JP3205304B2 - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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JP3205304B2 JP29512398A JP29512398A JP3205304B2 JP 3205304 B2 JP3205304 B2 JP 3205304B2 JP 29512398 A JP29512398 A JP 29512398A JP 29512398 A JP29512398 A JP 29512398A JP 3205304 B2 JP3205304 B2 JP 3205304B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メカニカルシー
ル、ガスシール等のシール部材や軸受けなどの摺動部材
に関する。
【0002】
【従来の技術】メカニカルシール、ガスシール等のシー
ル部材や軸受けなどの摺動部材を形成する材料として、
従来よりカーボン、炭化珪素、超硬合金等が、カーボン
対炭化珪素、カーボン対超硬合金などの組み合わせで広
く使用されている。
【0003】近年では、流体機械の高速、高圧化、大型
化のニーズに伴い、摺動部材の使用条件は益々厳しいも
のになっており、固体間の滑り接触に伴う摩擦熱が繰り
返し発生することに起因した熱衝撃破壊や熱疲労による
割れが問題視されている。また、高速、高圧等の回転機
器におけるシール部材として強度の高い炭化珪素や超硬
合金の成形品が用いられるが、これらは脆性を備え、遠
心力増大に伴う破損を防止するためにバンドなどの補強
部材を必要とする。
【0004】そこで破損の防止方法として、摺動部材の
母材を、高強度ではないが金属材料等の非脆性材料によ
り形成し、摺動面を硬質薄膜で被覆するなどの表面改質
により高強度化する方法が検討されている。しかし、炭
化処理、窒化処理などの表面改質では、処理時の加熱に
よる変形が大きく、ひずみによって母材から硬質薄膜が
剥離するなど強度の低下を引き起こす。イオン注入では
注入深さが限定され、所望の強度が得にくい。物理的蒸
着法(PVD)や化学的蒸着法(CVD)により摺動面
に硬質薄膜を形成する方法は、改質部を十分に形成する
ことができるが、CVDは処理部を400〜1000℃
程度に加熱する必要があり、摺動部材(母材)の変形を
生じる。PVDにおいては、従来、高強度な被膜を得る
ためには、基板温度を300〜500℃程度に加熱して
おり、この場合も摺動部材の変形による強度の低下を生
じていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐摩耗性に
優れた摺動部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の請求項1の摺動部材は、Tiを45〜60at
%、Crを14〜32at%、Nを14〜36at%含有する
三元系の非晶質耐摩耗性材料薄膜を形成してなることを
特徴としている。
【0007】請求項2の摺動部材は、Tiを44〜60at
%、Crを0.4〜5.0at%、Nを40〜45at%含有する
三元系の結晶質耐摩耗性材料薄膜を形成してなることを
特徴としている。
【0008】上記のような薄膜を摺動面に形成すること
により、耐摩耗性に優れた摺動部材を得ることができ
る。なお、このような耐摩耗性材料薄膜は、真空下で、
金属チタン(Ti)および金属クロム(Cr)を蒸発させ、
蒸発物をアーク放電によりイオン化すると同時に、窒素
ガス(N2)と反応せしめて基材の摺動面に堆積させる、
いわゆるアーク放電型イオンプレーティング法により形
成することができる。このような方法により、上記所望
の条件を満たし、膜内の歪みが小さい耐摩耗性材料薄膜
を得ることができる。
【0009】
【実施例】以下、図面を用いて本発明を詳細に説明す
る。図1は、基材の摺動面に、TiCrN薄膜を形成するた
めのイオンプレーティング装置の構成の一例を示す概略
図である。基材2は、回転軸3の先端のホルダ4に、回
転軸3と同軸になるように配置固定される。ホルダ4
は、図示しない温度調節装置を備え、基材の温度を調整
する。上記基材2に対向して蒸発源5a(金属チタン)
・5b(金属クロム)が配置され、蒸発源5aからのチ
タン蒸気および蒸発源5bからのクロム蒸気を基材2に
向けて発する。チタン蒸気粒子およびクロム蒸気粒子6
は、イオン化電極8により発するアーク放電によりイオ
ン化される。一方、蒸発源5a・5b〜基材2間に窒素
ガス9が導入され、イオン化されたチタン蒸気粒子およ
びクロム蒸気粒子10と窒素ガスが反応した反応生成物
が基材2上に堆積し、摺動面にTiCrN薄膜が形成され
る。
【0010】形成されるTiCrN薄膜の物性は、基材の薄
膜形成面の温度、基材に印加するバイアス電圧、蒸発源
からの蒸発速度、窒素ガスの流速(導入速度)、蒸発源
の蒸発方法、作業圧力、蒸発物のイオン化条件等に関係
するが、これらは特に限定されず、所望のTiCrN薄膜の
物性に応じて適宜設定すればよい。好ましくは、薄膜形
成面(摺動面)における基材温度が100℃以下、バイ
アス電圧が50V以下、成膜速度を4Å/s以下とする
のがよい。また、後述する図5・図6・図11に示され
ているように、窒素ガスの流速により、薄膜水平面方向
の面歪量あるいは摩擦係数を制御することもできる。
【0011】次に、上記TiCrN薄膜を摺動面に形成した
本発明の摺動部材について説明する。図2は、本発明の
摺動部材の一例であるガスシールの回転環の構成を示す
断面図である。基材2としてマルテンサイト系ステンレ
ス鋼(SUS420J2)を用い、所定の形状に加工後、焼入れ
(980℃、1時間)、焼戻し(980℃、4時間)し、薄膜形
成面を表面粗さがRa=0.05μm以下となるようにラッ
ピング仕上げした。
【0012】上記基材2をイオンボンバード(クリーニ
ング条件:RF0.6kW、Ar流速100ml/min、バイアス
電圧1kV、15分の高周波グロー放電)により摺動面を
クリーニングした後、図1の装置にセットし、基材2を
回転させながら、ラッピング仕上げした面に、種々の条
件(基材の薄膜形成面の温度、基材に印加するバイアス
電圧、窒素ガスの流速(導入速度)、成膜速度など)
で、膜厚3μmのTiCrN薄膜20の成膜を行った。
【0013】図3は、基材の薄膜形成面の温度(基板設
定温度)と、上記回転環の摺動面(TiCrN薄膜面)にお
ける薄膜水平面方向の面歪量との関係を、基材に印加す
るバイアス電圧値毎に示すもの、図4は、基材に印加す
るバイアス電圧値と上記薄膜水平面方向の面歪量との関
係を基材の薄膜形成面の温度毎に示すものである。
【0014】面歪量の測定は、万能表面形状測定器
((株)小坂研究所製SE-3FA)により、回転環の摺動面の
一方の端部から他方の端部(外周側端部と内周側端部)
まで変形量をトレース(倍率5000×10)し、両端部間の
変化量(傾き高さ)を面歪量(単位:μm)とした。
【0015】図3・図4より、摺動部材において重要な
薄膜水平面方向の面歪量には、基材の薄膜形成面の温
度、基材へ印加するバイアス電圧値が大きく影響し、低
面歪量化のためには、基材の薄膜形成面の温度および基
材へ印加するバイアス電圧値を極力抑えることが不可欠
であることがわかる。好ましくは、摺動面における基材
温度が100℃以下、バイアス電圧50V以下、成膜速
度4Å/s以下であるのがよい。
【0016】一方、図5・図6は、成膜条件の変化に伴
って変化するTi、Cr、Nの組成比(各元素の含有率(at
%)から求められる比)と、上記回転環の摺動面(TiCr
N薄膜面)における薄膜水平面方向の面歪量との関係
を、窒素ガスの流速(導入速度)毎に示すものである。
組成比は、各TiCrN薄膜について、EPMA(日本電子
(株)製X線マイクロアナライザー)によるX線元素分
析を行って算出した。図5・図6より、組成比と薄膜水
平面方向の面歪量に相関性はなく、所望の組成の膜を得
る場合でも、例えば窒素ガスの流速等の成膜条件変化に
より、面歪量を制御できることがわかる。
【0017】次に、図7は、成膜条件の変化に伴って変
化するTi、Cr、Nの組成比と、上記回転環の摺動面(Ti
CrN薄膜面)における結晶性との相関性を示す図で、横
軸は[Nの含有率(at%)]/{[Tiの含有率(at%)]+
[Crの含有率(at%)]}、縦軸は[Crの含有率(at%)]
/[Tiの含有率(at%)]である。Ti、Cr、Nの組成比
は、上記と同様に、EPMAによるX線元素分析の測定値よ
り算出した。各実施例の組成比の値を表1に、また比較
例としてTiN薄膜の組成比の値を表2に示す。なお、図
8に、図7のプロットと表1の実施例との対応関係、お
よび後述の図9に対応する結晶性のエリアを示す(図中
丸数字は、表1における実施例、三角数字は表1におけ
る参考例に対応する)。
【0018】結晶性は、X線回折装置(理学電機工業
(株)製X-Ray Diffractmeter RINT−2000、測定条件:
Cu-Kα線 50kV×250mA)を用いて得られた回折図形より
判定した。図9に、Ti、Cr、Nの組成比と結晶性との相
関性に対応する代表的なX線回折図形を示す。同図
(a)は非晶質膜(図8中のエリアAに相当)、同図
(b)は非晶質化膜(図8中のエリアBに相当)、同図
(c)は結晶質膜(図8中のエリアCに相当)のX線回
折図形で、非晶質膜は、○で示される2つのピーク(●
は基材のピークを示す)間がブロードになり、明瞭なピ
ークが見られない。結晶質膜では、2つのピークが明瞭
に現れる。上記X線元素分析の結果およびX線回折図形
より判定した、Ti、Cr、Nの含有率(at%)の範囲と結
晶性との相関性について、表3に示す。
【0019】さらに、図7〜図9より、TiCrN薄膜にお
ける非晶質膜、結晶質膜が現れる条件は、下記式(1)
あるいは(2)の関係を満たす場合であることがわか
る。 非晶質膜が現れる範囲:y≧1.1x−0.18 ……(1) 結晶質膜が現れる範囲:y≦0.3x−0.04 ……(2) 但し、x=[Nの含有率(at%)]/{[Tiの含有率(at
%)]+[Crの含有率(at%)]}、y=[Crの含有率(at
%)]/[Tiの含有率(at%)]である。なお、 y=1.1x−0.18 ……(1') は図7・図8中に実線で示され、 y=0.3x−0.04 ……(2') は図7・図8中に点線で示されている。
【0020】一方、実施例、参考例、比較例の各回転環
に対し、スラスト式摩擦摩耗試験機(東洋ボールドウイ
ン(株)製EFM-III-E)を用い、相手材を、摺動面が規定
面粗さのリング状カーボン成形体(ピュアカーボン社製
高負荷メカニカルシール用カーボンP9867)からなる固
定環とし、室温、空気中で、固定環摺動面に加わる面圧
が5kgf/cm2となるようにスラスト荷重を調整して、周
速度(すべり速度)2m/s、走行距離7200mとして、固
定環のカーボン摩耗量、回転環のTiCrN薄膜の摩耗量、
摩擦係数を測定した。なお、摩耗量は回転環、固定環の
高さ寸法(1/1000マイクロメーター)と表面トレース状
態より計測する。摩擦係数はロードセルによって検出さ
れる摩擦トルクより算出する。結果を表1、表2に示
す。
【0021】また、図10に、横軸を前記xで表される
組成比、縦軸を前記yで表される組成比としたグラフ中
にプロットされる各TiCrN薄膜についてのドライ摺動性
の評価結果を示し、図11に、横軸を前記xで表される
組成比としたグラフで、各TiCrN薄膜の組成比と摩擦係
数との関係を窒素ガスの流速毎に示している。
【0022】図7〜図11および表1の結果より、上記
TiCrN薄膜は、非晶質膜あるいは結晶質膜のいずれかに
おいて、摩擦係数が小さく、良好な耐摩耗性を示すこと
がわかる。
【0023】従って、TiCrN薄膜においては、表3よ
り、Tiを45〜60at%、Crを14〜32at%、Nを1
4〜36at%含有し、あるいは、Tiを44〜60at%、
Crを0.4〜5.0at%、Nを40〜45at%含有し、さら
に、Ti、Cr、Nの組成比が、非晶質あるいは結晶質とな
る前記式(1)あるいは式(2)の関係を満たす場合に
良好な耐摩耗性を示すことがわかる。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】上記実施例においては、基材としてステン
レス鋼の切削加工品を用いたが、本発明はそれに限定さ
れず、所望の形態に応じて、本発明の作用を阻害しない
範囲で、例えば金属材料、セラミック等の素材から適宜
選択でき、また加工法も基材の素材や形状に応じて選択
できる。
【0028】また、上記実施例では、摺動部材としてガ
スシールの回転環を挙げたが、本発明はそれに限定され
ず、摺動面を有し、摺動面を本発明の耐摩耗性材料によ
り形成可能な部材であればよい。例えば、ガスシールの
固定環の摺動面を本発明の耐摩耗性材料により形成して
もよいし、メカニカルシールや軸受けの可動部材あるい
は静止部材の摺動面を本発明の耐摩耗性材料により形成
してもよい。また、図12に示されるような支承装置の
すべり軸受けと対向してスライドするスライドプレート
の摺動面を本発明の耐摩耗性材料により構成しても良い
(図12中、22はソールプレート、23はスライドプ
レート、24はピストン、25はシム、26はベアリン
グ、27はシールリング、28はエラストマ、29はベ
ースポットを示す)。
【0029】また、上記実施例では、本発明の摺動部材
と組み合わせる相手側部材の摺動面形成素材としてカー
ボンを用いたが、相手側素材として本発明はそれに限定
されず、通常一般に摺動面形成素材として使用される素
材を用いることができる。また、本発明の摺動部材は、
タービン、ブロワ、コンプレッサ、攪拌機などに好適に
使用できる。
【0030】
【発明の効果】本発明の摺動部材は、Tiを45〜60at
%、Crを14〜32at%、Nを14〜36at%含有する
三元系の非晶質耐摩耗性材料薄膜、あるいはTiを44〜
60at%、Crを0.4〜5.0at%、Nを40〜45at%含
有する三元系結晶質耐摩耗性材料薄膜を形成してなるも
ので、各薄膜は摩擦係数が小さく、また、材料内の歪み
が少なく、耐摩耗性が著しく向上するので摺動時の耐久
性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るTiCrN薄膜を形成するためのイオ
ンプレーティング装置の構成の一例を示す概略図であ
る。
【図2】本発明の摺動部材の一例であるガスシールの回
転環を示す断面図である。
【図3】図2の回転環における基材の薄膜形成面の温度
(設定温度)と薄膜水平面方向の面歪量との関係を、基
材へ印加するバイアス電圧値毎に示すグラフである。
【図4】図2の回転環における基材へ印加するバイアス
電圧値と薄膜水平面方向の面歪量との関係を、基材の薄
膜形成面の温度毎に示すグラフである。
【図5】図2の回転環に形成された薄膜におけるTi、Cr
の組成比([Crの含有率(at%)]/[Tiの含有率(at
%)])と、薄膜水平面方向の面歪量との関係を、窒素ガ
スの流速(導入速度)毎に示すグラフである。
【図6】図2の回転環に形成された薄膜におけるTi、C
r、Nの組成比([Nの含有率(at%)]/{[Tiの含有率
(at%)]+[Crの含有率(at%)]})と、薄膜水平面方向
の面歪量との関係を、窒素ガスの流速(導入速度)毎に
示すグラフである。
【図7】図2の回転環に形成された薄膜の成膜条件の変
化に伴って変化するTi、Cr、Nの組成比と、結晶性との
相関性を示す図である。
【図8】図7におけるTi、Cr、Nの組成比と結晶性との
相関性と実施例及び参考例との対応関係を示す図であ
る。
【図9】同図(a)はTiCrN非晶質膜の代表的なX線回
折図形、同図(b)はTiCrN非晶質化膜の代表的なX線
回折図形、同図(c)はTiCrN結晶質膜の代表的なX線
回折図形を示す図である。
【図10】図2の回転環に形成された薄膜におけるTi、
Cr、Nの組成比とドライ摺動性との相関性を示すグラフ
である。
【図11】図2の回転環に形成された薄膜におけるTi、
Cr、Nの組成比と摩擦係数との関係を示すグラフであ
る。
【図12】本発明の摺動部材の一例であるスライドプレ
ートを適用した支承装置の要部構成図である。
【符号の説明】
1 アーク放電型イオンプレーティング装置 2 基材 3 回転軸 4 ホルダ 5a 蒸発源(金属チタン) 5b 蒸発源(金属クロム) 6 蒸気粒子(Ti、Cr) 7 フィラメント 8 イオン化電極 9 反応ガス(N2) 10 イオン化された蒸気粒子(Ti、Cr) 11 直流電源 12 電源 13 EBガン 14 粗引バルブ 15 メインバルブ 16 クライオポンプ 17 油回転ポンプ 20 TiCrN薄膜 21 摺動面
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−297568(JP,A) 特開 平7−243047(JP,A) 特開 平7−173608(JP,A) 特開 平6−330348(JP,A) 特開 平6−330347(JP,A) 特表 昭58−500172(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58 C23C 16/34 F16C 33/12 C01G 37/00 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Tiを45〜60at%、Crを14〜3
    2at%、Nを14〜36at%含有する三元系の非晶質耐
    摩耗性材料薄膜を形成してなることを特徴とする摺動部
    材。
  2. 【請求項2】 Tiを44〜60at%、Crを0.4〜
    5.0at%、Nを40〜45at%含有する三元系の結晶質
    耐摩耗性材料薄膜を形成してなることを特徴とする摺動
    部材。
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