JP3000000B1 - 金属・有機ポリマー複合構造体とその製造方法 - Google Patents

金属・有機ポリマー複合構造体とその製造方法

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Abstract

【要約】 【課題】 金属・有機ポリマー複合構造体において、物
性の異方性が要求されるような用途でも適するように、
ポリマー相内の金属超微粒子の導入位置を制御しうる技
術を提供する。 【解決手段】 互いに非相溶な2種またはそれ以上のポ
リマー鎖が各々の末端で結合したブロックコポリマーの
ミクロ相分離構造から成り、その一方のポリマー相内の
中央付近に金属超微粒子を選択的に含有させるに際し、
金属・ポリマー複合体を構成するブロックコポリマーの
金属親和性ポリマー鎖として、金属含有相と成るポリマ
ー鎖よりも分子量の大きい(好ましくは3倍以上)ポリ
マーを用いることにより製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子材料、磁性材
料、または光学材料等として応用が期待される新規な構
造の金属・有機ポリマー複合構造体とその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】金属超微粒子は、表面に露出する原子の
割合が大きいために物理的、化学的な活性が大きく、バ
ルク金属とは著しく性質が異なることが知られており、
その巨大な表面積を持つことなども考え合わせて、触
媒、熱交換系、特異な伝導材料、磁性材料、光電変換材
料、生体材、薬剤等への用途が従来より試みられてき
た。
【0003】しかし、nmサイズの粒径を持つ金属超微
粒子は表面の金属原子同士が結合して凝集し易く、その
ままで安定に存在することは困難であるため、界面活性
剤やポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)やポリ(2−
ビニルピリジン)等のポリマーで保護・安定化すること
が試みられている(Mathias Brust et. al., J. Chem.So
c., Chem. Commun., 801 (1994);Naoki Toshima et. a
l., Chemistry Letters, 1245 (1985))。このようにし
て得られた金属超微粒子は通常、均一な溶液状であるた
め、取扱が難しく、工業的に用いるにはシリカゲル、ポ
リマー等への固定化が望まれている。特に、フィルムや
膜の形態として用いるためには構造の制御が容易なポリ
マーによる支持体が求められている。
【0004】ポリマーから形成される構造体へ金属超微
粒子を導入する方法としては以下のような手法が挙げら
れる。 (1)特公平6−99585(三ツ星ベルト株式会社) 熱力学的に非平衡状態にした高分子層の表面に金属層を
密着させた後、上記高分子層を平衡状態になるまで緩和
させることにより、高分子層中に金属または金属酸化物
粒子を分散させる。
【0005】(2)特願平9−140193(科学技術
振興事業団、舩木克典) これは本発明の特許出願人の一人による出願に係わるも
のであり、マトリックスを形成するポリマー鎖と相溶性
のあるポリマー鎖により、その最表面をコートした金属
超微粒子をあらかじめ形成させ、この金属・ポリマー複
合体とその支持体(マトリックス)となるべきポリマー
鎖を含むブロックポリマーを混合し、ブロックポリマー
を相分離させて構造形成することにより、ブロックポリ
マーが形成する相分離構造のうち一方の相構造内に金属
超微粒子を選択的に取り込んだ金属・有機ポリマー複合
構造体を得る。
【0006】これらの方法は、高分子層全体または相分
離構造の一方のポリマー相に金属微粒子を導入するもの
であるが、そのような高分子層内または相分離構造の一
方の相内における金属微粒子の導入位置を制御すること
は工夫されていない。金属微粒子は、高分子層内または
相分離構造の一方の相内のあらゆる位置に存在してお
り、したがって、例えば導電性等を付与するために金属
超微粒子の間隔を狭くすると高価な金属の導入量が大幅
に増加してしまい、工業的用途としてはコスト面で大き
な問題が生じる。
【0007】相分離構造の一方の相中への金属超微粒子
の導入位置を制御する方法として、やはり、本発明の特
許出願人の一人による出願に係わる(3)特願平9−2
41873(科学技術振興事業団、舩木克典)に開示の
方法がある。この方法は、互いに非相溶で金属と親和性
のあるポリマー鎖と金属との親和性が無いポリマー鎖か
らなるブロックポリマーで保護された金属超微粒子であ
る金属・ポリマー複合体と、この複合体と相溶性のブロ
ックポリマーを無秩序状態から秩序状態へ転移させるこ
とによりミクロ相分離構造(特に共連続構造)を形成さ
せ、その金属含有ポリマー相の(金属との親和性の低い
ポリマー鎖が形成する相との)界面付近に金属超微粒子
を選択的に導入するものである。
【0008】このように金属含有ポリマー相の表面近傍
に金属超微粒子が存在していることは、該金属・有機ポ
リマー複合構造体(特に、共連続構造のミクロ相分離構
造から成るその多孔体)を触媒として用いるような場合
には、反応物質がポリマー内に深く侵入する必要がなく
表面積が大きくなる点において有利である。しかしなが
ら、物性の異方性が要求される電子材料や磁性材料等に
おいては、界面近傍に多くの金属微粒子を配列させなけ
ればならないと考えられ、これらの用途には不適であ
る。さらに、単一のポリマー相内に金属超微粒子が含有
されたナノスケールの材料(ナノフィルム、ナノワイヤ
ー)を得るために、金属と親和性が低いポリマー鎖(金
属超微粒子が含有されていないポリマー)の相を除去す
ると金属超微粒子を含む相の最表面が露出して金属超微
粒子が外部と接触する可能性があり、元のミクロ相分離
構造がラメラ構造やシリンダー構造であっても金属を該
相分離構造に沿って配列させることによって付与した異
方性が阻害される恐れがあり、また、共連続構造からは
そのような材料は得られない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ブロ
ックコポリマーから形成されるミクロ相分離構造の一方
のポリマー相内に金属超微粒子が含有されているタイプ
の金属・有機ポリマー複合構造体において、物性の異方
性が要求されるような用途分野においても適するよう
に、ポリマー相内の金属超微粒子の導入位置を制御し得
る新しい手法を確立することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に従えば、上記の
目的を達成するものとして、互いに非相溶な2種または
それ以上のポリマー鎖がおのおのの末端で結合したブロ
ックコポリマーのミクロ相分離構造からなり、該ミクロ
相分離構造における一方のポリマー相内の中央付近(相
の厚さ方向の中央付近)に金属超微粒子が選択的に含有
されていることを特徴とする金属・有機ポリマー複合構
造体が提供される。
【0011】さらに、本発明は、このような金属・有機
ポリマー複合構造体の製造方法を提供し、本発明の方法
は、金属と親和性のあるポリマー鎖と金属と親和性の無
いまたは低いポリマー鎖とがおのおのの末端で結合した
ブロックコポリマーで金属超微粒子の表面が被覆保護さ
れた金属・ポリマー複合体、および該金属・ポリマー複
合体と相溶性のブロックコポリマーから成るマトリック
スポリマーを混合し、上記金属・ポリマー複合体および
マトリックスポリマーが無秩序混合状態にある溶液また
は溶融体を生成させ、溶媒キャストまたは温度低下によ
り該マトリックスポリマーのミクロ相分離構造を形成し
て、その一方のポリマー相内に金属超微粒子を含有させ
るに際し、金属・ポリマー複合体を構成するブロックコ
ポリマーの金属親和性ポリマー鎖として、マトリックス
ポリマーのミクロ相分離構造において金属含有相と成る
ポリマー鎖よりも分子量の大きいポリマーを用いること
を特徴とする。本発明の方法の特に好ましい態様とし
て、金属・ポリマー複合構造体を構成するブロックコポ
リマーの金属親和性ポリマー鎖の分子量は、マトリック
スポリマーのミクロ相分離構造の金属含有相のポリマー
鎖の分子量の3倍以上である。
【0012】さらに、本発明は、上記のごとき金属・有
機ポリマー複合構造体のうち特にラメラ構造またはシリ
ンダー構造のミクロ相分離構造から成る金属・有機ポリ
マー複合構造体から、該ミクロ相分離構造において金属
超微粒子が含有されていない方のポリマー相を除去する
ことによって得られ、それぞれ、板状または円柱状のポ
リマー相の中央付近(相の厚さ方向の中央付近)に金
属超微粒子が含有されていることを特徴とする金属・有
機ポリマー複合構造体も提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の金属・有機ポリマー複合
構造体の製造方法は、金属と親和性のあるポリマー鎖と
金属と親和性の無い(または親和性の低い)ポリマー鎖
とがおのおの末端で結合したブロックコポリマーで金属
超微粒子の表面が被覆された金属・ポリマー複合体、お
よび該金属・ポリマー複合体と相溶性のブロックコポリ
マーから成るマトリックスポリマーを混合して、それら
の無秩序混合状態からマトリックポリマーのミクロ相分
離構造を形成し、その一方のポリマー相内に金属超微粒
子を導入、含有させる点においては、上記特願平9−2
41873に開示の方法と共通している。
【0014】しかしながら、特願平9−241873に
開示の方法においては、金属・ポリマー複合体およびマ
トリックスポリマーに用いるポリマーの分子量の相互の
関係については何ら留意されていない。本発明は、金属
・ポリマー複合体を構成するブロックコポリマーの金属
親和性ポリマー鎖の分子量と、マトリックスポリマーの
ミクロ相分離構造において金属含有相となるポリマー鎖
の分子量とを異ならせ、前者が後者よりも大きく、好ま
しくは3倍以上とすることにより、ミクロ相分離構造の
一方のポリマー相内の「中央付近」に金属超微粒子が含
有されている金属・有機ポリマー複合構造体が得られる
ということを見出したことに基づくものである。なお、
本明細書における分子量とは、特に言及していない限り
数平均分子量を意味し、明細書中に示す分子量は数平均
分子量の値である。
【0015】以下、本発明の金属・有機ポリマー複合構
造体およびその製造方法について、該構造体を構成する
各構成要素および該製造方法に含まれる各工程に沿って
詳述する。(1)金属・ポリマー複合体: 本発明の金属・有機ポリ
マー複合構造体は、金属と親和性のあるポリマー鎖と親
和性の無いまたは低いポリマー鎖とがおのおのの末端で
結合したブロックコポリマーで金属微粒子が被覆保護さ
れた金属・ポリマー複合体、すなわち、該ブロックコポ
リマーで安定化された金属超微粒子を用い、この金属超
微粒子をマトリックスポリマーの相分離構造の一方のポ
リマー相に導入することによって得られるものである。
【0016】このようなブロックコポリマーで保護され
た金属超微粒子(金属・ポリマー複合体)の製法は、本
発明の出願人を含む出願人の出願に係わる特願平9−5
5234(科学技術振興事業団、舩木克典)および上記
特願平9−241873等に記載されている。すなわ
ち、有機溶媒に、金属と親和性のあるポリマー鎖と親和
性の無い(または低い)ポリマー鎖とがおのおの末端で
結合したブロックコポリマー、溶媒可溶性の金属化合物
(一般に、該金属の塩または錯体)および還元剤を溶解
して加熱・還元する(一般に、50〜120℃において
5〜50時間)ことによって調製される。
【0017】このような方法により調製された金属超微
粒子は、基本的には1分子のブロックコポリマー中に保
持されているものと考えられる。すなわち、「金属と親
和性のあるポリマー鎖」と「金属と親和性の無い(低
い)ポリマー鎖」がそれぞれの末端で結合したブロック
コポリマーを用いることにより、「金属と親和性のある
ポリマー鎖」中に金属微粒子が保持され、この「金属保
持ポリマー鎖」を頭部とし、これに金属と親和性の無い
(低い)ポリマー鎖から成る「金属非保持ポリマー鎖」
が末端で結合して尾部を形成した構造となっているもの
と推測される。
【0018】金属を保護するブロックコポリマーは「金
属と親和性のあるポリマー鎖」と、それと非相溶で「金
属と親和性が無い、または金属との親和性が低い(金属
と親和性のあるポリマー鎖よりも金属との親和性が充分
低い)ポリマー鎖」とから構成されていれば基本的には
何でも良い。なお、本発明においてブロックコポリマー
で被覆・保護された金属・ポリマー複合体を構成する金
属としては各種のものが適用可能であるが、特に、遷移
金属、例えば第VIII族金属、そのうちの各種の貴金
属等が例示される。
【0019】「金属と親和性のあるポリマー鎖」:金属
と親和性のあるポリマー鎖としては具体的には、ポリ
(2−ビニルピリジン)、ポリアミノスチレンなどの窒
素原子を持つモノマーユニットから構成されるもの、ポ
リ(メチルメタクリレート)などの酸素原子を持つモノ
マーユニットから構成されるもの、ポリプロピレンスル
フィドなどの硫黄を含むモノマーユニットから構成され
るもの、ポリイソプレン、ポリブタジエン等ポリマー骨
格上に炭素−炭素二重結合を有するモノマーユニットか
ら構成されるものなどがあるが、基本的に金属または金
属イオンとの親和性があれば何でも良い。金属超微粒子
の安定性、対となるポリマー鎖の選択範囲を広げる観点
から金属の親和性が高いモノマーユニットから構成され
るポリマー鎖が好ましい。好ましい例としてはポリ−
(2−ビニルピリジン)、ポリ−(4−ビニルピリジ
ン)等が挙げられる。金属との親和性のあるポリマー鎖
の数平均分子量(Mn)は、1,000 〜1,000,000 であれ
ばよいが 5,000〜1,000,000 が好ましい。ポリマーの合
成のし易さ、保護クラスターの安定性の観点からは30,0
00〜500,000 がより好ましい。
【0020】「金属と親和性が無い/金属と親和性のあ
るポリマー鎖より金属との親和性が充分低いポリマー
鎖」:ブロックコポリマーのもう一方のポリマー鎖は、
ミクロ相分離構造を形成する条件、すなわち「金属と親
和性のあるポリマー鎖と非相溶で、金属と親和性が無い
か、または金属と親和性のあるポリマー鎖より金属との
親和性が充分低いポリマー鎖であること」を満足してい
れば基本的には何でも良い。例えばポリスチレン等は金
属とほとんど親和性が無く、用いることができる。ま
た、金属を含まない相を分解して除去する場合にはポリ
イソプレン、ポリブタジエン等ポリマー骨格上に二重結
合を有するポリマー鎖が好ましい。ただし、このように
二重結合を有するポリマー鎖は金属と弱い親和性を有す
るので金属保持ポリマー鎖としてポリ−(2−ビニルピ
リジン)等金属との親和性が強いポリマー鎖を用いる必
要がある。また、これらのブロックポリマーを構成して
いるポリマー鎖の数平均分子量(Mn)にはとくに制限
はなく、形成しようとするミクロ相分離構造に応じて決
定される。
【0021】(2)マトリックスポリマー:この金属超
微粒子を導入すべきマトリックスポリマーとしては、上
記の金属・ポリマー複合体と相溶性のブロックコポリマ
ー、すなわち、該複合体を構成する「金属保持ポリマー
鎖」と相溶性のあるポリマー鎖と、「金属非保持ポリマ
ー鎖」と相溶性のあるポリマー鎖とがそれらの末端で結
合したブロックコポリマーが用いられる。このマトリッ
クスポリマーとなるブロックコポリマーのブロック数は
特に制限はないが、A−B型ジブロックコポリマーまた
はA−B−A型トリブロックコポリマーが好ましい。
【0022】「金属保持ポリマー鎖」と相溶性のあるポ
リマー鎖:金属を保護しているポリマーと相溶性があれ
ば何でも良い。例えばポリ(2−ビニルピリジン)、ポ
リ(メチルメタクリレート)等が挙げられ、そして/ま
たは、支持体ポリマーのモノマーユニットが架橋性の官
能基(例えば、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、
水酸基、ハロゲン、ジメチル−プロポキシシリル基等)
を持っており、それに対応した架橋剤を用いることで構
造の固定ができるポリマーが最終的な構造安定化のため
には好ましい(例えば;ポリ(2−ビニルピリジン)、
ポリ(ジメチル−2−プロポキシシリルスチレン)
等)。
【0023】「金属非保持ポリマー鎖」と相溶性のある
ポリマー鎖:マトリックスポリマーの相分離構造におい
て金属超微粒子含有相を形成するポリマー鎖、および金
属・ポリマー複合体において金属を保護しているポリマ
ーと相溶性がなければ何でも良い。通常は、上記の金属
・ポリマー複合体を構成する「金属と親和性が無い(低
い)」ポリマーとして例示したものと同種または類似の
ポリマーが使用される。また、このポリマー鎖の数平均
分子量(Mn)には特に制限はなく、マトリックスブロ
ックコポリマーから形成したいミクロ相分離構造に応じ
て分子量は決定される。
【0024】ブロックコポリマーから形成されるミクロ
相分離構造の種類は、該コポリマーにおいて金属保持ポ
リマー鎖の相(金属超微粒子を含有する相と成る)の体
積分率によって決定され、この体積分率は用いるモノマ
ーユニットの組合せや構造を形成する際の溶媒により変
化する。本発明にとって特に好ましいミクロ相分離構造
であるラメラ構造を得る場合には、この体積分率の値が
20〜80%、好ましくは30〜70%、さらに好まし
くは40〜60%となることを目安として、ブロックコ
ポリマーの各ブロック鎖の分子量比をコントロールする
ことにより各系に応じて所望のミクロ相分離構造が得ら
れるようにする。本発明において好ましい別のミクロ相
分離構造であるシリンダー構造を得る場合には、この体
積分率は幾分低くなり、10〜50%、好ましくは20
〜40%を目安とする。
【0025】(3)金属を保護するブロックコポリマー
とマトリックスポリマーの分子量:本発明の金属・有機
ポリマー複合構造体を得るためには、金属・ポリマー複
合体の「金属保持ポリマー鎖」(金属と親和性のあるポ
リマー鎖)の分子量が、マトリックスポリマーのミクロ
相分離構造において「金属保持ポリマー鎖」と相溶性の
あるポリマー鎖(マトリックスポリマーのミクロ相分離
構造において金属含有相と成るポリマー鎖)の分子量よ
りも高い必要がある。金属・有機ポリマーの「金属保持
ポリマー鎖」の分子量が、該「金属保持ポリマー鎖」と
相溶性のあるポリマー鎖の分子量より低い場合には、マ
トリックスポリマーから形成される相分離構造の金属含
有相の中で金属超微粒子が中央付近に配列しない。マト
リックスポリマーの相分離構造の金属含有相の中で中央
付近に配列する金属超微粒子の割合を増すためには、金
属・ポリマー複合体の「金属保持ポリマー鎖」の分子量
が該金属含有相を構成するポリマー鎖の分子量の3倍以
上であることが好ましい。さらに好ましくは5倍以上で
ある。
【0026】このように金属・ポリマー複合体の「金属
保持ポリマー鎖」の分子量と、マトリックスポリマーの
相分離構造において金属含有相と成るポリマー鎖の分子
量を相関させることにより、該金属含有相内への金属超
微粒子の導入位置を制御することができるのは、次のよ
うな理由に因るものと解される。
【0027】一般に、分子量の大きい(長い)ポリマー
をそれと相溶性で分子量の小さい(短い)ポリマーのマ
トリックスに導入すると、長いポリマーは余った部分を
折りたたんで短いポリマーの中央付近に偏在することが
知られている。本発明において用いる「金属・ポリマー
複合体」は上述のように「金属保持ポリマー鎖」と「金
属非保持ポリマー鎖」から成り立っているため、それぞ
れの部分がマトリックスポリマーが形成する相分離構造
のうちそれぞれと相溶性のあるポリマー鎖が形成する相
内へ入ろうとする。ここで、「金属保持ポリマー鎖」が
それと親和性のあるポリマー鎖が形成する相中で存在す
る位置を考えると、「金属保持ポリマー鎖」がマトリッ
クスのポリマー鎖より長いために、余った(マトリック
スのポリマー鎖よりも長い)ポリマー鎖はマトリックス
のポリマー鎖が形成する相の中央付近に偏在する。そし
て、金属超微粒子は保持ポリマー鎖により強く固定され
ているため「金属保持ポリマー鎖」が存在する範囲にし
か存在できない。かくして、「金属保持ポリマー鎖」が
多く存在する相の中央付近に金属超微粒子が多く存在す
ることになる。
【0028】これに反して、「金属保持ポリマー鎖」を
それより分子量が高いマトリックスポリマーまたはそれ
と同程度の分子量のマトリックスポリマー中に金属を導
入すると、金属超微粒子は相の界面付近に選択的に存在
か、または相全体にわたって散在することになる。以上
のようにして本発明の金属・有機ポリマー複合構造体
は、ミクロ相分離構造における一方のポリマー相内の中
央付近に金属超微粒子が選択的に含有されていることは
電子顕微鏡による観察によっても確認されている。
【0029】(4)マトリックスポリマーの相分離によ
るポリマー相内部への金属超微粒子の導入:マトリック
スとなるブロックコポリマーに金属・ポリマー複合体を
混ぜ、その系の「秩序−無秩序転移温度(TODT ) 」以
上に温度を上げ溶融するか、これらの共通溶媒に溶解す
ることにより、それらすべてが相溶した「無秩序状態」
を作りだす。この「無秩序状態」から温度をTODT 以下
に下げるか、または溶媒を蒸発させ濃縮する(キャス
ト)することにより、マトリックスブロックコポリマー
の各ポリマー鎖が相分離してミクロ相分離構造を形成す
る。なお、この構造を形成するために、ブロックコポリ
マーを構成している各ポリマーと同種のホモポリマーを
その系に混入してもよい。また、最終的に形成される金
属超微粒子含有構造体の柔らかさを調整するため必要に
応じて可塑剤を混入してもよい。
【0030】(5)金属超微粒子を含まない相の選択的
除去方法:以上のように調製され、ミクロ相分離構造の
一方のポリマー相内の中央付近に金属超微粒子が含有さ
れている金属・有機ポリマー複合体から、金属超微粒子
が含有されていない方のポリマー相が除去された金属・
有機ポリマー複合構造体を得るためには、特願平9−1
40193(科学技術振興事業団、舩木克典)中に示さ
れるような方法を用いることができる。例えば、金属を
含んでいない相を構成するポリマー鎖を選択的にモノマ
ー単位の大きさまで分解することにより、最終的に金属
超微粒子がその支持体ポリマーの中央部に選択的に取り
込まれた金属・ポリマー複合構造体を得る。この場合適
用可能なポリマーとしては、古くから知られているオゾ
ン分解の適用可能な共役ジエン系ポリマー(ポリブタジ
エン、ポリイソプレン等)が代表的なものである。ま
た、光分解を用いる場合には、ポリメチルビニルケトン
等その特性吸収波長によって光分解ができるポリマーを
用いてもよい。また、ミクロ相分離構造において金属超
微粒子を含有していない相(例えばポリイソプレン相)
を溶媒により溶出してもよい。
【0031】上記の方法以外に、イオン結合、エステル
結合、アミド結合等の酸、塩基により切断できる結合様
式により2種のポリマーの末端同士を結合したブロック
コポリマーを用い、金属・有機ポリマー複合体を形成
後、ポリマー間結合を切断し、金属超微粒子を含まない
相を溶解除去する方法(特開平2−279741等)を
用いることもできる。
【0032】これらの方法により、本発明に従えば、特
に好ましい態様としてラメラ構造のミクロ相分離構造に
おいて金属超微粒子が含有されていない方のポリマー相
を除去する。これによって単一のポリマー相の中央付近
に金属超微粒子が含有されたナノスケール(厚さ数十n
m以下)の板状材料(ナノフィルム)が得られる。ま
た、別の好ましい態様としてシリンダー構造のミクロ相
分離構造において金属超微粒子が含有されていないポリ
マー相を除去することにより、単一のポリマー相の中央
付近に金属超微粒子が含有されたナノスケール(太さ、
数十nm以下)の円柱状材料(ナノワイヤー)が得られ
る。
【0033】
【実施例】以下に、本発明の特徴をさらに明らかにする
ため実施例および比較例を示すが、本発明はこれらによ
って制限されるものではない。実施例1 数平均分子量350,000 のポリ(2−ビニルピリジン)
(P2VP)と数平均分子量100,000 のポリイソプレン
(PI)のジブロックコポリマー(以下、「P2VP−
b−PI: Mn=350,000 − 100,000」のように記
す)とパラジウムアセチルアセトナート(Pd(aca
c)2 )のベンゼン溶液に還元剤としてn−プロピルア
ルコールを次の割合で混合し、85℃で50時間加熱す
ることにより、P2VP−b−PIで表面を保護された
平均粒径が5nmのPd超微粒子を得た。 Pd(acac)2 )=0.12g P2VP−b−PI=0.05g ベンゼン=70ml n−プロピルアルコール=5ml
【0034】この反応後の溶液を一旦蒸発乾固し、ベン
ゼンに再溶解した後12000 rpm、3時間の条件で遠心
分離を数回行うことにより、P2VP−b−PIで保護
されたパラジウム超微粒子((Pd)n−P2VP−b
−PI))(金属・ポリマー複合体)を精製した。この
((Pd)n−P2VP−b−PI))とマトリックス
ポリマー(P2VP−b−PI:Mn=350,000 − 10
0,000)をこれらの共通溶媒であるベンゼンに下記割合
で溶解した。 溶解組成: P2VP−b−PI(Mn=100,000-45,000) =48m
g ((Pd)n−P2VP−b−PI))(Mn=350,000-10
0,000)=2mg 溶媒:ベンゼン=10ml
【0035】すなわち、この実施例においては、金属・
ポリマー複合体のP2VPの分子量(350,000)はマトリ
ックスポリマーのP2VPの分子量(100,000)の3.5倍
とした。この溶液をテフロン容器中でキャストすること
により、マトリックスポリマー(P2VP−b−PI)
がミクロ相分離し、((Pd)n−P2VP−b−P
I)を含んだP2VP相とPI相との2相からなるラメ
ラ構造(各相の厚みは数十nm)を持つフィルムを形成
した。得られたフィルムからクライオ法で厚さ約50n
mの超薄切片を切り出し、オスミウム酸の蒸気にさら
し、PI相を染色したサンプルを透過型電子顕微鏡(T
EM)で観察した。このサンプルの内部構造のTEM写
真を図1に示す。図中、黒い相はPI相、白い相はP2
VP相、黒い点は金属超微粒子(パラジウム粒子)をそ
れぞれ示す。(以下の図3および図5においても同様で
ある。)また、相分離構造中での金属粒子の位置を明確
にするためにPI相とP2VP相の界面から金属超微粒
子の中心までの距離と粒子数の関係を計数したものを図
2に示す。明らかにP2VP相の中央付近に金属超微粒
子が多く存在することが分かる。また、得られたフィル
ムを1,4−ジヨードブタン蒸気下、80℃で48時間
加熱してポリ−2−ビニルピリジン相を架橋した後に、
オゾン気流下に24時間さらし、その後メタノール溶液
に12時間つけたフィルムを走査型顕微鏡(SEM)で
観察したところ厚さ約60nmの板状物が観察された。
イソプレン相が選択的に除去されてポリ−2−ビニルピ
リジン相のみの板が形成された。
【0036】比較例1 実施例1と同様の方法で、Mn=100,000-45,000のP2
VP−b−PIで保護された((Pd)n−P2VP−
b−PI))を合成し、この((Pd)n−P2VP−
b−PI))とマトリックスポリマー(P2VP−b−
PI:Mn=100,000-45,000)をこれらの共通溶媒であ
るベンゼンに下記割合で溶解した。 溶解組成: P2VP−b−PI(Mn=100,000-45,000) =48m
g ((Pd)n−P2VP−b−PI))(Mn=100,000-4
5,000) =2mg 溶媒:ベンゼン=10ml
【0037】すなわち、この比較例においては、金属・
ポリマー複合体のP2VPの分子量(100,000)はマトリ
ックスポリマーのP2VPの分子量(100,000)と同じで
ある。この溶液をテフロン容器中でキャストすることに
より、マトリックスポリマー(P2VP−b−PI)が
ミクロ相分離し、Pd粒子を含んだP2VP相とPI相
との2相からなるラメラ構造(各相の厚みは数十nm)
を持つフィルムを形成した。このサンプルの内部構造の
TEM写真を図3に示す。また、P2VP相中での金属
粒子の存在位置を図4に示す。金属超微粒子がP2VP
相の全ての範囲に存在することが分かる。
【0038】比較例2 比較例1で合成した((Pd)n−P2VP−b−P
I))とマトリックスポリマー(P2VP−b−PI:
Mn=350,000-100,000 )をこれらの共通溶媒であるベ
ンゼンに下記割合で溶解した。 溶解組成: P2VP−b−PI(Mn=350,000-100,000)=48m
g ((Pd)n−P2VP−b−PI))(Mn=100,000-4
5,000) =2mg 溶媒:ベンゼン=10ml
【0039】すなわち、この比較例においては、金属・
ポリマー複合体のP2VPの分子量(100,000)はマトリ
ックスポリマーのP2VPの分子量(350,000)よりも小
さくなっている。この溶液をテフロン容器中でキャスト
することにより、マトリックスポリマー(P2VP−b
−PI)がミクロ相分離し、Pd粒子を含んだP2VP
相とPI相との2相からなるラメラ構造(各相の厚みは
数十nm)を持つフィルムを形成した。このサンプルの
内部構造のTEM写真を図5に示す。また、P2VP相
中での金属粒子の位置を図6に示す。金属超微粒子のほ
とんど全てがP2VP相のPI相とP2VP相の界面付
近に存在することが分かる。
【0040】
【発明の効果】本発明に従えば、ブロックコポリマーの
ミクロ相分離を利用する金属・有機ポリマー複合構造体
において、金属超微粒子を導入するための金属・ポリマ
ー複合体の金属保持ポリマー鎖の分子量と、マトリック
スポリマーにおいて金属含有相と成るポリマー鎖の分子
量を特定することにより、該ミクロ相分離構造の一方の
ポリマー相の中央付近に選択的に金属超微粒子が導入す
ることができるので、金属の導入量を大幅に増やすこと
なく異方性を発揮する材料を得ることが可能である。特
に、本発明の金属・有機ポリマー複合体は、ミクロ相分
離構造から金属を含有していない方のポリマー相を除去
することにより、ナノメーターのオーダーの金属超微粒
子が厚さまたは太さ数十nm以下の板状または円柱状ポ
リマー相内に存在する新しいタイプの機能性ナノ材料を
提供し得る。かくして、本発明の金属・有機ポリマー複
合構造体は、金属超微粒子がミクロ相分離構造に沿って
配列されたことによる異方性の物性を発揮する新規な電
子材料、磁性材料、光学材料等として応用展開される可
能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属・有機ポリマー複合構造体の1実
施例の結晶構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の金属・有機ポリマー複合構造体におけ
る金属含有相内の金属超微粒子の分布を示すグラフであ
る。
【図3】比較例の金属・有機ポリマー複合構造体の結晶
構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図4】図3に示す金属・有機ポリマー複合構造体にお
ける金属含有相内の金属超微粒子の分布を示すグラフで
ある。
【図5】別の比較例の金属・有機ポリマー複合構造体の
結晶構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図6】図5に示す金属・有機ポリマー複合構造体にお
ける金属含有相内の金属超微粒子の分布を示すグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金澤 祐子 大阪府大阪市住吉区遠里小野1−6−31 (72)発明者 橋本 竹治 京都府京都市左京区吉田中大路町19 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 53/00 - 53/02 C08F 293/00 - 297/08 C08J 5/00 C08K 3/08

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに非相溶な2種またはそれ以上のポ
    リマー鎖がおのおのの末端で結合したブロックコポリマ
    ーのミクロ相分離構造から成り、該ミクロ相分離構造に
    おける一方のポリマー相内の相の厚さ方向の中央付近に
    金属超微粒子が選択的に含有されていることを特徴とす
    る金属・有機ポリマー複合構造体。
  2. 【請求項2】 請求項1の金属・有機ポリマー複合構造
    体の製造方法であって、金属と親和性のあるポリマー鎖
    と金属と親和性の無いまたは低いポリマー鎖とがおのお
    のの末端で結合したブロックコポリマーで金属超微粒子
    の表面が被覆保護された金属・ポリマー複合体、および
    該金属・ポリマー複合体と相溶性のブロックコポリマー
    から成るマトリックスポリマーを混合し、上記金属・ポ
    リマー複合体およびマトリックスポリマーが無秩序混合
    状態にある溶液または溶融体を生成させ、溶媒キャスト
    または温度低下により該マトリックスポリマーのミクロ
    相分離構造を形成して、その一方のポリマー相内に金属
    超微粒子を含有させるに際し、金属・ポリマー複合体を
    構成するブロックコポリマーの金属親和性ポリマー鎖と
    して、マトリックスポリマーのミクロ相分離構造におい
    て金属含有相と成るポリマー鎖よりも分子量の大きいポ
    リマーを用いることを特徴とする金属・有機ポリマー複
    合構造体の製造方法。
  3. 【請求項3】 金属・ポリマー複合体を構成するブロッ
    クコポリマーの金属親和性ポリマー鎖の分子量が、マト
    リックスポリマーのミクロ相分離構造において金属含有
    相と成るポリマー鎖の分子量の3倍以上であることを特
    徴とする請求項2の金属・有機ポリマー複合構造体の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 ラメラ構造のミクロ相分離構造から成る
    請求項1の金属・有機ポリマー複合構造体から、該ミク
    ロ相分離構造において金属超微粒子が含有されていない
    方のポリマー相を除去することによって得られ、板状の
    ポリマー相相の厚さ方向の中央付近に金属超微粒子
    が含有されていることを特徴とする金属・有機ポリマー
    複合構造体。
  5. 【請求項5】 シリンダー構造のミクロ相分離構造から
    成る請求項1の金属・有機ポリマー複合構造体から、該
    ミクロ相分離構造において金属超微粒子が含有されてい
    ない方のポリマー相を除去することによって得られ、円
    柱状のポリマー相相の厚さ方向の中央付近に金属超
    微粒子が含有されていることを特徴とする金属・有機ポ
    リマー複合構造体。
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