JP3146839B2 - 加工性に優れた高耐食冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

加工性に優れた高耐食冷延鋼板及びその製造方法

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JP3146839B2
JP3146839B2 JP07900994A JP7900994A JP3146839B2 JP 3146839 B2 JP3146839 B2 JP 3146839B2 JP 07900994 A JP07900994 A JP 07900994A JP 7900994 A JP7900994 A JP 7900994A JP 3146839 B2 JP3146839 B2 JP 3146839B2
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  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は自動車用鋼板に最適な
耐食性,加工性,溶接性,化成処理性等に優れる冷延鋼
板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在自動車用に用いられる冷延鋼板等に
対し,自動車自体の軽量化およびコストダウンの点か
ら,板厚の薄肉化が考えられている。しかしながら板圧
を減少させると,腐食後の残りしろが少なくなるため,
腐食後の強度減少という問題が生じる。一般に自動車用
鋼板の耐食性を向上させるために,亜鉛めっきの目付量
を増やすという方法が最も簡単であるが,付着量増加は
コストの上昇を招き,また鋼板を加工する際に被覆層の
はく離という問題が生じ,下地が露出して腐食しやすく
なる。また自動車用部品の組立を行う際にスポット溶接
が用いられているが,この溶接に対してめっきの付着量
が大きく影響を及ぼす。つまり付着量の増大とともに溶
接性が劣化することが認められる。また自動車用に用い
られる鋼板には,深絞り性などの成形性も優れ,しかも
安価であることも要求される。そのような条件を満たす
鋼板は,従来より多数提案されているが,今までのとこ
ろ必ずしも満足できる特性は得られていなかった。
【0003】例えば,特開平3-253541号公報にCu-P系に
おいてC 量を少なくし,S を少量加え,SiとTiを一定量
加えることによりウェットとドライの反復される環境に
おいて優れた耐食性を示すと開示している。また,特開
平3-150315号公報にCu-P系において,C 量を少なくし,
Niを微量添加させた鋼に関し,耐食性および成形性に優
れている鋼板の製造方法を開示している。特開平4-1415
54号公報には,高強度で耐食性に優れる冷延鋼板および
その製造法を開示している。また特開平4-168246号公報
には,P,Ti,Nb などを含有した成形性と耐食性に優れた
冷延鋼板を開示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし特開平3-253541
号公報に開示されている鋼板は,Tiキルド鋼であるた
め,表面欠陥が生じやすく,また,連続鋳造によってス
ラブを製造しようとする場合,ノズル詰まりが生じやす
くなる。また,特開平3-150315号公報に開示されている
方法では,成形性をあげるために,再結晶焼鈍を箱焼鈍
で行うことを規定しているが,箱焼鈍によるとコスト的
に不利なだけでなく,P が偏析しやすくなり,鋼が脆化
し,加工性が悪くなるという欠点がある。
【0005】また特開平4-141554号公報に開示されてい
る鋼板は,伸び(El)が40% 未満,ランクフォード値(rm
値) が,2.0 未満とプレス成形性が不十分であるという
欠点がある。またCu,PおよびCrを添加した鋼は,耐孔食
性に劣るという盲点がある。さらに特開平4-168246号公
報に開示してあるP,Ti,Nb などを含有した冷延鋼板は,
NbC が生成するので,耐食性に劣るという欠点がある。
【0006】本発明は,より低コストでしかも耐食性,
加工性,溶接性,化成処理性に優れた表面処理鋼板を提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上述した
従来技術における課題を解決することについて検討を重
ねた結果,Cu-P系においてC を極力少なくし,Ti,Nb,お
よびB を複合添加した鋼板の少なくとも一方の表面に,
Ni-P系合金めっき層もしくはさらにW,Mo,Cr,Cuの一種ま
たは二種以上を含有するNi-P系合金めっき層を形成し,
非酸化性雰囲気で熱処理を施すことにより,鋼板素地と
めっき層の界面にFe-Ni-P を主成分とする拡散合金領域
を形成することによって非常に高い耐食性と成形性を十
分確保することに成功した。
【0008】すなわち本発明は, 1 )重量% でC :0.001 〜0.006%,Si:0.35% 未満,M
n:0.05〜0.5%,P :0.03〜0.08% ,S :0.01% 未満,s
ol.Al:0.01% 〜0.1%,N :0.0035% 以下,Cu:0.1 〜
0.5%,Ni:0.1 〜0.5% Ti:0.01〜0.06% ,Nb:0.003 〜0.015%,B :0.0002〜
0.002%を含有し,残部はFeおよび不可避不純物からな
り,さらに前記成分組成が,(P/200)<B , 4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S , および,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) なる関係
を満足する鋼板の少なくとも一方の表面に,Fe-Ni-P を
主成分とする拡散合金層を有する,耐食性と加工性に優
れた冷延鋼板。
【0009】2)重量% でC :0.001 〜0.006%,Si:0.
35% 未満,Mn:0.05〜0.5%,P :0.03〜0.08% ,S :0.
01% 未満,sol.Al:0.01% 〜0.1%,N :0.0035% 以下,
Cu:0.1 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5% Ti:0.01〜0.06% ,Nb:0.003 〜0.015%,B :0.0002〜
0.002%を含有し,残部はFeおよび不可避不純物からな
り,さらに前記成分組成が,(P/200)<B , 4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S , および,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) なる関係
を満足する鋼板の少なくとも一方の表面に,Fe-Ni-P を
主成分としW,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を含有する
拡散合金層を有する,耐食性と加工性に優れた冷延鋼
板。
【0010】3)表面の十点の平均あらさRz(μm )が
1 〜8 であり,かつRz×S/(10 ×P +2×Cu+Ni) ≦0.0
25 である請求項1,2に記載の耐食性と加工性に優れ
た冷延鋼板。
【0011】4)重量% でC :0.001 〜0.006%,Si:0.
35% 未満,Mn:0.05〜0.5%,P :0.03〜0.08% ,S :0.
01% 未満,sol.Al:0.01% 〜0.1%,N :0.0035% 以下,
Cu:0.1 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5% Ti:0.01〜0.06% ,Nb:0.003 〜0.015%,B :0.0002〜
0.002%を含有し,残部はFeおよび不可避不純物からな
り,さらに前記成分組成が,(P/200)<B , 4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S , および,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) なる関係
を満足する鋼板を,酸洗しスケールを除去後冷間圧延,
焼鈍の前に,または酸洗し冷間圧延した後焼鈍の前に,
前記鋼板の少なくとも一方の表面に,電気めっきまたは
無電解めっきによってP を8 〜18重量% 含有するNi-P系
合金めっきを施し,ただちに非酸化性雰囲気で750 〜90
0 ℃で拡散熱処理を行い,鋼板素地表面にFe-Ni-P を主
成分とする拡散合金領域を形成することを特徴とする,
耐食性と加工性に優れた冷延鋼板の製造方法。
【0012】5)重量% でC :0.001 〜0.006%,Si:0.
35% 未満,Mn:0.05〜0.5%,P :0.03〜0.08% ,S :0.
01% 未満,sol.Al:0.01% 〜0.1%,N :0.0035% 以下,
Cu:0.1 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5% Ti:0.01〜0.06% ,Nb:0.003 〜0.015%,B :0.0002〜
0.002%を含有し,残部はFeおよび不可避不純物からな
り,さらに前記成分組成が,(P/200)<B , 4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S , および,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) なる関係
を満足する鋼板を,酸洗しスケールを除去後冷間圧延,
焼鈍の前に,または酸洗し冷間圧延した後焼鈍の前に,
前記鋼板の少なくとも一方の表面に,電気めっきまたは
無電解めっきによってPを8 〜18重量% ,W,Mo,Cr,Cuの
一種または二種以上を15重量% 以下の範囲で含有するNi
-P系合金めっきを施し,ただちに非酸化性雰囲気で750
〜900 ℃で拡散熱処理を行い,鋼板素地表面にFe-Ni-P
を主成分とする拡散合金領域を形成することを特徴とす
る,耐食性と加工性に優れた冷延鋼板の製造方法。
【0013】6)スラブを熱間圧延して上述した組成の
鋼板を用意する際に,スラブを1100℃以上で加熱した
後,Ar3 点を超える温度で熱延し,得られた熱延板を巻
取温度CT(℃) が,550 ℃≦CT≦(650+200 ×(200×B
(%)−P(%)) の範囲で巻取る工程を有する耐食性と加工
性に優れた冷延鋼板の製造方法。
【0014】7)上述した組成の鋼板を非酸化性雰囲気
で熱処理する際に,連続焼鈍炉によって加熱することに
よって鋼板表面にFe-Ni-P を主成分とする拡散合金領域
を形成し,耐食性と加工性に優れた冷延鋼板の製造方
法。
【0015】
【作用】以下に本発明について詳細に説明する。
【0016】上記のように鋼成分(以下において成分は
すべて重量% である)を限定した理由について述べると
以下の如くである。
【0017】C :0.001 〜0.006%とするC は優れた機械
的特性を保つためには少ないほうがよい。したがって本
発明の効果を損なわない範囲として,その上限を0.006%
に限定する。また下限については,過度に極低C 化して
も加工性がさほど向上しないことに加え,極低C 化する
ために,他の元素を添加する必要があり,そのためコス
ト上昇を伴うので0.001%とする。
【0018】Si:0.35% 未満とする。
【0019】Siはプレス成形性を劣化させることなく,
固溶強化元素として鋼板の強化に寄与する。しかしなが
らSiが多いと成形性が劣化し,めっき性も損なわれるた
め0.35% 未満とする。
【0020】Mn:0.05〜0.5%とする。
【0021】Mnは不可避的に含まれるS を固定し,赤熱
脆性を防ぐのに必要な元素であるためその下限を0.05%
とした。また0.5%を越えて含有するとランクフォード値
を著しく劣化させ,しかもコスト的にも不利であるの
で,その上限を0.5%とした。
【0022】P :0.03〜0.08% とする。
【0023】P は最も安価に鋼を強化できる元素である
と共に,鋼板自体の耐食性を向上させる元素である。IF
鋼をベースとして,0.1%を越えて含有させると,結果的
に高強度化すると共に,粒界に偏析しやすくなり,二次
加工劣化の問題が顕在化するため,0.08% 以下に限定し
た,一方耐食性に寄与させるには,0.03% の添加が必要
であり,これを下限とした。
【0024】S :0.01% 以下とする。
【0025】S は0.01% を越えて含有すると鋼の延性を
劣化させ,耐食性に悪影響を及ぼすため0.01% 以下とし
た。好ましくは0.007%以下である。
【0026】sol.Al:0.01〜0.1%とする。
【0027】Alは脱酸およびN の固定のために必要であ
るが,多量に添加するとコストの上昇をもたらすととも
に,アルミナ系介在物が増加して表面性状が劣化するの
で,その範囲を0.01% 以上0.1%以下とした。
【0028】N :0.0035% 以下とする。
【0029】N は高いランクフォード値を得るために
は,少ないほうが望ましいが,本発明の効果を損なわな
い範囲として,その上限を0.0035% 以下とした。
【0030】Cu:0.1 〜0.5%とする。
【0031】CuはP と複合添加される場合に,鋼板自体
の耐食性を向上させる元素であり,0.1%以上でその効果
が得られる。過剰に添加すると深絞り性を劣化させるば
かりでなく,熱延時の表面疵またはSnとの共存により,
熱延時の熱間割れが発生しやすくなるため,その上限を
0.5%とする。
【0032】Ni:0.1 〜0.5%とする。
【0033】Niは,Cuが添加された場合の表面疵を減少
させ,さらに耐食性を高めるのに有効な元素である。し
かしながら過剰に添加すると深絞り性の劣化,コストの
上昇を招くので,その下限値を0.1%とし,上限を0.5%と
した,Ti:0.01〜0.06% とする。
【0034】Tiは,固溶炭素と固溶窒素による材質の劣
化を防止する上で,必要な元素である。そのためには0.
01% 以上の添加が必要である。またその添加量が0.06%
を越えても,一層の効果は得られず,コスト的に不利に
なるため,0.01% 以上,0.06% 以下とする。ここで,鋼
中の固溶炭素および固溶窒素を完全にTiで析出固定する
ためには,以下の条件が必要である。
【0035】4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S Nb:0.003 〜0.015%とし,かつ,0.004 ≦Nb×(10 ×P
+2 ×Cu+Ni) とする。
【0036】NbはCu,P と複合添加することによって,
不動態皮膜の成長を助け,耐孔食性を向上させる上に,
rm値の異方性を小さくする効果もある。この効果は,Nb
が0.003%未満であると効果がなく,また,0.015%を越え
る添加は,その効果が飽和する上,鋼の再結晶温度が上
昇し,また,コスト的にも不利となる。よって,Nbは0.
003%以上0.015%以下とする。なお,この効果は,Nbが析
出物として存在すると,効果がない。すなわち,Nbは鋼
中で固溶していることが必要である。本発明鋼において
は,TiがC ,N およびS と化合するため,Nbは鋼中に全
量固溶している。
【0037】また,不動態皮膜はP ,Cu及びNi量が少な
いと弱いので,耐孔食性のためのNb量がその分多く必要
となる。すなわち,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+N
i) が必要である。
【0038】Nbの耐孔食性に及ぼす影響は,後述する実
施例に示した試験方法で,最大浸食深さ及び腐食減量
を,普通鋼板と,Cu0.4%,P0.05%,Ni0.2%をベースの耐
食鋼(比較鋼)と,さらに,Nbを0.010%添加した本発明
鋼について比較し,図1 に示す。さらに,最大浸食深さ
/ 腐食減量の比による耐孔食性を,Cu0.4%,P0.05%,Ni
0.2%をベースの耐食鋼(比較鋼)とNbの添加量を変えた
本発明鋼とを比較して,図3 に示す。図1 及び2 から,
Nbが存在しない耐食鋼板は,耐孔食性は普通鋼板(SPC
C)と同等なのに対して,固溶Nbが存在する耐食鋼板
は,耐孔食性が格段に優れていることがわかる。
【0039】B :0.0002〜0.002%とし,かつ,(P/200)<
B とする。
【0040】B は二次加工脆性に対して効果があり,本
発明鋼のようにP が入っていて二次加工脆性を起こしや
すい鋼に対しては効果が大きい。この効果は,B が0.00
02%未満では効果がなく,0.002%を越える添加は鋼を硬
化させるので,上記の通りとする。また,(P/200)<B と
するのは,P が鋼を脆化させるので,その影響を減ずる
ためである。
【0041】上記のような鋼成分で十分鋼板自体に耐食
性を具備しているが,苛酷な環境下に於て使用する自動
車用鋼板に対してはまだ不十分である。
【0042】而して上記の鋼板に対してさらなる耐食
性,機械的特性を付与するため,本発明では上記の鋼板
にFe-Ni-P 拡散合金めっき層を形成する。P を8 〜18重
量% 含有するNi-P合金めっきはアモルファスに近い構造
をとり,この様なめっき層を有する鋼板を熱処理すると
一般の結晶性のめっき皮膜の場合に比較して均一な拡散
合金層が短期間のうちに形成される。このような拡散層
は下地鋼を腐食から保護するとともにひとたび,下地Fe
の腐食が開始された後には形成されるFeの腐食生成物を
素早く緻密なものとする。この結果,従来の技術では得
られなかった優れた耐食性を得ることができる。
【0043】P が8 重量% 未満ではNi-P合金めっきは結
晶質であり,P の分布も均一でない。このため,熱処理
を受けたときに形成される拡散合金領域の組成が均一で
なく,前記下地生成錆の緻密性への寄与が十分でなく,
優れた耐食性を得ることができない。一方P が18重量%
超ではNi-P合金めっきは脆くなりその密着性が低下す
る。
【0044】このため,熱処理などの過程でめっき剥離
を生じやすい。このようなことから,本発明における鋼
板に形成するめっき層のP 含有率は8 〜18重量% とし
た。望ましい範囲は8 〜15重量% であり,より望ましい
範囲は10〜13重量% である。
【0045】また,Ni-PにさらにW,Mo,Cr,Cuの一種また
は二種以上を15重量% 以下の範囲で複合化したNi-P系合
金めっきとして使用することもできる。W,Mo,Cr,Cuはい
ずれも,鋼の腐食に対しインヒビター的な役割をもつと
と同時に,Ni,P との相乗効果で初期錆の緻密性,安定
性を一層向上させる効果を有する。W,Mo,Cr,Cuの含有率
についてはその合計値で15重量% 以下であることが望ま
しい。W,Mo,Cr,Cuの合計含有率の増加と共に耐食性は向
上するが,その合計値が15重量% を超えるとその密着性
が低下するため,その後の過程でめっき剥離を生じやす
い。従って,W,Mo,Cr,Cuの含有率については合計値とし
て15重量% とした。W,Mo,Cr,Cuの含有効果を発揮するた
めには,その下限は0.5 重量% 以上が望ましい。
【0046】また,このNi-P系合金めっき層のめっき量
については特に規定しないが,0.1〜8g/m2 の範囲が望
ましい。0.1g/m2 未満では耐食性向上効果が十分でな
く,8g/m2 超ではめっき層の加工性が低下し剥離しやす
くなるとともに,めっき量を多くするためにラインスピ
ードも遅くする必要があり生産効率上不利となる。
【0047】以上の鋼板の表面あらさが下記の条件を満
足するときは,さらに耐食性が向上する。
【0048】Rz(μm ):1 〜8 の範囲で,かつ,Rz×
S/(10 ×P +2 ×Cu+Ni) ≦0.025 とする。
【0049】表面粗さが大きくなると,耐食性が劣化す
る。よって,Rz≦8 μm とする。しかし,Rzを1 μm 未
満にしてもコストがかかるだけで,耐食性には影響しな
い。よって,Rz≦1 μm が望ましい。Rzの耐食性に及ぼ
す影響は,鋼成分によって変化し,Rz×S/(10 ×P +2
×Cu+Ni) ≦0.025 であると耐食性はより向上する。
【0050】Rz×S/(10 ×P +2 ×Cu+Ni) と腐食減量
の関係を図3 に示す。図3 より,Rz×S/(10 ×P +2 ×
Cu+Ni) >0.025 では,耐食性が劣っていることがわか
る。また,Nbの添加していない鋼15は本発明鋼よりも若
干耐食性も劣っている。
【0051】次に,上記に示したような冷延鋼板の好ま
しい製造条件について説明する。上記に示したような成
分を有する鋼を,例えば連続鋳造法または造塊法により
スラブとし,その後以下の条件により製造する。
【0052】スラブ加熱温度は,スラブ内の析出物を再
固溶させる温度であればよく,上記に示したような成分
を有する鋼では,加熱温度が1100℃以上が望ましい。
【0053】仕上げ温度はAr3 点以下では深絞り性が劣
化するため,Ar3 点以上で圧延するのがよい。巻取温度
は550 ℃以上であるとフェライト粒が大きく,加工性も
よいが,高すぎるとP の粒界偏析が促進され,二次加工
脆性が劣化する。その温度はP量が多いと起こりやすくB
量が多いと起こりにくい。すなわち,巻取温度は(650
+200 ×(200×B −P)℃以下であることが望ましい。
【0054】Ni-P系めっきを行う工程は焼鈍前に行うも
のであるが,酸洗ライン出側にて酸洗に引き続いて冷間
圧延前に実施するか,もしくは,酸洗冷圧後めっきを行
ってもかまわない。特にこのめっきが,冷間圧延前の場
合は,めっき前の洗浄,めっき前の活性化処理としての
酸洗などが不要となるため有利である。
【0055】冷間圧延条件は特に規定はしないが,優れ
た深絞り性を有するために,冷圧率が50% 以上であるこ
とが望ましい。
【0056】Ni-P系合金めっき層の形成方法は種々考え
られるが,簡便性,および得られる膜質等の点で電気め
っきまたは無電解めっき(化学めっき)が望ましい。
【0057】次に,Ni-P系合金めっき層を施した鋼板を
非酸化雰囲気で熱処理して,鋼板素地とめっき層の界面
にFe-Ni-P を主成分とする拡散合金領域を形成する。拡
散のための熱処理は,冷間圧延後の通常の焼鈍設備で行
うことが可能である。特に生産性の高い連続焼鈍を用い
る方法が望ましい。ここで述べる連続焼鈍とは一般的な
冷延鋼板用の連続焼鈍設備ならびに溶融めっきラインの
前処理設備としてある焼鈍設備を用いることができる。
この時の,最高到達温度であるが,高い方が深絞り性な
どの加工性がよくなるので750 ℃以上,望ましくは820
℃以上であることがよい。また750 ℃未満ではNi-P系合
金めっき層と鋼表面との拡散層が十分に形成されず,腐
食過程での緻密な錆形成が十分でないため耐食性向上効
果が小さい。一方900 ℃超では熱処理炉内ロールへのめ
っき金属のピックアップが生じやすく,その結果表面キ
ズ等の原因となりやすい。さらに900 ℃を超える温度で
焼鈍すると,フェライト粒の粗大化により,プレス成形
後,肌荒れを起こしやすくなる。また,この最高到達板
温での保持時間は温度によっても異なるが,1 から120
秒が望ましい。短すぎると十分な拡散領域が形成されな
いため,耐食性の向上効果が現われず,1 20秒超では過
度の拡散合金化によってこの界面層がもろくなるため,
めっき層の密着性,加工性が低下する。また,熱処理の
際,300 〜400℃程度の温度で数分程度の過時効処理が
行われてもよい。熱処理により形成される好適な拡散領
域は深さが0.1 〜20μm程度である。また,再結晶焼鈍
は,請求項7に示した連続焼鈍を用いる製造方法が望ま
しい。その理由は,箱焼鈍による方法では,焼鈍後の徐
冷の際,P が粒界に偏析し,これが加工性及び耐食性を
劣化させるからである。
【0058】また熱処理を行う際に,直下式加熱炉によ
って昇温速度を50℃/sec以上で加熱することにより炉内
のロールピックアップが回避できる。
【0059】なお,Ni-P系合金めっき層を熱処理する
と,その一部が拡散合金層を形成して,鋼板/拡散合金
域/Ni-P系合金めっき層の構成となる場合と,その全て
が拡散合金層を形成して,鋼板/拡散合金域の構成とな
る場合があるが,本発明はいずれも含む。
【0060】さらに熱処理の後に,必要により適宜な条
件で調質圧延が行われる。
【0061】Rzの制御は,圧延ロール及び焼鈍後の調圧
ロール等の砥石による研磨,砥石研磨後におけるCrまた
はNiめっき,ショットブラスト,放電加工,レーザー加
工,エッチング加工,EBT 加工等の実施等により行う。
要はロールのRzを通常よりも低めに制御するのが必要と
なる。
【0062】このような耐食性と加工性とをともに具備
した冷延鋼板は,自動車用材料としてきわめて有用な鋼
板である。
【0063】
【実施例】本発明の具体的な実施例について以下に説明
するが,本発明はむろんこの実施例に限定するものでは
ないことは当然である。
【0064】なお耐食性,めっき密着性の評価は,いず
れの実施例においても,作成した試験材を,以下に示す
方法にて評価を行った。
【0065】(1) 耐食性:乾湿繰り返しに塩水噴霧を組
み合わせた腐食環境で1 日1 サイクルの腐食試験を行
い,試験後の腐食深さを測定し,以下の基準で評価し
た。
【0066】○ 最大浸食深さが0.2 mm以下 △ 最大浸食深さが0.2 mm超,0.4 mm以下 × 最大浸食深さが0.4 mm超 (2) 加工性:180 度曲げ試験で曲げ先端部のめっき皮膜
の損傷状況を観察し,以下の基準で評価した。
【0067】○ 損傷ゼロもしくは微細クラックが発生
する程度 △ 大きなクラックの発生またはめっき片の剥離を部分
的に生じる × 広範囲にめっき剥離が認められる 実施例1 本発明の具体的な実施例について説明すると,以下のご
とくである。
【0068】表1 に示すような成分組成を有する本発明
鋼及び比較鋼を溶製し,スラブとした。これを1250℃で
加熱した後,900 ℃で熱延し,板厚2.8 mmとした後,
620℃で巻き取り,熱延板とした。酸洗後,0.7 mmに
まで冷圧( 冷圧率:75%)し,P 含有率12重量% ,付着量
1g/m2 のNi-Pめっきを行った。それを850 ℃で熱処理を
行い,0.5%の調圧を行って冷延鋼板を得た。表1 の備考
中,X=Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S −4 ×C ,Y=Nb
×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) −0.004 を示し,X≧0 はTi
量が炭素,窒素及び硫黄よりも当量以上含まれることを
示す。
【0069】得られた鋼板の機械的性質を測定した結果
を表2 に示す。引張試験はJIS5号試験片にて行った。 r
m 値に関しては, rm 値=( r0 +2 × r45+ r90)/4 ,
Δr=(r0 −2 × r45+ r90)/2 より算出した。また破面
遷移温度とは,絞り比2.1 にてカップ成形を施した後,
カップ端部より円錐ポンチを押し込み,脆性破壊を起こ
さない温度を示し,これで耐たて割れ性を評価した。
【0070】Rzについては,鋼の表面粗さを3 回測定
し,その平均を求めた。また,Z=Rz×S/(10 ×P +2 ×
Cu+Ni) である。
【0071】表2 から明らかなように,鋼種1 と2 では
P が少ないため,耐食性が劣ることがわかる。鋼9 と10
はP が多すぎるため,成形性が悪い。そして鋼11と12は
Cuが少なすぎるため,耐食性が劣り,鋼13と14はCuが多
すぎるので,成形性が劣っている。さらに,鋼15はNbを
添加していないため,Δr が大きく,また孔食が起きや
すいことがわかる。鋼15と16はB が添加されていないた
め,二次加工脆化を起こしている。鋼19は,C ,Si,Nb
が多いため,成形性が劣り,またNiが添加されていない
ため,耐食性があまりよくない。また,X <0 である鋼
(鋼10,15,18,19 )に関しては,固溶炭素あるいは固溶
窒素が完全に固定されていないため,深絞り性などの加
工性が劣っている。またY <0 (鋼2,15,21 )では耐孔
食性が劣っていることがわかる。さらに,表面粗さRz>
0.025 の鋼(鋼10,11,12,15,17,19,20)も耐食性が劣っ
ている。
【0072】実施例2 表1 に示す本発明の鋼(鋼番:3,5 )を溶製し,スラブ
とした。これを1250℃で加熱した後,900 ℃で熱延し,
板厚2.8 mmとした後,620 ℃で巻き取り,熱延板とし
た。酸洗後,0.7 mmにまで冷圧( 冷圧率:75%)し,表
3 中に示す範囲でNi-Pめっきを行い850 ℃の温度で連続
焼鈍した後,0.5%の調質圧延を行って試験片を作成し
た。その結果を表4 に示す。本発明鋼は優れた耐食性,
めっき密着性を示している。
【0073】実施例3 表1 に示す本発明の鋼(鋼番:3,5 )を溶製し,スラブ
とした。これを1250℃で加熱した後,900 ℃で熱延し,
板厚2.8 mmとした後,620 ℃で巻き取り,熱延板とし
た。酸洗後,表3 中に示す範囲でNi-Pめっきを行い,0.
7 mmにまで冷圧( 冷圧率:75%)し,850 ℃の温度で連
続焼鈍した後,0.5 % の調質圧延を行って試験片を作成
した。その結果を表5 に示す。本発明鋼は優れた耐食
性,めっき密着性を示している。
【0074】
【発明の効果】以上のように,本発明による冷延鋼板
は,深絞り性などの加工性に優れ,しかも耐食性も兼ね
備えている。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼におけるNb添加の耐食性に与える影
響を示す図。
【図2】本発明の鋼におけるNb添加の耐食性に与える影
響を示す図。
【図3】鋼板の腐食減量に及ぼすRz×S/(10 ×P +2 ×
Cu+Ni) の影響を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松木 康浩 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 渡辺 豊文 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 塩原 幸光 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−65595(JP,A) 特開 平6−93472(JP,A) 特開 昭63−79996(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 8/02 - 8/04 C21D 9/46 - 9/48 C23C 18/50 C25D 5/26

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量% でC :0.001 〜0.006%,Si:0.35%
    未満,Mn:0.05〜0.5%,P :0.03〜0.08% ,S :0.01%
    未満,sol.Al:0.01% 〜0.1%,N :0.0035% 以下,Cu:
    0.1 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5% Ti:0.01〜0.06% ,Nb:0.003 〜0.015%,B :0.0002〜
    0.002%を含有し,残部はFeおよび不可避不純物からな
    り,さらに前記成分組成が,(P/200)<B , 4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S , および,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) なる関係
    を満足する鋼板の少なくとも一方の表面に,Fe-Ni-P を
    主成分とする拡散合金層を有する,耐食性と加工性に優
    れた冷延鋼板。
  2. 【請求項2】重量% でC :0.001 〜0.006%,Si:0.35%
    未満,Mn:0.05〜0.5%,P :0.03〜0.08% ,S :0.01%
    未満,sol.Al:0.01% 〜0.1%,N :0.0035% 以下,Cu:
    0.1 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5% Ti:0.01〜0.06% ,Nb:0.003 〜0.015%,B :0.0002〜
    0.002%を含有し,残部はFeおよび不可避不純物からな
    り,さらに前記成分組成が,(P/200)<B , 4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S , および,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) なる関係
    を満足する鋼板の少なくとも一方の表面に,Fe-Ni-P を
    主成分としW,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を含有する
    拡散合金層を有する,耐食性と加工性に優れた冷延鋼
    板。
  3. 【請求項3】表面の十点の平均あらさRz(μm )が1 〜
    8 であり,かつRz×S/(10 ×P +2×Cu+Ni) ≦0.025
    である請求項1又は2に記載の耐食性と加工性に優れた
    冷延鋼板。
  4. 【請求項4】重量% でC :0.001 〜0.006%,Si:0.35%
    未満,Mn:0.05〜0.5%,P :0.03〜0.08% ,S :0.01%
    未満,sol.Al:0.01% 〜0.1%,N :0.0035% 以下,Cu:
    0.1 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5% Ti:0.01〜0.06% ,Nb:0.003 〜0.015%,B :0.0002〜
    0.002%を含有し,残部はFeおよび不可避不純物からな
    り,さらに前記成分組成が,(P/200)<B , 4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S , および,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) なる関係
    を満足する鋼板を,酸洗しスケールを除去後冷間圧延,
    焼鈍の前に,または酸洗し冷間圧延した後焼鈍の前に,
    前記鋼板の少なくとも一方の表面に,電気めっきまたは
    無電解めっきによってPを8 〜18重量% 含有するNi-P系
    合金めっきを施し,ただちに非酸化性雰囲気で750 〜90
    0 ℃で拡散熱処理を行い,鋼板素地表面にFe-Ni-P を主
    成分とする拡散合金領域を形成することを特徴とする,
    耐食性と加工性に優れた冷延鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】重量% でC :0.001 〜0.006%,Si:0.35%
    未満,Mn:0.05〜0.5%,P :0.03〜0.08% ,S :0.01%
    未満,sol.Al:0.01% 〜0.1%,N :0.0035% 以下,Cu:
    0.1 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5% Ti:0.01〜0.06% ,Nb:0.003 〜0.015%,B :0.0002〜
    0.002%を含有し,残部はFeおよび不可避不純物からな
    り,さらに前記成分組成が,(P/200)<B , 4 ×C<Ti−(48/14) ×N −(48/32) ×S , および,0.004 ≦Nb×(10 ×P +2 ×Cu+Ni) なる関係
    を満足する鋼板を,酸洗しスケールを除去後冷間圧延,
    焼鈍の前に,または酸洗し冷間圧延した後焼鈍の前に,
    前記鋼板の少なくとも一方の表面に,電気めっきまたは
    無電解めっきによってPを8 〜18重量% ,W,Mo,Cr,Cuの
    一種または二種以上を15重量% 以下の範囲で含有するNi
    -P系合金めっきを施し,ただちに非酸化性雰囲気で750
    〜900 ℃で拡散熱処理を行い,鋼板素地表面にFe-Ni-P
    を主成分とする拡散合金領域を形成することを特徴とす
    る,耐食性と加工性に優れた冷延鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】スラブを熱間圧延して請求項4又は5に記
    載した鋼板を用意する際に,スラブを1100℃以上で加熱
    した後,Ar3 点を超える温度で熱延し,得られた熱延板
    を巻取温度CT( ℃) が,550 ℃≦CT≦(650+200 ×(200
    ×B(%)−P(%)) の範囲で巻取る工程を有する,請求項4
    又は5に記載した耐食性と加工性に優れた冷延鋼板の製
    造方法。
  7. 【請求項7】請求項4又は5に示した鋼板を非酸化性雰
    囲気で熱処理する際に,連続焼鈍炉によって加熱するこ
    とによって鋼板表面にFe-Ni-P を主成分とする拡散合金
    領域を形成し,耐食性と加工性に優れた冷延鋼板の製造
    方法。
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