JP2935954B2 - 鋳造、熱間加工用潤滑剤 - Google Patents

鋳造、熱間加工用潤滑剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は離型、潤滑作用と共に、
鋳塊又は被熱間加工塊表面の改質機能を兼ね備えた鋳
造、熱間加工用潤滑剤に関するものである。
【0002】鋳塊、又は鋳物製造用金型、或いは連続鋳
造用金型又は金属熱間加工用金型等の離型・潤滑剤とし
て、各種植物油、鉱物油等の油剤に四弗化エチレン樹脂
の粉末を分散せしめた潤滑剤が知られている(特開平3
−121197号公報)。この潤滑剤は、従来から使用
されている黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑物質を各種
油剤に混合分散せしめた潤滑剤に較べ、潤滑、離型作用
が優れているほか、四弗化エチレン樹脂が溶湯に触れた
際に発生する分解ガスが強力な還元作用を有するため
に、鋳塊又は被熱間加工塊表面に酸化皮膜が生成せ
ず、鋳肌が平滑で肌荒れ、アバタ、シワ等の欠陥が少な
い、鋳型又は熱間加工用金型にクラック、ワレ等の疵
が発生し難いため、鋳型の寿命が長い、鋳型又は熱間
加工用金型に黒鉛や金属酸化物が付着し難く、洗浄の手
間が省ける、等の優れた特徴を有している。
【0003】しかし、それにもかかわらず、つぎのよう
な欠点のためにこれまでその使用は特殊なケースのみに
限定されていた。
【0004】第一の問題点は鋳造時又は熱間加工時に、
悪臭を有する衛生上有害なガスが発生することで、この
ため鋳造及び熱間加工現場の換気が必要であり、このこ
とが、この潤滑剤の普及を著しく妨げていた。
【0005】第二の問題点は、油剤への四弗化エチレン
重合体樹脂粉末の分散性がきわめて悪いことで、このた
め使用のたびに強力な攪拌を必要とし、このことが、こ
の潤滑剤の実用性を著しく損ねていた。
【0006】第三の問題点は、鋳塊皮下にピンホールや
ブローホールが発生し易いことで、この結果、鋳塊表皮
の削り代を多くとらざるを得ず、この結果、せっかく鋳
肌が改善されても、歩留りの改善効果は僅かでしかなか
った。
【0007】第四の問題点は、値段が高いことで、これ
は四弗化エチレン重合体樹脂粉末が高価であることによ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、鋳造時又は
熱間加工時における有害ガスの発生が少なく、また油剤
への分散性が良好で攪拌を必要とせず、さらに、鋳塊皮
下のピンホール、ブローホール等の発生がなく、しかも
安価な鋳造、熱間加工用潤滑剤を提供することを目的と
するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】以下本発明に至る経過を
たどりつつ、上記の諸問題を解決するための手段につい
て説明する。
【0010】まず発明者等は、鋳造又は熱間加工時に発
生する悪臭を有する有毒ガスにつき検討し、それが主と
して四弗化エチレン樹脂のバージン粉末が鋳造又は熱間
加工時に加熱分解する際に発生するブチル系、ブチレン
系のモノマーガスに因ること、したがってバージン粉末
の使用に問題があることをつきとめた。そこで、バージ
ン粉末の代りにバージン粉末を焼結した四弗化エチレン
重合体焼結樹脂の切り粉を粉砕して得られる四弗化エチ
レン重合体焼結樹脂粉末を使用したところ、上記の悪臭
を有する有害ガスの発生が全くないことを確認した。
【0011】つぎに発明者等は、油剤への四弗化エチレ
ン重合体焼結樹脂粉末の分散性につき検討し、分散性が
該焼結樹脂粉末の粒度、粒形、粒度分布と密接に関係し
ていることを知った。まず、粒度については、粒径1μ
m以下では粒子がきわめて凝集し易いことがわかった。
粒子が凝集して大きな塊になると、分散性は悪くなり、
この結果、滑らかで平坦な鋳肌を得ることが困難にな
る。
【0012】一方粒径が1μm以上になると、凝集性は
なくなるが、粒径が50μmを超えると、油剤と粒子の
比重の違いがきいて来て、粒子の沈降速度が急激に増
し、攪拌してもすぐに粒子が沈殿してしまい使用上困難
をきたすことになる。したがって粉末粒径は1〜50μ
m、望ましくは2〜20μmであることが好ましい。
【0013】また、粒度のバラツキも粒子の分散性に影
響し、粒度分布の巾がなるべく狭いことが望ましいこと
がわかった。平均粒度が1〜50μmの範囲内にあって
も、その範囲外の粒径の粒子が多いと、粉末の分散性が
悪くなり、均一な分散の保持が困難になる。したがっ
て、全粉末重量の少なくとも95%が1〜50μmの範
囲内にあることが望ましく、2〜20μmの範囲内にあ
ることが最も望ましい。
【0014】粒形に関しては、粒径が球形に近いほど、
凝集性は弱く、分散性が良いことがわかった。具体的に
は粒子の最小径に対する最長径の比(アスペクト比)が
5以上であると、粒度分布が1〜50μm内に収まって
いても凝集が起り易く、3以下であると凝集のおそれは
殆どないことが確認された。
【0015】なお四弗化エチレン重合体樹脂焼結体を、
通常の機械的粉砕法で粉砕しても、粒径50μm以下の
粉末を作ることは不可能である。
【0016】発明者等は、四弗化エチレン重合体樹脂焼
結体の粉砕方法につき種々検討した結果、同焼結体に放
射線を照射したものを液体窒素温度に冷却した後、粉砕
すると、容易に粒径50μm以下の球形に近い形状の粉
末が得られることを知り、これによって本発明に必要な
粉末を確保することができた。
【0017】つぎに鋳塊の鋳肌直下のピンホール、ブロ
ーホール抑止のため、その発生原因について検討した結
果、油剤に含まれる水分がこれらの発生に関係している
ことを知った。
【0018】日常、食料品の製造などに使用されている
植物油は、通常0.4重量%前後の水分を含む。この油
をそのまま潤滑剤に使用すると鋳塊表面近くに多数のピ
ンホール、ブローホールが発生し、この結果、削り代は
きわめて大きくなり、歩留りの向上は全く期待できな
い。この油を減圧蒸溜すると、水分含有量を0.025
重量%まで下げることができるが、この水分含有率の油
を使用しても、ピンホール、ブローホールの発生を完全
には抑止できない。しかるに、従来の減圧蒸溜法では、
水分含有率を0.025重量%以下にすることは不可能
である。
【0019】発明者等は、油剤中の水分量を0.025
重量%以下にする方法につき検討を重ねた結果、約25
0℃に加熱した油剤に、窒素ガス等の不活性ガスを吹き
込みながら、真空ポンプで吸引することにより、水分量
を0.010%以下にまで下げ得ることを知った。この
方法で得られる低含水率の油剤を使用した潤滑剤を使用
して鋳造実験を行なった結果、油剤中の含水率が0.0
17重量%以下の場合、ピンホール、ブローホールの発
生をほぼ完全に抑止することができ、この結果、鋳塊の
削り代を格段に少なくできることがわかった。
【0020】なお、油剤中の水分量が多いと鋳造時及び
熱間加工時に四弗化エチレン重合体樹脂の分解で発生す
る弗化カーボンガスが油剤中の水分と反応して、刺激臭
を有する有毒な弗化水素(HF)ガスが発生し、これ
も、バージンの四弗化エチレン重合体樹脂粉末を使用し
た従来の潤滑剤の鋳造時及び熱間加工時の悪臭の一原因
となっていることも判明したが、含水率が0.020重
量%以下では、弗化水素ガスの発生はごく僅かで、換気
の必要は全くない。
【0021】油剤への四弗化エチレン重合体焼結樹脂粉
末の添加量は多い方が潤滑離型作用、還元作用は強力で
あるが、25重量%以上の混合は粉末がかさばるため実
際上は不可能である。なお、油剤重量に対する粉末重量
の割合が増えると、潤滑剤の流動性が低下するので、潤
滑剤の自動連続供給が必要な大型鋳塊の連続鋳造には、
数%以下の低含有率のものが適している。但し、含有率
が1重量%以下になると、上記の諸効果は期待できな
い。
【0022】一方、金型鋳造や熱間押出加工、熱間型鍛
造などの熱間加工においては、ハケ、ローラー等で潤滑
剤を鋳型や工具に塗布する関係上、潤滑剤の粘度が高い
ことが望ましい場合がある。また、潤滑剤の持続性を高
めるためにも高粘度で流動性の低いものが必要な場合が
ある。このような場合には、本発明の潤滑剤に脂肪酸ア
マイド、ポリアミドワックス、金属石鹸、ベントナイ
ト、酸化ポリエチレン、脂肪酸エステル、ポリブテン、
流動パラフィンなどの増粘剤、又はこれらを適当に組合
せたものを添加すればよい。増粘剤の添加量は、潤滑剤
100重量に対し、普通トータルで0.5〜12重量が
適当である。なおこの場合、増粘剤の添加量が0.5重
量以下では増粘効果が時に十分でなく、また12重量以
上では流動性が低くなり過ぎて潤滑剤の取扱いが困難に
なる。
【0023】最後に、従来の四弗化エチレン重合体樹脂
粉末を使用した潤滑剤のコスト高の問題は、高価なバー
ジン粉末を使用したことによる。本発明においては、四
弗化エチレン重合体樹脂焼結体の削り粉を粉砕して得ら
れる安価な焼結樹脂再生粉を使用することができるの
で、大巾なコストダウンが可能になった。
【0024】なお、油剤については、ナタネ油、ヒマシ
油、大豆油、アマニ油等の各種植物油、流動パラフィン
油、ミネラル油、軽油、灯油、重油等の鉱物油を使用す
ることができるが、鉱物油には、硫黄等金属に有害な不
純物を含むものがあり、これら有害元素との親和性の強
い合金の鋳造や熱間加工に使用すると鋳塊や被加工材が
汚染、劣化するおそれがある。それ故一般的には、これ
ら有害な不純物を含まない植物油を使用することが望ま
しく、その中てもナタネ油、ヒマシ油、大豆油は乾性
度、流動性、コスト等の面で特に望ましいものである。
【0025】
【作用】以上、本発明の従来の鋳造用潤滑剤の問題点を
解決するための手段とその効果について詳述したが、本
発明者等は、研究の過程で本発明の鋳造用潤滑剤が従来
品に無い全く新しい機能を有することを発見した。
【0026】前に述べたように、各種油剤に四弗化エチ
レン重合体樹脂のバージン粉末を分散せしめた鋳造用潤
滑剤は、従来から使用されている黒鉛、二硫化モリブデ
ン等の潤滑物質を各種油剤に分散せしめた潤滑剤に較
べ、潤滑作用が優れている。しかし、この四弗化エチレ
ン重合体樹脂のバージン粉末を使用した鋳造用潤滑剤の
潤滑作用は、専ら四弗化エチレン重合体樹脂という物質
が本来具備する物理的潤滑作用のみによるものであり、
それ故、潤滑剤が鋳型内に流入して来た溶融金属、及び
/又は凝固途中、或いは凝固直後の金属鋳塊に触れて加
熱分解した瞬間に潤滑機能は失われてしまう。
【0027】この結果、アルミニウム等の比較的低融点
の金属の鋳造においては、潤滑効果は期待できるもの
の、鉄、ニッケル、銅等の高融点金属の鋳造には潤滑作
用は殆ど、或いは全く発揮され得ず、このため、これら
高融点金属の鋳造には、油剤に四弗化エチレン重合体樹
脂の粉末とともに、窒化ホウ素(BN)等の高価な耐熱
性潤滑物質の粉末を添加する必要があったが、この場合
にも、コストアップの割には十分な潤滑効果は得られ
ず、したがって表面が十分に平滑で、しかもひび割れ、
マイクロクラック、湯切れ等の重大欠陥のない鋳塊を得
ることは困難であった。
【0028】しかるに本発明者等は、本発明の鋳造用潤
滑剤を各種のアルミニウム合金、銅合金、鉄合金、ニッ
ケル合金、コバルト合金等の鋳造に試用して、鋳塊表面
及び鋳造後の鋳型表面を詳しく観察した結果、従来のバ
ージンの四弗化エチレン重合体樹脂粉末を使用した鋳造
用潤滑剤、或いは黒鉛や二硫化モリブデン等の無機潤滑
性物質の粉末を使用した鋳造用潤滑剤と較べて本発明の
潤滑剤の場合には格段に優れた潤滑作用が働くこと、そ
してその結果、十分に平滑で、しかも欠陥の全くない優
れた表面の鋳塊が得られることを認めた。このような優
れた効果は、高融点の金属の場合ほど、そして特に水冷
連続鋳造の場合に顕著である。
【0029】続いて本発明者等は、得られた鋳塊の表面
にごく薄く付着している物質の成分を分析した結果、そ
れが金属の弗化物、又は金属の酸・弗化物であること、
そして鋳塊の鋳型に接した面は、これらの弗化物、及び
/又は酸・弗化物のきわめて薄い透明な膜によって均一
かつ緻密に覆われていることを知った。
【0030】以上の検討結果から、本発明の潤滑剤の場
合には、鋳型に塗布された、潤滑剤、又は水冷連続鋳造
の場合には水冷鋳型と凝固しつつある溶融金属の間に注
入される潤滑剤が溶湯又は凝固途中或いは凝固直後の金
属に接触した際分解して発生したCF、C等の
強力な還元性ガスと、溶湯又は凝固過程或いは凝固直後
の金属の表面に生成した酸化物が反応して、金属の酸化
物より遥かに融点の低い金属の凝固温度付近で液状の金
属の弗化物、及び/又は酸・弗化物が生成し、これら流
動性に富んだ液状の生成物によって、凝固金属と鋳型の
間にきわめて優れた潤滑作用が発生するものと考えられ
る。
【0031】以上の考察から明らかなように、本発明の
鋳造用潤滑剤に特有の上記の潤滑作用は、従来の鋳造用
潤滑剤における潤滑効果がすべて油剤に添加した潤滑物
質自体の物理的な潤滑作用に基づくものであるのに対
し、それとは全く別の、化学的反応に基づく化学的な潤
滑作用によるものであり、この点も本発明を強く特徴づ
けるものである。
【0032】なお、同じく四弗化エチレン重合体樹脂の
粉末を使用する従来の鋳造用潤滑剤に、このような化学
的な潤滑作用が生じない理由は、この従来の潤滑剤に使
用される四弗化エチレン重合体樹脂の粉末がバージン粉
末であることによる。即ち、バージン粉末は粒径0.2
〜0.3μmとこまかく、しかも粒形はフレーク状で偏
平である。したがって粉末単位重量当りの粉末粒子のト
ータル表面積は、球状、或いは粒状の同一粒径の粉末の
それに較べて桁違いに大きい。
【0033】一方、本発明の潤滑剤に使用される四弗化
エチレン重合体樹脂の焼結体を粉砕して得られる粉末
は、平均粒径が1〜50μmでバージン粉末より遥かに
大きく、しかも粒子の形状はアスペクト比3以下の球状
或いは粒状のものであり、したがって単位重量当りの粉
末粒子のトータル表面積はバージン粉末の場合より数桁
小さい。このため鋳型に注入された溶湯、又は鋳型内で
凝固しつつあるか凝固した直後の金属に接触する前か
ら、こまかくしかも偏平で表面積の大きい四弗化エチレ
ン重合体樹脂のバージン粉末を使用する従来の鋳造用潤
滑剤においては、粉末粒子は熱の影響をきわめて受け易
く鋳型内面の温度の上昇とともに分解蒸発し始め、接触
時には瞬時に分解蒸発してしまう。
【0034】この結果、分解により発生したCF、C
などの、高温で強力な還元作用を有するガスは、
溶湯表面、或いは凝固金属表面の酸化皮膜の還元には多
少はあずかるものの、鋳塊と鋳型の間に十分な潤滑作用
を与え得るに足る金属の弗化物や酸・弗化物を反応形成
することはできず、したがって高融点金属の鋳造、特に
鉄系或いはニッケル系合金等の鋳造においては、バージ
ンの四弗化エチレン重合体樹脂粉末を使用する従来の鋳
造用潤滑剤には、前記の化学的潤滑作用をもたらす能力
はない。
【0035】これに対し、本発明の鋳造熱間加工用潤滑
剤の場合には、使用される四弗化エチレン重合体焼結樹
脂の粉末は平均粒径が大きく、しかも粒形は球状又は粒
状であるため、バージン粉末に較べて格段に温度には鈍
感であり、粉末粒子は溶湯又は凝固中或いは凝固直後の
金属表面と接触する前に分解蒸発することは殆どなく、
接触しても分解、蒸発はバージン粉末に較べると遥かに
ゆっくりであり、かつ持続的である。この結果、四弗化
エチレン重合体樹脂の熱分解によって発生した還元作用
を有するガスは、金属表面の酸化抑止にあずかるだけで
なく、鋳型内の凝固しつつある金属の表面に、この表面
を完全に被覆するのに十分な、該金属の弗化物、及び/
又は酸・弗化物の層を形成することができる。
【0036】しかるに、金属の弗化物や酸・弗化物の溶
融温度は、酸化物のそれよりかなり低く、特に鉄、ニッ
ケル、銅などの高融点金属の場合には、これらの金属の
弗化物や酸・弗化物は金属の凝固温度付近では液状であ
り、このため、凝固金属と鋳型の間で優れた潤滑機能を
果たす。かくて、本発明の鋳造用潤滑剤は、鉄、ニッケ
ル、銅等の高融点金属の鋳造において、バージンの四弗
化エチレン重合体樹脂粉末を使用した従来の鋳造用潤滑
剤のもち得なかった化学的潤滑作用を発揮することが可
能であり、その効果は、特にこれら金属の水冷連続鋳造
の場合に顕著である。
【0037】さらに発明者等は、本発明の鋳造用潤滑剤
は、フラックスで鋳型に注がれた溶融金属の上面を被覆
して水冷連続鋳造を行なう場合(所謂“パウダーキャス
ティングの場合)にも、特有の優れた化学的潤滑作用を
発揮することを発見した。即ち、鉄、ニッケル、銅など
の合金の水冷連続鋳造においては酸化抑止のために鋳型
内の溶湯の表面をシリカ、ホウ砂、ホタル石などの粉末
で覆って鋳造を行なうが、この場合には粉末は溶融して
ガラス状となって鋳型内に溜った溶湯の表面(大気に接
する面)を覆う一方、該溶湯表面と鋳型内側面との接触
部分から、鋳型内側面とそれと摺動しながら下降する鋳
塊側面との間隙に流入して両者の間の潤滑に寄与する。
この場合、鋳型と、凝固しつつ下降する鋳塊との間に働
く摩擦力は上記の溶融フラックスの流動性、即ち粘度に
依存し、粘度が高いと摩擦力は大きく、この結果、鋳塊
表面にヒビ割れ、クラック、湯切れ等の欠陥が発生し易
い。
【0038】したがって、溶融フラックスの粘度は、或
る程度以下であることが望ましく、普通、粘度を下げる
ためにはフラックスにホタル石、氷晶石などの低融点の
弗化物系の塩、或いは化合物を添加するか、それらの添
加量を増やしてフラックスの融点を下げる。しかし、フ
ラックスの融点が下って流動性が増すと、鋳型と固まり
つつある鋳塊との間隙に流入するフラックスの浸入速度
が増し、この結果、フラックスの消耗量が多くなる一
方、凝固後の鋳塊表面に付着するフラックスの量が増し
て、鋳造後の諸工程に支障を来たすおそれが出て来る。
したがって、フラックスの融点を下げることは、鋳型・
鋳塊間の摩擦力を下げるためには望ましいが、経済性の
点では好ましくない。
【0039】しかるに、本発明の潤滑剤を水冷鋳型内面
の凝固しつつある鋳塊に接する部分にハケ等で塗布する
か、この部分にポンピング供給しながら鋳造を行なう
と、CF、C等の四弗化エチレン重合体の分解
ガスが鋳型と固まりつつある鋳塊との間隙に流入したフ
ラックスと反応して、フラックスより低融点、低粘度の
弗化物及び/又は酸・弗化物が生成する。この結果、た
とえ溶湯上面を覆う溶融フラックス自体は高融点、高粘
度で潤滑性が悪くても、鋳型と鋳塊の接触部分のフラッ
クスの潤滑性はきわめて良好となり、ヒビ割れ、クラッ
ク等の鋳塊表面のキズの発生が抑えられる一方、鋳型と
鋳塊の間隙を通って流出するフラックスの量は少なく、
したがって、フラックスの消耗量も少ない。
【0040】近年注湯ノズル等の鋳造機材の消耗を少な
くするために塩基度の高いフラックスが使用される傾向
があるが、一般にフラックスの塩基度が上がると流動性
は低下するので鋳型−鋳塊間の潤滑が悪くなり、ヒビ割
れ、クラック等の鋳造欠陥が発生し易くなるという問題
が生じて来ているが、本発明の潤滑剤の使用は、この問
題の解決にきわめて有効である。なお、以上のような効
果は、こまかくかつフレーク状で熱の影響を受け易いバ
ージンの四弗化エチレン重合体樹脂粉末を使用する従来
の鋳造用潤滑剤の場合には、もちろん期待できない。
【0041】
【実施例】以下、本発明の効果を実施例によって説明す
る。なお、以下の実施例において、本発明品に使用した
四弗化エチレン重合体焼結樹脂粉末は、いずれも脱脂洗
浄した四弗化エチレン重合体焼結樹脂の切削屑に電子線
を照射したのち、液体窒素に浸漬、冷却し、直ちに高速
ボールミルで−30℃以下で粉砕して得たものである。
【0042】実施例(1) アルミニウム合金(JIS 5056)の半連続水冷鋳
造において、本発明の潤滑剤の効果を従来品のそれと比
較した。潤滑剤の組成及び実験条件はつぎの通りであ
る。 ・鋳塊寸法:いずれも330×500×1800(mm) ・鋳込速度:いずれも60mm/分 ・鋳造温度:いずれも700℃ ・潤滑剤の供給の仕方 本発明品(1):水冷鋳型の内側側面にはけぬり 本発明品(2):ポンピング供給(供給速度:0.6cc/cm/分) 比較品(1) : 同 上 比較品(2) : 同 上
【0043】
【0044】以上の結果から、本発明品を使用した場
合、鋳塊表面に発生した割れの深さが比較品(従来品)
の場合に較べて格段に浅く、また、比較品の場合に多数
発生する鋳塊表面下のピンホールが、本発明品の場合に
は殆ど発生せず、表面の平滑度も良好なことがわかる。
この結果、本発明品を使用すると表面切削代が少なくて
すみ歩留りの著しい向上が期待できることがわかった。
なお、本実施例においては、いずれの場合もフラックス
は使用していない。
【0045】実施例(2) ステンレス合金(SUS 304)の半連続水冷鋳造に
おいて、本発明の潤滑剤の効果を従来品のそれと比較し
た。潤滑剤の組成及び実験条件はつぎの通りである。 ・鋳塊寸法:350×550×2000(mm) ・鋳造温度:1480℃ ・鋳込速度:65mm/分 ・使用モールドパウダー:SiO40重量部+CaO
40重量部+NaO20重量部 ・潤滑剤の供給の仕方:ポンピング供給(供給速度:
0.65cc/cm/分)
【0046】
【0047】以上の結果から、本発明の潤滑剤を使用し
た場合、比較品(従来品)を使用した場合より表面の割
れの深さが格段に浅く、また表面下のピンホールも少な
く、かつ表面平滑度も遥かに良好であること、そして、
このような効果は使用する四弗化エチレン重合体(PT
FE)焼結樹脂粉末の平均粒径が大きいほど顕著なこと
がわかる。この結果から、高融点の鉄系合金の場合に
も、本発明品を使用することによって、表面切削代を大
巾に縮小でき、歩留りの著しい向上が期待できることが
わかった。
【0048】実施例(3) 黄銅(亜鉛35重量部+銅65重量部)の熱間押出にお
いて、本発明の潤滑剤の効果を従来品のそれと比較し
た。潤滑剤の組成及び実験条件はつぎの通りである。 ・黄銅ビレット寸法:φ250×750L(mm) ・押出材寸法:50φ×L(mm) ・押出温度:830℃ ・押出速度:1000mm/分 ・潤滑剤の使用法:使用前に潤滑剤100重量に対し、
脂肪酸アマイド5重量を添加して粘度を上げ押出型の内
側、及びスリーブ内面にハケで塗布。
【0049】
【0050】以上の結果から、本発明品を使用した場
合、比較品(従来品)を使用した場合にくらべて押出力
が格段に少なく、また押出材の表面も遥かに良好でまく
れ込み、ヒビ割れ、ソゲ等のキズの発生が全くなく、し
かも押出型の寿命が桁違いに長くなっているのがわか
る。
【0051】実施例(4) ニッケル合金(クロム20重量%−シリコン1重量%−
ニッケル残部)の金型鋳造において、本発明の潤滑剤の
効果を従来品のそれと比較した。潤滑剤の組成及び実験
条件はつぎの通りである。 ・鋳塊寸法:150×250×1500 ・金型材質:鋳鋼 ・鋳造温度:1465℃ ・潤滑剤の使用法:使用前に潤滑剤100重量に対し脂
肪酸アマイド4重量を添加して粘度を上げハケで鋳型内
面に塗布。
【0052】
【0053】以上の結果から本発明の潤滑剤を使用した
場合、比較品の場合に較べて鋳塊表面皮下のピンホール
の発生が完全に抑止されるとともに、鋳塊表面はシワ、
ヒダ、凹みなどの発生がなく、また酸化などによる汚染
もないため、格段に平滑かつ美麗であり、しかも鋳型内
面のヒビ割れ等の発生が抑止されるために、鋳型の寿命
が大巾に延長されているのがわかる。
【0054】
【発明の効果】この発明は、以上説明したように、四弗
化エチレン重合体樹脂粉末を、各種油材に混合、分散せ
しめた鋳造用及び熱間加工用潤滑剤において、油材に水
分含有率0.020重量%以下の低水分油剤を使用し、
また、四弗化エチレン重合体樹脂粉末に四弗化エチレン
重合体焼結樹脂粉末を粉砕して得られる所定の粒度、粒
形、粒度分布の焼結樹脂粉末を使用することによって、
鋳造時、及び加工時の有害悪臭ガスの発生がなく、また
四弗化エチレン重合体焼結樹脂の物理的潤滑作用、及び
該樹脂の熱分解で発生する還元性ガスの酸化抑止作用、
及び該ガスにより反応形成された低融点で低粘度の弗化
物に基づく化学的潤滑作用により、平滑でひび、割れ等
の表面欠陥がなく、しかもピンホール、ブローホール等
の表皮下欠陥もない鋳塊及び熱間加工材の製造が可能で
あるとともに、粉末の分散性が良好で攪拌の必要がな
い、安価で実用性に富んだ鋳造用及び熱間加工用潤滑剤
の提供を可能にしたもので、鋳塊及び熱間加工材の歩留
りの向上と製造コストの低減において、画期的な効果を
発揮するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C10M 169/04 C10M 169/04 // C10N 20:06 30:10 40:24 40:36 70:00 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C10M 147/02 C10N 20:06,40:24,70:00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】植物油又は鉱物油或いは植物油と鉱物油と
    の混合油からなる油剤99乃至75重量部に、四弗化エ
    チレン重合体焼結樹脂粉末1乃至25重量部を添加分散
    せしめてなる鋳造、熱間加工用潤滑剤において、 (a)上記油剤の水分含有率を0.016重量%以下と
    し、 (b)上記の四弗化エチレン重合体焼結樹脂粉末は四弗
    化エチレン重合体樹脂焼結体を粉砕して得られたもので
    あり、 (c)更に、その四弗化エチレン重合体樹脂焼結体を粉
    砕して得られたものが、 平均粒径2〜50μmであり、かつ全粉末重量の少なく
    とも95%が該粒径範囲に属するとともにアスペクト比
    (粉末粒子の最短軸長に対する最長 軸長の比)が3以下
    の粒子からなり、 (d)上記油剤が植物油或いは植物油と鉱物油との混合
    油からなる場合には、加 熱した油剤に不活性ガスを吹き
    込みながら真空ポンプで吸引する方法によ り、その水分
    含有率を0.016重量%以下とする ことを特徴とする鋳造、熱間加工用潤滑剤。
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