.05%~10%
※上記百分率はすべて重量比を示す。
(3)そして、図1に示されるように、多価カチオンを溶解させた溶液(液2)中に、上記(2)で調製したアルギン酸水溶液(液1)を滴下することにより、アルギン酸をゲル化させ、前記ポリフェノール鉄錯体カプセル(図2参照)を製造する。滴下方法としては、従来公知の方法により行えばよい。
「多価カチオン」としては、例えば、カルシウム塩、鉄塩などを挙げることができる。より具体的には、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸鉄、塩化鉄などであり、特にはゲル化が速く進むことから塩化カルシウムが好ましい。前記多価カチオン溶液の濃度は特に限定されないが、通常0.01~60重量%とすることができる。
上記の方法により、アルギン酸ゲル粒子の内部に、ポリフェノール鉄錯体などの含有成分が分散されてなる、マトリックス型の球形カプセルが得られる。
あるいは、同心二重ノズルの内筒から上記したポリフェノール鉄錯体などの含有成分を、外筒からアルギン酸塩水溶液を、それぞれ多価カチオン溶液中に滴下することにより、アルギン酸ゲル被膜の内側にポリフェノール鉄錯体などの含有成分が封入されてなる、コアシェル型の球形カプセルを製造することもできる。
また、上記したポリフェノール鉄錯体などの含有成分を添加したアルギン酸水溶液(アルギン酸塩濃度:0.5~10重量%程度)をよく撹拌することでゲル状とし、これを所望のサイズの塊状に成形した後に、多価カチオン溶液に浸漬して硬化させることにより、所望のサイズのカプセルを製造することもできる。
さらには、上記のようにゲル状にしたアルギン酸水溶液を、シリコン等により作製した所望の形状の型に入れて20分~1時間程度静置した後に、当該型に入れた状態で多価カチオン溶液に浸漬して硬化させることにより、水草や海藻、貝殻、サンゴ、小石などを模した所望の形状の異形カプセルを製造することもできる。
上記のうちいずれの製法により得られたポリフェノール鉄錯体カプセルであっても、第一の実施形態に係るポリフェノール鉄錯体カプセルに含まれる。
次に、上記したポリフェノール鉄錯体カプセルの使用方法及び効果について説明する。
第一の実施形態の前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、多孔質構造を有する前記アルギン酸ゲルが前記ポリフェノール鉄錯体を環境中に徐々に放出するため、フェントン反応触媒、二価鉄イオン供給剤又は光触媒としての作用効果を長期間持続させることができる。
また、前記アルギン酸ゲルからの前記ポリフェノール鉄錯体の放出速度をコントロールしたり、前記カプセルの崩壊時期をコントロールしたりすることによって、前記作用効果を持続させる期間を制御することもできる。
さらに、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、人体や環境に対して安全性が高い物質であるので、医薬、食品、公衆衛生、水産業、農業、工業等の様々な分野に用いることができる。
・殺菌
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、フェントン反応触媒として、過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させる性質を利用して、液体、固体を問わず様々な対象物の殺菌に用いることができる。ここで、殺菌可能な対象としては、バクテリアだけでなく、真核微生物、藻類、古細菌、ウイルス、ウイロイド等を挙げることができる。
当該殺菌対象として、具体的には、家庭や水族館等の水槽;飲食店、養殖場、輸送用等の生簀;水耕栽培等の養液タンク;プール、池、湖、下水処理場等の水;まな板、包丁、食器等の台所用品;動物、ヒト等の皮膚;飲料水、植物、食材、医療器具、衣服、寝具、農機具、土壌などを挙げることができる。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを用いる殺菌方法としては、前記殺菌対象が固体である場合、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを添加した溶液中に、当該殺菌対象を浸漬することによって、殺菌を行うことができる。当該溶液には、前記効果を妨げない限りにおいて、他の殺菌成分や夾雑物、有用生物等が含まれていてもよい。
あるいは、水又は含水アルコールに前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを添加し、これらを噴霧器等を用いて、殺菌対象である物又は空間に噴霧することによって、殺菌を行うことができる。
また、前記殺菌対象が液体であるか、溶液中に分散された状態である場合には、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを、当該液体又は溶液中に添加することによって、殺菌を行うことができる。
なお、前記殺菌対象が生物そのものである場合、あるいは、前記液体の殺菌対象又は前記殺菌対象が分散された溶液又は前記固体の殺菌対象を浸漬する溶液が、生物を含むものである場合、前記殺菌対象又は前記溶液中には既に生物由来の過酸化水素が微量発生するため、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルのみを用いて殺菌を行うことが可能である。
しかし、ポリフェノール鉄錯体カプセルとともに過酸化水素を添加することによって、より高い殺菌効果が得られる。また、前記過酸化水素として、第二の実施形態に係る過酸化水素カプセルを用いてもよい。
前記殺菌方法における前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの添加量は特に限定されず、所望の殺菌効果が得られる量とすればよい。具体的には、水又は溶液1Lに対し0.5g以上、好ましくは1~30g、より好ましくは5~10gとすることができる。また、前記過酸化水素の添加量としては、極めて微量でよく、0.1~20mM程度となるような量とすればよい。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルによる殺菌効果の持続期間は、前記アルギン酸ゲルの徐放性や崩壊性、前記ポリフェノール鉄錯体の含有量等に応じて異なるが、例えば、数日間~数十ヶ月間とすることができる。この間、前記固体の殺菌対象を浸漬する溶液中、又は、前記殺菌対象が分散された溶液中、又は、前記液体の殺菌対象中に、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを放置するだけで殺菌作用が得られるが、エアポンプや撹拌等によって水流を発生させることによって、前記溶液又は前記液体の殺菌対象全体にポリフェノール鉄錯体を行き渡らせることができるので、より高い殺菌効果が得られる。
また、前述の通り、前記ポリフェノール鉄錯体は光触媒活性をも有するため、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルに光を照射することによって、より高い殺菌効果が得られる。当該光としては、太陽光や、200~1400nmという幅広い波長域の光、すなわち紫外線、可視光、赤外線から選ばれた1以上の光を用いることができる。
ここで、「紫外線」とは、380nm以下の波長域の光を指す。「可視光」とは、ヒトの目で見える波長域である波長380~750nmの光を指す。具体的には、「可視光」には、380~450nm(紫色光)、450~495nm(青色光)、495~570nm(緑色光)、570~590nm(黄色光)、590~620nm(橙色光)、620~750nm(赤色光)の波長域の光が含まれる。また、「赤外線」とは、750nm以上の波長域の光を指す。
中でも、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、前記紫外線を照射した時に極めて強い光触媒活性を示す。特に近紫外線である200~380nmの波長の光を照射することによって、従来の光触媒である酸化チタンよりも遥かに大きな光触媒活性(殺菌作用)を示す。
また、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、酸化チタンでは活性を示さない波長域である可視光及び赤外線を照射した時にも強い光触媒活性(殺菌作用)を示す。可視光では特に波長の短い紫色光~青色光(380~495nm)の波長域で強い活性を示す。赤外線では近赤外線である750~1400nm(特に900~1300nm付近、さらに特には1100~1300nm付近)の波長域で強い活性を示す。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの光触媒活性は極めて強力であるため、例えば表面殺菌の場合、太陽光照射を数分程度、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上行うことによって、十分な殺菌効果が発揮される。また、LEDや蛍光灯等の比較的弱い光を照射する場合であっても、1時間以上、好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上の処理によって十分な殺菌効果が発揮される。
・有機物質の分解
また、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、そのフェントン反応触媒活性により、様々な有機物質の分解に用いることができる。特に、有機系の汚染物質や有害物質の分解に好適に用いることができるため、環境浄化の一工程において有用である。
ここで、汚染物質や有害物質としては、水質汚染、土壌汚濁、大気汚染を引き起こす物質をいう。例えば、生活排水、し尿水、工場排水、汚染された河川や湖沼水、ゴミ廃棄場の土壌、産業廃棄物、農地、工場跡地などに含まれる人体や環境に有害な有機系物質を挙げることができる。
分解対象となる具体的な有機物質としては、例えば、洗剤、飲食品残渣、し尿、糞便、農薬、悪臭物質、廃油、ダイオキシン、PCB、DNA、RNA、タンパク質など有機性廃棄物などを挙げることができる。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを用いたこれら有機物質の具体的な分解方法については、前述の殺菌方法と同様である。
すなわち、前記分解対象が固体である場合、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを添加した溶液中に、当該分解対象を浸漬することによって、分解を行うことができる。
あるいは、水又は含水アルコールに前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを添加し、これらを噴霧器等を用いて、分解対象物に噴霧することによって、分解を行うことができる。
また、前記分解対象が液体であるか、溶液中に分散された状態である場合には、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを、当該液体又は溶液中に添加することによって、分解を行うことができる。
なお、前記液体の分解対象又は前記分解対象が分散された溶液又は前記固体の分解対象を浸漬する溶液中に、既に生物由来の過酸化水素が含まれる場合は、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルのみを用いて分解を行うことが可能である。
しかし、ポリフェノール鉄錯体カプセルとともに過酸化水素を添加することによって、より高い殺菌効果が得られる。また、前記過酸化水素として、第二の実施形態に係る過酸化水素カプセルを用いてもよい。
前記分解方法における前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの添加量は特に限定されず、所望の分解効果が得られる量とすればよい。具体的には、前記殺菌の場合と同様の添加量とすることができる。また、前記過酸化水素の添加量としては、極めて微量でよく、0.1~20mM程度となるような量とすればよい。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルによる有機物質の分解効果の持続期間は、例えば、数日間~数十ヶ月間とすることができる。また、前記固体の分解対象を浸漬する溶液又は前記分解対象が分散された溶液又は前記液体の分解対象において、エアポンプや撹拌等によって水流を発生させることによって、より高い分解効果が得られる。
また、前記殺菌方法と同様に、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルに光を照射することによって、より短時間での有機物質の分解が可能となる。当該光としては、太陽光や、200~1400nmという幅広い波長域の光、すなわち紫外線、可視光、赤外線から選ばれた1以上の光を用いることができる。照射時間については、前記した殺菌方法と同様とすることができる。
・鉄供給
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、水溶性の二価鉄イオンを長期間安定して徐放できる性質を有している。また、この水溶性鉄供給能は、アルカリ条件下においても安定して発揮される。したがって、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、鉄供給剤として好適に用いることができる。
ここで、鉄供給の対象としては特に限定されず、植物、動物、微生物など生物全般に適用することができる。
植物を対象とする鉄供給用途に用いる場合、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、農業、園芸における通常のいかなる植物栽培にも用いることができる。特には、鉄欠乏の起こりやすいアルカリ土壌での栽培や、水耕栽培(養液栽培)における利用が有効である。
ここで、アルカリ土壌としては、pH7~10程度のアルカリ性の土壌を指す。前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、pH9以上の強いアルカリ性土壌においても鉄供給能を発揮できるが、このような強いアルカリ性条件下では、EDTAやクエン酸などの一般的なキレート剤を用いた鉄供給剤は全く使用できない。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルからなる、植物栽培用鉄供給剤の使用方法としては、植物を対象とする場合、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを、栽培土壌中に混合する;栽培土壌に散布する;貯水機能付きポットの貯水スペースに水とともに添加して、二価鉄イオンを含む水が栽培土壌に給水されるようにする;水耕栽培の養液に添加する;などの方法によって、植物に二価鉄イオンを供給することができる。
前記鉄供給方法における前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの添加量は特に限定されず、所望の効果が得られる量とすればよい。具体的には、水に添加して用いる場合は、水1Lに対し0.5g以上、好ましくは1~70g、とすることができる。また、土壌に添加して用いる場合は、土壌に対して0.1~10重量%とすることができる。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルによる鉄供給効果の持続期間は、前記アルギン酸ゲルの徐放性や崩壊性、前記ポリフェノール鉄錯体の含有量等に応じて異なるが、例えば、数日間~数十ヶ月間とすることができる。
[過酸化水素カプセル]
以下、第二の実施形態の過酸化水素カプセルについて詳しく説明する。
第二の実施形態に係る過酸化水素カプセルは、過酸化水素がアルギン酸ゲルに封入されてなるものである。すなわち、当該カプセルは、過酸化水素を含有する、アルギン酸ゲルからなるカプセルである。
前記過酸化水素カプセルは、過酸化水素を含む内層が前記アルギン酸ゲルの外層で覆われているコアシェル型のカプセル、又は、前記アルギン酸ゲルの粒子内部に過酸化水素が分散されているマトリックス型のカプセル、のいずれであってもよい。
また、前記過酸化水素カプセルの形状は、球形であっても非球形であってもよい。また、前記内層を1つのみ有する単核構造でもよいし、内層を2つ以上有する多核構造であってもよい。上記のいずれの形態であっても、過酸化水素を安定化し、徐放化できるという効果は変わらない。
前記アルギン酸のM/G比は、前記過酸化水素カプセルの用途や使用環境に応じて、当該カプセルが所望の物性となるように適宜設定すればよい。具体的には、前記アルギン酸のM/G比は通常0.05~5.0程度とすることができる。
前記過酸化水素カプセルの大きさは、用途や使用環境などに応じて適宜設定すればよく、例えば球形のカプセルであれば直径1nm~1mの範囲とすることができる。例えば魚介類の水槽で使用する場合、対象とする魚介類による誤飲を防止できるように考慮して大きさを設定すればよい。具体的には、家庭の水槽で飼育される小型の観賞魚を対象とする場合は、球形のカプセルであれば当該カプセルの直径は2~10mm程度とすることができる。また、中型の魚を対象とする場合は直径10~100mm程度、大型の魚を対象とする場合は10~100cm程度とすることができる。
また、前記過酸化水素カプセルは、例えば魚介類の水槽内の景観を壊さないように、水草や海藻、貝殻、サンゴ、小石などを模した形状のカプセルとしてもよい。その場合、実際の水草や海藻、貝殻、サンゴ、小石などの大きさに応じて、カプセルの大きさも適宜設定すればよい。
前記過酸化水素カプセルにおける前記アルギン酸ゲルの含有量は、通常0.001~99重量%であり、好ましくは0.1~10重量%である。
前記過酸化水素カプセルにおける前記過酸化水素の含有量は、特に限定されない。例えば、0.0001~35重量%、好ましくは0.001~6.0重量%とすることができる。
前記過酸化水素カプセルは、上記効果を妨げない限りにおいて、前記過酸化水素以外の他の成分を含有していてもよい。
上記した過酸化水素カプセルは、例えば下記のようにして製造することができる。
(1)まず、過酸化水素と、アルギン酸塩と、を含有するアルギン酸水溶液(液1)を調製する(図3参照)。
ここで、「アルギン酸塩」としては、アルギン酸の可溶性塩であればよく、具体的には、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムなどを挙げることができる。
アルギン酸のM/G比は、過酸化水素カプセルの用途や使用環境に応じて、当該カプセルが所望の物性となるように適宜設定すればよい。具体的には、上記アルギン酸のM/G比は通常0.05~5.0程度とすることができる。
前記アルギン酸水溶液における前記アルギン酸塩の含有量は、通常0.001~99重量%であり、好ましくは0.1~10重量%である。
前記アルギン酸水溶液における前記過酸化水素の含有量は、特に限定されない。例えば、0.0001~35重量%、好ましくは0.001~6.0重量%とすることができる。
前記アルギン酸水溶液には、上記効果を妨げない限りにおいて、過酸化水素以外の他の成分を含有していてもよい。
(2)次に、図3に示されるように、多価カチオンを溶解させた溶液(液2)中に、上記(1)で調製したアルギン酸水溶液(液1)を滴下することにより、アルギン酸をゲル化させ、前記過酸化水素カプセル(図4参照)を製造する。滴下方法としては、従来公知の方法により行えばよい。
「多価カチオン」としては、例えば、カルシウム塩などを挙げることができる。より具体的には、塩化カルシウム、乳酸カルシウムなどであり、特にはゲル化が速く進むことから塩化カルシウムが好ましい。前記多価カチオン溶液の濃度は特に限定されないが、通常0.01~60重量%とすることができる。
上記の方法により、アルギン酸ゲル粒子の内部に、過酸化水素が分散されてなる、マトリックス型の球形カプセルが得られる。
あるいは、同心二重ノズルの内筒から過酸化水素水を、外筒からアルギン酸塩水溶液を、それぞれ多価カチオン溶液中に滴下することにより、アルギン酸ゲル被膜の内側に過酸化水素が封入されてなる、コアシェル型の球形カプセルを製造することもできる。
また、上記した過酸化水素を添加したアルギン酸水溶液(アルギン酸塩濃度:0.5~10重量%程度)をよく撹拌することでゲル状とし、これを所望のサイズの塊状に成形した後に、多価カチオン溶液に浸漬して硬化させることにより、所望のサイズのカプセルを製造することもできる。
さらには、上記のようにゲル状にしたアルギン酸水溶液を、シリコン等により作製した所望の形状の型に入れて20分~1時間程度静置した後に、当該型に入れた状態で多価カチオン溶液に浸漬して硬化させることにより、水草や海藻、貝殻、サンゴ、小石などを模した所望の形状の異形カプセルを製造することもできる。
上記のうちいずれの製法により得られた過酸化水素カプセルであっても、第二の実施形態に係る過酸化水素カプセルに含まれる。
次に、上記した過酸化水素カプセルの使用方法及び効果について説明する。
第二の実施形態の前記過酸化水素カプセルは、多孔質構造を有する前記アルギン酸ゲルが前記過酸化水素を環境中に徐々に放出する。したがって、第一の実施形態の前記ポリフェノール鉄錯体カプセルと併用した場合には、フェントン反応を高い反応効率で長期間持続させることができる。
また、過酸化水素は単独でも殺菌作用及び有機物分解作用を示すことから、前記過酸化水素カプセルは単独でも殺菌剤、浄化剤、消臭剤、有機物分解剤などとして用いることができる。
前記過酸化水素カプセルにより殺菌可能な対象としては、バクテリアだけでなく、真核微生物、藻類、古細菌、ウイルス、ウイロイド等を挙げることができる。また、殺菌対象として、具体的には、家庭や水族館等の水槽;飲食店、養殖場、輸送用等の生簀;水耕栽培等の養液タンク;プール、池、湖、下水処理場等の水;まな板、包丁、食器等の台所用品;動物、ヒト等の皮膚;飲料水、植物、食材、医療器具、衣服、寝具、農機具、土壌などを挙げることができる。
前記過酸化水素カプセルによる分解対象となる具体的な有機物質としては、例えば、洗剤、飲食品残渣、し尿、糞便、農薬、悪臭物質、廃油、ダイオキシン、PCB、DNA、RNA、タンパク質など有機性廃棄物などを挙げることができる。
前記過酸化水素カプセルの使用方法としては、第一の実施形態の前記ポリフェノール鉄錯体カプセルと同様とすることができる。具体的には、前記過酸化水素カプセルを添加した溶液中に、固体である対象物を浸漬する方法;水又は含水アルコールに前記過酸化水素カプセルを添加し、これらを対象である物又は空間に噴霧する方法;液体である対象物又は対象物が分散された溶液中に、前記過酸化水素カプセルを添加する方法;などが挙げられる。
また、前記アルギン酸ゲルからの前記過酸化水素の放出速度をコントロールしたり、前記カプセルの崩壊時期をコントロールしたりすることによって、前記作用効果を持続させる期間を制御することもできる。前記過酸化水素カプセルによる前記効果の持続期間は、例えば、数日間~数十ヶ月間とすることができる。
さらに、前記過酸化水素カプセルは、天然由来成分を原料としており、医薬、食品、公衆衛生、水産業、農業、工業等の様々な分野に用いることができる。
[フェントン反応キット]
以下、第三の実施形態のフェントン反応キットについて詳しく説明する。第三の実施形態に係るフェントン反応キットは、第一の実施形態のポリフェノール鉄錯体カプセルと、第二の実施形態の過酸化水素カプセルとを含有する。
このキットに含まれる前記ポリフェノール鉄錯体カプセルと前記過酸化水素カプセルとを、溶液中に有効量添加するだけで、ポリフェノール鉄錯体と過酸化水素とを当該溶液中に徐放させ、過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させるフェントン反応を、高い反応効率で持続的に行わせることができる。
ヒドロキシラジカルは極めて強力な殺菌作用、有機物分解作用を示すことから、前記キットは殺菌剤、水質浄化剤、消臭剤、有機物分解剤などとして有効に用いられる。前記キットの使用方法は、第一の実施形態について記載した通りである。
前記キットは、上記効果を妨げない限りにおいて、前記ポリフェノール鉄錯体カプセル及び前記過酸化水素カプセル以外の他の成分を含有していてもよい。また、前記キットは後述する第四の実施形態に記載される可視光応答型多孔質光触媒体を含んでいてもよい。
[魚介類の飼育又は病気治療方法]
以下、第四の実施形態の魚介類の飼育又は病気治療方法について詳しく説明する。
第四の実施形態に係る魚介類の飼育又は病気治療方法は、第一の実施形態のポリフェノール鉄錯体カプセルを用いることを特徴とする。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルは、上記した殺菌作用、水質浄化(有機物質分解)作用及び二価鉄イオン供給作用を利用して、魚介類の飼育又は病気の治療のために用いることができる。
すなわち、魚介類の飼育環境中に前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを投入することによって、魚介類に障害を与えることなく、魚介類に鉄を供給し、水中に存在する病原微生物を死滅させ、有機系の汚染物質を分解するといった効果が持続的に発揮される。
これにより、病原微生物に感染した個体の治療が可能となるとともに、他の健康な個体が感染するのを予防することができるうえに、ヒドロキシラジカルは短時間で分解するため、個体中に残留することもない。また、同時に水質浄化も可能となるため、水換えや清掃の手間も大幅に削減することができる。
ここで、飼育及び病気治療の対象となる「魚介類」は特に限定されない。具体的には、淡水生物、海水生物の別を問わず、魚類、貝類、甲殻類、軟体動物などの全ての水産物を挙げることができる。
治療の対象となる「病気」としては、鉄欠乏に起因する病気、又は微生物もしくはウイルスの感染に起因する病気、であれば特に限定されない。ヒドロキシラジカルは、あらゆる種類の微生物やウイルスに対して強力な殺菌作用、分解作用を示すためである。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを用いる魚介類の飼育又は病気治療方法としては、有効量の前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを前記魚介類の水槽中に添加することによって、飼育又は病気治療を行うことができる。当該水槽の水には、生物由来の過酸化水素が既に含まれていると考えられるため、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルのみの添加により、前述の効果が奏される。
また、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルと共に、過酸化水素を添加した場合には、より強力な殺菌及び水質浄化効果が奏される。そのため、魚介類の病気の治療を目的とする場合は、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルだけでなく、過酸化水素を併用することが好ましい。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセルの添加量としては、水槽中の水1L当たり、0.01g以上、好ましくは0.5~50g、より好ましくは1~20g、特に好ましくは5~10gとすることができる。また、前記過酸化水素の添加量としては、極めて微量でよく、水中での過酸化水素濃度が0.1~20mM程度となるような量とすればよい。
なお、前記過酸化水素として、第二の実施形態に係る過酸化水素カプセルを用いることが好ましい。当該過酸化水素カプセルは、過酸化水素の安定化と徐放化が可能であるため、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルと併用することにより、安定したフェントン反応効率が得られるためである。
前記ポリフェノール鉄錯体カプセル及び前記過酸化水素カプセルの交換時期は、前記アルギン酸ゲルの徐放性や崩壊性、前記ポリフェノール鉄錯体及び過酸化水素の含有量等に応じて異なるが、例えば、数日~数十ヶ月後とすることができる。なお、前記アルギン酸ゲルは、食品由来原料により構成されているため、有効期間が過ぎた後も水中に残存していても問題はない。
前記魚介類の飼育又は病気治療方法においては、前記魚介類の水槽中に、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルを放置するだけで前述の効果が奏されるが、水槽中でエアポンプや撹拌等によって水流を発生させることによって、前記魚介類の飼育環境全体にポリフェノール鉄錯体を行き渡らせることができるので、より高い効果が得られる。
また、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルに光を照射することによって、光触媒活性も発揮されるため、より強力な殺菌及び水質浄化作用が示される。当該光としては、太陽光や、200~1400nmという幅広い波長域の光、すなわち紫外線、可視光、赤外線から選ばれた1以上の光を用いることができる。
好ましくは、紫外線、特には近紫外線である200~380nmの波長の光を照射することにより、極めて強い光触媒活性を示す。また、可視光、特には波長の短い紫色光~青色光(380~495nm)の波長域の光を照射することにより、強い光触媒活性を示す。また、赤外線、好ましくは近赤外線である750~1400nm(特に900~1300nm付近、さらに特には1100~1300nm付近)の波長域の光を照射した時に強い活性を示す。
前記光照射時間としては、例えば太陽光照射を1日当たり3時間以上、好ましくは6時間以上行うことによって、十分な効果が発揮される。また、LEDや蛍光灯等の比較的弱い光を照射する場合であっても、例えば1日当たり12時間以上、好ましくは20時間以上の処理によって十分な効果が発揮される。
第四の実施形態では、酸素及び過酸化水素を供給すると同時に、可視光応答型光触媒活性に基づく殺菌及び水質浄化作用を奏する資材として、可視光応答型多孔質光触媒体を併用することができる。
「可視光応答型多孔質光触媒体」(以下、「多孔質光触媒体」と省略することがある。)とは、アルカリ土類金属の過酸化物がセメントにて固結されてなる多孔質体であって、可視光応答型光触媒活性を示すものである。
この多孔質光触媒体の形状に特に制限はないが、例えば厚さは0.1~10cmの範囲とすることにより、内部まで光が届きやすくなるので好ましい。また、特に魚介類の水槽等で使用する場合は、景観を壊さないように、貝殻、サンゴ、小石などを模した形状としてもよい。
「アルカリ土類金属の過酸化物」(以下、「過酸化物」と省略することがある。)としては、例えば過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム、過酸化ベリリウム、過酸化ラジウムが挙げられるが、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムが好ましく、特には過酸化カルシウムが好ましい。
前記過酸化物は、水と反応して過酸化水素を生成し、酸素を発生する性質が知られている。しかしながら本発明者は、驚くべきことに、前記過酸化物そのものが、可視光応答型光触媒活性を示すことを発見した。
「セメント」としては、例えば、ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメントなどを挙げることができる。特に、光透過性の観点から、ポルトランドセメントの中でもホワイトセメントが好適に用いられる。また、ホワイトセメントを主成分として、他の種類のセメントやバインダを混合して使用してもよい。
前記多孔質光触媒体は、基本的に、前記過酸化物と、前記セメントと、水と、を混合し、乾燥することにより製造することができる。前記過酸化物が水と反応することで酸素が発生するため、その気泡により多孔質構造体として形成される。
このように多孔質構造を有することにより、前記多孔質光触媒体は、表面積が大きくなり高い反応効率を実現できる。特には、比重が水より軽く、水面に浮上する性質を有することが望ましい。
前記多孔質光触媒体の全固形分における、前記セメントの含有重量比は、通常17~80%、好ましくは20~70%、より好ましくは30~65%、特に好ましくは40~60%とすることができる。前記セメントの含有重量比が上記範囲より多いと、多孔質構造の形成が不十分となり反応効率が低下するうえに、前記多孔質光触媒体の比重が大きくなって水中に沈んでしまうため好ましくない。また、前記セメントの含有重量比が上記範囲より少ないと、前記多孔質光触媒体の耐久性が低下し、水中で崩壊し易くなるため好ましくない。
なお、前記多孔質光触媒体の全固形分における、前記セメントの含有重量比が、30~60%である場合には、水以外の原料として前記過酸化物と前記セメントのみを用いて、高い反応効率と水面浮上性、耐久性とを兼ね備えた前記多孔質光触媒体を構成することができる。これらの原料は、特に人体及び環境に対する安全性が高く、かつ安価であることから、当該原料のみからなる前記多孔質光触媒体は、産業上の実用性が極めて高いものである。
一方、前記多孔質光触媒体の全固形分における、前記過酸化物の含有重量比は、通常20~83%、好ましくは50~75%、より好ましくは60~70%とすることができる。
前記多孔質光触媒体には、上記効果を妨げない限りにおいて、上記原料以外に、他の光触媒、添加剤などが含有されていてもよい。
「他の光触媒」としては、光触媒活性を有する物質であれば制限なく用いることができる。具体的には、第一の実施形態のポリフェノール鉄錯体や、酸化チタンなどを挙げることができる。これらの他の光触媒は、単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
「添加剤」としては、例えば、加熱又はアルカリとの反応により、二酸化炭素、酸素、窒素などのガスを発生させて、多孔質構造の形成に寄与する発泡剤などを挙げることができる。これらの添加剤は、単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
「発泡剤」としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、粉末アルミニウム、塩化アルミニウムより選ばれた1以上のものを用いることができる。
前記多孔質光触媒体の全固形分における、前記「他の光触媒」の含有重量比は、通常60%以下とすることができる。また、前記多孔質光触媒体の全固形分における、前記「添加剤」の含有重量比は、通常10%以下とすることができる。前記多孔質光触媒体の全固形分における、前記「発泡剤」の含有重量比は、通常0.4~4.0%とすることができる。
前記多孔質光触媒体は、可視光を含む幅広い波長域の光を吸収して、強力な光触媒活性を発揮する。具体的には、太陽光や、200~1200nmという幅広い波長域の光、すなわち、紫外線、可視光、赤外線から選ばれた1以上の光を照射することにより、強力な殺菌及び水質浄化作用が示される。
中でも、前記多孔質光触媒体は、前記可視光のうち390~660nmの波長の光を照射した時に強い光触媒活性を示す。特に570~590nmの波長の黄色乃至緑色光を照射することによって、極めて強い光触媒活性(殺菌、水質浄化作用)を示す。
また、前記多孔質光触媒体は、紫外線及び赤外線を照射した時にも強い光触媒活性を示す。紫外線では、特に200~390nmの波長の光を照射することにより、強い活性を示す。赤外線では特に800~1200nmの波長の光を照射することにより、強い活性を示す。
したがって、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルと前記多孔質光触媒体とを併用する場合には、幅広い波長の光を照射するのが好ましく、特には200~1200nmの波長の光が好ましい。なお、前記光照射時間としては、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルのみを用いる場合と同様である。
前記多孔質光触媒体を水に投入し、前記光を照射すると、前記過酸化物と水との反応によって過酸化水素及び酸素が水中に溶出されるとともに、光触媒活性によりヒドロキシラジカルも生成される。
前記過酸化物は水に溶けにくいため、酸素及び過酸化水素は長期間にわたり徐々に溶出される。また、光触媒活性も長期間安定に維持される。
前記多孔質光触媒体の前記病原微生物に対する効果の持続期間は、前記過酸化物の含有量等に応じて異なるが、例えば、数カ月間~数年間とすることができる。なお、前記多孔質光触媒体は、人体や環境に対し安全性が高い物質により構成されているため、前記耐用期間が過ぎた後も水中に残存していても問題はない。
前記多孔質光触媒体の使用量は特に限定されず、所望の効果が得られる量とすればよい。具体的には、水1Lに対する前記多孔質光触媒体の重量として、10g以上、好ましくは20~200gとすることができる。
前記多孔質光触媒体の表面に汚れや藻類などが付着すると、光触媒活性が低下するが、強い光(紫外線、可視光、赤外線から選ばれた1以上の光、特に紫外線が好ましい)を照射することによりセルフクリーニングが可能であるため、光触媒活性を回復させることができる。ここで、「強い光」とは、例えば100cd(カンデラ)以上、好ましくは150cd以上の光とすることができる。
上記した多孔質光触媒体は、例えば下記のようにして製造することができる。
(1)まず、前記アルカリ土類金属の過酸化物及び前記セメントを、それぞれ多孔質光触媒体の全固形分における上記の含有重量比となるように混合する。これらの原料は、いずれも粉末状又は粒状のものが好ましく、特には粒径5mm以下のものが好適に用いられる。
また、上記原料以外の原料(水を除く)を用いる場合は、この段階で混合する。
(2)次に、上記(1)で混合した前記原料に水を加え、混合する。加水率としては、前記原料の全固形分に対して50~80重量%、好ましくは50~70重量%とすることができる。
このとき、前記アルカリ土類金属の過酸化物が水と反応することで酸素が発生する。また、前記発泡剤を含有させる場合は、当該発泡剤からもガスが発生する。これらのガスが気泡となり、多孔質構造を形成させる。
(3)そして、上記(2)で得られた混合物を成形する。形状に制限はないが、例えば厚さは0.1~10cmの範囲とすることにより、前記多孔質光触媒体の内部まで光が届きやすくなるので好ましい。
特に魚介類の水槽等で使用する場合は、景観を壊さないように、貝殻、サンゴ、小石などを模した形状に成形してもよい。この場合、多孔質光触媒体が浮上しないよう、重りを付けることが好ましい。また、成形手段にも特に制限はない。
(4)さらに、上記(3)で得られた成形物を乾燥させ、固化させる。
乾燥方法としては多孔質体が固化すればよく、特に限定されないが、例えば熱風又は送風乾燥、加熱乾燥などが挙げられる。また、乾燥条件も特に限定されないが、例えば20~98℃、好ましくは30~80℃、より好ましくは40~60℃の温度で、1~36時間、好ましくは4~24時間、より好ましくは6~18時間とすることができる。
このような多孔質光触媒体は、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルと併用することによって、魚介類の飼育又は病気治療の用途において非常に高い効果を発揮する。
具体的には、前記多孔質光触媒体を、前記魚介類の水槽の水に投入することにより、前記魚介類に酸素が供給されるとともに、過酸化水素が溶出される。当該過酸化水素は、前記ポリフェノール鉄錯体によるフェントン反応に用いられる。さらに、可視光応答型光触媒活性により、幅広い波長の光を吸収して殺菌・水質浄化作用が奏される。これらの作用効果は長期間持続されるうえに、セルフクリーニングも可能であるため、管理コストを極めて少なくすることができる。
以下、実施例により本実施の形態を詳しく説明する。
(実施例1)魚介類の飼育及び病気の治療に利用できるポリフェノール鉄錯体カプセルの製造
(1)液1(アルギン酸水溶液)の調製
まず、ポリフェノール含有植物体としての乾燥茶葉10gを、900mLの蒸留水に入れ、これを加圧下で120℃、20分間加熱した。これを濾紙で濾過し、茶葉抽出液とした。当該茶葉抽出液に、塩化鉄(III)8.71g(鉄元素として約3g)を添加し、これに蒸留水を加えて1000mLとし、撹拌することによりポリフェノール鉄錯体溶液を得た。
次に、上記ポリフェノール鉄錯体溶液3mLと、アルギン酸ナトリウム4gと、を300mLの蒸留水に加えて撹拌し、アルギン酸水溶液を調製した。
なお、ここでのポリフェノール類供給原料(乾燥茶葉)と鉄供給原料(塩化鉄(III))との混合比率は、ポリフェノール類供給原料100重量部に対して鉄供給原料が鉄元素として約30重量部の比率となる。
上記ポリフェノール鉄錯体溶液中には、茶葉から抽出されたポリフェノール類によって、塩化鉄(III)由来の鉄イオンがFe2+の状態でキレート化されてなるポリフェノール鉄錯体が含まれていると考えられる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液3mLと、アルギン酸ナトリウム4gと、を300mLの蒸留水に加えて撹拌し、アルギン酸水溶液(液1)を調製した(図1参照)。
(2)カプセルの作製
30gの硫酸カルシウムを300mLの蒸留水に溶解させて、硫酸カルシウム水溶液(液2)を調製した。これをスターラーで撹拌しながら、図1のようにして上記のアルギン酸水溶液(液1)を液2に滴下することにより、200gのポリフェノール鉄錯体カプセル(図2参照)を製造した。
得られたカプセルは、直径約5.0mmの球形で、黒褐色を呈していた。黒褐色は茶葉抽出液の色である。当該カプセルには、鉄元素換算で約0.04重量%のポリフェノール鉄錯体が含まれている。製造後のカプセルは、使用時まで蒸留水中で4℃にて保管した。
(実施例2)魚介類の飼育及び病気の治療に利用できるポリフェノール鉄錯体カプセルの製造
(1)液1(アルギン酸水溶液)の調製
まず、下記の処方により、ビタミン混合液及び微量要素混合液を調製した。
(ビタミン混合液の処方例)
チアミン 2000mg
ビオチン 10mg
ビタミンB12 10mg
上記に蒸留水を添加して合計1000mLとした。
(微量要素混合液の処方例)
硫酸銅 1.96g
硫酸亜鉛 4.4g
塩化コバルト 2.0g
塩化マンガン 36g
モリブデン酸ナトリウム 12.6g
上記に蒸留水を添加して合計100mLとした。
次に、ポリフェノール含有植物体としての乾燥茶葉10gを、900mLの蒸留水に入れ、これを加圧下で120℃、20分間加熱した。これを濾紙で濾過し、茶葉抽出液とした。
当該茶葉抽出液に、塩化鉄(III)8.71g(鉄元素として約3g)、上記ビタミン混合液及び上記微量要素混合液を1mLずつ添加し、これに蒸留水を加えて1000mLとし、撹拌することによりポリフェノール鉄錯体混合液を得た。
なお、ここでのポリフェノール類供給原料(乾燥茶葉)と鉄供給原料(塩化鉄(III))との混合比率は、ポリフェノール類供給原料100重量部に対して鉄供給原料が鉄元素として約30重量部の比率となる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液中には、茶葉から抽出されたポリフェノール類によって、塩化鉄(III)由来の鉄イオンがFe2+の状態でキレート化されてなるポリフェノール鉄錯体が含まれていると考えられる。また、上記ポリフェノール鉄錯体混合液中には、上記微量要素も、ポリフェノール類とのキレート錯体の状態で含有されていると考えられる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液3mLと、アルギン酸ナトリウム4gと、を300mLの蒸留水に加えて撹拌し、アルギン酸水溶液(液1)を調製した(図1参照)。
(2)カプセルの作製
30gの硫酸カルシウムを300mLの蒸留水に溶解させて、硫酸カルシウム水溶液(液2)を調製した。これをスターラーで撹拌しながら、図1のようにして上記のアルギン酸水溶液(液1)を液2に滴下することにより、200gのポリフェノール鉄錯体カプセルを製造した。
得られたカプセルは、直径約5.0mmの球形で、黒褐色を呈していた。黒褐色は茶葉抽出液の色である。当該カプセルには、鉄元素換算で約0.04重量%のポリフェノール鉄錯体が含まれている。製造後のカプセルは、使用時まで蒸留水中で4℃にて保管した。
(実施例3)魚介類の飼育及び病気の治療に利用できるポリフェノール鉄錯体カプセルの製造
(1)液1(アルギン酸水溶液)の調製
まず、実施例2記載の処方により、ビタミン混合液及び微量要素混合液を調製した。次に、ポリフェノール含有植物体としての乾燥させたキクの花10gを、900mLの蒸留水に入れ、これを加圧下で120℃、20分間加熱した。これを濾紙で濾過し、キクの花抽出液とした。
当該キクの花抽出液に、塩化鉄(III)8.71g(鉄元素として約3g)、上記ビタミン混合液及び上記微量要素混合液を1mLずつ添加し、これに蒸留水を加えて1000mLとし、撹拌することによりポリフェノール鉄錯体混合液を得た。
なお、ここでのポリフェノール類供給原料(キクの花)と鉄供給原料(塩化鉄(III))との混合比率は、ポリフェノール類供給原料100重量部に対して鉄供給原料が鉄元素として約30重量部の比率となる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液中には、キクの花から抽出されたポリフェノール類によって、塩化鉄(III)由来の鉄イオンがFe2+の状態でキレート化されてなるポリフェノール鉄錯体が含まれていると考えられる。また、上記ポリフェノール鉄錯体混合液中には、上記微量要素も、ポリフェノール類とのキレート錯体の状態で含有されていると考えられる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液3mLと、アルギン酸ナトリウム4gと、を300mLの蒸留水に加えて撹拌し、アルギン酸水溶液(液1)を調製した(図1参照)。
(2)カプセルの作製
30gの硫酸カルシウムを300mLの蒸留水に溶解させて、硫酸カルシウム水溶液(液2)を調製した。これをスターラーで撹拌しながら、図1のようにして上記のアルギン酸水溶液(液1)を液2に滴下することにより、200gのポリフェノール鉄錯体カプセルを製造した。
得られたカプセルは、直径約4mmの球形で、黒褐色を呈していた。黒褐色はキクの花抽出液の色である。当該カプセルには、鉄元素換算で約0.04重量%のポリフェノール鉄錯体が含まれている。製造後のカプセルは、使用時まで蒸留水中で4℃にて保管した。
(実施例4)植物の栽培に利用できるポリフェノール鉄錯体カプセルの製造
(1)液1(アルギン酸水溶液)の調製
まず、ポリフェノール含有植物体としての乾燥茶葉10gを、700mLの蒸留水に入れ、これを加圧下で120℃、20分間加熱した。この上澄みを濾紙で濾過し、茶葉抽出液とした。
当該茶葉抽出液700mLに、硫酸鉄(II)15g(鉄元素として約5.5g)と、ホウ酸3g、硫酸マンガン2g、硫酸亜鉛0.22g、硫酸銅0.05g、モリブデン酸ナトリウム0.01g、を添加し、撹拌することによりポリフェノール鉄錯体混合液を得た。
なお、ここでのポリフェノール類供給原料(茶葉)と鉄供給原料(硫酸鉄(II))との混合比率は、ポリフェノール類供給原料100重量部に対して鉄供給原料が鉄元素として約55重量部の比率となる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液中には、茶葉から抽出されたポリフェノール類によって、硫酸鉄(II)由来の鉄イオンがFe2+の状態でキレート化されてなるポリフェノール鉄錯体が含まれていると考えられる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液3mLと、アルギン酸ナトリウム4gと、を300mLの蒸留水に加えて撹拌し、アルギン酸水溶液(液1)を調製した(図1参照)。
(2)カプセルの作製
30gの硫酸カルシウムを300mLの蒸留水に溶解させて、硫酸カルシウム水溶液(液2)を調製した。これをスターラーで撹拌しながら、図1のようにして上記のアルギン酸水溶液(液1)を液2に滴下することにより、200gのポリフェノール鉄錯体カプセルを製造した。
得られたカプセルは、直径約4.0mmの球形で、黒褐色を呈していた。黒褐色は茶葉抽出液の色である。当該カプセルには、鉄元素換算で約0.04重量%のポリフェノール鉄錯体が含まれている。製造後のカプセルは、使用時まで蒸留水中で4℃にて保管した。
(実施例5)植物の栽培に利用できるポリフェノール鉄錯体カプセルの製造
(1)液1(アルギン酸水溶液)の調製
まず、ポリフェノール含有植物体としての乾燥させたコーヒー粕10gを、700mLの蒸留水に入れ、これを加圧下で120℃、20分間加熱した。この上澄みを濾紙で濾過し、コーヒー粕抽出液とした。
当該コーヒー粕抽出液700mLに、硫酸鉄(II)15g(鉄元素として約5.5g)と、ホウ酸3g、硫酸マンガン2g、硫酸亜鉛0.22g、硫酸銅0.05g、モリブデン酸ナトリウム0.01g、を添加し、撹拌することによりポリフェノール鉄錯体混合液を得た。
なお、ここでのポリフェノール類供給原料(コーヒー粕)と鉄供給原料(硫酸鉄(II))との混合比率は、ポリフェノール類供給原料100重量部に対して鉄供給原料が鉄元素として約55重量部の比率となる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液中には、コーヒー粕から抽出されたポリフェノール類によって、硫酸鉄(II)由来の鉄イオンがFe2+の状態でキレート化されてなるポリフェノール鉄錯体が含まれていると考えられる。
上記ポリフェノール鉄錯体混合液3mLと、アルギン酸ナトリウム4gと、を300mLの蒸留水に加えて撹拌し、アルギン酸水溶液(液1)を調製した(図1参照)。
(2)カプセルの作製
30gの硫酸カルシウムを300mLの蒸留水に溶解させて、硫酸カルシウム水溶液(液2)を調製した。これをスターラーで撹拌しながら、図1のようにして上記のアルギン酸水溶液(液1)を液2に滴下することにより、200gのポリフェノール鉄錯体カプセルを製造した。
得られたカプセルは、直径約10mmの球形で、黒褐色を呈していた。黒褐色はコーヒー粕抽出液の色である。当該カプセルには、鉄元素換算で約0.04重量%のポリフェノール鉄錯体が含まれている。製造後のカプセルは、使用時まで蒸留水中で4℃にて保管した。
(実施例6)過酸化水素カプセルの製造
(1)液1(アルギン酸水溶液)の調製
まず、35%過酸化水素水3mLと、アルギン酸ナトリウム4gと、を300mLの蒸留水に加えて撹拌し、アルギン酸水溶液(液1)を調製した(図3参照)。
(2)カプセルの作製
30gの塩化カルシウムを300mLの蒸留水に溶解させて、塩化カルシウム水溶液(液2)を調製した。これをスターラーで撹拌しながら、図3のようにして上記のアルギン酸水溶液(液1)を液2に滴下することにより、200gの過酸化水素カプセル(図4参照)を製造した。
得られたカプセルは、直径約10mmの球形で、半透明の白色を呈していた。当該カプセルには、約0.35容量%の過酸化水素が含まれている。製造後のカプセルは、使用時まで蒸留水中で4℃にて保管した。
(実施例7)サイズの異なるポリフェノール鉄錯体カプセルの製造
上記実施例における滴下法とは異なる方法で、サイズの異なるポリフェノール鉄錯体カプセルを製造した。
まず、ポリフェノール含有植物体としての乾燥茶葉10gを、900mLの蒸留水に入れ、これを加圧下で120℃、20分間加熱した。これを濾紙で濾過し、茶葉抽出液とした。当該茶葉抽出液に、塩化鉄(III)8.71g(鉄元素として約3g)を添加し、これに蒸留水を加えて1000mLとし、撹拌することによりポリフェノール鉄錯体溶液を得た。
次に、上記ポリフェノール鉄錯体溶液100mLに、アルギン酸ナトリウム6gを混合し、ゲル化するまで撹拌した(アルギン酸とポリフェノール鉄錯体(Fe2+)が反応してゲル化する)。当該混合物がゲル状に固まったら、直径1~2cm又は4~5cmの球状に成形し、10(w/v)%塩化カルシウム水溶液に5分間浸漬することにより、ポリフェノール鉄錯体カプセル(図5参照)を製造した。
得られたポリフェノール鉄錯体カプセルを図5に示す。図5において、左端は、対照である実施例1の方法で製造したポリフェノール鉄錯体カプセル、中央と右端は、上記で製造したサイズの異なるポリフェノール鉄錯体カプセル、をそれぞれ示す。
(試験例1)ポリフェノール鉄錯体の安定性の検討
実施例7と同様の方法にてポリフェノール鉄錯体及び硫酸鉄(II)のカプセルを製造し、二価鉄の安定性を比較した。対照として塩化鉄(III)を用いて同様のカプセルを製造した。
(1)ポリフェノール鉄錯体カプセルの作製
まず、ポリフェノール含有植物体としての乾燥茶葉10gを、900mLの蒸留水に入れ、これを加圧下で120℃、20分間加熱した。これを濾紙で濾過し、茶葉抽出液とした。当該茶葉抽出液に、塩化鉄(III)8.71g(鉄元素として約3g)を添加し、これに蒸留水を加えて1000mLとし、撹拌することによりポリフェノール鉄錯体溶液を得た。
次に、上記ポリフェノール鉄錯体溶液100mLに、アルギン酸ナトリウム6gを混合し、ゲル化するまで撹拌した。当該混合物がゲル状に固まったら、直径1~2cmの球状に成形し、10(w/v)%塩化カルシウム水溶液に5分間浸漬することにより、ポリフェノール鉄錯体カプセル(図6左参照)を製造した。
(2)硫酸鉄(II)カプセルの作製
まず、900mLの蒸留水を加圧下で120℃、20分間加熱した。これに硫酸鉄(II)15g(鉄元素として約5.5g)を添加し、さらに蒸留水を加えて1000mLとし、硫酸鉄(II)溶液を得た。
次に、上記硫酸鉄(II)溶液100mLに、アルギン酸ナトリウム6gを混合し、ゲル化するまで撹拌した(アルギン酸と硫酸鉄(II)が反応してゲル化する)。これを、10(w/v)%塩化カルシウム水溶液に5分間時間浸漬することにより、硫酸鉄(II)カプセル(図6右参照)を製造した。
(3)塩化鉄(III)カプセル(対照)の作製
まず、900mLの蒸留水を加圧下で120℃、20分間加熱した。これに塩化鉄(III)8.71g(鉄元素として約3g)を添加し、さらに蒸留水を加えて1000mLとし、塩化鉄(III)溶液を得た。
次に、上記塩化鉄(III)溶液100mLに、アルギン酸ナトリウム6gを混合し、ゲル化するまで撹拌した(アルギン酸と塩化鉄(III)が反応してゲル化する)。これを、10(w/v)%塩化カルシウム水溶液に5分間浸漬することにより、塩化鉄(III)カプセル(図6中央参照)を製造した。
(4)結果と考察
上記で得られた3種類のカプセルの製造後約12時間後の様子を図6に示す。図6から、ポリフェノール鉄錯体カプセルは黒褐色のままで色の変化が見られなかったのに対し、硫酸鉄(II)カプセルは製造直後の透明色から黄色に変色した。なお、対照である塩化鉄(III)カプセルは、黄褐色のまま色の変化は見られなかった。
黄色又は黄褐色は鉄が三価鉄イオンであることを示している。硫酸鉄(II)カプセルが黄色に変色したことから、二価鉄イオンが酸化されて三価鉄イオンとなったことが分かる。これらの結果から、ポリフェノール類によりキレート化されていない二価鉄イオンは、アルギン酸ゲルによりカプセル化されても、二価鉄イオンとして安定化されず、フェントン反応触媒能が弱まることが示された。
(試験例2)ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルの併用処理による殺菌効果の検証
実施例1のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを併用して、大腸菌に対する殺菌効果を検証した。
まず、100mLビーカーに、1.2×105cfuの大腸菌(ATCC43888)を含むLB培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L)50mLを入れた。このビーカーに、実施例1のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセル、それぞれ1gを添加して撹拌し、30分間静置した。対照として、カプセル無添加の上記LB培地を用いた。
30分静置後に、100μLの上記LB培地を採取し、大腸菌検出用プレートに塗布した。37℃で24時間培養後に、大腸菌の生死を観察した。
結果を図7に示す。図7の(a)は対照区(カプセル無添加)、(b)は併用処理区を示す。図7から、(a)対照区では大腸菌が生存していたのに対し、(b)併用処理区では大腸菌が全滅したことが分かった。このことから、ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルとを併用することにより、短時間で殺菌可能であることが示された。
(実施例8)ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを併用した魚介類の飼育
実施例1のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを併用して、図8に示すように、魚介類の飼育を行った。
30Lの水が入った水槽に魚介類(金魚、2匹)を飼育した。1週間の間隔で、実施例1のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを、それぞれ0.5g/Lずつ添加して、通常の飼育を行った。可視光LED(380~660nm)の連続照射を毎日12時間行った。エアポンプにて常時酸素を供給した。飼育期間は6ヶ月間とした。
ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを添加するだけで、魚介類に障害を与えず、飼育を行うことができた。飼育期間中に、魚介類にポリフェノール鉄錯体による障害は見られず、病気の発生もなかった。また、水槽水が汚れにくくなった。
これらの結果から、カプセルからポリフェノール鉄錯体と過酸化水素が長期的に水槽水に溶出されることで、鉄供給、殺菌及び水質浄化効果が持続したと考えられる。また、可視光LEDを照射することで、光触媒活性が発揮され、水槽水の病原菌密度をさらに低下することができたものと考えられる。
(実施例9)ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを併用した魚介類の飼育及び病気の治療
実施例1のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを併用して、図8に示すように、魚介類の飼育及び治療を行った。
2Lの水が入った水槽に、尾腐れ病に罹患した魚介類(メダカ)6匹を入れた。実施例1のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを、それぞれ10gずつ添加して、毎日、水槽水と上記カプセルを新しいものに交換した。可視光青色LED(380~500nm)の連続照射を毎日24時間行った。上記以外は通常の方法で、3日間飼育を行った。
ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを添加するだけで、魚介類に障害を与えず、3日間で尾腐れ病が改善した。カプセルから溶出されたポリフェノール鉄錯体と過酸化水素、並びに可視光青色LEDの照射によって、メダカに障害を与えることなく、病原微生物の殺菌が行われたと考えられる。
(実施例10)ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを併用した魚介類の飼育及び病気の治療
実施例2のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを併用して、図8に示すように、魚介類の飼育及び治療を行った。
4Lの水が入った水槽に、赤斑病に罹患した魚介類(鉄魚)1匹を入れた。実施例2のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを、それぞれ5g/Lずつ添加して、毎日、水槽水と上記カプセルを新しいものに交換した。可視光青色LED(380~500nm)の連続照射を毎日20時間行った。上記以外は通常の方法で、7日間飼育を行った。
ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを添加するだけで、魚介類に障害を与えず、7日間で赤斑病が改善した。カプセルから溶出されたポリフェノール鉄錯体と過酸化水素、並びに可視光青色LEDの照射によって、鉄魚に障害を与えることなく、病原微生物の殺菌が行われたと考えられる。
(実施例11)ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを併用した魚介類の飼育及び病気の治療
実施例3のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを併用して、図8に示すように、魚介類の飼育及び治療を行った。
2Lの水が入った水槽に、水カビ病に罹患した魚介類(金魚)1匹を入れた。実施例3のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを、それぞれ5g/Lずつ添加して、毎日、水槽水と上記カプセルを新しいものに交換した。可視光青色LED(380~500nm)の連続照射を毎日20時間行った。上記以外は通常の方法で、7日間飼育を行った。
図9に示すように、ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを添加するだけで、魚介類に障害を与えず、7日間で水カビ病が改善した。図9中、(a)は治療前、(b)は治療後、の様子をそれぞれ示す。
これらの結果から、カプセルから溶出されたポリフェノール鉄錯体と過酸化水素、並びに可視光青色LEDの照射によって、金魚に障害を与えることなく、病原微生物の殺菌が行われたと考えられる。
(実施例12)ポリフェノール鉄錯体カプセルと可視光応答型多孔質光触媒体を併用した魚介類の飼育
ポリフェノール鉄錯体カプセル及び前記可視光応答型多孔質光触媒体を併用して、図10に示すように、魚介類の飼育を行った。図10中、(a)は多孔質光触媒体、(b)はポリフェノール鉄錯体カプセル、をそれぞれ示す。
(1)多孔質光触媒体の作製
まず、次のようにして多孔質光触媒体を作製した。過酸化カルシウム(シグマ アルドリッチ社製)15gとホワイトセメント(家庭化学工業社製)10gを混合し、さらに蒸留水20mLを添加して混合した。この混合物を、厚さ30mm程度の小判形に成形した後、50℃で12時間熱風乾燥により乾燥させ、1個の多孔質光触媒体を得た。
得られた多孔質体は、白色で比重が小さく、水面に浮上する。この多孔質体を2個作製した。
(2)ポリフェノール鉄錯体カプセルの作製
また、次のようにしてポリフェノール鉄錯体カプセルを作製した。まず、ポリフェノール類供給原料としての乾燥させたコーヒー粕10gを、900mLの蒸留水に入れ、これを加圧下で120℃、20分間加熱した。これを濾紙で濾過し、コーヒー粕抽出液とした。当該コーヒー粕抽出液に、塩化鉄(III)8.71g(鉄元素として約3g)を添加し、これに蒸留水を加えて1000mLとし、撹拌することによりポリフェノール鉄錯体溶液を得た。
なお、ここでのポリフェノール類供給原料(乾燥コーヒー粕)と鉄供給原料(塩化鉄(III))との混合比率は、ポリフェノール類供給原料100重量部に対して鉄供給原料が鉄元素として約30重量部の比率となる。
上記ポリフェノール鉄錯体溶液中には、コーヒー粕から抽出されたポリフェノール類によって、塩化鉄(III)由来の鉄イオンがFe2+の状態でキレート化されてなるポリフェノール鉄錯体が含まれていると考えられる。
次に、上記ポリフェノール鉄錯体溶液3mLと、アルギン酸ナトリウム4gと、を300mLの蒸留水に加えて撹拌し、アルギン酸水溶液(液1)を調製した(図5参照)。このアルギン酸水溶液(液1)を、10重量%硫酸カルシウム水溶液(液2)中に、スターラーで撹拌しながら滴下することにより、200gのポリフェノール鉄錯体カプセル(図6参照)を製造した。
得られたカプセルは、直径約5.0mmの球形で、黒褐色を呈していた。黒褐色はコーヒー粕抽出液の色である。当該カプセルには、鉄元素換算で約0.04重量%のポリフェノール鉄錯体が含まれている。製造後のカプセルは、使用時まで蒸留水中で4℃にて保管した。
(3)魚介類の飼育試験
4Lの水が入った水槽を2つ用意し、それぞれの水槽にグッピーを10匹ずつ入れて飼育した。一方の水槽には、上記で作製した多孔質光触媒体2個を浮かべ、上記で作製したポリフェノール鉄錯体カプセルを8g添加したが、もう一方の水槽には多孔質光触媒体とカプセルを添加しなかった(対照区)。どちらの水槽も、可視光LED(470~490nm)の連続照射を毎日8時間行うとともに、エアポンプにて常時酸素を供給した。飼育期間は7日間とした。
飼育期間終了後に、それぞれの水槽から100μLの水を採取し、細菌検出用プレートに塗布して培養し、水槽水中の生菌数を求めた。その結果、多孔質光触媒体とカプセルを併用した水槽では、菌密度が5~56cfu/mLであったのに対し、対照区では2.7×106cfu/mL以上であった。
このことから、多孔質光触媒体とカプセルを添加し、可視光を照射しながら飼育することで、水槽中の雑菌の増殖を抑制できることが示された。したがって、上記の方法により、魚介類の病気の治療及び予防も可能であることが示された。
また、多孔質光触媒体とポリフェノール鉄錯体カプセルを添加するだけで、魚介類に障害を与えず、飼育を行うことができた。飼育期間中に、魚介類にポリフェノール鉄錯体による障害は見られず、病気の発生もなかった。また、水槽水が汚れにくくなった。
これらの結果から、多孔質光触媒体から酸素と過酸化水素が供給され、カプセルからポリフェノール鉄錯体が溶出されることで、魚介類にFe2+イオンが供給され、健康増進及び病気の予防及び治療効果が奏されるとともに、フェントン反応が起こってヒドロキシラジカルによる殺菌、殺藻及び水質浄化効果が奏されたものと考えられる。
また、可視光LEDを照射することにより、多孔質光触媒体とポリフェノール鉄錯体双方の光触媒活性が発揮され、水槽水の病原微生物を含む菌密度をさらに低下することができたものと考えられる。
(実施例13)ポリフェノール鉄錯体カプセルと可視光応答型多孔質光触媒体の併用による殺菌効果
実施例12と同様にして製造した多孔質光触媒体及びポリフェノール鉄錯体カプセルを併用して、可視光照射による殺菌試験を行った。
まず、4Lの水が入った水槽を2つ用意した。一方の水槽には、多孔質光触媒体2個を浮かべ、ポリフェノール鉄錯体カプセルを8g添加したが、もう一方の水槽には多孔質光触媒体とカプセルを添加しなかった(対照区)。どちらの水槽も、可視光LED(470~490nm)の連続照射を毎日12時間行うとともに、エアポンプにて常時酸素を供給した。
試験開始から5日後に、それぞれの水槽から100μLの水を採取し、細菌検出用プレートに塗布して培養し、水槽水中の生菌数を求めた。その結果、対照区の水槽には2.2×105cfuの細菌が増殖していたのに対し、多孔質光触媒体とカプセルを併用した水槽では5×102cfu以下であった。このことから、多孔質光触媒体とポリフェノール鉄錯体カプセルを添加し、可視光を照射するだけで、水槽中の病原微生物を含む雑菌の増殖を抑制できることが示された。
多孔質光触媒体からは酸素及び過酸化水素が、ポリフェノール鉄錯体カプセルからはポリフェノール鉄錯体(Fe2+イオン)が、それぞれ水中に溶出されるが、これらは魚介類や環境に対して安全性が高い物質である。また、光触媒反応やフェントン反応により発生するヒドロキシラジカルもすぐに消失し、魚介類の体内に残存する心配はない。したがって、多孔質光触媒体とカプセルを用いた魚介類の飼育又は病気治療方法は、薬液を用いた従来の方法に比べて、魚介類や環境に悪影響を与える心配がない優れた方法であると考えられる。
(実施例14)ポリフェノール鉄錯体カプセルの植物栽培用鉄供給剤としての利用
実施例4のポリフェノール鉄錯体カプセルを緩効性肥料(鉄供給剤)として用いて、図11に示すように、植物の栽培を行った。
ポットの下部に貯水スペースが設けられ、当該貯水スペースとポットとの間に備えられた給水シートを伝って、貯水スペースの水が毛細管現象によりポットに給水されるように構成されている、貯水機能付きポットを用意した。
この貯水機能付きポットにシクラメンを植え、実施例4のポリフェノール鉄錯体カプセル10gと水200mLを前記貯水スペースに入れて、給水シートを伝って貯水スペースの水が土壌に給水されるようにした。栽培期間は13週間とした。
ポリフェノール鉄錯体カプセルを貯水スペースの水に添加するだけで、植物への二価鉄イオン及び微量要素の供給が可能となった。栽培期間中に、鉄欠乏による葉の黄変症状は見られなかった。カプセルからポリフェノール鉄錯体及び微量要素が徐々に溶出されることによって、植物の生育に合わせた施肥が可能となった。
従来の緩効性肥料には、化成肥料を人工樹脂でコーティングした製品が用いられている。これは肥料成分が徐々に土壌に溶け出すため、効果がゆっくりと数カ月間の長期にわたって持続する。しかし、人工樹脂は分解しにくいため、土壌中に残存し、環境への影響が指摘されている。これに比べて、本実施の形態のポリフェノール鉄錯体カプセルは、天然物質であるアルギン酸、ポリフェノール及び鉄で構成されているため、環境負荷が少ないのが特徴である。
(実施例15)ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルの切り花用水の殺菌剤としての利用
実施例5のポリフェノール鉄錯体カプセル及び実施例6の過酸化水素カプセルを切り花用水の殺菌剤(切り花の鮮度保持剤)として用いて、図12に示すように、切り花を生けた。
2つの透明な花瓶に、それぞれ蒸留水100mL、実施例5のポリフェノール鉄錯体カプセル1g、実施例6の過酸化水素カプセル1gを添加した。それぞれの花瓶に切り花(バラ)を2輪ずつ生けて、一方には花瓶の底から可視光白色LED(380~660nm)の連続照射を毎日12時間行った。花の鮮度を11日間観察した。
さらに、11日後の花瓶の水を100μL採取して、細菌検出用プレートに塗布した。48時間培養後に、細菌の生死を観察した。
その結果、ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルを水に添加するだけで、切り花の鮮度保持が可能となった。カプセル無添加の対照区では、7日間しか花の鮮度が持たなかった(萎れてしまった)のに対して、ポリフェノール鉄錯体カプセルと過酸化水素カプセルの併用処理区では、LED照射の有無にかかわらず、11日後まで花の鮮度保持が可能であった。
また、図13に示されるように、併用処理区(光照射有)では、11日後の花瓶の水から細菌が検出されなかったのに対して、対照区(カプセル無添加)では細菌が検出された。併用処理区では11日後も殺菌効果が持続していることが示された。図13中、(a)は対照区(カプセル無添加)、(b)は併用処理区(光照射有)、をそれぞれ示す。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例について詳述してきたが、具体的な構成は、これらに限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、茶葉又はコーヒー粕から抽出したポリフェノール類を用いたポリフェノール鉄錯体を含有するカプセルについて説明したが、これに限定されるものではなく、ブドウ、カカオ、アカシア、杉、サトウキビ、マンゴー、バナナ、パパイア、アボカド、リンゴ、サクランボ、グァバ、オリーブ、イモ類、カキ、桑、ブルーベリー、ポプラ、キク、ヒマワリ、竹といったあらゆる種類の植物体由来のポリフェノール類や、カテキン、タンニン酸、タンニン、クロロゲン酸、カフェイン酸、ネオクロロゲン酸、シアニジン、プロアントシアニジン、テアルビジン、ルチン、フラボノイド、フラボン、カルコン類、キサントフィル、カルノシン酸、エリオシトリン、ノビレチン、タンジェレチン、マグノロール、ホノキオール、エラグ酸、リグナン、クルクミン、クマリン、カテコール、プロシアニジン、テアフラビン、ロズマリン酸、キサントン、ケルセチン、レスベラトロール、没食子酸、フロロタンニンといった化合物としてのポリフェノール類も、本発明のポリフェノール類又はその供給原料として用いることができる。
また、例えば、前記実施例では、多価カチオン溶液中に、ポリフェノール鉄錯体を含有するアルギン酸水溶液を滴下することにより製造された、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルについて説明したが、これに限定されるものではなく、ポリフェノール鉄錯体を含有する多価カチオン溶液を、アルギン酸水溶液中に滴下することにより製造された、前記ポリフェノール鉄錯体カプセルについても、本発明に含めることができる。