JP2500953B2 - 超電導スイッチング・デバイス - Google Patents

超電導スイッチング・デバイス

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JP2500953B2
JP2500953B2 JP3094898A JP9489891A JP2500953B2 JP 2500953 B2 JP2500953 B2 JP 2500953B2 JP 3094898 A JP3094898 A JP 3094898A JP 9489891 A JP9489891 A JP 9489891A JP 2500953 B2 JP2500953 B2 JP 2500953B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、一般的には超電導物
質より成る電気デバイスに関し、特に超電導膜が平衡状
態から大幅に外れて駆動され、超電導体のエネルギ・ギ
ャップの異方性に従って動作する薄膜デバイスに関す
る。
【0002】
【従来の技術】超電導膜では、非消散的電流が、荷電キ
ャリア対によって運ばれる。荷電キャリア対は、準粒子
または単一キャリアの励起に分解できる。超電導体のエ
ネルギ・ギャップは準粒子の密度によって決まる。超電
導体が、その温度の上昇、外部の放射、またはトンネル
注入によって撹乱されると、準粒子密度は高くなり、エ
ネルギ・ギャップは減少する。遂には、エネルギ・ギャ
ップが消え、現在常態キャリアによって運ばれている電
流はもはや非消散的ではなくなる。その結果、被膜に電
圧が生じる。この現象を利用して、いろいろなスイッチ
ング・デバイスが得られている。
【0003】平衡状態から大きく外れて駆動されること
によってスイッチング動作を起こす超電導物質の薄膜を
含む超電導デバイスが存在する。電流は、ある状態では
超電導電子対によって流れ、被膜に電圧は生じない。別
の状態では、電流は常態電子によって運ばれ、被膜に電
圧が生じる。後者の状態における超電導体の電流は、デ
バイスと負荷抵抗を適切に選ぶことで、前者の状態より
もかなり少なくすることができ、電流のほとんどは負荷
に切り替わる。
【0004】W. J. GallagherとS. I. Raiderによる“S
uperconducting Device” と題した米国特許第4831
421号明細書(1989年5月16日発行) は、非平衡注入
弱リンク・デバイスについて説明している。
【0005】この種の周知のすべてのデバイスに見られ
る問題として、注入された励起または準粒子には、どの
結晶方向にも等しく拡散する傾向がある。これは基本的
には超電導体の結晶構造の異方性による。その場合、最
も有望なデバイス構造では、撹乱された物質の量が、所
要量よりも多くなり、デバイス・ゲインとスイッチング
速度にとって逆効果となる。
【0006】La1-xSrxCuO4、Y1Ba2Cu3
7-xなど、遷移温度(Tc)の高いいくつかの酸化物超電
導体のエネルギ・ギャップは、かなりの異方性を示すこ
とが観測されている。この観測は、赤外線照射とトンネ
ル効果の測定による実験観測されているエネルギ・ギャ
ップの差と、大きいギャップが予測される結晶方向に被
膜を配向したときにトンネル効果測定値にみられる通常
は大きいギャップとによって、少なくとも部分的には確
認されている。エネルギ・ギャップの異方性の程度は現
在のところ充分には明らかにされていないが、ギャップ
は、超電導物質の結晶学上の底面と、該結晶学上の底面
に対して垂直な方向の間で2倍以上異なることが認めら
れる。たとえばY1Ba2Cu37-xの異方性について
は、T. R.DingerらによるPhysical Review. Lett. Vol.
58、No. 25、pp. 2687-2690(1987年6月22日)、T. K.
Worthingtonらによる Physical. Review. Lett.Vol. 5
9、No.10、pp.1160-1163(1987年9月7日)、及び D. E.
FarrellらによるPhysicalReview B、Vol. 36、No. 7、
pp. 4025-4027(1987年9月1日)に説明されている。ギ
ャップの異方性についての説明とデータは、Phys. Rev.
6 及びInt'l.J. Mod.Phys.、1/90に発表される論文に
みられる。
【0007】A. Davidsonらによる米国特許出願第51
552号(1987年5月15日出願)“High Current Conduc
tors and High Field Magnets Using AnisotropicSuper
conductors”は、異方性超電導体を用いた磁石を示して
いる。
【0008】しかし、この発明以前は、以下に述べるよ
うな独自の性質を持つ電子デバイスを得るように、この
ような遷移温度の高い酸化物超電導体について観測され
たエネルギ・ギャップの異方性を活用していなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、デ
バイスを構成する超電導物質のエネルギ・ギャップの異
方性に従って動作する電気デバイスを提供することにあ
る。
【0010】この発明の他の目的は、薄膜構造を構成す
る、遷移温度の高い酸化物超電導体のエネルギ・ギャッ
プの異方性に従って動作する薄膜構造を提供することで
ある。
【0011】この発明の更に他の目的は、薄膜デバイス
構造の電流を制御するために遷移温度の高い酸化物超電
導体のエネルギ・ギャップの異方性を活用する薄膜デバ
イス構造を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述の問題は、基板上に
形成され、異方性超電導物質の層または被膜より成る第
1電極またはベース電極を含む超電導スイッチング・デ
バイスによって克服される。ベース電極の物質は、第1
の結晶軸を持ち、この軸に沿った物質のエネルギ・ギャ
ップは他の結晶軸に沿った物質のエネルギ・ギャップよ
りも小さい。この超電導スイッチング・デバイスはこの
ほか、バイアス電圧eVの影響下で、ベース電極に準粒
子を注入するために、ベース電極とのプレーナ・トンネ
ル接合またはエッジ・トンネル接合を成す少なくとも1
つの注入電極を含む。第1結晶軸は、本発明に従って、
トンネル接合の準粒子注入効率を最適化するために、所
定の方法でトンネル接合と整列される。
【0013】ベース電極の結晶学上の底面はa−b面と
する。下付き符号a、b、cは、互いに直角な3つの結
晶軸を示すのに用いられる。物質のエネルギ・ギャップ
Δの各軸成分△a、△b、△cの関係は、ΔaとΔbの
各々がΔcより大きい。前述の文献で論じられているよ
うに、異方性エネルギ・ギャップを示す代表的な超電導
物質では△aおよび△bはそれぞれ△cの2倍またはそ
れ以上である。また、バイアス電圧(eV)はΔc+Δi
<eV<Δa+Δiとなるように選ばれる。ここでΔi
注入電極のエネルギ・ギャップである。常態の物質より
成る注入電極の場合、Δiはゼロである。
【0014】
【実施例】この発明では、超電導体、なかでも高遷移温
度の酸化物超電導体のエネルギ・ギャップ異方性に基づ
く非平衡薄膜デバイス構造の実施例をいくつか説明す
る。エネルギ・ギャップ異方性は、本発明に従って、薄
膜デバイスの電流を制御するために用いられる。ここに
述べる構造は、新規のデバイスに用いられるほか、既存
のデバイスの動作を改良するためにも用いられる。
【0015】図1は、非平衡薄膜デバイス10の第1実
施例の平面拡大図である。デバイスは、ベース膜12と
注入膜14の間に形成されたプレーナ・トンネル接合1
6を含む。ベース膜12は、バンクと呼ばれる広い2つ
の領域12bとこれをつなぐ比較的狭いブリッジまたは
リンク12aに分けられている。デバイス10の代表寸
法は、Aが約0.5ミクロンないし約5.0ミクロンの
範囲、Bが約1.0ミクロンないし約3.0ミクロンの
範囲、Cが約10ミクロン以下、Dが約2.0ミクロン
ないし約10ミクロンの範囲、そしてEが約0.5ミク
ロンないし約2.0ミクロンの範囲である。ここでわか
るように寸法CはD−2Eに等しい。ベース膜12の高
遷移温度超電導物質の厚みは、約100オングストロー
ムないし約1000オングストロームの範囲である。ベ
ース膜12と注入膜14の間の少なくとも接合16の領
域には、厚みが約10オングストロームないし約100
オングストロームの範囲の薄いトンネル・バリアが形成
される。代表的な例では、トンネル・バリアは、比較的
薄い酸化物層として形成されるが、BaF2 の層も適当
な物質である。デバイス10は、先に引用した W. J.
Gallagher と S.I.Raiderによる“Superconducting D
evice” と題した米国特許第4831421号明細書
(1989年5月16日発行)に述べられているタイプの接合
弱リンク・デバイスとして動作可能である。
【0016】少なくともベース膜12は、本発明の実施
例に従って、La1-xSrxCuO4、Eu1Ba2Cu3
7-y、Y1Ba2Cu37-xなど、異方性高遷移温度酸化
物超電導体の薄膜から構成される。ここでベース膜12
の結晶学上の底面は、下の基板18の面に垂直に整列さ
れる。注入膜14は、通常の物質でも、高遷移温度超電
導体でもよい。ベース膜12は、MgO、SrTiO3
など、適切な基板18上に単結晶または少なくとも配向
多結晶膜を形成する薄膜成長法によって形成される。こ
こではトンネル接合16は、ベース膜12と注入膜14
の間に形成されるものとする。
【0017】高遷移温度超電導体は、バルクをつくる、
酸化物、炭酸塩、硝酸塩、粒体などの標準的なセラミッ
ク処理、薄膜を被着する気相搬送、プラズマ溶射など、
様々な手法により、様々な形のものが作製されている。
たとえば、P. Chaudhariらによる米国特許出願第275
84号(1987年3月18日出願)は、 高遷移温度超電導体
の薄膜を形成する手法について述べている。
【0018】この点について、Hidefumi Asano、Masayo
shi Asahi、及びOsamu Michikamiによる“Epitaxy and
Orientation of Eu1Ba2Cu3O7-x Films Grown In Situ b
yMagnetron Sputtering”と題したジャーナル記事(Jap
anese Journal of Applied Physics、Vol. 28、No. 6、
pp. 981-983、89年6月) は、化学量論酸化物のターゲ
ットからのマグネトロン・スパッタリングによる、Eu
1Ba2Cu37-yの超電導膜のSrTiO3とMgO
(100)の基板へのその場成長について説明してい
る。このスパッタリング・プロセスでは、c軸配向だけ
でなくa軸配向も完璧にエピタキシャル膜を形成できる
としている。エピタキシャル膜の配向は、基板温度、酸
素圧、及び膜の成長速度を選ぶことで制御されるとして
いる。
【0019】以下の説明では次のような表記を用いる。
結晶学上の底面をa−b面と呼び、下付き符号a、b、
cは、結晶軸の向きを示すのに用いる。本発明で使用す
る異方性エネルギ・ギャップを示す超電導物質の各軸に
沿ったエネルギ・ギャップは、Δaおよび ΔbがΔc
の2倍またはそれ以上であるのが好ましい。
【0020】上述の表記を用いると、幅B、長さCの薄
い線形構造またはリンク12aが、マグネトロン・スパ
ッタリングなどによって形成される。リンク12aの長
軸は、異方性高遷移温度超電導物質のc軸または低エネ
ルギ・ギャップの方向に整列するように形成される。超
電導または常態の対電極(注入膜14)を持つトンネル
接合16は、バイアスがかけられて、下層のベース膜1
2、特にリンク12aに準粒子を注入する。バイアス電
圧(eV)は次式が得られるように選択される。
【0021】
【数1】 △c + △i < eV < △a + △i (1) ここでΔcとΔaは、それぞれc軸、a軸に沿ったエネ
ルギ・ギャップの値、Δi は超電導注入膜16のエネ
ルギ・ギャップである。注入膜が常態物質から形成され
ていれば、Δiはゼロ、式はΔc<eV<Δa とな
る。eVの代表値は、約10ミリボルトないし約100
ミリボルトの範囲である。注入膜14の全体的な効果
は、下層の高遷移温度超電導物質の常態と超電導状態を
切り替えることである。
【0022】この発明の薄膜デバイス10では、注入さ
れた準粒子はc軸の方向に拡散する。しかし、高遷移温
度物質の異方性及び被膜の各軸が整列することから、a
軸方向でエネルギ・ギャップが大きいのは、その方向に
は準粒子の状態が生じ得ないことを意味する。超電導状
態では、リンク12aを流れる電流は電子対によって運
ばれる。接合16を介して注入した際、準粒子は、この
超電導膜に入り、拡散して注入領域から遠ざかる。これ
らの準粒子はリンク12aに閉じ込められ、超電導バン
ク12bには拡散しない。そのエネルギがa方向のエネ
ルギ・ギャップよりも小さいからである。準粒子がとも
かくバンク12bに入るのは、Andreevスパッタリング
(準粒子が電子対に変換される)による場合だけであ
る。準粒子の非平衡分布は、最終的には、リンク12a
の領域に閉じ込められ、デバイス10の注入効率が大幅
に増加する。このようにリンク12aは常態へ簡単に移
行させることができる。そのとき高温超電導物質の抵抗
率が高く、リンク12aの線形ジオメトリが狭いことか
ら、リンク12aは大きい抵抗値を示す。
【0023】この種の非平衡スイッチング・デバイスの
場合、リンク12aの長さは、スイッチングを高速にす
るために短くするのが望ましい。これまでのデバイスで
は、注入電極領域から注入されたかなりの数にのぼる準
粒子がバンクに拡散するためにこうした短リンク・デバ
イスの動作が損なわれた。動作時には、バンクの撹乱は
最小限にするのが望ましい。この拡散はリンクの準粒子
密度を抑え、リンクを定常常態に移行させるために高い
注入電流が必要になる。すなわち従来の短リンク・デバ
イスでは、注入効率は下がる。しかし、この発明のデバ
イス10は、注入された準粒子をリンク12a自体に閉
じ込めることによって、これまでのデバイスを上回る注
入効率を示し、高いデバイス・ゲインが得られる。
【0024】もう1つ、この発明によって得られる構造
上の重要な特性は、デバイス10における結果的に得ら
れる物質の連続性により、非平衡フォノンがリンク領域
に閉じ込められないことである。すなわちフォノン・ト
ラップ効果(これはデバイスのターンオフ時間を制限す
ることが知られている)が減少する。さらにフォノン・
トラップ効果は、上層の高遷移温度膜と実質上同一の物
質の被膜を基板または下層として用いることによって、
実質上ゼロにまで抑えることができる。下層の物質で
は、わずかな位置変化または破損がその内部で発生し、
下層が絶縁状態となる。この方法は、下層と超電導体と
の間の音響整列性が優れていることから、フォノン・ト
ラップを実質上なくしてしまうのに用いることができ
る。上層も同様に使用できる。下層に変更を加えてこの
効果を実現するのに適した方法としては、酸素が不充分
なYBa2Cu37を基板または下層として提供し、そ
の上にYBa2Cu37の超電導薄膜を置くケースが考
えられる。
【0025】図3は、注入接合の別の構造を示す。これ
は自己整列型であるため、整列許容差の条件が緩和され
る。図3の例では、超電導リンク構造20をつくるベー
ス膜は、上層の常態または超電導状態の対電極22の下
に置かれ、リンク領域全体に延びるプレーナ接合24を
つくるトンネル酸化物の層によって対電極22と分離さ
れる。構造20の超電導膜のc軸の向きは図1に示すと
おりである。すなわち、ベース膜の結晶学上の底面は基
板18に対して直角に向けられ、c軸は、ベース電極の
幅が狭いリンク領域の長軸に整列される。トンネル接合
の電圧は、先の式(1)であらわされるように、2つの
ギャップ値の間になるように選択され、大きいギャップ
の方向に運動量を示す準粒子は最小限に注入されるにと
どまる。したがって、準粒子密度がかなり高くなり、第
1実施例のように(図1)、対電極22の下のリンク領
域に閉じ込められる。
【0026】図1、図3と同様のベース膜のジオメトリ
は、上層のトンネル領域がなくても採用できることに注
意されたい。図2のベース膜12は入射電磁放射線を吸
収し、リンク12aの領域はフォトンの吸収によって撹
乱される。エネルギ・ギャップを超えるエネルギを有す
るフォトンは電子対を破壊するため、粒子密度が増加す
る。もし次式が満足されるならば、この発明に従って、
c軸方向に運動量を示す準粒子だけが生成される。
【0027】
【数2】 2△c<ξω<2△a ここでξはプランク定数、ωは入射放射線の波長、これ
に代えて、リンク12a領域の超電導膜を、磁界(これ
も方向効果を示す)によって撹乱することも可能であ
る。
【0028】この発明の他の弱リンク例を図4、図5に
示した。図4では、エネルギ・ギャップの小さいc軸が
基板18の面に対して垂直になるように超電導ベース膜
26を基板18上に配置する。常態または超電導状態の
注入膜または対電極28は、トンネル・バリアによって
ベース膜26から分離され、プレーナ接合30を形成す
る。電流は大きいギャップ(a、b)の方向に流れ、小
さいギャップ(c)の方向にトンネル注入が生じる。図
5では、超電導ベース膜32は、小さいギャップ(c)
の軸が基板18の面にあって、注入膜34の長軸に平行
になるように基板18上に配置される。注入膜34は、
トンネル・バリアによってベース膜32から分離され、
2つのエッジ接合36を成す。電流は大きいギャップ
(a、b)の方向に流れ、小さいギャップ(c)の方向
にトンネル接合が生じる。本発明に従って、準粒子の注
入にギャップの小さいc軸方向を用いるのは、リンクを
常態に移行させるのに必要な注入電流が少ないことを意
味する。
【0029】図4、図5に示したケースでは、注入によ
って準粒子密度が高くなり、注入エネルギが、ギャップ
がa−b面のギャップ値よりも小さい電子対を破壊する
のに充分な程度であっても、どの結晶方向においてもエ
ネルギ・ギャップが弱まる。これは、準粒子密度とエネ
ルギ・ギャップが、各結晶方向を結び付けるように関係
づけられているからである。したがって、1方向に運動
量を示す準粒子を追加することによって、エネルギ・ギ
ャップはどの方向でも弱まる。この他、1方向は常電導
性に、他の方向は超電導性とすることも可能である。こ
れは観測されていないケースである。
【0030】図6は、電極が異方性超電導膜であるダブ
ル・トンネル接合構造を示す。2つのエッジ接合38、
40が超電導ベース電極42を共有する。簡単のため、
結晶配向がベース膜42、第1注入膜44及び第2注入
膜46において同一であるケースを考える。図6の構造
では、各膜は、結晶学上の底面が基板18に対して垂直
になるように配向される。よってΔa>Δcである。接
合38、40がエッジ接合であるときのI−V特性は図
7に示すとおりである。ここで曲線“A”は接合38
に、曲線“B”は接合40に対応する。2つの電流・電
圧特性は、c軸または小ギャップ方向(曲線A)とa軸
または大ギャップ方向(曲線B)にトンネル効果が生じ
るトンネル接合に関係する。バイアス電圧が、関連する
エネルギ・ギャップ2Δc(曲線A)、2Δa(曲線B)
の2倍を超えるときに接合電流が急上昇する。
【0031】図8は、図6のデバイスの一部断面を説明
するために、注入膜46及びベース膜42の勾配を持つ
エッジの間に形成された領域(破線)としてのエッジ接
合40を示す。ベース膜のエッジ勾配は代表値で30゜
ないし60゜の範囲である。ベース膜42と注入膜46
の間には薄いトンネル・バリア48が介在する。
【0032】図9は、上記と同様のダブル・トンネル接
合構造を示す。電極は異方性超電導膜である。1つのエ
ッジ接合50と1つのプレーナ接合52が、超電導ベー
ス電極54を共有し、プレーナ接合52は、基板18と
垂直に整列する小ギャップ(c)方向をサンプリングす
る。ここでも簡単のため、結晶配向は、ベース膜54、
第1注入膜56及び第2注入膜58において同一である
ケースを考える。図9の構造では、結晶学上の底面が基
板18に平行になるように各膜を配向する。
【0033】図6、図9いずれの構造でも、ベース電極
膜の寸法は、準粒子拡散長すなわち数千オングストロー
ムのオーダである。小ギャップ(c)接合に対して、2
Δc <eV<2Δa となるようにバイアスがかかると、
ベース電極膜に非平衡準粒子が注入される。被膜のエネ
ルギ・ギャップは、注入された準粒子が、撹乱されてい
ない被膜のa軸方向に準粒子として伝播するのに充分な
エネルギを有さなくても、大ギャップと小ギャップの両
方が少なくなるように、準粒子密度に自己整列的に関連
する。これらの構造は非平衡型デバイスに採用できる。
【0034】各構造は、この発明に従って、Δaをゼロ
に下げるのに2Δaよりも低い電圧における接合が利用
できるというユニークな性質を示す。つまり電圧ゲイン
が利用できる。また、同じ電圧を小ギャップ(c)接合
ではなく大ギャップ接合に印加しても、準粒子がかなり
注入されることはないという意味で、2つの注入電極が
分離される。もちろん2つの接合の臨界電流密度は個別
に選択できる。さらに、超電導体の臨界温度よりもかな
り低い温度で動作する常態金属膜を注入電極に使用する
ことによっても、デバイスのI−V特性が明確な非線形
性を示す。
【0035】また、大ギャップの異方性は他の物質、な
かでも人工的に多層化された超格子においても得られる
と言える。ここから、この発明は、単一または名目上の
多結晶膜にのみ限定されるとみるものではない。さらに
この発明は、高遷移温度の超電導物質に限定されるもの
ではなく、異方性を示す遷移温度の低い超電導物質にも
適用できる。そしてこの発明の実施例を、ここで明示し
た高遷移温度の超電導化合物に限定する意図もない。
【0036】
【発明の効果】本発明は、デバイスを構成する超電導物
質のエネルギ・ギャップの異方性に従って動作する電気
デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Tcの高い超電導物質より成るベース膜と、常
態またはTcの高い超電導物質より成る上層の注入膜と
を含む薄膜デバイスの第1実施例の平面拡大図である。
【図2】放射線の吸収によって準粒子を与える実施例の
平面拡大図である。
【図3】Tc の高い超電導物質より成るベース膜を含む
薄膜デバイスの第2実施例の平面拡大図である。
【図4】上層の注入膜とのプレーナ・トンネル接合を作
る、Tc の高い超電導物質より成るベース膜を含む薄膜
デバイスの第3実施例の平面拡大図である。
【図5】上層の注入膜との間に2つのエッジ・トンネル
接合を形成する、Tc の高い超電導物質より成るベース
膜を含む薄膜デバイスの第4実施例の平面拡大図であ
る。
【図6】上層の2つの注入膜の各々との間にダブル・エ
ッジ・トンネル接合を形成する、Tc の高い超電導物質
より成るベース膜を含む薄膜デバイスの第5実施例の平
面拡大図である。
【図7】図6の2つのエッジ・トンネル接合の各々のI
−V特性をあらわすI−V曲線の図である。
【図8】図6のエッジ・トンネル接合の1つの断面図で
ある。
【図9】上層の2つの注入膜との間に1つのエッジ・ト
ンネル接合と1つのプレーナ接合を形成する、Tc の高
い超電導物質より成るベース膜を含む薄膜デバイスの第
6実施例の平面拡大図である。
フロントページの続き (72)発明者 アラン・ウィリス・クラインサッサ アメリカ合衆国ニューヨーク州、パトナ ム・ヴァリ、スターヴュ・アヴェニュ 68番地 (56)参考文献 特開 平1−101676(JP,A) 特開 昭60−160675(JP,A) 特開 昭57−76890(JP,A) 特開 平1−144688(JP,A) 特開 平2−27613(JP,A)

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板上に形成された超電導スイッチング・
    デバイスであって、 第1結晶軸に沿ったエネルギ・ギャップが他の結晶軸に
    沿ったエネルギ・ギャップよりも小さい異方性エネルギ
    ・ギャップの超電導物質層より成る第1電極手段と、 バイアス電圧の影響下で準粒子を上記第1電極手段に注
    入するように、上記第1電極手段との間にトンネル接合
    を形成する少なくとも1つの注入電極手段とを具備し、 上記第1結晶軸は上記第1電極手段を流れる電子対の電
    流の方向と同一になるように配列されており、 上記超電導物質の互いに直交する結晶軸をa,b,cと
    し、上記第1電極手段の結晶学上の底面をa−b面と
    し、上記超電導物質の上記結晶軸a,b,cに沿ったエ
    ネルギ・ギャップを△a,△b、△cとしたとき、ΔaとΔ
    bがそれぞれΔcの少なくとも2倍であり、上記バイアス
    電圧eVが、 △c + △i < eV < △a + △i ここでΔiは上記注入電極手段のエネルギ・ギャップを
    満足するように選ばれていることを特徴とする超電導ス
    イッチング・デバイス。
  2. 【請求項2】上記トンネル接合がプレーナ接合である、
    請求項1記載の超電導スイッチング・デバイス。
  3. 【請求項3】上記トンネル接合がエッジ接合である、請
    求項1記載の超電導スイッチング・デバイス。
  4. 【請求項4】上記第1電極手段との間に第2トンネル接
    合を形成する第2注入電極手段を含む、請求項1記載の
    超電導スイッチング・デバイス。
  5. 【請求項5】上記トンネル接合の両方がエッジ接合であ
    る、請求項4記載の超電導スイッチング・デバイス。
  6. 【請求項6】上記トンネル接合の一方がエッジ接合であ
    り、他方がプレーナ接合である、請求項4記載の超電導
    スイッチング・デバイス。
  7. 【請求項7】上記少なくとも1つの注入電極手段が、上
    記第1電極手段の他の部分よりも幅の狭い該第1電極手
    段の部分において該第1電極手段との間にトンネル接合
    を形成する、請求項1記載の超電導スイッチング・デバ
    イス。
  8. 【請求項8】上記トンネル接合がプレーナ接合であり、
    上記第1軸が、上記幅の狭い部分の長軸と平行に整列す
    る、請求項7記載の超電導スイッチング・デバイス。
  9. 【請求項9】トンネル接合面積が、上記幅の狭い部分に
    関係する全面積に等しい、請求項7記載の超電導スイッ
    チング・デバイス。
  10. 【請求項10】上記トンネル接合がプレーナ接合であ
    り、上記第1軸が基板面と垂直に整列している、請求項
    7記載の超電導スイッチング・デバイス。
  11. 【請求項11】上記少なくとも1つの注入電極手段が、
    上記第1電極手段の他の部分よりも幅の狭い該第1電極
    手段の部分において該第1電極手段との間に2つのエッ
    ジ・トンネル接合を形成する、請求項7記載の超電導ス
    イッチング・デバイス。
  12. 【請求項12】少なくとも上記第1電極手段が、結晶学
    上の底面が基板面と垂直に整列している遷移温度の高い
    異方性超電導層より成る、請求項1記載の超電導スイッ
    チング・デバイス。
  13. 【請求項13】少なくとも上記第1電極手段が、結晶学
    上の底面が基板面と平行に整列している遷移温度の高い
    異方性超電導層より成る、請求項1記載の超電導スイッ
    チング・デバイス。
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