JP2024123747A - 低脂肪チーズの製造方法 - Google Patents

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Kaoru Sato
孝之 三浦
Takayuki Miura
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Abstract

【課題】低脂肪チーズでありながら、硬い弾力を持たない柔らかいチーズであり、さらに旨味が強いチーズの提供。【解決手段】脂肪率2.0重量%以下の原料乳に固形比率で20重量%以下の非乳食品素材を添加し、殺菌後にスターターとして乳酸菌を添加する工程を含む、柔らかい食感と熟成風味を有する低脂肪チーズの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪率2.0重量%以下の原料乳からなる低脂肪チーズおよびその製造方法、低脂肪チーズを原料とする低脂肪プロセスチーズおよび低脂肪チーズフードに関する。これらのチーズは、従来の低脂肪タイプのチーズよりも柔らかく、熟成風味が向上している特徴を有しているため、低カロリーの食品として幅広い用途に適用できる。
近年の健康意識の高まり、あるいはメタボリックシンドローム予防の観点から低カロリーあるいは低脂肪タイプの食品の需要が高まっており、乳・乳製品においても低脂肪化した商品が上市されている。チーズ製品の場合、低脂肪の原料乳を用いると、一般にゴム様の硬い組織となり、風味も淡白であり、嗜好性の低いものとなってしまうことが知られている。これはチーズ製造の際に使用する凝乳酵素がカゼインミセルに作用してミセル表面に存在するκ-カゼインを加水分解し、その結果カゼインミセル同士の凝集を生じる。カードと呼ばれる凝固物を形成する際、脂肪球も取り込まれていくのであるが、脂肪球の少ない低脂肪乳ではカゼインミセル同士の凝集が強固となり、結果として硬い弾力のあるカードを形成すると考えられている。
低脂肪チーズの組織を改善する方法がいくつか提案されている。
特許文献1(特開平1-196256号公報)には、ナチュラルチーズから脂肪分を除去することで低脂肪でも風味が良好となることが示されている。この方法は、通常のナチュラルチーズを加熱溶融し、脂肪分を除去する工程が必要であり、新たな設備と回収した脂肪分の処理が必要となる。
特許文献2(特開平9-262053号公報)には、低脂肪原料乳に食品衛生上許容される一価の陽イオンの塩類を0.1~3重量%添加し、ナチュラルチーズを製造することで高水分の柔らかく離水の少ない低脂肪チーズが示されている。塩類を予め原料乳に加えておくと塩類が凝乳酵素の作用を阻害するため、ファインカードと呼ばれる細かい凝固物を生じやすく、歩留りの低下とホエイ排除に時間を要するようになるという課題がある。
特許文献3(特開平8-289728号公報)には脱脂乳にチーズから抽出したチーズオイルと呼ばれる脂肪を配合して乳化し、カードを形成し、熟成させることで従来の低脂肪チーズと比べて水分が高く、柔らかい組織と良好な風味を有する低脂肪チーズが示されている。ここでは脂肪を分離する工程とチーズオイルを乳化するための装置を新たに設置する必要がある。これは製造コストの上昇につながると言える。
特許文献4(特許第3157642号公報)には溶融塩と乳化剤を併用して製造される低脂肪チーズ類が報告されている。これはプロセスチーズタイプの製造方法であり、本発明のチーズと異なる。
特許文献5(特開2000-333601号公報)には脂肪率が20重量%以下の低脂肪プロセスチーズの製造方法に関するものであり、溶融塩を0.5~5重量%となるように低脂肪の原料チーズに添加し、110℃以上で加熱乳化する方法が報告されている。この方法もプロセスチーズタイプの製造に関するもので、通常80~95℃で加熱乳化するプロセスチーズ製造において110℃以上の高温で行わなければならず、設備面で課題がある。
非特許文献1には熱変性度の異なるホエイタンパク質濃縮物(WPC)をチーズ原料に添加することで低脂肪タイプのプロセスチーズの硬さやくちどけなどの食感が改善されることが述べられている。このように溶融塩を用いて加熱乳化することで低脂肪タイプの食感を改善する方法に関するものが多い。
特許文献6(特開2011-19455号公報)にはカルシウム含量を500mg/100g以下とし、固形分中脂肪率が35重量%以下の低脂肪ナチュラルチーズであって、加熱調理適性に優れた特徴を有する方法が提案されている。カルシウム含量を500mg/100g以下とするための酸性化を行う必要があり、乳酸菌を使用した場合、pHが4.8~6.3となった時点でカードを殺菌しなければならないこと、カルシウム含量のコントロールが難しいという課題がある。
特開平1-196256号公報 特開平9-262053号公報 特開平8-289728号公報 特許第3157642号公報 特開2000-333601号公報 特開2011-19455号公報
Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi, 59(3), 122-126 (2012)
本発明は、低脂肪チーズでありながら、硬い弾力を持たない柔らかいチーズであり、さらに旨味が強いチーズの提供を目的とする。
本発明では上記の現状を鑑み、チーズの低脂肪化による硬い組織形成はカゼイン同士の過剰なネットワーク形成によるものと考えた。鋭意検討を重ねた結果、カゼインネットワーク形成を抑制する非乳食品素材を低脂肪の原料乳に一定量配合し、ナチュラルチーズを製造することでチーズ組織の改善が図れることを見出し、発明に至った。これはカゼインネットワークに非乳食品素材を介在させているため、弾力性のある硬い組織を改善するだけでなく、熟成も効果的に促進され、うま味などの熟成風味を発現する効果もある。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 脂肪率2.0重量%以下の原料乳に固形比率で20重量%以下の非乳食品素材を添加し、殺菌後にスターターとして乳酸菌を添加する工程を含む、柔らかい食感と熟成風味を有する低脂肪チーズの製造方法。
[2] 脂肪率2.0重量%以下の原料乳に固形比率で20重量%以下の非乳食品素材を添加し、殺菌後にスターターとして乳酸菌を添加する工程とレンネット添加による凝固乳を得る工程と凝固乳からホエイを排除し、カードを得る工程と、前記カードを成型して熟成させる工程を含む、[1]の低脂肪チーズの製造方法。
[3] 脂肪率2.0重量%以下の原料乳に固形比率で20重量%以下の非乳食品素材を添加することを含むチーズの製造方法により製造した、柔らかい食感と熟成風味を有する低脂肪チーズ。
[4] [1]又は[2]の方法で製造した、[3]の低脂肪チーズ。
[5] 非乳食品素材が豆類であることを特徴とする、[3]又は[4]の低脂肪チーズ。
[6] 非乳食品素材が豆乳であることを特徴とする、[5]の低脂肪チーズ。
[7] 水分含量が30~55%であり、遊離グルタミン酸含量が非乳食品素材を添加しないで調製したチーズよりも5~7%高い、[3]~[6]のいずれかの低脂肪チーズ。
[8] [3]~[7]のいずれかの低脂肪チーズを原料とする低脂肪プロセスチーズ又は低脂肪チーズ食品。
本発明のチーズは、低脂肪でありながら、従来の低脂肪チーズのように固い弾力を持たず、柔らかい食感を有するという特性を有する。さらに、旨味が強く熟成風味を有するという特性を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、特段の断りがない場合を除き、%は重量%を意味する。
本発明における低脂肪チーズ食品は、脂肪率2.0重量%以下の原料乳に固形比率で20重量%以下の非乳食品素材を添加する工程とスターター乳酸菌を添加し、レンネットを添加して凝乳させる工程と、得られた凝固乳からホエイを除去してカードを得る工程と、前記カードを成型して加塩後熟成させる工程を有することを特徴とし、得られた低脂肪チーズ食品は柔らかく、熟成の風味が向上している。
本発明において、低脂肪チーズは、低脂肪乳から製造させたチーズをいう。例えば、無脂肪中の水分が49~63%でチーズ中脂肪が0~25%のチーズを低脂肪チーズということがある。
本発明に使用する原料乳は、クリームセパレータ―を使用して全乳から脂肪分を除去して得られるものであり、脂肪率2.0重量%以下の脱脂乳である。乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)(昭和二十六年厚生省令第五十二号)における低脂肪牛乳(脂肪含有率0.5~1.5%)(別表二(二)(5))、無脂肪牛乳(脂肪含有率0.5%未満)(別表二(二)(6))も使用することができる。なお、脂肪含有率は、上記省令の別表二(七)乳等の成分規格の試験法 (1)乳及び乳製品 3乳及び乳製品の乳脂肪分及び乳たんぱく質の定量法に従って測定することができる。
次に非乳食品素材は、豆類を加工した食品素材である。豆類とは、マメ科に属する一年生・多年生植物を食用とする作物である。具体的には大豆、小豆、いんげんまめ、そら豆、えんどう、ささげ、紅花いんげん、ひよこ豆、レンズ豆、緑豆等をあげることができる。特に用途範囲の広い大豆は、豆乳、豆腐や発酵食品など幅広く食される豆類であり、粉末化した大豆たんぱく質などは加工肉製品をはじめとする様々な加工食品の素材として使用されている。本発明の低脂肪チーズを製造するためには、非乳食品素材を低脂肪の原料乳に液状もしくは粉末状のかたちで添加する必要がある。大豆の場合、浸漬大豆を磨砕、加熱、ろ過して得られる豆乳を用いることができ、日本農林規格では豆乳(大豆固形分8%以上)、調製豆乳(大豆固形分6%以上8%未満)、豆乳飲料(大豆固形分4%以上6%未満)に分けられているが、いずれの豆乳も用いることができる。粉末状の非乳食品素材の場合、大豆タンパク質食品として脱脂大豆からタンパク質を抽出した濃縮大豆タンパク質(タンパク質含量70%以上)、分離大豆タンパク質(タンパク質含量90%以上)を用いることができる。
非乳食品素材の原料乳への添加量は、原料乳の固形に対し固形比率で20重量%以下であり、粉末状で添加しても、液状の状態で添加しても良い。非乳食品素材の添加量が原料乳の固形に対し、固形比率で20重量%よりも高いとレンネットによる凝乳が不十分となり、カードが細かいものとなり、ホエイと共に失われ、歩留り低下となり好ましくない。
低脂肪の原料乳に非乳食品素材を混合した後、殺菌し、乳酸菌スターターを接種する。原料乳の殺菌は55~70℃、好ましくは60~65℃で10分~1時間保持するか、又は高温短時間殺菌法で行うことができる。乳酸菌スターターを添加するときに塩化カルシウムを0.005~0.1重量%程度となるように添加してもよい。その後、乳酸が生じ酸性になるが、pHが6.0~6.5に低下したら、レンネット(凝乳酵素)を添加し、攪拌し凝固させ、チーズカードを作製する。次にカードをサイコロ状にカッティングし、カード粒が凝集しないように攪拌する。チーズの形態に応じて適当な型にカードを詰めて成型する。上記の、原料乳の殺菌工程、スターター乳酸菌の添加工程、凝乳酵素による凝固工程、チーズカードの切断、および加塩等の工程は一般的なチーズ製造方法の工程であり、適宜条件を変更して行えばよい。また、カビなどを使用した表面熟成チーズは、成型したチーズ表面に菌を接種し、適した温度と湿度で熟成させる。
本発明により得られた低脂肪チーズは、ナチュラルチーズであり、水分含量が30~55%、好ましくは40~50%、さらに好ましくは45~55%、さらに好ましくは46~48%、さらに好ましくは47~55%、さらに好ましくは48~55%、さらに好ましくは49~55%である。また、チーズ中脂肪含量が0~25%である。さらに、遊離グルタミン酸量が、1カ月熟成した場合において、好ましくは140mg/固形100g以上、さらに好ましくは145mg/固形100g以上、2カ月熟成した場合において、好ましくは210mg/固形100g以上、さらに好ましくは213mg/固形100g以上、3カ月熟成した場合において、好ましくは250mg/固形100g以上、さらに好ましくは260mg/固形100g以上である。本発明により得られた低脂肪チーズのグルタミン酸含量は、非乳食品素材を添加しないで調製したチーズよりも5~7%高い。また、非乳食品素材を添加しないで調製したチーズに比較して柔らかい食感を有し、さらに非乳食品素材を添加しないで調製したチーズよりも旨味を感じ、熟成風味を有する。本発明により得られる低脂肪チーズは、従来のナチュラルチーズ、プロセスチーズと同様に使用することができる。本発明は、本発明の方法で調製した、低脂肪プロセスチーズ及び該チーズを加工して得られるチーズ食品を含む。チーズ食品として、広くチーズを加工したものを含む食品を挙げることができるが、例えば、パンなどに塗るスプレッド、製菓製パンの中種、食材にかけるチーズ風味のソース等が挙げられる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
豆乳添加区の低脂肪チーズの調製は、まず生乳を脱脂し、脂肪分を1.5重量%に調整し、脱脂乳(原料乳)を調製した。非乳食品素材として、市販の豆乳(大豆固形分10%)を用い、豆乳が5重量%となるように原料乳に添加し、良く攪拌した後、65℃30分間の殺菌を行い、30℃に冷却した。豆乳を添加した原料乳10リットルに対して0.01重量%となるように塩化カルシウムを添加し、スターター(クリスチャン・ハンセン社製)0.5U、およびレンネット(クリスチャン・ハンセン社製)0.003%を添加して凝乳させた。1時間静置後、カードをカッティングし、ホエイを排除し、カード粒を型に詰めて圧搾し、成型した。20重量%食塩溶液に浸漬することで加塩し、ゴーダタイプの低脂肪チーズを調製し、10℃で熟成した。
比較として同一の脱脂乳を用いて、非乳食品素材として豆乳を添加せずに、調製した低脂肪チーズをコントロール区とした。
熟成後1カ月、2カ月及び3カ月後の水分と遊離グルタミン酸量を測定した。結果を表1に示す。表1に示したように、豆乳添加区の低脂肪チーズはやや高水分であるが、固形当たりの遊離グルタミン酸量は、コントロール区よりも5~7%高くなっており、非乳食品素材としての豆乳添加によって熟成も促進されていた。
Figure 2024123747000001
官能評価は、熟成後2カ月後の低脂肪チーズについて、5名のパネリストが「チーズのかたさ」と「チーズの風味」について以下に示す基準に従い5段階で評価した。
「チーズのかたさ」
1:ゴムのように非常に硬く、弾力がある。
2:硬いが、かみ砕くことができる。
3:しっかりした組織であるが、柔らかく感じる。
4:柔らかく口の中でくずれる組織。
5:非常に柔らかく口の中でとろける組織。
「チーズの風味」
1:旨味が無く、味がしない。熟成風味に欠ける。
2:旨味がわずかに感じられる。塩味が感じられる。
3:旨味を感じる。
4:旨味を感じる。やや芳醇でコクを感じる。
5:旨味を強く感じる。芳醇でコクのある風味。
結果を表2に示す。表2には、5名のパネリストの評価の平均を示している。
Figure 2024123747000002
豆乳添加区は、低脂肪チーズ特有のゴムのような硬い食感ではなく、かみ砕ける組織に改善されていた。そのため、旨味をより感じられるようになると考えられた。表1に示すように、旨味成分の一つである遊離グルタミン酸量もコントロール区よりも豆乳添加区の方が高い値を示し、熟成も進みやすくなっているものと考えられた。
また、低脂肪チーズの外観は、コントロール区でやや透明であったのに対し、豆乳添加区は乳白色を呈しており、パネリストは外観上も豆乳添加区の方が好ましいと評価した。
本発明により、柔らかく、旨味が強い低脂肪チーズを提供できる。

Claims (8)

  1. 脂肪率2.0重量%以下の原料乳に固形比率で20重量%以下の非乳食品素材を添加し、殺菌後にスターターとして乳酸菌を添加する工程を含む、柔らかい食感と熟成風味を有する低脂肪チーズの製造方法。
  2. 脂肪率2.0重量%以下の原料乳に固形比率で20重量%以下の非乳食品素材を添加し、殺菌後にスターターとして乳酸菌を添加する工程とレンネット添加による凝固乳を得る工程と凝固乳からホエイを排除し、カードを得る工程と、前記カードを成型して熟成させる工程を含む、請求項1記載の低脂肪チーズの製造方法。
  3. 脂肪率2.0重量%以下の原料乳に固形比率で20重量%以下の非乳食品素材を添加することを含むチーズの製造方法により製造した、柔らかい食感と熟成風味を有する低脂肪チーズ。
  4. 請求項1に記載の方法で製造した、請求項3記載の低脂肪チーズ。
  5. 非乳食品素材が豆類であることを特徴とする、請求項3記載の低脂肪チーズ。
  6. 非乳食品素材が豆乳であることを特徴とする、請求項5記載の低脂肪チーズ。
  7. 水分含量が30~55%であり、遊離グルタミン酸含量が非乳食品素材を添加しないで調製したチーズよりも5~7%高い、請求項3記載の低脂肪チーズ。
  8. 請求項3~7のいずれか1項に記載の低脂肪チーズを原料とする低脂肪プロセスチーズ又は低脂肪チーズ食品。
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